IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部興産機械株式会社の特許一覧

特許7463912押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置
<>
  • 特許-押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置 図1
  • 特許-押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置 図2
  • 特許-押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置 図3
  • 特許-押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置 図4
  • 特許-押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置 図5
  • 特許-押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置 図6
  • 特許-押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】押出プレス装置のダイカセット、および、押出プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 25/02 20060101AFI20240402BHJP
   B21C 29/04 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B21C25/02 A
B21C29/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020143166
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038584
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】土器 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 武治
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-071420(JP,A)
【文献】特開平02-011213(JP,A)
【文献】特開昭61-259832(JP,A)
【文献】特開平10-034228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/00 - 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスを含むダイスタックを保持して、押出位置と交換位置との間を移動するように構
成される、押出プレス装置のダイカセットであって、
上方が開放されたU字形をなし、前記ダイスタックを収容する収容部と、
前記収容部を保持する保持部と、
前記収容部と前記保持部との間に設けられる加熱手段と、
前記収容部および前記保持部の一方または双方に設けられる、前記収容部と前記保持部との間隔を維持するための間隔維持体と、を備え、
前記加熱手段は、前記間隔維持体により維持される前記間隔に設けられ、
前記間隔維持体は、
前記収容部の上方の両端に形成される、前記保持部に支持される一対のフランジ状の支持片と、
前記収容部の下方に向けて形成される、前記保持部に突き当たる突起と、
を備えることを特徴とする、押出プレス装置のダイカセット。
【請求項2】
前記間隔維持体は、
前記収容部および前記保持部の上方および下方において、前記収容部と前記保持部との
前記間隔を維持する、
請求項に記載のダイカセット。
【請求項3】
前記収容部の前記突起は、
前記収容部における押出方向の全長の一部であって、かつ、前記押出プレス装置の押出ステムの側に形成される、
請求項に記載のダイカセット。
【請求項4】
前記収容部に収納される前記ダイスタックの、前記押出プレス装置の押出ステムの側への移動を拘束するダイスタック保持部をさらに備える、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のダイカセット。
【請求項5】
前記ダイスタック保持部は、
前記収容部の、前記押出プレス装置の押出ステムの側の端部の少なくとも一部に形成される、前記ダイスタックの側への突条と、
前記収容部の下方に向けて形成され、前記保持部に形成される係止溝に挿入された状態で係止溝の底面において前記保持部に突き当たる前記突起と、
を備える、請求項4に記載のダイカセット。
【請求項6】
前記加熱手段は、
前記収容部と前記保持部との間の前記間隔に収納可能な形状で構成される、少なくとも1つの鋳込みヒータである、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のダイカセット。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のダイカセットと、
前記ダイカセットに保持される前記ダイスタックと、
を備えることを特徴とする、押出プレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出プレス装置のダイカセットに関し、特にダイスを含むダイスタックの温度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
押出プレス装置のダイスは、例えば特許文献1に開示されるように、バッカ、ダイリング(特許文献2においては「ダイスリング」)およびボルスタ等を組み合わせたダイスタックとして押出プレス装置に適用される。このダイスタックは、押出製品毎に、また、同じ押出製品でも、長期間の使用によるダイスの成形孔の変形等により交換される。そのため、ダイスタックはダイカセットに保持された状態で、押出位置と交換位置との間をダイカセットにより移動可能とされている。ダイカセットの移動方向は、一般的には、押出方向に直交する水平方向である。押出位置において、押出加工が行われる。先行する押出加工が終了すると、後続の押出加工のための種々の準備(アイドル工程)が行われる。アイドル工程において、ダイスタックを交換する場合、ダイカセットは押出位置から機外の交換位置に移動し、使用済みのダイスタックがダイカセットから取り外され、予熱された新たなダイスタックがダイカセットに収容される。このダイスタックの交換が完了すると、ダイカセットは交換位置から押出位置に移動する。押出位置はセット位置などとも称される。
【0003】
ダイスを含むダイスタックは、接触している他の部位に熱が奪われ、その結果、ダイスと接触する押出材であるビレットも熱が奪われる。ダイスタックおよび押出材の温度低下を抑えるため、例えば特許文献2は、ダイスタックの一要素であるダイスリング(特許文献1においては「ダイリング」)に加熱手段を備える。この加熱手段として棒状のヒータが用いられる、このヒータはダイスリングの円周方向に所定間隔で形成され、押出方向に沿う複数の孔のそれぞれに収容される。
【0004】
ダイスタックは、前述したように、押出製品毎、または、ダイスの成形孔の変形等により交換される。したがって、特許文献2のように、ダイスタックの一要素であるダイスリングに複数個のヒータを配置させると、ダイスタックの交換時に、これまで使用されていたダイスタックのヒータに接続される電気的な配線の接続を解除する作業と、これから使用される新たなダイスタックのヒータの配線を接続する作業とが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-007695号公報
【文献】特公平06-059501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上より、本発明は、ダイスタックの交換時における配線に関する作業負担を軽減できるダイカセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ダイスを含むダイスタックを保持して、押出位置と交換位置との間を移動するように構成される、押出プレス装置のダイカセットに関する。
本発明に係るダイカセットは、上方が開放されたU字形をなし、ダイスタックを収容する収容部と、収容部を保持する保持部と、
収容部と保持部との間に設けられる加熱手段と、を備える。
【0008】
本発明に係るダイカセットは、好ましくは、収容部および保持部の一方または双方に設けられる、収容部と保持部との間隔を維持するための間隔維持体を備え、加熱手段は、間隔維持体により維持される間隔に設けられる。
【0009】
本発明に係るダイカセットは、好ましくは、間隔維持体が、収容部および保持部の上方および下方において、収容部と保持部との間隔を維持する。
【0010】
本発明に係る間隔維持体は、好ましくは、収容部の上方の両端に形成される、保持部に支持される一対のフランジ状の支持片と、収容部の下方に向けて形成される、保持部に突き当たる突起と、を備える。
【0011】
本発明に係る収容部の突起は、好ましくは、収容部における押出方向の全長の一部であって、かつ、押出プレス装置の押出ステムの側に形成される。
【0012】
本発明に係るダイカセットは、好ましくは、収容部に収納されるダイスタックの、押出プレス装置の押出ステムの側への移動を拘束するダイスタック保持部をさらに備える。
【0013】
本発明に係るダイスタック保持部は、好ましくは、収容部の、押出プレス装置の押出ステムの側の端部の少なくとも一部に形成される、ダイスタックの側への突条と、収容部の下方に向けて形成され、保持部に形成される係止溝に挿入された状態で係止溝の底面において保持部に突き当たる突起と、を備える。
【0014】
本発明に係る加熱手段は、好ましくは、収容部と保持部との間の間隔に収納可能な形状で構成される、少なくとも1つの鋳込みヒータである。
【0015】
本発明は、以上で説明したダイカセットを備える押出プレス装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイスタックが交換されたとしてもそのまま継続して使用され得るダイカセットに加熱手段が設けられるので、ダイスタックが交換されるときでも、加熱手段に接続される電気的な配線の接続の解除および接続の作業を行う必要がない。したがって、本発明によれば、ダイスタックの交換の際の作業負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る押出プレス装置の概略構成を示す図である。
図2図1の押出プレス装置の成形部およびその近傍を部分的に拡大して示す図である。
図3図1の押出プレス装置におけるダイカセットを示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
図4図2のダイカセットにおける保持部を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
図5図2のダイカセットにおける収容部を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
図6図2のダイカセットに用いられるヒータの一例を示す平面展開図である。
図7】ダイカセットの二つの変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る押出プレス装置1は、図1に示すように、例えばアルミニウム合金、銅合金からなるビレットとも称される押出材EMをダイスを含むダイスタック43より押し出すのに必要な機械的な構成要素を含んでいる。押出プレス装置1は、典型的には油圧により駆動されるが、駆動源である油圧ポンプユニットの記載は省略される。なお、押出プレス装置1において、(F)が記載されている側が前、(B)が記載されている側が後、と定義される。この前後の定義は相対的なものとする。
【0019】
[押出プレス装置1の全体構成]
押出プレス装置1は、図1に示すように、エンドプラテン10と、メインシリンダハウジング12と、メインシリンダ12Aと、を備える。
エンドプラテン10は、メインシリンダハウジング12と対向する側の面において、ダイカセット50(図2参照)を介して、ダイスを含むダイスタック43を支持している。メインシリンダハウジング12は、エンドプラテン10と対向するように配置され、複数のタイロッド14によりエンドプラテン10と連結される。メインシリンダ12Aは、メインシリンダハウジング12の略中央に配置される。
【0020】
また、押出プレス装置1は、メインクロスヘッド13と、メインラム12Bと、を備える。
メインクロスヘッド13は、エンドプラテン10とメインシリンダハウジング12の間に配置され、前端面から突出するように押出ステム15が配置される。メインラム12Bは、メインクロスヘッド13の後端面に一端側が固定され、他端側がメインシリンダ12Aに収納され、メインクロスヘッド13をエンドプラテン10に接近するように前進させる。
【0021】
押出プレス装置1は、複数のサイドシリンダ17と、コンテナ20と、複数のコンテナシリンダ18と、を備える。図1において、サイドシリンダ17とコンテナシリンダ18は、一つだけが示されている。
サイドシリンダ17は、メインシリンダ12Aの周囲に配置される油圧アクチュエータである。サイドシリンダ17は、押出工程においてメインクロスヘッド13をエンドプラテン10に接近するように前進させるか、または、アイドル工程においてエンドプラテン10から離間するように後退させる。サイドシリンダ17は、図示が省略される油圧ポンプユニットから作動油を受けて前進または後退する。
【0022】
ここで、アイドル工程とは、先行する押出工程と後続の押出工程との間の押出加工に直接には拘わらない期間をいう。後述するように、押出工程におけるダイカセット50の位置は押出位置と称され、アイドル工程において、ダイスタック43を交換する場合に、ダイカセット50を押出位置から機外へ移動させる位置は交換位置と称される。
【0023】
コンテナ20は、エンドプラテン10とメインクロスヘッド13との間に配置され、押出材EMを押出材収納部20Aに収納する。
コンテナシリンダ18は、押出工程において、コンテナホルダ19に固定されたコンテナ20をエンドプラテン10に支持される押出用工具であるダイスタック43に押圧させて、コンテナシール力を発生させる油圧アクチュエータである。また、コンテナシリンダ18は、アイドル工程において、コンテナ20をエンドプラテン10から離間するように後退させる。
【0024】
[成形部30:図1および図2
押出プレス装置1は、エンドプラテン10とコンテナ20の間に成形部30を備える。
成形部30は、ダイスタック43と、ダイスタック43を収容するダイカセット50と、を備える。ダイスタック43およびダイカセット50は、主に鉄系の金属材料で構成される。
【0025】
[ダイスタック43:図1図2
ダイスタック43は、特許文献1を引用して説明したように、ダイスリングと、ダイスリングに保持されるダイスと、ダイスリングの内部においてダイスを前後方向に支持するバッカと、ダイスとエンドプラテン10との間においてバッカを前後方向に支持するボルスタ等とから構成されている。ダイスタック43は、図2に示すように、ダイカセット50に収容された状態でエンドプラテン10とコンテナ20とに挟持される。
【0026】
ダイスタック43のダイスには、押出方向に貫通した成形孔43Aが形成されていて、押出材EMはこの成形孔43Aに押し込まれ、この成形孔43Aを通過することで所望する形状の押出形材が形成される。
【0027】
ダイスタック43は、押出製品毎に、また、同じ押出製品でも、長期間の使用によるダイスの成形孔43Aの変形等により交換される。これに対して、次に説明するダイカセット50は、ダイスタック43の交換時以外では、押出プレス装置1の押出位置に据え置かれる。
【0028】
[ダイカセット50:図2図3図4図5
ダイカセット50は、押出材EMの押出方向に対して垂直方向(図2(b))に移動可能に構成されており、エンドプラテン10とコンテナ20との間に配置される押出位置と、この押出位置から押出材EMの押出方向に対して垂直方向に水平移動した交換位置との間で往復移動可能とされる。なお、図1および図2は押出位置(セット位置)に対応する。ダイカセット50を押出位置および交換位置間で移動させる装置は、ダイスライド装置などとも称される。
【0029】
ダイカセット50は、図3に示すように、保持部51と、保持部51に保持されるとともにダイスタック43を上方より収容する収容部61と、を備える。ダイカセット50は、保持部51と収容部61の間に加熱手段であるヒータ80が設けられている。
【0030】
[保持部51:図3図4
図3および図4を参照して、ダイカセット50の保持部51について説明する。
保持部51は、図3および図4に示すように上方(O:オ―)が開放されたU字形の側面視形状を有する本体52を備えている。本体52は、半円の円弧状に形成された内周面を有する保持床53と、この保持床53の幅方向(W)の両端部から上方(O)へ向かって延びる一対の保持腕56,56と、を備えている。
【0031】
保持床53は、その幅方向Wの中央部分に、収容部61に設けられる位置決突起67との係止に関わる係止溝54が形成されている。係止溝54は、平面視した形状が矩形をなしているが、これは一例に過ぎず、位置決突起67の形状に応じてその形状が定められる。保持部51に収容部61が保持されると、位置決突起67の先端が係止溝54の底面55Aに突き当たることで、下方(U)における保持部51と収容部61との間隔Dの維持が図られる。この位置決突起67の先端と底面55Aとの突き当りは、本発明における下方における支持に対応する。また、位置決突起67が係止溝54に挿入されると、位置決突起67が係止溝54の側面55Cに突き当たるので、位置決突起67を介して収容部61は保持部51に対して押出方向および押出方向とは逆向きの移動、すなわち、位置決突起67の長さ方向(L)への移動が拘束される。この移動の拘束は、後述する突条64とともに、ダイスタック43をダイカセット50に留まらせる機能を発揮する。
【0032】
一対の保持腕56,56のそれぞれにおいて、高さが長さ方向(L)に二段階に形成される。つまり、保持腕56は、相対的に高さの低い低部57と、相対的に高さの高い高部58と、を備えている。
一対の低部57,57は、図3に示すように、上方(O)において収容部61の支持を担う。つまり、低部57,57のそれぞれの平坦な上面は、収容部61の支持片66,66を支持する支持面59,59を構成する。支持片66,66は、本発明の間隔維持体の一例である。支持面59,59において支持片66,66を介して収容部61が支持されることにより、保持部51と収容部61との間に所定の間隔Dが維持される。この支持面59,59における支持片66,66の支持は、本発明における上方における支持に対応する。間隔Dは、図3(c)に示すように、一方の保持腕56から他方の保持腕56に亘って設けられる。つまり、間隔Dは、高さ方向(H)および幅方向(W)の両方向に亘って維持される。
【0033】
保持部51は、後述する加熱手段80の配線85を貫通させる電線通路60が一方の保持腕56に形成されている。電線通路60は、保持腕56を幅方向(W)に貫通して形成される。
【0034】
[収容部61:図3図5
次に、図3および図5を参照して、ダイカセット50の収容部61について説明する。
ダイスを含むダイスタック43がその上方から収容される収容部61は、保持床53に対応し、半円の円弧状に形成された内周面を有する保持床63と、この保持床63の幅方向(W)の両端部から上方(O)へ向かって延びる、一対の保持腕56,56に対応する一対の保持腕65,65と、を備えている。それぞれの保持腕65,65の上端部には、幅方向(W)の外側に向けてフランジ状に延びる支持片66,66が備えられている。収容部61が保持部51の所定位置に配置されると、支持片66,66は保持部51の低部57,57の上面にある支持面59,59にそれぞれ支持される。
そして、収容部61の保持床63に形成された、半円の円弧状に形成された内周面の半径が、ダイスタック43の外径と略等しく構成されることにより、ダイスタック43が、収容部61に対して幅方向(W)に位置決めされる。ダイスタック43の外径とは、例えば、ダイス等が収納されるダイスリングの外径をいう。
【0035】
保持床63および保持腕65,65は、保持部51の保持床53および保持腕56,56と同等の長さ方向(L)の寸法を有する。また、支持片66,66は保持部51の低部57,57に対応する長さ方向(L)の寸法を有する。
【0036】
一方、図1および図2に示すように、ダイスタック43は、その全長の一部で、且つ、コンテナ20側に小径部を有することが一般的である。この小径部に対して、先に説明したダイスタック43の外径を大径部の外径とする。ダイスタック43の外径とは、例えば、ダイス等が収納されるダイスリングの外径をいう。
ダイスタック43は、その小径部を、後述する環状の突条64の前縁FEからわずかに突出させた状態で、ダイカセット50の収容部61に収容される。そして、コンテナ20によるダイスタック43のエンドプラテン10側への押圧により、ダイカセット50ではなく、ダイスタック43のみが、ダイカセット50に収容された状態でエンドプラテン10側にわずかに移動・押圧される。その結果、ダイスタック43の端面がエンドプラテン10と密着し、コンテナシール力が発生する。
【0037】
収容部61は、保持床63から保持腕65,65の途中までにかけて、環状の突条64を備える。突条64は、後述するように、ダイスタック43の保持のために備えられている。突条64は、保持床63と保持腕65,65のそれぞれの表面から所定量だけ突出し、かつ、保持床63と保持腕65,65のそれぞれの前縁FEから長さ方向Lの所定範囲に形成されている。突条64は、本発明のダイスタック保持部の一例である。
収容部61は、突条64がコンテナ20の側になるように保持部51に配置され、先に説明したダイスタック43の小径部および大径部との段差部分の大径部の面の一部と、突条64の内側面と、が接触することにより、ダイカセット50(収容部61)に対するダイスタック43の押出方向とは逆向きの移動が拘束される。この移動の拘束は、ダイスタック43をダイカセット50に留まらせる機能を発揮する。
【0038】
収容部61は、保持床63に下方(U)に向けて所定量だけ突出する位置決突起67が設けられている。位置決突起67は、収容部61における押出方向の全長の一部であって、かつ、押出プレス装置1の押出ステム15の側に形成される。位置決突起67は、高さ方向(H)における収容部61と保持部51の間隔を維持することに加え、平面方向における収容部61と保持部51との相対的な位置関係を維持するために備えられる。つまり、位置決突起67は本発明の間隔維持体の一例であるのに加えて、本発明のダイスタック保持部の一例でもある。この収容部61の機能は、位置決突起67が保持部51の係止溝54に挿入されることで発揮される。
位置決突起67は、一例として平面視した形状が矩形をなしているが、多角形など、位置決突起67の目的を達成できる限りその形状は任意である。また、位置決突起67は、前縁FEから長さ方向(L)に微小距離だけ離れた位置に形成されているが、前縁FEに連なって形成されていてもよい。
また、位置決突起67は、収容部61の突出部位として収容部61と一体的に形成されてもよい。一方、位置決突起67を収容部61とは別部材として形成し、座繰り孔でボルトでの固定時に、ボルトのヘッドが突出しない構成として、収容部61の外周面下方に固定する形態であってもよい。
【0039】
[保持部51と収容部61の組み合わせ:図3
次に、保持部51と保持部51の所定位置に保持される収容部61との関係について説明する。収容部61が保持部51に保持されている状態を、保持部51と収容部61とが組み合わせられていると称する。
【0040】
保持部51と収容部61とが組み合わせられていると、保持部51と収容部61の高さ方向(H)における間隔Dが維持される。この間隔の維持は、相対的に高い位置と相対的に低い位置の二か所で維持されるようになっている。
高い位置における間隔の維持は、収容部61の支持片66,66が保持部51の低部57,57の支持面59,59に載せられることで達成される。つまり、保持部51は、支持片66,66と低部57,57との支持関係により、保持部51と収容部61との高さ方向(H)の間隔Dが維持される。
低い位置における間隔の維持は、収容部61の位置決突起67が係止溝54に挿入され、位置決突起67の底面が、係止溝54の底面55Aに突き当たることで達成される。つまり、位置決突起67の突出量が係止溝54の深さよりも大きいので、位置決突起67の周囲において、保持部51と収容部61の間には高さ方向(H)の間隔Dが設けられる。
【0041】
次に、保持部51と収容部61とが組み合わせられていると、保持部51と収容部61の幅方向(W)における間隔Dが維持される。この間隔Dの維持は、収容部61の位置決突起67が保持部51の係止溝54に隙間なく挿入されると、位置決突起67の幅方向(W)への移動が係止溝54の側面55Bに規制されることを通じて達成される。
収容部61の位置決突起67が保持部51の係止溝54に隙間なく挿入されることは、保持部51と収容部61の平面方向の相対的な位置関係の維持にも役立つ。この位置関係の維持は、収容部61の位置決突起67が保持部51の係止溝54に隙間なく挿入されることに基づいている。
【0042】
以上のように、相対的な位置関係が維持されるように組み合わされる保持部51と収容部61との間の空間はヒータ80の収容空隙Gとして機能する。収容空隙Gは、ダイカセット50の一要素である。
【0043】
[ヒータ80:図3図6
加熱手段としてのヒータ80は、図3に示すように、正面視するとU字状の形態を有しており、保持部51と収容部61の間の収容空隙Gに設けられる。ヒータ80は、ダイスタック43の温度低下を抑えるために設けられる。収容空隙Gは連なった所定の体積を有するとともに、この収容空隙Gは高さ方向(H)および幅方向(W)の双方においてその寸法が間隔Dと一致する。したがって、押出工程後に、ダイスタック43端面に付着したディスカードを、後述する切断装置90により除去する工程において、ダイスタック43が下方(U)に大きな力を受けたとしても、間隔Dが維持されて、ヒータ80は収容空隙Gの内部に安全に収容される。
【0044】
ヒータ80は、図6(a)に示すように、発熱要素81と、発熱要素81を収容して保持する熱伝達要素83と、熱伝達要素83に電力を供給する配線85と、を備えている。なお、図6(a),(b)は、平面視したヒータ80の湾曲部分を伸ばして展開した図である。
【0045】
発熱要素81は、例えばシーズヒータから構成され、熱伝達要素83の内部を蛇行するように配列されている。発熱要素81は、ここでは1本のシーズヒータから構成されるので、ヒータ80が備える配線85は2本で足りる。
熱伝達要素83は、熱伝導性に優れる金属部材、例えばアルミニウム合金鋳物から構成される。熱伝達要素83が鋳物からなるヒータ80は、鋳込みヒータである。鋳込みヒータの代替として埋め込みヒータを適用することもできる。埋め込みヒータは、熱伝達要素83に溝を形成しておき、この溝と同じ形態に形成されたシーズヒータを溝に埋め込むことで得られる。鋳込みヒータと埋め込みヒータを含めて組み込みヒータと称される。
【0046】
[押出プレス装置1の動作]
次に、押出プレス装置1の動作について簡単に説明する。
押出プレス装置1により押出材EMを押し出すには、まずダイスを組み込んだダイスタック43を例えば400℃程度に加熱しておき、その状態で交換位置にあるダイカセット50の収容部61に上方から収容する。そして、ダイカセット50を押出位置に移動させ、コンテナ20をダイスタック43に押圧させてコンテナシール力を発生させる。その状態でメインシリンダ12Aによって押出ステム15を駆動してコンテナ20の押出材収納部20Aに収納された押出材EMをダイスタック43に押圧させる。そして、ダイスタック43の成形孔43Aを通して押出製品が押し出される。
この押出工程を通じてヒータ80を加熱させる。そうすると、押出材EMを連続押出しても、ダイスタック43および押出材EMの温度低下を抑えることができ、安定した形状の押出製品を得ることができる。
【0047】
押出工程後にコンテナ20をダイスタック43より後退させて、ダイスタック43の前面に残っている押出材EMの残部としてのディスカードを露出させる。このとき、ディスカードはコンテナ20の内周面に密着しており、また、このディスカードはダイスタック43の成形孔43Aを介して押出製品と連続している。そのため、コンテナ20内のディスカードとともにダイスタック43に後退方向、つまり押出方向とは逆向きの方向の力が作用する。これに対抗してダイスタック43をダイカセット50の内部で保持させるのに突条64および位置決突起67が機能する。つまり、コンテナ20の後退時に、収容部61の突条64にダイスタック43が係合されるのに加えて、突条64が形成される収容部61の位置決突起67が保持部51の係止溝54に挿入され、位置決突起67が係止溝54の側面55Cに突き当たるので、位置決突起67の長さ方向(L)への移動が規制されて、ダイスタック43はダイカセット50に留まる。
【0048】
コンテナ20を後退させたのち、切断装置90(図2参照)によりディスカードを切断して押出製品より切り離す。この切り離しの工程において、ダイカセット50は、シャー刃によるせん断に伴って下向きに大きな力を受ける。ダイカセット50はこの下向きの大きな力を、ダイカセット50の上方においては、収容部61の支持片66が、下方においては、収容部61の位置決突起67が、それぞれ、保持部51の対応する部位に支持され、間隔Dが維持できるので、保持部51と収容部61の間のヒータ80に過剰な力は加わらない。
【0049】
[押出プレス装置1の効果]
以下、本実施形態に係る押出プレス装置1が奏する効果を説明する。
<ヒータ80がダイカセット50に設けられることりよる効果>
押出プレス装置1は、ヒータ80がダイカセット50に設けられる。ダイスタック43の交換が必要なときにでも、ダイカセット50はそのまま継続して使用される。よって、ダイスタック43が交換されるときでも、加熱手段としてのヒータ80に接続される電気的な配線の接続の解除および接続の作業を行う必要がない。したがって、本実施形態によれば、ダイスタックの交換の際の作業負担を軽減できる。
【0050】
<収容空隙Gが維持されることによる効果>
次に、保持部51と収容部61の間である収容空隙Gの間隔Dは、外力が加わっても維持される。つまり、支持片66,66が低部57,57のそれぞれの支持面59,59に支持されるのに加えて、位置決突起67が係止溝54の底面55Aおよび側面55Bに突き当たる。これにより、外力が加わったとしても間隔Dは高さ方向(H)および幅方向(W)に維持される結果、ヒータ80は負荷を受けることなく保持される。また、これにより、加熱効率を向上させるために、ヒータ80の形状を収容空隙Gの形状に対応する所定の形状にしても、ヒータ80の破損を回避することができる。
【0051】
<一体物のヒータ80が使用されることによる効果>
押出プレス装置1は、ダイカセット50を保持部51と収容部61とに区分することで、保持部51と収容部61の間に間隔Dを備える構造を有する。これにより、保持部51および収容部61の間に連なった所定の体積を有する収容空隙Gが確保される。したがって、本実施形態に係る押出プレス装置1は、この収容空隙Gに対応する体積の一体物としてのヒータ80を配置させることができる。これにより、押出プレス装置1によれば、所定の保守期間を経過した後にヒータ80を交換する際の作業負担が軽減される。
【0052】
<配線85の数が少ないことによる効果>
押出プレス装置1は、一体物としてのヒータ80を適用でき、このヒータ80は発熱要素81に対して接続される電気的な配線85が二本と少ない。したがって、押出プレス装置1によれば、押出開始時と押出終了時におけるダイカセット50の移動に伴う配線85の取り回しが容易であり、熱伝達要素83の可動部への挟み込み、噛み込み、高音部との接触による溶損等による断線の虞を避けることができる。例えば、特許文献2のように、棒状のヒータを8本も使用すると、これに対応する配線は16本になるので、その取り回しが容易とは言えず、また、可動部への挟み込み、噛み込み、高音部との接触による溶損等による断線の虞が大きくなる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0054】
[ヒータ80の変形例]
先に説明したヒータ80は、発熱要素81を一つだけ備えているが、本発明は図6(b)に示すように、二つの発熱要素81A,81Bを一つの熱伝達要素83に収容させることもできる。このヒータ80は、発熱要素81A,81Bのそれぞれに合わせて四本の配線85A,85Bが接続される。この二つの発熱要素81A,81Bを備えるヒータ80であっても、配線85A,85Bは四本であるから、断線の虞は小さい。
【0055】
[間隔Dの維持のための要素の変形例]
先に説明した実施形態においては、収容部61に支持片66,66および位置決突起67を設ける例を説明したが。本発明はこれに限らず、他の間隔Dの維持のための要素を設けることができる。
以下に示す他の間隔Dの維持のための要素は、保持部51と収容部61の押出方向および押出方向とは逆向きの方向(長さ方向(L))における相対的な位置ずれを抑える機能を併せ持つことができる。
【0056】
例えば、図7(a)が示す変形例は、収容部61の保持腕65,65のそれぞれに係止溝68,68を形成する。この係止溝68,68のそれぞれに挿入される位置決突起69,69を保持部51の保持腕56,56に設ける。係止溝68,68に位置決突起69,69が挿入されることにより、保持部51と収容部61は押出方向および押出方向とは逆向きの方向(長さ方向(L))における相対的な位置ずれを起こさない。すなわち、位置決突起69も、本発明の間隔維持体の一例であるのに加えて、本発明のダイスタック保持部の一例でもある。
また、図7(a)の変形例は、支持片66,66を有しないが、保持部51の保持床53から上方(O)に突き出す位置決突起71を備えることにより、収容部61を高さ方向(H)に支持する。位置決突起71は本発明の間隔維持体の一例である。
【0057】
次に、図7(b)の変形例は、保持部51の保持床53から上方(O)に突き出す位置決突起73を設けるとともに、収容部61の保持床63に位置決突起73が挿入される係止溝75を設ける。これは、先に説明した位置決突起67と係止溝54と、設けられる部材が逆の関係にある。位置決突起73も、本発明の間隔維持体の一例であるのに加えて、本発明のダイスタック保持部の一例でもある。
【0058】
一方、本発明のダイスタック保持部の一例として、位置決突起67および係止溝54、位置決突起69および係止溝68、位置決突起73および係止溝75、突条64を説明した。しかしながら、これらのダイスタック保持部の代わりに、保持部51のコンテナ20側の端面に、突条64が形成された、従来のダイカセットと同様のU字形状(馬蹄形状)のホースシュー(図示せず)を取り付け、収容部61およびダイスタック43の、押出方向とは逆向きの移動を拘束する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 押出プレス装置
10 エンドプラテン
12 メインシリンダハウジング
12A メインシリンダ
12B メインラム
13 メインクロスヘッド
14 タイロッド
15 押出ステム
17 サイドシリンダ
18 コンテナシリンダ
19 コンテナホルダ
20 コンテナ
20A 押出材収納部
30 成形部
43 ダイスタック
43A 成形孔
50 ダイカセット
51 保持部
52 本体
53 保持床
54,68,75 係止溝
55A 底面
55B 側面
55C 側面
56 保持腕
57 低部
58 高部
59 支持面
60 電線通路
61 収容部
63 保持床
64 突条
65 保持腕
66 支持片
67,69,73 位置決突起
80 ヒータ
81,81A,81B 発熱要素
83 熱伝達要素
85,85A,85B 配線
90 切断装置
EM 押出材
FE 前縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7