(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】車載用配線モジュールおよびフレキシブル基板
(51)【国際特許分類】
H01M 50/519 20210101AFI20240402BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20240402BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20240402BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20240402BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20240402BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240402BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240402BHJP
H01M 50/209 20210101ALN20240402BHJP
【FI】
H01M50/519
H01G2/06 C
H01G4/38 A
H01M50/298
H01M50/503
H01M50/507
H05K1/02 B
H01M50/209
(21)【出願番号】P 2020143403
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 暢之
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-210711(JP,A)
【文献】特開2019-021454(JP,A)
【文献】特開2001-326427(JP,A)
【文献】国際公開第2009/037796(WO,A1)
【文献】特開2011-061922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/502 - 526
H01G 2/06
H01G 4/38
H05K 1/02
H01M 50/284
H01M 50/209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を有する複数の蓄電素子に取り付けられる車載用配線モジュールであって、
前記電極端子に接続されるバスバーと、
前記バスバーに電気的に接続されるフレキシブル基板と、を備え、
前記フレキシブル基板は、折曲部で折り曲げられた折返構造を有し、
前記折返構造は、前記折曲部で折り曲げられる前の展開状態において、前記フレキシブル基板の外縁から凸状に設けられた凸部と、前記凸部が挿通されるスリットと、を有し、
前記折曲部は、前記展開状態で、前記フレキシブル基板における前記凸部と前記スリットとの間に配され、
前記凸部が前記スリットに挿通されることで、前記フレキシブル基板が前記折曲部で折り曲げられた状態から前記展開状態に復帰変形することが抑制されている、車載用配線モジュール。
【請求項2】
1つの前記折返構造には、前記凸部および前記スリットは、それぞれ一対設けられている、請求項1に記載の車載用配線モジュール。
【請求項3】
前記フレキシブル基板は、第1方向にのびる細長い形状を有し、
前記折返構造は、前記展開状態で前記第1方向に並行してのびる一対の長尺部と、前記一対の長尺部を連結する連結部と、一対の前記折曲部と、を備え、
前記一対の長尺部のうちいずれか一方には、前記凸部が設けられ、
前記一対の長尺部のうち他方には、前記スリットが設けられ、
前記折返構造における前記一対の折曲部の折り目は、互いに垂直に配されている、請求項1または請求項2に記載の車載用配線モジュール。
【請求項4】
前記一対の長尺部は、前記第1方向に直交する前記フレキシブル基板の短辺方向における同一の位置に配されることで前記第1方向にのびる同一直線上に並んでいる、請求項3に記載の車載用配線モジュール。
【請求項5】
前記フレキシブル基板は、第1方向にのびる細長い形状を有し、
前記スリットは、前記第1方向に長く形成され、
前記スリットの前記第1方向における長さは、前記凸部の前記第1方向における長さよりも大きく設定されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車載用配線モジュール。
【請求項6】
折曲部で折り曲げられた状態で車載用配線モジュールに組み込まれるフレキシブル基板であって、
前記折曲部で折り曲げられる前の展開状態において、前記フレキシブル基板の外縁から凸状に設けられた凸部と、前記凸部が挿通されるスリットと、を有し、
前記折曲部は、前記展開状態で、前記凸部と前記スリットとの間に配され、
前記凸部が前記スリットに挿通されることで、前記折曲部で折り曲げられた状態から前記展開状態に復帰変形することが抑制されている、フレキシブル基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用配線モジュールおよびフレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される電池集合体に組み付けられるバスバモジュールとして、従来、特開2020-14369号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。特許文献1に記載のバスバモジュールは、複数の単電池の電極に接続されるバスバと、バスバに接続される配線パターンを有するフレキシブル基板と、を備えている。フレキシブル基板は、本線と、本線からのびる第1支線部と、第1支線部からのびて、バスバとの接続部を有する第2支線部と、を備えている。第2支線部には、第1折り返し部および第2折り返し部が設けられ、第2支線部は、全体としてS字形状に屈曲している。これにより、第2支線部は伸縮可能とされ、バスバおよび単電池の製造公差や組み付け誤差等を吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように折り返されたフレキシブル基板を製造し、組立工場に搬送する場合には、変形し、本来の形状が保持できないおそれがある。また、製造工程によっては、フレキシブル基板の位置決めが難しく、他の部材とフレキシブル基板との組み付けがスムーズに行えない場合が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の車載用配線モジュールは、電極端子を有する複数の蓄電素子に取り付けられる車載用配線モジュールであって、前記電極端子に接続されるバスバーと、前記バスバーに電気的に接続されるフレキシブル基板と、を備え、前記フレキシブル基板は、折曲部で折り曲げられた折返構造を有し、前記折返構造は、前記折曲部で折り曲げられる前の展開状態において、前記フレキシブル基板の外縁から凸状に設けられた凸部と、前記凸部が挿通されるスリットと、を有し、前記折曲部は、前記展開状態で、前記フレキシブル基板における前記凸部と前記スリットとの間に配され、前記凸部が前記スリットに挿通されることで、前記フレキシブル基板が前記折曲部で折り曲げられた状態から前記展開状態に復帰変形することが抑制されている、車載用配線モジュールである。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、折り曲げられた状態で変形しにくいフレキシブル基板を備えた車載用配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる蓄電モジュールが搭載された車両を示す模式図である。
【
図3】
図3は、蓄電モジュールの要部拡大平面図である。
【
図4】
図4は、蓄電モジュールの要部拡大斜視図である。
【
図5】
図5は、フレキシブル基板の第1折返構造の斜視図である。
【
図6】
図6は、フレキシブル基板の第1折返構造の展開状態を示す平面図である。
【
図7】
図7は、フレキシブル基板の第1折返構造を形成する工程を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、フレキシブル基板の第1折返構造の平面図である。
【
図9】
図9は、フレキシブル基板の第2折返構造の斜視図である。
【
図10】
図10は、フレキシブル基板の第2折返構造の展開状態を示す平面図である。
【
図11】
図11は、フレキシブル基板の第2折返構造を形成する工程を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、フレキシブル基板の第2折返構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0009】
(1)本開示の車載用配線モジュールは、電極端子を有する複数の蓄電素子に取り付けられる車載用配線モジュールであって、前記電極端子に接続されるバスバーと、前記バスバーに電気的に接続されるフレキシブル基板と、を備え、前記フレキシブル基板は、折曲部で折り曲げられた折返構造を有し、前記折返構造は、前記折曲部で折り曲げられる前の展開状態において、前記フレキシブル基板の外縁から凸状に設けられた凸部と、前記凸部が挿通されるスリットと、を有し、前記折曲部は、前記展開状態で、前記フレキシブル基板における前記凸部と前記スリットとの間に配され、前記凸部が前記スリットに挿通されることで、前記フレキシブル基板が前記折曲部で折り曲げられた状態から前記展開状態に復帰変形することが抑制されている、車載用配線モジュールである。
【0010】
このような構成によると、折曲部で折り曲げられたフレキシブル基板が展開状態に復帰変形することを抑制できるため、車載用配線モジュールの組み付けが容易になる。
【0011】
(2)1つの前記折返構造には、前記凸部および前記スリットは、それぞれ一対設けられていることが好ましい。
【0012】
このような構成によると、折曲部で折り曲げられたフレキシブル基板が展開状態に復帰変形することをさらに効果的に抑制できる。
【0013】
(3)前記フレキシブル基板は、第1方向にのびる細長い形状を有し、前記折返構造は、前記展開状態で前記第1方向に並行してのびる一対の長尺部と、前記一対の長尺部を連結する連結部と、一対の前記折曲部と、を備え、前記一対の長尺部のうちいずれか一方には、前記凸部が設けられ、前記一対の長尺部のうち他方には、前記スリットが設けられ、前記折返構造における前記一対の折曲部の折り目は、互いに垂直に配されていることが好ましい。
【0014】
このような構成によると、折曲部で折り曲げられたフレキシブル基板の第1方向における長さを、展開状態のフレキシブル基板の第1方向における長さより大きくすることができる。このため、例えば、蓄電素子が第1方向に多数積層されている場合でも、車載用配線モジュールを製造しやすい。
【0015】
(4)前記一対の長尺部は、前記第1方向に直交する前記フレキシブル基板の短辺方向における同一の位置に配されることで前記第1方向にのびる同一直線上に並んでいることが好ましい。
【0016】
このような構成によると、一対の長尺部は第1方向にのびる同一直線上に並ぶため、フレキシブル基板を細長い形状に形成することができる。このため、フレキシブル基板の短辺方向における車載用配線モジュールの長さを小さくすることができる。
【0017】
(5)前記フレキシブル基板は、第1方向にのびる細長い形状を有し、前記スリットは、前記第1方向に長く形成され、前記スリットの前記第1方向における長さは、前記凸部の前記第1方向における長さよりも大きく設定されていることが好ましい。
【0018】
このような構成によると、凸部はスリットに挿通された状態で第1方向に摺動できるため、第1方向における蓄電素子やバスバー等の製造公差および車載用配線モジュールと複数の蓄電素子との組み付け公差の吸収が可能となる。
【0019】
(6)また、本開示のフレキシブル基板は、折曲部で折り曲げられた状態で車載用配線モジュールに組み込まれるフレキシブル基板であって、前記折曲部で折り曲げられる前の展開状態において、前記フレキシブル基板の外縁から凸状に設けられた凸部と、前記凸部が挿通されるスリットと、を有し、前記折曲部は、前記展開状態で、前記凸部と前記スリットとの間に配され、前記凸部が前記スリットに挿通されることで、前記折曲部で折り曲げられた状態から前記展開状態に復帰変形することが抑制されている、フレキシブル基板である。
【0020】
このような構成によると、折曲部で折り曲げられたフレキシブル基板が展開状態に復帰変形することを抑制することができるため、例えば搬送の際等にフレキシブル基板が変形しにくい。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<実施形態>
本開示の実施形態について、
図1から
図12を参照しつつ説明する。本実施形態の蓄電モジュール10は、例えば、
図1に示すように、車両1に搭載される蓄電パック2に適用される。蓄電パック2は、電気自動車、またはハイブリッド自動車等の車両1に搭載されて、車両1の駆動源として用いられる。以下の説明においては、複数の部材については一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0023】
図1に示すように、車両1の中央付近には蓄電パック2が配設されている。車両1の前部にはPCU3(Power Control Unit)が配設されている。蓄電パック2とPCU3とは、ワイヤーハーネス4によって接続されている。蓄電パック2とワイヤーハーネス4とは図示しないコネクタによって接続されている。蓄電パック2は複数の蓄電素子11を備えた蓄電モジュール10を有する。蓄電モジュール10(および車載用配線モジュール20)は、任意の向きで搭載可能であるが、以下では、
図1を除き、矢線Zの示す方向を上方、矢線Xの示す方向を前方、矢線Yの示す方向を左方として説明する。また、本実施形態では、第1方向は左右方向に対応している。
【0024】
蓄電モジュール10は、
図2に示すように、左右方向に並べられた複数の蓄電素子11(本実施形態では36個)と、複数の蓄電素子11の上面に装着される車載用配線モジュール20と、を備える。
【0025】
図2に示すように、複数の蓄電素子11は、18個ずつに二分され、左右方向に間隔を空けて配置されている。18個の蓄電素子11は左右方向に積層され、エンドプレート13により左端および右端から挟まれている。エンドプレート13は、蓄電素子11と反対側の側面に固定部14を有している。図示しないが、複数の蓄電素子11は、固定部14によって蓄電パック2内に固定されるようになっている。
図3に示すように、蓄電素子11は、内部に図示しない蓄電要素が収容された扁平な直方体状であって、上面に正極および負極の電極端子12A,12Bを有する。
【0026】
[車載用配線モジュール]
図2に示すように、車載用配線モジュール20は、フレキシブル基板21と、フレキシブル基板21に接続されるバスバー40と、フレキシブル基板21およびバスバー40を保持するプロテクタ50と、を備える。
図3に示すように、車載用配線モジュール20は、複数の蓄電素子11の前側の電極端子12A,12Bに取り付けられている。なお、複数の蓄電素子11の後側の電極端子12A,12Bに取り付けられる車載用配線モジュールは、車載用配線モジュール20と同等の構成を有するため、図示および説明を省略する。
【0027】
[フレキシブル基板]
フレキシブル基板21は、可撓性を有するシート状の基板であり、
図2に示すように、左右方向にのびる細長い形状をなしている。図示しないが、フレキシブル基板21は、絶縁性の合成樹脂からなるベースフィルムと、ベースフィルムに配索される導電路と、を有する。ベースフィルムおよび導電路は、さらに絶縁性のオーバーレイフィルムや塗膜等からなる絶縁層により覆われている。ベースフィルムや絶縁層の材料としては、例えばポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)等が用いられる。導電路は、例えば銅または銅合金などの金属からなり、導電性を有している。
【0028】
図3に示すように、フレキシブル基板21は、バスバー40側に突出して設けられるバスバー接続部22を有している。バスバー接続部22の下面には、導電路の端部に設けられるランドが形成されており(図示せず)、ランドとバスバー40とが半田付け等で電気的に接続されている。導電路は、フレキシブル基板の端部に設けられたコネクタ(図示せず)に接続されており、このコネクタは、PCU3に接続されるようになっている。
【0029】
[折返構造、第1折返構造、第2折返構造]
図3に示すように、フレキシブル基板21には、折り曲げられた部分構造が複数設けられており、折返構造23とされている。複数の折返構造23は、2種類の異なる形状を有する第1折返構造23A(折返構造の一例、
図5参照)および第2折返構造23B(折返構造の一例、
図9参照)を有する。第1折返構造23Aは、後述するプロテクタ50の可撓部53の後方に配されている。第2折返構造23Bは、右側に配された18個の蓄電素子11の左端部に配されている。
図2に示すように、フレキシブル基板21は、4つの第1折返構造23Aと、1つの第2折返構造23Bと、を備えている。
【0030】
[第1折返構造における凸部]
図6は、フレキシブル基板21が折り曲げられ、第1折返構造23Aが形成される前の展開状態を示している。
図6に示すように、第1折返構造23Aは、一対の凸部24A,24Bと、一対のスリット25A,25Bと、凸部24A,24Bおよびスリット25A,25Bの間に配された一対の折曲部26,27と、を有する。凸部24Aは、フレキシブル基板21の外縁E1から前方に向かって凸状に設けられ、凸部24Bは、フレキシブル基板21の外縁E2から後方に向かって凸状に設けられている。一対の凸部24A,24Bは、左右方向における同じ位置に配されている。凸部24Aはフレキシブル基板21の前側に配され、凸部24Bはフレキシブル基板21の後側に配されている。
【0031】
[第1折返構造におけるスリット]
図6に示すように、一対のスリット25A,25Bは、フレキシブル基板21に上下方向に貫通形成され、左右方向に細長い形状をなしている。一対のスリット25A,25Bは、左右方向における同じ位置に配されている。スリット25Aはフレキシブル基板21の前側に配され、スリット25Bはフレキシブル基板21の後側に配されている。スリット25Aの孔縁部の前側部分は、受け部28Aとされ、スリット25Bの孔縁部の後側部分は、受け部28Bとされている。
【0032】
[第1折返構造における折曲部]
図6に示すように、折曲部26は凸部24A,24B側に、折曲部27はスリット25A,25B側に設けられている。折曲部26,27の折り目は、前後方向にのびている。
図7に示すように、フレキシブル基板21は、折曲部26で山折りされ、折曲部27で谷折りされるようになっている。ここで、山折りとは、折り目が、折り曲げられるフレキシブル基板21の外側にくるようにフレキシブル基板21を折り曲げることであり、谷折りとは、折り目が、折り曲げられるフレキシブル基板21の内側にくるようにフレキシブル基板21を折り曲げることである。凸部24A,24Bを有する部分が上側に配されるように、フレキシブル基板21は折曲部26,27で折り曲げられる。
【0033】
図5および
図8に示すように、凸部24Aはスリット25Aの左右中央部に配され、上方からスリット25Aに挿通されている。スリット25Aに挿通された凸部24Aの先端部は、受け部28Aの下方に配されている。同様にして、凸部24Bは、スリット25Bに挿通され、受け部28Bの下方に配される。折曲部26,27には、折り曲げられた状態から展開状態に復帰しようとする反力が働くが、凸部24A,24Bはスリット25A,25Bに挿通され、受け部28A,28Bに引掛けられているため、フレキシブル基板21が折曲部26,27で折り曲げられた状態(
図5および
図8参照)から展開状態(
図6参照)に復帰変形することが抑制されている。
【0034】
図8に示すように、スリット25A,25Bの左右方向における長さLS1は、凸部24A,24Bの左右方向における長さLC1よりも大きく設定されている。これにより、凸部24A,24Bは、スリット25A,25Bの内側に挿通された状態で左右方向に摺動可能とされており、したがって、第1折返構造23Aは左右方向に伸縮が可能な構成となっている。
【0035】
[長尺部]
図10は、フレキシブル基板21が折り曲げられ、第2折返構造23Bが形成される前の展開状態を示している。
図10に示すように、第2折返構造23Bは、展開状態で左右方向に並行してのびる一対の長尺部29,30と、一対の長尺部29,30を連結する連結部31と、一対の折曲部32,33と、を有する。長尺部29には、一対の凸部34A,34Bが設けられている。長尺部30には、一対のスリット35A,35Bが設けられている。
【0036】
[第2折返構造における凸部]
図10に示すように、凸部34Aは、フレキシブル基板21の外縁E3から後方に向かって凸状に設けられ、凸部34Bは、フレキシブル基板21の外縁E4から前方に向かって凸状に設けられている。一対の凸部34A,34Bは、左右方向における同じ位置に配されている。凸部34Aは長尺部29の後側に配され、凸部34Bは長尺部29の前側に配されている。なお、折り曲げられた第2折返構造23Bにおいては、長尺部29の前後が反転するため、
図9および
図12に示すように、凸部34Aはフレキシブル基板21の前側に配され、凸部34Bはフレキシブル基板21の後側に配されている。
【0037】
[第2折返構造におけるスリット]
図10に示すように、一対のスリット35A,35Bは、フレキシブル基板21(長尺部30)に上下方向に貫通形成され、左右方向に細長い形状をなしている。一対のスリット35A,35Bは、左右方向における同じ位置に配されている。スリット35Aは長尺部30の前側に配され、スリット35Bは長尺部30の後側に配されている。スリット35Aの孔縁部の前側部分は、受け部36Aとされ、スリット35Bの孔縁部の後側部分は、受け部36Bとされている。
【0038】
[第1折返構造における折曲部]
図10に示すように、一対の折曲部32,33は、凸部34A,34Bおよびスリット35A,35Bの間に配されている。折曲部32は長尺部29に、折曲部33は連結部31に設けられている。折曲部32の折り目は、前後方向にのびている。折曲部33の折り目は、左右方向にのびている。すなわち、一対の折曲部32,33の折り目は互いに垂直に配されている。
【0039】
図11に示すように、フレキシブル基板21は、折曲部32で山折りされ、折曲部33で谷折りされるようになっている。長尺部29が上側に配されるように、フレキシブル基板21は折曲部32,33で折り曲げられる。
図9および
図12に示すように、折曲部32,33で折り曲げられたフレキシブル基板21において、一対の長尺部29,30は、左右方向に直交するフレキシブル基板21の短辺方向(すなわち前後方向)における同一の位置に配されることで、左右方向にのびる同一直線上に並んでいる。
【0040】
図9および
図12に示すように、凸部34Aはスリット35Aの左右中央部に配され、上方からスリット35Aに挿通されている。スリット35Aに挿通された凸部34Aの先端部は、受け部36Aの下方に配されている。同様にして、凸部34Bは、スリット35Bに挿通され、受け部36Bの下方に配される。折曲部32,33には、折り曲げられた状態から展開状態に復帰しようとする反力が働くが、凸部34A,34Bはスリット35A,35Bに挿通され、受け部36A,36Bに引掛けられているため、フレキシブル基板21が折曲部32,33で折り曲げられた状態(
図9および
図12参照)から展開状態(
図10参照)に復帰変形することが抑制されている。
【0041】
図12に示すように、スリット35A,35Bの左右方向における長さLS2は、凸部34A,34Bの左右方向における長さLC2よりも大きく設定されている。これにより、凸部34A,34Bは、スリット35A,35Bの内側に挿通された状態で左右方向に摺動可能とされており、したがって、第2折返構造23Bは左右方向に伸縮が可能な構成となっている。
【0042】
第2折返構造23Bにおいて、
図10に示す展開状態では、一対の長尺部29,30は連結部31から右方にのびている。すなわち、フレキシブル基板21の左端部には、連結部31が配されている。一方で、
図12に示す折曲部32,33で折り曲げられた状態では、長尺部29は左方にのび、長尺部30は右方にのびている。すなわち、フレキシブル基板21の左端部には、連結部31より左方に長尺部29がのびて配されている。したがって、第2折返構造23Bを形成することで、折り曲げられた状態のフレキシブル基板21(
図12参照)を、展開状態のフレキシブル基板21(
図10参照)より左右方向に長く設けることが可能である。このため、第2折返構造23Bを有するフレキシブル基板21は、蓄電素子11の積層方向に長く形成される車載用配線モジュール20に適用しやすい。本実施形態においては、
図2に示すように、第2折返構造23Bは車載用配線モジュール20の左右方向中央部付近に位置しており、第2折返構造23Bにおいて折り曲げられたフレキシブル基板21は、展開状態のものに比べて2倍程度長くなっていることになる。
【0043】
[バスバー]
図3に示すように、バスバー40は、3個で1組とされる蓄電素子11を並列して接続するための部材であって、導電性を有する金属板材からなる。バスバー40を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。バスバー40は、全体として長方形の板状であって、電極端子12A,12Bを挿通可能な6つの電極挿通孔41を有している。バスバー40と電極端子12A,12Bとは溶接により電気的に接続される。バスバー40は、フレキシブル基板21のバスバー接続部22と半田付け等により電気的に接続されている。
【0044】
図3に示すように、プロテクタ50は、絶縁性の合成樹脂からなり、板状をなしている。プロテクタ50は、2部材からなり、車載用配線モジュール20の右側に配される第1プロテクタ50Aと、車載用配線モジュール20の左側に配される第2プロテクタ50Bと、を有する。第1プロテクタ50Aと第2プロテクタ50Bとは同等の構成を有するため、以下では、第1プロテクタ50Aと第2プロテクタ50Bとに共通する構成は、第1プロテクタ50Aについてのみ詳細に説明する。
【0045】
図4に示すように、第1プロテクタ50Aは、前端部に設けられ、バスバー40が配設されるバスバー配設部51と、バスバー配設部51の後方に連なって設けられ、フレキシブル基板21が載置される配線板部52と、を備える。バスバー配設部51は、底のない枠状をなし、左右方向に並べられるバスバー40を1個ずつ仕切るように形成されている。バスバー配設部51は、図示しない係止爪等を備え、バスバー40を保持できるように構成されている。バスバー配設部51間には、左右方向に撓み変形可能とされた可撓部53が設けられている。可撓部53が設けられることで、左右方向における蓄電素子11やバスバー40等の製造公差や、バスバー40と複数の蓄電素子11との組み付け公差等を吸収できるようになっている。バスバー配設部51の後壁には、フレキシブル基板21のバスバー接続部22が配される切り欠き部54が設けられている。
【0046】
図4に示すように、配線板部52は、左右方向にのびて板状に形成されている。配線板部52は、バスバー配設部51の後方に連なって設けられ、可撓部53の後方には設けられていない。配線板部52上には、フレキシブル基板21が載置されるようになっている。フレキシブル基板21は、接着剤や粘着テープ等により、配線板部52に固定された部分を有するとともに、第1折返構造23Aおよび第2折返構造23Bにおいて左右方向に伸縮可能に配されている。可撓部53の後方の配線板部52間には、第1折返構造23Aが配されており、フレキシブル基板21が可撓部53の撓みによる左右方向の寸法の変化に追従できるようになっている。
【0047】
図3および
図4に示すように、第2プロテクタ50Bの右端部には、架橋部55が設けられている。架橋部55は、左側の18個の蓄電素子11に取り付けられた左端のエンドプレート13の上方までのびている。架橋部55の右側には、溝状の形状を有するガイド凹部56が形成されている。第1プロテクタ50Aの左端の配線板部52には、左方にのびるガイド板部57が設けられている。ガイド板部57およびガイド凹部56は、互いに係合して左右方向に摺動可能とされている。これにより、左右方向における第1プロテクタ50Aおよび第2プロテクタ50Bと複数の蓄電素子11との組み付け公差等を吸収することができる。ガイド板部57付近には、第2折返構造23Bが配されており、フレキシブル基板21は、第1プロテクタ50Aと第2プロテクタ50Bとの係合にかかる左右方向の寸法の変化に追従できるようになっている。
【0048】
[実施形態の作用効果]
実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
実施形態にかかる車載用配線モジュール20は、電極端子12A,12Bを有する複数の蓄電素子11に取り付けられる車載用配線モジュール20であって、電極端子12A,12Bに接続されるバスバー40と、バスバー40に電気的に接続されるフレキシブル基板21と、を備え、フレキシブル基板21は、折曲部26,27で折り曲げられた第1折返構造23Aと、折曲部32,33で折り曲げられた第2折返構造23Bと、を有する。第1折返構造23Aは、折曲部26,27で折り曲げられる前の展開状態において、フレキシブル基板21の外縁E1,E2から凸状に設けられた凸部24A,24Bと、凸部24A,24Bが挿通されるスリット25A,25Bと、を有し、折曲部26,27は、展開状態で、フレキシブル基板21における凸部24A,24Bとスリット25A,25Bとの間に配され、凸部24A,24Bがスリット25A,25Bに挿通されることで、フレキシブル基板21が折曲部26,27で折り曲げられた状態から展開状態に復帰変形することが抑制されている。第2折返構造23Bは、折曲部32,33で折り曲げられる前の展開状態において、フレキシブル基板21の外縁E3,E4から凸状に設けられた凸部34A,34Bと、凸部34A,34Bが挿通されるスリット35A,35Bと、を有し、折曲部32,33は、展開状態で、フレキシブル基板21における凸部34A,34Bとスリット35A,35Bとの間に配され、凸部34A,34Bがスリット35A,35Bに挿通されることで、フレキシブル基板21が折曲部32,33で折り曲げられた状態から展開状態に復帰変形することが抑制されている。
【0049】
上記の構成によれば、折曲部26,27および折曲部32,33で折り曲げられたフレキシブル基板21が展開状態に復帰変形することを抑制できるため、車載用配線モジュール20の組み付けが容易になる。
【0050】
実施形態では、1つの第1折返構造23Aには、凸部24A,24Bおよびスリット25A,25Bは、それぞれ一対設けられ、1つの第2折返構造23Bには、凸部34A,34Bおよびスリット35A,35Bは、それぞれ一対設けられている。
【0051】
上記の構成によれば、折曲部26,27および折曲部32,33で折り曲げられたフレキシブル基板21が展開状態に復帰変形することをさらに効果的に抑制できる。
【0052】
実施形態では、フレキシブル基板21は、左右方向にのびる細長い形状を有し、第2折返構造23Bは、展開状態で左右方向に並行してのびる一対の長尺部29,30と、一対の長尺部29,30を連結する連結部31と、一対の折曲部32,33と、を備え、長尺部29には、凸部34A,34Bが設けられ、長尺部30には、スリット35A,35Bが設けられ、第2折返構造23Bにおける一対の折曲部32,33の折り目は、互いに垂直に配されている。
【0053】
上記の構成によれば、折曲部32,33で折り曲げられたフレキシブル基板21の左右方向における長さを、展開状態のフレキシブル基板21の左右方向における長さより大きくすることができる。このため、例えば、蓄電素子11が左右方向に多数積層されている場合でも、車載用配線モジュール20を製造しやすい。
【0054】
実施形態では、一対の長尺部29,30は、左右方向に直交するフレキシブル基板21の短辺方向における同一の位置に配されることで左右方向にのびる同一直線上に並んでいる。
【0055】
上記の構成によれば、一対の長尺部29,30は左右方向にのびる同一直線上に並ぶため、フレキシブル基板21を細長い形状に形成することができる。このため、フレキシブル基板21の短辺方向における車載用配線モジュール20の長さを小さくすることができる。
【0056】
実施形態では、フレキシブル基板21は、左右方向にのびる細長い形状を有し、スリット25A,25B,35A,35Bは、左右方向に長く形成され、スリット25A,25Bの左右方向における長さLS1は、凸部24A,24Bの左右方向における長さLC1よりも大きく設定され、スリット35A,35Bの左右方向における長さLS2は、凸部34A,34Bの左右方向における長さLC2よりも大きく設定されている。
【0057】
上記の構成によれば、凸部24A,24Bはスリット25A,25Bに挿通された状態で左右方向に摺動でき、凸部34A,34Bはスリット35A,35Bに挿通された状態で左右方向に摺動できるため、左右方向における蓄電素子11やバスバー40等の製造公差および車載用配線モジュール20と複数の蓄電素子11との組み付け公差の吸収が可能となる。
【0058】
また、実施形態のフレキシブル基板21は、折曲部26,27および折曲部32,33で折り曲げられた状態で車載用配線モジュール20に組み込まれるフレキシブル基板21である。フレキシブル基板21は、折曲部26,27で折り曲げられる前の展開状態において、フレキシブル基板21の外縁E1,E2から凸状に設けられた凸部24A,24Bと、凸部24A,24Bが挿通されるスリット25A,25Bと、を有し、折曲部26,27は、展開状態で、凸部24A,24Bとスリット25A,25Bとの間に配され、凸部24A,24Bがスリット25A,25Bに挿通されることで、折曲部26,27で折り曲げられた状態から展開状態に復帰変形することが抑制されている。また、フレキシブル基板21は、折曲部32,33で折り曲げられる前の展開状態において、フレキシブル基板21の外縁E3,E4から凸状に設けられた凸部34A,34Bと、凸部34A,34Bが挿通されるスリット35A,35Bと、を有し、折曲部32,33は、展開状態で、凸部34A,34Bとスリット35A,35Bとの間に配され、凸部34A,34Bがスリット35A,35Bに挿通されることで、折曲部32,33で折り曲げられた状態から展開状態に復帰変形することが抑制されている。
【0059】
上記の構成によれば、折曲部26,27および折曲部32,33で折り曲げられたフレキシブル基板21が展開状態に復帰変形することを抑制することができるため、例えば搬送の際等にフレキシブル基板21が変形しにくい。
【0060】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、第1折返構造23Aおよび第2折返構造23Bは左右方向に伸縮可能であり、第2折返構造23Bはフレキシブル基板21を左右方向に延長する構成としたが、これに限られることはなく、折返構造は伸縮可能でなくてもよく、フレキシブル基板を延長しなくてもよい。すなわち、折返構造は、凸部と、凸部が挿通されるスリットと、凸部およびスリットの間に配される折曲部と、を有し、フレキシブル基板が折曲部で折り曲げられた状態から展開状態に復帰変形することを抑制する構成であればよく、その他の構成や機能を有していなくてもよい。
(2)上記実施形態では、フレキシブル基板21は4つの第1折返構造23Aと1つの第2折返構造23Bを備える構成としたが、これに限られることはなく、フレキシブル基板が備える折返構造の個数は任意である。
【0061】
(3)上記実施形態では、第1折返構造23Aは、一対の凸部24A,24Bと、一対のスリット25A,25Bと、一対の折曲部26,27と、を有し、第2折返構造23Bは、一対の凸部34A,34Bと、一対のスリット35A,35Bと、一対の折曲部32,33と、を有する構成としたが、これに限られることはなく、折返構造が有する凸部、スリット、および折曲部の個数は任意である。
(4)上記実施形態では、車載用配線モジュール20は第1プロテクタ50Aおよび第2プロテクタ50Bの2部材からなるプロテクタ50を備える構成としたが、これに限られることはない。車載用配線モジュールはプロテクタを備えていなくてもよく、また、3部材以上からなるプロテクタを備えていてもよい。
【0062】
(5)上記実施形態では、18個の蓄電素子11が積層されて構成された、2個の蓄電素子群に、車載用配線モジュール20が取り付けられる構成としたが、これに限られることはなく、車載用配線モジュールが取り付けられる蓄電素子群の個数や蓄電素子群を構成する蓄電素子の個数は任意である。
【符号の説明】
【0063】
1: 車両
2: 蓄電パック
3: PCU
4: ワイヤーハーネス
10: 蓄電モジュール
11: 蓄電素子
12A,12B: 電極端子
13: エンドプレート
14: 固定部
20: 車載用配線モジュール
21: フレキシブル基板
22: バスバー接続部
23: 折返構造
23A: 第1折返構造
23B: 第2折返構造
24A,24B,34A,34B: 凸部
25A,25B,35A,35B: スリット
26,27,32,33: 折曲部
28A,28B,36A,36B: 受け部
29,30: 長尺部
31: 連結部
40: バスバー
41: 電極挿通孔
50: プロテクタ
50A: 第1プロテクタ
50B: 第2プロテクタ
51: バスバー配設部
52: 配線板部
53: 可撓部
54: 切り欠き部
55: 架橋部
56: ガイド凹部
57: ガイド板部
E1,E2,E3,E4: フレキシブル基板の外縁
LC1,LC2: 凸部の左右方向における長さ
LS1,LS2: スリットの左右方向における長さ