(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240402BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/165 101
B41J2/165 301
B41J2/165 203
(21)【出願番号】P 2020148318
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】井上 諒
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-110306(JP,A)
【文献】特開2015-112742(JP,A)
【文献】特開2017-140810(JP,A)
【文献】特開2013-252724(JP,A)
【文献】特開2010-173198(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0182782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが設けられたノズルプレートを有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップのそれぞれが有する前記ノズルプレートのそれぞれを露出させるための複数の開口部が設けられた固定板と、を有する液体噴射ヘッドと、
前記固定板に設けられた環状の当接領域に当接可能なキャップと、
を備え、
前記固定板には、前記複数の開口部とは異なる第1孔および第2孔が設けられており、
前記固定板は、前記当接領域が設けられた第1面、および、前記第1面に対して反対側の面であって前記複数のヘッドチップが固定される第2面を有し、
前記複数の開口部は、前記第1面に垂直な方向に見た平面視で前記当接領域の内側に配置されており、
前記第1孔および前記第2孔のそれぞれは、前記平面視で前記当接領域の内側に配置されており、充填剤によって閉塞されている、
液体噴射装置。
【請求項2】
前記第1孔は、前記複数の開口部のうちの隣り合う2つの開口部の間に配置され、
前記第2孔は、前記複数の開口部のうちの隣り合う2つの開口部の間に配置される、
請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記複数の開口部は、隣り合う第1開口部と第2開口部とを有し、
前記第1孔および前記第2孔は、前記第1開口部と前記第2開口部との間に配置される、請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記複数の開口部は、前記第1面に沿った第1方向に並んで配置され、
前記複数の開口部のそれぞれは、前記第1面に沿った方向であり前記第1方向に直交する第2方向に長尺であり、
前記第1孔と前記第2孔とは、前記第1方向において異なる位置に配置される、請求項2または請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記複数の開口部は、前記第1面に沿った第1方向に並んで配置され、
前記第1孔および前記第2孔は、前記第1面に沿った方向であり前記第1方向に直交する第2方向側の前記複数の開口部の各端部同士を結ぶ仮想線と、前記第2方向の反対方向側の前記複数の開口部の各端部同士を結ぶ仮想線と、の間に配置される、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記液体噴射ヘッドは、前記複数のヘッドチップに固定されるホルダーを有し、
前記ホルダーは、前記固定板の前記第2面に固定される外壁部を有し、
前記第2面に対向する前記外壁部の先端部は、前記第2面との間に隙間を空けて配置される底面と、前記底面から前記固定板に向けて突出するとともに前記第2面に当接する複数の突出部を有し、
前記複数の突出部は、第1突出部と第2突出部とを有し、
前記第1孔は、前記平面視で前記第1突出部と重複し、
前記第2孔は、前記平面視で前記第2突出部と重複する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記複数のヘッドチップは、前記第1面に沿った第1方向に並んで配置され、
前記複数のヘッドチップのそれぞれは、前記第1方向および前記第1面に沿った方向であり前記第1方向に直交する第2方向の双方に交差する第3方向に長尺であり、
前記複数のヘッドチップは、隣り合う第1ヘッドチップと第2ヘッドチップとを有し、
前記第1開口部は、前記第1ヘッドチップを露出させ、
前記第2開口部は、前記第2ヘッドチップを露出させ、
前記外壁部は、前記第2方向において前記複数のヘッドチップを間に挟むように配置される第1外壁部と第2外壁部とを有し、
前記第1外壁部は、前記第1方向に沿って設けられる第1直線部と、前記第1直線部から前記第2方向に突出する第1凸部と、を有し、
前記第2外壁部は、前記第1方向に沿って設けられる第2直線部と、前記第1直線部から前記第2方向とは反対方向に突出する第2凸部と、を有し、
前記第1凸部は、平面視で、前記第1直線部と、前記第1直線部に近い方の前記第1ヘッドチップの短辺と、前記第1ヘッドチップに近い方の前記第2ヘッドチップの長辺と、によって囲まれる領域内に設けられ、
前記第2凸部は、平面視で、前記第2直線部と、前記第2直線部に近い方の前記第2ヘッドチップの短辺と、前記第2ヘッドチップに近い方の前記第1ヘッドチップの長辺と、によって囲まれる領域内に設けられ、
前記第1突出部は、前記第1凸部の底面から突出し、
前記第2突出部は、前記第2凸部の底面から突出する、請求項3を引用する請求項6に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記第1孔と前記第2孔とは、前記第1面に沿った第4方向に並んで配置され、
前記第1孔の形状および前記第2孔の形状のうちの一方は、円形であり、
前記第1孔の形状および前記第2孔の形状のうちの他方は、前記第4方向に長尺なオーバル形である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記キャップ内に連通する排出路と、
前記排出路を介して前記キャップ内に負圧を発生させる吸引機構と、
を備える、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記液体噴射ヘッドに対して予め定められたワイピング方向に相対移動しながら前記ノズルプレートおよび前記固定板に接触することによって、前記ノズルプレートおよび前記固定板を払拭する払拭部材を備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【請求項11】
前記第1孔および前記第2孔は、前記ワイピング方向に直交する方向において、前記複数のノズルが存在する範囲と前記当接領域との間に配置される、請求項10に記載の液体噴射装置。
【請求項12】
媒体を搬送する搬送機構を備える、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドのノズル列を覆うキャップを備える液体噴射装置が開示されている。この液体噴射装置のヘッドには、ノズル列を露出させる6つの開口部を有するカバーが固定されている。カバーには、キャップの先端に設けられた環状のリブが当接する当接領域が6つの開口部のうちの3つを囲むように2つ設けられており、さらに、2つの当接領域の間に位置決め穴が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載された液体噴射装置では、1つのヘッドに対して2つのキャップが設けられる。本願の発明者らは、この液体噴射装置の部品点数を削減するために、1つのヘッドに対して設けられるキャップの数を1つにして、1つのヘッドの全てのノズル列を1つのキャップで覆うことを検討した。そして、キャップの先端に設けられたリブがカバーの位置決め穴に重なるので、キャップとカバーとの間に位置決め穴による隙間が生じて、シール性を確保することが難しいという課題を見出した。そこで、本願の発明者らは、位置決め穴の配置を変更することを検討した。しかし、位置決め穴の配置を当接領域の外側に変更した場合にはヘッドが大型化する可能性があり、位置決め穴の配置を当接領域の内側に変更した場合にはノズル列をキャップで覆ったとしても位置決め穴を通じてキャップ内の空間が大気に連通して、ノズル内のインクの水分が蒸発してノズルが乾燥する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、液体噴射装置が提供される。この液体噴射装置は、複数のノズルが設けられたノズルプレートを有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップのそれぞれが有する前記ノズルプレートのそれぞれを露出させるための複数の開口部が設けられた固定板と、を有する液体噴射ヘッドと、前記固定板に設けられた環状の当接領域に当接可能なキャップと、を備える。前記固定板には、前記複数の開口部とは異なる第1孔および第2孔が設けられており、前記固定板は、前記当接領域が設けられた第1面、および、前記第1面に対して反対側の面であって前記複数のヘッドチップが固定される第2面を有し、前記複数の開口部は、前記第1面に垂直な方向に見た平面視で前記当接領域の内側に配置されており、前記第1孔および前記第2孔のそれぞれは、前記平面視で前記当接領域の内側に配置されており、充填剤によって閉塞されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の液体噴射装置の概略構成を示す説明図。
【
図2】第1実施形態のヘッドユニットの概略構成を示す第1の分解斜視図。
【
図3】第1実施形態のヘッドユニットの概略構成を示す第2の分解斜視図。
【
図4】第1実施形態のヘッドユニットの概略構成を示す底面図。
【
図5】第1実施形態の第1液体流出口の構成を示す断面図。
【
図6】第1実施形態の液体噴射ヘッドの概略構成を示す分解斜視図。
【
図7】第1実施形態のヘッドチップの概略構成を示す断面図。
【
図8】第1実施形態の固定板の構成を示す第1の底面図。
【
図9】第1実施形態の固定板の構成を示す第2の底面図。
【
図10】液体噴射ヘッドが組み立てられる様子を示す説明図。
【
図11】第1実施形態の第1孔内に配置された充填剤を示す断面図。
【
図12】比較例の第1孔内に配置された充填剤を示す断面図。
【
図13】第2実施形態の固定板の構成を示す底面図。
【
図14】他の実施形態の第1液体流出口の構成を示す第1の断面図。
【
図15】他の実施形態の第1液体流出口の構成を示す第2の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における液体噴射装置10の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向およびY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、重力方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、矢印の向きが
図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、向きを特定する場合には、矢印の指し示す方向である正の方向を「+」、矢印の指し示す方向とは反対の方向である負の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。なお、+X方向のことを「第1方向D1」と呼び、+Y方向のことを「第2方向D2」と呼ぶことがある。
【0008】
本実施形態では、液体噴射装置10は、液体としてインクを噴射することによって、媒体Mに画像を印刷するインクジェットプリンターとして構成されている。液体噴射装置10は、制御部15と、液体容器20と、ヘッドユニット30と、搬送機構40と、キャッピング機構50と、吸引機構60と、払拭機構70とを備えている。
【0009】
制御部15は、1つまたは複数のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備えるコンピューターによって構成されている。主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、制御部15は、種々の機能を発揮する。例えば、制御部15は、有線通信または無線通信によって接続されたコンピューターから画像データを受信し、受信した画像データを媒体M上に形成されるドットのオン・オフを示す印刷データに変換する。制御部15は、印刷データに従って、搬送機構40によって媒体Mを+Y方向に送りつつヘッドユニット30からインクを噴射させて、媒体M上の所定の位置にインクによるドットを形成することによって、媒体Mに画像を印刷する。
【0010】
液体容器20は、媒体Mに噴射されるインクを貯蔵している。本実施形態では、液体容器20は、4個の容器によって構成されており、各容器には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクが個別に貯蔵されている。液体容器20の各容器は、供給路21を介してヘッドユニット30に接続されている。供給路21は、例えば、フレキシブルチューブによって構成される。液体容器20に貯蔵されたインクは、例えば、水頭差によってヘッドユニット30に供給される。なお、液体容器20とヘッドユニット30との間に、ヘッドユニット30に向かってインクを圧送する加圧ポンプが設けられてもよい。
【0011】
ヘッドユニット30は、X方向に沿って並んで配置された6個の液体噴射ヘッド100を備えている。ヘッドユニット30は、供給路21を介して液体容器20から供給された各色のインクを各液体噴射ヘッド100に分配し、制御部15の制御下で、各液体噴射ヘッド100から媒体Mに向かってインクを噴射する。なお、ヘッドユニット30に設けられる液体噴射ヘッド100の数は、6個に限られず、1個でもよいし、2個から5個でもよいし、7個以上でもよい。
【0012】
搬送機構40は、制御部15の制御下で、媒体Mを搬送する。本実施形態では、搬送機構40は、+Y方向に向かって媒体Mを搬送する。搬送機構40は、例えば、媒体Mを両面からローラーで挟み、モーターによってローラーを回転させることによって媒体Mを搬送するローラー搬送方式である。搬送機構40は、ローラー搬送方式ではなく、静電気や空気圧を用いてベルトに媒体Mを吸着させて、ベルトによって媒体Mを搬送するベルト搬送方式でもよいし、媒体Mを巻き付けたドラムを回転させて媒体Mを送り出すドラム搬送方式でもよい。
【0013】
キャッピング機構50は、キャップユニット51と、キャップ移動部52とを備えている。本実施形態では、キャップユニット51は、X方向に沿って並んで配置された6個のキャップ53と、6個のキャップ53を支持する支持部材54とによって構成されている。各キャップ53は、基部55と、基部55から-Z方向に向かって突き出したリブ56とを有している。リブ56は、+Z方向に見て環状に構成されている。基部55には、リブ56の内側に貫通孔57が設けられている。キャップ移動部52は、制御部15の制御下で、キャップユニット51をヘッドユニット30に対して相対移動させる。キャップ移動部52は、例えば、ガイドレールやモーター等によって構成される。キャップ移動部52は、各液体噴射ヘッド100から媒体Mにインクを噴射しない期間に、キャップユニット51をヘッドユニット30に対して-Z方向に相対移動させることによって、各液体噴射ヘッド100の噴射面に各リブ56の先端部を当接させて、各液体噴射ヘッド100の噴射面の少なくとも一部をキャップ53で覆う。噴射面とは、液体噴射ヘッド100の有する面のうち、インクを噴射する面のことを意味する。本実施形態では、噴射面は、液体噴射ヘッド100の有する面のうちの+Z方向側の面であり、後述するノズルプレート210と固定板150とによって構成されている。各液体噴射ヘッド100の噴射面の少なくとも一部をキャップ53で覆うことをキャッピングと呼ぶ。なお、キャップ移動部52は、キャップユニット51を移動させずに、ヘッドユニット30を移動させて、各液体噴射ヘッド100の噴射面の少なくとも一部をキャップ53で覆ってもよい。
【0014】
吸引機構60は、排出路61と、吸引ポンプ62と、廃液タンク63とを備えている。排出路61は、キャップ53に設けられた各貫通孔57に連通している。排出路61は、例えば、フレキシブルチューブによって構成される。吸引ポンプ62は、制御部15の制御下で駆動され、キャッピングの際に、各液体噴射ヘッド100とキャップ53とによって囲まれた空間内に負圧を発生させて、各液体噴射ヘッド100からインクとともに気泡や異物を吸引する。吸引ポンプ62は、例えば、チューブポンプによって構成される。廃液タンク63は、吸引ポンプ62によって各液体噴射ヘッド100から排出されたインクを貯蔵する。キャッピングの際に、各液体噴射ヘッド100とキャップ53とによって囲まれた空間内に負圧を発生させて、各液体噴射ヘッド100からインクとともに気泡や異物を吸引することを吸引クリーニングと呼ぶ。
【0015】
払拭機構70は、払拭部材71と、払拭部材移動部72とを備えている。払拭部材71は、例えば、ゴム製のブレードによって構成される。払拭部材71は、布等によって構成されてもよい。払拭部材移動部72は、例えば、ガイドレールやモーター等によって構成される。払拭部材移動部72は、制御部15の制御下で、ヘッドユニット30に対して払拭部材71を+X方向に向かって相対移動させることによって、ヘッドユニット30に付着したインクや異物等を払拭部材71によって払拭する。ヘッドユニット30に付着したインクや異物等を払拭部材71によって払拭することをワイピングと呼ぶ。なお、払拭部材移動部72は、ヘッドユニット30に対して払拭部材71を-X方向に向かって相対移動させることによって、ヘッドユニット30に付着したインクや異物等を払拭部材71によって払拭してもよい。
【0016】
図2は、ヘッドユニット30の概略構成を示す第1の分解斜視図である。
図3は、ヘッドユニット30の概略構成を示す第2の分解斜視図である。
図4は、ヘッドユニット30の概略構成を示す底面図である。
図5は、ヘッドユニット30の第1液体流出口Di1の構成を示す断面図である。
図2および
図3に示すように、ヘッドユニット30は、分配流路部材31と、支持部材32と、6個の液体噴射ヘッド100とを備えている。
【0017】
分配流路部材31には、インク色の数に応じた数の第1液体流入口Si1と、インク色の数および液体噴射ヘッド100の数に応じた数の第1液体流出口Di1とが設けられている。本実施形態では、
図2に示すように、分配流路部材31の-Z方向側の面に4個の第1液体流入口Si1が設けられている。各第1液体流入口Si1には、供給路21が接続されている。
図3に示すように、分配流路部材31の+Z方向側の面には、24個の第1液体流出口Di1が設けられている。
【0018】
分配流路部材31内には、4系統のインクの流路が設けられている。1系統のインクの流路は、1個の第1液体流入口Si1に連通する共通流路と、共通流路から分岐した6個の個別流路とによって構成されている。1個の個別流路は、1個の第1液体流出口Di1に連通している。1個の第1液体流入口Si1から分配流路部材31内に導入されたインクは、共通流路と個別流路とを介して、6個の第1液体流出口Di1に分配される。各個別流路と第1液体流出口Di1との間には、
図5に示す圧力調整弁500が設けられており、各第1液体流出口Di1に分配されるインクの圧力は、圧力調整弁500によって調整される。圧力調整弁500の構成については後述する。
【0019】
図2に示すように、支持部材32は、分配流路部材31の+Z方向側に配置されており、ネジや接着剤等によって分配流路部材31に固定される。支持部材32の+Z方向側には、各液体噴射ヘッド100が配置されている。各液体噴射ヘッド100は、ネジや接着剤等によって支持部材32に固定されている。各液体噴射ヘッド100は、それぞれ、4個の第2液体流入口Si2を有している。支持部材32の-Z方向側の面には、第2液体流入口Si2を露出させる開口部が設けられている。各第2液体流入口Si2は、各第1液体流出口Di1に接続されている。なお、分配流路部材31と支持部材32とが一体化されて同一の部材で構成されてもよい。
【0020】
図4に示すように、各液体噴射ヘッド100は、X方向に沿って並んで配置された複数のノズル列を有している。各ノズル列は、Z方向に直交し、かつ、X方向およびY方向の双方に交差する第3方向D3に沿って並んで配置された複数のノズルNによって構成されている。各液体噴射ヘッド100は、各ノズルNからインクを噴射する。複数のノズルNは、シアン色のインクを噴射するグループと、マゼンタ色のインクを噴射するグループと、イエロー色のインクを噴射するグループと、ブラック色のインクを噴射するグループとに区分されている。
【0021】
図5に示すように、圧力調整弁500は、ハウジング510と、弁体520と、弁座530と、蓋部材540と、フィルム部材550と、バネ560とを備えている。ハウジング510内には、一次室511と二次室512とが設けられている。一次室511と二次室512との間は、隔壁513によって隔てられている。隔壁513には、一次室511と二次室512とを連通させる連通路514が設けられている。
【0022】
一次室511は、ハウジング510に設けられた凹部の開口部を蓋部材540で封止することによって形成されている。二次室512は、ハウジング510に設けられた凹部の開口部を、可撓性を有するフィルム部材550で封止することによって形成されている。フィルム部材550の材料として、例えば、高密度ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。フィルム部材550の二次室512側の面には、受圧板555が接着されている。受圧板555の剛性は、フィルム部材550の剛性よりも高い。フィルム部材550を挟んで二次室512とは反対側の空間は、大気に連通している。
【0023】
一次室511は、蓋部材540に設けられた流入路541を介して、個別流路FPに連通している。個別流路FPは、第1液体流入口Si1に連通している。二次室512は、ハウジング510に設けられた流出路518を介して、第1液体流出口Di1に連通している。第1液体流出口Di1には、シール部材519が設けられている。液体噴射ヘッド100の第2液体流入口Si2の先端部には、液体噴射ヘッド100にインクを導入するための供給針105が設けられている。供給針105内には、インクの流路と、インクに含まれる気泡や異物を捕集するためのフィルターFとが設けられている。供給針105がシール部材519を貫通することによって、供給針105内のインクの流路と、流出路518とが連通する。
【0024】
弁体520は、ハウジング510内に移動可能に配置されている。弁体520は、弁体本体521と当接部材522とを備えている。弁体本体521は、円柱状の軸部525と、軸部525の一端に接続された円盤状のフランジ部526とを有している。軸部525は、連通路514に挿通されている。軸部525と連通路514との間には、インクが流れる隙間が形成されている。フランジ部526とは反対側の軸部525の先端部は、受圧板555に当接している。フランジ部526は、一次室511内に配置されている。当接部材522は、フランジ部526の隔壁513側の面に固定されている。当接部材522は、軸部525を囲むように円環状に設けられている。当接部材522は、ゴムやエラストマーで形成されている。弁座530は、当接部材522に対向するように隔壁513に固定されている。弁座530は、連通路514を囲むように円環状に設けられている。
【0025】
バネ560は、弁体520のフランジ部526と蓋部材540との間に配置されている。バネ560の一端は、フランジ部526に当接しており、バネ560の他端は、蓋部材540に当接している。バネ560は、弁体520を二次室512側に向かって付勢する。弁体520の当接部材522がバネ560の付勢力によって弁座530に当接して、連通路514が閉塞、換言すれば、圧力調整弁500が閉弁される。
【0026】
二次室512内に貯留されたインクが流出路518から流出して、二次室512内の圧力が低下すると、二次室512内の圧力と大気圧との差圧によってフィルム部材550が撓んで、フィルム部材550に接着された受圧板555が一次室511側に移動する。受圧板555がバネ560の付勢力に抗して軸部525を押圧することによって弁体520が移動して、当接部材522と弁座530との間に隙間が形成されて、連通路514が開放、換言すれば、圧力調整弁500が開弁する。
【0027】
圧力調整弁500の開弁によって一次室511から二次室512内にインクが流入すると、二次室512内の圧力と大気圧との差圧が小さくなり、弁体520と受圧板555とがバネ560の付勢力によって元の位置に戻り、当接部材522と弁座530との間の隙間がなくなり、連通路514が閉塞、換言すれば、圧力調整弁500が閉弁する。このようにして、圧力調整弁500は、分配流路部材31から液体噴射ヘッド100に供給されるインクの圧力を調整することができるので、分配流路部材31から各液体噴射ヘッド100へのインクの供給を安定化させることができる。
【0028】
図6は、液体噴射ヘッド100の概略構成を示す分解斜視図である。液体噴射ヘッド100は、6個のヘッドチップ200と、フィルターユニット110と、カバー部材120と、回路基板130と、ホルダー140と、固定板150とを備えている。本実施形態では、+Z方向側から順に、固定板150、ホルダー140、回路基板130、カバー部材120、および、フィルターユニット110が積み重なるように配置されている。6個のヘッドチップ200は、固定板150とホルダー140とによって囲まれた空間に収容されている。なお、1つの液体噴射ヘッド100に設けられるヘッドチップ200の数は、2個以上であればよく、6個に限られない。
【0029】
フィルターユニット110には、4個の第2液体流入口Si2と、4個の第2液体流出口Di2が設けられている。各第2液体流入口Si2は、管状に構成されており、フィルターユニット110から-Z方向に向かって突き出している。各第2液体流入口Si2の先端部には、上述した供給針105が設けられている。フィルターユニット110内には、1個の第2液体流入口Si2と1個の第2液体流出口Di2とに連通する流路が設けられている。各流路には、インクに含まれる気泡や異物を捕集するフィルターが設けられている。本実施形態では、フィルターユニット110は、ザイロン(登録商標)や液晶ポリマー等の樹脂材料で形成されている。
【0030】
カバー部材120には、フィルターユニット110の4個の第2液体流出口Di2が接続される4個の貫通孔125と、回路基板130と制御部15とを接続する信号ケーブルが挿通される2個のケーブル孔126とが設けられている。本実施形態では、カバー部材120は、ザイロン(登録商標)や液晶ポリマー等の比較的変形しにくい樹脂材料で形成された本体部121と、ニトリルゴムやシリコンゴムやフッ素ゴム等のエラストマーで形成されたシール部122とが二色成形によって一体化されて構成されている。シール部122は、貫通孔125の周縁部に設けられており、インクの漏洩を抑制する。カバー部材120は、ネジによってフィルターユニット110に固定されている。なお、本体部121は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されてもよい。この場合、本体部121を形成する金属材料とシール部122を形成するエラストマーとがインサート成形やアウトサート成形によって一体化されてもよい。
【0031】
回路基板130は、各ヘッドチップ200に対して駆動信号や電源電圧を供給する。回路基板130には、抵抗やコンデンサーやトランジスターやコイル等の回路素子131が配置されている。回路基板130の-Z方向側の面には、後述するヘッドチップ200から延びるフレキシブル配線基板246が接続されるコネクター132と、制御部15から延びる信号ケーブルが接続されるコネクター133とが設けられている。フレキシブル配線基板246は、回路基板130に設けられたスリット孔136を通じてコネクター132に接続される。回路基板130には、カバー部材120の各貫通孔125を塞がないように切欠部135が設けられている。本実施形態では、回路基板130は、接着剤によってカバー部材120およびホルダー140に固定されている。
【0032】
ホルダー140は、第1ホルダー部材141と、第2ホルダー部材142と、第3ホルダー部材143とによって構成されている。+Z方向側から順に、第3ホルダー部材143、第2ホルダー部材142、および、第1ホルダー部材141が積み重なるように配置されている。第1ホルダー部材141の-Z方向側の面には、4個の第3液体流入口Si3が設けられている。各第3液体流入口Si3は、管状に構成されており、第1ホルダー部材141から-Z方向に向かって突き出している。各第3液体流入口Si3は、カバー部材120の各貫通孔125に接続されている。各ホルダー部材141~143内には、各第3液体流入口Si3から導入されたインクを6個のヘッドチップ200に分配するための流路が設けられている。本実施形態では、各ホルダー部材141~143は、ザイロン(登録商標)や液晶ポリマー等の樹脂材料で形成されている。各ホルダー部材141~143は、接着剤によって相互に固定されている。第1ホルダー部材141は、接着剤によってカバー部材120の本体部121および回路基板130に固定されている。
【0033】
固定板150は、+Z方向側の面である第1面151と、-Z方向側の面である第2面152とを有している。第1面151は、X方向およびY方向に平行な面であり、液体噴射ヘッド100の底面を構成している。固定板150は、ヘッドチップ200の数に応じた数の開口部155を有している。本実施形態では、固定板150は、X方向に沿って並んで配置された6個の開口部155を有している。各開口部155は、固定板150を貫通するように設けられている。固定板150は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。固定板150の板厚は、80マイクロメートルである。固定板150の第2面152と第3ホルダー部材143の外壁部145とが接着剤によって固定されている。なお、固定板150のより具体的な構成については後述する。
【0034】
各ヘッドチップ200は、第3ホルダー部材143の外壁部145の内側に配置されている。各ヘッドチップ200は、固定板150の各開口部155上に、X方向に沿って並んで配置されている。各ヘッドチップ200は、接着剤によって固定板150の第2面152に固定されている。各ヘッドチップ200には、インクを導入する4個の液体導入口251が設けられている。各液体導入口251には、各ホルダー部材141~143によって分配されたインクが供給される。
【0035】
図7は、ヘッドチップ200の概略構成を示す断面図である。
図7には、1個のヘッドチップ200と固定板150との断面が表されている。ヘッドチップ200は、インクを噴射するための複数のノズルNが設けられたノズルプレート210と、流路形成基板221と、圧力室基板222と、保護基板223と、コンプライアンス部230と、振動板240と、圧電素子245と、フレキシブル配線基板246と、ケース224とを備えている。
【0036】
ヘッドチップ200は、ノズルNに連通するインクの流路250として、インクを導入するための液体導入口251、リザーバー室R、個別流路253、圧力室C、および、連通流路255を有している。インクの流路250は、流路形成基板221、圧力室基板222、および、ケース224が積層されることによって構成されている。連通流路255と個別流路253とリザーバー室Rの下側部分とは、流路形成基板221に設けられている。圧力室Cは、圧力室基板222に設けられている。液体導入口251とリザーバー室Rの上側部分とは、ケース224に設けられている。
【0037】
液体導入口251からケース224内に導入されたインクは、リザーバー室Rに貯留される。リザーバー室Rは、ノズル列を構成する複数のノズルNのそれぞれに対応する複数の個別流路253に連通する共通流路である。リザーバー室Rに貯留されたインクは、個別流路253を介して圧力室Cに供給される。圧力室Cにて加圧されたインクは、連通流路255を介してノズルNから+Z方向へ噴射される。ヘッドチップ200には、ノズルNごとに、個別流路253、圧力室C、および、連通流路255が設けられている。
【0038】
ノズルプレート210、流路形成基板221、および、圧力室基板222は、単結晶のシリコンで形成されている。ケース224は、例えば、ザイロン(登録商標)や液晶ポリマー等の樹脂材料で形成されている。ノズルプレート210、流路形成基板221、圧力室基板222、および、ケース224の間は、接着剤によって相互に固定されている。
【0039】
流路形成基板221の底面には、ノズルプレート210と、コンプライアンス部230とが固定されている。ノズルプレート210は、連通流路255の下側に固定されている。コンプライアンス部230は、リザーバー室Rおよび個別流路253の下側に固定されている。コンプライアンス部230は、封止膜231と、支持体232とによって構成されている。封止膜231は、可撓性を有する膜状部材である。リザーバー室Rおよび個別流路253の下側は、封止膜231によって封止されている。封止膜231の外周縁は、枠状の支持体232によって支持されている。支持体232の底面は、固定板150に固定されている。コンプライアンス部230は、リザーバー室R内や個別流路253内におけるインクの圧力変動を抑制する。
【0040】
圧力室Cの上側は、振動板240によって封止されている。本実施形態では、振動板240は、酸化シリコン等の弾性を有する膜状部材と、酸化ジルコニウム等の絶縁性を有する膜状部材とが積層されて構成されている。上述した振動板240の酸化シリコン等の弾性を有する膜状部材と圧力室基板222とが一体化されて同じ部材で形成されてもよい。
【0041】
振動板240の上面には、駆動装置としての圧電素子245が設けられている。圧電素子245は、圧電体と、圧電体の両面に形成された電極とによって構成されている。圧電素子245の各電極は、ケース224内に設けられたフレキシブル配線基板246に電気的に接続されている。フレキシブル配線基板246は、回路基板130に電気的に接続されている。圧電素子245は、フレキシブル配線基板246を介して制御部15から駆動信号の供給を受けて振動板240とともに振動して、圧力室Cの容積を変化させる。圧力室Cの容積が縮小されることによって、圧力室C内のインクが加圧されて、ノズルNからインクが噴射される。なお、圧電素子245に代えて、駆動装置として発熱体が用いられてもよい。
【0042】
また、
図7に示す通り、固定板150の開口部155の縁およびコンプライアンス部230の縁と、ノズルプレート210の縁との間の隙間には、当該隙間を塞ぐための接着剤180が設けられている。接着剤180として、エポキシ系接着剤やシリコーン系接着剤等を用いることができる。接着剤180を設けることによって、当該隙間にインクが入り込むことを防止するとともに、ノズルプレート210の+Z方向側の面と固定板150の第1面151との段差を滑らかに接続することでワイピング動作による払拭性を向上できる。
【0043】
図8は、固定板150の構成を示す第1の底面図である。
図9は、固定板150の構成を示す第2の底面図である。
図8には、固定板150の第1面151が表されている。
図9には、固定板150の第1面151が実線で表されており、6個のヘッドチップ200、および、第3ホルダー部材143の外壁部145が破線で表されている。
【0044】
図9に示すように、各ヘッドチップ200は、第3方向D3に長尺な外形形状を有している。より具体的には、各ヘッドチップ200は、第1面151に垂直な方向に見た平面視で、第3方向D3に沿った長手方向を有する略長方形の外形形状を有している。
【0045】
図8に示すように、固定板150は、X方向に沿って並んで配置された6個の開口部155を有している。各開口部155は、各ヘッドチップ200のノズルプレート210に設けられたノズル列を露出させている。本実施形態では、各開口部155の開口形状は、第3方向D3に沿った長手方向を有する長方形である。以下の説明では、6個の各開口部155を区別するために、符号の末尾に「A」~「F」の文字を付すことがある。6個の各開口部155を区別する場合には、各開口部155のことを、-X方向側から順に、開口部155A、開口部155B、開口部155C、開口部155D、開口部155E、開口部155Fと呼ぶ。
【0046】
固定板150は、各開口部155とは異なる第1孔156と第2孔157とを有している。固定板150の第1面151は、キャップ53に設けられた環状のリブ56の先端部が当接する当接領域Rcを有しており、各開口部155、第1孔156、および、第2孔157は、第1面151に垂直な方向に見た平面視で、当接領域Rcの内側に配置されている。
【0047】
本実施形態では、第1孔156および第2孔157は、6個の開口部155のうちの隣り合う2個の開口部155の間に配置されている。より具体的には、第1孔156および第2孔157は、開口部155Cと開口部155Dとの間に配置されている。なお、第1孔156の-X方向側に配置された開口部155のうちの最も第1孔156に近い開口部155のことを「第1開口部」と呼び、第1孔156の+X方向側に配置された開口部155のうちの最も第1孔156に近い開口部155のことを「第2開口部」と呼ぶことがある。
【0048】
本実施形態では、第1孔156および第2孔157は、開口部155Cの+Y方向側の端部と開口部155Dの+Y方向側の端部とを結ぶ第1仮想線LN1と、開口部155Cの-Y方向側の端部と開口部155Dの-Y方向側の端部とを結ぶ第2仮想線LN2との間に配置されている。開口部155Cの+Y方向側の端部とは、開口部155Cのうちの最も+Y方向側に位置する部分であり、開口部155Dの+Y方向側の端部とは、開口部155Dのうちの最も+Y方向側に位置する部分である。開口部155Cの-Y方向側の端部とは、開口部155Cのうちの最も-Y方向側に位置する部分であり、開口部155Dの-Y方向側の端部とは、開口部155Dのうちの最も-Y方向側に位置する部分である。
【0049】
本実施形態では、第1孔156および第2孔157は、払拭部材71の移動方向であるワイピング方向に直交する方向において、各ノズルNが存在する範囲と当接領域Rcとの間に配置されている。上述したとおり、本実施形態では、ワイピング方向は、+X方向である。第1孔156は、当接領域Rcの内側、かつ、複数のノズルNのうちの最も+Y方向側に配置されたノズルNよりも+Y方向側に配置されている。第2孔157は、当接領域Rcの内側、かつ、複数のノズルNのうちの最も-Y方向側に配置されたノズルNよりも-Y方向側に配置されている。
【0050】
図9に示すように、本実施形態では、ホルダー140の外壁部145は、Y方向において6個のヘッドチップ200を間に挟むように配置された第1外壁部145Aと第2外壁部145Bとを有している。第1外壁部145Aは、6個のヘッドチップ200に対して+Y方向側に配置されており、第2外壁部145Bは、6個のヘッドチップ200に対して-Y方向側に配置されている。第1外壁部145Aは、X方向に沿って設けられた第1直線部146Aと、第1直線部146Aから-Y方向に突出する複数の第1凸部147Aとを有している。第2外壁部145Bは、X方向に沿って設けられた第2直線部146Bと、第2直線部146Bから+Y方向に突出する複数の第2凸部147Bとを有している。
【0051】
以下の説明では、隣り合う2個のヘッドチップ200のうちの-X方向側に配置されたヘッドチップ200のことを「第1ヘッドチップ」と呼び、隣り合う2個のヘッドチップ200のうちの+X方向側に配置されたヘッドチップ200のことを「第2ヘッドチップ」と呼ぶ。第1凸部147Aは、固定板150の第1面151に垂直な方向に見た平面視で、第1直線部146Aと、第1ヘッドチップの2本の短辺のうちの第1直線部146Aに近い方の短辺201Aと、第2ヘッドチップの2本の長辺のうちの第1ヘッドチップに近い方の長辺202Aとによって囲まれる領域A内に設けられている。第2凸部147Bは、第1面151に垂直な方向に見た平面視で、第2直線部146Bと、第2ヘッドチップの2本の短辺のうちの第2直線部146Bに近い方の短辺201Bと、第1ヘッドチップの2本の長辺のうちの第2ヘッドチップに近い方の長辺202Bとによって囲まれる領域B内に設けられている。固定板150の第1面151に垂直な方向に見た平面視において、ヘッドチップ200の短辺とは、ヘッドチップ200の長辺に垂直な辺のことを意味する。本実施形態では、ヘッドチップ200の長辺は、第3方向D3に沿って延びているので、ヘッドチップ200の短辺とは、第3方向D3に垂直な方向に沿って延びる辺のことを意味する。
【0052】
本実施形態では、固定板150の第2面152に対向するホルダー140の外壁部145の先端部は、第2面152との間に隙間を空けて配置される底面148と、底面148から固定板150に向けて突出するとともに第2面152に当接する複数の突出部149とを有している。各突出部149は、第1直線部146A、第1凸部147A、第2直線部146B、および、第2凸部147Bに設けられている。各突出部149は、Z方向に沿った中心軸を中心とした円柱形状を有している。固定板150の第2面152には、ホルダー140の突出部149が接着剤によって固定される。なお、「複数の突出部149が第2面152に当接する」とは、各突出部149と第2面152との間に当該接着剤を挟むことで両部材が間接的に当接することを含む。つまり、「複数の突出部149が第2面152に当接する」とは、各突出部149が第2面152に対して直接接触していなくてもよい。更に説明すれば、「複数の突出部149が第2面に当接する」とは、「当該接着剤が設けられていない状態では、第2面152は、複数の突出部149とは直接接触するが、底面148とは直接接触しない」ということを意味する。
【0053】
本実施形態では、固定板150の第1孔156は、第1面151に垂直な方向に見た平面視で、第1凸部147Aに設けられた突出部149に重なっており、第2孔157は、第1面151に垂直な方向に見た平面視で、第2凸部147Bに設けられた突出部149に重なっている。なお、第1面151に垂直な方向に見た平面視で第1孔156に重なる突出部149のことを「第1突出部」と呼ぶことがあり、第1面151に垂直な方向に見た平面視で第2孔157に重なる突出部149のことを「第2突出部」と呼ぶことがある。
【0054】
本実施形態では、第1孔156と第2孔157とは、Z方向に直交する方向であり、かつ、X方向、Y方向、および、第3方向D3のそれぞれに交差する第4方向D4に並んで配置されている。第1孔156の開口形状は、円形であり、第2孔157の開口形状は、第4方向D4に長尺なオーバル形である。オーバル形とは、長方形あるいは正方形の両端に半円を接続した形状、つまり、陸上競技場のトラックのような形状の他に、円の中心点からの距離が互いに等しい2本の平行線でこの円をトリミングしたときに生成される形状をも含む意味である。
【0055】
図10は、液体噴射ヘッド100が組み立てられる様子を示す説明図である。第1孔156および第2孔157は、液体噴射ヘッド100を組み立てる際に位置決めピンを挿通する位置決め穴として用いられる。本実施形態では、
図10に示すように、第1孔156および第2孔157には、固定板150に対して各ヘッドチップ200を固定する際に用いられる治具300の位置決めピンPNが挿通される。そして、位置決めピンPNによって固定板150が治具300に対して正しい位置で位置決めされた状態で、複数のヘッドチップ200が固定板150にアライメントされる。なお、第1孔156および第2孔157には、固定板150に対してホルダー140を固定する際に用いられる位置決めピンが挿通されてもよい。
【0056】
図11は、第1孔156内に配置された充填剤160を示す断面図である。
図11には、
図9におけるXI-XI線断面図が表されている。第1孔156および第2孔157は、充填剤160によって閉塞されている。本実施形態では、充填剤160は、エポキシ系接着剤である。充填剤160は、エポキシ系接着剤に限られず、例えば、シリコーン系接着剤でもよい。充填剤160として用いられる接着剤の粘性は、低い方が好ましい。第1孔156および第2孔157は、位置決め穴として用いられた後、充填剤160によって閉塞される。この際、充填剤160は、固定板150の第1面151から飛び出さないように、第1孔156および第2孔157内に凹状に配置される。また、上述したとおり、固定板150の各開口部155A~155Fの周縁部と各ヘッドチップ200のノズルプレート210との間は、エポキシ系接着剤やシリコーン系接着剤等によってシールされている。なお、固定板150を貫通する第1孔156および第2孔157に代えて、固定板150の第1面151に凹部が設けられて、当該凹部が位置決め穴として用いられる場合には、凹部内に充填剤が配置されなくてもよい。しかし、本実施形態では、固定板150の板厚は、製造誤差によって板厚が大きくなったとしても100マイクロメートル以下であるため、第1孔156および第2孔157に代えて、固定板150に凹部を設けることは難しい。
【0057】
図12は、比較例における第1孔156内に配置された充填剤160を示す断面図である。第1面151に垂直な方向に見た平面視で、固定板150の第1孔156がホルダー140の突出部149に重ならない場合には、第1孔156を充填剤160で閉塞させる際に、ホルダー140の外壁部145の底面148と、固定板150の第2面152との間の隙間に充填剤160が流れるので、第1孔156を閉塞させるための充填剤160の量が多くなる可能性や、第1孔156の周縁部と充填剤160との間に隙間が生じて第1孔156が閉塞されない可能性がある。第1面151に垂直な方向に見た平面視で、固定板150の第2孔157がホルダー140の突出部149に重ならない場合についても同様である。固定板150の第2面152とホルダー140の底面148との間の隙間は、
図6に示すように、ホルダー140とヘッドチップ200との隙間、ヘッドチップ200のフレキシブル配線基板246を挿通させるためにホルダー140に設けられた貫通孔、フレキシブル配線基板246を挿通するために回路基板130に設けられたスリット孔136、回路基板130とカバー部材120との隙間、および、カバー部材120に設けられたケーブル孔126を通じて、大気に連通している。したがって、第1孔156および第2孔157が充填剤160によって閉塞されない場合には、キャッピングの際にキャップ53と固定板150の第1面151との間に形成される空間は、第1孔156および第2孔157を通じて、大気に連通する。そのため、キャッピングが実行されている間に、インクの液体成分が蒸発してノズルNが乾燥する可能性がある。さらに、吸引クリーニングの際に、吸引ポンプ62を駆動させたとしても第1孔156や第2孔157を通じてキャップ53と固定板150の第1面151との間に形成される空間に空気が流入するので、上記空間内に十分に負圧を発生させることができずに、ノズルNからインクとともに異物や気泡が排出されない吸引クリーニング不良が生じる可能性がある。固定板150の第2面152とホルダー140の底面148との間の隙間が小さくても、上述したノズルNの乾燥や吸引クリーニング不良が生じる可能性がある。
【0058】
以上で説明した本実施形態における液体噴射装置10によれば、固定板150に設けられた第1孔156および第2孔157は、固定板150の第1面151に垂直な平面視で、キャップ53が当接する当接領域Rcの内側に配置されており、かつ、第1孔156および第2孔157は、充填剤160によって閉塞されている。そのため、キャッピングの際に、キャップ53と固定板150との間に形成される空間内のシール性を確保することができるので、インクの液体成分が蒸発してノズルNが乾燥することを抑制できる。さらに、本実施形態では、第1孔156および第2孔157が当接領域Rcの内側に配置されているので、第1孔156と第2孔157との少なくとも一方が当接領域Rcの外側に配置される形態に比べて、液体噴射ヘッド100を小型化できる。
【0059】
また、本実施形態では、第1孔156および第2孔157は、X方向において、隣り合う2個の開口部155である開口部155Cと開口部155Dとの間に配置されている。そのため、第1孔156と第2孔157とのうちの少なくとも一方が隣り合う2個の開口部155の間に設けられずに、例えば、開口部155Aの-X方向側に配置された形態に比べて、液体噴射ヘッド100をX方向に小型化できる。
【0060】
また、本実施形態では、第1孔156および第2孔157は、Y方向において、開口部155Cの+Y方向側の端部と開口部155Dの+Y方向側の端部とを結ぶ第1仮想線LN1と、開口部155Cの-Y方向側の端部と開口部155Dの-Y方向側の端部とを結ぶ第2仮想線LN2との間に配置されている。そのため、Y方向において、当接領域Rcを各開口部155に近接した位置に設けることができるので、液体噴射ヘッド100をY方向に小型化できる。
【0061】
また、本実施形態では、第1孔156および第2孔157は、第1面151に垂直な方向で見た平面視で、ホルダー140の突出部149に重なる位置に設けられているので、第1孔156および第2孔157を充填剤160で閉塞させる際に固定板150の第2面152とホルダー140の底面148との間に充填剤160が流れることを抑制できる。そのため、第1孔156および第2孔157が突出部149に重ならない位置に設けられた形態に比べて、第1孔156および第2孔157をより確実に閉塞させることができるとともに、第1孔156および第2孔157を閉塞させるための充填剤160の量が多くなることを抑制できる。また、ホルダー140の突出部149ではなく、ホルダー140の底面148と固定板150とを接着する場合には、ホルダー140の底面148と固定板150とが離れないように底面の平面度を確保することが難しい。本実施形態では、ホルダー140の底面148から突出した突出部149と固定板150とを接着するので、ホルダー140と固定板150との接着を容易化して、ホルダー140と固定板150とを寸法精度良く固定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1孔156の周縁部に接着されるホルダー140の突出部149は、第1直線部146Aに対して-Y方向側に設けられた第1凸部147Aから突き出している。そのため、各ヘッドチップ200の長手方向を第3方向D3に沿わせて各ヘッドチップ200を配置したときに形成される第1直線部146Aと各ヘッドチップ200とによって囲まれる領域A内で、第1孔156と突出部149を接着することができるので、スペースの無駄を少なくして液体噴射ヘッド100を小型化できる。また、第2孔157の周縁部に接着されるホルダー140の突出部149は、第2直線部146Bに対して+Y方向側に設けられた第2凸部147Bから突き出している。そのため、各ヘッドチップ200の長手方向を第3方向D3に沿わせて各ヘッドチップ200を配置したときに形成される第2直線部146Bと各ヘッドチップ200とによって囲まれる領域B内で、第2孔157と突出部149とを接着できるので、スペースの無駄を少なくして液体噴射ヘッド100を小型化できる。
【0063】
また、本実施形態では、第1孔156の開口形状は、円形であり、第2孔157の開口形状は、第4方向D4に長尺なオーバル形である。そのため、固定板150に第4方向D4の製造誤差が生じて、第1孔156および第2孔157に治具300の位置決めピンPNを挿入できなくなることを抑制できる。特に、本実施形態では、第1孔156と第2孔157とがX方向において異なる位置に配置されるので、第1孔156と第2孔157とがX方向において同じ位置に配置された形態に比べて、第1孔156と第2孔157との距離を広くすることができる。そのため、固定板150の位置決め精度を確保しやすくできる。
【0064】
また、本実施形態では、液体噴射装置10は、キャップ53内に連通する排出路61と、排出路61を通じてキャップ53内に負圧を発生させる吸引ポンプ62とを備えている。そのため、キャッピング時に、キャップ53と固定板150との間に形成される空間内に吸引ポンプ62を用いて負圧を発生させて、ノズルN内からインクとともに異物や気泡を排出させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、第1孔156は、液体噴射ヘッド100に設けられた複数のノズルNのうちの最も+Y方向側に設けられたノズルNに対して、+Y方向側に配置されており、第2孔157は、液体噴射ヘッド100に設けられた複数のノズルNのうちの最も-Y方向側に設けられたノズルNに対して、-Y方向側に配置されている。そのため、ワイピングの際に、第1孔156および第2孔157内で乾燥して固まったインクが払拭部材71によって掻き出された場合に、固まったインクが払拭部材71とともに移動してノズルNを傷付けることを抑制できる。
【0066】
B.第2実施形態:
図13は、第2実施形態における固定板150bの構成を示す底面図である。第2実施形態の液体噴射装置10では、固定板150bの各開口部155の長手方向の向きが第1実施形態と異なる。その他の構成については、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0067】
本実施形態では、液体噴射ヘッド100bは、4個のヘッドチップ200を備えている。固定板150bには、4個の開口部155が設けられている。各開口部155の開口形状は、Y方向に沿った長手方向を有する長方形である。固定板150bの第1面151には、四角形の当接領域Rcが設けられている。各開口部155、第1孔156、および、第2孔157は、当接領域Rcの内側に設けられている。第1孔156と第2孔157とは、X方向において異なる位置に設けられているので、固定板150bの位置決め精度を確保しやすい。
【0068】
以上で説明した本実施形態における液体噴射装置10によれば、第1実施形態と同様に、液体噴射ヘッド100bの大型化を抑制しつつ、キャッピングの際にキャップ53と固定板150bとの間に形成される空間のシール性を確保することができる。
【0069】
C.他の実施形態:
(C1)上述した各実施形態の液体噴射装置10において、固定板150,150bに設けられた第1孔156および第2孔157は、隣り合う2個の開口部155の間に配置されている。これに対して、固定板150,150bに設けられた第1孔156は、隣り合う2個の開口部155の間に配置されなくてもよいし、第2孔157は、隣り合う2個の開口部155の間に配置されなくてもよい。例えば、
図8に示した固定板150において、第2孔157が開口部155Aに対して-X方向側に配置されてもよい。
【0070】
(C2)上述した各実施形態の液体噴射装置10において、固定板150,150bに設けられた第2孔157は、第1孔156の-X方向側に配置された開口部155のうちの最も第1孔156の近くに配置された近い開口部155と、第1孔156の+X方向側に配置された開口部155のうちの最も第1孔156の近くに配置された開口部155との間に配置されている。これに対して、固定板150,150bに設けられた第2孔157は、第1孔156の-X方向側に配置された開口部155のうちの最も第1孔156の近くに配置された開口部155と、第1孔156の+X方向側に配置された開口部155のうちの最も第1孔156の近くに配置された開口部155との間に配置されなくてもよい。例えば、
図8に示した固定板150において、第1孔156が開口部155Cと開口部155Dとの間に配置され、第2孔157が開口部155Bと開口部155Cとの間に配置されてもよい。また、3個以上の開口部155がX方向に並設された場合、例えば、第1実施形態の場合には、X方向に並べられた開口部155のうちの最も-X方向に配置された開口部155Aと、開口部155Aに隣り合い且つ開口部155Aに対して+X方向に配置された開口部155Bとの間に、第1孔156および第2孔157の一方が配置され、X方向に並べられた開口部155のうちの最も+X方向に配置された開口部155Fと、開口部155Fに隣り合い且つ開口部155Fに対して-X方向に配置された開口部155Eとの間に、第1孔156および第2孔157の他方が配置されてもよい。このような構成によれば、第1孔156と第2孔157との間の距離を長くし、位置決め精度を向上することができる。
【0071】
(C3)上述した各実施形態の液体噴射装置10において、固定板150,150bに設けられた第2孔157は、X方向において第1孔156とは異なる位置に配置されている。これに対して、固定板150,150bに設けられた第2孔157は、X方向において第1孔156と同じ位置に配置されもよい。
【0072】
(C4)上述した各実施形態の液体噴射装置10において、固定板150,150bに設けられた第1孔156は、第1仮想線LN1に対して-Y方向側に配置され、第2孔157は、第2仮想線LN2に対して+Y方向側に配置されている。これに対して、固定板150,150bに設けられた第1孔156は、第1仮想線LN1、あるいは、第1仮想線LN1に対して+Y方向側に配置されてもよいし、第2孔157は、第2仮想線LN2上、あるいは、第2仮想線LN2に対して-Y方向側に配置されてもよい。
【0073】
(C5)上述した各実施形態の液体噴射装置10において、固定板150,150bに設けられた第1孔156および第2孔157は、第1面151に垂直な方向に見た平面視で、ホルダー140の突出部149に重なるように配置されている。これに対して、第1孔156は、第1面151に垂直な方向に見た平面視で、ホルダー140の突出部149に重ならなくてもよいし、第2孔157は、第1面151に垂直な方向に見た平面視で、ホルダー140の突出部149に重ならなくてもよい。
【0074】
(C6)上述した各実施形態の液体噴射装置10において、固定板150,150bに設けられた第2孔157の開口形状は、第4方向D4に長尺なオーバル形である。これに対して、固定板150,150bに設けられた第2孔157の開口形状は、第4方向D4とは異なる方向に長尺なオーバル形でもよい。例えば、第2孔157の開口形状は、第3方向D3に長尺なオーバル形でもよい。この場合、第1孔156と第2孔157とが第3方向D3に沿って並んで配置されてもよい。
【0075】
(C7)上述した各実施形態の液体噴射装置10は、吸引機構60を備えている。これに対して、液体噴射装置10は、吸引機構60を備えなくてもよい。
【0076】
(C8)上述した各実施形態の液体噴射装置10は、払拭機構70を備えている。これに対して、液体噴射装置10は、払拭機構70を備えなくてもよい。
【0077】
(C9)上述した各実施形態の液体噴射装置10は、媒体Mを搬送する搬送機構40を備えている。これに対して、液体噴射装置10は、搬送機構40は、媒体Mを搬送せずに、ヘッドユニット30をY方向に沿って移動させることによって、媒体Mとヘッドユニット30とを相対移動させてもよい。
【0078】
(C10)上述した各実施形態の液体噴射装置10は、ラインプリンターとして構成されている。これに対して、液体噴射装置10は、シリアルプリンターとして構成されてもよい。この場合、液体噴射装置10は、液体噴射ヘッド100を保持し、媒体Mの搬送方向である+Y方向に直交するX方向に沿って往復移動するキャリッジを備えてもよい。
【0079】
(C11)
図14は、他の実施形態におけるヘッドユニット30の第1液体流出口Di1の構成を示す第1の断面図である。上述した各実施形態の液体噴射装置10において、
図5に示した圧力調整弁500に代えて、
図14に示す圧力調整部600がヘッドユニット30の分配流路部材31内に設けられてもよい。圧力調整部600は、ハウジング610と、可撓性を有するフィルム部材620とを備えている。ハウジング610内には、ダンパー室611と、流入路612と、流出路613とが設けられている。ダンパー室611は、ハウジング610に設けられた凹部の開口部をフィルム部材620で封止することで形成されている。ダンパー室611は、流入路612を介して個別流路FPに連通しており、流出路613を介して第1液体流出口Di1に連通している。第1液体流出口Di1には、液体噴射ヘッド100に設けられた供給針105が挿通されている。第1液体流出口Di1の内径と供給針105の外径とは略同一である。流入路612からダンパー室611内に流入したインクは、流出路613を介して液体噴射ヘッド100に供給される。ダンパー室611の内壁面の一部は、可撓性を有するフィルム部材620で構成されているので、フィルム部材620が撓むことによって、液体噴射ヘッド100に供給されるインクの圧力変動を抑制できる。
【0080】
(C12)
図15は、他の実施形態におけるヘッドユニット30の第1液体流出口Di1の構成を示す第2の断面図である。上述した各実施形態の液体噴射装置10において、
図5に示した圧力調整弁500が設けられなくてもよい。この場合、
図15に示すように、個別流路FPの端部に設けられた第1液体流出口Di1に、液体噴射ヘッド100に設けられた供給針105が挿通される。第1液体流出口Di1の内径と供給針105の外径とは略同一である。
【0081】
(C13)上述した各実施形態では、+X方向および+Y方向は、水平面に平行な方向であり、+Z方向は、重力方向であるが、これには限られない。例えば、ノズルNから液体が噴射される方向である+Z方向は、重力方向と異なる方向でもよく、そして、+X方向および+Y方向は、水平面に平行ではない方向であってもよい。
【0082】
(C14)上述した各実施形態の液体噴射装置10の吸引機構60は、排出路61の途中に排出路61を開閉するための開閉弁を有していてもよい。このような構成によれば、キャッピング中に当該開閉弁を閉じておくことでノズルNからのインクの蒸発をより低減できる。
【0083】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0084】
(1)本開示の一形態によれば、液体噴射装置が提供される。この液体噴射装置は、複数のノズルが設けられたノズルプレートを有する複数のヘッドチップと、前記複数のヘッドチップのそれぞれが有する前記ノズルプレートのそれぞれを露出させるための複数の開口部が設けられた固定板と、を有する液体噴射ヘッドと、前記固定板に設けられた環状の当接領域に当接可能なキャップと、を備える。前記固定板には、前記複数の開口部とは異なる第1孔および第2孔が設けられており、前記固定板は、前記当接領域が設けられた第1面、および、前記第1面に対して反対側の面であって前記複数のヘッドチップが固定される第2面を有し、前記複数の開口部は、前記第1面に垂直な方向に見た平面視で前記当接領域の内側に配置されており、前記第1孔および前記第2孔のそれぞれは、前記平面視で前記当接領域の内側に配置されており、充填剤によって閉塞されている。
この形態の液体噴射装置によれば、固定板の第1孔と第2孔とが当接領域の内側に配置されているので、液体噴射ヘッドの大型化を抑制できる。さらに、第1孔と第2孔とが充填剤によって閉塞されているので、固定板の当接領域にキャップを当接させる際に、固定板とキャップとで囲まれる空間のシール性を確保できる。
【0085】
(2)上記形態の液体噴射装置において、前記第1孔は、前記複数の開口部のうちの隣り合う2つの開口部の間に配置され、前記第2孔は、前記複数の開口部のうちの隣り合う2つの開口部の間に配置されてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、隣り合う開口部の間に第1孔と第2孔とが配置されない形態に比べて当接領域を小さくできるので、隣り合う開口部の間に第1孔と第2孔とが配置されない形態に比べて液体噴射ヘッドを小型化できる。
【0086】
(3)上記形態の液体噴射装置において、前記複数の開口部は、隣り合う第1開口部と第2開口部とを有し、前記第1孔および前記第2孔は、前記第1開口部と前記第2開口部との間に配置されてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、隣り合う開口部の間に第1孔と第2孔とが配置されない形態に比べて当接領域を小さくできるので、隣り合う開口部の間に第1孔と第2孔とが配置されない形態に比べて液体噴射ヘッドを小型化できる。
【0087】
(4)上記形態の液体噴射装置において、前記複数の開口部は、前記第1面に沿った第1方向に並んで配置され、前記複数の開口部のそれぞれは、前記第1面に沿った方向であり前記第1方向に直交する第2方向に長尺であり、前記第1孔と前記第2孔とは、前記第1方向において異なる位置に配置されてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、第1孔と第2孔との距離を広くすることができるので、第1孔と第2孔とを位置決め穴として用いた場合に、位置決め精度を確保しやすくできる。
【0088】
(5)上記形態の液体噴射装置において、前記複数の開口部は、前記第1面に沿った第1方向に並んで配置され、前記第1孔および前記第2孔は、前記第1面に沿った方向であり前記第1方向に直交する第2方向側の前記複数の開口部の各端部同士を結ぶ仮想線と、前記第2方向の反対方向側の前記複数の開口部の各端部同士を結ぶ仮想線と、の間に配置されてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、当接領域と各開口部との第2方向における間隔を狭くすることができるので、液体噴射ヘッドを第2方向において小型化できる。
【0089】
(6)上記形態の液体噴射装置において、前記液体噴射ヘッドは、前記複数のヘッドチップに固定されるホルダーを有し、前記ホルダーは、前記固定板の前記第2面に固定される外壁部を有し、前記第2面に対向する前記外壁部の先端部は、前記第2面との間に隙間を空けて配置される底面と、前記底面から前記固定板に向けて突出するとともに前記第2面に当接する複数の突出部を有し、前記複数の突出部は、第1突出部と第2突出部とを有し、前記第1孔は、前記平面視で前記第1突出部と重複し、前記第2孔は、前記平面視で前記第2突出部と重複してもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、ホルダーの底面の寸法がばらついたとしても、ホルダーの突出部と固定板の第2面とを寸法精度良く固定することができる。さらに、第1面に垂直な平面視で見て、第1孔が第1突出部に重複し、第2孔が第2突出部に重複するので、第1孔および第2孔を充填剤で閉塞させる際に、第1孔および第2孔から充填剤が流れることを抑制できるので、第1孔および第2孔を閉塞させやすくすることができる。
【0090】
(7)上記形態の液体噴射装置において、前記複数のヘッドチップは、前記第1面に沿った第1方向に並んで配置され、前記複数のヘッドチップのそれぞれは、前記第1方向および前記第1面に沿った方向であり前記第1方向に直交する第2方向の双方に交差する第3方向に長尺であり、前記複数のヘッドチップは、隣り合う第1ヘッドチップと第2ヘッドチップとを有し、前記第1開口部は、前記第1ヘッドチップを露出させ、前記第2開口部は、前記第2ヘッドチップを露出させ、前記外壁部は、前記第2方向において前記複数のヘッドチップを間に挟むように配置される第1外壁部と第2外壁部とを有し、前記第1外壁部は、前記第1方向に沿って設けられる第1直線部と、前記第1直線部から前記第2方向に突出する第1凸部と、を有し、前記第2外壁部は、前記第1方向に沿って設けられる第2直線部と、前記第1直線部から前記第2方向とは反対方向に突出する第2凸部と、を有し、前記第1凸部は、平面視で、前記第1直線部と、前記第1直線部に近い方の前記第1ヘッドチップの短辺と、前記第1ヘッドチップに近い方の前記第2ヘッドチップの長辺と、によって囲まれる領域内に設けられ、前記第2凸部は、平面視で、前記第2直線部と、前記第2直線部に近い方の前記第2ヘッドチップの短辺と、前記第2ヘッドチップに近い方の前記第1ヘッドチップの長辺と、によって囲まれる領域内に設けられ、前記第1突出部は、前記第1凸部の底面から突出し、前記第2突出部は、前記第2凸部の底面から突出してもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、ホルダーの底面の寸法がばらついたとしても、ホルダーの突出部と固定板の第2面とを寸法精度良く固定することができる。さらに、第1面に垂直な平面視で見て、第1孔が第1突出部に重複し、第2孔が第2突出部に重複するので、第1孔および第2孔を充填剤で閉塞させる際に、第1孔および第2孔から充填剤が流れることを抑制できるので、第1孔および第2孔を閉塞させやすくすることができる。さらに、ヘッドチップの長手方向を第3方向に沿わせてヘッドチップを配置したときに形成される領域内で、第1孔と第1突出部とが重複し、かつ、第2孔と第2突出部が重複するように配置できるので、液体噴射ヘッドの大型化を抑制できる。
【0091】
(8)上記形態の液体噴射装置において、前記第1孔と前記第2孔とは、前記第1面に沿った第4方向に並んで配置され、前記第1孔の形状および前記第2孔の形状のうちの一方は、円形であり、前記第1孔の形状および前記第2孔の形状のうちの他方は、前記第4方向に長尺なオーバル形であってもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッドの組み立ての際、第1孔および第2孔に位置決めピンを挿通して固定板の位置決めを行う場合に、固定板の製造誤差によって第1孔に対する第2孔の位置が第4方向にずれたとしても、第1孔および第2孔に位置決めピンを挿通させやすくできる。
【0092】
(9)上記形態の液体噴射装置は、前記キャップ内に連通する排出路と、前記排出路を介して前記キャップ内に負圧を発生させる吸引機構と、を備えてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、第1孔および第2孔が充填剤で閉塞されているので、キャップを固定板に当接させた際に、キャップと固定板とによって形成される空間が、第1孔や第2孔を介して大気に連通することを抑制できる。そのため、キャップと固定板とによって形成される空間に吸引機構によって効果的に負圧を発生させることができる。
【0093】
(10)上記形態の液体噴射装置は、前記液体噴射ヘッドに対して予め定められたワイピング方向に相対移動しながら前記ノズルプレートおよび前記固定板に接触することによって、前記ノズルプレートおよび前記固定板を払拭する払拭部材を備えてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、ノズルプレートおよび固定板を払拭する払拭部材を備える形態において、固定板とキャップとで囲まれる空間のシール性を確保できる。
【0094】
(11)上記形態の液体噴射装置において、前記第1孔および前記第2孔は、前記ワイピング方向に直交する方向において、前記複数のノズルが存在する範囲と前記当接領域との間に配置されてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、第1孔や第2孔に溜まった異物が払拭部材によって掻き出された場合に、払拭部材とともに移動する異物がノズルに接触することを抑制できるので、第1孔や第2孔から掻き出された異物によってノズルが傷付くことを抑制できる。
【0095】
(12)上記形態の液体噴射装置は、媒体を搬送する搬送機構を備えてもよい。
この形態の液体噴射装置によれば、搬送機構によって媒体を搬送する形態において、固定板とキャップとで囲まれる空間のシール性を確保できる。
【0096】
本開示は、液体噴射装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、液体噴射ヘッド、ヘッドユニット等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0097】
10…液体噴射装置、15…制御部、20…液体容器、21…供給路、30…ヘッドユニット、31…分配流路部材、32…支持部材、40…搬送機構、50…キャッピング機構、51…キャップユニット、52…キャップ移動部、53…キャップ、56…リブ、60…吸引機構、61…排出路、62…吸引ポンプ、63…廃液タンク、70…払拭機構、71…払拭部材、72…払拭部材移動部、100…液体噴射ヘッド、110…フィルターユニット、120…カバー部材、130…回路基板、140…ホルダー、145…外壁部、148…底面、149…突出部、150…固定板、151…第1面、152…第2面、155…開口部、156…第1孔、157…第2孔、160…充填剤、180…接着剤、200…ヘッドチップ、210…ノズルプレート