(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】波形処理支援装置および波形処理支援方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
G01N30/86 B
G01N30/86 D
G01N30/86 Q
(21)【出願番号】P 2020186860
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 剛
(72)【発明者】
【氏名】勝山 祐治
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 年伸
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191002(JP,A)
【文献】特開2004-037374(JP,A)
【文献】特開平08-233795(JP,A)
【文献】特表2016-532881(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092837(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置の分析結果を示す波形データから波形処理パラメータの値に基づいてピークを分離する波形処理を表示部を用いて支援する波形処理支援装置であって、
波形処理パラメータの複数の値に基づいて一または複数の波形データから分離された複数のピークについて、前記波形処理パラメータの複数の値と複数の波形処理結果との対応関係を複数のピーク分離情報として取得する取得部と、
前記取得部により取得された
前記複数のピーク分離情報に基づいて前記波形処理パラメータの各値の頑健性を判定する判定部と、
前記取得部により取得された
前記複数のピーク分離情報および前記判定部により算出された前記波形処理パラメータの各値の頑健性を示す頑健性情報を前記表示部に表示させる表示制御部とを備えた、波形処理支援装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記複数のピーク分離情報のうち予め定められた選択条件を満足する一または複数
のピーク分離情報を選択する第1の選択部を含み、
前記表示制御部は、前記第1の選択部により選択された一または複数の前記複数のピーク分離情報にそれぞれ対応する一または複数のピークの形状を前記表示部に表示させる、請求項1記載の波形処理支援装置。
【請求項3】
前記選択条件は、波形データにおけるピークの位置、ピークの種別、ピークの面積、ピークの強度、ピークの分離度および波形処理パラメータの値のうち少なくとも1つを含む、請求項2記載の波形処理支援装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記複数のピーク分離情報のうち、前記分析装置により得られた波形データにおける一のピークと同じまたは類似する形状を有する一または複数のピークに対応する一または複数のピーク分離情報を選択する第2の選択部を含み、
前記表示制御部は、前記第2の選択部により選択された一または複数
のピーク分離情報にそれぞれ対応する一または複数のピークの形状を前記表示部に表示させる、請求項2または3記載の波形処理支援装置。
【請求項5】
前記第2の選択部は、前記複数のピーク分離情報に対応する複数のピークから特徴を抽出し、抽出された特徴に基づくクラスタリング手法を用いて前記一のピークと同じまたは類似する形状を有する一または複数のピークを選択する、請求項4記載の波形処理支援装置。
【請求項6】
前記複数のピーク分離情報を記憶する記憶部と、
前記一または複数の波形データとは異なる波形データに前記波形処理を行う波形処理部と、
前記波形処理部により得られた波形処理結果を含む新たなピーク分離情報を前記記憶部に追加する情報追加部とをさらに備えた、請求項1~5のいずれか一項に記載の波形処理支援装置。
【請求項7】
前記波形処理部は、前記取得部により取得された一または複数のピーク分離情報に対応するピークについて前記波形処理パラメータの複数の値に基づいて波形処理を行うことにより、各ピークについて複数のピーク分離情報を生成し、
前記情報追加部は、前記波形処理部により生成された前記複数の波形処理結果を含むピーク分離情報を前記記憶部に追加する、請求項6記載の波形処理支援装置。
【請求項8】
同じ試料の複数回の分析により得られた複数の波形データの波形処理により得られる複数の波形処理結果の統計量を算出する統計部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記統計部により算出された統計量を前記表示部に表示させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の波形処理支援装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記取得部により取得された前記複数のピーク分離情報に基づいて前記波形処理パラメータの各値に対応する波形処理結果の再現性を算出し、算出された前記再現性に基づいて前記頑健性を判定する、請求項1~7のいずれか一項に記載の波形処理支援装置。
【請求項10】
前記分析装置による試料の分析条件および前記分析装置により得られた波形データの波形処理条件を含む分析メソッドファイルを作成する作成部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記波形処理パラメータの値を指定可能に前記頑健性情報を表示し、
前記作成部は、前記頑健性情報において指定された前記波形処理パラメータの値を含む分析メソッドファイルを作成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の波形処理支援装置。
【請求項11】
分析装置の分析結果を示す波形データから波形処理パラメータの値に基づいてピークを分離する波形処理を表示部を用いて支援する波形処理支援方法であって、
波形処理パラメータの複数の値に基づいて一または複数の波形データから分離された複数のピークについて、前記波形処理パラメータの複数の値と複数の波形処理結果との対応関係を複数のピーク分離情報として取得するステップと、
前記取得された複数のピーク分離情報に基づいて前記波形処理パラメータの各値の頑健性を判定するステップと、
前記取得された複数のピーク分離情報および前記判定された前記波形処理パラメータの各値の頑健性を示す頑健性情報を前記表示部に表示させるステップとを含む、波形処理支援方法。
【請求項12】
前記取得するステップは、前記複数のピーク分離情報のうち予め定められた選択条件を満足する一または複数の前記複数のピーク分離情報を選択することを含み、
前記表示させるステップは、前記選択された一または複数の前記複数のピーク分離情報にそれぞれ対応する一または複数のピークの形状を前記表示部に表示させることを含む、請求項11記載の波形処理支援方法。
【請求項13】
前記取得するステップは、前記複数のピーク分離情報のうち、前記分析装置により得られた波形データにおける一のピークに類似する形状を有する一または複数のピークに対応する一または複数のピーク分離情報を選択することを含み、
前記表示させるステップは、前記取得するステップにより取得された一または複数の前記複数のピーク分離情報にそれぞれ対応する一または複数のピークの形状を前記表示部に表示させることを含む、請求項11または12記載の波形処理支援方法。
【請求項14】
前記複数のピーク分離情報を記憶するステップと、
前記一または複数の波形データとは異なる波形データに前記波形処理を行うステップと、
前記異なる波形データの波形処理により得られた波形処理結果を含む新たなピーク分離情報を追加的に記憶するステップとをさらに含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の波形処理支援方法。
【請求項15】
前記頑健性を判定するステップは、前記取得された前記複数のピーク分離情報に基づいて前記波形処理パラメータの各値に対応する波形処理結果の再現性を算出し、算出された前記再現性に基づいて前記頑健性を判定することを含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の波形処理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形処理支援装置および波形処理支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の分析装置により分析結果として得られる波形データから、各ピークを分離するために波形処理が行われる。例えば、クロマトグラフ装置では、波形データとしてクロマトグラムが得られる。また、質量分析装置では、波形データとしてマススペクトルが得られる。波形データから各ピークを分離するためには、波形処理パラメータの値が設定される。波形処理パラメータとしては、“Width”および“Slope”等が用いられる(例えば、特許文献1参照)。“Width”は、波形処理においてピークであると判断する最も小さい半値全幅である。また、“Slope”は、ピークの立ち上がり位置および立ち下がり位置を判断する臨界的なピークの傾きの値である。使用者は、1種類または複数種類の波形処理パラメータの値を設定することにより、波形データから各ピークを分離する。波形処理結果としては、ピークの区間、ピークの強度、およびピークの面積等が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような波形処理では、使用者により設定される波形処理パラメータの値により各ピークについての波形処理結果が異なる。例えば、波形処理パラメータの値が不適切であると、複数のピークが1つのピークとして検出されること、またはノイズがピークとして検出されることがある。そのため、使用者は、波形処理パラメータの値を適切に決定することが必要である。しかしながら、波形処理パラメータの値を適切に決定することは容易ではない。
【0005】
また、同じ試料を同じ分析装置により同一条件で複数回分析した場合でも、分析装置の精度または分離カラムの劣化状況等により波形データにおける同一のピークの位置または形状が異なることがある。同一のピークの面積または強度等が異なる場合、定量分析の精度が低下する。そのため、分析装置の精度または分離カラムの劣化状況等により波形データに微小な変化が生じた場合でも、同じ波形処理結果を得ることが可能な高い頑健性を有する波形処理パラメータの値を決定することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、高い頑健性を有しかつ適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を容易に決定することを可能にする波形処理支援装置および波形処理支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に従う波形処理支援装置は、分析装置の分析結果を示す波形データから波形処理パラメータの値に基づいてピークを分離する波形処理を表示部を用いて支援する波形処理支援装置であって、波形処理パラメータの複数の値に基づいて一または複数の波形データから分離された複数のピークについて、波形処理パラメータの複数の値と複数の波形処理結果との対応関係を複数のピーク分離情報として取得する取得部と、取得部により取得された複数のピーク分離情報に基づいて波形処理パラメータの各値の頑健性を判定する判定部と、取得部により取得された複数のピーク分離情報および判定部により算出された波形処理パラメータの各値の頑健性を示す頑健性情報を表示部に表示させる表示制御部とを備える。
【0008】
本発明の他の局面に従う波形処理支援方法は、分析装置の分析結果を示す波形データから波形処理パラメータの値に基づいてピークを分離する波形処理を表示部を用いて支援する波形処理支援方法であって、波形処理パラメータの複数の値に基づいて一または複数の波形データから分離された複数のピークについて、波形処理パラメータの複数の値と複数の波形処理結果との対応関係を複数のピーク分離情報として取得するステップと、取得された複数のピーク分離情報に基づいて波形処理パラメータの各値の頑健性を判定するステップと、取得された複数のピーク分離情報および判定された波形処理パラメータの各値の頑健性を示す頑健性情報を表示部に表示させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い頑健性を有しかつ適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を容易に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る波形処理支援装置を含む分析システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】波形処理パラメータおよび波形処理を説明するための図である。
【
図3】波形処理パラメータおよび波形処理を説明するための図である。
【
図4】波形処理パラメータおよび波形処理を説明するための図である。
【
図5】波形処理パラメータおよび波形処理を説明するための図である。
【
図7】
図6の波形処理支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図6の波形処理支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図6の波形処理支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図6の波形処理支援装置により表示部の画面に表示される操作画像の一例を示す図である。
【
図11】
図6の波形処理支援装置により表示部の画面に表示される操作画像の一例を示す図である。
【
図12】
図6の波形処理支援装置により表示部の画面に表示される操作画像の一例を示す図である。
【
図13】
図6の波形処理支援装置により表示部の画面に表示される操作画像の一例を示す図である。
【
図14】
図6の波形処理支援装置により表示部の画面に表示される操作画像の一例を示す図である。
【
図15】
図6の波形処理支援装置により表示部の画面に表示される操作画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る波形処理支援装置および波形処理支援方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(1)分析システムの構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る波形処理支援装置を含む分析システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、分析システム100は、制御装置1および分析装置2を含む。
【0013】
制御装置1は、CPU(中央演算処理装置)110、RAM(ランダムアクセスメモリ)120、ROM(リードオンリメモリ)130、記憶部20、操作部30、表示部40および入出力I/F(インターフェイス)170により構成される。CPU110、RAM120、ROM130、記憶部20、操作部30、表示部40および入出力I/F50はバス60に接続される。CPU110、RAM120およびROM130が波形処理支援装置10を構成する。波形処理支援装置10の詳細については、後述する。
【0014】
RAM120は、CPU110の作業領域として用いられる。ROM130にはシステムプログラムが記憶される。記憶部20は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含む。記憶部20には、波形処理支援プログラムが記憶されている。波形処理支援プログラムは、波形処理支援装置10が波形処理支援動作を行うためのコンピュータプログラムである。波形処理支援プログラムは、ROM130または外部の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0015】
CPU110が記憶部20等に記憶された波形処理支援プログラムをRAM120上で実行することにより、波形処理支援動作が行われる。波形処理支援動作については、後述する。
【0016】
操作部30は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスであり、波形処理支援装置10に所定の指示を与えるために使用者により操作される。表示部40は、液晶表示装置等の表示デバイスである。入出力I/F50は、分析装置2に接続される。
【0017】
分析装置2は、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフまたは超臨界流体クロマトグラフ等のクロマトグラフであってもよく、または質量分析装置等であってもよい。本実施の形態において、分析装置2は液体クロマトグラフである。分析装置2は、表示部21を有する。
【0018】
分析装置2は、分析結果を示す波形データを生成する。分析装置2がクロマトグラフである場合には、波形データはクロマトグラムである。クロマトグラムの横軸は溶出時間(保持時間)であり、縦軸は信号強度である。分析装置2が質量分析装置である場合には、波形データはマススペクトルである。マススペクトルの横軸は質量電荷比(m/z)であり、縦軸は信号強度である。波形データの横軸を位置と呼ぶ。波形データの縦軸を強度と呼ぶ。本実施の形態において波形データは、クロマトグラムである。
【0019】
(2)波形処理パラメータおよび波形処理結果
波形処理支援装置10に与えられた波形データには、1種類または複数種類の波形処理パラメータの値に基づいてピークを分離するために波形処理が行われる。ここで、波形処理パラメータおよび波形処理について説明する。
図2~
図5は、波形処理パラメータおよび波形処理を説明するための図である。本実施の形態では、波形処理パラメータとして、“Slope”、“Width”、“Drift”およびピーク分離方法が用いられる。ピーク分離方法には、垂直分割、完全分離(ベースライン分離)およびテーリングまたはリーディング上の完全分離等がある。
【0020】
図2には“Slope”の値が異なる場合の波形処理結果が示される。“Slope”(単位:μV/min)は、ピーク開始点SPおよびピーク終了点EPを検出するための傾きのしきい値であり、ピークの検出感度を表す。
図2の左側の例では“Slope”の値がθ1に設定され、
図2の右側の例では“Slope”の値がθ1よりも大きいθ2に設定される。
【0021】
“Slope”の値に基づいて波形処理が行われると、左側のベースラインからピークに向かう波形の傾きが “Slope”の値になる位置がピーク開始点SPとして検出される。また、ピークから右側のベースラインに向かう波形の傾きが“Slope”の値になる位置がピーク終了点EPとして検出される。このように、“Slope”の値が異なると、検出されるピーク開始点SPおよびピーク終了点EPが異なる。
【0022】
図3には“Width”の値が異なる場合の波形処理結果が示される。“Width”(単位:sec)は、検出されるべきピークの半値幅の最小値である。
図3の左側の例では、“Width”の値がw1に設定され、図
3の右側の例では、“Width”の値がw1よりも大きいw2に設定される。
【0023】
“Width”の値に基づいて波形処理が行われると、図3の左側の例では、半値幅w1以上のピークがすべて検出される。例えば、ピークPaとピークPbとが分離される。一方、ノイズがピークPnとして検出される。図3の右側の例では、半値幅w2以上のピークPcのみが検出される。例えば、部分的に重なり合った隣接する2つのピークが1つのピークとして検出される。一方、ノイズnはピークとして検出されない。
【0024】
このように、“Width”の値が大きく設定された場合には、ノイズがピークとして検出されることを防止することができる。一方、“Width”の値が大きすぎる場合には、部分的に重なり合った隣接するピークが1つのピークとして検出されることがある。
【0025】
図4には、“Drift”の値によるピーク分離方法の違いが示される。Drift(単位:μV/min)は、ベースラインの変動のしきい値である。
図4には、複数のピークP1,P2,P3,P4および複数の極小点(ピーク間の谷)A,B,C,D,Eが示される。
図4の例では、“Drift”の値がθ3に設定される。
【0026】
“Drift”の値に基づいて波形処理が行われると、各極小点を通る傾きθ3のDrift設定線Lが描かれる。例えば、極小点Bは、極小点Aを通るDrift設定線Lよりも上方に位置する。この場合、極小点A,Bを結ぶ直線は、ベースラインとみなされない。これに対して、極小点Cは、極小点Aを通るDrift設定線Lよりも下方に位置する。この場合、極小点A,Cを結ぶベースライン補正線BL1が設定される。これにより、ピークP1,P2は、極小点Bで垂直分割される。極小点Dは、極小点Cを通るDrift設定線Lよりも下方に位置する。この場合、極小点C,Dを結ぶベースライン補正線BL2が設定される。これにより、ピークP3は完全分離される。同様に、極小点Eは、極小点Dを通るDrift設定線(図示せず)よりも下方に位置する。この場合、極小点D,Eを結ぶベースライン補正線BL3が設定される。これにより、ピークP4は完全分離される。
【0027】
“Drift”の値が小さく設定された場合には、各ピークが垂直分割されやすい。一方、“Drift”の値が大きく設定された場合には、各ピークが完全分離されやすい。このように、“Drift”の値によりピーク分離方法を異ならせることができる。
【0028】
ここで、ピークの分離方法について説明する。ピーク分離方法(垂直分割/完全分離)は、波形処理パラメータとして設定される場合と、“Drift”の値により波形処理結果として得られる場合とがある。本実施の形態においては、ピークの分離方法は、垂直分割および完全分離を含む。
図5の左側および右側の例では、部分的に重なり合った隣接するピークP5,P6が示される。
【0029】
図5の左側の例は、垂直分割を示す。垂直分割では、極小点A1,B1,C1からそれぞれ横軸に垂直な直線A1-A2、直線B1-B2および直線C1-C2が設定される。ピークP5,P6は、直線A1-A2、直線B1-B2および直線C1-C2によりそれぞれ分離される。ピークP5の面積は、極小点A1と極小点B1とを結ぶ曲線、直線A1-A2、直線B1-B2および横軸で囲まれた領域の面積である。ピークP6の面積は、極小点B1と極小点C1とを結ぶ曲線、直線B1-B2、直線C1-C2および横軸で囲まれた領域の面積である。
【0030】
図5の右側の例は、完全分離を示す。完全分離では、隣り合う極小点A1,B1を結ぶベースライン補助線BL5が設定され、隣り合う極小点B1,C1を結ぶベースライン補助線BL6が設定される。ピークP5,P6は、ベースライン補助線BL5,BL6によりそれぞれ分離される。ピークP5の面積は、極小点A1と極小点B1とを結ぶ曲線およびベースライン補助線BL5で囲まれた領域の面積である。ピークP6の面積は、極小点B1と極小点C1とを結ぶ曲線およびベースライン補助線BL6で囲まれた領域の面積である。
【0031】
このように、垂直分割により分離されたピークの面積は、完全分離により分離されたピークの面積よりも大きい。したがって、ピークに対応する成分を定量する場合には、同一成分のピークは同じ分離方法で分離されることが望ましい。
【0032】
なお、波形処理パラメータの値は、数値に限らず、ピーク分離方法が垂直分割であるか完全分離であるかを特定する識別情報をも含む。このような識別情報は、CPU110においては、デジタル値で表される。
【0033】
ここで、本実施の形態における波形処理による得られる波形処理結果について説明する。波形処理結果は、設定された1種類または複数種類の波形処理パラメータの値に基づいて波形データから各ピークを分離することにより得られる。波形処理結果は、ピークの開始点の位置、ピークの開始点の強度、ピークの終了点の位置、ピークの終了点の強度、ピークトップの位置、ピークトップの強度、ピークの面積、S/N(信号ノイズ比)、ピーク分離方法の種類(垂直分割/完全分離)等を含む。
【0034】
(3)波形処理支援装置10の機能的な構成
図6は、波形処理支援装置10の構成を示す図である。まず、波形処理支援装置10は、機能部として、対象波形データ選択部11、取得部12、判定部13、表示制御部14、波形処理部15、統計部16、情報追加部17および分析メソッドファイル作成部18を含む。本実施の形態では、波形処理支援装置10の各構成要素(11~18)は、
図1のCPU110がROM130または記憶部20に記憶される波形処理支援プログラムを実行することにより実現される。波形処理支援装置10の各構成要素(11~18)の一部または全てが電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0035】
記憶部20には、分析装置2により得られた一または複数の波形データが記憶される。本例では、分析装置2により得られた波形データが波形処理の対象となる。以下、波形処理の対象となる波形データを対象波形データと呼ぶ。
【0036】
また、一または複数の波形データの各ピークについて波形処理パラメータの値と波形処理結果との対応関係を示す情報をピーク分離情報と呼ぶ。記憶部20には、一または複数のピークについての一または複数のピーク分離情報が記憶される。本実施の形態では、記憶部20には、予め複数のピーク分離情報が記憶される。
【0037】
対象波形データ選択部11は、記憶部20に記憶された一または複数の波形データから対象波形データを選択し、選択された対象波形データを表示制御部14および波形処理部15に与える。
【0038】
取得部12は、第1の選択部12aおよび第2の選択部12bを含む。この取得部12は、記憶部20に記憶された複数のピーク分離情報から一部または全てのピーク分離情報を取得する。
【0039】
第1の選択部12aは、記憶部20に記憶された複数のピーク分離情報のうち予め定められた選択条件を満足する一または複数のピーク分離情報を選択する。本実施の形態において、例えば、第1の選択部12aは、記憶部20に記憶された複数のピーク分離情報のうち同じ位置または同じ区間に存在するピークに対応する複数のピーク分離情報を選択する。
【0040】
第2の選択部12bは、記憶部20に記憶される複数のピーク分離情報のうち、対象波形データにおける代表ピークに類似する形状を有する一または複数のピークを選択する。代表ピークは、対象波形データにおける複数のピークのうち使用者により選択されたピークである。第2の選択部12bは、記憶部20に記憶される複数のピーク分離情報に対応する複数のピークおよび代表ピークから特徴を抽出し、抽出された特徴に基づく階層クラスタリング等のクラスタリング手法を用いて代表ピークに類似する形状を有する一または複数のピークを選択する。特徴としては、各ピークの強度、隣り合うピーク間の谷の強度、隣り合うピークの強度、または隣り合うピークの分離度等を用いることができる。第2の選択部12bは、機械学習による特徴抽出器を含んでもよい。
【0041】
以下、第1の選択部12aまたは第2の選択部12bにより選択されたピーク分離情報を選択ピーク分離情報と呼ぶ。また、選択ピーク分離情報に対応するピークを選択ピークと呼ぶ。第1の選択部12aおよび第2の選択部12bは、ピーク分離方法の種類で複数の選択ピーク分離情報を分類してもよい。例えば、第1の選択部12aおよび第2の選択部12bは、複数の選択ピーク分離情報を垂直分割で分離された複数のピークに対応する複数の選択ピーク分離情報のクラスタと完全分離で分離された複数のピークに対応する複数の選択ピーク分離情報のクラスタとに分類してもよい。
【0042】
判定部13は、複数の選択ピーク分離情報に基づいて波形処理パラメータの各値に対応する波形処理結果の再現性を算出し、算出された再現性に基づいて各値の頑健性を判定する。具体的には、複数の選択ピーク分離情報における波形処理パラメータと同じ値により波形処理が行われた場合に同じまたは近似する波形処理結果が得られる回数が多いほど、波形処理結果の再現性が高い。波形処理結果の再現性は、例えば、ピークの面積の相対標準偏差((標準偏差/平均値)×100)で表される。また、波形処理結果の再現性は、元の波形処理パラメータで処理したピークの面積と新しい波形処理パラメータで処理したピークの面積との重なり比率(IоU)で表されてもよい。波形処理結果の高い再現性を得ることが可能な波形処理パラメータの値が連続的に並ぶ場合には、波形処理パラメータの値の並びの中央部が端部よりも高い頑健性を有する。以下、判定部により算出された波形処理パラメータの各値の頑健性の判定結果を示す情報を頑健性情報と呼ぶ。
【0043】
表示制御部14は、対象波形データ選択部11により選択された対象波形データを表示部40に表示させる。また、表示制御部14は、第1の選択部12aまたは第2の選択部12bから与えられる選択ピーク分離情報および選択ピークを表示部40に表示させるとともに、判定部13から与えられる頑健性情報を表示部40に表示させる。
【0044】
使用者は、表示部40に表示された選択ピーク分離情報、選択ピークおよび頑健性情報を視認することにより、対象波形データに波形処理を行うために設定すべき1種類または複数種類の波形処理パラメータの値を決定する。使用者は、決定された各波形処理パラメータの値を操作部30の操作により波形処理部15に設定する。また、使用者は、対象波形データの横軸の複数の区間ごとに波形処理パラメータの値を設定することもできる。この場合、各区間に設定された波形処理パラメータの値に基づいて各区間で波形処理が行われる。
【0045】
波形処理部15は、操作部30の操作により設定された1種類または複数種類の波形処理パラメータの値に基づいて、対象波形データに波形処理を行う。その結果、対象波形データにおける各ピークについて波形処理結果が得られる。それにより、新たなピーク分離情報が得られる。波形データにおける各ピークについての波形処理結果は、表示制御部14により表示部40に表示される。使用者は、表示部40に表示された波形処理結果を手動で修正することができる。例えば、使用者は、表示部40に表示されたピークの開始点および終了点の位置を操作部30を用いて修正することができる。この場合、波形処理部15は、記憶部20に記憶された複数のピーク分離情報に基づいて、修正後の波形処理結果を得るための波形処理パラメータの値を算出する。それにより、修正後の波形処理結果および算出された波形処理パラメータの値が新たなピーク分離情報として得られる。
【0046】
さらに、波形処理部15は、対象波形データの区間ごとに波形処理パラメータの異なる値に基づいて波形処理が行われた場合、複数の区間に設定された波形処理パラメータの複数の値で対象波形データの波形処理を行う。それにより、各区間の各ピークについて波形処理パラメータの複数の値に対応する複数の波形処理結果が得られる。この場合、各ピークについて新たな複数のピーク分離情報が得られる。
【0047】
統計部16は、同一の試料の複数回の分析により得られた複数の波形データの任意のピークについての複数の波形処理結果の統計量を算出する。統計量とは、例えば、複数の波形処理結果の平均値、最大値、最小値等をいう。例えば、統計部16は、複数の波形データにおける複数の選択ピークの面積、ピークの開始点、ピークの終了点またはピークトップの強度等の平均値、最大値または最小値等を統計量として算出する。本実施の形態において、統計部16は、複数の選択ピークの面積の平均値、最大値および最小値、各選択ピークの開始点の最大値および最小値、ならびに各選択ピークの終了点の最大値および最小値を算出する。統計部16により算出された統計量は、表示制御部14により表示部40に表示される。
【0048】
情報追加部17は、波形処理部15により得られた新たなピーク分離情報を記憶部20に追加する。それにより、記憶部20に記憶される複数のピーク分離情報の数が累積的に増加する。
【0049】
分析メソッドファイル作成部18は、分析装置2による試料の分析条件および波形データの波形処理条件を定義する分析メソッドファイルを作成する。
【0050】
(4)波形処理支援装置10の動作
図7~
図9は、
図6の波形処理支援装置10の動作の一例を示すフローチャートである。
図10~
図15は、
図6の波形処理支援装置10により表示部40の画面に表示される操作画像の一例を示す図である。本例では、使用者が波形処理パラメータである“Slope”の適切な値を決定する場合を説明する。他の種類の波形処理パラメータの値は、デフォルト値またはその他の値に固定されているものとする。以下の例では、分析装置2がクロマトグラフある。したがって、波形データはクロマトグラムである。
【0051】
まず、対象波形データ選択部11は、記憶部20に記憶された複数の波形データから対象波形データを選択する(
図7のステップS1)。表示制御部14は、選択された対象波形データを表示部40に表示させる(ステップS2)。
図10の例では、表示部40の画面の上部に、対象波形データ200aが表示されている。
【0052】
使用者は、操作部30を用いて対象波形データ200aに含まれる複数のピークのうち、1つの代表ピーク200bを画面上で選択する。表示制御部14は、代表ピーク200bが使用者により選択されたか否かを判定する(ステップS3)。代表ピーク200bが使用者により選択されない場合、ステップS3の判定が繰り返される。
【0053】
代表ピーク200bが選択されると、表示制御部14は、波形処理パラメータ設定ウィンドウ161を表示部40に表示させる(ステップS4)。
図10の例では、表示部40の画面上の下部に、波形処理パラメータ設定ウィンドウ161が表示される。波形処理パラメータ設定ウィンドウ161は、入力欄162~164、選択ボタン165~170、情報表示ボタン171および波形処理実行ボタン172を含む。
【0054】
入力欄162~164には、“Slope”、“Width”および“Drift”の値が入力される。選択ボタン165は、ピーク分離方法を垂直分割に設定する場合に選択される。選択ボタン166は、ピーク分離方法を完全分離に設定する場合に選択される。“Drift”の値が設定されると、ピーク分離方法が自動的に決定される。そのため、入力欄164に“Drift”の値が入力されると、選択ボタン165および166は選択不可になる。また、選択ボタン165および166のいずれか一方が選択されると、入力欄164の“Drift”の値は無視される。
【0055】
選択ボタン167は、
図6の第1の選択部12aの動作の実行を指示するために用いられる。選択ボタン167が選択されると、第1の選択部12aの動作が実行される。本例では、第1の選択部12aの選択条件は、溶出時間である。この場合、複数のピーク分離情報から代表ピークと同一の溶出時間の範囲内にある複数のピークについてのピーク分離情報が選択される。
【0056】
選択ボタン168は、
図6の第2の選択部12bの動作の実行を指示するために用いられる。選択ボタン168が選択されると、第2の選択部12bの動作が実行される。この場合、複数のピーク分離情報から代表ピークと同じまたは類似する形状を有する複数のピークについてのピーク分離情報が選択される。
【0057】
選択ボタン169は、表示部40に頑健性情報を表示させるために選択される。選択ボタン170は、表示部40に統計量を表示させるために選択される。情報表示ボタン171は、選択ボタン167~170のうち選択された選択ボタンにより指定される情報の表示を指示するために用いられる。波形処理実行ボタン172は、対象波形データ200aについての波形処理の実行を指示するために用いられる。
【0058】
本例では、使用者は、入力欄163および入力欄164に “Width”および“Drift”の値を入力する。なお、使用者は、入力欄163および入力欄164に予め入力されているデフォルト値を用いてもよい。この場合、選択ボタン165および選択ボタン166は、選択不可能な状態になる。続いて、使用者は、選択ボタン167および選択ボタン168のうち少なくとも一方を選択する。本例では、選択ボタン167および選択ボタン168の両方が選択される。
【0059】
この状態で、表示制御部14は、情報表示が指示されたか否かを判定する(ステップS5)。本例では、
図10の情報表示ボタン171が操作されたか否かが判定される。
【0060】
情報表示が指示された場合には、取得部12は、記憶部20に記憶された複数のピーク分離情報を取得する(ステップS6)。本例では、
図10の選択ボタン167,168が選択されているので、代表ピーク200bと同じ溶出時間の範囲内にありかつ代表ピークと同じまたは類似する形状を有する複数のピークが選択されるとともに、選択された複数のピークに対応する複数のピーク分離情報が選択される。
【0061】
表示制御部14は、取得部12により取得された一または複数のピークおよび一または複数のピーク分離情報を一または複数の選択ピークおよび一または複数のピーク分離情報として表示部40に表示させる(ステップS7)。本例では、
図11に示すように、ピーク分離情報表示ウィンドウ173に複数の選択ピーク173aの形状および複数の選択ピーク分離情報173bが表示される。各選択ピーク分離情報173bは、波形処理パラメータの値として“Slope”の値および波形処理結果としてピーク面積を含む。各選択ピーク173aにおいてハッチングが付された範囲が波形処理により波形データから分離されたピークの区間である。
【0062】
使用者は、画面に表示されたピーク分離情報表示ウィンドウ173を視認し、適切と考えられる波形処理結果が得られる波形処理パラメータの値がいずれであるかを判断することができる。例えば、使用者は、“Slope”が4、5および6である場合の波形処理結果(本例では、ピークの面積および区間)が適切であると考えることができる。
【0063】
また、判定部13は、複数の選択ピーク分離情報173bにおける波形処理パラメータの各値の頑健性を判定する(ステップS8)。具体的には、判定部13は、複数の選択ピーク分離情報173bの波形処理パラメータの各値の再現性を算出し、再現性に基づいて波形処理パラメータの値の頑健性を算出する。表示制御部14は、判定部13により得られた判定結果を頑健性情報として表示部40に表示させる(ステップS9)。本例では、
図11に示すように、表示部40の画面上に頑健性情報174が表示される。
図11の頑健性情報174の横軸は“Slope”の値を表し、縦軸は“Slope”の波形処理結果の再現性を表す。頑健性情報174は、例えば、相対標準偏差を示す再現性曲線174aとして表示される。
【0064】
使用者は、適切であると考えられる波形処理パラメータの値を複数個見出した場合、頑健性情報174を視認し、波形処理パラメータの複数個の値のうち最も高い頑健性を有する値を判断することができる。
図11の頑健性情報174によると、“Slope”の値が4~6に設定された場合に波形処理結果の再現性が最も高くなっている。高い再現性を有する波形処理パラメータの値の並びにおいて、両端よりも中央部の値が高い頑健性を有すると考えられる。
図11の例では、最も高い再現性を有する値の範囲の中央の点174bでの“Slope”の値は5である。この場合、使用者は、“Slope”の値5が高い頑健性を有すると判断することができる。
【0065】
さらに、使用者が頑健性情報174の点174bを選択すると、ピーク分離情報表示ウィンドウ173内の複数の選択ピーク173aのうち、“Slope”の値が5である選択ピーク173aが太い実線の枠で囲まれる。それにより、使用者は、選択された波形処理パラメータの値に対応する選択ピーク173aおよび選択ピーク分離情報173bを再度確認することができる。
【0066】
統計部16は、複数の選択ピーク分離情報に基づいて波形処理パラメータの同一の値により得られた複数の波形処理結果の統計量を算出する(ステップS10)。表示制御部14は、統計部16により算出された統計量を表示部40に表示させる(ステップS11)。本例では、
図11に示すように、複数の選択ピークの統計量175が表示部40の画面上に表示される。
図11の例では、ピーク分離情報表示ウィンドウ173に表示された複数の選択ピーク173aについてのピーク面積の平均値、最小値および最大値が表示されている。それにより、使用者は、波形処理パラメータの適切な値および範囲を統計量175に基づいて推測することができる。
【0067】
使用者は、ピーク分離情報表示ウィンドウ173、頑健性情報174および統計量175に基づいて波形処理パラメータの値として適切でかつ高い頑健性を有する値を決定する。
図11の例では、使用者は、“Slope”の値を5に決定する。
【0068】
図11の例では、表示部40の画面上に波形処理パラメータ入力ボタン176が表示される。表示制御部14は、波形処理パラメータの値の入力が指示されたか否かを判定する(ステップS12)。本例では、操作部30を用いて波形処理パラメータ入力ボタン176が操作されたか否かが判定される。波形処理パラメータの値の入力が指示されない場合、表示制御部14はステップS12の判定を繰り返す。
【0069】
波形処理パラメータの値の入力が指示されると、表示制御部14は、
図12に示すように、表示部40の画面上に波形処理パラメータ設定ウィンドウ161を表示させる。使用者は、決定した波形処理パラメータの値を入力欄162に入力する。本例では、使用者は、“Slope”の値として入力欄162に5を入力する。それにより、“Slope”の値が5に設定される。あるいは、使用者が
図11の頑健性情報174において波形処理パラメータの値を指定することにより、入力欄162に指定された値が入力されてもよい。また、使用者が
図11のピーク分離情報表示ウィンドウ173において1つの選択ピーク分離情報171aを指定することにより、入力欄162に指定された選択ピーク分離情報171aの波形処理パラメータの値が入力されてもよい。
【0070】
表示制御部14は、波形処理パラメータの値が入力されたか否かを判定する(
図8のステップS13)。
図12に示すように、入力欄162~164に“Slope”、“Width”および“Drift”の値がそれぞれ入力されると、波形処理実行ボタン172が選択可能になる。表示制御部14は、波形処理の実行が指示されたか否かを判定する(ステップS14)。本例では、波形処理実行ボタン172が操作部30を用いて操作されたか否かが判定される。波形処理の実行が指示されていない場合、ステップS14の判定が繰り返される。
【0071】
波形処理の実行が指示されると、波形処理部15は、対象波形データ200aに対して
図12の入力欄162~164に入力された“Slope”、“Width”および“Drift”の値に基づいて波形処理を実行する(ステップS15)。それにより、対象波形データ200aの各ピークについての波形処理結果が得られる。表示制御部14は、対象波形データ200aの各ピークについての波形処理結果を表示部40に表示させる(ステップS16)。本例では、対象波形データ200aのピーク“No.1”~“No.5”についての波形処理結果として、ピークの開始点、ピークの終了点、ピークの強度(ピークトップ強度)、ピークの面積およびピーク分離方法等が得られる。
図13の例では、表示部40の画面上に、各ピークについての波形処理結果を示す波形処理結果表示ウィンドウ177が表示される。
図13には、波形処理結果表示ウィンドウ177にピーク“No.2”についてのピーク面積、ピーク強度およびピーク分離方法が表示されている。使用者は、操作部30を用いて波形処理結果表示ウィンドウ177に他のピークについての波形処理結果を表示させることができる。
【0072】
本例では、
図13に示すように、表示部40の画面上に分析メソッドファイル作成ボタン199が表示される。表示制御部14は、分析メソッドファイルの作成が指示されたか否かを判定する(ステップS17)。本例では、分析メソッドファイル作成ボタン199が操作されたか否かが判定される。
【0073】
分析メソッドファイルの作成が指示された場合には、分析メソッドファイル作成部18は、波形処理条件として波形処理パラメータ設定ウィンドウ161において設定された複数の波形処理パラメータの値を含む分析メソッドファイルを作成する(ステップS18)。本例では、使用者が
図11の頑健性情報174において波形処理パラメータの値を指定した場合、指定された波形処理パラメータの値を含む分析メソッドファイルが作成される。作成された分析メソッドファイルは、記憶部20に記憶される。
【0074】
また、情報追加部17は、対象波形データ200aの各ピークの波形処理に用いられた1種類または複数種類の波形処理パラメータの値と波形処理結果とを新たなピーク分離情報として記憶部20に追加する(ステップS19)。この場合、情報追加部17は、各ピーク分離情報に対応するピークの形状も記憶部20に追加する。
図13の例では、ピーク“Nо.1”~“No.5”についてのピーク分離情報が各ピークの形状とともに記憶部20に追加される。
【0075】
使用者は、表示部40の画面上に表示された波形処理結果が所望の波形処理結果でないと考える場合、対象波形データ200aの各ピークの波形処理結果を手動で修正することができる。本例では、
図13に示すように、表示部40の画面上に手動波形処理ボタン182が表示される。この場合、使用者は、手動波形処理ボタン182を操作する。表示制御部14は、手動波形処理の実行が指示されたか否かを判定する(ステップS20)。本例では、手動波形処理ボタン182が操作されたか否かが判定される。
【0076】
手動波形処理の実行が指示された場合、表示制御部14は、
図14に示すように、表示部40に手動波形処理ウィンドウ190を表示させる(
図9のステップS21)。
図14の例では、手動波形処理ウィンドウ190は、ピーク表示ウィンドウ191、統計量表示ウィンドウ192および修正値表示ウィンドウ193を含む。
【0077】
ピーク表示ウィンドウ191には、代表ピーク200bの拡大図が表示されるとともに、ステップS15の波形処理により得られた波形処理結果のうちピーク開始点SPAおよびピーク終了点EPAが表示される。ピーク開始点SPAおよびピーク終了点EPAは、操作部30の操作により手動で修正可能である。
【0078】
統計量表示ウィンドウ192には、統計部16により算出された複数の選択ピークに関するピーク開始点の平均値、最小値および最大値ならびにピーク終了点の平均値、最小値および最大値が表示される。ピーク表示ウィンドウ191には、開始点設定範囲R1および終了点設定範囲R2が表示される。開始点設定範囲R1は、統計部16により算出されたピーク開始点の最小値から最大値までの範囲を示す。終了点設定範囲R2は、統計部16により算出されたピーク終了点の最小値から最大値までの範囲を示す。
【0079】
修正値表示ウィンドウ193は、ピーク開始点表示部194、ピーク終了点表示部195および選択ボタン196,197を含む。ピーク開始点表示部194には、ピーク開始点SPAの値が自動的に入力される。ピーク終了点表示部195には、ピーク終了点EPAの値が自動的に入力される。選択ボタン196は、ピーク分離方法を垂直分割に指定するために選択される。選択ボタン197は、ピーク分離方法を完全分離に指定するために選択される。
【0080】
使用者は、ピーク表示ウィンドウ191の開始点設定範囲R1内でピーク開始点SPAを修正することができる。また、使用者は、終了点設定範囲R2内でピーク終了点EPAを修正することができる。この場合、使用者は、統計量表示ウィンドウ192の統計量を参考にすることができる。また、使用者は、修正値表示ウィンドウ193のピーク開始点表示部194の値またはピーク終了点表示部195の値を修正することができる。この場合には、ピーク表示ウィンドウ191内のピーク開始点SPAの位置またはピーク終了点EPAの位置が自動的に変更される。さらに、使用者は、選択ボタン196,197いずれかの一方を選択することができる。それにより、使用者は、ピーク分離方法を修正することができる。
図14の例では、ピーク分離方法として垂直分割が指定されている。
【0081】
手動波形処理ウィンドウ190により波形処理結果が修正されると、修正後の波形処理結果を得るための波形処理パラメータの値が変更される。表示制御部14は、手動波形処理により波形処理結果が修正されたか否かを判定する(ステップS22)。手動波形処理により波形処理結果が修正されていない場合には、表示制御部14はステップS20に戻る。
【0082】
ステップS22で手動波形処理により波形処理結果が修正された場合には、波形処理部15は、修正後の波形処理結果を得るための波形処理パラメータの値を算出する(ステップS23)。この場合、波形処理部15は、記憶部20に記憶された複数のピーク分離情報を探索することにより修正後の波形処理結果と同じまたは類似する波形処理結果を得るための波形処理パラメータの値を検出する。
【0083】
図14に示すように、表示部40の画面上には、波形処理実行ボタン198が表示される。使用者は、波形処理実行ボタン198を操作することにより算出された波形処理パラメータの値を用いた波形処理の実行を指示することができる。
【0084】
表示制御部14は、波形処理の実行が指示されたか否かを判定する(ステップS24)。波形処理の実行が指示されていない場合には、波形処理部15はステップS20に戻る。
【0085】
ステップS24で波形処理の実行が指示された場合、波形処理部15は、算出された波形処理パラメータの値を用いて対象波形データ200aの波形処理を実行する(ステップS25)。それにより、対象波形データ200aの各ピークについて波形処理パラメータの値と波形処理結果との対応関係がピーク分離情報として得られる。表示制御部14は、表示部40に波形処理部15により得られた波形処理結果を表示させる(ステップS26)。
【0086】
図15の例では、
図13と同様に、表示部40の画面上に対象波形データ200a、波形処理パラメータ設定ウィンドウ161および波形処理結果表示ウィンドウ177が表示される。波形処理パラメータ設定ウィンドウ161には、修正後の波形処理結果を得るための波形処理パラメータの値が表示される。波形処理結果表示ウィンドウ177には、修正後の波形処理結果が表示される。
【0087】
情報追加部17は、波形処理部15により得られた各ピークについてのピーク分離情報を記憶部20に追加する(ステップS27)。その後、表示制御部14は、ステップS20に戻る。
【0088】
ステップS20において、手動波形処理の実行が指示されない場合には、
図6の波形処理支援装置10の動作が終了する。
【0089】
なお、対象波形データ200aの任意の区間ごとに波形処理パラメータの適切な値を設定する場合には、使用者が代表ピークの200bの区間を変更しながら
図7~
図9の処理が実行される。
【0090】
(5)実施の形態の効果
本実施の形態に係る波形処理支援装置10によれば、複数の選択ピーク173aの形状および複数の選択ピーク分離情報173bが表示部40に表示される。この場合、使用者は、表示された複数の選択ピーク173aの形状および複数の選択ピーク分離情報173bを視認することにより、適切な波形処理結果に対応する波形処理パラメータの値を認識することができる。また、頑健性情報174が表示部40に表示される。それにより、使用者は、頑健性情報を視認することにより、頑健性の高い波形処理パラメータの値を認識することができる。これらの結果、高い頑健性を有しかつ適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を容易に決定することができる。
【0091】
また、第1の選択部12aにより予め定められた選択条件を満足する一または複数のピーク分離情報が選択され、一または複数の選択ピーク173aの形状および選択ピーク分離情報173bが表示部40に表示される。それにより、使用者は、分析装置2により得られた波形データから所望のピークを分離するために適切な波形処理パラメータの値を容易に認識することができる。
【0092】
また、第2の選択部12bにより対象波形データ200aにおける代表ピーク200bに類似する形状を有する一または複数のピークについての一または複数のピーク分離情報が選択され、一または複数の選択ピーク173aの形状および選択ピーク分離情報173bが表示部40に表示される。それにより、使用者は、分析装置2により得られた波形データから所望のピークを分離するために適切な波形処理パラメータの値を容易に認識することができる。
【0093】
さらに、第2の選択部12bは、階層クラスタリング等のクラスタリング手法を用いて代表ピーク200bに類似する形状を有する一または複数のピークを選択する。それにより、代表ピーク200bと同じまたは類似する形状を有する一または複数のピークが容易かつ適切に選択される。
【0094】
また、情報追加部17は、波形処理部15により得られた新たなピーク分離情報を記憶部20に追加する。それにより、記憶部20に記憶される多様な複数のピーク分離情報の数が累積的に増加するので、高い頑健性を有しかつ適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を高い精度で決定することができる。
【0095】
また、統計部16は、同一の試料の複数回の分析により得られた複数の波形データの任意のピークについての複数の波形処理結果の統計量を算出する。また、統計部16により算出された統計量は、表示制御部14により表示部40に表示される。この場合、使用者は、複数の波形処理結果の統計量に基づいて、波形処理パラメータの適切な値を認識することができる。
【0096】
さらに、判定部13は、複数の選択ピーク分離情報173bの波形処理パラメータの各値の再現性を算出し、算出された再現性に基づいて波形処理パラメータの値の頑健性を算出する。この場合、同じ試料の複数回の分析により得られた複数の波形データの形状に変化があっても、波形処理結果の再現性が高い場合には波形処理結果の変動が小さい。したがって、波形処理パラメータの各値に対応する波形処理結果の再現性に基づいて波形処理パラメータの各値の頑健性を容易に判定することができる。
【0097】
また、使用者が頑健性情報174において波形処理パラメータの値を指定した場合、指定された波形処理パラメータの値を含む分析メソッドファイルが作成され、記憶部20に記憶される。それにより、同一の試料についての分析が行われる場合、記憶部20に記憶された分析メソッドファイルにより、分析装置2による試料の分析条件および波形データの波形処理条件を容易に決定することができる。
【0098】
(6)他の実施の形態
上記実施の形態の動作の例では、使用者が1種類の波形処理パラメータである“Slope”の適切な値を決定するための頑健性情報174が表示されるが、使用者が2種類以上の波形処理パラメータの適切な値を決定するための頑健性情報が表示されてもよい。
【0099】
図16は、2種類の波形処理パラメータの値の頑健性を示す頑健性情報の例を示す図である。
図16の縦軸は“Slope”の値を表し、横軸は“Width”の値を表す。
図16の頑健性情報においては、 “Slope”の値と“Width”の値との組み合わせについての波形処理結果の再現性がドットの濃淡で示されている。最も高い頑健性を有する波形処理パラメータの値の組み合わせが黒いドットで示される。中間の頑健性を有する波形処理パラメータの値の組み合わせがドットパターンを有するドットで示される。最も低い頑健性を有する波形処理パラメータの値の組み合わせが白いドットで示される。
図16の例では、使用者は、“Slope”の値5および“Width”の値4が高い頑健性を有すると判断することができる。
【0100】
図17は、3種類の波形処理パラメータの値の頑健性を示す頑健性情報の例を示す図である。
図17の頑健性情報は、互いに直交する第1~第3の軸を有する。第1~第3の軸は、それぞれ“Slope”の値、“Width”の値および“Drift”の値を表す。
図17の頑健性情報においても、
図16の頑健性情報と同様に、3種類の波形処理パラメータの値の組み合わせについての波形処理結果の再現性がドットの濃淡で示されている。
図17の例では、使用者は、“Slope”の値5、“Width”の値5および“Drift”の値4が高い頑健性を有すると判断することができる。
【0101】
上記実施の形態において、第1の選択部12aの選択条件は、溶出時間であるが、第1の選択部12aの選択条件は、波形データにおけるピークの種別(例えば、リーディングピークおよびテーリングピーク等)、ピークの面積、ピークの強度、ピークの分離度および波形処理パラメータの値のうち少なくとも1つを含んでもよい。それにより、特定の属性または波形処理パラメータの特定の値を有する一または複数のピークの形状が表示部40に表示される。この場合、使用者は、所望の波形処理結果を得るための波形処理パラメータの値を容易に認識することができる。
【0102】
上記実施の形態において、波形処理支援装置10は、機能部として、波形処理部15を含むが、波形処理支援装置10とは別に波形処理装置が設けられている場合、波形処理部15は含まなくてもよい。
【0103】
上記実施の形態において、表示部40が制御装置1に設けられるが、表示部40の機能として、分析装置2の表示部21が用いられてもよい。また、記憶部20が制御装置1に設けられるが、波形処理支援装置10が機能部として記憶部20を含んでもよい。
【0104】
(7)態様
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0105】
(第1項)一態様に係る波形処理支援装置は、分析装置の分析結果を示す波形データから波形処理パラメータの値に基づいてピークを分離する波形処理を表示部を用いて支援する波形処理支援装置であって、
波形処理パラメータの複数の値に基づいて一または複数の波形データから分離された複数のピークについて、波形処理パラメータの複数の値と複数の波形処理結果との対応関係を複数のピーク分離情報として取得する取得部と、
取得部により取得された複数のピーク分離情報に基づいて波形処理パラメータの各値の頑健性を判定する判定部と、
取得部により取得された複数のピーク分離情報および判定部により算出された波形処理パラメータの各値の頑健性を示す頑健性情報を表示部に表示させる表示制御部とを備えてもよい。
【0106】
一態様に係る波形処理支援装置によれば、波形処理パラメータの複数の値と複数の波形処理結果との対応関係が複数のピーク分離情報として表示部に表示される。それにより、使用者は、表示された複数のピーク分離情報を視認することにより、使用者は、適切な波形処理結果に対応する波形処理パラメータの値を認識することができる。また、波形処理パラメータの各値の頑健性を示す頑健性情報が表示部に表示される。それにより、使用者は、頑健性情報を視認することにより、頑健性の高い波形処理パラメータの値を認識することができる。これらの結果、高い頑健性を有しかつ適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を容易に決定することができる。
【0107】
(第2項) 第1項に記載の波形処理支援装置において、
取得部は、複数のピーク分離情報のうち予め定められた選択条件を満足する一または複数のピーク分離情報を選択する第1の選択部を含み、
表示制御部は、第1の選択部により選択された一または複数のピーク分離情報にそれぞれ対応する一または複数のピークの形状を表示部に表示させてもよい。
【0108】
第2項に記載の波形処理支援装置によれば、使用者は、表示された一または複数のピークの形状および波形処理結果に基づいて、適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を容易かつ迅速に認識することができる。
【0109】
(第3項) 第2項に記載の波形処理支援装置において、選択条件は、波形データにおけるピークの位置、ピークの種別、ピークの面積、ピークの強度、ピークの分離度および波形処理パラメータの値のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0110】
第3項に記載の波形処理支援装置によれば、特定の属性または波形処理パラメータの特定の値を有する一または複数のピークについてのピーク分離情報が表示部に表示される。それにより、使用者は、所望の波形処理結果を得るための波形処理パラメータの値を容易に認識することができる。
【0111】
(第4項) 第2または3項に記載の波形処理支援装置において、
取得部は、複数のピーク分離情報のうち、分析装置により得られた波形データにおける一のピークと同じまたは類似する形状を有する一または複数のピークに対応する一または複数のピーク分離情報を選択する第2の選択部を含み、
表示制御部は、第2の選択部により選択された一または複数のピーク分離情報にそれぞれ対応する一または複数のピークの形状を表示部に表示させてもよい。
【0112】
第4項に記載の波形処理支援装置によれば、一のピークと同じまたは類似する形状を有する一または複数のピークが表示部に表示される。それにより、使用者は、分析装置により得られた波形データから所望のピークを分離するために適切な波形処理パラメータの値を容易に認識することができる。
【0113】
(第5項) 第4項に記載の波形処理支援装置において、
第2の選択部は、記憶部に記憶される複数のピーク分離情報に対応する複数のピークから特徴を抽出し、抽出された特徴に基づくクラスタリング手法を用いて一のピークと同じまたは類似する形状を有する一または複数のピークを選択してもよい。
【0114】
第5項に記載の波形処理支援装置によれば、一のピークと同じまたは類似する形状を有する一または複数のピークが容易かつ適切に選択される。
【0115】
(第6項) 第1項~第5項のいずれか一項に記載の波形処理支援装置は、
複数のピーク分離情報を記憶する記憶部と、
一または複数の波形データとは異なる波形データに波形処理を行う波形処理部と、
波形処理部により得られた波形処理結果を含む新たなピーク分離情報を記憶部に追加する情報追加部とをさらに備えてもよい。
【0116】
第6項に記載の波形処理支援装置によれば、記憶部に記憶される複数のピーク分離情報の数が累積的に増加するので、波形処理パラメータの値の決定の精度が向上する。
【0117】
(第7項) 第6項に記載の波形処理支援装置において、
波形処理部は、取得部により取得された一または複数のピーク分離情報に対応するピークについて波形処理パラメータの複数の値に基づいて波形処理を行うことにより、各ピークについて複数のピーク分離情報を生成し、
情報追加部は、波形処理部により生成された複数の波形処理結果を含むピーク分離情報を記憶部に追加してもよい。
【0118】
第7項に記載の波形処理支援装置によれば、多様なピーク分離情報が記憶部に記憶される。それにより、使用者は、高い頑健性を有しかつ適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を高い精度で決定することができる。
【0119】
(第8項) 第1項~第7項のいずれか一項に記載の波形処理支援装置は、
同じ試料の複数回の分析により得られた複数の波形データの波形処理により得られる複数の波形処理結果の統計量を算出する統計部をさらに備え、
表示制御部は、統計部により算出された統計量を表示部に表示させてもよい。
【0120】
第8項に記載の波形処理支援装置によれば、使用者は、複数の波形処理結果の統計量に基づいて、波形処理パラメータの適切な値を認識することができる。
【0121】
(第9項) 第1項~第7項のいずれか一項に記載の波形処理支援装置において、
判定部は、取得部により取得された複数のピーク分離情報に基づいて波形処理パラメータの各値に対応する波形処理結果の再現性を算出し、算出された再現性に基づいて頑健性を判定してもよい。
【0122】
第9項に記載の波形処理支援装置によれば、同じ試料の複数回の分析により得られた複数の波形データの形状に変化があっても、波形処理結果の再現性が高い場合には波形処理結果の変動が小さい。したがって、波形処理パラメータの各値に対応する波形処理結果の再現性に基づいて波形処理パラメータの各値の頑健性を容易に判定することができる。
【0123】
(第10項) 第1項~第9項のいずれか一項に記載の波形処理支援装置は、
分析装置による試料の分析条件および分析装置により得られた波形データの波形処理条件を含む分析メソッドファイルを作成する作成部をさらに備え、
表示制御部は、波形処理パラメータの値を指定可能に頑健性情報を表示し、
作成部は、頑健性情報において指定された波形処理パラメータの値を含む分析メソッドファイルを作成してもよい。
【0124】
第10項に記載の波形処理支援装置によれば、使用者が頑健性情報において波形処理パラメータの値を指定した場合、指定された波形処理パラメータの値を含む分析メソッドファイルが作成される。それにより、同一の試料についての分析が行われる場合、作成された分析メソッドにより、分析装置による試料の分析条件および波形データの波形処理条件を容易に決定することができる。
【0125】
(第11項) 他の態様に係る波形処理支援方法は、分析装置の分析結果を示す波形データから波形処理パラメータの値に基づいてピークを分離する波形処理を表示部を用いて支援する波形処理支援方法であって、
波形処理パラメータの複数の値に基づいて一または複数の波形データから分離された複数のピークについて、波形処理パラメータの複数の値と複数の波形処理結果との対応関係を複数のピーク分離情報として取得するステップと、
取得された複数のピーク分離情報に基づいて波形処理パラメータの各値の頑健性を判定するステップと、
取得された複数のピーク分離情報および判定された波形処理パラメータの各値の頑健性を示す頑健性情報を表示部に表示させるステップとを含んでもよい。
【0126】
他の態様に係る波形処理支援方法によれば、波形処理パラメータの複数の値と複数の波形処理結果との対応関係が複数のピーク分離情報として表示部に表示される。それにより、使用者は、表示された複数のピーク分離情報を視認することにより、適切な波形処理結果に対応する波形処理パラメータの値を認識することができる。また、波形処理パラメータの各値の頑健性を示す頑健性情報が表示部に表示される。それにより、使用者は、頑健性情報を視認することにより、頑健性の高い波形処理パラメータの値を認識することができる。これらの結果、高い頑健性を有しかつ適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を容易に決定することができる。
【0127】
(第12項) 第11項に記載の波形処理支援方法において、
取得するステップは、複数のピーク分離情報のうち予め定められた選択条件を満足する一または複数のピーク分離情報を選択することを含み、
表示させるステップは、選択された一または複数のピーク分離情報にそれぞれ対応する一または複数のピークの形状を表示部に表示させることを含んでもよい。
【0128】
第12項に記載の波形処理支援方法によれば、使用者は、表示された一または複数のピークの形状および波形処理結果に基づいて、適切な波形処理結果を得ることが可能な波形処理パラメータの値を容易かつ迅速に認識することができる。
【0129】
(第13項) 第11または12項に記載の波形処理支援方法において、
取得するステップは、複数のピーク分離情報のうち、分析装置により得られた波形データにおける一のピークに類似する形状を有する一または複数のピークに対応する一または複数のピーク分離情報を選択することを含み、
表示させるステップは、取得するステップにより取得された一または複数のピーク分離情報にそれぞれ対応する一または複数のピークの形状を表示部に表示させてもよい。
【0130】
第13項に記載の波形処理支援方法によれば、一のピークと同じまたは類似する形状を有する一または複数のピークが表示部に表示される。それにより、使用者は、分析装置により得られた波形データから所望のピークを分離するために適切な波形処理パラメータの値を容易に認識することができる。
【0131】
(第14項) 第11~第13項のいずれか一項に記載の波形処理支援方法は、
複数のピーク分離情報を記憶するステップと、
一または複数の波形データとは異なる波形データに波形処理を行うステップと、
異なる波形データの波形処理により得られた波形処理結果を含む新たなピーク分離情報を追加的に記憶するステップとをさらに含んでもよい。
【0132】
第14項に記載の波形処理支援方法によれば、記憶部に記憶される複数のピーク分離情報の数が累積的に増加するので、波形処理パラメータの値の決定の精度が向上する。
【0133】
(第15項) 第11~第14項のいずれか一項に記載の波形処理支援方法において、
頑健性を判定するステップは、取得された複数のピーク分離情報に基づいて波形処理パラメータの各値に対応する波形処理結果の再現性を算出し、算出された再現性に基づいて頑健性を判定することを含んでもよい。
【0134】
第15項に記載の波形処理支援方法によれば、同じ試料の複数回の分析により得られた複数の波形データの形状に変化があっても、波形処理結果の再現性が高い場合には波形処理結果の変動が小さい。したがって、波形処理パラメータの各値に対応する波形処理結果の再現性に基づいて波形処理パラメータの各値の頑健性を容易に判定することができる。
【符号の説明】
【0135】
1…制御装置,2…分析装置,10…波形処理支援装置,11…対象波形データ選択部,12…取得部,12a…第1の選択部,12b…第2の選択部,13…判定部,14…表示制御部,15…波形処理部,16…統計部,17…情報追加部,18…分析メソッドファイル作成部,20…記憶部,21…表示部,30…操作部,40…表示部,50…入出力I/F,60…バス,100…分析システム,110…CPU,120…RAM,130…ROM,161…波形処理パラメータ設定ウィンドウ,162,163…入力欄,165~170…選択ボタン,171…情報表示ボタン,171a…選択ピーク分離情報,172…波形処理実行ボタン,173…ピーク分離情報表示ウィンドウ,173a…選択ピーク,173b…選択ピーク分離情報,174…頑健性情報,174a…再現性曲線,175…統計量,176…波形処理パラメータ入力ボタン,177…波形処理結果表示ウィンドウ,182…手動波形処理ボタン,190…手動波形処理ウィンドウ,191…ピーク表示ウィンドウ,192…統計量表示ウィンドウ,193…修正値表示ウィンドウ,194…ピーク開始点表示部,195…ピーク終了点表示部,196,197…選択ボタン,198…波形処理実行ボタン,199…分析メソッドファイル作成ボタン,200a…対象波形データ,200b…代表ピーク