(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】シートリフタ装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20240402BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60N2/16
A47C7/02 D
(21)【出願番号】P 2020187133
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶野 佑介
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147267(JP,A)
【文献】特開2019-202664(JP,A)
【文献】特開2020-046017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0273319(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/16
A47C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ハンドルの回転操作量に応じてシートを昇降させる出力軸を備えたシートリフタ装置であって、
前記出力軸を回転可能なように支持する支持部と、
該支持部に回転可能なように連結されて前記操作ハンドルと一体的に連結される入力部と、
該入力部の回転を前記出力軸に伝達する送り部であって、前記入力部の中立位置からの双方向の回転は前記出力軸に伝達するが前記入力部が前記中立位置に戻される回転は前記出力軸に伝達しないラチェット式の前記送り部と、
前記出力軸の回転を前記支持部に対してロックするロック部であって、前記入力部が前記中立位置から回転する動作を受けて前記出力軸のロックを解除し前記入力部が前記中立位置に戻される動作を受けて前記出力軸の回転をロックする前記ロック部と、
前記出力軸と共に回転する回転部材と前記支持部との間に設けられる摩擦発生部であって、前記入力部が前記シートを下降させる方向に回転する動作を受けて前記回転部材と前記支持部との間に摩擦力を付与して前記シートの自重に伴う前記出力軸の先行回転を止める前記摩擦発生部と、
前記出力軸と前記送り部との間の動力伝達経路に設けられる滑り防止部であって、前記入力部が前記中立位置から回転する動作により前記送り部の回転を前記出力軸に伝達するが、前記入力部が前記シートを下降させる方向に回転する際、前記出力軸が前記摩擦発生部の摩擦力に抗して前記送り部よりも先行して回転する滑りを生じた場合に該滑りの動作を受けて弾発力により前記支持部と嵌合し前記滑りを止める前記滑り防止部と、を有するシートリフタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートリフタ装置であって、
前記滑り防止部が、前記支持部に対して軸方向に嵌合するシートリフタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシートリフタ装置であって、
前記滑り防止部が、前記支持部との嵌合状態から、前記送り部が前記入力部の回転により前記滑りを解消する位置まで回転する動作を受けて前記弾発力に抗して前記支持部との嵌合状態から外されるシートリフタ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシートリフタ装置であって、
前記滑り防止部が、前記入力部が前記中立位置にある状態でも前記弾発力により前記支持部と嵌合し、前記入力部が前記シートを下降させる方向に回転することで前記弾発力に抗して前記支持部との嵌合状態から外され、前記入力部が前記シートを上昇させる方向に回転する時には前記支持部に対する傾斜面の当たりにより前記弾発力に抗して前記支持部との嵌合状態から外される構成とされて前記出力軸の回転を許容するシートリフタ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシートリフタ装置であって、
前記滑り防止部が、前記入力部が前記中立位置から前記シートを下降させる方向に回転する動作に伴い、前記ロック部が前記出力軸のロックを解除する前に前記支持部との嵌合状態から外されるシートリフタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートリフタ装置に関する。詳しくは、操作ハンドルの回転操作量に応じてシートを昇降させる出力軸を備えたシートリフタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいて、シートクッションの座面高さを調節可能なシートリフタ装置を備えた構成が知られている(特許文献1)。具体的には、シートリフタ装置は、操作ハンドルを上げたり下げたりする操作によって、その操作移動量をギヤの送り回転移動量として伝達して、座面高さを一定量ずつ上げたり下げたりするようになっている。そして、シートリフタ装置は、操作ハンドルの操作が解かれることにより、上記ギヤの回転をその位置でロックすると共に、操作ハンドルを操作前の中立位置へと付勢により戻して再操作が可能な初期状態へと戻されるようになっている。
【0003】
上記操作ハンドルの操作に伴うギヤの送り回転は、同ギヤに噛合された送り爪が操作ハンドルの操作方向に押し動かされることにより行われる。また、操作ハンドルの操作が解かれた際のギヤの回転ロックは、次のように行われる。すなわち、上記ギヤに噛合された一対の対称構造から成るロックポールが、操作ハンドルの操作に伴って一方が外されると共に、他方が送り方向には回転を逃がすが逆方向には食い込むラチェット式の噛合構造とされていて、操作ハンドルの操作が解かれることで、その位置で上記他方がギヤの回転を止めるというものである。
【0004】
上記ギヤの送り回転を行う送り爪は、操作ハンドルの操作が解かれた際の中立位置へと戻される動きを許容できるように、上記のロックポールと同様、一対の対称な爪構造から成り、操作ハンドルの操作に伴って一方がギヤから外されると共に他方がギヤに対して送り方向には動力伝達可能に噛合するが逆方向には回転を逃がすラチェット式の噛合構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、出力軸に常時、摩擦力が掛けられて、操作ハンドルが下げられた際のシートの自重による出力軸の滑りを食い止める構成とされている。しかし、シートに上記摩擦力を越える過大な荷重が入力された場合には、シートが操作ハンドルの回転操作量を越えて下降するおそれがある。そこで、本発明は、下降操作時のシートの滑りを適切に止めることが可能なシートリフタ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のシートリフタ装置は次の手段をとる。
【0008】
すなわち、本発明のシートリフタ装置は、操作ハンドルの回転操作量に応じてシートを昇降させる出力軸を備えたシートリフタ装置である。このシートリフタ装置は、出力軸を回転可能なように支持する支持部と、支持部に回転可能なように連結されて操作ハンドルと一体的に連結される入力部と、を有する。また、シートリフタ装置は、入力部の回転を出力軸に伝達する送り部と、出力軸の回転を支持部に対してロックするロック部と、を有する。また、シートリフタ装置は、出力軸と共に回転する回転部材と支持部との間に設けられる摩擦発生部と、出力軸と送り部との間の動力伝達経路に設けられる滑り防止部と、を有する。
【0009】
送り部は、入力部の中立位置からの双方向の回転は出力軸に伝達するが、入力部が中立位置に戻される回転は出力軸に伝達しないラチェット式の構成とされる。ロック部は、入力部が中立位置から回転する動作を受けて出力軸のロックを解除し、入力部が中立位置に戻される動作を受けて出力軸の回転をロックする。摩擦発生部は、入力部がシートを下降させる方向に回転する動作を受けて回転部材と支持部との間に摩擦力を付与してシートの自重に伴う出力軸の先行回転を止める。滑り防止部は、入力部が中立位置から回転する動作により送り部の回転を出力軸に伝達するが、入力部がシートを下降させる方向に回転する際、出力軸が摩擦発生部の摩擦力に抗して送り部よりも先行して回転する滑りを生じた場合に、この滑りの動作を受けて弾発力により支持部と嵌合し滑りを止める。
【0010】
上記構成によれば、入力部がシートを下降させる方向に回転操作されることで、ロック部のロックが解除され、送り部を介して出力軸がシートを下降させる回転方向に送られる。その際、出力軸は、摩擦発生部により、シートの自重に伴う滑り回転が止められる。また、出力軸は、上記摩擦発生部の摩擦力を越える下降回転方向の過大な荷重が出力側から入力されたとしても、滑り防止部が支持部と嵌合することで、滑り回転が防止される。したがって、下降操作時のシートの滑りを適切に止めることができる。
【0011】
また、本発明のシートリフタ装置は、更に次のように構成されていてもよい。滑り防止部が、支持部に対して軸方向に嵌合する。
【0012】
上記構成によれば、滑り防止部を比較的省スペースに構成することができる。
【0013】
また、本発明のシートリフタ装置は、更に次のように構成されていてもよい。滑り防止部が、支持部との嵌合状態から、送り部が入力部の回転により滑りを解消する位置まで回転する動作を受けて弾発力に抗して支持部との嵌合状態から外される。
【0014】
上記構成によれば、滑り防止部が支持部と嵌合した後も、送り部が滑りを解消する位置まで回転することで、滑り防止部を再度機能させられる状態に復帰させることができる。
【0015】
また、本発明のシートリフタ装置は、更に次のように構成されていてもよい。滑り防止部が、入力部が中立位置にある状態でも弾発力により支持部と嵌合し、入力部がシートを下降させる方向に回転することで弾発力に抗して支持部との嵌合状態から外される構成とされる。また、滑り防止部は、入力部がシートを上昇させる方向に回転する時には、支持部に対する傾斜面の当たりにより弾発力に抗して支持部との嵌合状態から外される構成とされて出力軸の回転を許容する。
【0016】
上記構成によれば、入力部が中立位置にある時にも、出力軸の滑りを防止することができる。なおかつ、そのような構成でありながらも、滑り防止部を、入力部のシートを上昇させる方向の回転操作を阻害しない構成とすることができる。
【0017】
また、本発明のシートリフタ装置は、更に次のように構成されていてもよい。滑り防止部が、入力部が中立位置からシートを下降させる方向に回転する動作に伴い、ロック部が出力軸のロックを解除する前に支持部との嵌合状態から外される。
【0018】
上記構成によれば、ロック部が先に解除されて滑り防止部に過大な負荷が掛かることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態に係るシートリフタ装置の概略構成を表した外側面図である。
【
図2】同外側面側の構造をシート幅方向の内側から見た側面図である。
【
図3】操作ハンドル及び回転制御装置をシートクッションのサイドフレームから外した状態を示す分解斜視図である。
【
図4】回転制御装置をシート幅方向の外側から見た斜視図である。
【
図5】回転制御装置をシート幅方向の内側から見た斜視図である。
【
図6】回転制御装置をシート幅方向の外側から見た正面図である。
【
図9】回転制御装置の右側半分の構成をシート幅方向の外側から見た分解斜視図である。
【
図10】回転制御装置の左側半分の構成をシート幅方向の外側から見た分解斜視図である。
【
図11】回転制御装置の右側半分の構成をシート幅方向の内側から見た分解斜視図である。
【
図12】回転制御装置の左側半分の構成をシート幅方向の内側から見た分解斜視図である。
【
図13】回転制御装置の一部の組み付け状態を表した分解斜視図である。
【
図14】回転制御装置の一部の組み付け状態を表した分解斜視図である。
【
図15】回転制御装置の一部の更なる組み付け状態を表した分解斜視図である。
【
図16】回転制御装置の一部の更なる組み付け状態を表した分解斜視図である。
【
図17】操作ハンドルが中立位置にある時の送り部の状態を表した模式図である。
【
図18】操作ハンドルが中立位置にある時のロック部の状態を表した模式図である。
【
図19】操作ハンドルが中立位置から押し下げられた時の送り部の状態を表した模式図である。
【
図20】操作ハンドルが中立位置から押し下げられた時のロック部の状態を表した模式図である。
【
図21】操作ハンドルが更に押し下げられた時のロック部の状態を表した模式図である。
【
図22】操作ハンドルが中立位置へ戻された時の送り部の状態を表した模式図である。
【
図23】操作ハンドルが中立位置へ戻された時のロック部の状態を表した模式図である。
【
図24】操作ハンドルが中立位置から引き上げられた時の送り部の状態を表した模式図である。
【
図25】操作ハンドルが中立位置から引き上げられた時のロック部の状態を表した模式図である。
【
図26】操作ハンドルが更に引き上げられた時のロック部の状態を表した模式図である。
【
図27】操作ハンドルが中立位置へ戻された時の送り部の状態を表した模式図である。
【
図28】操作ハンドルが中立位置へ戻された時のロック部の状態を表した模式図である。
【
図29】操作ハンドルが中立位置にある時の入力部の状態を表した正面図である。
【
図34】下降操作時に出力軸に滑りが生じた場合の
図19に対応する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
《第1の実施形態》
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートリフタ装置10の構成について、
図1~
図38を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、後述するシート1の左右方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図16のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0022】
<シートリフタ装置10の概略構成について>
本実施形態に係るシートリフタ装置10は、自動車のシート1に適用されている。上記シート1は、
図1~
図2に示すように、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備える。シートバック2は、シートクッション3の後端部に、不図示のリクライナを介して、背凭れ角度の調節を行えるように連結された構成とされる。シートクッション3は、車両のフロアF上に、左右一対のレール構造を備えるシートスライド装置4を介して、前後方向の位置調節を行えるように連結された構成とされる。
【0023】
また、シートクッション3は、上記左右一対のレール構造を備えるシートスライド装置4との間に、左右一対のリンク構造を備えるシートリフタ装置10が連結された構成とされる。上記シートリフタ装置10を介した連結により、シートクッション3は、フロアFに対する高さ方向の位置調節も行えるようになっている。
【0024】
シートスライド装置4は、公知のものであり、前後方向に延びる左右一対のロアレール4aと、各ロアレール4aに対して前後方向に摺動可能なように組み付けられた左右一対のアッパレール4bと、を備える。左右一対のロアレール4aは、それぞれ、前後一対のレッグ4cを介してフロアF上に固定されている。
【0025】
シートリフタ装置10は、各アッパレール4b上に固定された支持ブラケット14と、各支持ブラケット14とシートクッション3の各サイドフレーム3aとの間にそれぞれ連結された前後一対のリンク部材11と、を備える。上記連結により、シートリフタ装置10は、各側のサイドフレーム3aと支持ブラケット14との間で、前後一対のリンク部材11がそれぞれリンク運動を行う、左右一対の4節リンク機構12を備えた構成とされる。
【0026】
図2に示すように、上記前後左右の4本のリンク部材11のうち、右後側のリンク部材11には、右側のサイドフレーム3aに取り付けられた回転制御装置18のピニオンギヤ22aと噛合するセクタギヤ11aが形成されている。上記構成により、右後側のリンク部材11は、ピニオンギヤ22aからの回転駆動力の伝達を受けてリンク運動する構成とされる。上記右後側のリンク部材11は、その上端部がトルクロッド17を介して右側のサイドフレーム3aに回転可能なように連結されている。
【0027】
上記トルクロッド17は、右後側のリンク部材11と左後側のリンク部材11との上端部間に一体的に架け渡されており、両リンク部材11を同期的に駆動回転させるようになっている。上記後側の両リンク部材11が一斉にリンク運動することにより、4節リンク機構12を成す前側の両リンク部材11も同期的にリンク運動する。それにより、シートクッション3のフロアFに対する高さ方向の位置が調節される。
【0028】
回転制御装置18は、右側のサイドフレーム3aの右側面部に組み付けられている。具体的には、回転制御装置18は、右側のサイドフレーム3aに形成された貫通孔3a1からピニオンギヤ22aを挿通させて、サイドフレーム3aの左側に位置するセクタギヤ11aに噛合させた状態としてサイドフレーム3aに組み付けられている。
図3に示すように、上記回転制御装置18には、前方へと延びる操作ハンドル5が組み付けられている。
【0029】
上記操作ハンドル5は、シートクッション3の右側後部から前方へ延びるように設けられ、使用者により中立位置から上げ下げする操作を行えるように構成されている。上記操作ハンドル5が中立位置から上げ下げされることにより、回転制御装置18には、各操作方向の移動量に応じた回転力が入力される。それにより、回転制御装置18の出力軸22に形成されたピニオンギヤ22aに各操作方向の回転力が伝達され、右後側のリンク部材11が各操作方向に応じた回転方向に動かされる。
【0030】
具体的には、回転制御装置18は、操作ハンドル5が操作される前の常時は、操作ハンドル5を中立位置に保持すると共に、出力軸22の回転を止めた状態に保持する構成とされる。上記回転制御装置18は、操作ハンドル5が中立位置から引き上げられるように操作されることにより、ピニオンギヤ22aに対し、右後側のリンク部材11を前側に起こし上げる方向の回転力を出力する。それにより、シートクッション3がフロアF上から引き上げられる。
【0031】
また、回転制御装置18は、操作ハンドル5が中立位置から押し下げられるように操作されることにより、ピニオンギヤ22aに対し、右後側のリンク部材11を後側に倒し込む方向の回転力を出力する。それにより、シートクッション3がフロアF上へと押し下げられる。また、回転制御装置18は、操作ハンドル5が中立位置から上げ下げされた後、その操作状態が解かれることにより、ピニオンギヤ22aをその回転位置に止めつつ、操作ハンドル5を中立位置へと戻すように動作するようになっている。
【0032】
<回転制御装置18の概略構成について>
以下、回転制御装置18の具体的な構成について、
図4~
図38を用いて説明する。回転制御装置18を構成する各部材は、全て、プレス加工された金属製の部材から成る。
【0033】
図4~
図8に示すように、回転制御装置18は、シート幅方向に軸方向を向ける略円盤状のユニットにより構成される。具体的には、回転制御装置18は、
図9~
図12に示すように、機能的に大別すると、操作ハンドル5(
図3参照)と一体的に組み付けられる入力部Nと、右側のサイドフレーム3a(
図3参照)と一体的に組み付けられる支持部Sと、を有する。
【0034】
また、回転制御装置18は、上記入力部Nから回転力の伝達を受ける出力軸22と、入力部Nから出力軸22に回転力を伝達する送り部Aと、を有する。更に、回転制御装置18は、入力部Nからの回転力の伝達がない場合に出力軸22の回転をロックするロック部Bと、出力軸22の回転を増速させてロック部Bとの間の動力伝達経路に伝達する増速部Uと、を有する。更に、回転制御装置18は、出力軸22の回転に摩擦力を作用させる摩擦発生部Gと、出力軸22の下降回転時の滑りを止める滑り防止部Dと、を有する。
【0035】
上記各部の構成を具体的に説明すると、入力部Nは、略円板状のアウタレバー41とインナレバー53とから構成される。これらアウタレバー41とインナレバー53とは、後述するカバー24を間に挟んで、互いにシート幅方向に延びる中心軸線C上に並んで一体的に組み付けられる構成とされる。
【0036】
支持部Sは、略円板状の本体ベース23と、略リング板状の中間ベース25と、略円板状のカバー24と、から構成される。これら本体ベース23と中間ベース25とカバー24とは、互いにシート幅方向に延びる中心軸線C上に順に並んで一体的に組み付けられる構成とされる。
【0037】
送り部Aは、4つの送り爪52と、略円板状の回転伝達プレート36と、略円板状の出力プレート75と、から構成される。4つの送り爪52は、それぞれ、前述したインナレバー53に回転可能なように組み付けられる構成とされる。回転伝達プレート36は、上記インナレバー53と互いにシート幅方向に延びる中心軸線C上に並んで中心軸線Cのまわりに相対回転可能なように組み付けられる構成とされる。
【0038】
上記回転伝達プレート36は、出力プレート75を回転方向に引き連れて回転することができるように出力プレート75に組み付けられる構成とされる。出力プレート75は、その中心部(中心軸線Cが通る部分)に出力軸22が挿通されて一体的に組み付けられる構成とされる。
【0039】
上記回転伝達プレート36は、
図17に示すように、その外周部に形成された内歯車36aに4つの送り爪52を噛合させることにより、インナレバー53と回転方向の双方に一体的となるように結合される構成とされる。上記回転伝達プレート36は、
図19及び
図24に示すように、インナレバー53が中立位置からどちらかの方向に回されることで、後述する4つの送り爪52のうちの対応するいずれかの対が内歯車36aとの噛合から外されて、残る対との噛合により、インナレバー53の回転方向に送られるようになっている。
【0040】
上記回転により、回転伝達プレート36は、出力プレート75を介して連結された出力軸22を対応する回転方向に送る。そして、回転伝達プレート36は、
図22及び
図27に示すように、上記操作されたインナレバー53の回転が戻される時には、それ(回転伝達プレート36)自体を回転操作された位置に残したまま、インナレバー53のみを操作前の初期位置(中立位置)へと戻せるようになっている。すなわち、回転伝達プレート36は、
図19及び
図24に示すように、インナレバー53が中立位置からどちらかの方向に回されることで、対応する回転方向に送り操作される。そして、回転伝達プレート36は、上記の操作が止められる位置で、出力軸22がロック部Bによりロックされることで一旦ロックされる。
【0041】
しかし、回転伝達プレート36は、
図22及び
図27に示すように、上記ロックされた位置からインナレバー53が操作前の初期位置(中立位置)へと戻される時には、噛合する対の送り爪52を滑らせることで、それ(回転伝達プレート36)自体をロック位置に残したまま、インナレバー53のみを各送り爪52と共に操作前の初期位置へと戻せるようになっている。
【0042】
図10及び
図12に示すように、ロック部Bは、4つのポール32と、略円板状の回転プレート37と、から構成される。4つのポール32は、それぞれ、前述した中間ベース25に回転可能なように組み付けられる構成とされる。回転プレート37は、増速部Uを構成する遊星歯車機構64を介して出力軸22と動力伝達可能なようにギヤ連結された構成とされる。上記4つのポール32は、
図18に示すように、回転プレート37の外周部に形成された内歯車37aとの噛合により、回転プレート37の中間ベース25に対する回転をロックする構成とされる。
【0043】
上記ロックにより、回転プレート37とギヤ連結された出力軸22の回転がロックされる。上記4つのポール32は、
図20及び
図25に示すように、前述したアウタレバー41が中立位置からどちらかの方向に回されることで、後述する制御プレート56を介して対応するいずれかの対が回転プレート37の内歯車37aとの噛合から外される。それにより、上記4つのポール32は、残る対が回転プレート37の対応する方向への回転を許容する状態となって、
図21及び
図26に示すように、回転プレート37及び出力軸22の対応する方向への回転を許容する状態となる。
【0044】
そして、上記4つのポール32は、上記操作されたアウタレバー41の回転が戻される時には、上記内歯車37aと噛合している対のポール32が回転プレート37の戻り方向の回転を阻止することで、回転プレート37及び出力軸22をロックした状態に保持する。そして、4つのポール32は、
図23及び
図28に示すように、アウタレバー41の回転が戻されることで、残る対も回転プレート37の内歯車37aと噛合した状態に戻されて、回転プレート37の双方向の回転をロックした状態となる。
【0045】
図10及び
図12に示すように、増速部Uは、略円板状の遊星キャリア62と、3つの遊星歯車63と、本体ベース23の外周部に形成された内歯車23eと、中心部に太陽歯車37dを持つ回転プレート37と、から構成される。遊星キャリア62は、
図13に示すように、その中心部(中心軸線Cが通る部分)に出力軸22が挿通されて一体的に組み付けられる構成とされる。3つの遊星歯車63は、それぞれ、遊星キャリア62に回転可能なように組み付けられる構成とされる。
【0046】
回転プレート37は、その中心部(中心軸線Cが通る部分)に上記遊星キャリア62と一体的に組み付けられる出力軸22が挿通されることで、その中心部の太陽歯車37dが3つの遊星歯車63と動力伝達可能なようにギヤ連結される構成とされる(
図14参照)。上記連結された3つの遊星歯車63は、それぞれ、
図13に示すように、本体ベース23の外周部に形成された内歯車23eに動力伝達可能なようにギヤ連結された状態にセットされる。それにより、3つの遊星歯車63は、出力軸22が中立位置からどちらかの方向に回されることで、遊星キャリア62を介して本体ベース23の内歯車23eに沿って自転しながら公転するようになっている。そして、上記3つの遊星歯車63が回転することにより、これらの中心部にギヤ連結された太陽歯車37dを持つ回転プレート37が、出力軸22と同一の回転方向に回される。
【0047】
その際、回転プレート37は、各歯車間のギヤ比により、出力軸22よりも速い速度で回転するように増速されて回転する。このように、出力軸22の回転が増速部Uにより増速されて回転プレート37に伝達されることで、上述したロック部Bによって回転プレート37を回転方向に大きくガタつかせることなくロックすることができる。
【0048】
図10及び
図12に示すように、摩擦発生部Gは、開リング形状の摩擦リング57と、摩擦リング57の端部57a間にセットされる切頭三角柱形状の制御ピース58と、から構成される。摩擦リング57は、円板状を成す回転プレート37の外周部に嵌め込まれる形にセットされる。上記摩擦リング57は、開いた円環状のリング形状とされ、自由状態では、回転プレート37の外周部よりもひとまわり小さなリング形状を成す構成とされる。ここで、回転プレート37が、本発明の「回転部材」に相当する。
【0049】
上記摩擦リング57は、
図13~
図14に示すように、その弾発力に抗して回転プレート37の外周部に嵌め込まれることで、回転プレート37の外周部に対し、略全周に亘って外周側から押し付けられる弾発力を作用させる構成とされる。上記押し付けにより、摩擦リング57は、回転プレート37の回転に摺動摩擦抵抗力を作用させるようになっている。
【0050】
上記摩擦リング57は、後述する制御ピース58によりその開リングが開かれるように操作されることで、回転プレート37に対する押し付け状態が解除される。それにより、摩擦リング57は、回転プレート37に対する摩擦付与が解除される。上記摩擦リング57の両端部57aは、半径方向の外側に向かって互いに山なりに接近していくように斜めに折り曲げられた形状とされる。
【0051】
上記摩擦リング57は、上記のように回転プレート37の外周部に摩擦力を作用させる構成とされることで、次のような効果を奏する。すなわち、出力軸22の回転が増速部Uにより増速されて回転プレート37に伝達されることから、摩擦リング57から回転プレート37に伝達される摩擦力が効果的に掛けられるようになる。その結果、摩擦リング57が回転プレート37に押し付けられる時(後述する出力軸22の下降回転時)には、出力軸22の下降回転方向の滑りを効果的に防止することができる。
【0052】
図10及び
図12に示すように、制御ピース58は、摩擦リング57の両端部57a間にセットされて、カバー24(
図9参照)に対して半径方向(ラジアル方向)の内外方にのみ移動可能となるように組み付けられる。上記制御ピース58は、
図17に示すように、アウタレバー41が中立位置にある時には、後述する制御プレート56により半径方向の外側に押し出された状態として保持される。それにより、制御ピース58は、その切頭三角柱形状の両斜面により摩擦リング57の両端部57a間の幅を押し広げて、摩擦リング57の回転プレート37に対する押し付けを解除した状態にして保持する。
【0053】
また、制御ピース58は、
図24に示すように、アウタレバー41が中立位置から出力軸22を上昇回転させる方向(図示反時計回り)に回される時にも、後述する制御プレート56により半径方向の外側に押し出された状態に保持される。それにより、制御ピース58は、上記と同様に摩擦リング57の両端部57a間の幅を押し広げた状態として、摩擦リング57の回転プレート37への押し付けを解除した状態に保持する。
【0054】
しかし、制御ピース58は、
図19に示すように、アウタレバー41が中立位置から出力軸22を下降回転させる方向(図示時計回り)に回されることで、後述する制御プレート56により半径方向の内側に引き込まれるように操作される。それにより、制御ピース58は、摩擦リング57の両端部57aを押し広げていた状態から解かれる。その結果、摩擦リング57が、その弾発力によって、回転プレート37の外周部に押し付けられて、回転プレート37の回転に摺動摩擦抵抗力を作用させる状態となる。
【0055】
図10及び
図12に示すように、回転制御装置18は、更に、内外2重のリング板形状を一体的に備える制御プレート56を有する。制御プレート56は、その中心部(中心軸線Cが通る部分)に出力軸22が挿通されることで、出力軸22により回転可能なように支持される構成とされる。また、制御プレート56は、
図9及び
図11に示すアウタレバー41から延びる2本のアーム41cがその外周部に嵌め込まれることで、アウタレバー41と一体的に組み付けられる構成とされる。
【0056】
上記制御プレート56は、
図20及び
図25に示すように、アウタレバー41が中立位置からどちらかの方向に回されることで、アウタレバー41と一体的となって回転し、前述した4つのポール32のうちの対応するいずれかの対を回転プレート37の内歯車37aとの噛合から外すように操作する。上記制御プレート56は、
図24に示すようにアウタレバー41が出力軸22を上昇回転させる方向(図示反時計回り方向)に回されることで、制御ピース58を半径方向の外側に押し出した状態に保持する。しかし、制御プレート56は、
図19に示すようにアウタレバー41が出力軸22を下降回転させる方向(図示時計回り方向)に回されることで、制御ピース58を半径方向の内側へと引き込むように操作する。
【0057】
それにより、摩擦リング57が、その弾発力により回転プレート37の外周部に押し付けられて、回転プレート37の回転に摺動摩擦抵抗力を作用させる状態となる。上記のように、出力軸22の押し下げられる方向の回転に摩擦力が掛けられるようになっていることにより、出力軸22がシート1に掛かる自重等の作用によって押し下げられる方向に滑ることを効果的に抑制することができる。
【0058】
滑り防止部Dは、
図9及び
図11に示すように、前述した出力プレート75と、出力プレート75に組み付けられた略リング板状の板バネ73と、から構成される。板バネ73は、その周方向の一部が出力プレート75に固定されて、この固定された部位を支点に周方向の他の部位を片持ち支持梁の撓みのように軸方向に撓ませることができる構成とされる。
【0059】
上記板バネ73は、出力プレート75に対して、常時、他の部位を右側(シート幅方向の外側)に撓ませるように弾発力を付与した状態に組み付けられている。それにより、板バネ73は、
図17、
図30及び
図31に示すように、アウタレバー41が中立位置にある時には、その自由端側の部分に形成された右側に突出する嵌合片73cを、弾発力により、カバー24に形成された嵌合孔24j内に嵌合させた状態とされる。
【0060】
上記嵌合により、板バネ73は、出力プレート75の
図17に示す時計回り方向(下降回転方向)の回転はロックするが、反時計回り方向(上昇回転方向)の回転は許容する状態となる。その理由は、
図31に示すように、上記板バネ73の嵌合片73cが、図示反時計回り方向に突出が小さくなっていく傾斜面73dを備えた形状とされているためである。
【0061】
すなわち、板バネ73は、上記嵌合片73cがカバー24の嵌合孔24j内に嵌合した状態では、出力プレート75の図示時計回り方向(下降回転方向)の回転に対しては、嵌合片73cの側面が嵌合孔24jの内側面に真っ直ぐ当接する。しかし、板バネ73は、出力プレート75の図示反時計回り方向(上昇回転方向)の回転に対しては、嵌合片73cの傾斜面73dが嵌合孔24jの内側面に斜めに当接する。したがって、この斜め当接に伴うガイドによって、板バネ73の嵌合片73cが、出力プレート75の回転に伴って弾発力に抗して嵌合孔24jから引き抜かれることとなる(
図37~
図38参照)。
【0062】
なお、上記板バネ73の嵌合片73cは、アウタレバー41が
図17に示す中立位置にある状態から
図19に示すように図示時計回り方向(下降回転方向)に回されることにより、嵌合孔24jから引き抜かれる。それにより、出力プレート75の同方向の回転ロック状態が解除される。具体的には、
図19に示すように、アウタレバー41が図示時計回り方向(下降回転方向)に回されることにより、回転伝達プレート36が同方向に回される。
【0063】
それにより、回転伝達プレート36の外周部に形成された各押さえ部36dが、
図32に示すように板バネ73の各押圧片73aをそれぞれ左方に押し込む。それにより、
図33に示すように、板バネ73が、その弾発力に抗して嵌合片73cをカバー24の嵌合孔24jから引き抜くように操作される。その結果、出力プレート75の図示時計回り方向(下降回転)の回転が許容される状態となる。
【0064】
上記板バネ73は、
図34に示すように、出力軸22がアウタレバー41の操作により図示時計回り方向に下降回転する際、出力軸22が摩擦リング57の摩擦力に抗して回転伝達プレート36よりも先行して回転する滑りを生じた場合に、
図35~
図36に示すように、押さえ部36dとの係合から外される。それにより、板バネ73は、その弾発力により再び嵌合片73cをカバー24の嵌合孔24j内に嵌合させる。
【0065】
上記嵌合により、板バネ73は、出力プレート75の同方向の回転をロックして、出力軸22の滑りを止める。その後、板バネ73は、アウタレバー41の操作により回転伝達プレート36が出力軸22に追い付く位置まで回転することにより、再び、
図19及び
図32に示すように、各押圧片73aが各押さえ部36dにより左方に押し込まれる。それにより、
図33に示すように、板バネ73の嵌合片73cがカバー24の嵌合孔24jから引き抜かれ、出力プレート75の下降回転の回転が許容される状態となる。
【0066】
図9~
図12に示すように、回転制御装置18は、上記の他に、トーションバネ35,43,71,55を有する。トーションバネ35は、前述したアウタレバー41とカバー24との間に掛着され、アウタレバー41をカバー24に対して中立位置に付勢する構成とされる。
【0067】
トーションバネ43は、前述した4つの送り爪52のうちの上下の各対の間に掛着され、各送り爪52を回転伝達プレート36の内歯車36aにそれぞれ噛合させる回転方向に付勢する構成とされる。トーションバネ71は、前述した回転伝達プレート36と出力プレート75との間に掛着され、出力プレート75を回転伝達プレート36に対して下降回転方向に付勢して当接させた状態に保持する構成とされる。トーションバネ55は、前述した4つのポール32のうちの上下の各対(上と前、後と下の各対)の間に掛着され、各ポール32を回転プレート37の内歯車37aにそれぞれ噛合させる回転方向に付勢する構成とされる。
【0068】
<回転制御装置18の各部の具体的な構成について>
続いて、上記回転制御装置18を構成する各部材の詳細について説明する。
図4~
図8には、回転制御装置18の組み付け状態が示されている。また、
図9~
図12には、回転制御装置18を部分部分で細かく分解した斜視図が示されている。また、
図13~
図16には、回転制御装置18を部分部分で組み付けた斜視図が示されている。また、
図17~
図38には、回転制御装置18の動作を説明する模式図が層別に示されている。
【0069】
したがって、下記の説明において、回転制御装置18の組み付け状態については、
図4~
図8を適宜参照するものとする。また、部材単体の構成については、
図9~
図12を適宜参照するものとする。また、部材同士の組み付け状態については、
図13~
図16を適宜参照するものとする。また、各部材の動きについては、
図17~
図38を適宜参照するものとする。
【0070】
先ず、入力部Nを構成するアウタレバー41及びインナレバー53の構成について説明する。
図9~
図12等に示すように、アウタレバー41は、シート幅方向に面を向ける略円板状の部材から成る。上記アウタレバー41には、前述した操作ハンドル5が一体的に組み付けられる。
【0071】
上記アウタレバー41の中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に丸孔状に貫通する中心孔41aが形成されている。上記中心孔41aには、出力軸22の右側(シート幅方向の外側)の端部を成す円柱状の第4軸部22gが左側から通されて回転可能なように嵌合される(
図7~
図8参照)。また、アウタレバー41の円板部分の中間部には、その周方向の対称位置(上下位置)に、軸方向に丸孔状に貫通する貫通孔41bが形成されている。
【0072】
これら貫通孔41bには、インナレバー53から右側に突出する一対のストッパピン53bがそれぞれ左側から通されて一体的に結合されている。それにより、アウタレバー41は、インナレバー53と一体的に結合されている。
【0073】
また、アウタレバー41の周縁部には、その前下側と後上側の2箇所の部位に、軸方向(左方向)に直角に折り曲げられて張り出すアーム41cが形成されている。これらアーム41cは、カバー24に形成された対応する各通し孔24gを通って、制御プレート56の外周部に形成された対応する各挿通溝56d内にそれぞれ右側から挿通されて一体的に嵌合されている。それにより、アウタレバー41が、制御プレート56と互いに一体的となって回転するようになっている。
【0074】
インナレバー53は、シート幅方向に面を向ける略円板状の部材から成る。上記インナレバー53の中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に丸孔状に貫通する中心孔53aが形成されている。上記中心孔53aには、上述した出力軸22の軸方向の中間部を成す円柱状の第3軸部22fが左側から通されて回転可能なように嵌合される(
図7~
図8参照)。
【0075】
また、インナレバー53の円板部分の中間部には、その周方向の対称位置(上下位置)に、軸方向に貫通する長孔状の貫通孔53cが形成されている。これら貫通孔53cには、それらの右側から一対のストッパピン53bが座の当接する位置まで通されて一体的に結合されている。それにより、インナレバー53が、アウタレバー41と一体的に結合されている。
【0076】
上記インナレバー53の円板部分の中間部には、その周方向の4箇所の部位に、軸方向(右方向)に丸ピン状に突出する軸ピン53dが形成されている。これら軸ピン53dには、前述した4つの送り爪52がそれぞれ右側から嵌め込まれて回転可能なように連結される。
【0077】
次に、
図9~
図12等を参照しながら、支持部Sを構成する本体ベース23、中間ベース25、及びカバー24の構成について説明する。本体ベース23は、シート幅方向に面を向ける略円板状の部材から成る。本体ベース23の外周部には、軸方向(右方向)に略円筒状に押し出される形に半抜き加工された内歯車23eが形成されている。
【0078】
上記内歯車23eの内周面には、前述した3つの遊星歯車63をそれぞれ動力伝達可能なように噛合させることのできる内歯が全周に亘って無端状に形成されている。上記本体ベース23の内歯車23eの中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に丸孔状に貫通する中心孔23cが形成されている。上記中心孔23cには、出力軸22の左側(シート幅方向の内側)の端部に形成されたピニオンギヤ22aが右側(シート幅方向の外側)から通されて、出力軸22の軸方向の中間部を成す円柱状の第1軸部22bが回転可能なように嵌合される(
図7~
図8参照)。
【0079】
また、本体ベース23の中心孔23cの周囲には、同周囲を内歯車23e内の領域である収容凹部23bよりも左側に同心状に凹ませる段差凹部23fが形成されている。同段差凹部23fには、出力軸22の軸方向の中間部を成す円板状のフランジ22hが回転可能なように嵌合される(
図7~
図8参照)。
【0080】
上記組み付けにより、本体ベース23の内歯車23e内の領域である収容凹部23b内に、出力軸22の軸方向の中間部と、同中間部に組み付けられる前述した遊星キャリア62と、3つの遊星歯車63と、がそれぞれ収められた状態にセットされる(
図7~
図8、
図13参照)。詳しくは、3つの遊星歯車63が、本体ベース23の内歯車23eに対して、それぞれ動力伝達可能なように噛合された状態にセットされる。
【0081】
上記本体ベース23の内歯車23eの張り出した先の軸方向(右方向)に面を向ける部分は、前述したカバー24の各座部24dが軸方向に当てられた状態にセットされる座部23aとされる。上記座部23a上の周囲3箇所の部位には、中間ベース25の対応する周囲3箇所の部位から半径方向の外側に張り出す各張出部25cを軸方向に当てて一体的にボルト締結(不図示)することのできる係止部23dが軸方向(右方向)に台座状に突出した形に形成されている。
【0082】
上記座部23aには、前述した中間ベース25とカバー24とがそれぞれ右側(シート幅方向の外側)から軸方向に順に重ねられるようにセットされて、これらとボルト締結により一体的に結合されている。上記本体ベース23は、前述した右側のサイドフレーム3a(
図3参照)にもボルト締結されて一体的に結合されている。
【0083】
また、上記本体ベース23の座部23a上の下側の位置には、半径方向の内外方に真っ直ぐ筋状に延びるように軸方向(右方向)に突出するガイド突起23gが形成されている。このガイド突起23gには、後述する制御ピース58に形成されたスライド溝58aが右側から半径方向にスライド可能なように嵌め込まれる。それにより、制御ピース58が、上記本体ベース23のガイド突起23gに対して、半径方向の内外方にのみ移動可能となるように係合される。
【0084】
中間ベース25は、シート幅方向に面を向ける略リング板状の部材から成る。上記中間ベース25には、そのリング板状を成す座部25aの周方向の4箇所の部位に、軸方向(左方向)に丸ピン状に突出する軸ピン25bが形成されている。これら軸ピン25bには、前述した4つのポール32がそれぞれ左側から嵌め込まれて回転可能なように連結される。
【0085】
また、上記中間ベース25には、その座部25aの周方向の3箇所の部位に、半径方向の外側に張り出す張出部25cが形成されている。これら張出部25cは、前述した本体ベース23の座部23a上の3箇所の部位に形成された対応する各係止部23d上にそれぞれ右側から当てられた状態にセットされ、これらとボルト締結されて一体的に結合される。
【0086】
カバー24は、シート幅方向に面を向ける略円板状の部材から成る。上記カバー24には、その外周縁から軸方向(左方向)に略円筒状に張り出すフランジ24hが形成されている。上記カバー24は、そのフランジ24hの張り出した先の3箇所から更に外周側に直角に折り曲げられて延びる各座部24dが、前述した本体ベース23の座部23a上に当てられてボルト締結されることで、カバー24と一体的に結合されている。上記結合により、カバー24は、本体ベース23との間に送り部Aやロック部B等の構成部品を囲い込んだ状態にセットされる(
図4~
図5参照)。
【0087】
また、上記カバー24の円板部分の中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に丸孔状に貫通する中心孔24aが形成されている。上記中心孔24aには、出力軸22の右側(シート幅方向の外側)の端部を成す円柱状の第4軸部22gが左側から通されて回転可能なように嵌合される(
図7~
図8参照)。
【0088】
また、カバー24の円板部分の周縁部には、軸方向に貫通する円弧形状の2つのバネ掛孔24bが形成されている。これらバネ掛孔24bの間には、前述したアウタレバー41の下縁部から下方に延び出す操作片41dが右側から重ねられた状態にセットされる。
【0089】
そして、上記2つのバネ掛孔24bには、トーションバネ35の各端部がそれぞれ左側から通された状態にセットされる。そして、上記通されたトーションバネ35の各端部の間に操作片41dが周方向に挟まれた状態にセットされる。上記組み付けにより、アウタレバー41は、トーションバネ35の付勢力によって、カバー24に対して常に、操作片41dが2つのバネ掛孔24bの間にくる位置(操作前の中立位置:
図6参照)に保持されるように付勢される構成とされる。
【0090】
また、
図10等に示すように、上記カバー24の円板部分の周縁部には、その周方向の対称位置(前後位置)から軸方向(左方向)に張り出す形に直角に切り起こされた乗り上げ部24cが形成されている。これら乗り上げ部24cは、
図17に示すように、前述した4つの送り爪52のうちの上下の各対の間に差し込まれる形にセットされる。
【0091】
各乗り上げ部24cは、
図19に示すように、インナレバー53が出力軸22を下降回転させる方向(図示時計回り方向)に回された際に、4つの送り爪52のうちの図示右上側(前上側)と左下側(後下側)の2つの送り爪52をそれらの縁に当てて、これら2つの送り爪52を回転伝達プレート36の内歯車36aとの噛合から外す。また、各乗り上げ部24cは、
図22に示すように、インナレバー53の回された操作が戻されることにより、上記噛合から外した2つの送り爪52を回転伝達プレート36の内歯車36aに噛合させた状態へと戻す。
【0092】
同様に、各乗り上げ部24cは、
図24に示すように、インナレバー53が出力軸22を上昇回転させる方向(図示反時計回り方向)に回された際に、4つの送り爪52のうちの図示左上側(後上側)と右下側(前下側)の2つの送り爪52をそれらの縁に当てて、これら2つの送り爪52を回転伝達プレート36の内歯車36aとの噛合から外す。また、各乗り上げ部24cは、
図27に示すように、インナレバー53の回された操作が戻されることにより、上記噛合から外した2つの送り爪52を回転伝達プレート36の内歯車36aに噛合させた状態へと戻す。
【0093】
図10等に示すように、上記カバー24の円板部分の中間部には、その周方向の対称位置(上下位置)に、中心軸線Cのまわりに描かれる円弧状に延びる形に軸方向に貫通するガイド孔24eが形成されている。これらガイド孔24eには、前述したアウタレバー41とインナレバー53とに跨って軸方向に通される各ストッパピン53bがそれぞれ左側から通される。
【0094】
上記各ガイド孔24eは、それらの円弧状に延びる孔形状により、アウタレバー41及びインナレバー53が一体的となって中立位置(
図29参照)から下降回転方向に回されたり上昇回転方向に回されたりする移動を逃がす。また、各ガイド孔24eは、それらの円弧状に延びる孔の各端部に各ストッパピン53bが当たるそれぞれの位置で、アウタレバー41及びインナレバー53の上げ下げされる動きをそれぞれ係止させるようになっている。
【0095】
図9等に示すように、上記カバー24の円板部分の周縁部には、その前下側と後上側の2箇所の部位に、中心軸線Cのまわりに描かれる円弧状に延びる形に軸方向に貫通する通し孔24gが形成されている。各通し孔24gには、前述したアウタレバー41の周縁部から軸方向(左方向)に張り出す対応する各アーム41cが右側から通される。それにより、各通し孔24gは、アウタレバー41が中立位置から回される際の各アーム41cの動きを逃がすようになっている。
【0096】
上記カバー24の円板部分の周縁部には、その周方向の12箇所の部位に、中心軸線Cのまわりに描かれる同心円弧状に延びる形に軸方向に貫通する嵌合孔24jが形成されている。これら嵌合孔24jは、滑り防止部Dを構成する板バネ73の各嵌合片73cが左側から嵌合されることにより、板バネ73と一体的に連結される出力プレート75及び出力軸22の下降回転方向の移動をロックする孔として構成される。
【0097】
次に、
図9及び
図11等を参照しながら、送り部Aを構成する4つの送り爪52、回転伝達プレート36、及び出力プレート75の構成について説明する。4つの送り爪52は、それぞれ、シート幅方向に面を向けるアーム状の部材から成る。各送り爪52は、それらの基端部に形成された軸方向に丸孔状に貫通する中心孔52bが、それぞれ、前述したインナレバー53に形成された対応する各軸ピン53dに右側から嵌め込まれて回転可能なように連結される。
【0098】
上記4つの送り爪52は、
図17に示すように、インナレバー53に対し、前後上下にそれぞれ対を成すように並んで設けられている。上記4つの送り爪52のうち、前上側と後下側の2つの送り爪52は、それぞれ、各々の回転中心(軸ピン53d)から図示反時計回り方向にアームが延びる形状とされる。また、前下側と後上側の2つの送り爪52は、それぞれ、各々の回転中心(軸ピン53d)から図示時計回り方向にアームが延びる形状とされる。
【0099】
上記4つの送り爪52は、それらのアームの先端部に、回転伝達プレート36の内歯車36aと噛合可能な外歯52aが形成されている。上記4つの送り爪52のうちの上下の各対の間には、それぞれ、トーションバネ43が掛着されている。
【0100】
前側のトーションバネ43は、その一端と他端とが、前上側の送り爪52と前下側の送り爪52とにそれぞれ弾発力を及ぼす付勢方向に押し当てられた状態にセットされている。後側のトーションバネ43は、その一端と他端とが、後上側の送り爪52と後下側の送り爪52とにそれぞれ弾発力を及ぼす付勢方向に押し当てられた状態にセットされている。
【0101】
上記各トーションバネ43の組み付けにより、各送り爪52は、常時は、
図17に示すように、各々の回転中心(軸ピン53d)のまわりに半径方向の外側に押し回されて、それらの外歯52aを回転伝達プレート36の内歯車36aに噛合させた状態に保持される。上記4つの送り爪52は、それらの外歯52aが回転伝達プレート36の内歯車36aに及ぼす噛合力が、前上側及び後下側の2つの送り爪52の組と、前下側及び後上側の2つの送り爪52の組とで、互いに異なる構成とされる。
【0102】
具体的には、後上側及び前下側の2つの送り爪52は、それらの外歯52aが内歯車36aと噛合している時には、
図19に示すように、インナレバー53が中立位置から図示時計回り方向(下降回転方向)に回されることで、内歯車36aをその方向に押し回せるように回転方向に一体的となる構成とされる。しかし、上記後上側及び前下側の2つの送り爪52は、インナレバー53が図示時計回り方向に回された後、
図22に示すように操作前の初期位置へと戻される逆方向の回転に対しては、内歯車36aとは一体的な状態とならず、内歯車36a上を回転方向に滑りながら操作前の初期位置へと戻されるようになっている。
【0103】
一方、
図17に示すように、前上側及び後下側の2つの送り爪52は、それらの外歯52aが内歯車36aと噛合している時には、
図24に示すように、インナレバー53が中立位置から図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回されることで、内歯車36aをその方向に押し回せるように回転方向に一体的となる構成とされる。しかし、上記前上側及び後下側の2つの送り爪52は、インナレバー53が図示反時計回り方向に回された後、
図27に示すように操作前の初期位置へと戻される逆方向の回転に対しては、内歯車36aとは一体的な状態とならず、内歯車36a上を回転方向に滑りながら操作前の初期位置へと戻されるようになっている。
【0104】
上記構成により、4つの送り爪52は、インナレバー53が中立位置からどちらの方向に回されても、回転伝達プレート36をその方向に押し回す形で送ることができるようになっている。そして、4つの送り爪52は、インナレバー53がそれぞれの方向に回された位置から中立位置へと戻される時には、回転伝達プレート36を押し回した位置に残してインナレバー53を操作前の初期位置へと戻せるようになっている。
【0105】
上記4つの送り爪52は、
図19に示すように、インナレバー53が中立位置から図示時計回り方向(下降回転方向)に回されることで、前上側及び後下側の2つの送り爪52が、内歯車36aとの噛合から外されて、その状態に保持されるようになっている。また、
図24に示すように、インナレバー53が中立位置から図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回されることで、後上側及び前下側の2つの送り爪52が、内歯車36aとの噛合から外されて、その状態に保持されるようになっている。
【0106】
そのような構成とされていることにより、インナレバー53がそれぞれの方向に回された位置から中立位置へと戻される際、その動きを規制するように作用する2つの送り爪52がインナレバー53の戻される動きを阻害しないようになっている。具体的には、
図19に示すように、インナレバー53が中立位置から図示時計回り方向(下降回転方向)に回されることで、前上側及び後下側の2つの送り爪52が、前述したカバー24の各乗り上げ部24cの縁に押し当てられて、内歯車36aとの噛合から外されるように回される。そして、上記前上側及び後下側の2つの送り爪52は、インナレバー53が上記方向に操作されている間は、各乗り上げ部24c上に乗り上がった状態とされて、内歯車36aとの噛合から外された状態に保持される。
【0107】
一方、
図26に示すように、インナレバー53が中立位置から図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回されることで、後上側及び前下側の2つの送り爪52が、前述したカバー24の各乗り上げ部24cの縁に押し当てられて、内歯車36aとの噛合から外されるように回される。そして、上記後上側及び前下側の2つの送り爪52は、インナレバー53が上記方向に操作されている間は、各乗り上げ部24c上に乗り上がった状態とされて、内歯車36aとの噛合から外された状態に保持される。
【0108】
ここで、
図17に示すように、上記前上側及び後下側の2つの送り爪52は、それらの外歯52aが内歯車36aの歯に対して互いに半ピッチ分ずれた位置で噛合するように配置されている。また、後上側及び前下側の2つの送り爪52も同様に、それらの外歯52aが内歯車36aの歯に対して互いに半ピッチ分ずれた位置で噛合するように配置されている。このような構成となっていることにより、各送り爪52の外歯52aと内歯車36aとの噛合時にこれらの間で生じ得る回転方向のガタが小さく抑えられている。
【0109】
また、前上側及び後下側の2つの送り爪52は、インナレバー53が図示時計回り方向(下降回転方向)に回される時には、その初期の段階から内歯車36aを同方向に押し回すよう配置されている。しかし、後上側及び前下側の2つの送り爪52は、インナレバー53が図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回される時には、その初期の段階では内歯車36aに同方向に押し回す力を作用させず、ある程度回転が進行してから内歯車36aを同方向に押し回すように配置されている。
【0110】
その理由は、後述する回転伝達プレート36と出力プレート75との連結が、初期の中立位置の状態において、一方には回転を逃がすが、他方には一体的に回転する連結となっているためである。すなわち、回転伝達プレート36は、
図17、
図30及び
図31で前述したように、インナレバー53が初期の中立位置にある時には、板バネ73の嵌合片73cをカバー24の嵌合孔24jに嵌合させておくために、トーションバネ71の付勢力により、出力プレート75に対して、各押さえ部36dが板バネ73の各押圧片73aを押し込む位置から図示反時計回り方向に外れた位置に配置される構成とされる。
【0111】
そして、回転伝達プレート36は、
図19、
図32、
図33に示したように、インナレバー53が中立位置から図示時計回り方向(下降回転方向)に回される動作により、各押さえ部36dにより板バネ73の各押圧片73aを軸方向(左方)に押し込んでロックを解除するために、出力プレート75に対する初期の相対回転が許容される構成とされる。一方、回転伝達プレート36は、
図24、
図37、
図38に示したように、インナレバー53が中立位置から図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回される時には、上記ロックを解除する必要がないため、出力プレート75に対して初期の段階から回転方向に一体的とされる構成とされる。
【0112】
図9等に示すように、回転伝達プレート36は、シート幅方向に面を向ける略円板状の部材から成る。回転伝達プレート36の外周部には、軸方向(右方向)に略円筒状に押し出される形に半抜き加工された内歯車36aが形成されている。回転伝達プレート36の円板部分の中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に丸孔状に貫通する中心孔36bが形成されている。
【0113】
上記中心孔36bには、出力軸22の軸方向の中間部を成す外歯車状の第2スプライン22eが左側から相対回転可能なように通されている。上記中心孔36bは、出力軸22の第2スプライン22eよりもひとまわり大きな丸孔形状とされ、その内部で第2スプライン22eを相対回転させられる構成とされる。
【0114】
上記中心孔36bの内周面上には、その周方向の1箇所の部位に、半径方向の内方に突出する掛部36cが形成されている。上記掛部36cと、後述する出力プレート75のスプライン孔75cの凹凸の凸部分との間には、開リング形状のトーションバネ71が掛着されている。上記トーションバネ71により、出力プレート75には、回転伝達プレート36に対して常時、図示時計回り方向に回転する付勢力が掛けられている。
【0115】
図9等に示すように、回転伝達プレート36の円板部分の周方向の3箇所の部位には、中心軸線Cのまわりに描かれる円弧状に延びる形に軸方向に貫通する長孔36eがそれぞれ形成されている。これら長孔36eは、互いに同一円状の位置に周方向に同一の長さで延びるように並んで設けられている。各長孔36eは、出力プレート75の円板部分の周方向の3箇所の部位から右方向に丸ピン状に突出する対応する各係合ピン75dをそれぞれ左側から嵌合させて回転方向にスライド可能なように係合させる構成とされる。
【0116】
上記係合により、回転伝達プレート36と出力プレート75とは、上記各係合ピン75dが各長孔36eの内部でスライド可能とされる範囲において、互いに相対回転可能なように組み付けられた構成とされる。上記回転伝達プレート36と出力プレート75とは、
図17で示したように、インナレバー53が初期の中立位置にある時には、これらの間に掛着されたトーションバネ71の付勢力により、各係合ピン75dが各長孔36eの図示時計回り方向側の端部に押し当てられた回転位置の状態として保持される。
【0117】
上記当接により、回転伝達プレート36は、上記中立位置の状態からインナレバー53により
図9の時計回り方向(下降回転方向)に回される時には、各係合ピン75dが各長孔36eの図示反時計回り方向側の端部に押し当てられる位置まで、出力プレート75に対して相対回転するようになっている。そして、回転伝達プレート36は、上記回転により各係合ピン75dが各長孔36eの図示反時計回り方向側の端部に押し当てられる位置からは、出力プレート75を同方向に一体的に引き連れる形で回転するようになっている。
【0118】
また、回転伝達プレート36は、上記中立位置の状態からインナレバー53により
図9の反時計回り方向(上昇回転方向)に回される時には、各係合ピン75dが各長孔36eの図示時計回り方向側の端部に当接していることで、初期の段階から出力プレート75を同方向に一体的に引き連れる形で回転するようになっている。
【0119】
上記回転伝達プレート36の外周部には、その周方向の2箇所の部位から半径方向の外方に突出する押さえ部36dが形成されている。これら押さえ部36dは、
図19及び
図32に示すように、回転伝達プレート36が出力プレート75に対して図示時計回り方向(下降回転方向)に相対回転することにより、板バネ73の各押圧片73a上に乗り上がって、各押圧片73aを軸方向(左方)に押し込む構成とされる。
【0120】
図9等に示すように、出力プレート75は、シート幅方向に面を向ける略円板状の部材から成る。上記出力プレート75は、その外周部の周方向の1箇所の部位に、板バネ73の対応する外周部分を軸方向に挟み込むように掛止される掛止部75aが形成された構成とされる。また、上記出力プレート75の掛止部75aの周方向の対称位置となる外周部箇所には、軸方向(右方)に折れ曲がり状に延びる挟持片75bが周方向の2箇所に並んで形成されている。
【0121】
上記各挟持片75bは、後述する板バネ73に形成された2つの爪状の嵌合片73cを周方向の両側からひとまとめに挟み込んだ状態に支持する構成とされる。上記出力プレート75は、上記掛止部75aによる掛止と各挟持片75bによる支持により、板バネ73を周方向に回り止めしつつ、掛止部75aを支点に各嵌合片73cの形成領域を片持ち支持梁の撓みのように軸方向に撓ませることができる構成とされる。
【0122】
上記出力プレート75の円板部分の中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に貫通する内歯車状のスプライン孔75cが形成されている。上記スプライン孔75cには、出力軸22の軸方向の中間部を成す外歯車状の第2スプライン22eが左側から一体的に嵌合した状態に通されている。上記嵌合により、出力プレート75は、出力軸22と回転方向に一体的となる状態に連結されている。
【0123】
また、上記出力プレート75の円板部分の周方向の3箇所の部位には、右方向に丸ピン状に突出する各係合ピン75dが形成されている。これら係合ピン75dは、回転伝達プレート36の円板部分に形成された対応する各長孔36e内に組み付けられるが、具体的な機能についての説明は、前述した通りであるため省略する。また、板バネ73の具体的な構成については、後述する滑り防止部Dの詳細説明において詳述する。
【0124】
次に、
図10及び
図12等を参照しながら、ロック部Bを構成する4つのポール32、及び回転プレート37の構成について説明する。4つのポール32は、それぞれ、シート幅方向に面を向けるアーム状の部材から成る。各ポール32は、それらの基端部に形成された軸方向に丸孔状に貫通する中心孔32bが、それぞれ、前述した中間ベース25に形成された対応する各軸ピン25bに左側から嵌め込まれて回転可能なように連結される。
【0125】
図18に示すように、上記4つのポール32は、中間ベース25に対し、前後上下にそれぞれ対を成すように並んで設けられている。上記4つのポール32のうち、上下に並ぶ2つのポール32は、それぞれ、各々の回転中心(軸ピン25b)から図示反時計回り方向にアームが延びる形状とされる。また、残る前後に並ぶ2つのポール32は、それぞれ、各々の回転中心(軸ピン25b)から図示時計回り方向にアームが延びる形状とされる。
【0126】
上記4つのポール32には、それらのアームの先端部に、回転プレート37の内歯車37aと噛合可能な外歯32aが形成されている。上記4つのポール32のうちの上と前、下と後の各対の間には、それぞれ、トーションバネ55が掛着されている。
【0127】
前側のトーションバネ55は、その一端と他端とが、上側のポール32と前側のポール32とにそれぞれ弾発力を及ぼす付勢方向に当てられた状態にセットされている。後側のトーションバネ55は、その一端と他端とが、下側のポール32と後側のポール32とにそれぞれ弾発力を及ぼす付勢方向に当てられた状態にセットされている。
【0128】
上記各トーションバネ55の組み付けにより、各ポール32は、常時は、
図18に示すように、各々の回転中心(軸ピン25b)のまわりに半径方向の外側に押し回されて、それらの外歯32aを回転プレート37の内歯車37aに噛合させた状態に保持される。上記4つのポール32は、それらの外歯32aが回転プレート37の内歯車37aに及ぼす噛合力が、上下2つのポール32の組と、前後2つのポール32の組とで、互いに異なる構成とされる。
【0129】
具体的には、上下2つのポール32は、それらの外歯32aが内歯車37aと噛合することで、回転プレート37の図示時計回り方向(下降回転方向)の回転を阻止する構成とされる。しかし、上下2つのポール32は、それらの外歯32aが内歯車37aと噛合していても、
図26に示すように、回転プレート37が図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回される時には、内歯車37a上を滑って回転プレート37の回転を逃がす構成とされる。
【0130】
一方、
図18に示すように、前後2つのポール32は、それらの外歯32aが内歯車37aと噛合することで、回転プレート37の図示反時計回り方向(上昇回転方向)の回転を阻止する構成とされる。しかし、前後2つのポール32は、それらの外歯32aが内歯車37aと噛合していても、
図21に示すように、回転プレート37が図示時計回り方向(下降回転方向)に回される時には、内歯車37a上を滑って回転プレート37の回転を逃がす構成とされる。
【0131】
上記4つのポール32は、インナレバー53が
図19に示す中立位置から図示時計回り方向(下降回転方向)に回されることで、次の状態となる。すなわち、
図20に示すように、上記回転により、上下2つのポール32が、制御プレート56により内歯車37aとの噛合から外されて、その状態に保持される。一方、前後2つのポール32は、内歯車37aと噛合した状態に保持される。それにより、4つのポール32は、回転プレート37の図示時計回り方向(下降回転方向)の回転を逃がすことができる状態とされる(
図21参照)。
【0132】
上記4つのポール32は、回転プレート37が図示時計回り方向に回された後、
図22に示すようにインナレバー53の操作が中立位置に戻される時には、
図23に示すように、内歯車37aと噛合している前後2つのポール32が回転プレート37の図示反時計回り方向の回転を阻止し、回転プレート37を定位置に保持する。そして、上記インナレバー53(
図22参照)の操作が中立位置に戻されることで制御プレート56の回転が初期位置へと戻されることにより、
図23に示すように、上下2つのポール32が内歯車37aと噛合した初期の状態に戻される。
【0133】
一方、4つのポール32は、インナレバー53が
図24に示す中立位置から図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回されることで、次の状態となる。すなわち、
図25に示すように、上記回転により、前後2つのポール32が、制御プレート56により内歯車37aとの噛合から外されて、その状態に保持される。一方、上下2つのポール32は、内歯車37aと噛合した状態に保持される。それにより、4つのポール32は、回転プレート37の図示反時計回り方向(上昇回転方向)の回転を逃がすことができる状態とされる(
図26参照)。
【0134】
上記4つのポール32は、回転プレート37が図示反時計回り方向に回された後、
図27に示すようにインナレバー53の操作が中立位置に戻される時には、
図28に示すように、内歯車37aと噛合している上下2つのポール32が回転プレート37の図示時計回り方向の回転を阻止し、回転プレート37を定位置に保持する。そして、上記インナレバー53(
図27参照)の操作が中立位置に戻されることで制御プレート56の回転が初期位置へと戻されることにより、
図28に示すように、前後2つのポール32が内歯車37aと噛合した初期の状態に戻される。
【0135】
図10及び
図12等に示すように、回転プレート37は、シート幅方向に面を向ける略円板状の部材から成る。上記回転プレート37の外周部には、軸方向(右方向)に略円筒状に押し出される形に半抜き加工された内歯車37aが形成されている。上記内歯車37aの内周面には、前述した4つのポール32の外歯32aを噛合させることのできる内歯が全周に亘って無端状に形成されている。
【0136】
また、回転プレート37の円板部37bの中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に丸孔状に貫通する中心孔37cが形成されている。上記中心孔37cには、出力軸22の軸方向の中間部を成す円柱状の第2軸部22dが回転可能なように嵌合される(
図7~
図8参照)。
【0137】
また、回転プレート37の中心孔37cの周囲には、軸方向(左方向)に突出する太陽歯車37dが形成されている。太陽歯車37dは、その中心孔37c内に出力軸22がセットされることに伴い、出力軸22の中間部に組み付く遊星キャリア62の3つの遊星歯車63の間にセットされ、各遊星歯車63と動力伝達可能なようにギヤ連結される。
【0138】
それにより、太陽歯車37dは、出力軸22の回転に伴い3つの遊星歯車63が回転することで、その回転駆動力の伝達を受けて回転するようになっている。詳しくは、太陽歯車37dは、3つの遊星歯車63が本体ベース23の内歯車23e内を回転する速度を噛合のギヤ比により増速させて回転するようになっている。
【0139】
次に、
図10及び
図12等を参照しながら、増速部Uを構成する遊星キャリア62、3つの遊星歯車63の構成について説明する。なお、増速部Uを構成する回転プレート37の具体的な構成及び機能は、前述した通りである。
【0140】
遊星キャリア62は、シート幅方向に面を向ける略リング板状の部材から成る。上記遊星キャリア62の中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に貫通する内歯車状のスプライン孔62aが形成されている。
【0141】
上記スプライン孔62aには、出力軸22の軸方向の中間部を成す外歯車状の第1スプライン22cが左側から通されて回転方向に一体的となる状態に嵌合される。上記嵌合により、遊星キャリア62は、出力軸22と回転方向に一体的となる状態に連結されている。
【0142】
上記遊星キャリア62には、そのリング板上の周方向の3箇所の部位に、軸方向(右方向)に丸ピン状に突出する軸ピン62bが形成されている。これら軸ピン62bには、3つの遊星歯車63がそれぞれ右側から嵌め込まれて回転可能なように連結される。
【0143】
3つの遊星歯車63は、それぞれ、シート幅方向に面を向ける略円板状の外歯車として構成される。これら3つの遊星歯車63は、それらの中心部に形成された軸方向に丸孔状に貫通する中心孔63aが前述した遊星キャリア62の対応する各軸ピン62bにそれぞれ右側から嵌め込まれて回転可能なように連結される。
【0144】
各遊星歯車63は、上記遊星キャリア62及び出力軸22を介した本体ベース23への組み付けにより、本体ベース23の内歯車23eに噛合した状態にセットされる(
図13等参照)。上記組み付けにより、各遊星歯車63は、出力軸22がどちらかの方向に回されることで、本体ベース23の内歯車23eに沿ってそれぞれ対応する回転方向に自転しながら公転するようになっている。
【0145】
次に、
図10及び
図12等を参照しながら、摩擦発生部Gを構成する摩擦リング57と制御ピース58の構成について説明する。摩擦リング57は、開いた円環状のリング部材から成る。上記摩擦リング57は、回転プレート37の外周部に嵌め込まれる形にセットされる。上記摩擦リング57の両端部57aは、半径方向の外側に向かって互いに山なりに接近していくように斜めに折り曲げられた形状とされる。
【0146】
制御ピース58は、摩擦リング57の両端部57a間に嵌まり込む略切頭三角柱状の部材から成る。上記制御ピース58は、摩擦リング57の両端部57a間に挟まれる形にセットされる。そして、上記制御ピース58は、その左側面に形成された半径方向に筋状に延びる形に凹むスライド溝58aが、本体ベース23に形成されたガイド突起23gに右側から嵌められた状態にセットされる。
【0147】
更に、制御ピース58は、
図10等に示すように、その右側面上から突出する丸ピン状の係合ピン58bが、制御プレート56の外周部に沿って形成された乗り上がり孔56h内に左側から通された状態にセットされる。上記乗り上がり孔56hは、制御プレート56の中心軸線Cのまわりに描かれる円弧状に延びる形に形成されている。上記乗り上がり孔56hは、その
図10に示す反時計回り方向側の端部に、ひとまわり小さな径となって図示反時計回り方向に同心円弧状に延びる逃がし孔56gが傾斜状の繋ぎ目を介して連通して形成された構成とされる。
【0148】
上記制御ピース58は、
図17に示すように、制御プレート56と一体を成すアウタレバー41が中立位置にある時には、係合ピン58bが制御プレート56の乗り上がり孔56h内における図示反時計回り方向側の端部に位置する状態とされる。その状態では、制御ピース58は、本体ベース23に対して半径方向の外側に押し出された状態として、その切頭三角柱形状の両斜面により摩擦リング57の両端部57a間の幅を押し広げて、摩擦リング57の回転プレート37への押し付け状態を解除した状態に保持する。
【0149】
上記制御ピース58は、
図19に示すように、アウタレバー41が中立位置から図示時計回り方向(下降回転方向)に回されることにより、上記係合ピン58bが制御プレート56の乗り上がり孔56h内から逃がし孔56g内へと引き込まれ、本体ベース23に対して半径方向の内側に引き込まれる。それにより、制御ピース58は、摩擦リング57の両端部57aを押し広げていた状態を解除する。その結果、摩擦リング57が、その弾発力によって、回転プレート37の外周部に押し付けられて、回転プレート37の回転に摺動摩擦抵抗力を作用させる状態となる。
【0150】
詳しくは、制御ピース58は、アウタレバー41が図示時計回り方向(下降回転方向)に回されて、
図20に示すように2つのポール32が回転プレート37の内歯車37aとの噛合状態から外される状態となる前に、係合ピン58bが制御プレート56の逃がし孔56g内へと引き込まれるようになっている。そして、そこからアウタレバー41が更に図示時計回り方向(下降回転方向)に回されることにより、2つのポール32が回転プレート37の内歯車37aとの噛合状態から外される。
【0151】
そのような構成とされていることにより、シート1の自重を受ける出力軸22に摩擦力を掛けた状態としてから、出力軸22のロックを解除することができ、ロックの解除をシート1の自重が掛かりにくい状態下で静粛に行うことができる。また、ロックの解除後に、出力軸22に摩擦力を掛けた状態を維持しながら、出力軸22を円滑に下降回転させる方向(図示時計回り方向)に回転させることができる。
【0152】
一方、制御ピース58は、
図24に示すように、アウタレバー41が中立位置から図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回された時には、上記係合ピン58bが制御プレート56の乗り上がり孔56h内を摺動する。そのため、制御ピース58は、本体ベース23に対して半径方向の外側に押し出された状態に保持され、摩擦リング57の回転プレート37への押し付け状態を解除した状態に保持する。したがって、アウタレバー41が中立位置から図示時計回り方向(下降回転方向)に回された時には、摩擦リング57から回転プレート37に摩擦力が付与されない。
【0153】
次に、
図9~
図12等を参照しながら、制御プレート56の構成について説明する。制御プレート56は、シート幅方向に面を向ける内外2重のリング板形状を一体的に備える構成とされる。上記制御プレート56は、その内周側のリング板と外周側のリング板とが互いに周方向の2箇所で繋ぎ部56cにより繋がれている。上記制御プレート56は、上記繋ぎ部56cを介して、内周側のリング板が外周側のリング板よりも左側にオフセットされた形状とされる。
【0154】
上記制御プレート56の中心部(中心軸線Cが通る部分)には、軸方向に丸孔状に貫通する中心孔56aが形成されている。上記中心孔56aには、出力軸22の軸方向の中間部を成す円柱状の第2軸部22dが回転可能なように嵌合される(
図7~
図8参照)。
【0155】
上記制御プレート56の外周側のリング板の外周部には、その周方向の2箇所の部位に、半径方向の内側に凹んだ挿通溝56dが形成されている。これら挿通溝56dには、前述したアウタレバー41から左方に延びる対応する各アーム41cが右側から嵌め込まれる。それにより、制御プレート56は、アウタレバー41と回転方向に一体的となる状態に連結されている(
図18参照)。
【0156】
上記制御プレート56の内周側のリング板の外周部には、その周方向の4箇所の部位に、半径方向の外側に爪状に膨出する引掛け部56bが形成されている。これら引掛け部56bは、
図20及び
図25に示すように、制御プレート56がどちらかの方向に回された際に、前述した4つのポール32のうちの対応するいずれかの対の内周部に形成された爪部に押し当てられて、これらを回転プレート37の内歯車37aとの噛合から外すように操作する構成とされる。
【0157】
図10等に示すように、制御プレート56の外周側のリング板の外周部には、前述した乗り上がり孔56hと逃がし孔56gとが形成されている。これら乗り上がり孔56hと逃がし孔56gの具体的な構成及び機能は、前述した通りである。
【0158】
図10及び
図12等に示すように、出力軸22は、左側からピニオンギヤ22a、第1軸部22b、フランジ22h、第1スプライン22c、第2軸部22d、第2スプライン22e、第3軸部22f及び第4軸部22gが同一軸線上に並んで形成された構成とされる。上記出力軸22の各部の他の構成部材との連結は、前述した通りである。上記出力軸22は、その第2軸部22dが本体ベース23の中心孔23c内に嵌合されて回転可能なように支持され、第4軸部22gがカバー24の中心孔24a内に嵌合されて回転可能なように支持される両端支持構造とされる。
【0159】
次に、
図9~
図12等を参照しながら、滑り防止部Dを構成する板バネ73の構成について説明する。なお、滑り防止部Dを構成する出力プレート75の具体的な構成及び機能は、前述した通りである。
【0160】
図9等に示すように、板バネ73は、シート幅方向に面を向ける略リング板状の部材から成る。上記板バネ73は、そのリング板の外周部における周方向の2箇所の部位に、軸方向(右方向)に直角に折り曲げられて張り出す押圧片73aが形成された構成とされる。これら押圧片73aは、それらの張り出した先の端面に、図示反時計回り方向に突出を小さくしていくように傾斜する傾斜面73bが形成された構成とされる(
図30参照)。
【0161】
また、板バネ73は、その出力プレート75の掛止部75aによる掛止箇所と周方向の対称位置となる箇所に、内周縁から軸方向(右方向)に直角に折り曲げられて張り出す嵌合片73cが周方向の2箇所に並んで形成された構成とされる。これら嵌合片73cは、互いに周方向に離間して設けられている。各嵌合片73cは、それらの張り出した先の端面に、図示反時計回り方向に突出を小さくしていくように傾斜する傾斜面73dが形成された構成とされる(
図31参照)。
【0162】
また、板バネ73は、その出力プレート75の掛止部75aによる掛止箇所の内周部を挟む周方向の2箇所に、互いに相反する周方向に片持ち状に延びる押さえ部73eが形成された構成とされる。これら押さえ部73eは、それらの延びる途中箇所が左側にクランク状に折れ曲がった形状とされる。そして、各押さえ部73eは、それらの延びた先の端部が、出力プレート75の外周部の右側面上に押し当てられた状態にセットされる。
【0163】
上記組み付けにより、板バネ73は、出力プレート75に押し当てられた各押さえ部73eを支点に、右方へと押圧される弾発力が掛けられた構成とされる。上記弾発力により、板バネ73は、
図17に示すように、インナレバー53が初期の中立位置にある時には、前述した掛止部75aによる掛止箇所を支点に、各押圧片73a及び各嵌合片73cを右方に突出させた状態に保持される(
図30及び
図31参照)。
【0164】
そして、上記突出により、板バネ73は、
図31に示すように、各嵌合片73cをカバー24の対応する各嵌合孔24j内に嵌合させる。それにより、板バネ73は、これと一体的に連結される出力プレート75及び出力軸22の下降回転方向(図示左方向)の移動をロックする状態とされる。しかし、板バネ73は、出力プレート75及び出力軸22の上昇回転方向(図示右方向)の移動については、各嵌合片73cの傾斜面73dが各嵌合孔24jの内周面と当たる関係となることから、その移動を許容する状態とされる。この移動を許容する動作については、後述する。
【0165】
上記板バネ73は、
図19に示すように、アウタレバー41が
図17に示す中立位置にある状態から
図19に示すように図示時計回り方向(下降回転方向)に回されて回転伝達プレート36が同方向に回されることにより、上記のロック状態を解除する。具体的には、上記回転伝達プレート36の回転により、回転伝達プレート36に形成された各押さえ部36dが、板バネ73の対応する各押圧片73a上に乗り上がり、各押圧片73aを左方へと押圧する(
図32参照)。
【0166】
詳しくは、回転伝達プレート36の各押さえ部36dは、板バネ73の対応する各押圧片73aの傾斜面73b上を摺動して、各押圧片73aの右側の端面上に乗り上がる。上記乗り上がりによる各押圧片73aの左方への押し込みにより、板バネ73は、各嵌合片73cをカバー24の対応する各嵌合孔24jから左方へと引き抜く(
図33参照)。それにより、出力プレート75及び出力軸22の下降回転方向(図示左方向)のロック状態が解除される。
【0167】
上記のロック解除は、アウタレバー41の下降回転方向の回転に伴う各ポール32のロック解除よりも先行して行われる。そのような構成となっていることで、各ポール32が先に解除されて板バネ73の各嵌合片73cとカバー24の対応する各嵌合孔24jとの嵌合部に過大な負荷が掛かることを適切に防止することができる。
【0168】
そして、上記のロック解除が行われてからのアウタレバー41の下降回転により、
図9等で前述した回転伝達プレート36の各長孔36eの端部が出力プレート75の対応する各係合ピン75dと当接する。それにより、以降は、出力プレート75が回転伝達プレート36と一体的となって下降回転方向に回転する。
【0169】
上記の下降回転時において、シートクッション3に上方から過大な荷重が掛けられた場合、出力軸22に摩擦リング57の摩擦力を越える下降回転方向の過大な負荷が掛けられることがある。そして、出力軸22にそのような過大な負荷が掛けられると、
図34に示すように、出力軸22と一体を成す出力プレート75が、回転伝達プレート36に対して下降回転方向に先行して回転する滑りを生じることがある。
【0170】
しかし、上記のような滑りが生じた場合には、出力プレート75の先行回転に伴って、上述した板バネ73の各嵌合片73cが回転伝達プレート36の各押さえ部36dにより押さえ付けられた状態から外される(
図35参照)。それにより、
図36に示すように、板バネ73の各嵌合片73cが弾発力により再びカバー24の対応する各嵌合孔24j内に嵌合する。上記嵌合により、出力プレート75及び出力軸22の下降回転方向の移動がロックされる。したがって、上記過大な負荷が入力された際の出力軸22の滑りを早期に食い止めることができる。
【0171】
一方、上記板バネ73は、アウタレバー41が
図17に示す中立位置にある状態から
図24に示すように図示反時計回り方向(上昇回転方向)に回されて回転伝達プレート36が同方向に回される時には、同方向の回転を許容する。具体的には、上記方向の回転に対しては、出力プレート75が回転伝達プレート36と一体的となって回転する(
図37参照)。それにより、出力プレート75と一体的となって回転する板バネ73が、
図38に示すように、そのカバー24の対応する各嵌合孔24j内に嵌合させている各嵌合片73cを同方向(図示右方向)に回転させる。
【0172】
上記回転により、板バネ73の各嵌合片73cは、それらの傾斜面73dを各嵌合孔24jの内周面に回転方向(図示右方向)に押し当てる。それにより、板バネ73の各嵌合片73cは、各傾斜面73dと各嵌合孔24jの内周面との当たりによる反力により、弾発力に抗して左方へと押し込まれ、各嵌合孔24jから左方へと外される。上記移動の進行により、板バネ73は、出力プレート75及び出力軸22の上昇回転方向の移動を許容する構成とされる。
【0173】
<まとめ>
以上をまとめると、第1の実施形態に係るシートリフタ装置10は、次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0174】
すなわち、シートリフタ装置(10)は、操作ハンドル(5)の回転操作量に応じてシート(1)を昇降させる出力軸(22)を備える。このシートリフタ装置(10)は、出力軸(22)を回転可能なように支持する支持部(S)と、支持部(S)に回転可能なように連結されて操作ハンドル(5)と一体的に連結される入力部(N)と、を有する。また、シートリフタ装置(10)は、入力部(N)の回転を出力軸(22)に伝達する送り部(A)と、出力軸(22)の回転を支持部(S)に対してロックするロック部(B)と、を有する。また、シートリフタ装置(10)は、出力軸(22)と共に回転する回転部材(37)と支持部(S)との間に設けられる摩擦発生部(G)と、出力軸(22)と送り部(A)との間の動力伝達経路に設けられる滑り防止部(D)と、を有する。
【0175】
送り部(A)は、入力部(N)の中立位置からの双方向の回転は出力軸(22)に伝達するが、入力部(N)が中立位置に戻される回転は出力軸(22)に伝達しないラチェット式の構成とされる。ロック部(B)は、入力部(N)が中立位置から回転する動作を受けて出力軸(22)のロックを解除し、入力部(N)が中立位置に戻される動作を受けて出力軸(22)の回転をロックする。
【0176】
摩擦発生部(G)は、入力部(N)がシート(1)を下降させる方向に回転する動作を受けて回転部材(37)と支持部(S)との間に摩擦力を付与してシート(1)の自重に伴う出力軸(22)の先行回転を止める。滑り防止部(D)は、入力部(N)が中立位置から回転する動作により送り部(A)の回転を出力軸(22)に伝達するが、入力部(N)がシート(1)を下降させる方向に回転する際、出力軸(22)が摩擦発生部(G)の摩擦力に抗して送り部(A)よりも先行して回転する滑りを生じた場合に、この滑りの動作を受けて弾発力により支持部(S)と嵌合し滑りを止める。
【0177】
上記構成によれば、入力部(N)がシート(1)を下降させる方向に回転操作されることで、ロック部(B)のロックが解除され、送り部(A)を介して出力軸(22)がシート(1)を下降させる回転方向に送られる。その際、出力軸(22)は、摩擦発生部(G)により、シート(1)の自重に伴う滑り回転が止められる。また、出力軸(22)は、上記摩擦発生部(G)の摩擦力を越える下降回転方向の過大な荷重が出力側から入力されたとしても、滑り防止部(D)が支持部(S)と嵌合することで、滑り回転が防止される。したがって、下降操作時のシート(1)の滑りを適切に止めることができる。
【0178】
また、滑り防止部(D)が、支持部(S)に対して軸方向に嵌合する。上記構成によれば、滑り防止部(D)を比較的省スペースに構成することができる。
【0179】
また、滑り防止部(D)が、支持部(S)との嵌合状態から、送り部(A)が入力部(N)の回転により滑りを解消する位置まで回転する動作を受けて弾発力に抗して支持部(S)との嵌合状態から外される。上記構成によれば、滑り防止部(D)が支持部(S)と嵌合した後も、送り部(A)が滑りを解消する位置まで回転することで、滑り防止部(D)を再度機能させられる状態に復帰させることができる。
【0180】
また、滑り防止部(D)が、入力部(N)が中立位置にある状態でも弾発力により支持部(S)と嵌合し、入力部(N)がシート(1)を下降させる方向に回転することで弾発力に抗して支持部(S)との嵌合状態から外される構成とされる。また、滑り防止部(D)は、入力部(N)がシート(1)を上昇させる方向に回転する時には、支持部(S)に対する傾斜面(73d)の当たりにより弾発力に抗して支持部(S)との嵌合状態から外される構成とされて出力軸(22)の回転を許容する。
【0181】
上記構成によれば、入力部(N)が中立位置にある時にも、出力軸(22)の滑りを防止することができる。なおかつ、そのような構成でありながらも、滑り防止部(D)を、入力部(N)のシート(1)を上昇させる方向の回転操作を阻害しない構成とすることができる。
【0182】
また、滑り防止部(D)が、入力部(N)が中立位置からシート(1)を下降させる方向に回転する動作に伴い、ロック部(B)が出力軸(22)のロックを解除する前に支持部(S)との嵌合状態から外される。上記構成によれば、ロック部(B)が先に解除されて滑り防止部(D)に過大な負荷が掛かることを防止することができる。
【0183】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0184】
1.本発明のシートリフタ装置は、鉄道等の自動車以外の車両に搭載されるシートの他、航空機、船舶等の車両以外の乗物に搭載されるシートにも広く適用することができるものである。また、シートリフタ装置は、スポーツ施設や、劇場、コンサート会場、イベント会場等の様々な施設に設置される観覧席やマッサージシート等の非乗物用のシートにも広く適用することができるものである。
【0185】
2.摩擦発生部は、入力部が中立位置にある時及びシートを上昇させる方向に回転する時には、回転部材に対する押し付けが解除されるのではなく、弱められる構成であっても良い。摩擦発生部の回転部材に押し付けられる部位、或いは回転部材の摩擦発生部により押し付けられる部位は、どちらか一方が円形状ではなく角形状その他の異形状から成るものであっても良い。
【0186】
摩擦発生部は、回転部材に外周側から囲い込み状に押し付けられるものの他、回転部材に回転方向の複数箇所(例えば2箇所、3箇所又は4箇所)から個別に押し付けられる構成であっても良い。また、摩擦発生部は、回転部材に内周側から押し付けられて摩擦力を発生させるものの他、スラスト方向に押し付けられて摩擦力を発生させるものであっても良い。また、摩擦発生部が摩擦力を掛ける対象となる回転部材は、増速部を介して回転が増速される部材(第1の実施形態で示した「回転プレート37」)の他、出力軸と一体的となって回転する部材(第1の実施形態で示した「回転伝達プレート36」や「出力プレート75」)であっても良い。
【0187】
3.滑り防止部は、支持部に対して半径方向に嵌合する構成であっても良い。また、滑り防止部は、入力部が中立位置にある状態では支持部と嵌合しないように構成されていても良い。また、入力部を中立位置からシートを下降させる方向に回転させた際の滑り防止部とロック部とのロックの解除の先後関係は、どちらが先となっていても良く、ロック部が先に解除されるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0188】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
3a サイドフレーム
3a1 貫通孔
4 シートスライド装置
4a ロアレール
4b アッパレール
4c レッグ
5 操作ハンドル
10 シートリフタ装置
11 リンク部材
11a セクタギヤ
12 4節リンク機構
14 支持ブラケット
17 トルクロッド
18 回転制御装置
22 出力軸
22a ピニオンギヤ
22b 第1軸部
22c 第1スプライン
22d 第2軸部
22e 第2スプライン
22f 第3軸部
22g 第4軸部
22h フランジ
23 本体ベース
23a 座部
23b 収容凹部
23c 中心孔
23d 係止部
23e 内歯車
23f 段差凹部
23g ガイド突起
24 カバー
24a 中心孔
24b バネ掛孔
24c 乗り上げ部
24d 座部
24e ガイド孔
24g 通し孔
24h フランジ
24j 嵌合孔
25 中間ベース
25a 座部
25b 軸ピン
25c 張出部
32 ポール
32a 外歯
32b 中心孔
35 トーションバネ
36 回転伝達プレート
36a 内歯車
36b 中心孔
36c 掛部
36d 押さえ部
36e 長孔
37 回転プレート(回転部材)
37a 内歯車
37b 円板部
37c 中心孔
37d 太陽歯車
41 アウタレバー
41a 中心孔
41b 貫通孔
41c アーム
41d 操作片
43 トーションバネ
52 送り爪
52a 外歯
52b 中心孔
53 インナレバー
53a 中心孔
53b ストッパピン
53c 貫通孔
53d 軸ピン
55 トーションバネ
56 制御プレート
56a 中心孔
56b 引掛け部
56c 繋ぎ部
56d 挿通溝
56g 逃がし孔
56h 乗り上がり孔
57 摩擦リング
57a 端部
58 制御ピース
58a スライド溝
58b 係合ピン
62 遊星キャリア
62a スプライン孔
62b 軸ピン
63 遊星歯車
63a 中心孔
64 遊星歯車機構
71 トーションバネ
73 板バネ
73a 押圧片
73b 傾斜面
73c 嵌合片
73d 傾斜面
73e 押さえ部
75 出力プレート
75a 掛止部
75b 挟持片
75c スプライン孔
75d 係合ピン
S 支持部
A 送り部
B ロック部
N 入力部
G 摩擦発生部
U 増速部
D 滑り防止部
F フロア
C 中心軸線