(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
F25B1/00 387B
(21)【出願番号】P 2020199093
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】平野 浩史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将弘
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 卓登
(72)【発明者】
【氏名】高岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】須田 和樹
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-202833(JP,A)
【文献】特開昭59-097475(JP,A)
【文献】特開2011-226729(JP,A)
【文献】特開2020-002354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒と相溶性を有する潤滑油が貯留され、前記冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒が流れる冷媒回路と、
前記冷媒回路に設けられ、前記冷媒に含まれる前記潤滑油を前記冷媒から分離する油分離器と、
前記油分離器によって分離された前記潤滑油が前記圧縮機の吸入側に送られる油戻し流路に設けられ、前記油戻し流路を流れる前記潤滑油に含まれる酸を捕捉するフィルタと、
前記油戻し流路における前記フィルタと前記油分離器との間に接続され、前記冷媒回路を流れる液相冷媒を前記フィルタに送る冷媒供給流路と、
を備える、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記冷媒供給流路を開閉する開閉弁と、
前記開閉弁の開閉動作を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記フィルタに前記潤滑油が滞留していると判断したとき、前記開閉弁を開くように制御する、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記冷媒回路には、前記冷媒回路を流れる前記冷媒の圧力または温度を検出する検出器が設けられ、
前記制御部は、前記検出器の検出結果に基づいて前記潤滑油の滞留を判断する、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記圧縮機から冷媒が吐出される吐出流路内の第1圧力を検出する第1検出器と、前記油戻し流路の前記潤滑油の流れ方向に対して前記油戻し流路における前記フィルタの上流側流路内の第2圧力を検出する第2検出器と、を含み、
前記制御部は、前記第1圧力と前記第2圧力の差が閾値よりも小さいときに前記開閉弁を開くように制御する、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記検出器は、前記圧縮機から冷媒が吐出される吐出流路の温度を検出し、
前記制御部は、前記温度が閾値よりも大きくなったときに、前記開閉弁を開くように制御する、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記検出器は、前記圧縮機から冷媒が吐出される吐出流路の第1温度を検出する第1検出器と、前記油戻し流路の前記潤滑油の流れ方向に対して前記油戻し流路における前記フィルタの上流側流路の第2温度を検出する第2検出器と、を含み、
前記制御部は、前記第1温度と前記第2温度の差が閾値よりも大きくなったときに、前記開閉弁を開くように制御する、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記圧縮機を駆動するモータに流れる電流値に基づいて、前記フィルタにおける前記潤滑油の滞留を判断する、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記開閉弁を開いたときから所定時間の経過後に前記開閉弁を閉じるように制御する、
請求項2~7のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記冷媒は、R466A冷媒である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル装置では、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が低い冷媒として、R466A冷媒を用いることが提案されている(特許文献1)。R466A冷媒は、R32冷媒、R125冷媒、トリフルオロヨードメタン(CF3I)の3種混合冷媒であり、圧縮機の内部における高温環境下で分解して酸が発生するため、酸によって冷媒回路を構成する配管等の金属部品が腐食して冷凍サイクル装置が損傷するおそれがある。また、高温環境下で分解するトリフルオロヨードメタンを含む混合冷媒は、酸素や水分によって分解し、ヨウ化水素、フッ酸、フッ化カルボニルの分解物を発生し、特に、ヨウ化水素及びフッ酸が、圧縮機の潤滑油として用いられるポリビニルエーテル油や有機材料を劣化させるおそれがある。このため、関連技術としては、R466A冷媒により発生する酸を捕捉する酸捕捉フィルタが冷媒回路に設けられるものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-34261号公報
【文献】特開2018-96571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧縮機の摺動部分を潤滑する潤滑油が圧縮機の内部に貯留されており、冷凍サイクル装置としては、圧縮機から吐出された冷媒に含まれる潤滑油を分離する油分離器と、油分離器によって冷媒から分離された潤滑油を圧縮機に戻すための油戻し流路と、を備えるものがある。上述した冷媒の分解物は、圧縮機の内部で発生するので、圧縮機近傍の下流側に配置された油分離器から潤滑油が圧縮機に戻される油戻し流路に酸捕捉フィルタを配置することが考えらえる。これにより、酸によって劣化する構成部材を備える圧縮機に送られる酸を効果的に捕捉することが可能になる。
【0005】
しかし、油戻し流路に酸捕捉フィルタが配置された場合には、油戻し流路において流動抵抗が大きい酸捕捉フィルタの内部に潤滑油が滞留して、圧縮機に戻される潤滑油が減ることで、圧縮機の内部の潤滑油が不足するおそれがある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、油戻し流路に酸捕捉フィルタが設けられた場合であっても、フィルタにおいて潤滑油の流動性が低下することに起因する潤滑油の滞留を抑えられる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する冷凍サイクル装置の一態様は、冷媒と相溶性を有する潤滑油が貯留され、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒が流れる冷媒回路と、冷媒回路に設けられ、冷媒に含まれる潤滑油を冷媒から分離する油分離器と、油分離器によって分離された潤滑油が圧縮機の吸入側に送られる油戻し流路に設けられ、油戻し流路を流れる潤滑油に含まれる酸を捕捉するフィルタと、油戻し流路におけるフィルタと油分離器との間に接続され、冷媒回路を流れる液相冷媒をフィルタに送る冷媒供給流路と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する冷凍サイクル装置の一態様によれば、油戻し流路にフィルタが設けられた場合であっても、フィルタにおいて潤滑油の流動性が低下することを抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施例の冷凍サイクル装置における酸捕捉器を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施例の冷凍サイクル装置における開閉弁の制御を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施例の冷凍サイクル装置における開閉弁の制御の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施例の冷凍サイクル装置における開閉弁の制御の変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する冷凍サイクル装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する冷凍サイクル装置が限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
実施例の冷凍サイクル装置としては、空気調和装置を一例として、1台の室外機に1台の室内機が接続され、室内機が冷房運転または暖房運転を行うことが可能に構成されたものを説明する。
図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
【0012】
(冷媒)
まず、実施例の冷凍サイクル装置1で使用される冷媒について説明する。実施例の冷凍サイクル装置1では、冷媒として、R466A冷媒が用いられる。R466A冷媒は、R32冷媒、R125冷媒、トリフルオロヨードメタン(CF3I)の3成分混合冷媒である。R466A冷媒は、圧縮機の圧縮部で圧縮された後、高温環境下で分解されて酸を発生することがあり、酸によって冷媒回路が腐食して冷凍サイクル装置が損傷するおそれがある。このため、実施例の冷凍サイクル装置1では、後述する酸捕捉器34の酸捕捉フィルタ35によって冷媒に含まれる酸を捕捉し、冷媒から酸を除去することで、冷凍サイクル装置1の損傷、特に圧縮機10の損傷を抑えている。
【0013】
なお、冷媒としては、R466A冷媒に限定されず、酸を発生するおそれがある冷媒であれば、他の冷媒が用いられてもよい。例えば、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)を含む冷媒では、冷媒の蒸気圧[kPa]が低く、冷媒回路において運転中に大気圧よりも負圧になる領域が発生し易いため、高圧の冷媒が減圧される区間で冷媒回路内に外気を吸い込んで冷媒に酸素が入り込みやすい傾向があるので、冷媒が酸化分解されて酸を発生しやすい。このような冷媒を用いる場合にも、本実施例が適用されてもよく、本実施例と同様に後述する効果が得られる。
【0014】
(冷凍サイクル装置の構成)
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、冷媒が循環する冷媒回路2と、冷媒回路2に設けられた室外機3及び室内機4と、を備える。
図1には、室内機4を冷房運転する際の冷媒の流れを矢印で示す。冷媒回路2は、室外機3と室内機4とを接続する液管6及びガス管7を有する。液管6は、一端が室外機3の閉鎖弁(液二方弁)16に接続され、他端が室内機4に接続されている。ガス管7は、一端が室外機3の閉鎖弁(ガス三方弁)17に接続され、他端が室内機4に接続されている。
【0015】
(室外機の構成)
まず、室外機3について説明する。室外機3は、圧縮機10及び圧縮機用アキュムレータ11と、四方弁12と、室外熱交換器13と、室外ファン14と、室外膨張弁15と、液管6の一端が接続された閉鎖弁16と、ガス管7の一端が接続された閉鎖弁17と、冷媒貯留器であるアキュムレータ18と、を備える。
【0016】
圧縮機10は、インバータにより回転数が制御されるモータ8によって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型のロータリ圧縮機である。圧縮機10の内部には、摺動部分(図示せず)を潤滑する潤滑油としての冷凍機油9が貯留されている。圧縮機10の冷媒吐出側は、圧縮機10から吐出された冷媒に含まれる冷凍機油9を冷媒から分離する油分離器22と吐出管21aを介して接続されている。また、油分離器22は、後述する四方弁12のポートaと冷媒配管21bを介して接続されており、冷凍機油9から分離された冷媒が四方弁12へ送られる。さらに、油分離器22は、アキュムレータ18の冷媒流入側と接続された冷媒配管である油戻し流路21cに接続されており、油分離器22によって冷媒から分離された冷凍機油9が、アキュムレータ18から送られるガス冷媒と共に圧縮機用アキュムレータ11へ送られる。油戻し流路21cには、油分離器22からの冷凍機油9を減圧するための減圧器23が設けられている。なお、油戻し流路21cには、減圧器23の代わりにキャピラリーチューブ(図示せず)が設けられてもよい。圧縮機10の冷媒吸入側は、アキュムレータ18の冷媒流出側及び油戻し流路21cと吸入管24を介して接続されている。このように圧縮機10は、冷媒が充填された冷媒回路2に接続されている。
【0017】
冷凍機油9としては、例えば、ポリオールエステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)のうち、いずれかを主成分とするものである。圧縮機10に充填された冷凍機油9の一部は、冷媒と共に冷媒回路2内を循環する。POE及びPVEは、いずれも、分子構造中に二重結合を1個有する冷媒に対して溶解しやすい相溶性を有する冷凍機油9である。この冷凍機油9とR466A冷媒を混合したときに、R466A冷媒が冷凍機油9に、ある程度溶解する。なお、冷凍機油9は、冷媒と相溶性を示すものであればよく、上述に限定されずに他の冷凍機油が用いられてもよい。
【0018】
四方弁12は、冷媒の流れる方向を切り換えるための切換弁であり、4つのポートa、b、c、dを有している。ポートaは、上述したように冷媒配管21bで接続された油分離器22を介して、圧縮機10の冷媒吐出側に吐出管21aで接続されている。ポートbは、室外熱交換器13の一方の冷媒出入口に冷媒配管26で接続されている。室外熱交換器13の他方の冷媒出入口は、液管6と室外機液管29で接続されている。ポートcは、アキュムレータ18の冷媒流入側に冷媒配管27を介して接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁17に室外機ガス管28によって接続されている。
【0019】
室外熱交換器13は、室外ファン14によって室外機3の内部に取り込まれた外気と、冷媒とを熱交換する。室外熱交換器13の一方の冷媒出入口は、上述のように四方弁12のポートbに冷媒配管26で接続されており、他方の冷媒出入口が室外機液管29を介して閉鎖弁16に接続されている。
【0020】
室外膨張弁15は、室外機液管29に設けられている。室外膨張弁15は、電子膨張弁であり、その開度が調整されることにより、室外熱交換器13に流入する冷媒量、または、室外熱交換器13から流出する冷媒量を調整する。室外膨張弁15の開度は、冷凍サイクル装置1が冷房運転を行っている場合に全開とされる。また、冷凍サイクル装置1が暖房運転を行っている場合は、圧縮機10からの冷媒の吐出温度に応じて、室外膨張弁15の開度を制御することにより、冷媒の吐出温度が、圧縮機10の使用上の上限値を超えないように調整される。
【0021】
アキュムレータ18の冷媒流入側は四方弁12のポートcに冷媒配管27を介して接続されると共に、アキュムレータ18の冷媒流出側が圧縮機10の冷媒吸入側に吸入管24を介して接続されている。このようにアキュムレータ18は、冷媒回路2と圧縮機10とに接続されている。アキュムレータ18は、冷媒配管27からアキュムレータ18の内部に流入した冷媒を気相冷媒(ガス冷媒)と液層冷媒とに分離する。分離されたガス冷媒は圧縮機用アキュムレータ11を介して圧縮機10に吸入される。
【0022】
また、室外機3は、制御部としての室外機制御回路30を備える。室外機制御回路30は、図示しないが、室外機3の電装品箱(図示せず)に格納された制御基板に搭載されている。室外機制御回路30は、室外機3の各種センサが検出した検出結果及び制御信号に基づいて、圧縮機10及び室外ファン14の駆動を制御する。また、室外機制御回路30は、室外機3の各種センサが検出した検出結果及び制御信号に基づいて、四方弁12の切り換え制御を行うと共に、室外膨張弁15の開度を調整する。
【0023】
(実施例の要部)
そして、
図1に示すように、冷媒回路2には、油分離器22によって冷媒から分離された冷凍機油9が圧縮機10に送られる油戻し流路21cに、油戻し流路21cを流れる冷凍機油9に含まれる酸を捕捉する酸捕捉フィルタ35(請求項に記載のフィルタ)を有する酸捕捉器34が設けられている。酸捕捉器34は、油戻し流路21cに設けられた減圧器23の下流側に配置されており、酸捕捉フィルタ35を通過した潤滑油を吸入管24に送る。
【0024】
図2は、実施例の冷凍サイクル装置1における酸捕捉器34を示す模式図である。
図2に示すように、酸捕捉器34は、冷媒が一方向に流れる容器36を有しており、容器36内に酸捕捉フィルタ35が設けられている。酸捕捉フィルタ35は、例えば、活性アルミナ粒子を成形した多孔質体であり、多孔質体の吸着作用によって酸を捕捉する。これにより、冷凍サイクル装置1は、冷媒が高温環境下で分解して発生する酸による損傷を受けにくくなる。
【0025】
酸捕捉器34の酸捕捉フィルタ35は、流動抵抗が大きいので、酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留することがある。酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留した場合、圧縮機10に戻される冷凍機油9が減少し、圧縮機10の内部の冷凍機油9が不足するおそれがある。
【0026】
そこで、冷媒回路2は、室外機液管29を流れる液相冷媒を、油戻し流路21cの冷凍機油9の流れ方向に対して油戻し流路21cにおける酸捕捉器34の上流側(以下、単に上流側と称する。)に送る冷媒配管である冷媒供給流路33を備える。冷媒供給流路33は、一端が室外機液管29における室外膨張弁15と閉鎖弁16との間に接続されており、他端が油戻し流路21cにおける減圧器23と酸捕捉器34との間に接続されている。
【0027】
冷媒供給流路33は、液相冷媒を酸捕捉器34に送ることで、酸捕捉フィルタ35の内部に滞留した冷凍機油9を希釈し、冷凍機油9の粘度を低下させて、酸捕捉フィルタ35を通過する冷凍機油9が酸捕捉フィルタ35から受ける流動抵抗を小さくすることができる。このため、酸捕捉フィルタ35の内部に滞留した冷凍機油9を液相冷媒と共に流すことができる。したがって、冷凍サイクル装置1では、油戻し流路21cを流れる冷凍機油9に含まれる酸を酸捕捉フィルタ35によって捕捉して圧縮機10に酸が送られることを防ぐと共に、圧縮機10内で冷凍機油9の不足が生じることを抑えられる。
【0028】
加えて、冷媒供給流路33から液相冷媒が油戻し流路21cに送られたときに、冷凍機油9と共に液相冷媒が圧縮機10に送られる。圧縮機10に吸入される冷媒の乾き度が低下することで、圧縮機10から吐出される冷媒の吐出温度が低下するので、圧縮機10の内部において冷媒が分解して酸が発生することが抑えられる。
【0029】
油戻し流路21cに設けられた減圧器23は、例えばキャピラリチューブであって、冷媒供給流路33の室外機液管29側である冷媒入口の圧力よりも、酸捕捉器34の上流側の圧力が低くなるように圧力を調整する。これにより、室外機液管29から冷媒供給流路33に液相冷媒が適正に流入し、冷媒供給流路33を経て、油戻し流路21cに液相冷媒が確実に送られる。
【0030】
また、冷媒供給流路33には、冷媒供給流路33を開閉する開閉弁38が設けられており、室外機制御回路30によって開閉弁38の開閉動作が制御され、酸捕捉器34に送られる液相冷媒の流量が制御される。以下、実施例の冷凍サイクル装置1が開閉弁38を備える構造について説明するが、開閉弁38を備える構造に限定されず、冷媒供給流路33によって液相冷媒が酸捕捉器34に常時送られてもよい。このように液相冷媒が酸捕捉器34に常時送られる場合には、酸捕捉フィルタ35に冷凍機油9が滞留することが常に抑えられる。
【0031】
実施例において、通常時、開閉弁38は閉じられており、室外機液管29から冷媒供給流路33を介して酸捕捉器34に液相冷媒が送られない。したがって、通常時、酸捕捉器34には、油分離器22によって分離された冷凍機油9だけが酸捕捉器34に流入する。室外機制御回路30は、酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留していると判断したとき、冷媒供給流路33を閉じている開閉弁38を開くように制御する。
【0032】
室外機制御回路30によって酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留しているか否かを判断するために、冷媒回路2には、冷媒の圧力を検出する検出器として、第1圧力センサ41及び第2圧力センサ42が設けられている。第1圧力センサ41及び第2圧力センサ42は、室外機制御回路30と電気的に接続されており、検出信号を室外機制御回路30に送る。
【0033】
第1圧力センサ41は、圧縮機10から冷媒が吐出される吐出流路としての吐出管21aに設けられており、吐出管21a内の第1圧力P1を検出する。第2圧力センサ42は、油戻し流路21cにおける油分離器22と減圧器23との間に設けられており、油戻し流路21cにおける、酸捕捉器34の酸捕捉フィルタ35の上流側流路21d内の第2圧力P2を検出する。したがって、第2圧力センサ42は、減圧器23によって減圧される前の、油戻し流路21c内の圧力を検出する。
【0034】
室外機制御回路30は、第1圧力センサ41及び第2圧力センサ42の各検出結果に基づいて開閉弁38を開くように制御する。具体的には、室外機制御回路30は、第1圧力P1と第2圧力P2の差(P1-P2)が、予め設定された閾値よりも小さいときに、酸捕捉フィルタ35に滞留した冷凍機油9の量が許容量を超えたと判断し、開閉弁38を開くように制御する。なお、許容量とは、それを超えることで圧縮機10内部における冷凍機油9の油面が低下し、潤滑性、シール性等の信頼性に影響を与える限界値である。
【0035】
この制御は、酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留した場合に、酸捕捉フィルタ35の流動抵抗が大きくなって冷凍機油9が流れにくくなり、油戻し流路21cにおける酸捕捉フィルタ35の上流側と下流側で圧力差が大きくなることで、油戻し流路21cにおける酸捕捉フィルタ35の上流側流路21d内の第2圧力P2が上昇する現象に基づいている。このため、酸捕捉フィルタ35の内部で冷凍機油9の滞留が生じた場合には、酸捕捉フィルタ35の上流側流路21d内の第2圧力P2が上昇することで、第1圧力P1と第2圧力P2の差(P1-P2)が小さくなる。閾値は、酸捕捉フィルタ35の内部に滞留する冷凍機油9が許容できる量の最大値となった場合の差を予め実験により検証した値である。
【0036】
また、室外機制御回路30は、タイマー回路としても機能し、開閉弁38を開いたときから所定時間の経過後、開閉弁38を閉じるように制御する。所定時間は、予め実験等により定められたものであり、冷凍サイクル装置1が冷媒の循環量が少ない運転条件であっても、冷凍機油9の粘度を低下させるのに十分な量の液相冷媒を酸捕捉フィルタ35に流入させるのに必要な時間である。つまり、室外機制御回路30は、冷媒供給流路33から酸捕捉器34の酸捕捉フィルタ35に、例えば数分間、液相冷媒を送った後、開閉弁38を閉じることで、液相冷媒の供給を停止する。これにより、酸捕捉フィルタ35での冷凍機油9の滞留が解消した後に、室外機液管29から冷媒供給流路33を介して油戻し流路21cに不必要な液相冷媒が送られることを防げる。なお、このような経過時間に基づいて開閉弁38を閉じる制御の代わりに、室外機制御回路30は、開閉弁38を開いた後に、第1圧力P1と第2圧力P2の差(P1-P2)が所定圧力以上になったときに、開閉弁38を閉じるように制御してもよい。なお、本実施例では、第2圧力センサ42は、油戻し流路21cにおける油分離器22と減圧器23との間に設けられているが、減圧器23の下流側、且つ、酸捕捉フィルタ35の上流側に配置しても良い。この場合、第2圧力センサ42が油戻し流路21cにおける油分離器22と減圧器23との間に設けられた場合と比較して、冷凍機油9が酸捕捉フィルタ35の内部に滞留したときの検出値の変化が速く、変化量も大きい。
【0037】
(開閉弁の制御)
上述した室外機制御回路30による開閉弁38の制御についてフローチャートに沿って説明する。
図3は、実施例の冷凍サイクル装置1における開閉弁38の制御を説明するためのフローチャートである。
【0038】
図3に示すように、室外機制御回路30は、第1圧力センサ41によって吐出管21a内の第1圧力P1を検出し(ステップS1)、第2圧力センサ42によって油戻し流路21c内の第2圧力P2を検出する(ステップS2)。続いて、ステップS3に示すように、室外機制御回路30は、第1圧力P1と第2圧力P2の差(P1-P2)が閾値よりも小さいか否かを判断する。
【0039】
ステップS3において、室外機制御回路30は、第1圧力P1と第2圧力P2の差(P1-P2)が閾値よりも小さいと判断した場合(ステップS3のYes)、開閉弁38を開くように制御する(ステップS4)。これにより、冷媒供給流路33を介して液相冷媒が酸捕捉器34の酸捕捉フィルタ35に送られることで、酸捕捉フィルタ35の内部に滞留した冷凍機油9が液相冷媒によって希釈され、液相冷媒と共に冷凍機油9が圧縮機10に戻される。
【0040】
ステップS3において、室外機制御回路30は、第1圧力P1と第2圧力P2の差(P1-P2)が閾値以上であると判断した場合(ステップS3のNo)、ステップS1に戻り、第1圧力センサ41による第1圧力P1の検出、第2圧力センサ42による第2圧力P2の検出を繰り返す。
【0041】
次に、室外機制御回路30は、ステップS5に示すように、開閉弁38を開いたときから所定時間が経過したか否かを判断する。ステップS5において、室外機制御回路30は、開閉弁38を開いたときから所定時間が経過したと判断した場合(ステップS5のYes)、開閉弁38を閉じるように制御する(ステップS6)。これにより、冷媒供給流路33から油戻し流路21cに送られる液相冷媒の流れが停止する。室外機制御回路30は、開閉弁38を閉じた後、
図3に示す制御フローを繰り返す。また、ステップS5において、室外機制御回路30は、開閉弁38を開いたときから所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS5のNo)、開閉弁38を開いたときから所定時間が経過したか否かの判断を繰り返す。
【0042】
このように室外機制御回路30は、酸捕捉フィルタ35に冷凍機油9が滞留していると判断したとき、冷媒供給流路33の開閉弁38を開いて酸捕捉フィルタ35に液相冷媒を送ることにより、酸捕捉フィルタ35に滞留した冷凍機油9の粘度を低下させて、液相冷媒と共に冷凍機油9を圧縮機10に戻すことができる。したがって、冷凍サイクル装置1では、油戻し流路21cを流れる冷凍機油9から酸を酸捕捉フィルタ35によって除去することで酸によって圧縮機10内部の金属部品が腐食することを抑制しつつ、酸捕捉フィルタ35での冷凍機油9の滞留を解消し、油戻し流路21cによって冷凍機油9を圧縮機10に戻すことを適正に両立することができる。
【0043】
(開閉弁の制御の変形例)
上述した実施例では、室外機制御回路30が、冷媒回路2における圧力に基づいて酸捕捉フィルタ35に冷凍機油9の滞留が生じているか否かの判断を行ったが、圧力に限定されず、例えば、冷媒回路2における温度に基づいて冷凍機油9の滞留の発生を判断してもよい。
図4及び
図5は、実施例の冷凍サイクル装置1における開閉弁38の制御の変形例を説明するためのフローチャートである。
図4及び
図5において、
図3に示すステップと同じステップには同一符号を付けて説明を省略する。
【0044】
例えば、上述した第1圧力センサ41及び第2圧力センサ42の代わりに、圧縮機10から冷媒が吐出される吐出管21aの第1温度T1を検出する第1温度センサ46と、油戻し流路21cにおける酸捕捉フィルタ35の上流側流路21dの第2温度T2を検出する第2温度センサ47が用いられてもよい(
図1参照)。この場合、室外機制御回路30は、第1温度T1と第2温度T2の差(T1-T2)が閾値よりも大きくなったときに、開閉弁38を開くように制御する。
【0045】
この制御は、酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留した場合に、酸捕捉フィルタ35に滞留した冷凍機油9が外気によって冷やされることで、油戻し流路21cにおける酸捕捉フィルタ35の上流側流路21d内の第2温度T2が低下する現象に基づいている。このため、酸捕捉フィルタ35の内部で冷凍機油9の滞留が生じた場合には、酸捕捉フィルタ35の上流側流路21d内の第2温度T2が低下することで、第1温度T1と第2温度T2の差(T1-T2)が大きくなる。閾値は、酸捕捉フィルタ35の内部に滞留する冷凍機油9が許容できる量の最大値となった場合の差を予め実験により検証した値である。
【0046】
図4に示すように、室外機制御回路30は、第1温度センサ46によって吐出管21a内の第1温度T1を検出し(ステップS11)、第2温度センサ47によって油戻し流路21c内の第2温度T2を検出する(ステップS12)。続いて、ステップS13に示すように、室外機制御回路30は、第1温度T1と第2温度T2の差(T1-T2)が閾値よりも大きいか否かを判断する。
【0047】
ステップS13において、室外機制御回路30は、第1温度T1と第2温度T2の差(T1-T2)が閾値よりも大きいと判断した場合(ステップS13のYes)、開閉弁38を開くように制御する(ステップS4)。ステップS13において、室外機制御回路30は、第1温度T1と第2温度T2の差(T1-T2)が閾値以下であると判断した場合(ステップS13のNo)、ステップS11に戻り、第1温度センサ46による第1温度T1の検出、第2温度センサ47による第2温度T2の検出を繰り返す。
【0048】
また、この変形例においても、開閉弁38を開いたときからの経過時間に基づいて開閉弁38を閉じる制御の代わりに、室外機制御回路30は、開閉弁38を開いた後に、第1温度T1と第2温度T2の差(T1-T2)が所定温度以下になったときに、開閉弁38を閉じるように制御してもよい。
【0049】
また、上述のように第1温度センサ46及び第2温度センサ47を用いる代わりに、第2温度センサ47を用いずに、吐出管21aの温度Tを検出する第1温度センサ46だけを用いてよい。この場合、室外機制御回路30は、第1温度センサ46が検出した温度Tが閾値である所定温度よりも大きくなったときに、開閉弁38を開くように制御する。所定温度は、例えば、100[℃]程度に設定されている。この所定温度は、圧縮機10を保護するために圧縮機を停止させるための保護停止温度以下である。
【0050】
この制御は、酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留した場合に、油戻し流路21cによって圧縮機10に戻される冷凍機油9が不足することで、圧縮機10の内部の摺動部分に生じる摩擦熱によって圧縮機10の温度が急激に上昇し、圧縮機10から吐出される冷媒の吐出温度、すなわち吐出管21a内の温度Tが急激に上昇する現象に基づいている。このように、酸捕捉フィルタ35の内部で冷凍機油9の滞留が生じた場合には、吐出管21a内の温度Tが上昇する。
【0051】
図5に示すように、室外機制御回路30は、温度センサ46によって吐出管21a内の温度Tを検出する(ステップS21)。続いて、ステップS22に示すように、室外機制御回路30は、温度Tが所定温度よりも大きいか否かを判断する。
【0052】
ステップS22において、室外機制御回路30は、温度Tが所定温度よりも大きいと判断した場合(ステップS22のYes)、開閉弁38を開くように制御する(ステップS4)。ステップS22において、室外機制御回路30は、温度Tが所定温度以下であると判断した場合(ステップS22のNo)、ステップS21に戻り、温度センサ46による温度Tの検出を繰り返す。
【0053】
また、この変形例においても、開閉弁38を開いたときからの経過時間に基づいて開閉弁38を閉じる制御の代わりに、室外機制御回路30は、開閉弁38を開いた後に、温度Tが所定温度以下になったときに、開閉弁38を閉じるように制御してもよい。
【0054】
また、室外機制御回路30は、冷媒回路2における圧力や温度の代わりに、圧縮機10を駆動するモータ8に流れる電流値に基づいて、酸捕捉フィルタ35に冷凍機油9が滞留していると判断してもよい。この場合、室外機制御回路30は、モータ8の電流値が閾値よりも大きくなったときに、開閉弁38を開くように制御する。
【0055】
この制御は、酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留した場合に、油戻し流路21cによって圧縮機10に戻される冷凍機油9が不足することで、圧縮機10の内部の摺動部分に生じる摩擦熱によって圧縮機10を駆動するモータ8の電流値が急激に上昇する現象に基づいている。このように、酸捕捉フィルタ35の内部で冷凍機油9の滞留が生じた場合には、圧縮機10のモータ8の電流値が上昇する。また、室外機制御回路30は、モータ8の電流値の代わりに、モータ8の巻き線の温度に基づいて開閉弁38を開くように制御してもよい。
【0056】
(室内機の構成)
次に、室内機4について説明する。室内機4は、室内熱交換器51と、室内膨張弁52と、室内ファン53と、を備える。室内機4は、室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管6とが室内機液管54で接続されており、室内熱交換器51の他方の冷媒出入口とガス管7とが室内機ガス管55で接続されている。
【0057】
室内熱交換器51は、室内ファン53によって吸込口(図示せず)から室内機4の内部に取り込まれた室内空気と冷媒とを熱交換する。室内熱交換器51は、冷凍サイクル装置1が冷房運転を行う場合に蒸発器として機能し、室内機4が暖房運転を行う場合に凝縮器として機能する。
【0058】
室内膨張弁52は、室内機液管54に設けられている。室内膨張弁52は、電子膨張弁であり、室内熱交換器51が蒸発器として機能する場合、すなわち室内機4が冷房運転を行う場合、室内熱交換器51の冷媒出口での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように調整される。ここで、目標冷媒過熱度とは、室内機4で十分な冷房能力が発揮されるための冷媒過熱度である。また、室内膨張弁52は、室内熱交換器51が凝縮器として機能する場合、すなわち室内機4が暖房運転を行う場合、室内熱交換器51の冷媒出口での冷媒過の冷却度が予め定められた目標値となるように調整される。
【0059】
また、室内機4は、室内機制御回路60を備える。室内機制御回路60は、室内機4の電装品箱(図示せず)に格納された制御基板に搭載されている。室内機制御回路60は、室内機4の各種センサ(図示せず)が検出した検出結果やリモートコントローラ(不図示)及び室外機3から送信された信号に基づいて、室内膨張弁52の開度調整や室内ファン53の駆動を制御する。なお、冷凍サイクル装置1の制御回路は、上述した室外機制御回路30と室内機制御回路60によって構成される。
【0060】
(冷凍サイクル装置の動作)
次に、本実施形態における冷凍サイクル装置1の空調運転時の冷媒回路2における冷媒の流れや各部の動作について、
図1を用いて説明する。以下、室内機4が冷房/除湿運転を行う場合について説明し、暖房運転を行う場合については詳細な説明を省略する。
図1における冷媒の流れ方向F1に沿う矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示している。また、
図1における冷媒の流れ方向F2に沿う矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
【0061】
図1に示すように、室内機4が冷房運転を行う場合、室外機制御回路30は、四方弁12を
図1中に実線で示す状態、すなわち、四方弁12のポートaとポートbを連通させ、ポートcとポートdを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路2が、室外熱交換器13が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器51が蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。
【0062】
圧縮機10から吐出された高圧の冷媒は、吐出管21a、冷媒配管21bを流れて四方弁12に流入し、四方弁12から冷媒配管26、室外熱交換器13、室外膨張弁15、閉鎖弁16、液管6の順に流れて室内機4に流入する。室内機4に流入した冷媒は、室内機液管54を流れて室内熱交換器51に流入し、室内ファン53の回転によって室内機4の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、室内熱交換器51が蒸発器として機能し、室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が吹出口(図示せず)から室内に吹き出されることによって、室内機4が設置された室内の冷房が行われる。
【0063】
室内熱交換器51から流出した冷媒は室内機ガス管55を流れ、ガス管7に流入する。ガス管7を流れる冷媒は、閉鎖弁17を介して室外機3に流入する。室外機3に流入した冷媒は、室外機ガス管28、四方弁12、冷媒配管27、アキュムレータ18、吸入管24、圧縮機用アキュムレータ11の順に流れ、圧縮機10に吸入されて再び圧縮される。
【0064】
なお、室内機4が暖房を行う場合、四方弁12を
図1中に破線で示す状態、すなわち、四方弁12のポートaとポートdとを連結させ、ポートbとポートdとを連結させるように切り換える。これにより、冷媒回路2は、室外熱交換器13が蒸発器として機能すると共に室内熱交換器51が凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
【0065】
(膨張弁の制御)
ここで、実施例の冷凍サイクル装置1における室外膨張弁15及び室内膨張弁52の制御について説明する。以下、冷媒の温度に関して、例えば、高温が90℃程度、中温が40℃程度、低温が10℃程度である。冷媒の圧力に関して、例えば、高圧が3.0MPa程度、中圧が2.8MPa程度、低圧が0.9MPa程度である。
【0066】
冷房運転時、室外膨張弁15の入口に中温、高圧の冷媒が流入し、室外膨張弁15の出口から中温、高圧の冷媒が流出する。このとき、室内膨張弁52の入口まで過冷却状態を確保しながら冷媒を送るために、冷凍サイクル装置1の室外機制御回路30は、室外膨張弁15の開度が全開となるように制御する。即ち、室外膨張弁15は冷房運転時に冷媒の減圧を行わない。
【0067】
また、冷房運転時、室内膨張弁52の入口に中温、中圧の冷媒が流入し、室内膨張弁52の出口から低温、低圧の冷媒が流出する。このとき、冷凍サイクル装置1の室内機制御回路60は、室内熱交換器51で適正な蒸発能力が得られる蒸発温度まで冷媒を減圧し、冷媒の流量を制御する。また、室内機制御回路60は、室内熱交換器51の出口における冷媒過熱度(室内熱交換器51(蒸発器)の出口における冷媒の温度から、室内熱交換器51の入口における冷媒の温度を減算した値)を所定の目標値に保つように制御する。
【0068】
暖房運転時、室内膨張弁52の入口に中温、高圧の冷媒が流入し、室内膨張弁52の出口から中温、高圧の冷媒が流出し、閉鎖弁16から冷媒の流れ方向F2に沿って流れる。また、室内機制御回路60は、冷媒過冷却度(高圧飽和温度から、室内熱交換器51(凝縮器)の出口における冷媒の温度を減算した値)を所定の目標値に保つように制御する。
【0069】
また、暖房運転時、室外膨張弁15の入口に中温、中圧の冷媒が流入し、室外膨張弁15の出口から低温、低圧の冷媒が流出する。このとき、冷凍サイクル装置1の室外機制御回路30は、室外膨張弁15の開度を調節することによって室外熱交換器13で適正な蒸発能力が得られる蒸発温度まで冷媒を減圧し、冷媒の流量を制御する。
【0070】
(実施例の効果)
上述したように実施例の冷凍サイクル装置1は、油戻し流路21cを流れる冷凍機油9に含まれる酸を捕捉する酸捕捉フィルタ35と、油戻し流路21cにおける酸捕捉フィルタ35と油分離器22との間に接続され、冷媒回路2を流れる液相冷媒を酸捕捉フィルタ35に送る冷媒供給流路33と、を備える。これにより、液相冷媒を酸捕捉フィルタ35に常時送ることが可能になり、液相冷媒によって冷凍機油9を希釈して冷凍機油9の粘度を低下させ、酸捕捉フィルタ35において冷凍機油9の流動性が低下することを抑えられる。このため、油戻し流路21cを介して、液相冷媒と共に冷凍機油9を圧縮機10にスムーズに戻すことが可能になり、圧縮機10の内部の冷凍機油9が不足することが防げる。
【0071】
また、実施例の冷凍サイクル装置1は、冷媒供給流路33を開閉する開閉弁38と、開閉弁38の開閉動作を制御する室外機制御回路30と、を備えており、室外機制御回路30が酸捕捉フィルタ35に冷凍機油9が滞留していると判断したとき、開閉弁38を開くように制御する。これにより、油戻し流路21cに設けられた酸捕捉フィルタ35の内部に冷凍機油9が滞留した場合であっても、室外機制御回路30が開閉弁38を開くことで、冷媒供給流路33から油戻し流路21cに液相冷媒を送ることが可能になる。このため、冷凍機油9が滞留した酸捕捉フィルタ35に液相冷媒が送られることで、液相冷媒によって冷凍機油9を希釈して冷凍機油9の粘度を低下させ、滞留した冷凍機油9を液相冷媒によって除去できる。その結果、酸捕捉フィルタ35において冷凍機油9の流動性が低下することを抑えられる。酸捕捉フィルタ35から除去された冷凍機油9は、液相冷媒と共に圧縮機10に戻されるので、圧縮機10の内部の冷凍機油9が不足することが防げる。
【0072】
また、実施例の冷凍サイクル装置1の室外機制御回路30は、開閉弁38を開いたときから所定時間の経過後に開閉弁38を閉じるように制御する。これにより、冷媒供給流路33から酸捕捉フィルタ35に液相冷媒を送った後、開閉弁38を閉じて液相冷媒の供給を停止することにより、冷凍機油9の滞留が解消した後に、冷媒供給流路33を介して油戻し流路21cに不必要な液相冷媒が送られることを防げる。
【符号の説明】
【0073】
1 冷凍サイクル装置
2 冷媒回路
8 モータ
9 冷凍機油(潤滑油)
10 圧縮機
21a 吐出管(吐出流路)
21c 油戻し流路
21d 上流側流路
22 油分離器
23 減圧器
30 室外機制御回路(制御部)
33 冷媒供給流路
34 酸捕捉器
35 酸捕捉フィルタ
38 開閉弁
41 第1圧力センサ(第1検出器)
42 第2圧力センサ(第2検出器)
46 第1温度センサ、温度センサ(第1検出器)
47 第2温度センサ(第2検出器)
P1 第1圧力
P2 第2圧力
T 温度
T1 第1温度
T2 第2温度