(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂、ポリイミドワニス及びポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2020538359
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2019032153
(87)【国際公開番号】W WO2020040057
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018157225
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松丸 晃久
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 重之
(72)【発明者】
【氏名】村山 智寿
(72)【発明者】
【氏名】村谷 孝博
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-199945(JP,A)
【文献】特開2015-028143(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099518(WO,A1)
【文献】特開2012-251080(JP,A)
【文献】特許第5462631(JP,B2)
【文献】特許第4765938(JP,B2)
【文献】特開2000-248253(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106832277(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0353686(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0207123(US,A1)
【文献】米国特許第03639343(US,A)
【文献】特表2010-536981(JP,A)
【文献】特開2017-019986(JP,A)
【文献】特開2013-067718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0160317(US,A1)
【文献】特許第5589384(JP,B2)
【文献】Polymeric Materials:Science and Engineering,Vol.99,2008年,91-92,ISSN:1550-6703
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有するポリイミド樹脂であって、
構成単位Aが、下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)を含み、
構成単位Bが、下記一般式(b1-1-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)を含み、
構成単位A及び構成単位Bの少なくとも一方が2種以上の構成単位を含み、
構成単位Aが2種以上の構成単位を含む場合における、構成単位(A-1)以外の構成単位として、構成単位Aがさらに下記式(a-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-3)を含み、
構成単位Bが2種以上の構成単位を含む場合における、構成単位(B-1)以外の構成単位として、構成単位Bが、さらに下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)、下記式(b-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-3)、及び下記式(b-4)で表される化合物に由来する構成単位(B-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を5~55モル%含む、ポリイミド樹脂。
【化1】
【化2】
【請求項2】
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率が5~100モル%である、請求項1に記載のポリイミド樹脂。
【請求項3】
構成単位Aが構成単位(A-1)を含み、構成単位A中における構成単位(A-1)の比率が45~100モル%である、請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂。
【請求項4】
構成単位B中における構成単位(B-2)、構成単位(B-3)、及び構成単位(B-4)の合計が占める比率が5~55モル%である、請求項1~
3のいずれかに記載のポリイミド樹脂。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるポリイミドワニス。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂、ポリイミドワニス及びポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、電気・電子部品等の分野において様々な利用が検討されている。例えば、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置に用いられるガラス基板を、デバイスの軽量化やフレキシブル化を目的として、プラスチック基板へ代替することが望まれており、当該プラスチック基板として適するポリイミドフィルムの研究が進められている。このような用途のポリイミドフィルムには無色透明性が求められる。
さらに、ポリイミドフィルムの要求特性として複屈折による位相差が小さく、リタデーションが低いことが求められる。
【0003】
特許文献1には、複屈折が低減したフィルムを与えるポリイミド樹脂として、ジアミンのアミノ基の少なくとも一方が主鎖に対してメタ位に結合しているジアミン(例えば、メタフェニレンジアミン)を用いて得られるポリイミド樹脂が開示されている。
特許文献2には、耐熱性、透過率、低線膨張係数及び低リタデーションに優れたフィルムを与えるポリイミド樹脂として、特定構造のテトラカルボン酸残基及びジアミン残基と、屈曲部位を有するテトラカルボン残基及び/又はジアミン残基とを含むポリイミド樹脂が開示され、具体的に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを用いて得られるポリイミド樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-134211号公報
【文献】国際公開第2015/125895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、ポリイミドフィルムには様々な特性が要求されるが、それら特性を同時に満足させることは容易ではない。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、無色透明性に優れ、更に低リタデーションであるフィルムの形成が可能なポリイミド樹脂、並びに該ポリイミド樹脂を含むポリイミドワニス及びポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の構成単位の組み合わせを含むポリイミド樹脂が上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の[1]~[9]に関する。
[1]
テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有するポリイミド樹脂であって、
構成単位Aが、下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)、及び下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含み、
構成単位Bが、下記一般式(b1-1)で表される化合物に由来する構成単位、及び下記一般式(b2-1)で表される化合物に由来する構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位(B-1)を含む、ポリイミド樹脂。
【0008】
【化1】
(式中、X
1~X
4はそれぞれ独立に、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。)
【0009】
[2]
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率が5~100モル%である、上記[1]に記載のポリイミド樹脂。
[3]
構成単位Aが構成単位(A-1)を含み、構成単位A中における構成単位(A-1)の比率が45~100モル%である、上記[1]又は[2]に記載のポリイミド樹脂。
[4]
構成単位(B-1)が、下記式(b1-1-1)で表される化合物に由来する構成単位、下記式(b1-1-2)で表される化合物に由来する構成単位、及び下記式(b1-1-3)で表される化合物に由来する構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリイミド樹脂。
【0010】
【0011】
[5]
構成単位Bが、さらに下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)、下記式(b-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-3)、及び下記式(b-4)で表される化合物に由来する構成単位(B-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリイミド樹脂。
【0012】
【0013】
[6]
構成単位B中における構成単位(B-2)、構成単位(B-3)、及び構成単位(B-4)の合計が占める比率が5~95モル%である、上記[5]に記載のポリイミド樹脂。
[7]
構成単位Aが、さらに下記式(a-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-3)を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリイミド樹脂。
【0014】
【0015】
[8]
上記[1]~[7]のいずれかに記載のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるポリイミドワニス。
[9]
上記[1]~[7]のいずれかに記載のポリイミド樹脂を含む、ポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無色透明性に優れ、更に低リタデーションであるフィルムの形成が可能なポリイミド樹脂、並びに該ポリイミド樹脂を含むポリイミドワニス及びポリイミドフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[ポリイミド樹脂]
本発明のポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位A及びジアミンに由来する構成単位Bを有し、構成単位Aが、下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)、及び下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含み、
構成単位Bが、下記一般式(b1-1)で表される化合物に由来する構成単位、及び下記一般式(b2-1)で表される化合物に由来する構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位(B-1)を含む。
【0018】
【化5】
(式中、X
1~X
4はそれぞれ独立に、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO
2-、-O-又は-CO-を示す。)
【0019】
<構成単位A>
構成単位Aは、ポリイミド樹脂に占めるテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であって、構成単位Aは、下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)、及び下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含む。
【化6】
【0020】
式(a-1)で表される化合物は、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。
構成単位Aが構成単位(A-1)を含むことによって、フィルムの無色透明性、耐熱性、及び熱安定性が向上する。
式(a-2)で表される化合物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物である。
構成単位Aが構成単位(A-2)を含むことよって、フィルムの透明性が向上し、ポリイミドの有機溶剤に対する溶解性が向上する。
【0021】
構成単位Aは、構成単位(A-1)、及び構成単位(A-2)の両方を含んでいてもよいが、好ましくは構成単位(A-1)、又は構成単位(A-2)のいずれか一方を含み、より好ましくは構成単位(A-1)を含む。
【0022】
構成単位Aが構成単位(A-1)及び構成単位(A-2)を含む場合、構成単位A中における構成単位(A-1)及び(A-2)の合計の比率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。構成単位(A-1)及び(A-2)の合計の比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。
【0023】
構成単位Aが構成単位(A-1)を含む場合、構成単位A中における構成単位(A-1)の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。同様に、構成単位A中における構成単位(A-1)の比率は、好ましくは45~100モル%、より好ましくは70~100モル%、更に好ましくは90~100モル%、特に好ましくは99~100モル%である。
構成単位Aが構成単位(A-2)を含む場合、構成単位A中における構成単位(A-2)の比率は、好ましくは45モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、特に好ましくは99モル%以上である。その比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。同様に、構成単位A中における構成単位(A-2)の比率は、好ましくは45~100モル%、より好ましくは70~100モル%、更に好ましくは90~100モル%、特に好ましくは99~100モル%である。
【0024】
構成単位Aは、さらに下記式(a-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-3)を含んでいてもよい。
【0025】
【0026】
式(a-3)で表される化合物は、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物である。構成単位Aが構成単位(A-3)を含むことよって、フィルムの無色透明性が向上する。
【0027】
構成単位Aが構成単位(A-3)を含む場合、構成単位A中における構成単位(A-13)の比率は、好ましくは55モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
構成単位Aが構成単位(A-3)を含む場合、構成単位Aは、好ましくは構成単位(A-1)及び構成単位(A-3)を含み、より好ましくは構成単位(A-1)及び構成単位(A-3)からなる。
【0028】
構成単位Aは、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(A-1)~(A-3)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、及びジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物;並びに1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環を1つ以上含むテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂環式テトラカルボン酸二無水物とは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環も脂環も含まないテトラカルボン酸二無水物を意味する。
構成単位Aに任意に含まれる構成単位(A-1)~(A-3)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
構成単位Aは、前記構成単位(A-1)~(A-3)以外の構成単位を含まないことが好ましい。
【0029】
<構成単位B>
構成単位Bは、ポリイミド樹脂に占めるジアミンに由来する構成単位であって、下記一般式(b1-1)で表される化合物に由来する構成単位、及び下記一般式(b2-1)で表される化合物に由来する構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位(B-1)を含む。
【0030】
【0031】
式(b1-1)及び(b2-1)中、X1~X4はそれぞれ独立に、単結合、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。
構成単位Bが構成単位(B-1)を含むことによって、フィルムの無色透明性が向上し、リタデーション値が低下する。構成単位(B-1)は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0032】
一般式(b1-1)で表される化合物は、X1及びX2を介して3つのベンゼン環が連結し、中央のベンゼン環の1,3位にX1及びX2が結合した骨格を有し、一般式(b2-1)で表される化合物は、X3及びX4を介して3つのベンゼン環が連結し、中央のベンゼン環の1,2位にX3及びX4が結合した骨格を有している。ポリイミド樹脂における構成単位B中にこのような骨格構造を有することにより、低リタデーションに優れたフィルムを形成することが可能となる。
【0033】
一般式(b1-1)及び(b2-1)におけるX1~X4は、低リタデーションに優れたフィルムを形成する観点から、それぞれ独立に、好ましくは炭素数3~5のアルキリデン基、-SO2-、又は-O-を示し、より好ましくは炭素数3~5のアルキリデン基、又は-O-を示し、更に好ましくはイソプロピリデン基、又は-O-を示し、より更に好ましくはイソプロピリデン基を示す。
一般式(b1-1)におけるX1及びX2は、それぞれ異なる基を有していてもよいが、同一の基であることが好ましい。同様に、式(b2-1)におけるX3及びX4は、それぞれ異なる基を有していてもよいが、同一の基であることが好ましい。
一般式(b1-1)及び(b2-1)におけるアミノ基は、各々のアミノ基が結合するベンゼン環と結合するX1~X4のいずれかに対して、このベンゼン環のパラ位又はメタ位に結合することが好ましい。
【0034】
構成単位(B-1)は、上記一般式(b1-1)で表される化合物に由来する構成単位を含むことが好ましく、下記式(b1-1-1)で表される化合物に由来する構成単位、下記式(b1-1-2)で表される化合物に由来する構成単位、及び下記式(b1-1-3)で表される化合物に由来する構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含むことがより好ましい。
【0035】
【0036】
式(b1-1-1)で表される化合物は、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼンであり、
式(b1-1-2)で表される化合物は、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンであり、
式(b1-1-3)で表される化合物は、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンである。
【0037】
式(b1-1-1)~式(b1-1-3)で表される化合物の中では、好ましくは式(b1-1-1)で表される化合物、及び式(b1-1-2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物であり、より好ましくは式(b1-1-1)で表される化合物である。
【0038】
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは45モル%以上、特に好ましくは75モル%以上である。構成単位(B-1)の比率の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。構成単位Bは構成単位(B-1)のみからなっていてもよい。
構成単位B中における構成単位(B-1)の比率は、好ましくは5~100モル%、より好ましくは15~100モル%、更に好ましくは45~100モル%、特に好ましくは75~100モル%である。
構成単位(B-1)が式(b1-1-1)で表される化合物に由来する構成単位を含む場合、構成単位(B-1)中における式(b1-1-1)で表される化合物に由来する構成単位の比率は、好ましくは50~100モル%、より好ましくは75~100モル%、更に好ましくは90~100モル%、特に好ましくは95~100モル%である。
【0039】
構成単位Bは構成単位(B-1)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位としては、特に限定されないが、下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)、下記式(b-3)で表される化合物に由来する構成単位(B-3)、及び下記式(b-4)で表される化合物に由来する構成単位(B-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含むことが好ましい。
【0040】
【0041】
式(b-2)で表される化合物は、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンであり、
式(b-3)で表される化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルであり、
式(b-4)で表される化合物は、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼンである。
構成単位Bが構成単位(B-2)~(B-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含む場合、構成単位(B-2)~(B-4)のうち2種以上を含んでいてもよいが、構成単位(B-2)~(B-4)のうち1種の構成単位を含むことが好ましい。つまり、構成単位Bが構成単位(B-2)、構成単位(B-3)、又は構成単位(B-4)を含むことが好ましい。
【0042】
構成単位Bが構成単位(B-2)~(B-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を含む場合、構成単位B中における構成単位(B-2)~(B-4)の合計が占める比率は、好ましくは5~95モル%、より好ましくは7~85モル%、更に好ましくは10~55モル%、特に好ましくは12~25モル%である。
【0043】
構成単位Bは構成単位(B-1)~(B-4)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を与えるジアミンとしては、特に限定されないが、1,4-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、1,5-ジアミノナフタレン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-5-アミン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン;並びにエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
なお、本明細書において、芳香族ジアミンとは芳香環を1つ以上含むジアミンを意味し、脂環式ジアミンとは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないジアミンを意味し、脂肪族ジアミンとは芳香環も脂環も含まないジアミンを意味する。
構成単位Bに任意に含まれる構成単位(B-1)~(B-4)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
構成単位Bは、前記構成単位(B-1)~(B-4)以外の構成単位を含まないことが好ましい。
【0044】
本発明のポリイミド樹脂の数平均分子量は、得られるポリイミドフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは5,000~100,000である。なお、ポリイミド樹脂の数平均分子量は、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求めることができる。
【0045】
本発明のポリイミド樹脂は、ポリイミド鎖(構成単位Aと構成単位Bとがイミド結合してなる構造)以外の構造を含んでもよい。ポリイミド樹脂中に含まれうるポリイミド鎖以外の構造としては、例えばアミド結合を含む構造等が挙げられる。
本発明のポリイミド樹脂は、ポリイミド鎖(構成単位Aと構成単位Bとがイミド結合してなる構造)を主たる構造として含むことが好ましい。したがって、本発明のポリイミド樹脂中に占めるポリイミド鎖の比率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは99質量%以上である。
【0046】
本発明のポリイミド樹脂を用いることで、無色透明性に優れ、更に低リタデーションであるフィルムを形成することができ、当該フィルムの有する好適な物性値は以下の通りである。
全光線透過率は、厚さ30μmのフィルムとした際に、好ましくは85%以上であり、より好ましくは87%以上であり、更に好ましくは88%以上、より更に好ましくは89%以上である。
ヘイズは、厚さ30μmのフィルムとした際に、好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1.0%以下である。
イエローインデックス(YI)は、厚さ30μmのフィルムとした際に、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、更に好ましくは3.0以下、より更に好ましく2.0以下である。
本発明では、厚み位相差(Rth)が好ましくは90nm以下、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは50nm以下、より更に好ましくは30nm以下のポリイミドフィルムとすることができる。なお、本明細書において、「低リタデーション」とは、厚み位相差(Rth)が低いことを意味し、好ましくは厚み位相差(Rth)が前記範囲内にあることをいう。
なお、本発明における上述の物性値は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0047】
本発明のポリイミド樹脂を用いることで形成することができるフィルムは耐熱性及び機械的特性も良好であり、以下のような好適な物性値を有する。
ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは200℃以上であり、より好ましくは230℃以上であり、更に好ましくは250℃以上である。
引張弾性率は、好ましくは2.5GPa以上であり、より好ましくは3.0GPa以上であり、更に好ましくは3.5GPa以上である。
引張強度は、好ましくは70MPa以上であり、より好ましくは90MPa以上であり、更に好ましくは100MPa以上である。
引張弾性率及び引張強度は、JIS K7127:1999に準拠して測定される値である。
【0048】
[ポリイミド樹脂の製造方法]
本発明のポリイミド樹脂は、上述の構成単位(A-1)を与える化合物及び上述の構成単位(A-2)を与える化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むテトラカルボン酸成分と、上述の構成単位(B-1)を与える化合物を含むジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。
【0049】
構成単位(A-1)を与える化合物としては、式(a-1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-1)を与える化合物としては、式(a-1)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
同様に、構成単位(A-2)を与える化合物としては、式(a-2)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-2)を与える化合物としては、式(a-2)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
【0050】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物及び構成単位(A-2)を与える化合物を合計で、好ましくは50モル%以上含み、より好ましくは70モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上含み、特に好ましくは99モル%以上含む。構成単位(A-1)を与える化合物及び構成単位(A-2)を与える化合物の合計の含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。テトラカルボン酸成分は構成単位(A-1)を与える化合物と構成単位(A-2)を与える化合物とのみからなっていてもよい。
【0051】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物、又は構成単位(A-2)を与える化合物を含む場合、構成単位(A-1)を与える化合物、又は構成単位(A-2)を与える化合物を、好ましくは45モル%以上含み、より好ましくは70モル%以上含み、更に好ましくは90モル%以上含む。構成単位(A-1)を与える化合物、又は構成単位(A-2)を与える化合物の含有量の上限値は限定されず、即ち、100モル%である。テトラカルボン酸成分は構成単位(A-1)を与える化合物又は構成単位(A-2)を与える化合物のみからなっていてもよく、構成単位(A-1)を与える化合物のみからなることが好ましい。
【0052】
テトラカルボン酸成分は、低リタデーションの物性を損なわない範囲で上述の構成単位(A-3)を与える化合物を含んでもよい。
構成単位(A-3)を与える化合物としては、式(a-3)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(a-3)で表されるテトラカルボン酸二無水物に対応するテトラカルボン酸及び当該テトラカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。構成単位(A-3)を与える化合物としては、式(a-3)で表される化合物(即ち、二無水物)が好ましい。
【0053】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-3)を与える化合物を含む場合、構成単位(A-3)を与える化合物を、好ましくは55モル%以下、より好ましくは30モル%以下含む。テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-3)を与える化合物を含む場合、構成単位(A-1)を与える化合物及び構成単位(A-3)を与える化合物のみからなることが好ましい。
【0054】
テトラカルボン酸成分は、構成単位(A-1)を与える化合物、構成単位(A-2)を与える化合物、及び構成単位(A-3)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、当該化合物としては、上述の芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物、並びにそれらの誘導体(テトラカルボン酸、テトラカルボン酸のアルキルエステル等)が挙げられる。
テトラカルボン酸成分に任意に含まれる構成単位(A-1)~(A-3)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0055】
構成単位(B-1)を与える化合物としては、一般式(b1-1)で表される化合物、及び一般式(b2-1)で表される化合物が挙げられるが、それに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、一般式(b1-1)で表される化合物に対応するジイソシアネート、及び一般式(b2-1)で表されるジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位(B-1)を与える化合物としては、一般式(b1-1)で表される化合物、及び一般式(b2-1)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。
【0056】
構成単位(B-1)を与える化合物としては、一般式(b1-1)で表される化合物を含むことが好ましく、式(b1-1-1)で表される化合物、式(b1-1-2)で表される化合物、及び式(b1-1-3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことがより好ましく、式(b1-1-1)で表される化合物、及び式(b1-1-2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含むことが更に好ましく、式(b1-1-1)で表される化合物を含むことが特に好ましい。
【0057】
ジアミン成分は、構成単位(B-1)を与える化合物を、好ましくは5モル%以上含み、より好ましくは15モル%以上含み、更に好ましくは45モル%以上含み、特に好ましくは75モル%以上含む。構成単位(B-1)を与える化合物の含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%である。ジアミン成分は構成単位(B-1)を与える化合物のみからなっていてもよい。
構成単位(B-1)を与える化合物が式(b1-1-1)で表される化合物を含む場合、構成単位(B-1)を与える化合物中における式(b1-1-1)で表される化合物の比率は、好ましくは50~100モル%、より好ましくは75~100モル%、更に好ましくは90~100モル%、特に好ましくは95~100モル%である。
【0058】
ジアミン成分は、無色透明性、低リタデーションの物性を損なわない範囲で上述の構成単位(B-2)を与える化合物、上述の構成単位(B-3)を与える化合物、及び上述の構成単位(B-4)を与える化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含んでもよい。
構成単位(B-2)~(B-4)を与える化合物としては、それぞれ式(b-2)~(b-4)で表される化合物が挙げられるが、それらに限られず、同じ構成単位を与える範囲でその誘導体であってもよい。当該誘導体としては、式(b-2)~(b-4)で表されるジアミンに対応するジイソシアネートが挙げられる。構成単位(B-2)~(B-4)を与える化合物としては、それぞれ式(b-2)~(b-4)で表される化合物(即ち、ジアミン)が好ましい。
【0059】
ジアミン成分は、構成単位(B-2)~(B-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を与える化合物を含む場合、構成単位(B-2)~(B-4)のうち2種以上の構成単位を与える化合物を含んでいてもよいが、構成単位(B-2)~(B-4)のうち1種の構成単位を与える化合物含むことが好ましい。つまり、構成単位Bが構成単位(B-2)を与える化合物、構成単位(B-3)を与える化合物、又は構成単位(B-4)を与える化合物を含むことが好ましい。
【0060】
ジアミン成分は、構成単位(B-2)~(B-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構成単位を与える化合物を含む場合、当該化合物を、好ましくは5~95モル%、より好ましくは7~85モル%、更に好ましくは10~55モル%、特に好ましくは12~25モル%含む。
【0061】
ジアミン成分は構成単位(B-1)~(B-4)を与える化合物以外の化合物を含んでもよく、当該化合物としては、上述の芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、及び脂肪族ジアミン、並びにそれらの誘導体(ジイソシアネート等)が挙げられる。
ジアミン成分に任意に含まれる構成単位(B-1)~(B-4)を与える化合物以外の化合物は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0062】
本発明において、ポリイミド樹脂の製造に用いるテトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み量比は、テトラカルボン酸成分1モルに対してジアミン成分が0.9~1.1モルであることが好ましい。
【0063】
また、本発明において、ポリイミド樹脂の製造には、前述のテトラカルボン酸成分及びジアミン成分の他に、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、テトラカルボン酸成分1モルに対して0.0001~0.1モルが好ましく、特に0.001~0.06モルが好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4-メチルベンジルアミン、4-エチルベンジルアミン、4-ドデシルベンジルアミン、3-メチルベンジルアミン、3-エチルベンジルアミン、アニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4-クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸、シクロペンタン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
【0064】
前述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、室温~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(2)ジアミン成分及び反応溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、必要に応じて室温~80℃で0.5~30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(3)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、直ちに昇温してイミド化反応を行う方法等が挙げられる。
【0065】
ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤は、イミド化反応を阻害せず、生成するポリイミドを溶解できるものであればよい。例えば、非プロトン性溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。
【0066】
非プロトン性溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶剤、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ピコリン、ピリジン等のアミン系溶剤、酢酸(2-メトキシ-1-メチルエチル)等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0067】
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
カーボネート系溶剤の具体的な例としては、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
上記反応溶剤の中でも、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤が好ましい。上記の反応溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0068】
イミド化反応では、ディーンスターク装置などを用いて、製造時に生成する水を除去しながら反応を行うことが好ましい。このような操作を行うことで、重合度及びイミド化率をより上昇させることができる。
【0069】
上記のイミド化反応においては、公知のイミド化触媒を用いることができる。イミド化触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられる。
塩基触媒としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α-ピコリン、β-ピコリン、2,4-ルチジン、2,6-ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、イミダゾール、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の有機塩基触媒、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基触媒が挙げられる。
また、酸触媒としては、クロトン酸、アクリル酸、トランス-3-ヘキセノイック酸、桂皮酸、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、取り扱い性の観点から、塩基触媒を用いることが好ましく、有機塩基触媒を用いることがより好ましく、トリエチルアミン及びトリエチレンジアミンから選ばれる1種以上を用いることが更に好ましく、トリエチルアミンを用いること、又はトリエチルアミンとトリエチレンジアミンを組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0070】
イミド化反応の温度は、反応率及びゲル化等の抑制の観点から、好ましくは120~250℃、より好ましくは160~200℃である。また、反応時間は、生成水の留出開始後、好ましくは0.5~10時間である。
【0071】
[ポリイミドワニス]
本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂が有機溶媒に溶解してなるものである。即ち、本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂及び有機溶媒を含み、当該ポリイミド樹脂は当該有機溶媒に溶解している。
有機溶媒はポリイミド樹脂が溶解するものであればよく、特に限定されないが、ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤として上述した化合物を、単独又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
本発明のポリイミドワニスは、重合法により得られるポリイミド樹脂が反応溶剤に溶解したポリイミド溶液そのものであってもよいし、又は当該ポリイミド溶液に対して更に希釈溶剤を追加したものであってもよい。
本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂が沸点130℃以下の低沸点溶媒に溶解してなるものであってもよい。有機溶媒として当該低沸点溶媒を用いることで、後述するポリイミドフィルムを製造する際の加熱温度を低くすることができる。当該低沸点溶媒としては、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトン等が挙げられ、中でもジクロロメタンが好ましい。
【0072】
本発明のポリイミド樹脂は溶媒溶解性を有しているため、室温で安定な高濃度のワニスとすることができる。本発明のポリイミドワニスは、本発明のポリイミド樹脂を5~40質量%含むことが好ましく、10~30質量%含むことがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は1~200Pa・sが好ましく、5~150Pa・sがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は、E型粘度計を用いて25℃で測定された値である。
また、本発明のポリイミドワニスは、ポリイミドフィルムの要求特性を損なわない範囲で、無機フィラー、接着促進剤、剥離剤、難燃剤、紫外線安定剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、架橋剤、重合開始剤、感光剤等各種添加剤を含んでもよい。
本発明のポリイミドワニスの製造方法は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。
【0073】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、本発明のポリイミド樹脂を含む。したがって、本発明のポリイミドフィルムは、無色透明性に優れ、更に低リタデーションである。本発明のポリイミドフィルムが有する好適な物性値は上述の通りである。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、本発明のポリイミドワニスを、ガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に塗布、又はフィルム状に成形した後、該ワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を加熱により除去する方法等が挙げられる。前記支持体の表面には、必要に応じて、予め離形剤を塗布しておいてもよい。
ワニス中に含まれる有機溶媒を加熱により除去する方法としては、以下の方法が好ましい。即ち、120℃以下の温度で有機溶媒を蒸発させて自己支持性フィルムとした後、該自己支持性フィルムを支持体より剥離し、該自己支持性フィルムの端部を固定し、用いた有機溶媒の沸点以上の温度で乾燥してポリイミドフィルムを製造することが好ましい。また、窒素雰囲気下で乾燥することが好ましい。乾燥雰囲気の圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよい。自己支持性フィルムを乾燥してポリイミドフィルムを製造する際の加熱温度は、特に限定されないが、200~400℃が好ましい。
本発明のポリイミドワニスに含まれる有機溶媒が沸点130℃以下の低沸点溶媒である場合には、自己支持性フィルムの加熱温度は、100~180℃が好ましい。さらに、低沸点溶媒を除去して得られたポリイミドフィルムをさらにガラス転移温度以上の温度で加熱するアニール処理を行うことが好ましい。
【0074】
また、本発明のポリイミドフィルムは、ポリアミド酸が有機溶媒に溶解してなるポリアミド酸ワニスを用いて製造することもできる。
前記ポリアミド酸ワニスに含まれるポリアミド酸は、本発明のポリイミド樹脂の前駆体であって、上述の構成単位(A-1)を与える化合物及び上述の構成単位(A-2)を与える化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むテトラカルボン酸成分と上述の構成単位(B-1)を与える化合物を含むジアミン成分との重付加反応の生成物である。このポリアミド酸をイミド化(脱水閉環)することで、最終生成物である本発明のポリイミド樹脂が得られる。
前記ポリアミド酸ワニスに含まれる有機溶媒としては、本発明のポリイミドワニスに含まれる有機溶媒を用いることができる。
本発明において、ポリアミド酸ワニスは、上述の構成単位(A-1)を与える化合物及び上述の構成単位(A-2)を与える化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むテトラカルボン酸成分と上述の構成単位(B-1)を与える化合物を含むジアミン成分とを反応溶剤中で重付加反応させて得られるポリアミド酸溶液そのものであってもよいし、又は当該ポリアミド酸溶液に対して更に希釈溶剤を追加したものであってもよい。
【0075】
ポリアミド酸ワニスを用いてポリイミドフィルムを製造する方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミド酸ワニスを、ガラス板、金属板、プラスチックなどの平滑な支持体上に塗布、又はフィルム状に成形し、該ワニス中に含まれる反応溶剤や希釈溶剤等の有機溶媒を加熱により除去してポリアミド酸フィルムを得て、該ポリアミド酸フィルム中のポリアミド酸を加熱によりイミド化することで、ポリイミドフィルムを製造することができる。
ポリアミド酸ワニスを乾燥させてポリアミド酸フィルムを得る際の加熱温度としては、好ましくは50~120℃である。ポリアミド酸を加熱によりイミド化する際の加熱温度としては好ましくは200~400℃である。
なお、イミド化の方法は熱イミド化に限定されず、化学イミド化を適用することもできる。
【0076】
本発明のポリイミドフィルムの厚みは用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは1~250μm、より好ましくは5~100μm、更に好ましくは10~80μmの範囲である。厚みが1~250μmであることで、自立膜としての実用的な使用が可能となる。
ポリイミドフィルムの厚みは、ポリイミドワニスの固形分濃度や粘度を調整することにより、容易に制御することができる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で得たワニスの固形分濃度及びフィルムの各物性は以下に示す方法によって測定した。
【0078】
(1)固形分濃度
ワニスの固形分濃度の測定は、アズワン株式会社製の小型電気炉「MMF-1」で試料を280℃×120minで加熱し、加熱前後の試料の質量差から算出した。
(2)フィルム厚さ
フィルム厚さは、株式会社ミツトヨ製のマイクロメーターを用いて測定した。
(3)全光線透過率、イエローインデックス(YI)、ヘイズ
全光線透過率、YI及びヘイズは、日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器「COH400」を用いて測定した。全光線透過率及びYIの測定はJIS K7361-1:1997に準拠し、ヘイズの測定はJIS K7136:2000に準拠した
(4)厚み位相差(Rth)
厚み位相差(Rth)は、日本分光株式会社製のエリプソメーター「M-220」を用いて測定した。測定波長550nmにおける、厚み位相差の値を測定した。なおRthは、ポリイミドフィルムの面内の屈折率のうち最大のものをnx、最小のものをnyとし、厚み方向の屈折率をnzとし、フィルムの厚みをdとしたとき、下記式によって表されるものである。
Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×d
【0079】
実施例及び比較例にて使用したテトラカルボン酸成分及びジアミン成分、並びにその略号等は下記の通りである。
<テトラカルボン酸成分>
HPMDA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(三菱ガス化学株式会社製;式(a-1)で表される化合物)
CpODA:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(JXTGエネルギー株式会社製;式(a-3)で表される化合物)
<ジアミン成分>
BisAM:1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(三井化学ファイン株式会社製、式(b1-1-1)で表される化合物)
TPER:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(和歌山精化工業株式会社製、式(b1-1-2)で表される化合物)
APBN:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学株式会社製、式(b1-1-3)で表される化合物)
TPEQ:1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(和歌山精化工業株式会社製)
3,5-DABA:3,5-ジアミノ安息香酸(日本純良薬品株式会社製)
BAPA:2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(和歌山精化工業株式会社製)
ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(和歌山精化工業株式会社製、式(b-3)で表される化合物)
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(和歌山精化工業株式会社製、式(b-2)で表される化合物)
3,4’-DPE:3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(和歌山精化工業株式会社製)
BisAP:1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(三井化学ファイン株式会社製、式(b-4)で表される化合物)
【0080】
実施例及び比較例において使用した、溶媒及び触媒の詳細は下記の通りである。
γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)
N,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学株式会社製)
トリエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)
トリエチルアミン(関東化学株式会社製)
【0081】
<実施例1>
反応装置としてステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク装置、温度計、及びガラス製エンドキャップを備えた0.3Lの5ツ口ガラス製丸底フラスコを使用し、該丸底フラスコ中で、BisAMを25.920g(0.075モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル株式会社製)を35.0g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.048g、トリエチルアミンを3.80g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを16.830g(0.075モル)とγ-ブチロラクトンを17.1g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に5.5時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを67.71g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度25質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0082】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み30μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0083】
<実施例2>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、APBNを24.899g(0.085モル)、γ-ブチロラクトンを40.0g、及び触媒として、トリエチルアミンを4.30g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを19.074g(0.085モル)とγ-ブチロラクトンを13.7g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に3.3時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを41.6g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0084】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み47μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0085】
<実施例3>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、TPERを24.337g(0.083モル)、γ-ブチロラクトンを45.1g、及び触媒として、トリエチルアミンを2.11g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを18.701g(0.083モル)とN,N-ジメチルアセトアミドを19.4g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に2.7時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを64.5g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度24質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0086】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み31μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0087】
<比較例1>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、TPEQを23.370g(0.080モル)、γ-ブチロラクトンを40.4g、及び触媒として、トリエチルアミンを0.41g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら80℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを17.934g(0.080モル)とγ-ブチロラクトンを10.1g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に2.5時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを103.3g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0088】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み18μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0089】
<比較例2>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、3,5-DABAを28.559g(0.188モル)、γ-ブチロラクトンを132.1g、及び触媒として、トリエチルアミンを0.95g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを42.132g(0.188モル)とγ-ブチロラクトンを33.03g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に5.0時間維持した。γ-ブチロラクトンを90.86g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0090】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み29μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0091】
<比較例3>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、BAPAを42.278g(0.115モル)、γ-ブチロラクトンを81.8g、及び触媒として、トリエチルアミンを0.58g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを25.877g(0.115モル)とγ-ブチロラクトンを20.4g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に5.0時間維持した。γ-ブチロラクトンを153.8g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0092】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み26μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0093】
<比較例4>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、ODAを20.024g(0.100モル)、γ-ブチロラクトンを45.0g、及び触媒として、トリエチルアミンを1.52g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを22.417g(0.100モル)とγ-ブチロラクトンを18.7g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に4.0時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを91.7g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0094】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み40μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0095】
<比較例5>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、BAPPを43.745g(0.107モル)、γ-ブチロラクトンを81.4g、及び触媒として、トリエチルアミンを0.54g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを23.887g(0.107モル)とγ-ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)を20.3g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に4.0時間維持した。γ-ブチロラクトン(三菱化学株式会社製)を154.2g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0096】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み33μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0097】
<比較例6>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、3,4’-DPEを20.024g(0.100モル)、γ-ブチロラクトンを45.0g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.065g、トリエチルアミンを1.52g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを22.417g(0.100モル)とγ-ブチロラクトンを18.7g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に4.0時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを91.7g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0098】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み25μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0099】
【0100】
<実施例4>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、ODAを14.417g(0.072モル)、BisAMを6.201g(0.018モル)、γ-ブチロラクトンを40.0g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.050g、トリエチルアミンを4.55g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを20.175g(0.090モル)とγ-ブチロラクトンを10.0g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に0.7時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを38.0g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0101】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み42μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0102】
<実施例5>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、ODAを10.012g(0.050モル)、BisAMを17.225g(0.050モル)、γ-ブチロラクトンを48.7g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.056g、トリエチルアミンを5.06g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを22.417g(0.10モル)とγ-ブチロラクトンを12.2g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に0.6時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを77.8g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度25質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0103】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み34μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0104】
<実施例6>
反応装置として、実施例1と同様の3.0Lの装置を使用し、丸底フラスコ中で、ODAを23.228g(0.116モル)、BisAMを159.848g(0.464モル)、γ-ブチロラクトンを307.0g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.325g、トリエチルアミンを29.345g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを130.019g(0.580モル)とγ-ブチロラクトンを76.8g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に2.0時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを300.0g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0105】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、段階的に温度を上げていき、最高温度140℃で約2分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み32μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
<実施例7>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、BAPPを27.259g(0.066モル)、BisAMを5.719g(0.017モル)、γ-ブチロラクトンを50.6g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.047g、トリエチルアミンを4.20g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを18.606g(0.083モル)とγ-ブチロラクトンを12.6g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に0.5時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを83.0g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度25質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0108】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み47μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0109】
<実施例8>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、BAPPを16.421g(0.040モル)、BisAMを13.780g(0.040モル)γ-ブチロラクトンを40.0g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.044g、トリエチルアミンを4.05g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを17.934g(0.080モル)とγ-ブチロラクトンを18.8g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に2.2時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを122.2g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0110】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み30μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0111】
<実施例9>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、BAPPを6.568g(0.016モル)、BisAMを22.048g(0.064モル)、γ-ブチロラクトンを30.0g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.044g、トリエチルアミンを4.05g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを17.934g(0.080モル)とγ-ブチロラクトンを16.6g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に1.4時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを84.4g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度25質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0112】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み35μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0113】
【0114】
<実施例10>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、BisAMを27.560g(0.080モル)γ-ブチロラクトンを30.8g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.022g、トリエチルアミンを2.02g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを8.967g(0.040モル)、CpODAを15.375g(0.040モル)、γ-ブチロラクトンを32.9g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に2.0時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを88.0g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度25質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0115】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み38μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0116】
<実施例11>
実施例1と同じ反応装置を使用し、丸底フラスコ中で、BisAPを13.780g(0.040モル)、BisAMを13.780g(0.040モル)、γ-ブチロラクトンを40.0g、及び触媒として、トリエチレンジアミンを0.044g、トリエチルアミンを4.05g入れ、窒素雰囲気下、150rpmで撹拌しながら70℃まで昇温し溶液を得た。この溶液に、HPMDAを17.934g(0.080モル)とγ-ブチロラクトンを15.6g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を190℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を190℃に3.5時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミドを114.8g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度20質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
【0117】
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で20分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、210℃で空気雰囲気下、20分間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み35μmのフィルムを得た。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0118】
【0119】
表1に示すように、特定のテトラカルボン酸成分及び特定のジアミン成分を用いて製造した実施例1~11のポリイミドフィルムは、無色透明性に優れ、更に低リタデーションであった。
一方、ジアミン成分として構成単位(B-1)を与えるジアミンを使用しない比較例1~6のポリイミドフィルムは、実施例1~3のポリイミドフィルムと対比して、リタデーション値(Rth)が大きかった。
ジアミン酸成分としてBisAMとODAを併用した実施例4~6のポリイミドフィルムは、ODAのみを使用して製造した比較例4のポリイミドフィルムと対比して、リタデーション値(Rth)が大幅に低減した。
ジアミン酸成分としてBisAMとBAPPを併用した実施例7~9のポリイミドフィルムは、BAPPのみを使用して製造した比較例5のポリイミドフィルムと対比して、リタデーション値(Rth)が大幅に低減した。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のポリイミドフィルムは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、半導体部品、光学部材等の各種部材用のフィルムとして好適に用いられる。本発明のポリイミドフィルムは、液晶ディスプレイやOLEDディスプレイ等の画像表示装置の基板として、特に好適に用いられる。