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特許7463970固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240402BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/20 101
H01L27/146 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020569612
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2020002764
(87)【国際公開番号】W WO2020158663
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2019015209
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019015210
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】平井 友梨
(72)【発明者】
【氏名】北澤 一茂
(72)【発明者】
【氏名】前田 忠俊
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-200360(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021232(WO,A1)
【文献】特開2012-084608(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142804(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/189789(WO,A1)
【文献】特開2014-066918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
H01L 27/146
G02B 1/11、3/00
G03B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する入射面と、
光電変換素子に対して前記入射面側に位置する赤外フィルターと、
前記赤外フィルターに対して前記入射面側に位置し、前記赤外フィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層と、を備え、
前記赤外フィルターは、赤外カットフィルターであり、
前記光電変換素子と前記赤外カットフィルターとの間に位置するカラーフィルターと、
前記入射面を含むマイクロレンズと、
前記光電変換素子と前記赤外カットフィルターとの間に位置する赤外パスフィルターと、をさらに備え、
前記赤外カットフィルターは、前記カラーフィルターおよび前記赤外パスフィルターと、前記バリア層との間に位置し、かつ、前記赤外パスフィルターに対向する貫通孔を有し、
前記バリア層は、前記赤外パスフィルターの前記貫通孔と対向する位置に貫通孔を有し、
前記カラーフィルターの厚さ、前記赤外カットフィルターの厚さ、および、前記バリア層の厚さの和が、前記赤外パスフィルターの厚さに等しく、
前記赤外パスフィルターにおける前記入射面側の面と、前記バリア層における前記入射面側の面とは、互いに等しい高さを有する
固体撮像素子用フィルター。
【請求項2】
光が入射する入射面と、
光電変換素子に対して前記入射面側に位置する赤外フィルターと、
前記赤外フィルターに対して前記入射面側に位置し、前記赤外フィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層と、
前記光電変換素子に対して前記入射面側に位置するカラーフィルターと、
前記入射面を含むマイクロレンズと、を備え、
前記赤外フィルターは、赤外パスフィルターであり、
前記バリア層は、前記赤外パスフィルターに対して前記入射面側に位置し、かつ、前記カラーフィルターに対する前記入射面側には位置せず、
前記赤外パスフィルターの厚さと、前記バリア層の厚さとの和が、前記カラーフィルターの厚さに等しく、
前記バリア層における前記入射面側の面と、前記カラーフィルターにおける前記入射面側の面とは、互いに等しい高さを有する
固体撮像素子用フィルター。
【請求項3】
前記バリア層が有する酸素透過率は、5.0cc/m2/day/atm以下である
請求項1または2に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項4】
前記赤外フィルターに対して前記入射面側に位置する層構造での酸素透過率は、5.0cc/m2/day/atm以下である
請求項1または2に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項5】
前記バリア層は、以下の[B1]から[B3]を満たし、かつ、
前記赤外カットフィルターは、以下の[A1]から[A3]を満たす
[B1]酸素透過率は、5.0cc/m2/day/atm以下である
[B2]厚みが10nm以上500nm以下である
[B3]可視光領域の平均透過率が90%以上である
[A1]450nm以上650nm以下の波長帯において平均透過率が80%以上である
[A2]800nm以上1000nm以下の波長帯において最大吸収を有する
[A3]50%の透過率を有する短波長側のカットオフ波長と、50%の透過率を有する長波長側のカットオフ波長との差であるカットオフ波長幅が100nm以上である
請求項1に記載の固体撮像素子用フィルター。
【請求項6】
光電変換素子と、
請求項1からのいずれか一項に記載の固体撮像素子用フィルターと、を備える
固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子用フィルターを備える固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーおよびCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子の第1例は、各色用のカラーフィルターと光電変換素子とを備え、各色用の光電変換素子で各色の光を検出する(例えば、特許文献1を参照)。固体撮像素子の第2例は、有機光電変換素子と無機光電変換素子とを備え、カラーフィルターを用いずに各光電変換素子で各色の光を検出する(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
光電変換素子は、可視光の帯域のみならず、近赤外光を含む赤外光の帯域にも吸収帯を有する。固体撮像素子の第3例は、光電変換素子上に赤外カットフィルターを備え、各光電変換素子が検出し得る赤外光を光電変換素子に対してカットし、それによって、各光電変換素子での可視光の検出精度を高める。赤外カットフィルターの構成材料は、例えば、アントラキノン系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物である(例えば、特許文献1、3、4を参照)。
【0004】
また、固体撮像素子の第4例は、赤外用の光電変換素子上に赤外パスフィルターを備えて、赤外用の光電変換素子が検出し得る可視光を赤外用の光電変換素子に対してカットし、それによって、赤外用の光電変換素子による赤外光の検出精度を高める。赤外パスフィルターの構成材料は、例えば、ビスベンゾフラノン系顔料、アゾメチン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系染料などの黒色色材である(例えば、特許文献5、6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-060176号公報
【文献】特開2018-060910号公報
【文献】特開2017-181705号公報
【文献】特開2018-120097号公報
【文献】特開2016-177273号公報
【文献】特開2018-119077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、赤外カットフィルターおよび赤外パスフィルターを含む赤外フィルターの構成材料は、光電変換素子などの構成材料と比べて高い耐光性を有するとは言いがたい。他方、固体撮像素子の適用範囲は、画像処理の発展やセンシングの発展に伴って広がる一途である。赤外フィルターの耐光性、ひいては、固体撮像素子の耐光性を高める技術は、固体撮像素子の適用範囲を拡張させる要請の高まりに伴って、一層強く求められている。
【0007】
本発明の目的は、固体撮像素子の耐光性を向上可能にした固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターは、光が入射する入射面と、光電変換素子に対して前記入射面側に位置して赤外光の透過を抑える赤外フィルターと、前記赤外フィルターに対して前記入射面側に位置し、前記赤外フィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層と、を備える。
【0009】
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターは、光が入射する入射面と、光電変換素子に対して前記入射面側に位置して赤外光の透過を抑える赤外フィルターと、を備え、前記赤外フィルターに対して前記入射面側に位置する積層構造での酸素透過率は、5.0cc/m2/day/atm以下である。
【0010】
上記各構成によれば、赤外フィルターに酸化源が到達することが抑制されるため、赤外フィルターが酸化源によって酸化され難くなる。結果として、赤外フィルターの耐光性、ひいては、固体撮像素子の耐光性が向上可能である。
【0011】
上記固体撮像素子用フィルターにおいて、前記赤外フィルターは、赤外カットフィルターであり、前記赤外カットフィルターは、赤外吸収剤を含むマイクロレンズであってもよい。この構成によれば、光電変換素子に向けて光を取り込む機能を有したマイクロレンズが、赤外光のカット機能を兼ね備えるため、固体撮像素子用フィルターが備える層構造の簡素化が可能でもある。
【0012】
上記固体撮像素子用フィルターにおいて、前記バリア層の屈折率が前記マイクロレンズの屈折率よりも低くてもよい。赤外吸収剤を含むマイクロレンズの屈折率は、赤外吸収剤を含まないマイクロレンズの屈折率よりも高くなり、マイクロレンズの表面における光反射が大きくなる。この点、上記構成によれば、赤外吸収剤を含むマイクロレンズ層よりも屈折率が低いバリア層を備える構成とすることで、マイクロレンズの表面における光反射が抑制可能となる。
【0013】
上記固体撮像素子用フィルターにおいて、前記バリア層は、反射防止機能を備えてもよい。この構成によれば、マイクロレンズの表面での反射による検出感度の低下が反射防止機能によって抑制可能でもある。そして、酸化源の透過を抑制するバリア層が、反射防止機能を兼ね備えるため、固体撮像素子用フィルターが備える層構造の簡素化が可能でもある。
【0014】
上記固体撮像素子用フィルターは、前記光電変換素子に対して前記入射面側に位置するカラーフィルターを備えてもよい。この構成によれば、各色用の光電変換素子の構成について共通化を図ることが可能でもある。
【0015】
上記固体撮像素子用フィルターは、前記光電変換素子に対して前記入射面側に位置する赤外パスフィルターを備え、前記赤外カットフィルターは、前記赤外パスフィルターに対する光の入射側に貫通孔を備えてもよい。この構成によれば、赤外カットフィルターの耐光性を向上可能にして、かつ、可視光の測定と、赤外用の光電変換素子による赤外光の測定とが可能でもある。
【0016】
上記固体撮像素子用フィルターにおいて、前記赤外フィルターは、赤外パスフィルターであり、前記光電変換素子は、第1光電変換素子であり、第2光電変換素子に対し前記入射面側に位置するカラーフィルターと、前記第2光電変換素子に対し前記入射面側に位置する赤外カットフィルターと、をさらに備え、前記バリア層は、前記赤外カットフィルターに対して前記入射面側に位置してもよい。
【0017】
上記構成によれば、赤外パスフィルターの耐光性と、赤外カットフィルターの耐光性とが、共通するバリア層によって向上可能である。結果として、赤外光の検出機能、および、可視光の検出機能を備えた多機能の固体撮像素子について、それの耐光性が簡便な構成で向上可能である。
【0018】
上記固体撮像素子用フィルターにおいて、前記赤外パスフィルターにおける前記入射面側の面と、前記赤外カットフィルターにおける前記入射面側の面とは、互いに等しい高さに位置してもよい。
【0019】
上記構成によれば、バリア層の下層である赤外パスフィルター、および、赤外カットフィルターが互いに等しい高さに位置する。そのため、バリア層の下地における段差が低減可能であって、段差が大きい下地の上にバリア層が位置する構成と比べて、バリア層の厚みや組成のばらつきなどが抑えられて、バリア層の透過抑制機能が下地の全体にわたって発揮されやすくもなる。
【0020】
上記固体撮像素子用フィルターにおいて、前記バリア層が有する酸素透過率は、5.0cc/m2/day/atm以下であってもよい。この構成によれば、バリア層の酸素透過率が5.0cc/m2/day/atm以下に定められるから、赤外カットフィルターが酸素によって酸化され難くなる。
【0021】
上記固体撮像素子用フィルターにおいて、平坦化層の下地層が有する段差を埋める前記平坦化層をさらに備え、前記バリア層は、前記平坦化層に対して光の前記入射面側に位置してもよい。
【0022】
上記構成によれば、平坦化層の入射面側にバリア層が位置するため、バリア層の下地における段差が低減可能である。そして、段差の大きい下地の上にバリア層が位置する構成と比べて、バリア層の厚みや組成のばらつきなどが抑えられて、バリア層の透過抑制機能が下地の全体にわたって発揮されやすくもなる。
【0023】
上記課題を解決するための固体撮像素子は、光電変換素子と、上記固体撮像素子用フィルターと、を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、固体撮像素子の耐光性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】固体撮像素子の第1実施形態における層構造を部分的に示す分解斜視図。
図2図1のII-II線断面図。
図3】第1実施形態での固体撮像素子の第1変更例における層構造を示す断面図。
図4】第1実施形態での固体撮像素子の第2変更例における層構造を示す断面図。
図5】第1実施形態での固体撮像素子の第3変更例における層構造を示す断面図。
図6】第1実施形態での固体撮像素子の第4変更例における層構造を示す断面図。
図7】第1実施形態での固体撮像素子の第5変更例における層構造を示す断面図。
図8】第1実施形態での固体撮像素子の第6変更例における層構造を示す断面図。
図9】第1実施形態での固体撮像素子の第7変更例における層構造を部分的に示す分解斜視図。
図10】固体撮像素子の第2実施形態における層構造を部分的に示す分解斜視図。
図11図10のXI-XI線断面図。
図12】赤外パスフィルターの透過スペクトルの一例を示すグラフ。
図13】第2実施形態での固体撮像素子の第1変更例における層構造を部分的に示す分解斜視図。
図14】第2実施形態での固体撮像素子の第2変更例における層構造を示す断面図。
図15】第2実施形態での固体撮像素子の第3変更例における層構造を部分的に示す分解斜視図。
図16図15のXVI-XVI線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子の第1実施形態を、図1および図2を参照して説明する。図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。なお、図1および図2が示す構造はいずれも、固体撮像素子の構造における一例である。図1が示すように、固体撮像素子が備える各色用フィルター間には隙間が位置してもよいし、図2が示すように、各色用フィルター間には隙間が位置しなくてもよい。
【0027】
図1が示すように、固体撮像素子は、固体撮像素子用フィルター10、および、複数の光電変換素子11を備える。固体撮像素子用フィルター10は、各色用フィルター12R,12G,12B、赤外フィルターの一例である赤外カットフィルター13、バリア層14、および、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bを備える。
【0028】
各色用フィルター12R,12G,12Bは、三色用の光電変換素子11と赤外カットフィルター13との間に位置する。バリア層14は、赤外カットフィルター13と各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bとの間に位置する。赤外カットフィルター13は、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に位置する。バリア層14は、赤外カットフィルター13に対して光の入射側に位置する。
【0029】
三色用の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、および、青色用光電変換素子11Bから構成される。固体撮像素子は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、および、複数の青色用光電変換素子11Bを備える。図1では、固体撮像素子における光電変換素子11の1つの繰り返し単位を示す。
【0030】
三色用のカラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0031】
図2が示すように、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みT12は、相互にほぼ等しい大きさであってもよいし、相互に異なる大きさであってもよい。すなわち、赤色用フィルター12Rの厚み、緑色用フィルター12Gの厚み、青色用フィルター12Bの厚みの全てが等しい大きさでなくてもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みT12は、例えば、0.5μm以上5μm以下である。
【0032】
なお、赤外カットフィルター13による赤外光のカット機能は、赤外カットフィルター13の厚みT13によって変わり得る。赤外カットフィルター13の厚みT13は、各色用フィルター12R,12G,12B間での段差によって変わり得る。そこで、赤外カットフィルター13の下地での平坦性が高められる観点から、各色用フィルター12R,12G,12B間での厚みT12の差は、赤外カットフィルター13の厚みT13よりも小さいことが好ましい。
【0033】
各色用フィルター12R,12G,12Bは、着色感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。例えば、赤色用感光性樹脂を含む塗膜は、赤色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用感光性樹脂を含む塗膜に対する露光、および、現像を経て形成される。なお、赤色用感光性樹脂がネガ型の感光性樹脂である場合には、赤色用感光性樹脂を含む塗膜のうち、赤色用フィルター12Rの領域に相当する部分が露光される。これに対して、赤色用感光性樹脂がポジ型の感光性樹脂である場合には、赤色用感光性樹脂を含む塗膜のうち、赤色用フィルター12Rの領域以外の領域に相当する部分が露光される。
【0034】
赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bの着色組成物に含有される顔料には、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、かつ、耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましい。顔料には、通常、有機顔料が用いられる。顔料は、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料であってよい。
【0035】
以下に、着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号を用いて示す。
各色用フィルターの青色着色組成物に用いられる青色色素は、例えばC.I. Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、81などの顔料であってよい。これらのなかでもC.I. Pigment Blue 15:6が青色色素として好ましい。
【0036】
紫色色素は、例えばC.I. Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50などの顔料であってよい。これらのなかでもC.I. Pigment Violet 23が紫色色素として好ましい。
【0037】
黄色色素は、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214などの顔料であってよい。これらのなかでもC.I. Pigment Yellow 13、150、185が黄色色素として好ましい。
【0038】
赤色の着色組成物は、青色色素などの代わりに、赤色顔料、および、必要に応じて調色用の顔料などを用いて得られる組成物である。赤色顔料は、例えばC.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、C.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73などであってよい。調色用の顔料は、例えば、C.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214などであってよい。
【0039】
また、緑色の着色組成物は、青色色素などの代わりに、緑色顔料、および、調色用の顔料を用いて得られる組成物である。緑色顔料は、例えばC.I. Pigment Green 7、10、36、37、58、59などであってよい。調色用の顔料は、赤色の着色組成物において調色用の顔料として列記した黄色顔料であってよい。
【0040】
赤外カットフィルター13は、各光電変換素子11が検出し得る赤外光を、光電変換素子11に対してカットし、それによって、光電変換素子11による可視光の検出精度を高める。すなわち、赤外カットフィルター13は、各光電変換素子11が検出し得る赤外光の透過を、光電変換素子11に対して抑える。各光電変換素子11が検出し得る赤外光は、例えば、800nm以上1000nm以下の波長を有した近赤外光である。赤外カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bに共通する層である。すなわち、1つの赤外カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bを覆っている。
【0041】
赤外カットフィルター13の構成材料は、赤外吸収色素を含む透明樹脂である。赤外吸収色素は、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素である。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。赤外カットフィルター13は、塗布法などを用いた成膜によって形成される。
【0042】
赤外カットフィルター13の透過スペクトルは、下記[A1]から[A3]の条件を満たすことが好ましい。
【0043】
[A1]450nm以上650nm以下の波長帯において平均透過率が80%以上である。
[A2]800nm以上1000nm以下の波長帯において最大吸収を有する。
[A3]50%の透過率を有する短波長側のカットオフ波長と、50%の透過率を有する長波長側のカットオフ波長との差であるカットオフ波長幅が100nm以上である。
【0044】
[A1]を満たす構成であれば、可視光が赤外カットフィルター13によって吸収されることが十分に抑制される。[A2]および[A3]を満たす構成であれば、各色用の光電変換素子11によって検出され得る近赤外光が赤外カットフィルター13によって十分にカットされる。
【0045】
なお、バリア層14による酸化源のバリア機能は、バリア層14の厚みに応じて変わり得る。そして、赤外カットフィルター13上におけるバリア層14の厚みは、赤外カットフィルター13の上面における段差によって変わり得る。そこで、バリア層14の下地での平坦性が高められる観点から、赤外カットフィルター13の厚みT13は、赤外カットフィルター13の上面に対して好適な平坦性を与える大きさであることが好ましい。好適な平坦性は、例えば、赤外カットフィルター13の上面での段差が、バリア層14の厚みの三倍よりも小さいことである。
【0046】
上述した赤外吸収色素は、太陽光が照射される環境下において大気中の酸素および水と接触し、それによって、近赤外帯域における透過スペクトルが変わる。すなわち、赤外カットフィルター13は、太陽光が照射される環境下において酸化源と接触し、近赤外光のカット性能を低下させる。
【0047】
バリア層14は、赤外カットフィルター13の酸化源である酸素および水の透過を抑制し、それによって、赤外吸収色素による近赤外光のカット性能の低下を抑制し、かつ、可視光の透過性能の低下を抑制する。バリア層14は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bに共通する層である。すなわち、1つのバリア層14は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bを覆っている。
【0048】
バリア層14の構成材料は、無機化合物であってよい。バリア層14の構成材料は、珪素化合物であることが好ましい。バリア層14の構成材料は、例えば、窒化珪素、酸化珪素、酸窒化珪素からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0049】
バリア層14は、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などの気相成膜法、あるいは、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。例えば、酸化珪素から構成されるバリア層14は、赤外カットフィルター13が形成された基板に対して、酸化珪素からなるターゲットを用いたスパッタリングによる成膜を経て形成される。例えば、酸化珪素から構成されるバリア層14は、赤外カットフィルター13が形成された基板に対して、シランと酸素とを用いたCVDによる成膜を経て形成される。例えば、酸化珪素から構成されるバリア層14は、ポリシラザンを含む塗布液の塗布、改質、および、塗膜の乾燥によって形成される。
【0050】
バリア層14の酸素透過率、厚み、および、可視光領域透過率は、下記[B1]または[B3]の条件を満たすことが好ましい。
[B1]JIS K 7126-2:2006に準拠した酸素透過率が5.0cc/m2/day/atm以下である。言い換えれば、当該酸素透過率が、5.0cm3/m2/day/atm以下である。なお、酸素透過率は、JIS K 7126-2:2006の付属書Aに準拠し、かつ、23℃かつ相対湿度50%における酸素透過率である。
[B2]バリア層14の厚みが10nm以上500nm以下である。
[B3]バリア層14の可視光領域透過率(平均)が90%以上である。
【0051】
[B1]を満たす構成であれば、赤外カットフィルター13に酸化源が到達すること、特に、酸素が到達することが十分に抑制される。なお、赤外カットフィルター13の耐光性がさらに高められる観点では、酸素透過率は、3.0cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、1.0cc/m2/day/atm以下であることがより好ましく、0.7cc/m2/day/atm以下であることがさらに好ましい。言い換えれば、酸素透過率は、3.0cm3/m2/day/atm以下であることが好ましく、1.0cm3/m2/day/atm以下であることがより好ましく、0.7cm3/m2/day/atm以下であることがさらに好ましい。
【0052】
[B2]を満たす構成であれば、[B1]、[B3]を満たす構成材料の選択が容易である。また、バリア層14にクラックが生じることを抑制可能である。また、[B3]を満たす構成であれば、可視光がバリア層14によって吸収されてしまうことが十分に抑制される。
【0053】
バリア層14は、単一の化合物からなる単層構造を有してもよいし、単一の化合物からなる層による積層構造を有してもよいし、相互に異なる化合物からなる層による積層構造を有してもよい。例えば、バリア層14は、単層では[B1]を満たさない層による積層構造を備えることによって、[B1]を満たす構成であってもよい。
【0054】
図1が示すように、各色用マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ15R、緑色用マイクロレンズ15G、および、青色用マイクロレンズ15Bから構成される。赤色用マイクロレンズ15Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に位置する。緑色用マイクロレンズ15Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に位置する。青色用マイクロレンズ15Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に位置する。
【0055】
各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bは、外表面である入射面15Sを備える。各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bは、入射面15Sに入る光を各色用光電変換素子11R,11G,11Bに向けて集めるために外気の屈折率に対して所定の屈折率差を有する。
【0056】
各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bは、透明樹脂を含む塗膜の形成、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニング、および、熱処理によるリフローによって形成される。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。
【0057】
以上、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子の第1実施形態によれば以下に列記する効果が得られる。
(1‐1)赤外カットフィルター13に酸化源が到達することをバリア層14が抑制するため、赤外カットフィルター13は酸化源によって酸化され難くなる。結果として、赤外カットフィルター13の耐光性、ひいては、固体撮像素子の耐光性が向上可能である。
【0058】
(1‐2)[B1]を満たす構成であれば、上記(1‐1)に準じた効果、特に、酸素による赤外カットフィルター13の酸化を抑制することが可能でもある。
【0059】
(1‐3)赤外カットフィルター13の厚みT13が、赤外カットフィルター13の上面に好適な平坦性を与える大きさであれば、上記(1‐1)および(1‐2)に準じた効果のばらつきが生じることが抑制可能でもある。
【0060】
(1‐4)各色用フィルター12R,12G,12B間での厚みT12の差が大きいほど、赤外カットフィルター13の上面に好適な平坦性を与えるための厚みT13は大きい。そこで、各色用フィルター12R,12G,12B間での厚みT12の差が、赤外カットフィルター13の厚みT13よりも小さい構成であれば、上記(1‐3)に準じた効果を得るための厚みT13を薄くすることが可能でもある。結果として、赤外カットフィルター13の厚みT13を赤外光をカットするために特化した大きさとすることが可能でもある。
【0061】
なお、上記第1実施形態は、以下のように変更して実施できる。
[第1変更例]
図3が示すように、バリア層14は、赤外カットフィルター13と、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bとの間に限らず、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bの外表面に位置してもよい。この際、バリア層14の外表面は、固体撮像素子に光を入射する入射面として機能する。要は、バリア層14の位置は、赤外カットフィルター13に対して光の入射側であればよい。
【0062】
(1‐5)第1変更例によれば、バリア層14は、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bの光学面(平坦面)上に位置する。結果として、バリア層14の厚みの均一化が容易であり、ひいては、バリア層14による酸化源のバリア機能の均一化が容易でもある。
【0063】
(1‐6)第1変更例の構成において、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bの屈折率よりもバリア層14の屈折率が低いことが好ましい。さらに、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bの屈折率とバリア層14の屈折率との差は、0.1以上であることがより好ましい。この構成によれば、空気と各色用マイクロレンズの屈折率差を低減できるため、入射面側に発生する反射光を抑制することが可能である。
【0064】
(1‐7)バリア層14は、可視光に対する反射防止機能を兼ね備えることが好ましい。バリア層14が反射防止機能を兼ね備える構成であれば、入射面での反射による検出感度の低下が抑制可能でもある。加えて、酸化源の透過を抑制するバリア層14が、反射防止機能を兼ね備えるため、反射防止層を別途備える構成と比べて、固体撮像素子用フィルター10が備える層構造の簡素化が可能でもある。反射防止機能は、バリア層14と他の層との間における屈折率の差によって実現されてもよいし、バリア層14がフィラーを含むこと、および、バリア層14に対してエンボス形状を付与することにより、バリア層14が凹凸形状を有することなどによって実現されてもよい。
【0065】
[第2変更例]
図4が示すように、赤外カットフィルター13以外の他の層が、赤外カットフィルター13のカット機能を兼ね備えることが可能である。例えば、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bが、赤外カットフィルターのカット機能を兼ね備えることが可能である。すなわち、固体撮像素子用フィルター10において、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bの構成材料が赤外吸収色素を含むことが可能である。これにより、固体撮像素子用フィルター10を赤外カットフィルター13が割愛された構成に変更することが可能である。
【0066】
(1‐8)各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bが赤外カット機能を兼ね備える構成であれば、固体撮像素子用フィルター10が備える層構造の簡素化が可能でもある。
【0067】
[第3変更例]
図5が示すように、各色用フィルター12R,12G,12Bは、相互に異なる色の光を同じ程度の強度に変換するために、相互に異なる厚みを有しやすい。結果として、1つの色用のフィルターは、他の色用のフィルターとの間に段差を形成しやすい。この際、赤外カットフィルター13は、相互に異なるカラーフィルターの間において形成された段差に追従した形状を有しやすい。上述したように、段差に追従した赤外カットフィルター13の形状は、バリア層14の厚さにばらつきを生じさせ、ひいては、酸化源のバリア機能にばらつきを生じさせる。
【0068】
そこで、固体撮像素子用フィルター10は、赤外カットフィルター13とバリア層14との間に、別途、平坦化層21を備えることも可能である。平坦化層21は、可視光を透過する光透過性を有し、かつ、平坦化層21の表面は、赤外カットフィルター13が形成する段差を埋めた平坦面を有する。すなわち、平坦化層21は、赤外カットフィルター13の表面が有する高低差を緩和することが可能な形状を有する。
【0069】
平坦化層21の構成材料は、透明樹脂である。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。平坦化層21は、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。
【0070】
(1‐9)固体撮像素子用フィルター10が、平坦化層21を別途備える構成であれば、上記(1‐3)に準じた効果が得られると共に、赤外カットフィルター13の厚みT13、および、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みT12から、これらによる平坦化の制約を取り除くことが可能でもある。
【0071】
[第4変更例]
図6が示すように、固体撮像素子用フィルター10は、各色用フィルター12R,12G,12Bと、赤外カットフィルター13との間に、別途、平坦化層22を備えることも可能である。平坦化層22の構成材料、および、形成方法は、第3変更例において説明した構成材料、および、形成方法と同様であってよい。
【0072】
(1‐10)平坦化層22を別途備える構成であれば、上記(1‐3)に準じた効果が得られると共に、赤外カットフィルター13による赤外光のカット機能について、その均一化を図ることが容易でもある。
【0073】
[第5変更例]
図7が示すように、赤外カットフィルター13の位置は、各色用フィルター12R,12G,12Bとバリア層14との間に限らない。赤外カットフィルター13の位置は、例えば、各光電変換素子11と各色用フィルター12R,12G,12Bとの間に変更されてもよい。要は、赤外カットフィルター13の位置は、バリア層14と各光電変換素子11との間であればよい。
【0074】
[第6変更例]
図8が示すように、赤外カットフィルター13の位置、および、バリア層14の位置は、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bと、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間に限らない。赤外カットフィルター13の位置、および、バリア層14の位置は、各色用フィルター12R,12G,12Bと各光電変換素子11との間に変更されてもよい。要は、赤外カットフィルター13の位置、および、バリア層14の位置は、各光電変換素子11に対して光の入射側であればよい。
【0075】
[第7変更例]
図9が示すように、複数の光電変換素子11は、赤外光の強度を測定するための赤外用光電変換素子11Pを備えることが可能である。この際、固体撮像素子用フィルター10は、赤外用光電変換素子11Pに対して光の入射側に、赤外パスフィルター12Pを備える。
【0076】
赤外パスフィルター12Pは、赤外用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を赤外用光電変換素子11Pに対してカットし、それによって、赤外用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度を高める。赤外用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、例えば、800nm以上1200nm以下の波長を有した近赤外光である。赤外パスフィルター12Pは、黒色感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。
【0077】
赤外カットフィルター13は、赤外パスフィルター12Pに対する光の入射側に貫通孔13Hを備え、これによって、赤外カットフィルター13は、赤外パスフィルター12Pに対する光の入射側には位置しない。赤外カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bに共通する。すなわち、1つの赤外カットフィルター13が、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bを覆っている。
【0078】
赤外カットフィルター13が備える貫通孔13Hは、フォトリソグラフー法またはドライエッチング法を用いたパターニングなどの加工方法によって形成される。貫通孔13Hの形成にフォトリソグラフィー法を用いる場合には、赤外カットフィルター13の構成材料として、赤外吸収色素を含む感光性組成物を用いる。感光性組成物は、バインダー樹脂、光重合開始剤、重合性モノマー、有機溶剤、レベリング剤などを含んでよい。
【0079】
バインダー樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂であってよい。
【0080】
光重合開始剤は、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤などであってよい。光重合開始剤には、これらの光重合開始剤のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類;N-ビニルピロリドン;スチレンおよびその誘導体、α-メチルスチレンなどのスチレン類;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシメチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどのその他のビニル化合物、およびポリメチルメタクリレートマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマーなどのマクロモノマー類などであってよい。重合性モノマーには、これらのモノマーのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0082】
有機溶剤は、例えば、乳酸エチル、ベンジルアルコール、1,2,3-トリクロロプロパン、1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ジオキサン、2-ヘプタノン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、4-ヘプタノン、m-キシレン、m-ジエチルベンゼン、m-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ブチルアルコール、n-ブチルベンゼン、n-プロピルアセテート、o-キシレン、o-クロロトルエン、o-ジエチルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p-クロロトルエン、p-ジエチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、γ-ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステルなどであってよい。有機溶剤には、これらの溶剤のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0083】
レベリング剤は、主鎖にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有するジメチルシロキサンであることが好ましい。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンは、例えば、東レ・ダウコーニング社製FZ-2122、ビックケミー社製BYK-333などであってよい。ポリエステル構造を有するジメチルシロキサンは、例えば、ビックケミー社製BYK-310、BYK-370などであってよい。レベリング剤には、ポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンと、ポリエステル構造を有するジメチルシロキサンとの両方を用いてもよい。レベリング剤には、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0084】
赤外カットフィルター13が備える貫通孔13Hの形成にドライエッチング法を用いる場合には、赤外カットフィルター13の構成材料は、赤外吸収色素を含む硬化性組成物である。硬化性組成物には、透明樹脂が含まれる。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂であってよい。
【0085】
バリア層14は、赤外パスフィルター12Pに対する光の入射側に貫通孔14Hを備える。これによって、バリア層14は、赤外パスフィルター12Pに対する光の入射側には位置しない。バリア層14は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bに共通する。すなわち、1つのバリア層14が、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bを覆っている。
【0086】
バリア層14が備える貫通孔14Hの形成には、バリア層14を貫通して孔を形成可能な方法であればどのような加工方法が用いられてもよい。例えば、貫通孔14Hの形成には、例えばドライエッチング法などが用いられる。
【0087】
各色用フィルター12R,12G,12Bは、赤外パスフィルター12Pよりも薄い。赤外カットフィルター13の厚みと、バリア層14の厚みとの合計は、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みと、赤外パスフィルター12Pの厚みとの差に相当する。
【0088】
(1‐11)第7変更例によれば、赤外カットフィルター13の耐光性が向上可能であり、かつ、各色用光電変換素子11R,11G,11Bによる可視光の測定と、赤外用光電変換素子11Pによる赤外光の測定とが可能である。
【0089】
(1‐12)可視光をカットする赤外パスフィルター12Pの厚みは、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みよりも大きくなりやすい。一方で、赤外パスフィルター12Pと、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間における段差TPは、赤外カットフィルター13、および、バリア層14によって埋められる。そのため、各色用フィルター12R,12G,12Bと、赤外パスフィルター12Pとの間に段差TPを生じる構成であっても、各色用マイクロレンズ15R,15G,15B、および、赤外用マイクロレンズ15Pの下層における平坦性が得られやすい。
【0090】
[その他]
・固体撮像素子は、バリア層14とバリア層14の下層との間にアンカー層を備えてもよい。これによって、バリア層14とバリア層14の下層との密着性をアンカー層によって高めることが可能である。また、固体撮像素子は、バリア層14とバリア層14の上層との間にアンカー層を備えてもよい。これによって、バリア層14とバリア層14の上層との密着性をアンカー層によって高めることが可能である。
【0091】
アンカー層の構成材料は、例えば、多官能アクリル樹脂、あるいは、シランカップリング剤である。アンカー層の厚みは、例えば、50nm以上1μm以下である。アンカー層の厚みが50nm以上であれば、層間に密着性を得ることが容易である。アンカー層の厚みが1μm以下であれば、アンカー層での光の吸収を抑制することが容易である。
【0092】
・複数の光電変換素子11は、有機光電変換素子と無機光電変換素子とから構成されてもよい。これによって、各色用フィルター12R,12G,12Bを割愛することが可能である。各色用フィルター12R,12G,12Bが割愛された構成であっても、固体撮像素子用フィルター10が、赤外カットフィルター13を備え、かつ、上述したバリア機能を備えることによって、赤外カットフィルター13のカット機能を保護することは可能である。
【0093】
・固体撮像素子用フィルター10は、複数の光電変換素子11と、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間に、ブラックマトリックス、および、平坦化層を備えてもよい。ブラックマトリックスは、各色用フィルター12R,12G,12Bが選択した各色の光が、他の色用の光電変換素子11に入ることを抑制する。平坦化層は、ブラックマトリックスが有する段差を埋め、これによって、各色用フィルター12R,12G,12Bの下地、および、赤外カットフィルター13の下地を平坦化する。結果として、平坦化層は、バリア層14の下地を平坦化する。
【0094】
・カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルターから構成された三色用フィルターに変更されてもよい。また、カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターに変更されてもよい。また、カラーフィルターは、透明用フィルター、イエロー用フィルター、赤色用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターに変更されてもよい。
【0095】
・各色用フィルター12R,12G,12Bの屈折率は、例えば、1.6以上1.9以下である。各マイクロレンズ15R,15G,15Bの屈折率は、例えば、1.4以上2.0以下である。より好ましくは、各マイクロレンズ15R,15G,15Bの屈折率は、1.5以上1.7以下である。赤外カットフィルター13、および、赤外パスフィルター12Pの構成材料は、各色用フィルター12R,12G,12B、および、各マイクロレンズ15R,15G,15Bの屈折率との差を抑制するために、無機酸化物の粒子を含有可能である。無機酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタンである。
【0096】
・赤外カットフィルター13、および、赤外パスフィルター12Pの構成材料は、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含有可能である。
【0097】
・固体撮像素子は、バリア層14が割愛された構成であって、赤外カットフィルター13に対して入射面15Sの側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m2/day/atm以下である構成に変更可能である。例えば、積層構造は、各色用フィルター12R,12G,12B、平坦化層、および、各色用マイクロレンズ15R,15G,15Bを備え、当該積層構造の酸素透過率が5.0cc/m2/day/atm以下であってもよい。
【0098】
[第2実施形態]
以下、固体撮像素子の第2実施形態を、図10から図12を参照して説明する。図10は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。
【0099】
図10が示すように、固体撮像素子は、固体撮像素子用フィルター10、および、複数の光電変換素子11を備える。固体撮像素子用フィルター10は、各色用フィルター12R,12G,12B、赤外パスフィルター12P、バリア層14、および、各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pを備える。赤外パスフィルター12Pは、赤外フィルターの一例である。
【0100】
各色用フィルター12R,12G,12Bは、三色用の光電変換素子11R,11G,11Bとマイクロレンズ15R,15G,15Bとの間に位置する。赤外パスフィルター12Pは、赤外用光電変換素子11Pとマイクロレンズ15Pとの間に位置する。バリア層14は、赤外パスフィルター12Pと赤外用マイクロレンズ15Pとの間に位置する。バリア層14は、赤外パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。
【0101】
三色用の光電変換素子11は、第1光電変換素子の一例であり、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、および、青色用光電変換素子11Bから構成される。赤外用光電変換素子11Pは、第2光電変換素子の一例である。固体撮像素子は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外用光電変換素子11Pを備える。図10では、固体撮像素子における光電変換素子11の1つの繰り返し単位を示す。
【0102】
図11が示すように、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みT12は、赤外パスフィルター12Pと異なる大きさであってもよいし、相互に等しい大きさであってもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みT12は、例えば、0.5μ以上5μm以下である。
【0103】
なお、赤外パスフィルター12Pによる赤外光の透過機能は、赤外パスフィルター12Pの厚みT12に応じて変わり得る。そして、各色用フィルター12R,12G,12B上のマイクロレンズ15R,15G,15Bや、バリア層14上のマイクロレンズ15Pは、各色用フィルター12R,12G,12Bと、バリア層14との間での段差によって、その加工の精度を低下させ得る。そこで、各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pの下地での平坦性が高められる観点から、赤外パスフィルター12Pの厚みT12と、バリア層14の厚みT14との合計は、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みとほぼ等しいことが好ましい。
【0104】
赤外パスフィルター12Pは、赤外用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を、赤外用光電変換素子11Pに対してカットし、それによって、赤外用光電変換素子11Pによる近赤外光の検出精度を高める。すなわち、赤外パスフィルター12Pは、赤外用光電変換素子11Pが検出し得る可視光の透過を、赤外用光電変換素子11Pに対して抑える。赤外パスフィルター12Pは、赤外用光電変換素子11P上のみに位置する層である。
【0105】
赤外パスフィルター12Pの構成材料は、黒色色素、あるいは、黒色染料と、透明樹脂とを含む。黒色色素は、単一で黒色を有する色素、あるいは、2種以上の色素によって黒色を有する混合物である。黒色染料は、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、アジン系染料、キノリン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、メチン系染料である。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。赤外パスフィルター12Pは、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。
【0106】
赤外パスフィルター12Pの構成材料は、赤外パスフィルター12Pの屈折率を調整するための無機酸化物の粒子を含有可能である。無機酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタンである。赤外パスフィルター12Pは、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含有可能である。
【0107】
図12が示すように、赤外パスフィルター12Pの透過スペクトルは、例えば、400nm以上700nm以下の波長の範囲において3%以下の透過率を示す。一方、赤外パスフィルター12Pは、例えば、850nmの波長をピークとして10%以上の透過率を有し、また、900nm以上の波長において90%以上の透過率を有する。
【0108】
太陽光スペクトルは、940nmの波長付近に水蒸気の吸収を起因とする吸収帯を有している。そのため、太陽光スペクトルにおけるスペクトル強度が940nmの波長付近において低下する。従って、940nmの波長を有した近赤外光は、屋外かつ日中において固体撮像素子を使用する際には、外乱光である太陽光の影響を受けにくくなる。つまりは使用する光源の中心波長が940nmであれば、ノイズの少ない固体撮像素子の提供が可能である。赤外用光電変換素子11Pは、940nmの波長を有した近赤外光を検出する。
【0109】
バリア層14は、赤外パスフィルター12Pの酸化源である酸素および水の透過を抑制し、それによって、黒色色素および黒色染料による可視光のカット性能の低下を抑制し、かつ、近赤外光の透過性能の低下を抑制する。バリア層14は、赤外パスフィルター12Pに対して入射面15S側に位置し、かつ、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して入射面15S側には位置しない。すなわち、バリア層14は、赤外パスフィルター12Pを覆う一方で、各色用フィルター12R,12G,12Bを覆っていない。
【0110】
バリア層14の酸素透過率、厚み、および、可視光領域透過率は、第1実施形態のバリア層14と同様、上記[B1]または[B3]の条件を満たすことが好ましい。
【0111】
[B1]を満たす構成であれば、赤外パスフィルター12Pに酸化源が到達すること、特に、酸素が到達することが十分に抑制される。なお、赤外カットフィルター13の耐光性がさらに高められる観点では、酸素透過率は、3.0cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、1.0cc/m2/day/atm以下であることがより好ましく、0.7cc/m2/day/atm以下であることがさらに好ましい。
【0112】
[B2]を満たす構成であれば、[B1]、[B3]を満たす構成材料の選択が容易である。そして、バリア層14にクラックが生じることが抑制可能でもある。[B3]を満たす構成であれば、可視光がバリア層14で吸収されてしまうことが十分に抑制される。
【0113】
以上、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子の第2実施形態によれば以下に列記する効果が得られる。
(2‐1)赤外パスフィルター12Pに酸化源が到達することをバリア層14が抑制するため、赤外パスフィルター12Pは酸化源によって酸化され難くなる。結果として、赤外パスフィルター12Pの耐光性、ひいては、固体撮像素子の耐光性が向上可能である。
【0114】
(2‐2)[B1]を満たす構成であれば、上記(2‐1)に準じた効果、特に、酸素による赤外パスフィルター12Pの酸化を抑制することが可能でもある。
【0115】
(2‐3)赤外パスフィルター12Pの厚みT12と、バリア層14の厚みT14との合計が、各色用フィルター12R,12G,12Bとほぼ同じ大きさであれば、マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pの下地に高い平坦性が得られる。結果として、マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pの加工や形状にばらつきが生じることが抑制可能でもある。
【0116】
なお、上記第2実施形態は、以下のように変更して実施できる。
[第1変更例]
図13が示すように、バリア層14は、赤外パスフィルター12P、および、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に配置されてよい。すなわち、バリア層14は、各光電変換素子11に対して入射面15S側の全体に配置されてよい。
【0117】
(2‐4)バリア層14が各光電変換素子11に対して入射面15S側の全体に位置する構成であれば、成膜対象の全体にバリア層14を成膜する方法を用いてバリア層14を形成することが可能である。そして、各色用フィルター12R,12G,12Bの上からバリア層14を別途取り除く工程が不要であるため、固体撮像素子を形成する方法の簡素化を図ることが可能である。
【0118】
(2‐5)赤外パスフィルター12Pと隣り合う各色用フィルター12R,12G,12Bの入射面15S側もバリア層14によって覆われるため、赤外パスフィルター12Pに対する酸化が、さらに効果的に抑制される。
【0119】
[第2変更例]
図14が示すように、可視光の全波長域をカットする赤外パスフィルター12Pは、各色用フィルター12R,12G,12Bとは異なる厚みを有しやすい。結果として、赤外パスフィルター12Pは、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間に段差を形成しやすい。この際、赤外パスフィルター12Pの上面、および、周面の一部が、各色用フィルター12R,12G,12Bから露出する。
【0120】
そして、第1変更例のように、各光電変換素子11の入射面15S側の全体にバリア層14が位置する場合、バリア層14は、赤外パスフィルター12Pと、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間において、段差に追従した形状を有しやすい。段差に追従したバリア層14の形状は、バリア層14の厚さにばらつきを生じさせ、ひいては、酸化源のバリア機能にばらつきを生じさせる。特に、赤外パスフィルター12Pの周面の一部において、酸化源のバリア機能を低下させるおそれがある。
【0121】
そこで、赤外パスフィルター12P、および、各色用フィルター12R,12G,12Bと、バリア層14との間に、別途、平坦化層23を備えることも可能である。平坦化層23は、可視光を透過する光透過性を有し、かつ、平坦化層23の表面は、赤外パスフィルター12Pが形成する段差を埋めた平坦面を有する。すなわち、平坦化層23は、赤外パスフィルター12Pと各色用フィルター12R,12G,12Bとによって形成される高低差を緩和することが可能な形状を有する。
【0122】
平坦化層23の構成材料は、第1実施形態の平坦化層21に用いることが可能な材料であってよい。
(2‐6)平坦化層23を別途備える構成であれば、赤外パスフィルター12Pの周面の一部が、各色用フィルター12R,12G,12Bから露出する場合であっても、上記(2‐1)、(2‐5)に準じた効果を得ることが可能でもある。
【0123】
[第3変更例]
図15が示すように、固体撮像素子は、赤外カットフィルター13を別途備える。赤外カットフィルター13は、各色用光電変換素子11R,11G,11Bが検出し得る赤外光をカットし、それによって、光電変換素子11による可視光の検出精度を高める。各光電変換素子11が検出し得る赤外光は、例えば、800nm以上1000nm以下の波長を有した近赤外光である。赤外カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bに共通する層である。すなわち、1つの赤外カットフィルター13が、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bを覆っている。
【0124】
赤外カットフィルター13は、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に位置する。赤外カットフィルター13は、赤外パスフィルター12Pに対する光の入射側に貫通孔13Hを備え、赤外パスフィルター12Pに対する光の入射側に位置しない。
【0125】
なお、赤外カットフィルター13による赤外光のカット機能は、赤外カットフィルター13の厚みによって変わり得る。赤外カットフィルター13の厚みは、各色用フィルター12R,12G,12B上、および、各色用フィルター12R,12G,12B間において、各色用フィルター12R,12G,12B間における段差によって変わり得る。そこで、赤外カットフィルター13の下地における平坦性が高められる観点から、各色用フィルター12R,12G,12B間における厚みの差は、赤外カットフィルター13の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0126】
図16が示すように、各色用フィルター12R,12G,12Bは、赤外パスフィルター12Pよりも薄い。この際、赤外カットフィルター13は、各色用フィルター12R,12G,12Bと赤外パスフィルター12Pとの膜厚差に相当する厚みを備えることが好ましい。
【0127】
図16が示す例では、赤外パスフィルター12Pにおける入射面側の面と、赤外カットフィルター13における入射面側の面とが、互いに等しい高さに位置している。すなわち、赤外パスフィルター12Pにおけるバリア層14に接する面と、赤外カットフィルター13におけるバリア層14に接する面とが、互いに等しい高さに位置している。言い換えれば、赤外パスフィルター12Pにおける入射面側の面と、赤外カットフィルター13における入射面側の面とが面一である。
【0128】
赤外カットフィルター13の透過スペクトルは、上記[A1]から[A3]の条件を満たすことが好ましい。
[A1]を満たす構成であれば、可視光が赤外カットフィルター13で吸収されてしまうことが十分に抑制される。[A2]および[A3]を満たす構成であれば、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が赤外カットフィルター13で十分にカットされ、かつ、可視光までがカットされてしまうことが十分に抑制される。
【0129】
(2‐7)赤外吸収色素は、太陽光が照射される環境下において大気中の酸素および水と接触し、それによって、近赤外帯域における透過スペクトルが変わる。すなわち、赤外カットフィルター13は、太陽光が照射される環境下において酸化源と接触し、近赤外光のカット性能を低下させる。この点、赤外カットフィルター13の入射面15S側にもバリア層14が位置するため、赤外カットフィルター13の耐光性を高めることが可能でもある。
【0130】
(2‐8)赤外パスフィルター12Pの耐光性、および、赤外カットフィルター13の耐光性を単一のバリア層14が高めるため、各別のバリア層を備える構成と比べて、固体撮像素子の層構成を簡素化することが可能でもある。
【0131】
(2‐9)赤外カットフィルター13の厚みと、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚みとの合計が、赤外パスフィルター12Pの厚みに相当する構成であれば、バリア層14の下面に好適な平坦性が与えられる。結果として、上記(2‐1)、(2‐7)に準じた効果にばらつきが生じることが抑制可能でもある。
【0132】
[その他]
・バリア層14は、赤外パスフィルター12Pと、赤外用マイクロレンズ15Pとの間に限らず、赤外用マイクロレンズ15Pの外表面に位置することも可能である。この際、バリア層14の外表面は、固体撮像素子に光を入射する入射面として機能する。要は、バリア層14の位置は、赤外パスフィルター12Pに対して光の入射側であればよい。この構成によれば、バリア層14は、赤外用マイクロレンズ15Pの光学面(平坦面)上に位置する。結果として、バリア層14の厚みの均一化が容易であり、ひいては、バリア層14による酸化源のバリア機能の均一化が容易である。
【0133】
・固体撮像素子は、バリア層14とバリア層14の下層との間にアンカー層を備えてもよい。これにより、バリア層14とバリア層14の下層との密着性をアンカー層によって高めることが可能である。また、固体撮像素子は、バリア層14とバリア層14の上層との間にアンカー層を備えてもよい。これにより、バリア層14とバリア層14の上層との密着性をアンカー層によって高めることが可能である。
【0134】
アンカー層の構成材料、および、厚みは、第1実施形態の変更例におけるアンカー層の構成材料、および、厚みと同様であってよい。
【0135】
・複数の光電変換素子11は、有機光電変換素子と無機光電変換素子とから構成され、これによって、固体撮像素子用フィルター10において、各色用フィルター12R,12G,12Bが割愛されてもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bが割愛された構成であっても、赤外パスフィルター12Pを備える構成であれば、上述したバリア機能を備えることによって、赤外パスフィルター12Pの透過機能を保護することは可能である。
【0136】
・固体撮像素子用フィルター10は、複数の光電変換素子11と、各色用フィルター12R,12G,12B、および、赤外パスフィルター12Pとの間に、ブラックマトリックス、および、平坦化層を備えてもよい。ブラックマトリックスは、各色用フィルター12R,12G,12Bが選択した各色の光が、他の色用の光電変換素子11に入ることを抑制する。平坦化層は、ブラックマトリックスが有する段差を埋め、これによって、各色用フィルター12R,12G,12Bの下地、赤外パスフィルター12Pの下地、および、赤外カットフィルター13の下地を平坦化する。結果として、平坦化層は、バリア層14の下地を平坦化する。
【0137】
・カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルターから構成された三色用フィルターに変更されてもよい。また、カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターに変更されてもよい。また、カラーフィルターは、透明用フィルター、イエロー用フィルター、赤色用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターに変更されてもよい。
【0138】
・各色用フィルター12R,12G,12Bの屈折率は、例えば、1.7以上1.9以下である。各マイクロレンズ15R,15G,15Bの屈折率は、例えば、1.5以上1.6以下である。赤外パスフィルター12Pおよび赤外カットフィルター13の構成材料は、各色用フィルター12R,12G,12Bおよび各マイクロレンズ15R,15G,15Bの屈折率との差を抑制するために、無機酸化物の粒子を含有可能である。無機酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタンである。
【0139】
・赤外パスフィルター12P、および、赤外カットフィルター13の構成材料は、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含有可能である。
【0140】
・固体撮像素子は、バリア層14が割愛された構成であって、赤外パスフィルター12Pに対して入射面15Sの側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m2/day/atm以下である構成に変更可能である。例えば、積層構造は、平坦化層および密着層などの他の機能層によって形成される。当該積層構造は、赤外用マイクロレンズ15Pと共に、5.0cc/m2/day/atm以下の酸素透過率を有した構造を形成してもよい。
【0141】
・固体撮像素子は、複数のマイクロレンズに対して光の入射面側に別途バンドパスフィルターを備えてもよい。バンドパスフィルターは可視光と近赤外光における特定の波長を透過するフィルターであり、赤外カットフィルター13と同様の機能を備える。すなわち、バンドパスフィルターにより各色用光電変換素子11R,11G,11B、および、赤外用光電変換素子11Pが検出し得る不要な赤外光をカットすることができる。それによって、各色用光電変換素子11R,11G,11Bによる可視光、および、赤外用光電変換素子11Pの検出対象である850nmあるいは940nm帯域の波長を有した近赤外光の検出精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0142】
10…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
11R…赤色用光電変換素子
11G…緑色用光電変換素子
11B…青色用光電変換素子
11P…赤外用光電変換素子
12R…赤色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12B…青色用フィルター
12P…赤外パスフィルター
13…赤外カットフィルター
14…バリア層
15R…赤色用マイクロレンズ
15G…緑色用マイクロレンズ
15B…青色用マイクロレンズ
15P…赤外用マイクロレンズ
15S…入射面
21,22,23…平坦化層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16