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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】プレス機械のダイクッション装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 24/02 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B21D24/02 B
B21D24/02 D
B21D24/02 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021038168
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2021194700
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2020101727
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 秀樹
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-149346(JP,A)
【文献】特開平08-019822(JP,A)
【文献】特開2001-179499(JP,A)
【文献】特開2016-000407(JP,A)
【文献】米国特許第05813275(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 24/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械の下方に配置されたクッションパッドと、前記クッションパッドを上下動させるクッションシリンダと、前記クッションシリンダに対してクッションエアを供給又は排出させるクッションエア給排気手段と、前記クッションパッドをスライドの下死点近傍で一時停止させるロッキング機構と、を備えたプレス機械のダイクッション装置であって、
前記ロッキング機構には、
前記スライドの上下位置を検出するスライド位置検出手段と、
前記クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段と、
前記スライド位置検出手段と前記スライドを駆動させるスライド駆動手段と前記クッションエア給排気手段とに接続されたロッキング制御手段と、を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号が前記ロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、前記スライド駆動手段に対して前記スライドを一時停止させるスライド停止信号を出力し、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアを排気させる排気信号を出力することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング制御手段は、前記スライド停止信号を出力してから所定時間経過後に、前記スライド駆動手段に対して前記スライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング制御手段が前記スライド停止信号を出力してから前記スライド駆動信号を出力するまでの前記所定時間は、前記クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで前記クッションシリンダの前記クッションエアを排気する時間であることを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項4】
請求項1に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング機構には、前記クッションシリンダのエア圧力を検出するクッション圧力検出手段と、前記クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段と、を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記クッション圧力検出手段から受けるエア圧力信号と前記ロッキング保持圧力設定手段で設定したエア圧力信号とが一致したとき、前記スライド駆動手段に対して前記スライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項5】
プレス機械の下方に配置されたクッションパッドと、前記クッションパッドを上下動させるクッションシリンダと、前記クッションシリンダに対してクッションエアを供給又は排出させるクッションエア給排気手段と、前記クッションパッドをスライドの下死点近傍で一時停止させるロッキング機構と、を備えたプレス機械のダイクッション装置であって、
前記ロッキング機構には、
前記スライドの上下位置を検出するスライド位置検出手段と、
前記クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段と、
前記クッションパッドの下降位置に対する上昇高さをクッション高さとして検出するクッション高さ検出手段と、
前記スライド位置検出手段と前記スライドを駆動させるスライド駆動手段と前記クッションエア給排気手段と前記クッション高さ検出手段とに接続されたロッキング制御手段と、を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号が零mmを示すとき、前記スライド駆動手段に対してスライド停止信号を出力し、前記スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号が前記ロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアを排気させる排気信号を出力することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング機構には、前記クッションシリンダのエア圧力を検出するクッション圧力検出手段と、前記クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段と、を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記クッション圧力検出手段から受けるエア圧力信号と前記ロッキング保持圧力設定手段で設定したエア圧力信号とが一致したとき、前記スライド駆動手段に対して前記スライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング制御手段は、前記クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号が零mmを超過したとき、前記スライド駆動手段に対してスライド停止信号を出力し、前記ロッキング保持圧力設定手段において設定した前記クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を前記クッション圧力検出手段のエア圧力信号に基づいて再設定することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング機構には、前記クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号に基づいて前記クッション高さの一サイクル波形を表示するクッション高さ表示手段を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記クッションパッドが上昇位置に到達したとき、前記クッション高さ表示手段に対して前記一サイクル波形を表示する表示信号を出力することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング機構には、前記クッションシリンダに対して前記クッションエアを排出させるクッションエア排気手段を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号が前記ロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、前記クッションエア排気手段に対して前記クッションエアを排気させる排気信号を出力することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記スライド位置検出手段では、前記スライドの上下位置として前記スライド駆動手段の駆動モータに連動する駆動ギアを介してスライド角度を検出し、
前記ロッキング位置設定手段では、前記クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置を前記スライド角度によって設定することを特徴とするプレス機械のダイクッション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械のダイクッション装置に関し、詳しくは、プレス機械のクッションパッドをスライドの下死点近傍で一時停止させるロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絞り成形等を行うプレス機械には、絞り成形時等における素材の流入抵抗をコントロールしたり、成形後のプレス品を下型から離型する等の目的で、ダイクッション装置を備えている。例えば、図11に示すように、従来のダイクッション装置100には、下型106を支持するボルスタ101を固定する床面の下方に、クッションパッド102と、クッションパッド102を上下動させる空圧式のクッションシリンダ103とを備えている。そして、ボルスタ101には、クッションシリンダ103からの空気圧(クッション圧力)を下型リング105等に伝達するクッションピン104が挿通され、クッションピン104の下端は、クッションパッド102に当接されている。
【0003】
また、ダイクッション装置100には、成形後のプレス品Wの上型107への食い付きによる変形等を防止するため、スライド108の下死点近傍でクッションパッド102の上昇を一時停止(以下、「ロッキング」とも言う)させるロッキング機構109を備えている場合がある。従来のロッキング機構109は、例えば、図11に示すように、クッションパッド102から下方に延設されたクッションロッド110の中間部に装着されたロッキング油圧装置111からなり、ロッキング油圧装置111には、クッションロッド110に連結された油圧シリンダ内のピストンの上下動をロックさせるロッキングバルブ112を備えている。また、ダイクッション装置100には、クッションパッド102のストローク量を調節するストローク調整装置113が、例えば、クッションロッド110の下端部に装着されている。
【0004】
このように、従来のロッキング機構109を備えたダイクッション装置100は、クッションパッド102を上下動させる空圧式のクッションシリンダ103とは別に、クッションパッド102から下方に延設されたクッションロッド110の中間部に装着されたロッキング油圧装置111と、クッションロッド110の下端部に装着されたストローク調整装置113とを備えているので、ダイクッション装置100の構造が複雑化すると共に大型化して、床下のピットを深く掘る必要があり、設備費用のみならず、設備の設置工事費用や工事期間等が増加するという問題があった。また、ロッキング油圧装置111を備えているので、油圧ポンプや油圧配管等に対する保全費が増加するという問題もあった。
【0005】
そのため、ダイクッション装置100の複雑化、大型化等の問題を改善するため、例えば、特許文献1には、図12に示すように、ダイクッション装置200のロッキング機構201を、クッションロッド202の下端側に形成されたハイリードスクリュウ203に螺合するハイリードナット204と、ハイリードナット204の回転を拘束するブレーキ205により構成したもので、ブレーキ205によりハイリードナット204の回転を拘束することにより、クッションパッド206を任意なストローク位置でロックすることができるプレス機械のダイクッション装置200が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平5-53728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたダイクッション装置200のロッキング機構201は、クッションロッド202の下端側に形成されたハイリードスクリュウ203に螺合するハイリードナット204と、ハイリードナット204の回転を拘束するブレーキ205により構成したものであるので、前述のロッキング油圧装置111よりは小型化できるものの、それなりの設置スペースが必要であり、既設のプレス機械のダイクッション装置に対して、上記ロッキング機構201を追加することは、必ずしも容易ではなかった。
【0008】
また、上記ロッキング機構201は、ブレーキ205によりハイリードナット204の回転を拘束することにより、クッションパッド206を任意なストローク位置でロックする構造であるが、ハイリードナット204とブレーキ205との間で機械的な滑りが生じやすく、クッションパッド206の一時停止機能を確保しにくいという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドの一時停止機能を確保しやすいロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るプレス機械のダイクッション装置は、次のような構成を有している。
(1)プレス機械の下方に配置されたクッションパッドと、前記クッションパッドを上下動させるクッションシリンダと、前記クッションシリンダに対してクッションエアを供給又は排出させるクッションエア給排気手段と、前記クッションパッドをスライドの下死点近傍で一時停止させるロッキング機構と、を備えたプレス機械のダイクッション装置であって、
前記ロッキング機構には、
前記スライドの上下位置を検出するスライド位置検出手段と、
前記クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段と、
前記スライド位置検出手段と前記スライドを駆動させるスライド駆動手段と前記クッションエア給排気手段とに接続されたロッキング制御手段と、を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号が前記ロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、前記スライド駆動手段に対して前記スライドを一時停止させるスライド停止信号を出力し、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアを排気させる排気信号を出力することを特徴とする。
【0011】
本発明においては、ロッキング機構には、スライドの上下位置を検出するスライド位置検出手段と、クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段と、スライド位置検出手段とスライドを駆動させるスライド駆動手段とクッションエア給排気手段とに接続されたロッキング制御手段と、を備え、ロッキング制御手段は、スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号がロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、スライド駆動手段に対してスライドを一時停止させるスライド停止信号を出力し、クッションエア給排気手段に対してクッションエアを排気させる排気信号を出力するので、ロッキング位置設定手段で設定した任意のスライド位置に基づいて、スライドを一時停止させると共に、スライドの一時停止中にクッションシリンダのクッションエアを排気して減圧させ、クッションパッドの上昇を停止させることができる。そのため、例えば、スライドを通常のプレス速度(例えば、15~18spm程度)で下降させて、下死点近傍の任意の位置でスライドを一時停止させ、クッションパッドをロッキングさせることができる。その結果、通常のプレス速度による成形タッチスピードを確保した状態で、クッションパッドの一時停止機能を確保することができる。
【0012】
また、ロッキング機構は、スライド位置検出手段とロッキング位置設定手段とロッキング制御手段とで構成し、スライド位置検出手段とロッキング位置設定手段とロッキング制御手段は、いずれも電気的制御手段等で構成されているので、設置スペース上の問題も少ない。そのため、既設のプレス機械のダイクッション装置に、ロッキング機構を簡単に設置できる。
【0013】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドの一時停止機能を確保しやすいロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0014】
(2)(1)に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング制御手段は、前記スライド停止信号を出力してから所定時間経過後に、前記スライド駆動手段に対して前記スライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、ロッキング制御手段は、スライド停止信号を出力してから所定時間経過後に、スライド駆動手段に対してスライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力するので、スライドが停止してから再駆動するまでの所定時間中に、クッションシリンダのクッションエアを所定量排気して、クッションパッドをロッキングさせ、クッションパッドがロッキングされている間に、スライドを上死点まで上昇させることができる。また、スライドを上死点まで上昇させるときには、クッションエアの排気を停止させることができる。そのため、ロッキング制御手段は、所定時間をカウントするタイマー機能を用いるだけで、スライドの上昇タイミングを簡単に設定でき、また、スライドの上昇中におけるクッションエアの無駄な排気を阻止することができる。
【0016】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、簡単なタイマー機能を用いてクッションパッドの一時停止機能を確保し、クッションエアの無駄な排気を阻止するロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0017】
(3)(2)に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング制御手段が前記スライド停止信号を出力してから前記スライド駆動信号を出力するまでの前記所定時間は、前記クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで前記クッションシリンダの前記クッションエアを排気する時間であることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、ロッキング制御手段がスライド停止信号を出力してからスライド駆動信号を出力するまでの所定時間は、クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力までクッションシリンダのクッションエアを排気する時間であるので、クッションパッドをロッキングさせるために、クッションシリンダから排気するクッションエアの排気量を最小化できると共に、クッションパッドをロッキング後に上昇させるために、クッションシリンダに供給するクッションエアの供給量を最小化させることができる。また、クッションパッドをロッキングさせるために、クッションシリンダから排気するクッションエアの排気量を最小化できるので、クッションパッドのロッキングに伴い、スライドを一時停止させる時間を最小化させることができる。
【0019】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドのロッキングに必要なクッションエアの排出量と、スライドの一時停止時間を最小化できるロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0020】
(4)(1)に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング機構には、前記クッションシリンダのエア圧力を検出するクッション圧力検出手段と、前記クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段と、を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記クッション圧力検出手段から受けるエア圧力信号と前記ロッキング保持圧力設定手段で設定したエア圧力信号とが一致したとき、前記スライド駆動手段に対して前記スライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力することを特徴とする。
【0021】
本発明においては、ロッキング機構には、クッションシリンダのエア圧力を検出するクッション圧力検出手段と、クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段と、を備え、ロッキング制御手段は、クッション圧力検出手段からのエア圧力信号とロッキング保持圧力設定手段で設定したエア圧力信号とが一致したとき、スライド駆動手段に対してスライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力するので、クッションシリンダのエア圧力がクッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで低減したことを確認して、スライドを上昇させることができる。そのため、スライドが上昇する際、クッションパッドも一緒に上昇することを確実に回避でき、クッションパッドのロッキングにおける一時停止精度をより一層向上させることができる。また、ロッキング制御手段は、スライド駆動信号と排気停止信号とを同時に出力するので、クッションシリンダに対するクッションエアの過剰排気を抑制させることができる。そのため、クッションシリンダに対するクッションエアの再充填時間を短縮して、スライドが上死点に到着後に再下降するまでの再起動時間を短縮させることができる。
【0022】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドの一時停止精度を向上させつつ、スライドの再起動時間を短縮させ得るロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0023】
(5)プレス機械の下方に配置されたクッションパッドと、前記クッションパッドを上下動させるクッションシリンダと、前記クッションシリンダに対してクッションエアを供給又は排出させるクッションエア給排気手段と、前記クッションパッドをスライドの下死点近傍で一時停止させるロッキング機構と、を備えたプレス機械のダイクッション装置であって、
前記ロッキング機構には、
前記スライドの上下位置を検出するスライド位置検出手段と、
前記クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段と、
前記クッションパッドの下降位置に対する上昇高さをクッション高さとして検出するクッション高さ検出手段と、
前記スライド位置検出手段と前記スライドを駆動させるスライド駆動手段と前記クッションエア給排気手段と前記クッション高さ検出手段とに接続されたロッキング制御手段と、を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号が零mmを示すとき、前記スライド駆動手段に対してスライド停止信号を出力し、前記スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号が前記ロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアを排気させる排気信号を出力することを特徴とする。
【0024】
本発明においては、ロッキング機構には、スライドの上下位置を検出するスライド位置検出手段と、クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段と、クッションパッドの下降位置に対する上昇高さをクッション高さとして検出するクッション高さ検出手段と、スライド位置検出手段とスライドを駆動させるスライド駆動手段とクッションエア給排気手段とクッション高さ検出手段とに接続されたロッキング制御手段と、を備え、ロッキング制御手段は、クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号が零mmを示すとき、スライド駆動手段に対してスライド停止信号を出力し、スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号がロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、クッションエア給排気手段に対してクッションエアを排気させる排気信号を出力するので、クッションパッドが下降位置に到着したことを確認して、スライドを一時停止させることができる。また、ロッキング位置設定手段で設定した任意のスライド位置に基づいて、クッションシリンダのクッションエアを排気して減圧させ、クッションパッドの下降位置において、その上昇を停止させることができる。そのため、例えば、スライドを通常のプレス速度(例えば、15~18spm程度)で下降させて、クッションパッドの下降位置でスライドを一時停止させると共に、クッションパッドを下降位置でロッキングさせることができる。その結果、通常のプレス速度による成形タッチスピードを確保した状態で、クッションパッドの下降位置における一時停止機能を安定して確保することができる。
【0025】
また、ロッキング機構は、スライド位置検出手段とロッキング位置設定手段とクッション高さ検出手段とロッキング制御手段とで構成し、スライド位置検出手段とロッキング位置設定手段とロッキング制御手段は、いずれも電気的制御手段等で構成されているので、設置スペース上の問題も少ない。また、クッション高さ検出手段は、例えば、クッションパッドの側壁とクッションシリンダとの間に簡単に設置することができる。そのため、既設のプレス機械のダイクッション装置に、ロッキング機構を簡単に設置できる。
【0026】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドの下降位置における一時停止機能を安定して確保しやすいロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0027】
(6)(5)に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング機構には、前記クッションシリンダのエア圧力を検出するクッション圧力検出手段と、前記クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段と、を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記クッション圧力検出手段から受けるエア圧力信号と前記ロッキング保持圧力設定手段で設定したエア圧力信号とが一致したとき、前記スライド駆動手段に対して前記スライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、前記クッションエア給排気手段に対して前記クッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力することを特徴とする。
【0028】
本発明においては、ロッキング機構には、クッションシリンダのエア圧力を検出するクッション圧力検出手段と、クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段と、を備え、ロッキング制御手段は、クッション圧力検出手段から受けるエア圧力信号とロッキング保持圧力設定手段で設定したエア圧力信号とが一致したとき、スライド駆動手段に対してスライドを駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力するので、クッションシリンダのエア圧力がクッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで低減したことを確認して、スライドを上昇させることができる。そのため、スライドが上昇する際、クッションパッドも一緒に上昇することを回避でき、クッションパッドのロッキングにおける一時停止精度をより一層向上させることができる。また、ロッキング制御手段は、スライド駆動信号と排気停止信号とを同時に出力するので、クッションシリンダに対するクッションエアの過剰排気を抑制させることができる。そのため、クッションシリンダに対するクッションエアの再充填時間を短縮して、スライドが上死点に到着後に再下降するまでの再起動時間を短縮させることができる。
【0029】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドの一時停止精度を向上させつつ、スライドの再起動時間を短縮させ得るロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0030】
(7)(6)に記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング制御手段は、前記クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号が零mmを超過したとき、前記スライド駆動手段に対してスライド停止信号を出力し、前記ロッキング保持圧力設定手段において設定した前記クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を前記クッション圧力検出手段のエア圧力信号に基づいて再設定することを特徴とする。
【0031】
本発明においては、ロッキング制御手段は、クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号が零mmを超過したとき、スライド駆動手段に対してスライド停止信号を出力し、ロッキング保持圧力設定手段において設定したクッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力をクッション圧力検出手段のエア圧力信号に基づいて再設定するので、次回のプレス成形からは、再設定したクッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力において、スライド駆動手段に対してスライドを駆動させるスライド駆動信号を出力して、スライドをより早期に上昇させることができる。そのため、スライドの再起動時間をより一層短縮させることができる。
【0032】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力でスライドを上昇させて、スライドの再起動時間をより一層短縮させ得るロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0033】
(8)(5)乃至(7)のいずれか1つに記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング機構には、前記クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号に基づいて前記クッション高さの一サイクル波形を表示するクッション高さ表示手段を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記クッションパッドが上昇位置に到達したとき、前記クッション高さ表示手段に対して前記一サイクル波形を表示する表示信号を出力することを特徴とする。
【0034】
本発明においては、ロッキング機構には、クッション高さ検出手段から受けるクッション高さ信号に基づいてクッション高さの一サイクル波形を表示するクッション高さ表示手段を備え、ロッキング制御手段は、クッションパッドが上昇位置に到達したとき、クッション高さ表示手段に対して一サイクル波形を表示する表示信号を出力するので、プレス成形過程におけるクッションパッドの下降、上昇の動作軌跡を詳細に知ることができる。そのため、クッションパッドのロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を、より正確に把握することができ、例えば、クッションパッドの上昇時における高さ異常、クッションパッドの下降位置のバラツキ等を認識できるので、プレス成形品質とクッション動作との因果関係を解析することができる。その結果、プレス成形品質の早期安定化に寄与できる。
【0035】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドの動作軌跡を把握してプレス成形品質をより短期間で確保しやすいロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0036】
(9)(1)乃至(8)のいずれか1つに記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記ロッキング機構には、前記クッションシリンダに対して前記クッションエアを排出させるクッションエア排気手段を備え、
前記ロッキング制御手段は、前記スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号が前記ロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、前記クッションエア排気手段に対して前記クッションエアを排気させる排気信号を出力することを特徴とする。
【0037】
本発明においては、ロッキング機構には、クッションシリンダに対してクッションエアを排出させるクッションエア排気手段を備え、ロッキング制御手段は、スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号がロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したとき、クッションエア排気手段に対してクッションエアを排気させる排気信号を出力するので、スライド位置検出手段から受けるスライド位置信号がロッキング位置設定手段で設定したスライド位置信号と一致したときには、クッションエアの排気を、クッションエア給排気手段とクッションエア排気手段の両方から同時に行うことができる。そのため、クッションパッドのロッキングに要するクッションエアの排出時間をより一層短縮させることができる。また、クッションエア排気手段は、配管及びバルブ等で構成されているので、設置スペース上の問題も少ない。そのため、既設のプレス機械のダイクッション装置に、クッションエア排気手段を簡単に設置できる。
【0038】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドの一時停止機能をより短時間で確保しやすいロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【0039】
(10)(1)乃至(9)のいずれか1つに記載されたプレス機械のダイクッション装置において、
前記スライド位置検出手段では、前記スライドの上下位置として前記スライド駆動手段の駆動モータに連動する駆動ギアを介してスライド角度を検出し、
前記ロッキング位置設定手段では、前記クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置を前記スライド角度によって設定することを特徴とする。
【0040】
本発明においては、スライド位置検出手段では、スライドの上下位置としてスライド駆動手段の駆動モータに連動する駆動ギアを介してスライド角度を検出するので、既設のプレス機械が備えるスライド角度の読み取り機のスライド角度信号を流用することができ、特別の検出手段を追加することなく、スライドの上下位置情報として、簡単にスライド角度を取得できる。また、ロッキング位置設定手段では、クッションパッドをロッキングさせるときのスライド位置をスライド角度によって設定するので、既設のプレス機械の操作盤でクッションパッドをロッキングさせるときのスライド角度を簡単に設定することができる。
【0041】
よって、本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、より簡単に取得、設定できるスライド角度信号を用いてクッションパッドの一時停止機能を確保するロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッドの一時停止機能を確保しやすいロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本実施形態に係る第1実施例のプレス機械のダイクッション装置の全体構成図である。
図2図1に示すプレス機械の拡大断面図である。
図3図1に示すクッションエア給排気手段の回路構成図である。
図4図1に示すクッションエア排気手段の回路構成図である。
図5図1に示すプレス機械のダイクッション装置におけるロッキング機構の動作フロー図である。
図6】本実施形態に係る第2実施例のプレス機械のダイクッション装置の全体構成図である。
図7図6に示すプレス機械のダイクッション装置におけるロッキング機構の動作フロー図である。
図8】本実施形態に係る第3実施例のプレス機械のダイクッション装置の全体構成図である。
図9図8に示すプレス機械の拡大断面図である。
図10図8に示すプレス機械のダイクッション装置におけるロッキング機構の動作フロー図である。
図11】従来のプレス機械のダイクッション装置であって、ロッキング油圧装置を有するダイクッション装置の概略断面図である。
図12】特許文献1に記載されたプレス機械のダイクッション装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に、本発明の実施形態に係るプレス機械のダイクッション装置について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る第1実施例のプレス機械のダイクッション装置の構造を説明し、次に、本プレス機械のダイクッション装置におけるロッキング機構の動作方法について説明する。その後、本実施形態に係る第2実施例及び第3実施例のプレス機械のダイクッション装置を、第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0045】
<本第1実施例のプレス機械のダイクッション装置の構造>
まず、本実施形態に係る第1実施例のプレス機械のダイクッション装置の構造を、図1図4を用いて説明する。図1に、本実施形態に係る第1実施例のプレス機械のダイクッション装置の全体構成図を示す。図2に、図1に示すプレス機械の拡大断面図を示す。図3に、図1に示すクッションエア給排気手段の回路構成図を示す。図4に、図1に示すクッションエア排気手段の回路構成図を示す。ここで、図1図4は、クッションパッド2をスライド3の下死点近傍で一時停止させ、クッションエア給排気手段22及びクッションエア排気手段23に対してクッションエアの排気指示がなされている状態を表す。
【0046】
図1図4に示すように、本第1実施例のプレス機械のダイクッション装置10は、プレス機械1の下方に配置されたクッションパッド2と、クッションパッド2を上下動させるクッションシリンダ21と、クッションシリンダ21に対してクッションエアを供給又は排出させるクッションエア給排気手段22と、クッションパッド2をスライド3の下死点近傍で一時停止させるロッキング機構4と、を備えたプレス機械1のダイクッション装置10である。ロッキング機構4は、床面(FL)の下方に形成されたピット内に収納されている。
【0047】
なお、プレス機械1は、クラウン11上部にスライド駆動手段31を備えている。スライド駆動手段31は、図示しない駆動モータ(メインモータ)311を備え、駆動モータ311に連結された駆動ギア312及び連結アーム313を介してスライド3を上下動させる。また、プレス機械1には、スライド3と対向する位置で、ボルスタ6を床面上に配置している。なお、スライド駆動手段31には、後述するスライド位置検出手段41が設置されている。
【0048】
また、スライド3には、例えば、絞り成形を行う上型51が固定され、ボルスタ6には、上型51と協働して絞り成形を行う下型52が固定されている。また、ボルスタ6には、シワ押さえ面等が形成された下型リング53を支持するクッションピン61が挿通され、クッションピン61の下端は、クッションパッド2に当接されている。また、クッションシリンダ21は、床下に形成されたピットのフレーム等に固定されている。また、クッションパッド2には、下方へ延設されたクッションロッド24が連結され、クッションロッド24の下端に、クッションパッド2のストローク調整手段25が装着されている。
【0049】
また、クッションエア給排気手段22には、クッションエアの給排気切替バルブ221とクッションエアの給気バルブ222とクッションエアの排気バルブ223とを備えている。給排気切替バルブ221は、給気ポートと排気ポートと給気も排気もしない中立ポートとを備えた3ポートの電磁弁であって、後述するロッキング制御手段43と制御配線431を介して電気的に接続されている。給気バルブ222は、制御配管225を介して給排気切替バルブ221のパイロットエアによる切替指示を受けて、給気弁の開閉を行い、排気バルブ223は、制御配管226を介して給排気切替バルブ221のパイロットエアによる切替指示を受けて、排気弁の開閉を行う。給気バルブ222と排気バルブ223は、クッションシリンダ21に対して給排気用配管224によって接続されている。給排気用配管224は、逆止弁を介してエアタンク等(図示しない)に接続されている。逆止弁は、クッションシリンダ21のクッションエアが所定圧以上の圧力になったときに、クッションエアをエアタンク等へ逃がすように作動する。
【0050】
また、ロッキング機構4には、スライド3の上下位置を検出するスライド位置検出手段41と、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置を設定するロッキング位置設定手段42と、スライド位置検出手段41とスライド駆動手段31とクッションエア給排気手段22とに接続されたロッキング制御手段43と、を備えている。
【0051】
スライド位置検出手段41は、例えば、スライド駆動手段31の駆動ギア312の角度変位等を非接触センサによって検出し、スライド位置信号を出力する。スライド位置検出手段41は、制御配線432を介してロッキング制御手段43と電気的に接続されている。なお、制御配線432には、スライド位置検出手段41から送信されるスライド位置信号を増幅する増幅器433が接続されている。また、増幅器433は、スライド位置信号をデジタル情報として、連続的に出力している。なお、ロッキング位置設定手段42で設定するスライド位置信号も、デジタル情報として設定する。
【0052】
なお、ロッキング制御手段43は、例えば、汎用的な制御手段として利用できるPLC(Programmable Logic Controller(プログラマブルロジックコントローラ))が好ましい。PLCでは、制御プログラムを簡単に組み替えたり、調整することができるので、個々のプレス型に応じて異なるロッキング条件を設定できる利点もある。また、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置は、成形条件や設備条件等に基づいて設定する。通常、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置は、下死点(スライド角度=180度)であるが、スライド停止時におけるブレーキ滑り、クッション圧力の強弱、スライド3に固定した上型51の自重、下型52や下型リング53の反力等を考慮して、下死点近傍の任意の位置で設定する。クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置は、後述する「スライド角度」によれば、170~190度程度の範囲で設定する。
【0053】
また、ロッキング制御手段43は、スライド位置検出手段41から受けるスライド位置信号が、ロッキング位置設定手段42で設定したスライド位置信号と一致したとき、スライド駆動手段31に対してスライド3を停止させるスライド停止信号と、クッションエア給排気手段22に対してクッションエアを排気させる排気信号とを出力するように、プログラミングされている。
【0054】
これによって、ロッキング位置設定手段42で設定した任意のスライド位置に基づいて、スライド3を一時停止させると共に、スライド3の一時停止中にクッションシリンダ21のクッションエアを排気して減圧させ、クッションパッド2の上昇を停止させることができる。例えば、スライド3を通常のプレス速度(例えば、15~18spm程度)で下降させて、下死点近傍の任意の位置でスライド3を一時停止させ、クッションパッド2をロッキングさせることができる。そのため、通常のプレス成形において、クッションパッド2の一時停止機能を確保することができる。
【0055】
また、ロッキング機構4は、スライド位置検出手段41とロッキング位置設定手段42とロッキング制御手段43とで構成し、スライド位置検出手段41とロッキング位置設定手段42とロッキング制御手段43は、いずれも電気的制御手段等で構成されているので、設置スペース上の問題も少ない。そのため、既設のプレス機械のダイクッション装置に、ロッキング機構4を簡単に設置できる。
【0056】
ここで、ロッキング機構4には、クッションシリンダ21に対してクッションエアを排出させるクッションエア排気手段23を備え、ロッキング制御手段43は、スライド位置検出手段41から受けるスライド位置信号が、ロッキング位置設定手段42で設定したスライド位置信号と一致したとき、クッションエア給排気手段22及びクッションエア排気手段23に対してクッションエアを排気させる排気信号を出力することが、好ましい。
【0057】
この場合、クッションエアの排気を、クッションエア給排気手段22とクッションエア排気手段23の両方から同時に行うことができる。そのため、クッションパッド2のロッキングに要するクッションエアの排出時間を短縮させることができる。また、クッションエア排気手段23は、配管及びバルブ等で構成されているので、設置スペース上の問題も少ない。そのため、既設のプレス機械のダイクッション装置10に、クッションエア排気手段23を簡単に設置できる。
【0058】
クッションエア排気手段23には、クッションエアの排気切替バルブ231とクッションエアの排気バルブ232とを備えている。クッションエア排気手段23には、クッションエアの給気バルブは備えていない。排気切替バルブ231は、給排気切替バルブ221と同様に3ポートの電磁弁であって、ロッキング制御手段43と制御配線434を介して電気的に接続されている。排気バルブ232は、制御配管233を介して排気切替バルブ231のパイロットエアによる切替指示を受けて、排気弁の開閉を行う。排気バルブ232は、クッションシリンダ21に対して給排気用配管224によって接続されている。
【0059】
なお、例えば、スライド3を上死点に停止させ、クッションパッド2の上下動の動作確認を操作盤における各個操作で行う場合には、クッションエア排気手段23を使用せず、クッションエア給排気手段22のみを用いて、クッションシリンダ21に対するクッションエアの排気を行うことが好ましい。その理由は、クッションエア排気手段23とクッションエア給排気手段22の両方を用いて、クッションシリンダ21に対するクッションエアの排気を行うと、下型リング53とクッションパッド2とが急速に下降して、金型やプレス設備の損傷につながる恐れがあり、これを回避するためである。
【0060】
また、ロッキング制御手段43は、スライド停止信号を出力してから所定時間(例えば、5~6秒程度)経過後に、スライド駆動手段31に対してスライド3を駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段22及びクッションエア排気手段23に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力するようにプログラミングされていることが、好ましい。
【0061】
この場合、スライド3が停止してから再駆動するまでの所定時間中に、クッションシリンダ21のクッションエアを所定量排気して、クッションパッド2をロッキングさせ、クッションパッド2がロッキングされている間に、スライド3を上死点まで上昇させることができる。また、スライドの上昇中におけるクッションエアの無駄な排気を阻止することができる。そのため、ロッキング制御手段43は、所定時間をカウントするタイマー機能を用いるだけで、スライド3の上昇タイミングを簡単に設定でき、また、スライド3の上昇中におけるクッションエアの無駄な排気を阻止することができる。
【0062】
また、ロッキング制御手段43がスライド停止信号を出力してからスライド駆動信号を出力するまでの所定時間は、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力までクッションシリンダ21のクッションエアを排気する時間であることが好ましい。
【0063】
この場合、クッションパッド2をロッキングさせるために、クッションシリンダ21から排気するクッションエアの排気量を最小化できると共に、クッションパッド2をロッキング後に上昇させるために、クッションシリンダ21に供給するクッションエアの供給量を最小化させることができる。また、クッションパッド2をロッキングさせるために、クッションシリンダ21から排気するクッションエアの排気量を最小化できるので、クッションパッド2のロッキングに伴い、スライド3を一時停止させる時間を最小化させることができる。これによって、プレス機械1の生産性の向上にも寄与できる。
【0064】
また、スライド位置検出手段41では、スライド3の上下位置として、スライド駆動手段31の駆動モータ311に連動する駆動ギア312を介してスライド角度を検出することが、好ましい。これによって、既設のプレス機械が備えるスライド角度の読み取り機のスライド角度信号を流用することができ、特別の検出手段を追加することなく、スライドの上下位置情報として、簡単にスライド角度を取得できる。なお、「スライド角度」は、スライド3が円周上を時計回りに回転したときの円周中心を通過する垂線に対する中心角で表し、スライド3が上死点の位置では、スライド角度が0度であり、スライド3が下死点の位置では、スライド角度が180度となる。
【0065】
また、ロッキング位置設定手段42では、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置をスライド角度によって設定することが、好ましい。これによって、既設のプレス機械の操作盤でクッションパッド2をロッキングさせるときのスライド角度を簡単に設定することができる。
【0066】
また、ロッキング制御手段43は、スライド位置検出手段41から受けるスライド角度信号が、ロッキング位置設定手段42で設定したスライド角度信号と一致したとき、スライド駆動手段31に対してスライド3を停止させるスライド停止信号を出力し、クッションエア給排気手段22(及びクッションエア排気手段23)に対してクッションエアを排気させる排気信号とを出力するようにプログラミングされていることが、好ましい。この場合、より簡単に取得、設定できるスライド角度信号によって、任意のスライド位置でクッションパッド2のロッキングを行うことができる。
【0067】
<本第1実施例におけるロッキング機構の動作方法>
次に、本第1実施例におけるロッキング機構の動作方法について、図1図5を用いて説明する。図5に、図1に示すプレス機械のダイクッション装置におけるロッキング機構の動作フロー図を示す。
【0068】
図1図5に示すように、はじめに、スライド3が上死点から下死点に向けて下降する(ステップS1)。スライド3の下降動作は、スライド駆動手段31の駆動モータ311を作動させることによって行う。スライド3は、例えば、通常のプレス速度(例えば、15~18spm程度)で下降する。また、スライド3には、絞り成形用の上型51が固定され、ボルスタ6には、下型リング53を有する下型52が固定されている。このとき、下型リング53は、クッションパッド2及びクッションピン61によって、所定の上昇位置に支持されている。
【0069】
次に、スライド3の下降に伴って、上型51が下型リング53を押圧し、下型リング53に押されたクッションパッド2が下降する(ステップS2)。この段階では、クッションシリンダ21は、エアタンク(図示しない)から所定のエア圧力にて加圧されたクッションエアが供給されている。そのため、上型51と下型リング53との間で挟圧された素材には、クッションエアの加圧力に基づく所定の摩擦力が作用し、素材の流入がコントロールされる。
【0070】
次に、スライド3が、下死点近傍まで下降し、スライド位置検出手段41からのスライド角度信号と、ロッキング位置設定手段42で設定したスライド角度信号とが一致したとき、ロッキング制御手段43が、スライド停止指示とクッションエア排気指示とを行う(ステップS3)。スライド停止指示は、スライド駆動手段31に対して行い、クッションエア排気指示は、クッションエア給排気手段22(及びクッションエア排気手段23)に対して行う。これによって、スライド3は停止し、クッションパッド2も同時に停止する。なお、クッションシリンダ21のエア圧力は、クッションエアの排気によって徐々に低下するが、クッションエアの排気開始時には、クッションパッド2の自重及び慣性力等に抗して、スライド3の停止と同時にクッションパッド2を停止させることができる。
【0071】
次に、ロッキング制御手段43が、スライド停止指示から所定時間経過後に、スライド駆動指示を行い、クッションエア排気停止指示を行う(ステップS4)。これによって、スライド3は上死点まで上昇する。一方、クッションエアの排気が停止されたことによって、クッションシリンダ21のエア圧力が、現状で保持される。そのため、クッションパッド2は、ロッキングされた位置で停止し、上昇しない。
【0072】
次に、スライド3が上死点に到達したとき、又はその後に、ロッキング制御手段43が、クッションエア供給指示を行う(ステップS5)。クッションエア供給指示は、クッションエア給排気手段22に対して行う。その結果、ロッキングされたクッションパッド2が、所定の上昇位置まで上昇する。これによって、成形後のプレス品の上型51への食い付き等を回避しつつ、下型52から離型させることができる。
【0073】
<本第2実施例のプレス機械のダイクッション装置の構造>
次に、本実施形態に係る第2実施例のプレス機械のダイクッション装置の構造を、図3図4図6を用いて説明する。図6に、本実施形態に係る第2実施例のプレス機械のダイクッション装置の全体構成図を示す。ここで、図6は、クッションパッド2をスライド3の下死点近傍で一時停止させ、クッションエア給排気手段22及びクッションエア排気手段23に対してクッションエアの排気指示がなされている状態を表す。
【0074】
図3図4図6に示すように、本第2実施例のプレス機械のダイクッション装置10Bは、プレス機械1の下方に配置されたクッションパッド2と、クッションパッド2を上下動させるクッションシリンダ21と、クッションシリンダ21に対してクッションエアを供給又は排出させるクッションエア給排気手段22と、クッションパッド2をスライド3の下死点近傍で一時停止させるロッキング機構4Bと、を備えたプレス機械のダイクッション装置10Bである。ここでは、第1実施例と相違する点を中心に説明し、共通する構成は共通の符号を付して、原則としてその説明を割愛する。
【0075】
すなわち、本第2実施例のプレス機械のダイクッション装置10Bにおいて、ロッキング機構4Bには、クッションシリンダ21のエア圧力を検出するクッション圧力検出手段44と、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段45と、を備えている。ここで、「上限のエア圧力」とは、クッションパッド2のロッキング状態を保持しつつ、クッションパッド2が下降位置から上昇し始める直前のエア圧力を意味する。
【0076】
なお、クッション圧力検出手段44は、クッションシリンダ21に接続された給排気用配管224に装着した圧力センサを用いることができる。この圧力センサは、エア圧の変化を迅速かつ精度よく検出できるもの、例えば、ダイアフラム上に形成されたゲージ薄膜が歪むことによって発生する電気抵抗の変化を検出する薄膜式圧力センサ等が好ましい。また、ロッキング保持圧力設定手段45は、使用するプレス型毎にエア圧力を設定できることが好ましい。例えば、ロッキング保持圧力設定手段45は、プレス型の管理番号と設定したエア圧力とをリンクさせ、プレス型の管理番号を入力すると、そのプレス型に対応したエア圧力を自動的に入力可能に形成しても良い。
【0077】
また、ロッキング制御手段43は、クッション圧力検出手段44から受けるエア圧力信号とロッキング保持圧力設定手段45で設定したエア圧力信号とが一致したとき、スライド駆動手段31に対してスライド3を駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段22(及びクッションエア排気手段23)に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力するように、プログラミングされている。
【0078】
したがって、クッションシリンダ21のエア圧力がクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで低減したことを確認して、スライド3を上昇させることができる。そのため、スライド3が上昇する際、クッションパッド2も一緒に上昇することを確実に回避でき、クッションパッド2のロッキングにおける一時停止精度をより一層向上させることができる。また、ロッキング制御手段43は、スライド駆動信号と排気停止信号とを同時に出力するので、クッションシリンダ21に対するクッションエアの過剰排気を抑制させることができる。そのため、クッションシリンダ21に対するクッションエアの再充填時間を短縮して、スライド3が上死点に到着後に再下降するまでの再起動時間を短縮させることができる。
【0079】
<本第2実施例におけるロッキング機構の動作方法>
次に、本第2実施例におけるロッキング機構の動作方法について、図6図7を用いて説明する。図7に、図6に示すプレス機械のダイクッション装置におけるロッキング機構の動作フロー図を示す。
【0080】
図6図7に示すように、はじめに、スライド3が上死点から下死点に向けて下降する(ステップS11)。次に、スライド3の下降に伴って、上型51が下型リング53を押圧し、下型リング53に押されたクッションパッド2が下降する(ステップS12)。次に、スライド3が、下死点近傍まで下降し、スライド位置検出手段41からのスライド角度信号と、ロッキング位置設定手段42で設定したスライド角度信号とが一致したとき、ロッキング制御手段43が、スライド停止指示とクッションエア排気指示とを行う(ステップS13)。以上のステップS11~S13は、第1実施例と共通する。
【0081】
次に、ロッキング制御手段43が、クッション圧力検出手段44のエア圧力信号とロッキング保持圧力設定手段45で予め設定したエア圧力信号とが一致したとき、スライド駆動指示を行い、クッションエア排気停止指示を行う(ステップS14)。これによって、クッションシリンダ21のエア圧力がクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで低減したことを確認して、スライド3を上昇させることができる。また、クッションシリンダ21に対するクッションエアの過剰排気を抑制させることができる。
【0082】
次に、スライド3が上死点に到達したとき、又はその後に、ロッキング制御手段43が、クッションエア供給指示を行う(ステップS15)。その結果、ロッキングされたクッションパッド2が、所定の上昇位置まで上昇する。これによって、成形後のプレス品の上型51への食い付き等を回避しつつ、下型52から離型させることができる。このステップS15は、第1実施例と共通する。
【0083】
<本第3実施例のプレス機械のダイクッション装置の構造>
次に、本実施形態に係る第3実施例のプレス機械のダイクッション装置の構造を、図3図4図8図9を用いて説明する。図8に、本実施形態に係る第3実施例のプレス機械のダイクッション装置の全体構成図を示す。図9に、図8に示すプレス機械の拡大断面図を示す。ここで、図8図9は、クッションパッド2をスライド3の下死点近傍で一時停止させ、クッションエア給排気手段22及びクッションエア排気手段23に対してクッションエアの排気指示がなされている状態を表す。
【0084】
図3図4図8図9に示すように、本第3実施例のプレス機械のダイクッション装置10Cは、プレス機械1の下方に配置されたクッションパッド2と、クッションパッド2を上下動させるクッションシリンダ21と、クッションシリンダ21に対してクッションエアを供給又は排出させるクッションエア給排気手段22と、クッションパッド2をスライド3の下死点近傍で一時停止させるロッキング機構4Cと、を備えたプレス機械のダイクッション装置10Cである。ここでは、第1実施例と相違する点を中心に説明し、共通する構成は共通の符号を付して、原則としてその説明を割愛する。
【0085】
すなわち、本第3実施例のプレス機械のダイクッション装置10Cにおいて、ロッキング機構4Cには、スライド3の上下位置を検出するスライド位置検出手段41と、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段42と、クッションパッド2の下降位置に対する上昇高さをクッション高さとして検出するクッション高さ検出手段46と、スライド位置検出手段41とスライド3を駆動させるスライド駆動手段31とクッションエア給排気手段22とクッション高さ検出手段46とに接続されたロッキング制御手段43と、を備えている。
【0086】
なお、クッション高さ検出手段46は、例えば、クッションパッド2の側壁に本体が固定され、本体から上下方向に伸びる変位ロッド461がクッションシリンダ21から水平方向に延設したブラケット462に当接された直線型変位検出器を用いることができる。このクッション高さ検出手段46は、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置できる。また、クッション高さ検出手段46は、変位ロッド461のブラケット462に対する変位量をクッションパッド2の下降位置に対する上昇高さとして検出し、クッション高さ信号を出力する。クッション高さ検出手段46は、制御配線437を介してロッキング制御手段43と電気的に接続されている。なお、制御配線437には、クッション高さ検出手段46から送信されるクッション高さ信号を増幅する増幅器436が接続されている。また、増幅器436は、クッション高さ信号をデジタル情報として、連続的に出力している。
【0087】
また、ロッキング制御手段43は、クッション高さ検出手段46から受けるクッション高さ信号が零mmを示すとき、スライド駆動手段31に対してスライド停止信号を出力し、スライド位置検出手段41から受けるスライド位置信号がロッキング位置設定手段42で設定したスライド位置信号と一致したとき、クッションエア給排気手段22(及びクッションエア排気手段23)に対してクッションエアを排気させる排気信号を出力するように、プログラミングされている。
【0088】
これによって、クッションパッド2が下降位置に到着したことを確認して、スライド3を一時停止させることができる。また、ロッキング位置設定手段42で設定した任意のスライド位置に基づいて、クッションシリンダ21のクッションエアを排気して減圧させ、クッションパッド2の下降位置において、その上昇を停止させることができる。そのため、例えば、スライド3を通常のプレス速度(例えば、15~18spm程度)で下降させて、クッションパッド2の下降位置でスライド3を一時停止させると共に、クッションパッド2を下降位置でロッキングさせることができる。その結果、通常のプレス速度による成形タッチスピードを確保した状態で、クッションパッド2の下降位置における一時停止機能を安定して確保することができる。
【0089】
また、本第3実施例のプレス機械のダイクッション装置10Cにおいて、ロッキング機構4Cには、クッションシリンダ21のエア圧力を検出するクッション圧力検出手段44と、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段45と、を備え、ロッキング制御手段43は、クッション圧力検出手段44から受けるエア圧力信号とロッキング保持圧力設定手段45で設定したエア圧力信号とが一致したとき、スライド駆動手段31に対してスライド3を駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段22及びクッションエア排気手段23に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力することが好ましい。
【0090】
この場合、クッションシリンダ21のエア圧力がクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで低減したことを確認して、スライド3を上昇させることができる。そのため、スライド3が上昇する際、クッションパッド2も一緒に上昇することを回避でき、クッションパッド2のロッキングにおける一時停止精度をより一層向上させることができる。また、ロッキング制御手段43は、スライド駆動信号と排気停止信号とを同時に出力するので、クッションシリンダ21に対するクッションエアの過剰排気を抑制させることができる。そのため、クッションシリンダ21に対するクッションエアの再充填時間を短縮して、スライド3が上死点に到着後に再下降するまでの再起動時間を短縮させることができる。
【0091】
また、本第3実施例のプレス機械のダイクッション装置10Cにおいて、ロッキング制御手段43は、クッション高さ検出手段46から受けるクッション高さ信号が零mmを超過したとき、スライド駆動手段31に対してスライド停止信号を出力し、ロッキング保持圧力設定手段45において設定したクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力をクッション圧力検出手段44のエア圧力信号に基づいて再設定することが好ましい。
【0092】
この場合、次回のプレス成形からは、再設定したクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力において、スライド駆動手段31に対してスライド3を駆動させるスライド駆動信号を出力して、スライド3をより早期に上昇させることができる。そのため、スライド3の再起動時間をより一層短縮させることができる。
【0093】
また、本第3実施例のプレス機械のダイクッション装置10Cにおいて、ロッキング機構4Cには、クッション高さ検出手段46から受けるクッション高さ信号に基づいてクッション高さの一サイクル波形を表示するクッション高さ表示手段47を備え、ロッキング制御手段43は、クッションパッド2が上昇位置に到達したとき、クッション高さ表示手段47に対して一サイクル波形を表示する表示信号を出力することが好ましい。なお、上記クッション高さの一サイクル波形は、スライド3の下降に伴ってクッションパッド2が上昇位置から下降し、下降位置で一時停止し、上昇位置へ上昇して停止するまでのクッションパッド2の動作軌跡を画像表示するもので、過去の波形と比較可能に形成されていると良い。
【0094】
この場合、プレス成形過程におけるクッションパッド2の下降、上昇の動作軌跡を詳細に知ることができる。そのため、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を、より正確に把握することができ、例えば、クッションパッド2の上昇時における高さ異常、クッションパッド2の下降位置のバラツキ等を認識できるので、プレス成形品質とクッションパッド2の動作との因果関係を解析することができる。その結果、プレス成形品質の早期安定化に寄与できる。
【0095】
<本第3実施例におけるロッキング機構の動作方法>
次に、本第3実施例におけるロッキング機構の動作方法について、図8図10を用いて説明する。図10に、図8に示すプレス機械のダイクッション装置におけるロッキング機構の動作フロー図を示す。
【0096】
図8図10に示すように、はじめに、スライド3が上死点から下死点に向けて下降する(ステップS21)。次に、スライド3の下降に伴って、上型51が下型リング53を押圧し、下型リング53に押されたクッションパッド2が下降する(ステップS22)。以上のステップS21、S22は、第1実施例と共通する。
【0097】
次に、スライド3が、下死点近傍まで下降し、スライド位置検出手段41からのスライド角度信号とロッキング位置設定手段42で予め設定したスライド角度信号とが一致したとき、ロッキング制御手段43が、クッションエア排気指示を行う(ステップS23)。クッションエア排気指示は、クッションエア給排気手段22(及びクッションエア排気手段23)に対して行う。この段階では、スライド3の停止指示は出力されていないが、クッションシリンダ21のエア圧力は、クッションエアの排気によって、スライド3からの押圧力とクッションパッド2の自重による慣性力等と均衡するエア圧力まで低下する。
【0098】
次に、クッション高さ検出手段46からのクッション高さ信号が0mmに達したとき、ロッキング制御手段43がスライド駆動手段31に対してスライド停止指示を行う(ステップS24)。これによって、クッションパッド2の下降位置において、スライド3を停止させる。そして、スライド3の停止に伴い、クッションパッド2を停止させる。すなわち、ロッキング位置設定手段42で設定した任意のスライド位置に基づいて、スライド3の停止より先行して、クッションシリンダ21のクッションエアを排気して減圧させることによって、クッションパッド2の下降位置において、スライド3とクッションパッド2とを同時に停止させることができる。
【0099】
次に、クッション高さ信号が0mmより上昇したか否かを確認(ステップS25)し、上昇しない場合には、クッション圧力検出手段44からのエア圧力信号とロッキング保持圧力設定手段45で予め設定したエア圧力信号とが一致したとき、ロッキング制御手段43は、スライド駆動指示とクッションエア排気停止指示とを行う(ステップS26)。これによって、クッションシリンダ21のエア圧力がクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで低減したことを確認して、スライド3を上昇させることができる。また、クッションシリンダ21に対するクッションエアの過剰排気を抑制させることができる。
【0100】
次に、スライド3が上死点に到達したとき、又はその後に、ロッキング制御手段43が、クッションエア供給指示を行う(ステップS28)。その結果、ロッキングされたクッションパッド2が、所定の上昇位置まで上昇する。これによって、成形後のプレス品の上型51への食い付き等を回避しつつ、下型52から離型させることができる。このステップS28は、第1実施例と共通する。
【0101】
なお、クッション高さ信号が0mmより上昇したか否かを確認(ステップS25)し、上昇した場合には、直ちにクッションエア排気停止指示を行う。そして、その時のクッション圧力検出手段44のエア圧力信号に基づいてロッキング保持圧力設定手段45で設定したエア圧力を再設定する(S27)。ロッキング保持圧力設定手段45で設定したエア圧力の再設定の方法は、ロッキング制御手段43による自動設定でも、オペレータによる手動設定でも良い。その後、ステップS25に戻る。これによって、次回のプレス成形からは、再設定したクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力において、スライド駆動信号を出力して、スライド3をより早期に上昇させることができる。
【0102】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るプレス機械のダイクッション装置10、10Bによれば、ロッキング機構4、4Bには、スライド3の上下位置を検出するスライド位置検出手段41と、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段42と、スライド位置検出手段41とスライド3を駆動させるスライド駆動手段31とクッションエア給排気手段22とに接続されたロッキング制御手段43と、を備え、ロッキング制御手段43は、スライド位置検出手段41から受けるスライド位置信号が、ロッキング位置設定手段42で設定したスライド位置信号と一致したとき、スライド駆動手段31に対してスライド3を停止させるスライド停止信号と、クッションエア給排気手段22に対してクッションエアを排気させる排気信号とを出力するので、ロッキング位置設定手段42で設定した任意のスライド位置に基づいて、スライド3を一時停止させると共に、スライド3の一時停止中にクッションシリンダ21のクッションエアを排気して減圧させ、クッションパッド2の上昇を停止させることができる。そのため、例えば、スライド3を通常のプレス速度(例えば、15~18spm程度)で下降させて、下死点近傍の任意の位置でスライド3を一時停止させ、クッションパッド2をロッキングさせることができる。その結果、通常のプレス速度による成形タッチスピードを確保した状態で、クッションパッド2の一時停止機能を確保することができる。
【0103】
また、ロッキング機構4、4Bは、スライド位置検出手段41とロッキング位置設定手段42とロッキング制御手段43とで構成し、スライド位置検出手段41とロッキング位置設定手段42とロッキング制御手段43は、いずれも電気的制御手段等で構成されているので、設置スペース上の問題も少ない。そのため、既設のプレス機械のダイクッション装置に、ロッキング機構4、4Bを簡単に設置できる。
【0104】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッド2の一次停止機能を確保しやすいロッキング機構4、4Bを備えたプレス機械のダイクッション装置10、10Bを提供することができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、ロッキング制御手段43は、スライド停止信号を出力してから所定時間経過後に、スライド駆動手段31に対してスライド3を駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段22に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力するので、スライド3が停止してから再駆動するまでの所定時間中に、クッションシリンダ21のクッションエアを所定量排気して、クッションパッド2をロッキングさせ、クッションパッド2がロッキングされている間に、スライド3を上死点まで上昇させることができる。また、スライド3を上死点まで上昇させるときには、クッションエアの排気を停止させることができる。そのため、ロッキング制御手段43は、所定時間をカウントするタイマー機能を用いるだけで、スライド3の上昇タイミングを簡単に設定でき、また、スライド3の上昇中におけるクッションエアの無駄な排気を阻止することができる。
【0106】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、簡単なタイマー機能を用いてクッションパッド2の一時停止機能を確保し、クッションエアの無駄な排気を阻止するロッキング機構4、4Bを備えたプレス機械のダイクッション装置10、10Bを提供することができる。
【0107】
また、本実施形態によれば、ロッキング制御手段43がスライド停止信号を出力してからスライド駆動信号を出力するまでの所定時間は、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力までクッションシリンダ21のクッションエアを排気する時間であるので、クッションパッド2をロッキングさせるために、クッションシリンダ21から排気するクッションエアの排気量を最小化できると共に、クッションパッド2をロッキング後に上昇させるために、クッションシリンダ21に供給するクッションエアの供給量を最小化させることができる。また、クッションパッド2をロッキングさせるために、クッションシリンダ21から排気するクッションエアの排気量を最小化できるので、クッションパッド2のロッキングに伴い、スライド3を一時停止させる時間を最小化させることができる。
【0108】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッド2のロッキングに必要なクッションエアの排出量と、スライド3の一時停止時間を最小化できるロッキング機構4を備えたプレス機械のダイクッション装置10を提供することができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、ロッキング機構4Bには、クッションシリンダ21のエア圧力を検出するクッション圧力検出手段44と、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段45と、を備え、ロッキング制御手段43は、クッション圧力検出手段44からのエア圧力信号とロッキング保持圧力設定手段45で設定したエア圧力信号とが一致したとき、スライド駆動手段31に対してスライド3を駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段22に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力するので、クッションシリンダ21のエア圧力がクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで低減したことを確認して、スライド3を上昇させることができる。そのため、スライド3が上昇する際、クッションパッド2も一緒に上昇することを確実に回避でき、クッションパッド2のロッキングにおける一時停止精度をより一層向上させることができる。また、ロッキング制御手段43は、スライド駆動信号と排気停止信号とを同時に出力するので、クッションシリンダ21に対するクッションエアの過剰排気を抑制させることができる。そのため、クッションシリンダ21に対するクッションエアの再充填時間を短縮して、スライド3が上死点に到着後に再下降するまでの再起動時間を短縮させることができる。
【0110】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッド2の一時停止精度を向上させつつ、スライド3の再起動時間を短縮させ得るロッキング機構4Bを備えたプレス機械のダイクッション装置10Bを提供することができる。
【0111】
また、本実施形態によれば、ロッキング機構4Cには、スライド3の上下位置を検出するスライド位置検出手段41と、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置を予め設定するロッキング位置設定手段42と、クッションパッド2の下降位置に対する上昇高さをクッション高さとして検出するクッション高さ検出手段46と、スライド位置検出手段41とスライド3を駆動させるスライド駆動手段31とクッションエア給排気手段22とクッション高さ検出手段46とに接続されたロッキング制御手段43と、を備え、ロッキング制御手段43は、クッション高さ検出手段46から受けるクッション高さ信号が零mmを示すとき、スライド駆動手段31に対してスライド停止信号を出力し、スライド位置検出手段41から受けるスライド位置信号がロッキング位置設定手段42で設定したスライド位置信号と一致したとき、クッションエア給排気手段22に対してクッションエアを排気させる排気信号を出力するので、クッションパッド2が下降位置に到着したことを確認して、スライド3を一時停止させることができる。また、ロッキング位置設定手段42で設定した任意のスライド位置に基づいて、クッションシリンダ21のクッションエアを排気して減圧させ、クッションパッド2の下降位置において、その上昇を停止させることができる。そのため、例えば、スライド3を通常のプレス速度(例えば、15~18spm程度)で下降させて、クッションパッド2の下降位置でスライド3を一時停止させると共に、クッションパッド2を下降位置でロッキングさせることができる。その結果、通常のプレス速度による成形タッチスピードを確保した状態で、クッションパッド2の下降位置における一時停止機能を安定して確保することができる。
【0112】
また、ロッキング機構4Cは、スライド位置検出手段41とロッキング位置設定手段42とクッション高さ検出手段46とロッキング制御手段43とで構成し、スライド位置検出手段41とロッキング位置設定手段42とロッキング制御手段43は、いずれも電気的制御手段等で構成されているので、設置スペース上の問題も少ない。また、クッション高さ検出手段46は、例えば、クッションパッド2の側壁とクッションシリンダ21との間に簡単に設置することができる。そのため、既設のプレス機械のダイクッション装置に、ロッキング機構4Cを簡単に設置できる。
【0113】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッド2の下降位置における一時停止機能を安定して確保しやすいロッキング機構4Cを備えたプレス機械のダイクッション装置10Cを提供することができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、ロッキング機構4Cには、クッションシリンダ21のエア圧力を検出するクッション圧力検出手段44と、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を予め設定するロッキング保持圧力設定手段45と、を備え、ロッキング制御手段43は、クッション圧力検出手段44から受けるエア圧力信号とロッキング保持圧力設定手段45で設定したエア圧力信号とが一致したとき、スライド駆動手段31に対してスライド3を駆動させるスライド駆動信号を出力し、クッションエア給排気手段22に対してクッションエアの排気を停止させる排気停止信号を出力するので、クッションシリンダ21のエア圧力がクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力まで低減したことを確認して、スライド3を上昇させることができる。そのため、スライド3が上昇する際、クッションパッド2も一緒に上昇することを回避でき、クッションパッド2のロッキングにおける一時停止精度をより一層向上させることができる。また、ロッキング制御手段43は、スライド駆動信号と排気停止信号とを同時に出力するので、クッションシリンダ21に対するクッションエアの過剰排気を抑制させることができる。そのため、クッションシリンダ21に対するクッションエアの再充填時間を短縮して、スライド3が上死点に到着後に再下降するまでの再起動時間を短縮させることができる。
【0115】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッド2の一時停止精度を向上させつつ、スライド3の再起動時間を短縮させ得るロッキング機構4Cを備えたプレス機械のダイクッション装置10Cを提供することができる。
【0116】
また、本実施形態によれば、ロッキング制御手段43は、クッション高さ検出手段46から受けるクッション高さ信号が零mmを超過したとき、スライド駆動手段31に対してスライド停止信号を出力し、ロッキング保持圧力設定手段45において設定したクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力をクッション圧力検出手段44のエア圧力信号に基づいて再設定するので、次回のプレス成形からは、再設定したクッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力において、スライド駆動手段31に対してスライド3を駆動させるスライド駆動信号を出力して、スライド3をより早期に上昇させることができる。そのため、スライド3の再起動時間をより一層短縮させることができる。
【0117】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力でスライド3を上昇させて、スライド3の再起動時間をより一層短縮させ得るロッキング機構4Cを備えたプレス機械のダイクッション装置10Cを提供することができる。
【0118】
また、本実施形態によれば、ロッキング機構4Cには、クッション高さ検出手段46から受けるクッション高さ信号に基づいてクッション高さの一サイクル波形を表示するクッション高さ表示手段47を備え、ロッキング制御手段43は、クッションパッド2が上昇位置に到達したとき、クッション高さ表示手段47に対して一サイクル波形を表示する表示信号を出力するので、プレス成形過程におけるクッションパッド2の下降、上昇の動作軌跡を詳細に知ることができる。そのため、クッションパッド2のロッキング状態を保持し得る上限のエア圧力を、より正確に把握することができ、例えば、クッションパッド2の上昇時における高さ異常、クッションパッド2の下降位置のバラツキ等を認識できるので、プレス成形品質とクッション動作との因果関係を解析することができる。その結果、プレス成形品質の早期安定化に寄与できる。
【0119】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッド2の動作軌跡を把握してプレス成形品質をより短期間で確保しやすいロッキング機構4Cを備えたプレス機械のダイクッション装置10Cを提供することができる。
【0120】
また、本実施形態によれば、ロッキング機構4、4B、4Cには、クッションシリンダ21に対してクッションエアを排出させるクッションエア排気手段23を備え、ロッキング制御手段43は、スライド位置検出手段41から受けるスライド位置信号が、ロッキング位置設定手段42で設定したスライド位置信号と一致したとき、クッションエア排気手段23に対してクッションエアを排気させる排気信号を出力するので、クッションエアの排気を、クッションエア給排気手段22とクッションエア排気手段23の両方から同時に行うことができる。そのため、クッションパッド2のロッキングに要するクッションエアの排出時間を短縮させることができる。また、クッションエア排気手段23は、配管及びバルブ等で構成されているので、設置スペース上の問題も少ない。そのため、既設のプレス機械のダイクッション装置に、クッションエア排気手段23を簡単に設置できる。
【0121】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、クッションパッド2の一時停止機能をより短時間で確保しやすいロッキング機構4、4B、4Cを備えたプレス機械のダイクッション装置10、10B、10Cを提供することができる。
【0122】
また、本実施形態によれば、スライド位置検出手段41では、スライド3の上下位置としてスライド駆動手段31の駆動モータ311に連動する駆動ギア312を介してスライド角度を検出し、ロッキング位置設定手段42では、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置をスライド角度によって設定するので、既設のプレス機械が備えるスライド角度の読み取り機のスライド角度信号を流用することができ、特別の検出手段を追加することなく、スライド3の上下位置情報として、簡単にスライド角度を取得できる。また、ロッキング位置設定手段42では、クッションパッド2をロッキングさせるときのスライド位置をスライド角度によって設定するので、既設のプレス機械の操作盤でクッションパッド2をロッキングさせるときのスライド角度を簡単に設定することができる。
【0123】
よって、本実施形態によれば、既設のプレス機械のダイクッション装置に簡単に設置でき、より簡単に取得、設定できるスライド角度信号を用いてクッションパッド2の一時停止機能を確保するロッキング機構4、4B、4Cを備えたプレス機械のダイクッション装置10、10B、10Cを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、プレス機械のクッションパッドをスライドの下死点近傍で一時停止させるロッキング機構を備えたプレス機械のダイクッション装置として利用できる。
【符号の説明】
【0125】
1 プレス機械
2 クッションパッド
3 スライド
4、4B、4C ロッキング機構
10、10B、10C ダイクッション装置
21 クッションシリンダ
22 クッションエア給排気手段
23 クッションエア排気手段
31 スライド駆動手段
41 スライド位置検出手段
42 ロッキング位置設定手段
43 ロッキング制御手段
44 クッション圧力検出手段
45 ロッキング保持圧力設定手段
46 クッション高さ検出手段
47 クッション高さ表示手段
311 駆動モータ
312 駆動ギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12