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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/028 20160101AFI20240402BHJP
   H02P 21/22 20160101ALI20240402BHJP
【FI】
H02P29/028
H02P21/22
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021040945
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022140897
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 裕樹
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-016102(JP,A)
【文献】国際公開第2018/087916(WO,A1)
【文献】特開2005-057817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/028
H02P 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのd軸電流およびq軸電流を測定し、
d軸電流測定値とd軸電流指令値との差異、およびq軸電流測定値とq軸電流指令値との差異に基づいて、d軸制御値およびq軸制御値を求め、
前記d軸制御値および前記q軸制御値に基づいて前記モータを制御する、モータ制御部と、
前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれの電気2次成分であって、前記モータの電気回転周波数の2倍の周波数成分である電気2次成分に基づいて、前記モータが備える巻線の異常としてレアショートを検出する検出部と、
を備え
前記検出部は、
前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれについて、前記電気2次成分の振幅を求める振幅計算器と、
前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれについて求められた前記電気2次成分の振幅に基づいて、前記レアショートを検出する異常検出器と、
を備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御装置において、
前記異常検出器は、
前記d軸制御値および前記q軸制御値の各振幅に基づくdq軸振幅と、前記d軸制御値の前記電気2次成分および前記q軸制御値の前記電気2次成分の各振幅に基づく2次振幅との相違に基づいて、前記レアショートを検出することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置において、
前記異常検出器は、
前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれについて求められた前記電気2次成分の振幅の大きさおよび極性に基づいて、前記レアショートが生じた巻線の相を特定することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ制御装置において、
前記異常検出器は、
前記レアショートとしてターン間短絡が生じた巻線の相を特定することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載のモータ制御装置において、
前記異常検出器は、
前記レアショートとして相間短絡が生じた巻線の相を特定することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずか1項に記載のモータ制御装置において、
前記検出部は、
前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれから前記電気2次成分を抽出するフィルタを備え、
前記振幅計算器は、
前記フィルタによって抽出された各前記電気2次成分から、各前記電気2次成分の振幅を求めることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のモータ制御装置において、
前記レアショートが検出されたときに、前記モータ制御部は、前記モータが発生するトルクを抑制する処理を実行することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のモータ制御装置において、
前記レアショートが検出されたときに、前記モータ制御部は、ユーザに注意を促す処理を実行することを特徴とするモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置に関し、特に、モータが備える巻線の異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等の電動自動車が広く用いられている。電気自動車はモータを備えており、モータの動力によって力行する。ハイブリッド自動車はモータの他にエンジンを備えており、モータの動力およびエンジンの動力を適宜組み合わせて力行する。一般に、モータとしては発電性能が設計事項として考慮されたモータジェネレータが用いられる。モータジェネレータは、電動自動車を力行させる他、回生制動によって電動自動車を制動し、回生制動による発電電力によってモータジェネレータ駆動用の電池を充電する。本明細書における「モータ」の用語には、モータジェネレータの概念が含まれる。
【0003】
以下の特許文献1には、本願発明に関連する技術として、誘導電動機の劣化診断法が記載されている。この方法では、誘導電動機に流れる相電流の高調波成分に基づいて、誘導電動機の劣化度合いが診断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-75516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動自動車では、衝撃等によってモータの巻線の状態が変化することがある。これによって、モータにおける巻線が短絡する等の異常が生じることがある。このような異常を検出するため、電流センサを追加して巻線に流れる電流を検出することが考えられる。しかし、電流センサの追加によって部品点数が増加するという問題が生ずる。
【0006】
本発明の目的は、モータが備える巻線の異常を簡単な構成によって検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、モータのd軸電流およびq軸電流を測定し、d軸電流測定値とd軸電流指令値との差異、およびq軸電流測定値とq軸電流指令値との差異に基づいて、d軸制御値およびq軸制御値を求め、前記d軸制御値および前記q軸制御値に基づいて前記モータを制御する、モータ制御部と、前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれの電気2次成分であって、前記モータの電気回転周波数の2倍の周波数成分である電気2次成分に基づいて、前記モータが備える巻線の異常としてレアショートを検出する検出部と、を備え、前記検出部は、前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれについて、前記電気2次成分の振幅を求める振幅計算器と、前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれについて求められた前記電気2次成分の振幅に基づいて、前記レアショートを検出する異常検出器と、を備えることを特徴とする。
【0008】
望ましくは、前記異常検出器は、前記d軸制御値および前記q軸制御値の各振幅に基づくdq軸振幅と、前記d軸制御値の前記電気2次成分および前記q軸制御値の前記電気2次成分の各振幅に基づく2次振幅との相違に基づいて、前記レアショートを検出する。
【0009】
望ましくは、前記異常検出器は、前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれについて求められた前記電気2次成分の振幅の大きさおよび極性に基づいて、前記レアショートが生じた巻線の相を特定する。望ましくは、前記異常検出器は、前記レアショートとしてターン間短絡が生じた巻線の相を特定する。望ましくは、前記異常検出器は、前記レアショートとして相間短絡が生じた巻線の相を特定する。
【0010】
望ましくは、前記検出部は、前記d軸制御値および前記q軸制御値のそれぞれから電気2次成分を抽出するフィルタを備え、前記振幅計算器は、前記フィルタによって抽出された各電気2次成分から、各電気2次成分の振幅を求める。
【0011】
望ましくは、前記検出部は、前記巻線の異常としてレアショートを検出する。
【0012】
望ましくは、前記巻線の異常が検出されたときに、前記モータ制御部は、前記モータが発生するトルクを抑制する処理を実行する。
【0013】
望ましくは、前記巻線の異常が検出されたときに、前記モータ制御部は、ユーザに注意を促す処理を実行する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータが備える巻線の異常を簡単な構成によって検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】モータ制御システムの構成を示す図である。
図2】コントローラの構成を示す図である。
図3】U相巻線にターン間短絡が生じたときのシミュレーション結果である。
図4】V相巻線にターン間短絡が生じたときのシミュレーション結果である。
図5】W相巻線にターン間短絡が生じたときのシミュレーション結果である。
図6】ターン間短絡が生じたときの振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)をAd2h-Aq2h平面上に示した図である。
図7】トルク指令値が変化したときのシミュレーション結果を示す図である。
図8】モータの回転数が変化したときのシミュレーション結果を示す図である。
図9】相間短絡が生じた巻線の相を特定する原理を示す図である。
図10】相間短絡が生じた巻線の相を特定する原理を示す図である。
図11】コントローラが実行するトルク制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
各図を参照して本発明の各実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の事項については同一の符号を付して、その説明を簡略化する。本明細書における「上」「下」等の方向を示す用語は図面における方向を示す。これらの用語は説明の便宜上のものであり、各構成要素を設置する際の姿勢を限定するものではない。
【0017】
図1には、本発明の実施形態に係るモータ制御システム100の構成が示されている。モータ制御システム100は、電池10、インバータ12、モータ16、電流センサ26、レゾルバ18およびコントローラ24を備えている。ここでは、モータ制御システム100が電動自動車に搭載され、モータ16が電動自動車を駆動する例について説明する。
【0018】
モータ制御システム100のうち、インバータ12、電流センサ26、レゾルバ18およびコントローラ24は、モータ16を制御するモータ制御装置を構成する。インバータ12は、U相スイッチングアーム14u、V相スイッチングアーム14vおよびW相スイッチングアーム14wを備えている。各スイッチングアームは、直列接続された上スイッチング素子SPおよび下スイッチング素子SLを備えている。各スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transister)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられてよい。スイッチング素子としてIGBTが用いられる場合、2つのスイッチング素子が直列接続されるとは、一方のエミッタ電極に他方のコレクタ電極が接続されることをいう。スイッチング素子としてMOSFETが用いられる場合、2つのスイッチング素子が直列接続されるとは、一方のソース電極に他方のドレイン電極が接続されることをいう。
【0019】
スイッチング素子としてIGBTが用いられる場合、IGBTのエミッタ電極にアノード電極が接続され、コレクタ電極にカソード電極が接続されたダイオードをスイッチング素子が備える。スイッチング素子としてMOSFETが用いられる場合、MOSFETのソース電極にアノード電極が接続され、ドレイン電極にカソード電極が接続されたダイオードをスイッチング素子が備える。
【0020】
U相スイッチングアーム14u、V相スイッチングアーム14vおよびW相スイッチングアーム14wは並列接続されている。すなわち、U相スイッチングアーム14u、V相スイッチングアーム14vおよびW相スイッチングアーム14wの上端は共通に接続され、U相スイッチングアーム14u、V相スイッチングアーム14vおよびW相スイッチングアーム14wの下端もまた共通に接続されている。各スイッチングアームの上端は電池10の正極端子に接続され、各スイッチングアームの下端は電池10の負極端子に接続されている。
【0021】
U相スイッチングアーム14uにおける上スイッチング素子SPおよび下スイッチング素子SLの直列接続点には、モータ16のU相端子20uが接続されている。V相スイッチングアーム14vにおける上スイッチング素子SPおよび下スイッチング素子SLの直列接続点には、モータ16のV相端子20vが接続されている。W相スイッチングアーム14wにおける上スイッチング素子SPおよび下スイッチング素子SLの直列接続点には、モータ16のW相端子20wが接続されている。
【0022】
モータ16は、U相巻線22u、V相巻線22vおよびW相巻線22wを備えている。図1に示されている例では、U相巻線22u、V相巻線22vおよびW相巻線22wについては、それぞれの一端が中性点で接続されたY結線がされている。U相巻線22u、V相巻線22vおよびW相巻線22wのそれぞれの他端には、U相端子20u、V相端子20vおよびW相端子20wが設けられている。
【0023】
電流センサ26は、U相端子20u、V相端子20vおよびW相端子20wに流れる電流を検出し、U相電流検出値Iu、V相電流検出値IvおよびW相電流検出値Iwをコントローラ24に出力する。レゾルバ18は、モータ16の機械角θmを検出し、機械角θmをコントローラ24に出力する。機械角θmは、モータ16のロータの実際の回転角度を示す値である。コントローラ24は機械角θmを電気角θに変換する。電気角θは、ロータの周りの電磁界的な現象の1周期を360°に換算した角度である。なお、レゾルバ18は電気角θをコントローラ24に出力してもよい。
【0024】
コントローラ24は、走行状態や運転操作に応じたトルク指令値に基づいてモータ16を制御する。すなわち、コントローラ24は、トルク指令値に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値を求めると共に、U相電流検出値Iu、V相電流検出値IvおよびW相電流検出値Iwに基づいてd軸電流測定値およびq軸電流測定値を求める。コントローラ24は、d軸電流測定値とd軸電流指令値との差異、q軸電流測定値とq軸電流指令値との差異、および電気角θに基づいてインバータ12を制御し、インバータ12はモータ16に印加される電圧をスイッチングする。
【0025】
図2にはコントローラ24の構成が示されている。コントローラ24は、モータ制御部40および検出部42を備えている。モータ制御部40は、三相/dq軸変換器52、電流指令生成器54、d軸減算器56d、q軸減算器56q、d軸PI演算器58d、q軸PI演算器58q、dq軸/三相変換器60およびPWM制御器62を備えている。コントローラ24は、プログラムを実行するプロセッサによって構成されてよい。この場合プロセッサは、プログラムを実行することで、三相/dq軸変換器52、電流指令生成器54、d軸減算器56d、q軸減算器56q、d軸PI演算器58d、q軸PI演算器58q、dq軸/三相変換器60およびPWM制御器62を構成する。
【0026】
三相/dq軸変換器52は、U相電流検出値Iu、V相電流検出値IvおよびW相電流検出値Iwを、次の(数1)および(数2)に従ってd軸電流測定値Iおよびq軸電流測定値Iに変換する。
【0027】
【数1】
【0028】
【数2】
【0029】
電流指令生成器54は、走行状態や運転操作に応じたトルク指令値Tに基づいて、d軸電流指令値I およびq軸電流指令値I を求める。d軸減算器56dは、d軸電流指令値I からd軸電流測定値Iを減算したd軸誤差を求め、q軸減算器56qは、q軸電流指令値I からq軸電流測定値Iを減算したq軸誤差を求める。d軸誤差は、d軸電流測定値Iとd軸電流指令値I との差異を示し、q軸誤差は、q軸電流測定値Iとq軸電流指令値I との差異を示す。d軸PI演算器58dは、d軸誤差に対して比例積分を行ってd軸制御値vを求め、q軸PI演算器58qは、q軸誤差に対して比例積分を行ってq軸制御値vを求める。
【0030】
dq軸/三相変換器60は、d軸制御値vおよびq軸制御値vをU相電圧指令値Vu、V相電圧指令値VvおよびW相電圧指令値Vwに変換し、PWM制御器62に出力する。
【0031】
U相電圧指令値Vu、V相電圧指令値VvおよびW相電圧指令値Vwは、それぞれ、U相スイッチングアーム14u、V相スイッチングアーム14vおよびW相スイッチングアーム14wをPWM(Pulse Width Modulation)制御するための指令値である。
【0032】
PWM制御器62は、U相電圧指令値Vuに基づいて、U相スイッチングアーム14uの上スイッチング素子SPおよび下スイッチング素子SLに対する制御信号UPおよびULを生成する。制御信号UPは、U相電圧指令値Vuが大きい程、パルス幅が大きくなる矩形波信号であってよい。制御信号ULは、制御信号UPのハイ/ローを反転した信号であってよい。制御信号UPがハイのときにU相スイッチングアーム14uの上スイッチング素子SPはオンになり、制御信号UPがローのときにU相スイッチングアーム14uの上スイッチング素子SPはオフになる。同様に、制御信号ULがハイのときにU相スイッチングアーム14uの下スイッチング素子SLはオンになり、制御信号ULがローのときにU相スイッチングアーム14uの下スイッチング素子SLはオフになる。
【0033】
同様の処理によって、PWM制御器62は、V相電圧指令値Vvに基づいて、V相スイッチングアーム14vの上スイッチング素子SPおよび下スイッチング素子SLに対する制御信号VPおよびVLを生成する。PWM制御器62は、W相電圧指令値Vwに基づいて、W相スイッチングアーム14wの上スイッチング素子SPおよび下スイッチング素子SLに対する制御信号WPおよびWLを生成する。各スイッチング素子は、制御信号がハイであるときにオンになり、制御信号がローであるときにオフになる。
【0034】
例えば、制御信号VPおよびVLは、それぞれ、制御信号UPおよびULに対して位相が120°遅れた信号であり、制御信号WPおよびWLは、それぞれ、制御信号VPおよびVLに対して位相が120°遅れた信号である。
【0035】
モータ制御部40によるこのような制御によって、モータ16のU相巻線22u、V相巻線22vおよびW相巻線22wには、トルク指令値Tに応じたU相電流iu、V相電流ivおよびW相電流iwが流れ、モータ16はトルク指令値Tに応じたトルクを発生する。
【0036】
次に、検出部42について説明する。検出部42は、U相巻線22u、V相巻線22vおよびW相巻線22wのいずれかの異常としてレアショート(レイヤーショートとも称される)を検出する。レアショートには、異なる相の巻線同士が短絡するか、あるいは異なる相の巻線同士の絶縁抵抗が小さくなる相間短絡がある。モータの構造には、複数相の巻線のうちの1つの相の巻線を構成する導線と、他の相の巻線を構成する導線とが隣接するものがある。通常、隣接する導線同士は絶縁されているが、機械的または熱的なストレスによって絶縁抵抗が小さくなり、相間短絡の状態が引き起こされることがある。
【0037】
また、レアショートには、1つの相の巻線を構成する導線における異なる箇所同士が短絡するか、あるいは1つの相の巻線を構成する導線における異なる箇所同士の絶縁抵抗が小さくなるターン間短絡がある。モータの構造には、1つの相の巻線を構成する導線が特定の経路を複数回に亘って周回し、1周するごとに導線が重ねられたものがある。通常、導線が重なる区間は絶縁されているが、機械的または熱的なストレスによって絶縁抵抗が小さくなり、ターン間短絡の状態が引き起こされることがある。
【0038】
このようなレアショートが生じた場合、モータ16が十分な性能を発揮することが困難となることがある。そこで、検出部42は、以下に説明する構成および処理によってレアショートを検出する。PWM制御が行われているモータでレアショートが生じると、d軸制御値vおよびq軸制御値vには、電気角θの2倍の回転成分が生ずる。以下に説明するように、検出部42は、電気角θの2倍の回転成分の検出によってレアショートを検出する。
【0039】
検出部42は、d軸フィルタ64d、q軸フィルタ64q、振幅計算器66およびレアショート検出器68(異常検出器)を備えている。d軸フィルタ64dおよびq軸フィルタ64qは、電気回転周波数(dθ/dt/2π)の2倍を中心周波数とするバンドパスフィルタであってよい。d軸フィルタ64dおよびq軸フィルタ64qは、ディジタル演算に基づくフィルタ処理を実行してよい。電気回転周波数は、電気角θの時間微分値に基づいてコントローラ24が求めてもよい。d軸フィルタ64dおよびq軸フィルタ64qの中心周波数は、電気回転周波数の変化に応じて変化する。
【0040】
d軸フィルタ64dは、d軸制御値vに含まれる電気回転周波数の2倍の成分(以下、d軸電気2次成分vd2という)を抽出し、振幅計算器66に出力する。q軸フィルタ64qは、q軸制御値vに含まれる電気回転周波数の2倍の成分(以下、q軸電気2次成分vq2という)を抽出し、振幅計算器66に出力する。
【0041】
振幅計算器66は、次の(数3)に従って、d軸電気2次成分vd2の振幅Ad2hおよびq軸電気2次成分vq2の振幅Aq2hを求め、レアショート検出器68に出力する。以下の説明では、d軸電気2次成分vd2の振幅Ad2hをd軸2次振幅Ad2hといい、q軸電気2次成分vq2の振幅Aq2hをq軸2次振幅Aq2hという。
【0042】
【数3】
【0043】
ただし、θ2hは電気角θの2倍の極性を反転した値(θ2h=-2θ)である。(数3)の右辺の行列は、dq平面において電気角2θで負方向に回転する直交座標系で見た値に、d軸電気2次成分vd2およびq軸電気2次成分vq2を変換する回転行列である。レアショート検出器68は、次の(数4)に従ってdq軸振幅Adqを求め、(数5)に従って2次振幅A2hを求める。
【0044】
【数4】
【0045】
【数5】
【0046】
レアショート検出器68は、次の(数6)に従ってレアショート評価値ηを求める。
【0047】
【数6】
【0048】
レアショート検出器68は、レアショート評価値ηが予め定められた閾値を超えたときは、レアショートが生じたものと判定し、ユーザに注意を促す処理を実行する。ユーザに注意を促す処理は、車室等に設けられたインジケータを表示する処理、車室に設けられた音響装置から警告音を発する処理等を含んでよい。また、レアショート検出器68は、レアショートが生じたと判定したときに、後述のように、トルク指令値Tを制限し、モータ16のトルクを抑制する処理を実行してもよい。
【0049】
レアショート検出器68は、次のように、レアショートが生じた巻線の相を特定してもよい。ここでは、レア-ショートとしてターン間短絡が生じていることが明らかな場合、または、ターン間短絡が生じている可能性が高い場合にレアショート検出器68が実行する処理の例について説明する。レアショート検出器68は、d軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2hのそれぞれの大きさおよび極性に基づいて、ターン間短絡が生じた巻線の相を特定する。
【0050】
図3図5は、ターン間短絡が生じた巻線の相を特定する原理を説明する図である。図3図5には、それぞれ、U相巻線22u、V相巻線22vおよびW相巻線22wにターン間短絡が生じたときのシミュレーション結果が示されている。各図の横軸は時間を示す。図3図5のそれぞれにおける(a)は、モータ16に流れる三相電流(U相電流iu、V相電流ivおよびW相電流iw)を示し、(b)はdq軸制御値(d軸制御値vおよびq軸制御値v)を示している。図3図5における(c)はdq軸電気2次成分(d軸電気2次成分vd2およびq軸電気2次成分v2)を示し、(d)は、dq軸2次振幅(d軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2h)を示している。
【0051】
図6は、横軸にAd2h軸を取り、縦軸にAq2h軸を取ったAd2h-Aq2h平面上に、U相巻線22u、V相巻線22vおよびW相巻線22wにそれぞれターン間短絡が生じたときの振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)を示したものである。
【0052】
図3(d)および図6に示されているように、U相巻線22uにターン間短絡が生じているときは、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)はAq2h軸の下半分上にある。図4(d)および図6に示されているように、V相巻線22vにターン間短絡が生じているときは、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)は第2象限にある。図5(d)および図6に示されているように、W相巻線22wにターン間短絡が生じているときは、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)は第1象限にある。
【0053】
図3図6に示されているように、ターン間短絡が生じたときのベクトル(Ad2h,Aq2h)には、ターン間短絡が生じた相に応じた一定の変化傾向がある。図3図6では、d軸制御値vを0に近付けまたは一致させる制御が示されたが、d軸制御値vを0としない制御を実行する場合も、ベクトル(Ad2h,Aq2h)には、ターン間短絡が生じた相に応じた一定の変化傾向がある。
【0054】
したがって、Ad2h-Aq2h平面における振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)の位置に基づいて、レアショート検出器68は、U相巻線22u、V相巻線22vおよびW相巻線22wのうちのいずれの巻線にターン間短絡が生じたかを特定することができる。
【0055】
すなわち、レアショート検出器68は、d軸2次振幅Ad2hが0であり、q軸2次振幅Aq2hが負であるときは、U相巻線22uにターン間短絡が生じたと判定する。また、レアショート検出器68は、d軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2hのいずれもが正の値であるときは、W相巻線22wにターン間短絡が生じたと判定する。また、レアショート検出器68は、d軸2次振幅Ad2hが負の値であり、q軸2次振幅Aq2hが正の値であるときは、V相巻線22vにターン間短絡が生じたと判定する。
【0056】
d2h-Aq2h平面を用いて説明すると、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)がAq2h軸の下半分上にあるときは、U相巻線22uにターン間短絡が生じたと判定する。また、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)が第1象限にあるときは、W相巻線22wにターン間短絡が生じたと判定する。また、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)が第2象限にあるときは、V相巻線22vにターン間短絡が生じたと判定する。
【0057】
この判定には、所定の誤差範囲が考慮されてもよい。すなわち、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)がAq2h軸の下半分上、またはAq2h軸に対するベクトル角が所定の誤差範囲内であるときは、U相巻線22uにターン間短絡が生じたと判定する また、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)が、第1象限または所定の許容範囲で第1象限から外れた位置にあるときは、W相巻線22wにターン間短絡が生じたと判定する。また、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)が第2象限または所定の許容範囲で第2象限から外れた位置にあるときは、V相巻線22vにターン間短絡が生じたと判定する。
【0058】
図7(a)~図7(e)には、トルク指令値Tが変化したときのシミュレーション結果が示されている。図7(a)にはトルク指令値Tが示されている。時刻t1より前のトルク指令値Tは一定値Aである。時刻t1から時刻t2までの間、トルク指令値TはAからBまで増加し、時刻t2より後は、トルク指令値Tは一定値Bとなっている。図7(a)に示されたトルク指令値Tに対し、図7(b)~図7(e)には、それぞれ、三相電流、dq軸制御値、dq軸電気2次成分およびdq軸2次振幅が示されている。
【0059】
トルク指令値Tが変化している時刻t1から時刻t2に至るまでの間、d軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2hは振動している。したがって、トルク指令値Tが変化している場合には、d軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2hの振れ幅に応じて、Ad2h-Aq2hにおける判定範囲が広げられてもよい。この場合、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)がAq2h軸の下半分上、またはAq2h軸に対するベクトル角が所定の誤差範囲内であるときは、U相巻線22uにターン間短絡が生じたと判定する。この誤差範囲がd軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2hの振れ幅に応じて大きくされてもよい。
【0060】
また、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)が、第1象限または所定の許容範囲で第1象限から外れた位置にあるときは、W相巻線22wにターン間短絡が生じたと判定する。この許容範囲がd軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2hの振れ幅に応じて大きくされてもよい。また、レアショート検出器68は、振幅ベクトル(Ad2h,Aq2h)が第2象限または所定の許容範囲で第2象限から外れた位置にあるときは、V相巻線22vにターン間短絡が生じたと判定する。この許容範囲がd軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2hの振れ幅に応じて大きくされてもよい。
【0061】
図8(a)~図8(e)には、モータ16の回転数(dθm/dt/2π)が変化したときのシミュレーション結果が示されている。図8(a)には回転数が示されている。時刻t1より前の回転数は一定値Cである。時刻t1から時刻t2までの間、回転数はCからDまで増加し、時刻t2より後は、回転数は一定値Dとなっている。図8(a)に示された回転数に対し、図8(b)~図8(e)には、それぞれ、三相電流、dq軸制御値、dq軸電気2次成分およびdq軸2次振幅が示されている。
【0062】
図8(e)に示されているように、回転数が変化した場合であっても、d軸2次振幅Ad2hおよびq軸2次振幅Aq2hは一定である。したがって、レアショート検出器68は、回転数が変化しているときであっても、回転数が一定であるときと同様の処理によって、ターン間短絡が生じた相を特定する処理を実行してよい。回転数が変化した場合であっても、d軸制御値vおよびq軸制御値vに含まれる3次以上の成分は、電気2次成分よりも十分小さいか0であり、高精度でレアショートが検出される。
【0063】
本実施形態に係るモータ制御システム100によれば、モータ16の各巻線の異常を検出するために、異常検出用の電流センサ等を必ずしも追加しなくてもよい。したがって、簡単な構成によって、モータ16の各巻線の異常が検出できる。
【0064】
また、検出部42では、d軸制御値vからd軸電気2次成分vd2を抽出するためにd軸フィルタ64dが用いられ、q軸制御値vからq軸電気2次成分vq2を抽出するためにq軸フィルタ64qが用いられている。d軸フィルタ64dおよびq軸フィルタ64qは、電気角θの変化に応じて中心周波数が変化する。そのため、モータ16の電気角θが変動している場合には、電気2次成分の抽出処理に高速フーリエ変換等を用いる場合に比べて、高精度に各電気2次成分が抽出される。これによって、モータ16の巻線の異常が確実に検出される。
【0065】
上記では、レアショートとしてターン間短絡が生じている場合の処理が示された。レアショートとしてターン間短絡ではなく、相間短絡が生じていることが明らかな場合、または、相間短絡が生じている可能性が高い場合には、レアショート検出器68は次のように、相間短絡が生じた2つの相を特定してもよい。
【0066】
図9および図10には、相間短絡が生じた巻線の相を特定する原理が示されている。U相巻線22uは直列に接続されたインダクタLu1およびLu2から構成されている。V相巻線22vは直列に接続されたインダクタLv1およびLv2から構成されている。W相巻線22wは、直列に接続されたインダクタLw1およびLw2から構成されている。
【0067】
インダクタLu1およびLu2の直列接続点と、インダクタLu1およびLu2の直列接続点とが短絡された場合、インダクタLu2、インダクタLv2および短絡線70によるデルタ結線回路Δが形成される。図10には、図9に示されている回路をY結線回路に変換した等価回路が示されている。図10に示されている等価回路は、図9に示されている短絡線70を中性点に置き換えることで導かれる。W相巻線LWのインダクタンスは、U相巻線LUおよびV相巻線LVのいずれよりも大きい。このように、U相巻線22uおよびV相巻線22vに相間短絡(UV相間短絡)が生じた場合、等価回路上のW相巻線LWのインダクタンスが、U相巻線LUおよびV相巻線LVのいずれのインダクタンスよりも大きくなる。
【0068】
同様に、V相巻線22vおよびW相巻線22wに相間短絡(VW相間短絡)が生じた場合、等価回路上のU相巻線LUのインダクタンスが、V相巻線LVおよびW相巻線LWのいずれのインダクタンスよりも大きくなる。同様に、W相巻線22wおよびU相巻線22uに相間短絡(WU相短絡)が生じた場合、等価回路上のV相巻線LVのインダクタンスが、W相巻線LWおよびU相巻線LUのいずれのインダクタンスよりも大きくなる。
【0069】
このように、相間短絡では、等価的なY結線回路における1相の巻線のインピーダンスが変化する。図3図6に示されたように、3相の巻線のうち1相の巻線のインピーダンスが変化したターン間短絡では、ベクトル(Ad2h,Aq2h)に、ターン間短絡が生じた相に応じた一定の変化傾向がある。
【0070】
同様に、等価的なY結線回路における3相の巻線のうち1相の巻線のインピーダンスが変化する相間短絡においても、ベクトル(Ad2h,Aq2h)に、相間短絡が生じた相に応じた一定の変化傾向がある。そこで、レアショート検出器68は、次のような処理を実行してよい。
【0071】
レアショート検出器68は、UV相間短絡判定範囲、VW相間短絡判定範囲およびWU相間短絡判定範囲を示す判定情報を予め記憶している。ここで、UV相間短絡判定範囲は、UV相短絡が生じたときにベクトル(Ad2h,Aq2h)が存在するAd2h-Aq2h平面上の範囲である。VW相間短絡判定範囲は、VW相間短絡が生じたときにベクトル(Ad2h,Aq2h)が存在するAd2h-Aq2h平面上の範囲である。WU相間短絡判定範囲は、WU相間短絡が生じたときにベクトル(Ad2h,Aq2h)が存在するAd2h-Aq2h平面上の範囲である。
【0072】
レアショート検出器68は、ベクトル(Ad2h,Aq2h)が、UV相間短絡判定範囲内にあるときは、UV相間短絡が生じたと判定する。レアショート検出器68は、ベクトル(Ad2h,Aq2h)が、VW相間短絡判定範囲内またはWU相間判定範囲内にあるときは、VW相間短絡またはWU相間短絡が生じたと判定する。
【0073】
図11には、コントローラ24が実行するトルク制御のフローチャートが示されている。コントローラ24は、モータ16の制御モードが、PWM制御モードであるか、PWM制御モードとは異なる制御モードであるかを判定する(S1)。PWM制御モードとは異なる制御モードには、例えば、1パルス制御モードがある。1パルス制御モードは、三相電流の1周期当たり1つのパルスを有する制御信号で、各スイッチングアームにおける上スイッチング素子SPおよび下スイッチング素子SLをオンオフさせる制御である。
【0074】
コントローラ24は、モータ16の制御モードがPWM制御モードとは異なる制御モードであるときは、現時点のトルク制御を維持する。コントローラ24は、モータ16の制御モードがPWM制御モードであるときは、dq軸振幅Adqが所定の閾値THa以下であるか否かを判定する(S2)。コントローラ24は、dq軸振幅Adqが閾値THaを超えるときは、現時点のトルク制御状態を維持する。ステップS2を実行する理由は、dq軸振幅Adqが所定の閾値THaを超えるときには、dq軸振幅Adqが取り得る値の範囲が十分でなく、レアショートの検出が困難となる場合があるためである。dq軸振幅Adqが取り得る値の範囲が十分である可能性が高い場合は、ステップS2は実行されなくてもよい。
【0075】
コントローラ24は、dq軸振幅Adqが閾値THa以下であるときは、レアショートが生じているか否かを判定する(S3)。判定対象のレアショートは、ターン間短絡であってもよいし相間短絡であってもよい。コントローラ24は、レアショートが生じていないと判定したときは、現時点のトルク制御状態を維持する。コントローラ24は、レアショートが生じていると判定したときは、電流指令生成器54に入力されるトルク指令値Tを制限する(S4)。
【0076】
すなわち、コントローラ24は、電流指令生成器54に入力されるトルク指令値Tが所定のリミット値Lmを超えるときは、トルク指令値Tをリミット値Lmに設定する。一方、コントローラ24は、電流指令生成器54に入力されるトルク指令値Tが所定のリミット値Lm以下であるときは、トルク指令値Tをそのまま維持する。また、コントローラ24は、電流指令生成器54に入力されるトルク指令値Tが所定のリミット値Lmを超えるときは、トルク指令値Tに0を超える1未満の調整定数を乗じた値を、新たに制御に用いるトルク指令値としてもよい。また、コントローラ24は、電流指令生成器54に入力されるトルク指令値Tが所定のリミット値Lmを超えるときは、トルク指令値Tが正の値の場合、トルク指令値Tから所定の正の値を減算した値を、トルク指令値Tが負の値の場合、トルク指令値Tから所定の負の値を減算した値を、新たに制御に用いるトルク指令値としてもよい。
【0077】
コントローラ24は、トルク指令値Tを制限すると共に、ユーザに注意を促す処理を実行する(S5)。ユーザに注意を促す処理は、車室等に設けられたインジケータを表示する処理、車室に設けられた音響装置から警告音を発する処理等を含んでよい。コントローラ24は、ステップS4に基づく処理後のトルク指令値に基づいて、トルク制御を実行する(S6)。
【0078】
このようなトルク制御によれば、レアショートが生じた場合には、モータ16のトルクが抑制され、モータ16の寿命が短縮することが回避される。また、レアショートが生じたことがユーザに知らされる。なお、コントローラ24は、レアショートが生じていると判定したときに、トルク指令値Tを制限する処理およびユーザに注意を促す処理の少なくとも一方を実行してもよい。
【0079】
上記では、モータ制御システム100が電動自動車に搭載される実施形態が示された。モータ制御システム100は、ロボットや、産業機械等、その他の装置に用いられるモータを制御するシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 電池、12 インバータ、14u U相スイッチングアーム、14v V相スイッチングアーム、14w W相スイッチングアーム、16 モータ、18 レゾルバ、20u U相端子、20v V相端子、20w W相端子、22u,LU U相巻線、22v,LV V相巻線、22w,LW W相巻線、24 コントローラ、26 電流センサ、40 モータ制御部、42 検出部、52 三相/dq軸変換器、54 電流指令生成器、56d d軸減算器、56q q軸減算器、58d d軸PI演算器、58q q軸PI演算器、60 dq軸/三相変換器、62 PWM制御器、64d d軸フィルタ、64q q軸フィルタ、66 振幅計算器、68 レアショート検出器(異常検出器)、70 短絡線、SP 上スイッチング素子、SL 下スイッチング素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11