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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】歩行者用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20240402BHJP
【FI】
B60R21/36 320
B60R21/36 352
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021084921
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022178261
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 公彦
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151138(JP,A)
【文献】国際公開第2011/010387(WO,A1)
【文献】特開2019-151203(JP,A)
【文献】特開2010-221912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成の歩行者用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、膨張完了時に少なくとも前記フードパネルの後端側からカウルにかけての領域の上面側を覆うように構成されて、膨張完了時にボディ側に配置される車体側壁部と、該車体側壁部と対向して配置される歩行者側壁部と、を備えるとともに、内部領域の一部に、前記車体側壁部と前記歩行者側壁部とに連結される周壁によって囲まれた内圧維持チャンバを、配設させる構成とされ、
該内圧維持チャンバが、前記インフレーターから吐出される膨張用ガスを、前記エアバッグにおける一般膨張部を経て、内部に流入可能に構成されるとともに、前記周壁の内側を塞ぐようにして前記車体側壁部と重なるように配設されて、所定箇所を、前記車体側壁部に連結される底壁部を、有する構成とされて、内部に流入した前記膨張用ガスの前記一般膨張部側への逆流を防止する逆止弁機構を、配設させて構成され
前記逆止弁機構が、前記底壁部の一部を切り欠くようにして形成されるガス流入口と、該ガス流入口の周縁において前記車体側壁部に前記底壁部を直接結合させる結合部位と、前記底壁部における前記ガス流入口の周縁部位と、を、備える構成とされていることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグが、前記一般膨張部を構成するメインバッグと、該メインバッグ内に配置されて前記内圧維持チャンバを構成するインナバッグと、を備える構成とされ、
前記インナバッグが、前記周壁を構成する周壁部と、前記底壁部と、該周壁部の上端側を閉塞するようにして前記歩行者側壁部と重なるように配置される天井壁部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記内圧維持チャンバが、長手方向を左右方向に略沿わせるようにして、前記エアバッグの膨張完了時に、前記収納部位の上方を覆うように、配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記逆止弁機構が、前記内圧維持チャンバにおける左右両側に一箇所ずつ、形成されていることを特徴とする請求項3に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成の歩行者用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用エアバッグ装置としては、膨張完了時に、フードパネルの後端側からカウルにかけての領域の上面側から、左右のフロントピラーの下部前面にかけてを覆うように、膨張するエアバッグを備える構成のものがあった。この歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグが、内部領域を、隔壁によって前後で2分割するように構成されて、この隔壁に、前側チャンバから後側チャンバへの膨張用ガスの逆流を抑制する逆流防止手段を配置させていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-151138公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の歩行者用エアバッグ装置では、逆流防止手段を配設させることにより、膨張完了時に、前側チャンバの内圧を維持させる構成であった。しかしながら、この従来の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグは、単に、内部領域を前後で2つに区画される構成であり、前側チャンバは、膨張完了時のエアバッグの左右の全域にわたって配置される構成であることから、容積が大きく、高い内圧を維持させるためには、大型のインフレーターが必要となり、簡便な構成で所定箇所の内圧を維持させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な構成として、所定箇所の内圧を維持可能な歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置は、車両のフードパネルの後端近傍に配設される収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、を備える構成の歩行者用エアバッグ装置であって、
エアバッグが、膨張完了時に少なくともフードパネルの後端側からカウルにかけての領域の上面側を覆うように構成されて、膨張完了時にボディ側に配置される車体側壁部と、車体側壁部と対向して配置される歩行者側壁部と、を備えるとともに、内部領域の一部に、車体側壁部と歩行者側壁部とに連結される周壁によって囲まれた内圧維持チャンバを、配設させる構成とされ、
内圧維持チャンバが、インフレーターから吐出される膨張用ガスを、エアバッグにおける一般膨張部を経て、内部に流入可能に構成されるとともに、内部に流入した膨張用ガスの一般膨張部側への逆流を防止する逆止弁機構を、配設させて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグの内部に、部分的に区画される内圧維持チャンバを配設させる構成であり、この内圧維持チャンバが、エアバッグにおける一般膨張部を経て、インフレーターから吐出される膨張用ガスを内部に流入させる構成であるものの、内部に流入した膨張用ガスの一般膨張部側への逆流を防止可能に、構成されている。また、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、内圧維持チャンバは、車体側壁部と歩行者側壁部とに連結される周壁によって囲まれる領域から構成されていることから、一般膨張部の膨張時に、歩行者側側壁部がボディ側から離隔するように膨張すれば、内圧維持チャンバは、負圧状態に近似した状態となって、一般膨張部から、逆止弁機構を経て内部に膨張用ガスを流入させ、一般膨張部と同様に膨張することとなる。そしてさらに、この内圧維持チャンバは、周囲を、車体側壁部と歩行者側壁部とに連結される周壁によって囲まれる構成であり、すなわち、膨張完了時のエアバッグにおける前後左右の所定位置に、配設させることができて、従来の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグと比較して、配置位置や大きさの自由度を増大させることができ、歩行者側壁部及び車体側壁部の外周縁から離れた位置に配置させることもできる。そのため、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、膨張完了時に、エアバッグの所定箇所に内圧維持チャンバを配置させることにより、所定箇所の内圧を維持することができ、また、内圧を維持される内圧維持チャンバにより、歩行者を、クッション性よく受け止めて保護することができる。
【0008】
したがって、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、簡便な構成として、所定箇所の内圧を維持することができる。
【0009】
また、本発明の歩行者用エアバッグ装置において、内圧維持チャンバを、周壁の内側を塞ぐようにして車体側壁部と重なるように配設されて、所定箇所を、前記車体側壁部に連結される底壁部を、有する構成とし、
逆止弁機構を、底壁部の一部を切り欠くようにして形成されるガス流入口と、ガス流入口の周縁において車体側壁部に前記底壁部を直接結合させる結合部位と、底壁部におけるガス流入口の周縁部位と、を、備える構成とすることが、好ましい。
【0010】
上記構成の歩行者用エアバッグ装置では、内圧維持チャンバに形成される逆止弁機構を構成しているガス流入口は、エアバッグにおける車体側壁部と重なるように配設される底壁部の一部を切り欠くようにして形成される構成であるものの、上述したごとく、内圧維持チャンバは、負圧状態から内部に膨張用ガスを流入させる構成であることから、底壁部側に形成されるガス流入口を経て、円滑に、内圧維持チャンバの内部に膨張用ガスを流入させることができる。また、このガス流入口は、周縁において、車体側壁部に、底壁部を直接結合させている構成であることから、エアバッグの膨張完了後において、内圧維持チャンバの領域によって歩行者を受け止めた際には、底壁部におけるガス流入口の周縁部位が、車体側壁部からの浮き上がりを抑制されて車体側壁部側に圧接されるような態様となり、ガス流入口から、エアバッグにおける一般膨張部側に膨張用ガスが逆流することを、的確に抑制できる。
【0011】
さらに、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグを、一般膨張部を構成するメインバッグと、メインバッグ内に配置されて内圧維持チャンバを構成するインナバッグと、を備える構成とし、
インナバッグを、周壁を構成する周壁部と、底壁部と、周壁部の上端側を閉塞するようにして歩行者側壁部と重なるように配置される天井壁部と、を備える構成とすることが、好ましい。
【0012】
上記構成の歩行者用エアバッグ装置では、メインバッグの内部に、内圧維持チャンバを構成する袋状のインナバッグを配置させる構成であることから、周壁を直接車体側壁部と歩行者側壁部とに連結させるようにして、内圧維持チャンバを構成する場合と比較して、製造が容易であり、かつ、内圧維持チャンバを袋状としたことから、内部に膨張用ガスを流入させて膨張した後のメインバッグ側への膨張用ガスの流出を抑制しやすく、内圧維持チャンバ(インナバッグ)の内圧も維持しやすい。
【0013】
さらにまた、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、内圧維持チャンバを、長手方向を左右方向に略沿わせるようにして、エアバッグの膨張完了時に、収納部位の上方を覆うように配置させる構成とすれば、膨張完了時のエアバッグにおいて、収納部位の上方を覆う領域に歩行者が接触した際に、底付きせず、歩行者が、エアバッグを介して収納部位と接触することを抑制できて、好ましい。
【0014】
さらにまた、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、逆止弁機構を、内圧維持チャンバにおける左右両側に一箇所ずつ、形成する構成とすれば、内圧維持チャンバを左右にバランスよく迅速に膨張させることができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
図2】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図であり、インフレーターの部位を示す。
図3】実施形態の歩行者用エアバッグ装置の前後方向に沿った概略縦断面図であり、取付ブラケットの部位を示す。
図4】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、インフレーターの部位を示す左右方向に沿った概略縦断面図である。
図5】実施形態の歩行者用エアバッグ装置で使用するエアバッグを平らに展開した状態の平面図である。
図6図5のエアバッグを平らに展開した状態の底面図である。
図7図5のエアバッグにおけるインナバッグの部位を示す部分拡大平面図である。
図8図5のエアバッグにおけるインナバッグの部位を示す部分拡大底面図である。
図9図7におけるIX-IX部位の断面図である。
図10図7におけるX-X部位の断面図である。
図11】インナバッグを単体で膨張させた状態の概略斜視図である。
図12図5のエアバッグにおいて、逆止弁機構の部位を示す概略図である。
図13図5のエアバッグを構成する基材を並べた平面図である。
図14】インナバッグを構成するインナバッグ用基布の平面図である。
図15】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略平面図である。
図16】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の概略縦断面図である。
図17】実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグの膨張時におけるインナバッグの挙動を示す部分拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の歩行者用エアバッグ装置M(以下「エアバッグ装置」と省略する)は、車両Vにおけるフードパネル15の後端15c付近に搭載されている。実施形態のエアバッグ装置Mは、図1~3に示すように、フードパネル15の後端15cに近接した位置であって、左右のフロントピラー5L,5Rの間となる車両Vの左右方向の略中央となる位置に、配置されている。なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて説明する。
【0017】
フードパネル15は、図1,15に示すように、車両Vにおけるエンジンルームの上方を覆うように配設されるもので、左右両縁側における後端15c近傍に配置される図示しないヒンジ部により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル15は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム(アルミニウム合金)等の板材からなり、図2,3,16に示すように、アウタパネル15aとインナパネル15bとを備えている。フードパネル15は、後述するフロントウィンドシールド4に合わせて、図1,15に示すように、後端15c側を、左右方向の中央を前方に位置させ、左右両端側を後方に位置させるように、左右方向に対して湾曲させて構成されている。
【0018】
フードパネル15の後方には、図2,3,16に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド4の下部5a側に連ならせるように、配設されている。このカウル7も、フードパネル15の後端15cの湾曲形状に合わせて湾曲して形成されている(図1,15参照)。また、カウル7の部位には、図1に示すように、ワイパ8が配設されている。このワイパ8は、図2,3,16の二点鎖線に示すように、カウルルーバ7bから上方に突出するように配設されている。フロントウィンドシールド4の左右の外方には、フロントピラー5L,5Rが、配設されている。
【0019】
エアバッグ装置Mは、図1~4に示すように、エアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター30と、エアバッグ45とインフレーター30とを収納する収納部位としてのケース20と、折り畳まれたエアバッグ45を覆うエアバッグカバー25と、エアバッグ45の後述する取付片部95をケース20に取り付ける取付ブラケット125と、を備えている。
【0020】
収納部位としてのケース20は、板金製として、図2,3に示すように、底壁部21と、底壁部21から上方に延びて上端側を開口させて構成される略四角筒形状の周壁部22と、を備えた略箱形状とされるもので、上端側の突出用開口20aから、膨張するエアバッグ45を突出させる構成である。底壁部21には、インフレーター30を取り付ける取付ボルト39と、エアバッグ45の取付片部95を取り付ける取付ボルト127と、を、それぞれ、挿通させて、ナット42,129止めして取り付けるための取付孔21aが、形成されている(図2~4参照)。実施形態の場合、ケース20は、前側の領域をフードパネル15の後端15cの直下に位置させ、後側の領域をフードパネル15よりも後側に位置させるように、配置されるもので、図示しないブラケットを利用して、ボディ1側のカウルパネル7aに取り付けられる構成である。
【0021】
エアバッグカバー25は、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質合成樹脂製とされるもので、ケース20の上端側の突出用開口20aを覆うように配置されて、エアバッグ45の展開膨張時に、エアバッグ45に押されて後側に向かって開き可能な扉部26を、有する構成とされている(図2,3,16参照)。このエアバッグカバー25は、所定箇所を、図示しない取付手段を用いてケース20に取り付けられている。
【0022】
インフレーター30は、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプのインフレーター本体31と、インフレーター本体31をケース20に取り付けるための取付ブラケット35と、を備える構成とされている。
【0023】
インフレーター本体31は、外形形状を略円柱状として、図2,4に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして、エアバッグ45におけるメインバッグ46の後述するカウルカバー部48の左右の略中央であって、かつ、前後の中央よりやや後方となる位置の内部に、配置される構成である(図5,6参照)。インフレーター本体31は、図4に示すように、軸方向の一端側(実施形態の場合、右端31b側)に、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出部32を配設させて構成されるもので、軸方向の他端側(左端31a側)から延びる図示しないリード線を介して、作動回路と電気的に接続されている。実施形態のエアバッグ装置Mを搭載する車両Vのフロントバンパ6(図1参照)には、歩行者との衝突を検知可能な図示しないセンサが、配設されている。作動回路は、センサからの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター本体31を作動させることとなる。
【0024】
インフレーター本体31をケース20に取り付けるための取付ブラケット35は、図2,4に示すように、インフレーター本体31を保持する保持部36と、保持部36から下方に突出する複数(実施形態の場合、3個)の取付ボルト39と、を備える構成とされている。保持部36は、板金製として、インフレーター本体31の下面側を支持するように左右方向(インフレーター本体31の軸方向)に略沿って延びる帯状として構成され、左右方向に沿った複数箇所(実施形態の場合、3箇所)に、インフレーター本体31を支持する支持片部37を、前後両側に突出させて構成されている。各支持片部37は、インフレーター本体31の外周面を支持可能に、保持部36の前後の縁部から先端を前後の外方に向けつつ上側に向かって延びるように傾斜して形成されるもので、前後で対称形とされている(図2参照)。実施形態の場合、支持片部37は、取付ボルト39に対応した位置に、形成されている。取付ボルト39は、保持部36の左右両端側と左右の略中央との3箇所において、それぞれ、下方に突出するように形成されている。そして、実施形態では、この取付ブラケット35は、保持部36にインフレーター本体31を保持させた状態で、外周側からクランプ40を巻き付けることにより、インフレーター本体31を取り付ける構成である。クランプ40は、実施形態の場合、保持部36の左右両端側の2箇所に、配置されている(図4参照)。
【0025】
このインフレーター30は、クランプ40を用いて、取付ブラケット35にインフレーター本体31を取り付けた状態で、後述する挿通孔52及び取付孔56から、取付ボルト39を外部に突出させるようにして、インフレーター本体31と取付ブラケット35における保持部36とをエアバッグ45の内部に挿入させた状態で、ケース20の底壁部21に取り付けられる構成である。詳細には、インフレーター30は、エアバッグ45における後述する蓋パネル54から突出している各取付ボルト39を、ケース20の底壁部21から突出させてナット42止めすることにより、エアバッグ45とともに、ケース20に取り付けられる構成である(図2参照)。また、実施形態では、インフレーター30は、インフレーター本体31と取付ブラケット35における保持部36との外周側を、可撓性を有した筒状のインナチューブ100に覆われて、エアバッグ45内に収納される構成である(図16参照)。
【0026】
エアバッグ45は、図5,6に示すように、可撓性を有したシート体からなる袋状としてエアバッグ45における内圧維持チャンバ以外の部位である一般膨張部を構成するメインバッグ46と、メインバッグ46内に配置されて可撓性を有したシート体からなる袋状として内圧維持チャンバを構成するインナバッグ65と、メインバッグ46内に配置されてメインバッグ46の膨張完了時の厚さを規制するテザー90L,90R,91,92L,92Rと、メインバッグ46の後述する車体側壁部46a側をケース20に取り付ける取付片部95と、メインバッグ46内においてインフレーター30の外周側を覆うインナチューブ100と、を備える構成とされている。
【0027】
メインバッグ46は、実施形態の場合、膨張完了時にフードパネル15の後端15c側からカウル7にかけての領域の上面側と、フロントウィンドシールド4(カウル7)の左右両側に位置する左右のフロントピラー5L,5Rの前面の下部側と、を覆うように構成されている。具体的には、メインバッグ46は、膨張完了時の外形形状を、正面側から見て、左右に幅広の略U字形状として、フロントウィンドシールド4の下部4aに略沿うように左右方向に略沿って配置されるカウルカバー部48と、カウルカバー部48の両端からそれぞれ後方へ延びて左右のフロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側を覆うピラーカバー部60L,60Rと、を備えて構成されている(図15参照)。また、メインバッグ46は、膨張完了時にボディ1側に配置される車体側壁部46aと、車体側壁部46aと対向して配置される歩行者側壁部46bと、を有し、車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとの外周縁相互を全周にわたって結合(縫着)させることにより、袋状とされている。
【0028】
カウルカバー部48は、膨張完了時にフードパネル15の後端15cからカウル7にかけての領域の上面側を覆うもので、詳細には、実施形態の場合、膨張完了時に、フードパネル15の後端15c側の部位から、カウル7を経て、フロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての領域の上面側(前面側)を、車幅方向(左右方向)の略全域にわたって、ワイパ8も含めて覆うように構成されている(図15,16参照)。実施形態のエアバッグ45では、メインバッグ46の車体側壁部46aにおいて、カウルカバー部48の前後左右の略中央となる位置に、インフレーター30を内部に挿入させるための挿入用開口部50が、形成されている。
【0029】
詳細には、インフレーター30は、カウルカバー部48の前後の中央よりもやや後側となる位置であって、具体的には、インナバッグ65と後述する左右テザー91との間となる位置に、収納されるもので、挿入用開口部50も、カウルカバー部48における前後の中央よりやや後側となる位置に、配設されている。挿入用開口部50は、図8,13に示すように、車体側壁部46aに形成される挿入用スリット51と、インフレーター30の取付ボルト39を挿通させるための挿通孔52と、挿入用スリット51を外周側から塞ぐ蓋パネル54と、を備える構成とされている。挿入用スリット51は、インフレーター本体31を挿入させるためのもので、インフレーター本体31の軸方向に略沿うように、左右方向に略沿った直線状に形成されている。この挿入用スリット51は、長さ寸法を、インフレーター本体31の長さ寸法より小さく設定されている(図8参照)。挿通孔52は、インフレーター30の取付ボルト39を突出させるためのもので、取付ボルト39に対応して、左右方向に沿って3箇所に、形成されている。挿通孔52は、メインバッグ46を平らに展開した状態で、挿入用スリット51の前側の領域に、形成されている。蓋パネル54は、可撓性を有したシート体から構成されて、車体側壁部46aの外周側において、挿入用スリット51を塞ぎ可能に構成されるもので、外形形状を、左右方向側を幅広とした略長方形状とされている。蓋パネル54は、後端54b側を、挿入用スリット51の後側となる位置で、左右の略全域にわたって連続的に形成される結合部位55によって車体側壁部46aに結合させ、前端54a側に、インフレーター30の取付ボルト39を突出させるための取付孔56を、挿通孔52に対応して、配設させている構成である。実施形態の場合、蓋パネル54は、図13に示すような蓋パネル用基布119から、形成されている。
【0030】
内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65は、インフレーター30から吐出される膨張用ガスGを、一般膨張部としてのメインバッグ46を経て、内部に流入可能にされるとともに、内部に流入した膨張用ガスGのメインバッグ46側への逆流を防止する逆止弁機構80を、配設させて構成されている。インナバッグ65は、メインバッグ46の車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとに連結される周壁を構成する周壁部66と、周壁部66の下端66b側を閉塞するようにして(すなわち、周壁の内側を塞ぐようにして)車体側壁部46aと重なるように配置される底壁部71と、周壁部66の上端66a側を閉塞するようにして歩行者側壁部46bと重なるように配置される天井壁部70と、を備えて、実施形態の場合、膨張完了形状を、長手方向を左右方向側に略沿わせた略直方体形状として構成されている(図11参照)。実施形態の場合、インナバッグ65は、図5,6に示すように、メインバッグ46のカウルカバー部48において、インフレーター30の前側となる前後の中央よりやや前方となる位置において、長手方向の中央を、メインバッグ46の左右の中央と略一致させ、かつ、カウルカバー部48の前縁48aとの間に隙間を設けられるようにして、配設されている。詳細には、インナバッグ65は、エアバッグ45の膨張完了時に、収納部位としてのケース20の前上方を覆うような位置に、配置されるもので(図15,16参照)、左右方向側の幅寸法を、カウルカバー部48の左右方向側の幅寸法の2/5程度として、ケース20の前上方を左右の全域にわたって覆い可能に、ケース20よりも左右に幅広に構成されている(図15参照)。また、インナバッグ65は、実施形態の場合、前後方向側の幅寸法を、前後テザー90L,90Rよりも幅広とし、かつ、左右方向側の幅寸法を、左右テザー91よりも幅広とするように、構成されている(図5,6参照)。
【0031】
インナバッグ65は、図7~10に示すように、底壁部71の所定箇所を車体側壁部46aに直接結合させるようにして、周壁部66の下端66b側を車体側壁部46aに連結させ、天井壁部70の所定箇所を歩行者側壁部46bに直接結合させるようにして、周壁部66の上端66a側を歩行者側壁部46bに連結させて、メインバッグ46と連結されている。すなわち、インナバッグ65は、膨張時における車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとの離隔距離を規制して、膨張完了時のメインバッグ46の厚さを規制する役目も果たしている。インナバッグ65の天井壁部70をメインバッグ46の歩行者側壁部46bに結合させる結合部位としては、前後方向に略沿うとともに左右方向側で並設される複数の上側前後結合部位73と、上側前後結合部位73の前端側と後端側とにおいて左右方向に略沿って配設される複数の上側左右結合部位74と、を備えている(図7,9,10参照)。詳細には、天井壁部70は、左縁70a近傍と右縁70b近傍とを、前後の略全域にわたって、歩行者側壁部46b側に結合されるとともに、後縁70c近傍の一部も、歩行者側壁部46b側に結合される構成とされている(図7参照)。インナバッグ65の底壁部71をメインバッグ46の車体側壁部46aに結合させる結合部位としては、前後方向に略沿うとともに左右方向側で並設される複数の下側前後結合部位76と、底壁部71の前縁側と前後の中央よりやや後側となる位置において左右方向に略沿って配設される複数の下側左右結合部位77と、を備えている(図8~10参照)。詳細には、底壁部71は、左縁71a近傍と右縁71b近傍と前縁71c近傍とを、前後左右の略全域にわたって、車体側壁部46a側に結合されるとともに、後縁71d近傍の一部も、車体側壁部46a側に結合される構成とされている(図8参照)。
【0032】
周壁部66において、膨張完了時に前面側に配置される前壁部66cには、実施形態の場合、上下方向側の幅寸法を縮めるようにつまんで周縁を結合させて構成されるつまみ部68が、左右に広く形成されており(図10,11,14参照)、インナバッグ65は、膨張完了時の外形形状を、前縁側にかけて厚みを漸減させるように、構成されている。また、実施形態のエアバッグ45では、インナバッグ65の天井壁部70を歩行者側壁部46bに結合させる上側左右結合部位74において、前側の領域に配置される上側左右結合部位74Fは、断続的に3つ並設されるとともに、左右の中央側を最も後方に位置させ、左右の端縁側にかけて前方に位置するように、湾曲しつつ傾斜して配置される構成である(図7参照)。そして、インナバッグ65は、上側左右結合部位74Fによって、前上端側を、歩行者側壁部46b側に連結させず、また、つまみ部68を配設させることにより、前上側の領域を、歩行者側壁部46bから離隔してなだらかに傾斜させるように湾曲させて構成されている(図9,10参照)。
【0033】
インナバッグ65内に膨張用ガスを流入させる逆止弁機構80は、実施形態の場合、図6,8に示すように、インナバッグ65の左右両側に一箇所ずつ、形成されている。各逆止弁機構80は、図9,12に示すように、底壁部71の一部を切り欠くようにして形成されるガス流入口81と、ガス流入口81の周縁において車体側壁部46aに底壁部71を直接結合させる結合部位と、底壁部71におけるガス流入口81の前縁側となる前縁側部位72(周縁部位)と、を備える構成とされている。
【0034】
ガス流入口81は、長手方向を左右方向に略沿わせた長穴状とされるもので、実施形態の場合、底壁部71における前後の中央よりもやや前方となる位置に、形成されている(図8,9参照)。各ガス流入口81は、左右方向側の開口幅寸法(長さ寸法)を、底壁部71の左右方向側の幅寸法の1/4程度に、設定されている。
【0035】
ガス流入口81の周縁において車体側壁部46aに底壁部71を直接結合させるように形成される結合部位としては、図12に示すように、ガス流入口81の左右両側と後方とを囲むように配設される区画結合部位83と、ガス流入口81の前縁側における左右両端近傍となる部位に配置される端縁側結合部位84L,84Rと、端縁側結合部位84L,84Rよりも前方においてガス流入口81の左右の中央側に配置される中央側結合部位85と、が、配設されている。区画結合部位83は、上述した下側前後結合部位76と下側左右結合部位77との一部から構成されるもので、ガス流入口81の後方において左右方向に略沿うように配置される横棒部83bと、横棒部83bの両端から前後方向に略沿うように前方に延びる2つの縦棒部83a,83aと、を有して、ガス流入口81の左右両側と後方側とを閉塞するように、連続的に、形成されている。各縦棒部83aは、ガス流入口81よりも前方に延びるように、形成されている。すなわち、実施形態のインナバッグ65では、ガス流入口81は、図12に示すように、左右両側と後方側とを閉塞され、前方側のみから、膨張用ガスGを内部に流入可能に、構成されている。端縁側結合部位84L,84Rは、ガス流入口81の前縁近傍において、ガス流入口81の左右の中央を除いた両端付近と前後方向側で重なるように配置されるもので、ガス流入口81の長手方向(左右方向)に略沿った直線状として、ガス流入口81よりも左右の外方に延びるように、形成されている。中央側結合部位85は、端縁側結合部位84L,84Rと前後方向側で離隔されるように、端縁側結合部位84L,84Rの前方となる位置において、ガス流入口81の長手方向(左右方向)及び端縁側結合部位84L,84Rに略沿った直線状として、形成されている。この中央側結合部位85は、両端側を、前後方向側で端縁側結合部位84L,84Rと重ならせるように、形成されている。
【0036】
そして、実施形態の逆止弁機構80では、底壁部71におけるガス流入口81の前縁側部位82(ガス流入口81の前方における中央側結合部位85と端縁側結合部位84L,84Rとの間の領域)が、実際に、ガス流入口81を開閉させるような態様となる。具体的には、エアバッグ45の膨張初期に、メインバッグ46内に流入した膨張用ガスGは、中央側結合部位85と端縁側結合部位と84L,84Rに囲まれる車体側壁部46aと底壁部71との間の隙間を、ガス流路部88として、このガス流路部88から、ガス流入口81を経て、インナバッグ65内に流入することとなる(図17のA参照)。そして、エアバッグ45の膨張完了後には、底壁部71における前縁側部位72を車体側壁部46a側に圧接させるようにして、ガス流路部88が閉塞されることとなり、インナバッグ65内に流入した膨張用ガスGのメインバッグ46側への逆流が防止されることとなる(図17のB参照)。底壁部71は、ガス流入口81の前縁近傍における左右両端側を、端縁側結合部位84L,84Rによって車体側壁部46aに直接結合され、ガス流入口81の前方(ガス流路部88の前縁側)を、中央側結合部位85によって車体側壁部46aに直接結合されていることから、インナバッグ65の膨張後には、ガス流入口81の前縁側となる前縁側部位72(ガス流路部88)の閉塞状態を、安定して維持することができる。
【0037】
このインナバッグ65は、図14に示すようなインナバッグ用基布113から、構成されている。インナバッグ用基布113は、周壁部66の前壁部66cを構成する前壁構成部113aと、周壁部66の後壁部66dを構成する後壁構成部113bと、天井壁部70を構成する天井壁構成部113cと、底壁部71を構成する底壁構成部113dと、を、を短手方向側で連ならせるとともに、天井壁構成部113cと、底壁構成部113dと、の左右両側から、それぞれ、周壁部66における左壁部66e,右壁部66fを構成する左壁構成部113e,右壁構成部113fを、突出させるように、構成されている。そして、インナバッグ65は、このインナバッグ用基布113の対応する縁部相互を縫着(結合)させることにより、袋状とされている。
【0038】
メインバッグ46内に配置されるテザーとしては、実施形態の場合、前後テザー90L,90Rと、左右テザー91と、端側テザー92L,92Rと、が、配置されている。前後テザー90L,90R,左右テザー91,端側テザー92L,92Rは、それぞれ、メインバッグ46における歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとを連結して、膨張完了時の歩行者側壁部46bと車体側壁部46aとの離隔距離を規制するものである。前後テザー90L,90Rは、インナバッグ65の左右の側方において、それぞれ、前後方向に略沿うように配設されている。左右テザー91は、挿入用開口部50の後側において、左右方向に略沿うように配設されている。端側テザー92L,92Rは、カウルカバー部48と各ピラーカバー部60L,60Rとの境界部位付近において、それぞれ、左右の内側を後方に位置させるように、左右方向に対して傾斜して配設されている。これらの前後テザー90L,90R、左右テザー91、及び、端側テザー92L,92Rは、メインバッグ46内において、左右対称的に配置されている。
【0039】
メインバッグ46の車体側壁部46a側をケース20に取り付ける取付片部95は、挿入用開口部50の左右両側に配設されるもので、メインバッグ46と別体として、可撓性を有したシート体から構成されて、図8に示すように、前端側と後端側とを、車体側壁部46aに結合(縫着)されている。この取付片部95は、取付ブラケット125を用いて、ケース20の底壁部21に取り付けられる構成であり、実施形態の場合、図6,8に示すように、メインバッグ46を平らに展開した状態において、挿入用開口部50と端側テザー92L,92Rとの間において、略左右対称となる2箇所に、配置されている。この取付片部95(95L,95R)は、車体側壁部46aとの間に、取付ブラケット125の後述する取付プレート126を挿入させるもので(図3参照)、取付ブラケット125に形成される後述する取付ボルト127を挿通可能な貫通孔95aを、有している。
【0040】
インフレーター本体31の外周側を覆うインナチューブ100は、可撓性を有したシート体から構成されて、図5の二点鎖線及び図16に示すように、筒状とされている。実施形態の場合、インナチューブ100は、平らに展開した状態での左端100a側を元部端として、この左端100a側からインフレーター30を挿入させる構成とされるもので、左右両端側を開口させるとともに、先端側となる右端100b側を分岐させ、この右端100b側に、インフレーター本体31から吐出される膨張用ガスを右方と斜め左上方とに向かって流出させる2つの流出口101A,101Bを、有する構成とされている。インナチューブ100には、インフレーター本体31を保持している取付ブラケット35の取付ボルト39を突出させるための挿通孔102が、形成されている(図2参照)。
【0041】
実施形態のエアバッグ45は、図13に示すように、メインバッグ46において車体側壁部46aを構成する車体側基布110及び歩行者側壁部46bを構成する歩行者側基布111と、インナバッグ65を構成するインナバッグ用基布113と、前後テザー90L,90R,左右テザー91,端側テザー92L,92Rをそれぞれ構成するテザー用基布115,116,117と、蓋パネル54を構成する蓋パネル用基布119と、インナチューブ100を構成するインナチューブ用基布120と、取付片部95と、から構成されている。なお、これらの基布(基材)は、ポリアミド糸やポリエステル糸等を織成して形成される織布の表面に、ガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させたコート布を、所定形状に裁断して、形成されている。
【0042】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。インフレーター30は、クランプ40を利用して取付ブラケット35にインフレーター本体31を保持させた状態として、予め、インナチューブ100内に、取付ボルト39を挿通孔102から突出させるようにして、挿入させておく。そして、エアバッグ45を、ケース20内に収納可能に折り畳み、折り畳まれたエアバッグ45(折り完了体)の周囲を、折り崩れ防止用の破断可能な図示しないラッピング材によりくるむ。このとき、エアバッグ45における挿入用開口部50と取付片部95との部位は、ラッピング材から露出させておく。その後、挿入用開口部50の挿入用スリット51から、インフレーター30を、インナチューブ100ごと、メインバッグ46内に挿入させ、各取付ボルト39を挿通孔52から突出させて、インフレーター30をメインバッグ46の内部に収納させる。そして、蓋パネル54を、挿入用スリット51を覆うように閉じて、取付孔56に、各取付ボルト39を挿通させる。さらに、取付片部95に、貫通孔95aから取付ボルト127を突出させるようにして、取付ブラケット125を取り付けて、エアバッグ組付体を製造する。その後、エアバッグ組付体を、各取付ボルト39,127を底壁部21から突出させるようにして、ケース20内に収納させ、底壁部21から突出している各取付ボルト39,127に、ナット42,129を締結させれば、エアバッグ45とインフレーター30とを、ケース20に取り付けることができる。そして、エアバッグカバー25をケース20に取り付け、ケース20から延びる図示しないブラケットを、カウルパネル7aに取り付け、インフレーター本体31を、図示しない作動回路に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0043】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ6に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vと歩行者との衝突を検知した際に、インフレーター30が作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ45が膨張することとなり、膨張するエアバッグ45が、エアバッグカバー25の扉部26を押し開き、扉部26を押し開いて形成されるケース20の突出用開口20aから上方に向かって突出しつつ、フードパネル15の後端15cの上面からカウル7の上面にかけてと、フロントピラー5L,5Rの前面の下部5a側と、を覆うように、膨張を完了させることとなる(図15,16参照)。
【0044】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ45の内部に、部分的に区画される内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65を配設させる構成であり、このインナバッグ65が、エアバッグ45における一般膨張部としてのメインバッグ46を経て、インフレーター30から吐出される膨張用ガスGを内部に流入させる構成であるものの、内部に流入した膨張用ガスGのメインバッグ46側への逆流を防止可能に、構成されている。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65は、車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとに連結される周壁部66(周壁)によって囲まれる領域から構成されていることから、一般膨張部としてのメインバッグ46の膨張時に、歩行者側壁部46bがボディ1側から離隔するように膨張すれば、内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65は、負圧状態に近似した状態となって、メインバッグ46から、逆止弁機構80を経て内部に膨張用ガスGを流入させ、メインバッグ46と同様に膨張することとなる。そしてさらに、この内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65は、周囲を、車体側壁部46aと歩行者側壁部46bとに連結される周壁としての周壁部66によって囲まれる構成であり、すなわち、膨張完了時のエアバッグ45における前後左右の所定位置に、配設させることができて、従来の歩行者用エアバッグ装置におけるエアバッグと比較して、配置位置や大きさの自由度を増大させることができ、歩行者側壁部46b及び車体側壁部46aの外周縁から離れた位置に配置させることもできる。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張完了時に、エアバッグ45の所定箇所に内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65を配置させることにより、所定箇所の内圧を維持することができ、また、内圧を維持される内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65により、歩行者を、クッション性よく受け止めて保護することができる。
【0045】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、簡便な構成として、所定箇所の内圧を維持することができる。
【0046】
また、実施形態のエアバッグ装置では、内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65に形成される逆止弁機構80が、車体側壁部46aと重なるように配置される底壁部71の一部を切り欠くようにして形成されるガス流入口81と、ガス流入口81の周縁において車体側壁部46aに底壁部71を直接結合させる結合部位(区画結合部位83,端縁側結合部位84L,84R,中央側結合部位85)と、底壁部71におけるガス流入口81の前縁側部位72(周縁部位)と、を、備える構成とされている。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、インナバッグ65に形成される逆止弁機構80を構成しているガス流入口81は、エアバッグ45(メインバッグ46)における車体側壁部46aと重なるように配設される底壁部71の一部を切り欠くようにして形成される構成であるものの、上述したごとく、内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65は、負圧状態から内部に膨張用ガスを流入させる構成であることから、底壁部71側に形成されるガス流入口81を経て、円滑に、インナバッグ65の内部に膨張用ガスを流入させることができる(図17のA参照)。また、このガス流入口81は、周縁において、車体側壁部46aに、底壁部71を直接結合させている構成であることから、エアバッグ45の膨張完了後において、インナバッグ65の領域によって歩行者Pを受け止めた際には、底壁部71におけるガス流入口81の前縁側部位72(周縁部位)が、車体側壁部46aからの浮き上がりを抑制されて、車体側壁部46a側に圧接されるような態様となって、ガス流路部88を安定して閉塞させることができ、ガス流入口81から、エアバッグ45におけるメインバッグ46側に膨張用ガスが逆流することを、的確に抑制できる(図17のB参照)。なお、このような点を考慮しなければ、逆止弁機構は、内圧維持チャンバの底壁部側に設けなくともよく、周壁の領域に配置させる構成としてもよい。
【0047】
特に、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガス流入口81は、左右両側と後方側とを閉塞されて、前方側の領域でのみ、メインバッグ46と連通される構成であることから、膨張完了時において、斜め前上方から後下方に向かうように移動してくる歩行者P(図16参照)を、インナバッグ65によって受け止める際に、前側を圧縮させるようなインナバッグ65の挙動に伴って、底壁部71におけるガス流入口81の前縁側部位72の部位が、車体側壁部46aから浮き上がることなく、安定して、車体側壁部46a側に圧接させることができ、ガス流路部88を安定して閉塞させることができる。なお、ガス流入口は、後方側や左側あるいは右側から、内部に膨張用ガスを流入させるような構成としてもよいが、このようなインナバッグの挙動を考慮すれば、前方側からのみ膨張用ガスを流入可能な構成とすることが、好ましい。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、インナバッグ65は、前壁部66cの領域に、上下の幅寸法を縮めるようなつまみ部68を有するとともに、天井壁部70を歩行者側壁部46bに連結させる上側左右結合部位74Fを、左右の中央を後側に位置させ、左右両端側にかけて前側に位置させるように、湾曲させて構成されて、歩行者Pを実際に受け止める膨張完了時の前上端側を、歩行者側壁部46bから離隔させてなだらかに傾斜させるように湾曲させて構成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ45では、斜め前上方から後下方に向かうように移動してくる歩行者Pは、即座にインナバッグ65によって受け止められず、まず、カウルカバー部48に受け止められ、その後、前上端側を、進入してくる歩行者Pに対して正対させるように湾曲させてているインナバッグ65によって受け止められることとなる。そのため、歩行者Pを、メインバッグ46におけるカウルカバー部48とインナバッグ65とによって、的確に受け止めることができる。
【0048】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ45が、一般膨張部を構成するメインバッグ46の内部に、内圧維持チャンバを構成する袋状のインナバッグ65を配置させる構成であることから、周壁を直接車体側壁部と歩行者側壁部とに連結させるようにして、内圧維持チャンバを構成する場合と比較して、製造が容易であり、かつ、かつ、内圧維持チャンバを袋状としたことから、内部に膨張用ガスを流入させて膨張した後のメインバッグ46側への膨張用ガスの流出を抑制しやすく、内圧維持チャンバ(インナバッグ)の内圧も維持しやすい。なお、このような点を考慮しなければ、内圧維持チャンバを、両端を車体側壁部と歩行者側壁部とに連結させた略四角筒状の周壁に囲まれる領域から、構成してもよい。
【0049】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、内圧維持チャンバとしてのインナバッグ65が、長手方向を左右方向に略沿わせるようにして、エアバッグ45の膨張完了時に、収納部位としてのケース20の上方を覆うように配置される構成であることから、膨張完了時のエアバッグ45において、ケース20の上方(実際には前上方)を覆う領域に歩行者Pが接触した際に、底付きせず、歩行者Pが、エアバッグ45を介してケース20と接触することを抑制できる。なお、インナバッグの配置位置は実施形態に限定されるものではなく、例えば、ワイパの上方を覆うような位置に、配置させる構成としてもよい。
【0050】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、逆止弁機構80が、ケース20の上方を覆うように左右に長尺状として配置されるインナバッグ65における左右両側に一箇所ずつ、形成されていることから、インナバッグを左右にバランスよく迅速に膨張させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、逆止弁機構は、インナバッグの左右の略中央、あるいは、左右両端側のどちらか一方のみに、配設させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…ボディ、7…カウル、15…フードパネル、20…ケース(収納部位)、30…インフレーター、45…エアバッグ、46…メインバッグ(一般膨張部)、65…インナバッグ(内圧維持チャンバ)、66…周壁部(周壁)、66a…上端、66b…下端、70…天井壁部、71…底壁部、72…前縁側部位(周縁部位)、80…逆止弁機構、81…ガス流入口、83…区画結合部位、84L,84R…端側結合部位、85…中央側結合部位、V…車両、M…歩行者用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17