(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】尿素水供給装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20240402BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240402BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240402BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F01N3/08 B ZAB
F01N3/24 L
F02D45/00 345
F02D45/00 360A
B01D53/94 400
(21)【出願番号】P 2021089143
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魚住 昭文
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-55210(JP,A)
【文献】特開2019-74038(JP,A)
【文献】特開2020-94516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/24
F02D 45/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素水を内燃機関の排気通路へ供給する尿素水供給装置であって、
尿素水を貯留するタンクと、
前記タンク内に貯留された尿素水の温度である尿素水温度を検出する温度センサと、
前記タンク内に貯留された尿素水を加熱するヒータと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記尿素水温度が第1所定温度以下のとき、前記ヒータを駆動して尿素水を解凍するヒータ制御部と、
前記タンク内に貯留された尿素水の解凍を判定する解凍判定部と、を含み、
前記解凍判定部は、前記ヒータの駆動が停止した時点から所定期間経過後における前記尿素水温度の低下量が所定値以下のとき、前記タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定するよう構成されている、尿素水供給装置。
【請求項2】
前記解凍判定部は、前記ヒータの駆動が停止した時点から所定時間経過後の前記尿素水温度が第2所定温度以上のとき、前記タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定するよう構成され、
前記第2所定温度は、前記第1所定温度より低い温度である、請求項1に記載の尿素水供給装置。
【請求項3】
前記内燃機関および前記尿素水供給装置は車両に搭載されており、
前記解凍判定部は、前記ヒータの駆動が停止した時点から、前記タンク内に貯留された尿素水の攪拌度合いを算出し、前記攪拌度合いが閾値を超えたときの前記尿素水温度が第3所定温度以上のとき、前記タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定するよう構成され、
前記第3所定温度は、前記第1所定温度より低い温度である、請求項1に記載の尿素水供給装置。
【請求項4】
前記解凍判定部は、前記車両の車速の変化量に基づいて前記攪拌度合いを算出するよう構成されており、
前記ヒータの駆動が停止した時点から、前記車速の変化量の積算値である車速変化量積算値を算出し、前記車速変化量積算値が所定の閾値を超えたとき、前記攪拌度合いが前記閾値を超えたと判定する、請求項3に記載の尿素水供給装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記排気通路へ供給する尿素水供給量を補正する添加量補正値を算出する添加量補正値算出部を、さらに含み、
前記添加量補正値算出部は、前記解凍判定部で、前記タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定されていない場合、解凍状態であると判定されているときと比較して、前記排気通路へ供給する尿素水供給量が減少するように、前記添加量補正値を算出するよう構成されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の尿素水供給装置。
【請求項6】
前記タンク内に貯留された尿素水の水位を検出する水位センサを、さらに備え、
前記内燃機関および前記尿素水供給装置は車両に搭載されており、
前記制御装置は、前記タンク内に貯留された尿素水の量である尿素水量を算出する、尿素水量推定部を、さらに含み、
前記尿素水量推定部は、
前記解凍判定部で前記タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定され、かつ、前記車両が平坦路に停車中であるときに、前記水位に基づいて前記尿素水量を算出し、前記解凍判定部で前記タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定されていないとき、あるいは、前記車両が走行中であるとき、前記水位に基づいて算出した前記尿素水量から、前記排気通路へ供給する尿素水供給量を減算して、前記尿素水量を算出するよう構成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の尿素水供給装置。
【請求項7】
前記尿素水量推定部は、前記尿素水量が所定値以下の場合、警報を行うよう構成されている、請求項6に記載の尿素水供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、尿素水供給装置に関し、特に、尿素水を内燃機関の排気通路へ供給する尿素水供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する排気浄化システムとして、排気通路に噴射された尿素水からアンモニアを生成し、生成したアンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する選択還元触媒(以下、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒とも称する)を備えた排気浄化システムが知られている。たとえば、特開2011-241735号公報(特許文献1)には、尿素水タンクに設けられ尿素水の温度を検出する温度センサと、尿素水タンクに挿通したタンクヒータラインと、エンジンの冷却水をタンクヒータラインに流通して凍結した尿素水を解凍する解凍制御部とを備えたSCRシステムが開示されている。この解凍制御部は、温度センサで検出した尿素水の温度が予め設定された解凍完了判定値に達し、尿素水を圧送するサプライモジュール内を流れる尿素水の温度が目標温度以上であって、予め外気温度ごとに設定された所定時間が経過したら、尿素水タンクの尿素水が全て解凍された状態と判断し、解凍制御を終了するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凍結した状態の尿素水を加熱すると、融点に達するまで尿素水の温度は上昇し、融点に達した時点で融解(解凍)が生じる。その後さらに加熱していくと、尿素水の温度は融点で一定のまま解凍が進行していき、尿素水タンク内の全ての尿素水が解凍した状態(完全解凍)になると尿素水の温度は再び上昇しはじめる。つまり、解凍開始から完全解凍までの期間では、固体の状態(固相)と液体の状態(液相)の両方が存在する状態(半解凍状態)となる。このため、解凍を判定する閾値としての温度を、融点付近の温度域に設定すると、温度センサ近傍の尿素水は液体(液相)であるが、温度センサから離れた位置の尿素水は未解凍の固体(固相)の状態であり、固体の状態と液体の状態が存在する状態(半解凍状態)であっても、解凍状態であると、誤判定する可能性がある。また、この誤判定を回避するため、解凍を判定する閾値としての温度を融点に対して余裕を持たせて設定し、尿素水温度がこの閾値を超えた状態が所定時間継続したとき解凍状態であると判定すると、無駄に尿素水を加熱する可能性があり、加熱するためのエネルギーの消費量が多くなる可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、尿素水の解凍状態を適切に判定することが可能な、尿素水供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の尿素水供給装置は、尿素水を内燃機関の排気通路へ供給する尿素水供給装置であって、尿素水を貯留するタンクと、タンク内に貯留された尿素水の温度である尿素水温度を検出する温度センサと、タンク内に貯留された尿素水を加熱するヒータと、制御装置と、を備える。制御装置は、尿素水温度が第1所定温度以下のとき、ヒータを駆動して尿素水を解凍するヒータ制御部と、タンク内に貯留された尿素水の解凍を判定する解凍判定部と、を含む。解凍判定部は、ヒータの駆動が停止した時点から所定期間経過後における尿素水温度の低下量が所定値以下のとき、タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定するよう構成されている。
【0007】
この構成によれば、制御装置のヒータ制御部は、タンク内に貯留された尿素水の温度である尿素水温度が第1所定温度以下のとき、ヒータを駆動する。これにより、ヒータで尿素水が加熱されて、尿素水が解凍される。そして、ヒータ制御部は、尿素水温度が第1所定温度を超えると、ヒータの駆動を停止する。解凍判定部は、ヒータの駆動が停止した時点から所定期間経過後における尿素水温度の低下量が所定値以下のとき、タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定する。
【0008】
ヒータ制御部によりヒータが駆動され、凍結した尿素水が加熱されると、融点に達するまで尿素水の温度は上昇し、融点に達した時点で融解(解凍)が生じ、解凍開始から解凍状態までの期間では、固体の状態(固相)と液体の状態(液相)の両方が存在する状態(半解凍状態)となる。尿素水の無駄な加熱を抑制するためには、第1所定温度を、尿素水の融点より若干高い温度に設定することが好ましい。このため、尿素水温度が第1所定温度を超え、ヒータの駆動を停止したとき、温度センサ周囲の尿素水は液体(液相)であるが、温度センサから離れた位置の尿素水は未解凍の固体(固相)の状態である半解凍状態である可能性がある。
【0009】
タンク内に貯留された尿素水が半解凍状態の場合、ヒータの駆動が停止すると、温度センサ周囲の尿素水(液相)は、未解凍の尿素水(固相)に熱が奪われ、凝固点に向かって温度が低下する。一方、タンク内に貯留された尿素水が解凍状態の場合、ヒータの駆動が停止しても、未解凍の尿素水(固相)はタンク内に存在しないので、温度センサ周囲の尿素水(液相)の温度の低下量は小さい。
【0010】
したがって、解凍判定部は、ヒータの駆動が停止した時点から所定期間経過後における尿素水温度の低下量が所定値以下のとき、タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定することができ、尿素水の解凍状態を適切に判定することが可能になる。
【0011】
好ましくは、解凍判定部は、ヒータの駆動が停止した時点から所定時間経過後の尿素水温度が第2所定温度以上のとき、タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定するよう構成してもよい。第2所定温度は第1所定温度より低い温度である。
【0012】
この構成によれば、ヒータの駆動が停止した時点から所定時間経過後における尿素水温度の温度が、第2所定温度以上のとき、ヒータの駆動が停止した時点から所定期間経過後における尿素水温度の低下量が所定値以下であると判定し、タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定することができる。
【0013】
好ましくは、内燃機関および尿素水供給装置は車両に搭載されており、解凍判定部は、ヒータの駆動が停止した時点から、タンク内に貯留された尿素水の攪拌度合いを算出し、攪拌度合いが閾値を超えたときの尿素水の温度が第3所定温度以上のとき、タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定するよう構成してもよい。第3所定温度は第1所定温度より低い温度である。
【0014】
さらに、ヒータの駆動が停止した時点から、車両の車速の変化量の積算値である車速変化量積算値を算出し、車速変化量積算値が所定の閾値を超えたとき、攪拌度合いが閾値を超えたと判定してもよい。
【0015】
内燃機関および尿素水供給装置が車両に搭載されている場合、尿素水を貯留するタンクも、車両に搭載される。車両が走行すると、車両に加わる加速度や振動によりタンク内の尿素水が攪拌され、液相の尿素水と未解凍の固相の尿素水との熱交換が促進されるので、温度センサ近傍の尿素水(液相)は、凝固点に向かって温度が低下する。したがって、タンク内に貯留された尿素水の攪拌度合いを用いることにより、より精度良く、タンク内に貯留された尿素水の解凍状態を判定することができる。
【0016】
好ましくは、制御装置は、排気通路へ供給する尿素水供給量を補正するための添加量補正値を算出する添加量補正値算出部を、さらに含み、添加量補正値算出部は、解凍判定部で、タンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定されていない場合、解凍状態であると判定されているときと比較して、排気通路へ供給する尿素水供給量が減少するように、添加量補正値を算出するよう構成してもよい。
【0017】
この構成によれば、解凍判定部で、尿素水が解凍状態であると判定されず、タンク内に貯留された尿素水が半解凍状態であり、液相の(解凍した)尿素水が少ない場合には、排気通路へ供給する尿素水供給量が減少するように、添加量補正値を算出する。これにより、排気通路へ供給可能な液相の尿素水の量が少ないときには、排気通路へ供給する尿素水供給量を減少できるので、排気通路へ供給する尿素水が欠乏する可能性を低くすることができる。
【0018】
好ましくは、内燃機関および尿素水供給装置は車両に搭載されており、尿素水供給装置は、タンク内に貯留された尿素水の水位を検出する水位センサを、さらに備え、制御装置は、タンク内に貯留された尿素水の量である尿素水量を算出する尿素水量推定部を、さらに含んでもよい。尿素水量推定部は、解凍判定部でタンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定され、かつ、車両が平坦路に停車中であるときに、水位センサで検出した水位に基づいて尿素水量を算出し、解凍判定部でタンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定されていないとき、あるいは、車両が走行中であるとき、水位センサで検出した水位に基づいて算出した尿素水量から、排気通路へ供給する尿素水供給量を減算して、尿素水量を算出するよう構成してもよい。
【0019】
タンク内に貯留された尿素水が、液体(液相)と固体(固相)の状態である半解凍状態の場合、車両の走行時、車両に加わる加速度や振動によりタンク内の尿素水が攪拌されると、液相の尿素水が固相の尿素水に飛散して再凍結し、水位センサで検出される水位が低下する可能性がある。タンクに貯留された尿素水の量(尿素水量)を、水位を用いて算出している場合、液相の尿素水が固相の尿素水に飛散して再凍結し、水位センサで検出される水位が低下すると、尿素水量が、実際値より少なく算出される可能性がある。
【0020】
解凍判定部でタンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定され、かつ、車両が平坦路に停車中であるときには、水位センサで検出した水位は、尿素水量を適切に表している。したがって、解凍判定部でタンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定され、かつ、車両が平坦路に停車中であるときに、水位センサで検出した水位に基づいて尿素水量を算出することにより、精度よく、尿素水量を求めることができる。
【0021】
解凍判定部でタンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定されていないときには、液相の尿素水が固相の尿素水に飛散して再凍結し、水位センサで検出される水位が低下する可能性がある。また、車両の走行中は、車両に加わる加速度や振動によりタンク内の尿素水の液面が変動する。したがって、解凍判定部でタンク内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定されていないとき、あるいは、車両が走行中であるとき、水位センサで検出した水位に基づいて算出した尿素水量から、排気通路へ供給する尿素水供給量を減算して、尿素水量を算出することにより、精度よく、尿素水量を求めることができる。
【0022】
尿素水量推定部は、尿素水量が所定値以下の場合、警報を行うよう構成されてもよい。
この構成によれば、精度良く求めた尿素水量を用いて警報を行うことができるので、適切な時期に、尿素水を補充することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、尿素水の解凍状態を適切に判定することが可能な、尿素水供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施の形態に係る尿素水供給装置を搭載した車両の全体構成図である。
【
図2】尿素水タンク40に貯留された尿素水の温度変化と相変化を示す図である。
【
図3】(A)および(B)は、尿素水タンク40に貯留された尿素水が、半解凍状態である場合を示す図である。
【
図4】本実施の形態において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。
【
図5】ヒータ制御部110で実行されるヒータ制御の処理を示すフローチャートである。
【
図6】解凍判定部120で実行される解凍判定制御の処理を示すフローチャートである。
【
図7】尿素水温度Tuwの推移を説明する図である。
【
図8】添加量補正値算出部140で実行される添加量補正値算出制御の処理を示すフローチャートである。
【
図9】尿素水量推定部130で実行される尿素水量推定制御の処理を示すフローチャートである。
【
図10】変形例1において、解凍判定部120で実行される解凍判定制御の処理を示すフローチャートである。
【
図11】変形例1における尿素水温度Tuwの推移を説明する図である。
【
図12】変形例3における、解凍判定部120で実行される解凍判定制御の処理を示すフローチャートである。
【
図13】尿素水温度Tuwの推移と解凍した(液相の)尿素水の量の関係を説明する図である。
【
図14】、変形例4において、温度低下時間Tから補正値kを求めるマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
図1は、本実施の形態に係る尿素水供給装置を搭載した車両1の全体構成図である。
図1において、車両1は、内燃機関10と、トルクコンバータ付き自動変速機3と、ディファレンシャルギヤ5と、駆動輪7とを備える。内燃機関10は、圧縮自己着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)であり、内燃機関本体のシリンダ(気筒)に形成された燃焼室に、燃料噴射弁(インジェクター)から燃料を噴射し、圧縮自己着火を行う内燃機関である。内燃機関10から出力された動力は、自動変速機3およびディファレンシャルギヤ5を介して駆動輪7に伝達される。
【0027】
内燃機関10の燃焼室から排出される排気(排気ガス)は、排気マニホールドに集められ、排気通路20を介して、外気に放出される。排気通路20には、上流側から、酸化触媒22、DPF(Diesel Particulate Filter)24、SCR触媒26、酸化触媒28が設けられている。酸化触媒22は、排気中の一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)に酸化し、排気中の炭化水素(HC)を水(H2O)とCO2に酸化する。また、排気中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化する。これは、窒素酸化物(NOx)の還元反応は、NOとNO2が1:1の比率のとき、反応速度が速いため、ディーゼル内燃機関の排気中にはNOが多く含まれているため、排気中のNOをNO2に酸化して、NOとNO2の比を1:1に近づけるためである。
【0028】
DPF24は、排気中の微粒子を捕集し、捕集した微粒子を適宜燃焼除去することにより、浄化する。SCR触媒26は、排気中のNOxを還元浄化する。SCR触媒26は、たとえば、セラミック担体に銅(Cu)イオン交換ゼオライトを触媒として担持したものであり、アンモニア(NH3)を還元剤として用いることにより、高い浄化率を示すものである。還元剤として利用するアンモニアは、SCR触媒26の上流の排気通路20に供給した尿素水を加水分解することにより生成する。SCR触媒26の上流の排気通路には、尿素添加弁(尿素水噴射インジェクター)30が設けられ、尿素水タンク40からポンプ42によって圧送される尿素水を、尿素添加弁30から、SCR触媒26の上流の排気通路20に噴射する。酸化触媒28は、SCR触媒26から排出された(スリップした)アンモニアを酸化して浄化する。
【0029】
本実施の形態において、尿素水を内燃機関10の排気通路20へ供給する尿素供給装置は、尿素水を貯留する尿素水タンク40と、尿素水タンク40に貯留された尿素水を尿素添加弁30に供給する供給通路41と、供給通路41に尿素水を圧送するポンプ42と、水位センサ43と、温度センサ44と、ヒータ45と、を備える。
【0030】
ポンプ42は、尿素水タンク40内に設けられており、図示しない電動モータによって駆動される電動ポンプである。ポンプ42は、吸入口から吸入した尿素水を吐出口から供給通路41に圧送する。そして、尿素添加弁30が開弁することにより、尿素水がSCR触媒26の上流の排気通路20に噴射される。
【0031】
水位センサ43は、たとえば、尿素水タンク40の底面に設けられており、超音波を水面(液面)に向かって照射し、水面で反射した反射波の伝搬時間を用いて、尿素水タンク40に貯留された尿素水の水位Lwを検出する。
【0032】
温度センサ44は、ポンプ42とヒータ45の間に配置されており、尿素水タンク40に貯留された尿素水の温度(尿素水温度Tuw)を検出する。ヒータ45は、尿素水タンク40に貯留された尿素水を加熱するものであり、たとえば、PCT(Positive Temperature Coefficient)ヒータであってよい。ヒータ45は、図示しない車載バッテリの電力が通電されることにより発熱し、凍結した尿素水を加熱して解凍(融解)する。ヒータ46は、供給通路41を加熱することにより、供給通路41内で凍結した尿素水を解凍する。
【0033】
尿素水供給装置は、制御装置として、E/G-ECU(Electronic Control Unit)100を備える。E/G-ECU100は、CPU(Central Processing Unit)101、処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等からなるメモリ102、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)等を含み、メモリ102に記憶された情報、水位センサ43、温度センサ44、車速センサ151、前後加速度センサ152、横加速度センサ153、エンジン回転速度センサ154、等の各種センサからの情報に基づいて、所定の演算処理を実行する。そして、E/G-ECU100は、演算処理の結果に基づいて、尿素添加弁30、ポンプ42、ヒータ45、ヒータ46、および内燃機関10等を制御する。
【0034】
HMI装置50は、車両1の運転を支援するための情報をユーザに提供する装置である。HMI装置50は、代表的には、車室内に設けられたディスプレイであり、スピーカ等も含む。HMI装置50は、視覚情報(図形情報、文字情報)や聴覚情報(音声情報、音情報)等を出力することによって様々な情報をユーザに提供する。
【0035】
本実施の形態において用いられる尿素水の融点(凝固点)は、たとえば、-11℃であり、寒冷地では外気温度が-11℃以下になることがある。この環境下で、内燃機関10が停止した状態で、長時間にわたって車両1を停車していると、尿素水タンク40に貯留された尿素水が凍結することがある。尿素水が凍結すると、尿素添加弁30から尿素水を噴射できなくなるので、SCR触媒26によるNOxの浄化が行えない。この場合には、ヒータ45、およびヒータ46を駆動(通電)して、尿素水の解凍を行うことが望まれる。
【0036】
図2は、尿素水タンク40内に貯留された尿素水の温度変化と相変化を示す図である。
図2に示すように、凍結した状態の尿素水を加熱すると、融点(凝固点)に達するまで尿素水の温度は上昇し、融点に達した時点で融解(解凍)が生じる。その後さらに加熱していくと、尿素水の温度は融点で一定のまま解凍が進行していき、尿素水タンク40内の全ての尿素水が解凍した状態(完全解凍)になると尿素水の温度は再び上昇しはじめる。なお、本開示において、尿素水タンク40内の全ての尿素水が解凍した状態を、「解凍状態」と称し、完全解凍と称する場合もある。このように、解凍開始から解凍状態(完全解凍)までの期間では、固体の状態(固相)と液体の状態(液相)の両方が存在する状態(半解凍状態)となる。
【0037】
図3は、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が、半解凍状態である場合を示す図である。
図3(A)に示すように、半解凍状態では、ヒータ45の周囲の尿素水は解凍して液体(液相)であるが、ヒータ45から離れた位置の尿素水は未解凍の固体(固相)の状態である場合が多い。このため、ヒータ45の近傍に設けた温度センサ44の周囲の尿素水は液体(液相)であるが、温度センサ44から離れた位置の尿素水は未解凍の固体(固相)の状態で存在する。温度センサ44で検出した尿素水温度Tuwを用いて解凍状態を判定する場合、尿素水の無駄な加熱を抑制するため、解凍状態を判定する閾値としての温度を融点より若干高い温度に設定すると、たとえば、解凍状態を判定する閾値としての温度を
図2に示す第1所定温度Th1に設定すると、半解凍状態であっても、ヒータ45周辺の尿素水の温度は第1所定温度Th1以上になるので、解凍状態(完全解凍)であると誤判定する可能性がある。また、この誤判定を回避するため、解凍を判定する閾値としての温度を融点に対して充分な余裕を持たせて設定し、たとえば、
図2に示すTHに設定し、尿素水温度Tuwがこの閾値(TH)を超えた状態が所定時間継続したときに完全解凍であると判定すると、無駄に尿素水を加熱する可能性があり、エネルギー(電力)の消費量が多くなる可能性がある。
【0038】
尿素水タンク40内に貯留された尿素水が、半解凍状態の場合、車両1の走行時、車両1に加わる加速度や振動により尿素水タンク40内の尿素水が攪拌されると、
図3(B)に示すように、液相の尿素水が固相の尿素水に飛散して再凍結し、液相の尿素水の液面(水位)が低下して、水位センサ43で検出される水位Lwが低下する可能性がある。尿素水タンク40内に貯留された尿素水の量(尿素水量)を、水位をLw用いて算出している場合、水位センサ43で検出される水位Lwが低下すると、尿素水量が、実際値より少なく算出される可能性がある。
【0039】
尿素水が半解凍状態の場合、ヒータ45の駆動が停止すると、温度センサ44の周囲の尿素水(液相)は、未解凍の尿素水(固相)に熱が奪われ、凝固点に向かって温度が低下する。一方、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が解凍状態の場合、ヒータ45の駆動が停止しても、未解凍の尿素水(固相)は尿素水タンク40内に存在しないので、温度センサ44の周囲の尿素水(液相)の温度の低下量は小さい。本実施の形態では、ヒータ45の駆動が停止した時点から所定期間経過後における尿素水温度Tuwの低下量を用いて、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が解凍状態である否かを判定する。
【0040】
図4は、本実施の形態において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。ヒータ制御部110は、温度センサ44で検出した尿素水温度Tuw等を用いて、ヒータ45を制御する。解凍判定部120は、尿素水温度Tuw等を用いて、尿素水タンク40内に貯留された尿素水の解凍状態を判定する。尿素水量推定部130は、水位センサ43で検出した水位Lw等を用いて、尿素水量を算出する。また、添加量補正値算出部140は、尿素添加弁30から排気通路20へ供給(噴射)する尿素水供給量の補正値を算出する。これらの機能ブロックは、メモリ102に記憶されたプログラムによって達成されてよく、E/G-ECU100内に構成された、図示しないハードウェア(たとえば、カウンタ、タイマ等)を併用してもよい。
【0041】
〈ヒータ制御〉
図5は、ヒータ制御部110で実行されるヒータ制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、図示しないイグニッションスイッチがONされたあと、イグニッションスイッチがOFFされ内燃機関10の作動が停止するまでの間、所定期間毎に繰り返し処理される。イグニッションスイッチがONされると、まずステップ(以下、ステップをSと略す)10において、温度センサ44で検出した尿素水温度Tuwが、第1所定温度Th1以下か否かを判定する。本実施の形態において、第1所定温度Th1は尿素水の融点(凝固点)である-11℃より、たとえば6~10℃程度高い温度であり、-1℃~-5℃であってよい。尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1以下の場合、肯定判定されS11へ進む。
【0042】
S11では、フラグFcが1であるか否かを判定する。フラグFcは、ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータの駆動(通電)を停止して、後述する解凍判定制御を実行中であることを示すフラグである。解凍判定制御中は、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1以下の場合であっても、ヒータ45の駆動(通電)を禁止する。なお、フラグFcは、イグニッションスイッチがONされたときに、0にリセットされる。したがって、イグニッションスイッチがONされたあと、最初にS11が処理されると、S11で否定判定されS12へ進む。S12で、ヒータ45を駆動(通電)したあと、S13に進んで、フラグFmを0に設定し、今回のルーチンを終了する。なお、フラグFmは、尿素水の状態を示すフラグであり、フラグFmが0のときは、尿素水が凍結あるいは半解凍状態であることを示し、フラグFmが1にときは、尿素水が解凍状態(完全解凍)であることを示す。
【0043】
このように、イグニッションスイッチがONされたとき、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1以下の場合は、尿素水タンク40に貯留された尿素水が凍結している蓋然性が高いので、S10~S13の処理によってヒータ45を駆動し、凍結している尿素水の解凍を行う。また、フラグFmを0に設定し、尿素水が凍結状態であることを示す。
【0044】
イグニッションスイッチがONされたとき、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1を超えている場合、あるいは、(S10~S13が繰り返し処理されて)ヒータ45による加熱により尿素水の解凍が促進され、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1を超えると、S10で否定判定され、S14へ進む。
【0045】
S14では、ヒータ45が駆動されているか否かを判定する。ヒータ45が駆動されている場合は、肯定判定されS15へ進み、フラグFcを1に設定したあと、S16へ進んで、ヒータ45の駆動(通電)を停止し、今回のルーチンを終了する。
【0046】
ヒータ45が駆動されていない場合(ヒータ45の駆動が停止している場合)は、S14で否定判定されS17へ進む。S17では、フラグFcが1であるか否かを判定する。フラグFcが0のときは、否定判定されS18に進んで、フラグFmを1に設定したあと、S16へ進んでヒータ45の停止を維持して、今回のルーチンを終了する。フラグFcは、解凍判定制御を実行中であることを示すフラグであり、イグニッションスイッチがONされたときに、0にリセットされる。したがって、イグニッションスイッチがONされた際に、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1を超えており、S10で否定判定されたときには、S14およびS17で否定判定され、S18においてフラグFmが1に設定される。すなわち、イグニッションスイッチがONされた際に、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1を超えている場合、尿素水は凝固点(融点)以下の温度に至っていないので、尿素水は、凍結しておらず、解凍状態(完全解凍)であるため、フラグFmを1に設定する。
【0047】
フラグFcが1の場合は、S17で肯定判定され、S16へ進んでヒータ45の停止を維持して、今回のルーチンを終了する。フラグFcは、後述する解凍判定制御において、尿素水の解凍状態を判定する期間中にヒータ45の駆動を禁止するために、1に設定される。したがって、ヒータ45の駆動が停止した状態であるため、S14で否定判定されても、解凍判定制御において尿素水の解凍状態を判定するまでは、フラグFmが1に設定されることはない。
【0048】
〈解凍判定制御〉
図6は、解凍判定部120で実行される解凍判定制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートも、図示しないイグニッションスイッチがONされたあと、イグニッションスイッチがOFFされ内燃機関10の作動が停止するまでの間、所定期間毎に繰り返し処理される。まず、S20において、フラグFcが1であるか否かを判定する。フラグFcは、
図5のS15の処理で1に設定され、ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータの駆動を停止したことを示すフラグである。フラグFcが1に設定されており、ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータ45の駆動を停止している場合には、肯定判定されS21へ進む。フラグFcが0の場合には、否定判定され、解凍判定を行うことなく、今回のルーチンを終了する。
【0049】
続くS21で、カウンタCtをインクリメントしたあと、S22へ進んで、カウンタCtが所定値A以上か否かを判定する。所定値Aは、ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータ45の駆動を停止した時点から、所定時間経過したことを判定する閾値である。所定値Aは、たとえば、カウンタCtによる計時が10分に相当する値であってよい。S22において、カウンタCtが所定値Aより小さい場合、否定判定され今回のルーチンを終了する。
【0050】
ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータ45の駆動を停止した時点(フラグFcが1に設定された時点)から、所定時間が経過すると、カウンタCtが所定値A以上になるので、S22で肯定判定されS23へ進む。S23では、カウンタCtをリセットするとともに、フラグFcを0に設定する。フラグFcが0に設定されることにより、
図5のS11で否定判定され、ヒータ45を駆動(通電)することが可能になる。
【0051】
続く、S24では、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2を下回るか否かを判定する。第2所定温度Th2は、第1所定温度Th1より低い温度である。たとえば、第2所定温度Th2は、第1所定温度Th1より2℃~3℃低い温度であってよく、-3℃~-8℃であってよい。S24において、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2を下回る場合、肯定判定され今回のルーチンを終了する。
【0052】
S24において、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以上の場合、否定判定されS26へ進む。S26では、フラグFmを1に設定し、今回のルーチンを終了する。
【0053】
図7は、尿素水温度Tuwの推移を説明する図である。縦軸は、車両1の車速SPD、尿素水温度Tuw、カウンタCtの値、ヒータ45の駆動(ON)/停止(OFF)の項目を表しており、横軸は、時間を示している。
図7において、時刻t0でイグニッションスイッチがONされたとき、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1以下の場合は、
図5のヒータ制御によって、ヒータ45が駆動(ON)され、凍結している尿素水の解凍が行われる。時刻t1において、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1を上回ると、
図5のS15でフラグFcが1に設定され、S16においてヒータ45の駆動が停止(OFF)される。時刻t1でフラグFcが1に設定されると、
図6の解凍判定制御のS21において、カウンタCtのインクリメントが開始される。これにより、ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータ45の駆動を停止した時刻t1から、カウンタCtの計時が開始される。
【0054】
ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータ45の駆動を停止したとき、尿素水タンク40に貯留された尿素水が半解凍状態である場合、温度センサ44の周囲の尿素水(液相)は、未解凍の尿素水(固相)によって熱が奪われ、凝固点に向かって温度が低下する。したがって、温度センサ44で検出した尿素水温度Tuwは、実線で示すように、比較的大きく低下し、第2所定温度Th2を下回る温度まで低下する。なお、車両1が走行すると、車両1に加わる加速度や振動により尿素水タンク40内の尿素水が攪拌され、液相の尿素水と未解凍の固相の尿素水との熱交換が促進されるので、温度センサ44周囲の尿素水(液相)は、凝固点に向かって温度が顕著に低下する。
【0055】
一方、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が解凍状態の場合、ヒータ45の駆動が停止しても、未解凍の尿素水(固相)が尿素水タンク40内に存在しないので、温度センサ44の周囲の尿素水(液相)の温度の低下量は小さく、尿素水温度Tuwは、一点鎖線で示すように、第2所定温度Th2まで低下することはない。
【0056】
ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータ45の駆動を停止した時刻t1からカウンタCtの計時が開始され、所定時間が経過し、カウンタCtが所定値A以上となった時刻t2において、解凍判定制御(
図6)のS24が処理される。時刻t2における尿素水温度Tuwが、実線で示すように、第2所定温度Th2を下回る場合、尿素水は半解凍状態であるので、S24で肯定判定されてルーチンを終了する。フラグFcは、S23で0に設定されているので、ヒータ制御(
図5)のS11で否定判定され、再度、ヒータ45が駆動(ON)されて、半解凍状態の尿素水の解凍が開始される。
【0057】
時刻t2における尿素水温度Tuwが、一点鎖線で示すように、第2所定温度Th2以上の場合、尿素水は解凍状態(完全解凍)であるので、S24で否定判定され、S25へ進んでフラグFmを1に設定する。これにより、尿素水が解凍状態(完全解凍)であることが判定され、フラグFmが1に設定される。
【0058】
本実施の形態によれば、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1を超えて、ヒータ45の駆動が停止した時点から所定時間経過後における尿素水温度Tuwの温度が、第2所定温度Th2以上のとき、ヒータ45の駆動が停止した時点から所定期間経過後における尿素水温度Tuwの低下量が所定値(|Th1-Th2|)以下であると判定し、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が解凍状態であると判定することができる。本実施の形態によれば、第1所定温度Th1は、尿素水の融点(凝固点)より若干高い(たとえば6~10℃程度高い)温度であり、尿素水の無駄な加熱を抑制しつつ、適切に尿素水の解凍状態を判定することができる。
【0059】
〈添加量補正値算出制御〉
尿素添加弁30から排気通路20内に供給(噴射)される尿素水の量(尿素水供給量)は、一般的に、内燃機関10から排出されるNOx量に応じて設定される。たとえば、内燃機関10の燃料噴射量Fqと回転速度NEをパラメータとしたマップから、内燃機関10から排出されるNOx量(排出NOx量)を求め、排出NOx量に応じた、基本尿素水噴射量Qadを算出する。そして、尿素添加弁30から供給する尿素水の量が、基本尿素水噴射量Qadになるように、尿素添加弁30の開弁時間を制御する。なお、イグニッションスイッチがONされたとき、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1以下であり、尿素水が凍結している場合には、ヒータ45の駆動開始後、所定時間(たとえば、10分)が経過したら、ポンプ42を駆動して尿素水を圧送し、尿素添加弁30から排気通路20内へ尿素水の供給を開始する。
【0060】
尿素水タンク40内に貯留された尿素水が半解凍状態の場合、尿素水が解凍状態(完全解凍)のときに比較して、液体(液相)の尿素水の量が少ない。したがって、尿素水が半解凍状態のとき、基本尿素水噴射量Qadに基づいて尿素水を供給すると、尿素水タンク40内の液体の尿素水が枯渇し、尿素添加弁30から尿素水を供給できくなる可能性がある。本実施形態では、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が、解凍状態(完全解凍)になるまで、基本尿素水噴射量Qadを減少補正することにより、尿素水タンク40内の液体の尿素水が枯渇することを、抑制する。
【0061】
図8は、添加量補正値算出部140で実行される添加量補正値算出制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、内燃機関10の作動中に、所定期間毎に繰り返し処理される。まず、S40において、フラグFmが1か否かを判定する。フラグFmが0の場合、否定判定されS41へ進んで、補正値kをβに設定し、今回のルーチンを終了する。βは、1より小さい正の値であり、たとえば、0.9であってよい。フラグFmが1の場合、S40で肯定判定されS42に進んで、補正値kを1に設定し、今回のルーチンを終了する。
【0062】
図示しない、尿素添加弁制御ルーチンでは、排出NOx量に応じて算出した基本尿素水噴射量Qadと補正値kを用いて、尿素水噴射量Quwを、「尿素水噴射量Quw=基本尿素水噴射量Qad×k」として演算する。そして、尿素添加弁30から供給する尿素水の量が、尿素水噴射量Quwになるように、尿素添加弁30の開弁時間を制御する。フラグFmが1の場合、すなわち、尿素水タンク40に貯留された尿素水が解凍状態(完全解凍)の場合は、補正値kは1であり、基本尿素水噴射量Qadと尿素水噴射量Quwは同じ値であり、基本尿素水噴射量Qadは減少補正されない。フラグFmが0の場合、すなわち、尿素水タンク40に貯留された尿素水が半解凍状態の場合は、補正値kは、1より小さい値(たとえば、0.9)であり、基本尿素水噴射量Qadが減少補正される。これによって、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が、解凍状態(完全解凍)になるまで、基本尿素水噴射量Qadが減少補正されるので、尿素水タンク40内の液体の尿素水が枯渇することを、抑制することができる。
【0063】
〈尿素水量推定制御〉
図3(B)に示したように、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が、半解凍状態の場合、車両1の走行時、車両1に加わる加速度や振動により尿素水タンク40内の尿素水が攪拌されると、液相の尿素水が固相の尿素水に飛散して再凍結し、液相の尿素水の液面(水位)が低下して、水位センサ43で検出される水位Lwが低下する可能性がある。尿素水タンク40内に貯留された尿素水の量(尿素水量)を、水位をLw用いて算出している場合、水位センサ43で検出される水位Lwが低下すると、尿素水量が、実際値より少なく算出される可能性がある。
【0064】
本実施の形態では、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が、解凍状態(完全解凍)であることを条件として、水位センサ43で検出した水位Lwに基づいて、尿素水タンク40に貯留された尿素水の量(尿素水量ELw)を算出する。
図9は、尿素水量推定部130で実行される尿素水量推定制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートも、図示しないイグニッションスイッチがONされたあと、イグニッションスイッチがOFFされ内燃機関10の作動が停止するまでの間、所定期間毎に繰り返し処理される。まず、S30において、フラグFmが1であるか否かを判定する。尿素水タンク40内に貯留された尿素水が解凍状態であり、フラグFmが1であり、肯定判定されると、S31へ進む。
【0065】
S31では、車速センサ151で検出した車両1の車速SPDが所定値B以下か否かを判定する。所定値Bは、車両1が停車状態と判定できる値であり、たとえば、2~3km/hであってよい。車速SPDが所定値B以下であり、車両1が停車状態であると判定されると、S32へ進む。
【0066】
S32では、前後加速度センサ152で検出した車両1の前後加速度(前後G)が0であり、かつ、横加速度センサ153で検出した車両1の横加速度(横G)が0であるか否かを判定する。前後Gおよび横Gが0であり、肯定判定されると、S33へ進む。車両1の停車時に、車両1の前後Gおよび横Gが0の場合、車両1はほぼ平坦路に停車している蓋然性が高く、尿素水タンク40は傾斜していない(水平状態である)と見做すことができる。なお、必ずしも、「前後G=0、かつ、横G=0」でなくともよく、前後Gおよび横Gの大きさが、車両1がほぼ平坦路に停車していると見做される値より小さい場合に、S33で肯定判定してもよい。
【0067】
S33では、水位センサ43で検出した尿素水の水位Lwを用いて、尿素水タンク40内に貯留された尿素水量ELwを算出する。たとえば、水位Lwと尿素水量ELwの関係を示すマップを予め作成しておき、このマップを用いて、水位Lwから尿素水量ELwを算出してよい。
【0068】
続く、S34では、S33で算出した尿素水量ELwを、尿素水量の前回値ELw(pv)として、メモリ102に記憶する。なお、メモリ102において、尿素水量の前回値ELw(pv)が記憶される領域は、不揮発メモリである。
【0069】
フラグFmが0であり、S30で否定判定された場合、車速SPDが所定値Bより大きく、S31で否定判定された場合、前後Gあるいは横Gの大きさが、車両1がほぼ平坦路に停車していると見做される値より大きく、S32で否定判定された場合には、S35へ進む。
【0070】
S35では、メモリ102から読み出した尿素水量の前回値ELw(pv)から、尿素水供給量Addを減算することにより、尿素水量ELwを算出する。(尿素水量ELw=尿素水量の前回値ELw(pv)-尿素水供給量Add)尿素水供給量Addは、繰り返し処理される本ルーチンが、前回処理されてから今回処理されるまでの間に、尿素添加弁30から排気通路20に供給された尿素水の量である。たとえば、尿素水噴射量Quwを、本ルーチンの前回処理から今回処理まで積算して求めることができる。S35が処理されると、S34へ進んで、S35で算出した尿素水量ELwを、尿素水量の前回値ELw(pv)として、メモリ102に記憶する。
【0071】
S36では、尿素水量ELwが所定値C以下か否かを判定する。所定値Cは、尿素水の残量が低下したとき、尿素水の補充を促すための閾値である。尿素水量ELwが所定値Cを上回る場合は、否定判定され今回のルーチンを終了する。尿素水量ELwが所定値C以下の場合は、肯定判定されS37へ進む。
【0072】
S37では、尿素水の残量が低下したことを警報したあと、今回のルーチンを終了する。たとえば、HMI装置50のディスプレイに尿素水の残量低下を表示するとともに、スピーカから警報音を発するようにしてよい。
【0073】
本実施の形態では、フラグFmが1に設定されているとき、すなわち、解凍判定制御で、尿素水が解凍状態であると判定されているとき、車両1が平坦路に停車中であれば、水位Lwに基づいて尿素水量ELwを算出する。そして、フラグFmが0に設定されているとき、あるいは、車両1が走行中の場合には、水位Lwに基づいて尿素水量ELwから尿素水供給量Addを減算することにより、尿素水量ELwを算出する。したがって、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が、半解凍状態で、液相の尿素水が固相の尿素水に飛散して再凍結し、液相の尿素水の液面(水位)が低下して、水位センサ43で検出される水位Lwが低下する場合があっても、尿素水量ELwを精度よく求めることができる。また、車両1の走行中に液面が変動し、水位Lwが変動する場合であっても、尿素水量ELwを精度よく求めることが可能になる。
【0074】
本実施の形態では、供給通路41を加熱することにより、供給通路41内で凍結した尿素水を解凍するヒータ46の駆動/停止については、特に言及していないが、ヒータ46の駆動/停止は、ヒータ45の駆動/停止と同期するよう制御してよい。また、供給通路41の温度を検出し、供給通路41の温度が、尿素水の凝固点(融点)以下のときに、ヒータ46を駆動(通電)するようにしてもよい。
【0075】
本実施の形態では、添加量補正値算出制御(
図8)において、補正値kを算出し、算出した補正値kを基本尿素水噴射量Qadに乗算することにより、尿素水噴射量Quwを演算している。しかし、S42において算出される補正値k1を0とするとともに、S41で算出される補正値k1をα(正の値)として算出し、補正値k1を基本尿素水噴射量Qadから減算することにより、尿素水噴射量Quwを演算するようにしてもよい。(尿素水噴射量Quw=基本尿素水噴射量Qad-k1)
本実施の形態では、ヒータ45を、PCTヒータから構成していた。しかし、ヒータ45は、尿素水タンク40内に貯留された尿素水を加熱可能なものであれば、PCTヒータ等の電気ヒータに限られない。たとえば、内燃機関10の冷却水を用いて尿素水を加熱する温水加熱であってよく、内燃機関10の排気温度によって加熱する排気加熱であってもよい。
【0076】
(変形例1)
上記の実施形態では、ヒータ45の駆動が停止してから所定時間経過後(カウンタCtが所定値A以上になる時間の経過後)の尿素水温度Tuwの値に基づいて、尿素水の解凍状態を判定していた。車両1が走行すると、車両1に加わる加速度や振動により尿素水タンク40内の尿素水が攪拌され、液相の尿素水と未解凍の固相の尿素水との熱交換が促進されるので、温度センサ44周囲の尿素水(液相)の温度低下が顕著になる。変形例1では、ヒータ45の駆動が停止した時点からの尿素水の攪拌度合いを用いて、尿素水の解凍状態を判定する。
【0077】
図10は、変形例1において、解凍判定部120で実行される解凍判定制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図6のフローチャートのS21、S22、S23を、S50、S51、S52に置き換えたものである。S20、S24、S25の処理は、
図6と同様であるので、その説明を省略する。
【0078】
フラグFcが1に設定されており、ヒータ45による尿素水の解凍が、一旦、終了し、ヒータ45の駆動を停止している場合には、S20で肯定判定されS50へ進む。S50では、車速センサ151で検出した車速SPDの変化量を積算し、車速変化積算値ΣSPDを算出する。たとえば、前回のルーチンで検出した車速SPDと今回のルーチンで検出した車速SPDの差の絶対値を積算することにより、車速変化積算値ΣSPDを算出してよい。
【0079】
続く、S51では、車速変化積算値ΣSPDが所定値a以上であるか否かを判定する。所定値aは、尿素水タンク40内に貯留された尿素水が半解凍状態のとき、ヒータ45の駆動が停止したあと、尿素水の攪拌により尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2まで十分に低下する攪拌度合いを示す値であり、予め実験等によって設定される。S51において、車速変化積算値ΣSPDが所定値a未満の場合、否定判定されS23へ進み、車速変化積算値ΣSPDが所定値a以上の場合、肯定判定されS52へ進む。
【0080】
S52では、車速変化積算値ΣSPDをリセットするとともにフラグFcを0に設定したあと、S24へ進み、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2を下回るか否かを判定する。
【0081】
この変形例1では、ヒータ45の駆動が停止した時点から、車両1の車速SPDの変化量の積算値である車速変化量積算値ΣSPDを算出し、車速変化量積算値ΣSPDが所定値aを超えたときの尿素水温度Tuwを用いて、尿素水の解凍状態を判定している。
図11は、変形例1における尿素水温度Tuwの推移を説明する図である。横軸および縦軸は、
図7と同様である。
図11において、時刻t1において、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1を上回ると、ヒータ45の駆動が停止(OFF)される。時刻t3で車両1が走行を開始すると、車速変化積算値ΣSPDの算出が開始される。車両1が走行すると、車両1に加わる加速度や振動により尿素水タンク40内の尿素水が攪拌されるので、尿素水温度Tuwが顕著に低下している。また、この期間に、車速変化積算値ΣSPDの値が大きくなっている。車速変化積算値ΣSPDが所定値a以上となった時刻t4において、尿素水温度Tuwが、実線で示すように、第2所定温度Th2を下回る場合、尿素水は半解凍状態であると判定される。また、時刻t4における尿素水温度Tuwが、一点鎖線で示すように、第2所定温度Th2以上の場合、尿素水は解凍状態(完全解凍)であると判定される。
【0082】
このように、変形例1では、車速変化量積算値ΣSPDを用いて尿素水の攪拌度合いを推定し、車速変化量積算値ΣSPDが所定値aを超えたとき、尿素水の攪拌度合いが所定値以上になり、尿素水が十分に攪拌したと判定し、その時の尿素水温度Tuwを用いて尿素水の解凍状態を判定している。この変形例1によれば、尿素水が十分に攪拌したと判定したときに、尿素水の解凍状態を判定するので、尿素水の解凍状態を精度良く判定することができる。
【0083】
なお、変形例1では、車両1の車速SPDの変化量の積算値である車速変化量積算値ΣSPDを用いて、尿素水の攪拌度合いを推定しているが、車両1の前後加速度を用いて尿素水の攪拌度合いを推定するようにしてもよい。たとえば、前後加速度センサ152で検出した前後加速度から、ヒータ45の駆動が停止した時点から、前後加速度の積算値である前後加速度積算値を算出し、前後加速度積算値が所定値を超えたときの尿素水温度Tuwを用いて、尿素水の解凍状態を判定してもよい。
【0084】
(変形例2)
上記の実施形態では、ヒータ45の駆動が停止してから所定時間経過後(カウンタCtが所定値A以上になる時間の経過後)の尿素水温度Tuwの値に基づいて、尿素水の解凍状態を判定していた。また、変形例1では、ヒータ45の駆動が停止した時点から、車速変化量積算値ΣSPDを算出し、車速変化量積算値ΣSPDが所定値aを超えたときの尿素水温度Tuwを用いて、尿素水の解凍状態を判定している。変形例2では、実施の形態と変形例1を組み合わせ、尿素水の解凍状態を判定する。
【0085】
具体的には、「ヒータ45の駆動が停止してから所定時間が経過し(カウンタCtが所定値A以上になり)、かつ、ヒータ45の駆動が停止した時点から積算した車速変化量積算値ΣSPDが所定値aを超えたとき」における尿素水温度Tuwを用いて、尿素水の解凍状態を判定する。この変形例2によれば、ヒータ45の駆動が停止してからの経過時間と車速変化量積算値ΣSPDの条件が両方成立したときに、尿素水の解凍状態を判定するので、より精度良く、尿素水の解凍状態を判定することができる。
【0086】
(変形例3)
図12は、変形例3における、解凍判定部120で実行される解凍判定制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、上記の実施の形態におけるフローチャート(
図6)に対して、S22~S24の各ステップの処理順が異なるとともに、S23aを追加している。
図12を参照して、S21で、カウンタCtをインクリメントしたあと、S24へ進んで、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2を下回るか否かを判定する。尿素水が半解凍状態の場合、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2を下回るので、S24で肯定判定されS23aへ進む。
【0087】
S23aでは、カウンタCtをリセットするとともに、フラグFcを0に設定したあと、今回のルーチンを終了する。フラグFcが0に設定さることにより、
図5のS11で否定判定され、ヒータ45を駆動(通電)することが可能になる。また、
図5のS15で、フラグFcが1に設定されるまで、S20で否定判定され、尿素水の解凍状態が判定されることはない。
【0088】
S24において、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以上の場合、否定判定されS22へ進み、カウンタCtが所定値A以上か否かを判定する。S22において、カウンタCtが所定値Aより小さい場合、否定判定され今回のルーチンを終了する。
【0089】
カウンタCtが所定値A以上のとき、S22で肯定判定されS23へ進む。S23では、カウンタCtをリセットするとともに、フラグFcを0に設定する。そして、S25へ進んで、フラグFmを1に設定し、今回のルーチンを終了する。
【0090】
この変形例3によれば、カウンタCtが所定値Aを超える前に、換言すると、ヒータ45の駆動を停止した時点から所定時間が経過する前に、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2を下回った場合、尿素水が半解凍状態であると判定し、ヒータ45による尿素水の加熱が可能になる。したがって、尿素水の解凍を促進することができる。
【0091】
また、変形例3によれば、S22で肯定判定された場合、すなわち、ヒータ45の駆動を停止した時点から所定時間が経過しても、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以上の場合には、尿素水が解凍状態(完全解凍)であると判定するので、実施の形態と同様に、尿素水の無駄な加熱を抑制しつつ、適切に尿素水の解凍状態を判定することができる。
【0092】
なお、変形例1における
図10の解凍判定制御の処理においても、変形例3と同様に、各ステップの処理順を変更するとともにS23aを追加して、車速変化積算値ΣSPDが所定値a以上になる前に、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2を下回った場合、尿素水が半解凍状態であると判定し、ヒータ45による尿素水の加熱を可能にしてもよい。
【0093】
(変形例4)
上記の実施の形態では、添加量補正値算出制御において、尿素水タンク40に貯留された尿素水が半解凍状態の場合、補正値kを1より小さい値(たとえば、0.9)に設定し、基本尿素水噴射量Qadを減少補正していた。変形例4では、尿素水の半解凍状態において、解凍した(液相の)尿素水の量を推定し、液相の尿素水が少ないほど、基本尿素水噴射量Qadの減量度合いを大きくして、尿素水の枯渇を抑制する。
【0094】
図13は、尿素水温度Tuwの推移と解凍した(液相の)尿素水の量の関係を説明する図である。縦軸は、尿素水温度Tuw、カウンタCtの値、ヒータ45の駆動(ON)/停止(OFF)の項目を表しており、横軸は、時間を示している。なお、
図13は、上記実施の形態における、尿素水温度Tuwの推移を示している。
図13において、時刻t1で尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1を上回り、ヒータ45の駆動が停止(OFF)すると、尿素水が半解凍状態の場合、尿素水温度Tuwが凝固点(融点)に向かって低下する。この際、解凍した(液相)の尿素水の量が少ないほど、尿素水温度Tuwの低下が早い(急速に尿素水温度Tuwが低下する)。したがって、ヒータ45の駆動が停止した時点(時刻t1)から、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以下になるまでの時間が短いほど、解凍した(液相)の尿素水の量が少ない。たとえば、
図13において、時刻t1から尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以下になるまでの時間がT2である実線の状態より、時刻t1から尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以下になるまでの時間がT1である一点鎖線の状態の方が、解凍した(液相)の尿素水の量が少ない。
【0095】
変形例4では、ヒータ45の駆動が停止した時点(時刻t1)から、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以下になるまでの時間(温度低下時間T)を求め、温度低下時間Tに応じて、補正値kを算出する。
図14は、変形例4において、温度低下時間Tから補正値kを求めるマップを示す図である。変形例4では、
図8のフローチャートのS41において、
図14のマップから補正値kを求める。
図14に示すように、温度低下時間Tが短いほど、補正値kは小さな値となる。したがって、温度低下時間Tが短く、解凍した(液相の)尿素水の量が少ないほど、基本尿素水噴射量Qadの減量度合いが大きくなり、尿素水の枯渇を抑制することができる。
【0096】
本開示における実施態様を例示すると、次のような態様を例示できる。
1)尿素水を内燃機関(10)の排気通路(20)へ供給する尿素水供給装置であって、尿素水を貯留するタンク(40)と、タンク(40)内に貯留された尿素水の温度である尿素水温度Tuwを検出する温度センサ(44)と、タンク(40)内に貯留された尿素水を加熱するヒータ(45)と、制御装置(100)と、を備え、制御装置(100)は、尿素水温度Tuwが第1所定温度Th1以下のとき、ヒータ(45)を駆動して尿素水を解凍し、ヒータ(45)の駆動が停止した時点から所定期間が経過する前に、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以下になったとき、ヒータ(45)を駆動して、尿素水の解凍を行うよう構成されており、第2所定温度Th2は第1所定温度Th1より低い、尿素水供給装置。
【0097】
この構成によれば、ヒータ(45)を駆動して尿素水を解凍した際、尿素水が半解凍状態であることを早期に判断でき、尿素水が半解凍状態のときには、再度、ヒータ(45)を駆動して尿素水を加熱するので、凍結した尿素水の解凍を促進できる。
【0098】
2)1において、制御装置(100)は、ヒータ(45)の駆動が停止した時点から所定期間が経過したとき、尿素水温度Tuwが第2所定温度Th2以上である場合、尿素水の全てが解凍した状態であると判定する。
【0099】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0100】
1 車両、3 トルクコンバータ付き自動変速機、5 ディファレンシャルギヤ、7 駆動輪、10 内燃機関、20 排気通路、22 酸化触媒、24 DPF、26 SCR触媒、28 酸化触媒、30 尿素添加弁、40 尿素水タンク、41 供給通路、42 ポンプ、43 水位センサ、44 温度センサ、45 ヒータ、46 ヒータ、50 HMI装置、100 E/G-ECU、101 CPU。102 メモリ、110 ヒータ制御部、120 解凍判定部、130 尿素水量推定部 140 添加量補正値算出部、151 車速センサ、152 前後加速度センサ、153 横加速度センサ、154 エンジン回転速度センサ。