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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】蓄電素子の管理装置及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20240402BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20240402BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20240402BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240402BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240402BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240402BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H02J7/34 A
B60R16/033 C
B60R16/04 S
B60R16/04 W
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
H02H7/18
H02J7/00 S
H02J7/00 301
H02J7/00 302C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021508944
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009719
(87)【国際公開番号】W WO2020195715
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2019054789
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】冨士松 将克
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 章正
(72)【発明者】
【氏名】和田 直也
(72)【発明者】
【氏名】國田 智士
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-106539(JP,A)
【文献】特開2014-225942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02H 7/00
H02H 7/10 - 7/20
H01M 10/42 - 10/48
B60R 16/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の起動に用いられる蓄電素子の管理装置であって、
前記蓄電素子から供給される電力によって動作する管理部と、
前記蓄電素子の電圧が低下した場合に前記管理部に電力を供給するバックアップ電源と、
を備える、管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の管理装置であって、
前記蓄電素子は自動二輪車のエンジン始動用である、管理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の管理装置であって、
前記バックアップ電源は、前記蓄電素子の電圧が低下した場合に一時的に前記管理部に電力を供給する、管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の管理装置であって、
前記バックアップ電源は、前記蓄電素子によって充電されるコンデンサである、管理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の管理装置であって、
前記蓄電素子と直列に接続されている遮断器と、
前記蓄電素子に流れる電流の電流値を検出する電流センサと、を備え、 前記管理部は、前記電流センサによって所定値以上の電流値が検出されると前記遮断器をオフにする、管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の管理装置であって、
前記管理部は、外部短絡により、前記電流センサによって所定値以上の電流値が検出されると前記遮断器をオフにする、管理装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の管理装置であって、
前記蓄電素子と前記管理部との間に前記蓄電素子の電圧を前記管理部の動作電圧に降下させるレギュレータが設けられており、
前記バックアップ電源は前記レギュレータと前記管理部とを接続している電力線から分岐している電力線に設けられている、管理装置。
【請求項8】
蓄電素子と、
管理装置と、を備える蓄電装置であって、
前記管理装置は、
前記蓄電素子から供給される電力によって動作する管理部と、
前記蓄電素子の電圧が低下した場合に前記管理部に電力を供給するバックアップ電源と、を備え、
前記蓄電装置は定格12ボルトである、蓄電装置。
【請求項9】
請求項8に記載の蓄電装置であって、
前記管理装置が有する管理部の動作電圧が5ボルトである、蓄電装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の蓄電装置であって、
前記管理装置は、
前記蓄電素子と直列に接続されている遮断器と、
前記蓄電素子に流れる電流の電流値を検出する電流センサと、を備え、
前記管理部は、前記電流センサによって所定値以上の電流値が検出されると前記遮断器をオフにする、蓄電装置。
【請求項11】
請求項10に記載の管理装置であって、
前記管理部は、外部短絡により、前記電流センサによって所定値以上の電流値が検出されると前記遮断器をオフにする、蓄電装置。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
自動二輪車用である、蓄電装置。
【請求項13】
請求項8乃至請求項11のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
自動車の駆動用バッテリの起動に用いられる、蓄電装置。
【請求項14】
請求項8乃至請求項13のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記蓄電素子と前記管理装置とを収容する収容体を更に備える、蓄電装置。
【請求項15】
請求項14に記載の蓄電装置であって、
前記収容体には、前記蓄電素子の正極とパワーラインで接続される正極外部端子と、前記蓄電素子の負極とパワーラインで接続される負極外部端子とが固定されている、蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の管理装置及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源の起動に用いられる蓄電素子の管理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電池管理装置は、車両のエンジン始動(クランキング)に用いられる蓄電素子を管理する。一般にこのような管理装置は、蓄電素子から供給される電力によって動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6436201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8Aに示すように、駆動源の起動に用いられる蓄電素子には一時的に大きな放電電流(以下、単に大電流という)が流れることがある。例えば車両のエンジン始動に用いられる蓄電素子の場合、エンジン始動時に蓄電素子から車両のスタータに一時的に大電流が流れる。
駆動源の起動に用いられる蓄電素子の容量は様々である。従来は、容量が小さい蓄電素子に一時的に大電流が流れた場合の課題について十分に検討されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、駆動源の起動に用いられる蓄電素子から供給される電力によって動作する管理装置において、蓄電素子の容量が小さくても一時的な大電流による瞬停によって管理装置の動作が停止することを抑制する技術を開示する。
【0006】
本発明の一局面に係る駆動源の起動に用いられる蓄電素子の管理装置は、前記蓄電素子から供給される電力によって動作する管理部と、前記蓄電素子の電圧が低下した場合に一時的に前記管理部に電力を供給するバックアップ電源と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
駆動源の起動に用いられる蓄電素子から供給される電力によって動作する管理装置において、蓄電素子の容量が小さくても一時的な大電流による瞬停によって管理装置の動作が停止することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動二輪車の側面図
図2】車両システムのブロック図
図3】バッテリの分解斜視図
図4】二次電池の平面図
図5図4のA-A線の断面図
図6】バッテリのブロック図
図7】オルタネータ、蓄電素子、管理部及びバックアップ電源の回路図
図8A】蓄電素子の放電電流の変化を示すグラフ
図8B】蓄電素子の電圧の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
駆動源の起動に用いられる蓄電素子の管理装置は、前記蓄電素子から供給される電力によって動作する管理部と、前記蓄電素子の電圧が低下した場合に一時的に前記管理部に電力を供給するバックアップ電源と、を備える。
【0010】
本願発明者は、容量が小さい蓄電素子は、容量が大きい蓄電素子に比べ、一時的に大きな放電電流(大電流)が流れたとき、蓄電素子の電圧が一時的に管理部の動作電圧より低下する瞬停(ブラックアウト)によって管理装置の動作が停止する可能性が高いことを見出した。以下、図8Bを参照して具体的に説明する。以下の説明では管理装置の動作電圧が5Vであると仮定する。
蓄電素子の容量が大きい場合は大電流が流れても電圧の低下が小さい。このため、図8Bの点線21で示すように、一時的に大電流が流れても電圧が管理部の動作電圧(5V)未満まで低下する可能性は小さい。これに対し、実線22で示すように、蓄電素子の容量が小さい場合は同じ大きさの電流であっても電圧が大きく低下する。このため電圧が5V未満まで低下する可能性が高くなる。言い換えると、蓄電素子の容量が小さい場合は瞬停が起きる可能性が高い。
上記の管理装置によると、バックアップ電源を備えるので、蓄電素子の電圧がバックアップ電源の電圧より低下した場合はバックアップ電源から管理部に電力が供給される。これにより瞬停を抑制できる。このため、駆動源の起動に用いられる蓄電素子から供給される電力によって動作する管理装置において、蓄電素子の容量が小さくても一時的な大電流による瞬停によって管理装置の動作が停止することを抑制できる。
蓄電素子の温度が低いと内部抵抗が増大することによって瞬停が起き易くなる。上記の管理装置によると、瞬停を抑制できるので、蓄電素子の内部抵抗が高い低温時や、蓄電素子の内部抵抗が大きく上昇している状態で使用される場合に特に有用である。
【0011】
前記蓄電素子は自動二輪車のエンジン始動用であってもよい。
【0012】
一般に蓄電素子の充放電電流の大きさはCレートで表される。Cレートは充電状態(SOC:State Of Charge)が100%の蓄電素子を1時間で0%まで放電する場合に流れる電流の大きさ(あるいはSOCが0%の蓄電素子を1時間で100%まで充電する場合に流れる電流の大きさ)を1Cと定義したものである。例えば蓄電素子が30分でSOC100%から0%まで放電された場合、Cレートは2Cとなる。
蓄電素子の充電容量が異なる場合は、充放電電流の電流値が同じであってもCレートが異なる。例えば充電容量が100Ah[アンペアアワー]の蓄電素子B1と充電容量が200Ahの蓄電素子B2とがあり、それらの蓄電素子の放電電流の電流値が100A[アンペア]であるとする。この場合、蓄電素子B1は1時間でSOCが0%になるのでCレートは1Cとなる。これに対し、蓄電素子B2は2時間でSOCが0%になるのでCレートは0.5Cとなる。このように、充放電電流の電流値が同じである場合、充電容量が小さいほどCレートが大きくなる。以降の説明ではCレートが大きいことをハイレートといい、Cレートが小さいことをローレートという。
通常、自動二輪車のエンジン始動に用いられる蓄電素子(二輪車用の蓄電素子)は、四輪自動車のエンジン始動に用いられる蓄電素子(四輪車用の蓄電素子)に比べて充電容量が小さく、且つ、充放電電流も小さい。しかしながら、充放電電流の大きさの差は充電容量の差ほど大きくない。例えば二輪車用の蓄電素子の充電容量が四輪車用の蓄電素子の充電容量の1/3程度であり、二輪車用の蓄電素子の放電電流の大きさは四輪車用の蓄電素子の放電電流の4/5程度である。このため、一般に二輪車用の蓄電素子は四輪車用の蓄電素子に比べてハイレートで充放電される。
ローレートで放電する場合はハイレートで放電する場合に比べて蓄電素子の電圧の低下が小さいので瞬停が起きる可能性が小さい。このため、ローレートで放電される蓄電素子では瞬停を抑制するための対策がとられてこなかった。
これに対し、ハイレートで放電する場合はローレートで放電する場合に比べて蓄電素子の電圧の低下が大きい。この点に着目した本願発明者は、ハイレートで放電される二輪車用の蓄電素子は瞬停が起きる可能性が高いことを見出した。
上記の管理装置によると、瞬停が起き易い二輪車用の蓄電素子の管理装置にバックアップ電源を備えたので、二輪車用の蓄電素子の管理装置において瞬停を抑制できる。
一般に二輪車用の蓄電素子の管理装置は四輪車用の蓄電素子の管理装置に比べて消費電力が低いので、バックアップ電源の容量も小さくてよい。このため、四輪車用の蓄電素子の管理装置にバックアップ電源を備える場合に比べ、瞬停を低コストで抑制できるという利点もある。
【0013】
前記バックアップ電源は、前記蓄電素子の電圧が低下した場合に一時的に前記管理部に電力を供給してもよい。
【0014】
瞬停を抑制するためには一時的に管理部に電力を供給できればよい。その場合、ある程度長い時間に亘って電力を供給できるバックアップ電源を用いると過剰仕様となり、管理装置の製造コストが増大する。上記の管理装置によると、バックアップ電源は一時的に管理部に電力を供給するものであるので、ある程度長い時間に亘って電力を供給できるバックアップ電源を用いる場合に比べ、管理装置の製造コストを抑制できる。
バックアップ電源が一時的に管理部に電力を供給する時間は適宜に選択可能であるが、供給する時間が長いとバックアップ電源の容量を大きくする必要がある。このため、電力を供給する時間は10秒以内であることが望ましく、5秒以内であることがより望ましい。瞬停が継続する時間が1秒未満である場合は、バックアップ電源が電力を供給する時間は1秒以内であってもよい。
【0015】
前記バックアップ電源は、前記蓄電素子によって充電されるコンデンサであってもよい。
【0016】
一般にコンデンサは低コストであるので、一時的に管理部に電力を供給するバックアップ電源を低コストで実現できる。
バックアップ電源が管理部の制御を必要とするものであると仮定した場合、蓄電素子の電圧が例えば5Vに近い電圧まで低下したときに管理部がソフトウェア制御によってバックアップ電源に電力を供給させる必要がある。しかしながら、その場合は管理部の処理が複雑になる上、ソフトウェア制御であることによって応答速度も遅くなる。これに対し、コンデンサは蓄電素子の電圧がコンデンサの電圧より低下すると管理部に自動で電力を供給するので、ソフトウェア制御が不要である。このため管理部の処理が簡素になるという利点もある。コンデンサを用いるとハードウェアだけで瞬停に対応できるので、ソフトウェア制御に比べて迅速に瞬停に対応できるという利点もある。
コンデンサを用いるとノイズ除去も同時に行うことができるという利点もある。
【0017】
管理装置は、前記蓄電素子と直列に接続されている遮断器と、前記蓄電素子に流れる電流の電流値を検出する電流センサと、を備え、前記管理部は、前記電流センサによって所定値以上の電流値が検出されると前記遮断器をオフにしてもよい。
【0018】
外部短絡が起きると蓄電素子に大電流(所定値以上の電流)が流れる。上記の管理装置によると、大電流が流れた場合は管理部が遮断器をオフにすることにより、蓄電素子を大電流から保護できる。ただし、大電流によって蓄電素子の電圧が管理部の動作電圧より低下した場合は、バックアップ電源がないと管理部の動作が停止するので遮断器をオフにできない。
上記の管理装置によると、蓄電素子の電圧がバックアップ電源の電圧より低くなるとバックアップ電源から管理部に電力が供給されるので、バックアップ電源から供給された電力によって動作する管理部が遮断器をオフにすることにより、蓄電素子を外部短絡による大電流の放電が制御できない状態になることから保護できる。
【0019】
前記蓄電素子と前記管理部との間に前記蓄電素子の電圧を前記管理部の動作電圧に降下させるレギュレータが設けられており、前記バックアップ電源は前記レギュレータと前記管理部とを接続している電力線から分岐している電力線に設けられていてもよい。
【0020】
バックアップ電源を設ける場合、蓄電素子とレギュレータとの間に設けることも可能であるが、その場合は蓄電素子の電圧と同じ電圧を蓄えることのできる大容量のバックアップ電源が必要となる。これに対し、レギュレータと管理部との間にバックアップ電源を設けると、レギュレータによって電圧が降下するので、蓄電素子とレギュレータとの間にバックアップ電源を設ける場合に比べてバックアップ電源の容量を小さくできる。このため、瞬停をより低コストで抑制できる。
【0021】
本明細書によって開示される発明は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0022】
<実施形態1>
実施形態1を図1ないし図8によって説明する。
図1に示すように、実施形態1に係るバッテリ50(蓄電装置)は自動二輪車10に搭載される二輪車用のバッテリである。
【0023】
図2に示すように、バッテリ50には自動二輪車10に搭載されているスタータ10A、オルタネータ10B及び補機類10C(ヘッドライド、エアコン、オーディオなど)が接続されている。バッテリ50はスタータ10Aに電力を供給してエンジン(駆動源の一例)を始動させるエンジン始動用のバッテリである。バッテリ50はエンジン動作中にオルタネータ10Bによって充電される。
【0024】
自動二輪車10のエンジン動作中はオルタネータ10Bから補機類10Cに電力が供給される。このため、バッテリ50は、エンジン動作中は補機類10Cに電力を供給しないが、エンジン停止中に補機類10Cが使用される場合は補機類10Cにも電力を供給する。
【0025】
一般に二輪車用のバッテリは自動二輪車10のECUと通信する機能を有していない。実施形態1に係る二輪車用のバッテリ50もECUと通信する機能を有していない。
【0026】
(1)バッテリの構成
図3に示すように、バッテリ50は組電池60と、回路基板ユニット65と、収容体71とを備える。
【0027】
収容体71は、合成樹脂材料からなる本体73と蓋体74とを備えている。本体73は有底筒状である。本体73は、底面部75と、4つの側面部76とを備えている。4つの側面部76によって上端部分に上方開口部77が形成されている。
【0028】
収容体71は、組電池60と回路基板ユニット65を収容する。組電池60は12個の二次電池62(蓄電素子の一例)を有する。二次電池62は一例としてリチウムイオン電池である。12個の二次電池62は、3並列で4直列に接続されている。回路基板ユニット65は、回路基板100と回路基板100上に搭載される電子部品とを含み、組電池60の上部に配置されている。
【0029】
蓋体74は、本体73の上方開口部77を閉鎖する。蓋体74の周囲には外周壁78が設けられている。蓋体74は、平面視略T字形の突出部79を有する。蓋体74の前部のうち、一方の隅部に正極外部端子51が固定され、他方の隅部に負極外部端子52が固定されている。
【0030】
図4及び図5に示すように、二次電池62は直方体形状のケース82内に電極体83を非水電解質と共に収容したものである。ケース82は、ケース本体84と、その上方の開口部を閉鎖する蓋85とを有している。
【0031】
電極体83は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に、多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状で、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体84に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0032】
正極要素には正極集電体86を介して正極端子87が、負極要素には負極集電体88を介して負極端子89がそれぞれ接続されている。正極集電体86及び負極集電体88は、平板状の台座部90と、この台座部90から延びる脚部91とからなる。台座部90には貫通孔が形成されている。脚部91は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子87及び負極端子89は、端子本体部92と、その下面中心部分から下方に突出する軸部93とからなる。そのうち、正極端子87の端子本体部92と軸部93とは、アルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子89においては、端子本体部92がアルミニウム製で、軸部93が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子87及び負極端子89の端子本体部92は、蓋85の両端部に絶縁材料からなるガスケット94を介して配置され、このガスケット94から外方へ露出されている。
【0033】
蓋85は、圧力開放弁95を有している。圧力開放弁95は、図2に示すように、正極端子87と負極端子89の間に位置している。圧力開放弁95は、ケース82の内圧が制限値を超えた時に、開放して、ケース82の内圧を下げる。
【0034】
(2)バッテリの電気的構成
図6に示すように、バッテリ50は組電池60と、組電池60を管理するBMU101(Battery Management Unit)とを備えている。BMU101は管理装置の一例である。
【0035】
組電池60は、複数の二次電池62から構成されている。二次電池62は12個あり、3並列で4直列に接続されている。図6では並列に接続された3つの二次電池62を1つの電池記号で表している。バッテリ50は定格12Vである。
【0036】
パワーライン70Pは、正極外部端子51と組電池60の正極とを接続するパワーラインである。パワーライン70Nは、負極外部端子52と組電池60の負極とを接続するパワーラインである。組電池60の負極はシグナルグランドG1に接続されている。組電池60はシグナルグランドG1を基準電位とする。負極外部端子52は、ボディグランドG2に接続されている。ボディグランドG2は自動二輪車10のボディである。ボディグランドG2は自動二輪車10の基準電位である。
【0037】
BMU101は電流センサ53、電圧センサ110、温度センサ111、遮断器55、管理部130、ダイオード40(整流素子)、コンデンサ41(バックアップ電源の一例)、及び、レギュレータ42を備える。組電池60、電流センサ53及び遮断器55は、パワーライン70P、パワーライン70Nを介して、直列に接続されている。遮断器55、電流センサ53、電圧センサ110、管理部130、ダイオード40、コンデンサ41及びレギュレータ42は回路基板100上に実装されており、回路基板100のシグナルグランドG1を基準電位(動作基準)とする。
【0038】
電流センサ53は、組電池60の負極に位置し、負極側のパワーライン70Nに設けられている。電流センサ53は、組電池60の電流Iを検出する。
電圧センサ110は、各二次電池62の電圧Vと組電池60の総電圧とを検出する。組電池60の総電圧は4つの二次電池62の合計電圧である。
温度センサ111はいずれか一つあるいは二つの二次電池62に設けられており、二次電池62の温度を検出して管理部130に出力する。
【0039】
遮断器55は、組電池60の負極に位置し、負極のパワーライン70Nに設けられている。遮断器55は、充電用FET55Aと、放電用FET55Bとを有する。充電用FET55A及び放電用FET55Bは電力用の半導体スイッチであり、より具体的にはNチャンネルの電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)である。充電用FET55A及び放電用FET55BのソースSは基準端子である。充電用FET55A及び放電用FET55BのゲートGは制御端子である。充電用FET55A及び放電用FET55BのドレンDは接続端子である。
【0040】
充電用FET55AはソースSが組電池60の負極に接続されている。放電用FET55BはソースSが負極外部端子52に接続されている。充電用FET55Aと放電用FET55BとはドレンD同士が接続されることによってバックツーバック接続されている。
【0041】
充電用FET55Aは寄生ダイオード56Aを有している。寄生ダイオード56Aは順方向が放電方向と同一である。放電用FET55Bは寄生ダイオード56Bを有している。寄生ダイオード56Bは順方向が充電方向と同一である。
【0042】
放電用FET55BはソースSが負極外部端子52に接続されていることから、ボディグランドG2が基準電位である。充電用FET55AはソースSが組電池60の負極に接続されている。組電池60の負極は回路基板100のシグナルグランドG1に接続されているので、充電用FET55AはシグナルグランドG1が基準電位である。
【0043】
充電用FET55AはゲートGにHレベルの電圧が印加されることでオンになり、ゲートGにLレベルの電圧が印加されることでオフになる。放電用FET55Bも同様である。
【0044】
管理部130は二次電池62から供給される電力によって動作するものであり、CPU131、ROM132及びRAM133を備える。管理部130の動作電圧は5Vである。管理部130は電圧センサ110、電流センサ53、温度センサ111の出力に基づいてバッテリ50を管理する。管理部130は、正常時、充電用FET55AのゲートG及び放電用FET55BのゲートGにHレベルの電圧を印加し、充電用FET55A及び放電用FET55Bをオンにする。充電用FET55A及び放電用FET55Bの双方がオンの場合、組電池60は充電、放電の双方が可能である。
【0045】
レギュレータ42は二次電池62から供給される12Vの電圧を管理部130の動作電圧である5Vに降圧する回路である。レギュレータ42は二次電池62の電力を管理部130に供給するパワーライン120に設けられている。パワーライン120はパワーライン70Pから分岐している。管理部130の動作電圧が12Vである場合や管理部130自体がレギュレータを備えている場合は、レギュレータ42は不要である。
【0046】
ダイオード40はパワーライン120においてレギュレータ42と組電池60との間に設けられている。ダイオード40は二次電池62から管理部130に向かう方向に電流が流れるものである。ダイオード40は組電池60の電圧が低下したときにコンデンサ41の電圧が低下することを防止する。
【0047】
コンデンサ41はパワーライン120においてダイオード40とレギュレータ42との間から分岐しているパワーライン121に設けられている。コンデンサ41は組電池60によって12Vで充電され、組電池60の総電圧がコンデンサ41の電圧より低下した場合に一時的に管理部130に5V以上の電力を供給する。
【0048】
コンデンサ41が一時的に管理部130に電力を供給する時間は適宜に選択可能であるが、供給する時間が長いとコンデンサ41の容量を大きくする必要がある。このため、電力を供給する時間は10秒以内であることが望ましく、5秒以内であることがより望ましい。瞬停が継続する時間が1秒未満である場合は、コンデンサ41が電力を供給する時間は1秒以内であってもよい。
【0049】
(3)管理部よって実行される処理
管理部130によって実行される処理のうちSOC推定処理、過充電/過放電保護処理、及び、過電流保護処理について説明する。
【0050】
(3-1)SOC推定処理
SOC推定処理は、電流積算法によって二次電池62の充電状態を推定する処理である。電流積算法は、電流センサ53によって二次電池62の充放電電流を所定の時間間隔で計測することで二次電池62に出入りする電力量を計測し、これを初期容量から加減することでSOCを推定する方法である。
【0051】
電流積算法は二次電池62の使用中でもSOCを推定できるという利点がある反面、常に電流を計測して充放電電力量を積算するので電流センサ53の計測誤差が累積して次第に不正確になる可能性がある。このため、管理部130は、電流積算法によって推定したSOCを二次電池62の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)に基づいてリセットしてもよい。
【0052】
具体的には、OCVとSOCとの間には比較的精度の良い相関関係があるので、OCVからSOCを推定し、電流積算法によって推定したSOCを、OCVから推定したSOCでリセットしてもよい。
OCVは回路が開放されている状態の電圧に限られない。例えば、OCVは二次電池62に流れる電流の電流値が微小な基準値未満であるときの電圧であってもよい。
【0053】
(3-2)過充電/過放電保護処理
過充電/過放電保護処理は、SOCが所定値以上になった場合に充電用FET55Aをオフにして二次電池62を過充電から保護する処理、及び、SOCが所定の下限値以下になった場合に放電用FET55Bをオフにして二次電池62を過放電から保護する処理である。
【0054】
(3-3)過電流保護処理
過電流保護処理は、外部短絡によって二次電池62に大電流が流れた場合に放電用FET55Bをオフにして二次電池62を大電流から保護する処理である。具体的には、管理部130は電流センサ53によって所定の時間間隔で電流値を検出し、所定値以上の電流値が検出された場合は放電用FET55Bをオフにする。所定値はエンジン始動時に流れる大電流の電流値より大きな値である。
【0055】
(4)コンデンサの作動
図7を参照して、コンデンサ41の作動について説明する。組電池60はハイレートで充放電されるので、エンジン始動時に一時的に大電流が流れることによって総電圧が5V未満まで低下する可能性がある。組電池60の総電圧が5V未満まで低下した場合は組電池60の総電圧がコンデンサ41の電圧より低くなるので、コンデンサ41から一時的に管理部130に電力が供給される。
【0056】
エンジン始動時に組電池60の総電圧が5V未満まで低下するのは一時的であるので、その後に組電池60の電圧が回復すると組電池60から管理部130に電力が供給される。このため、管理部130はエンジン始動時に組電池60の総電圧が一時的に5V未満まで低下しても継続して動作し続ける。言い換えると、前述したSOC推定処理や過充電/過放電保護処理が継続して実行される。
【0057】
組電池60はハイレートで充放電されるので、外部短絡が発生した場合も大電流が流れることによって組電池60の総電圧が5V未満まで低下する可能性がある。外部短絡によって組電池60の総電圧が5V未満まで低下した場合もコンデンサ41から一時的に管理部130に電力が供給される。
【0058】
外部短絡が発生した場合にコンデンサ41から管理部130に電力を供給する理由は、前述した過電流保護処理を実行するために管理部130を一時的に生かすためである。具体的には、外部短絡によって大電流が流れると電流値が所定値以上になるので、コンデンサ41から供給された電力によって動作する管理部130は、電流値が所定値以上であることを検出し、放電用FET55Bをオフにする。これにより二次電池62が外部短絡による大電流から保護される。管理部130はその後にコンデンサ41から電力が供給されなくなると動作を停止する。
【0059】
(5)実施形態の効果
BMU101によると、バックアップ電源(コンデンサ41)を備えており、組電池60の電圧がバックアップ電源の電圧より低下した場合はバックアップ電源から管理部130に電力が供給される。これにより瞬停を抑制できる。このため、二輪車用の二次電池62から供給される電力によって動作するBMU101において、二次電池62の容量が小さくても一時的な大電流による瞬停によってBMU101の動作が停止することを抑制できる。
二次電池62の温度が低いと内部抵抗が増大することによって瞬停が起き易くなる。BMU101によると、瞬停を抑制できるので、二次電池62の内部抵抗が高い低温時や、二次電池62の内部抵抗が大きく劣化している状態で使用される場合に特に有用である。
【0060】
BMU101によると、瞬停が起き易い二輪車用の二次電池62のBMU101にバックアップ電源を備えたので、二輪車用の二次電池62において瞬停を抑制できる。
一般に二輪車用の二次電池62のBMU101は四輪車用の二次電池62のBMUに比べて動作電圧が低いので、バックアップ電源の容量も小さくてよい。このため、四輪車用の二次電池62のBMUにバックアップ電源を備える場合に比べ、瞬停を低コストで抑制できるという利点もある。
【0061】
BMU101によると、バックアップ電源は一時的に管理部130に電力を供給するものであるので、ある程度長い時間に亘って電力を供給できるバックアップ電源を用いる場合に比べ、BMU101の製造コストを抑制できる。
【0062】
BMU101によると、バックアップ電源は二次電池62によって充電されるコンデンサ41である。一般にコンデンサは低コストであるので、一時的に管理部に電力を供給するバックアップ電源を低コストで実現できる。
コンデンサ41は蓄電素子の電圧がコンデンサ41の電圧より低下すると管理部130に自動で電力を供給するので、ソフトウェア制御が不要である。このため管理部130の処理が簡素になるという利点もある。コンデンサ41を用いるとハードウェアだけで瞬停に対応できるので、ソフトウェア制御に比べて迅速に瞬停に対応できるという利点もある。
コンデンサ41を用いるとノイズ除去も同時に行うことができるという利点もある。
【0063】
BMU101によると、外部短絡によって組電池60の電圧が低下しても、コンデンサ41から電力を供給された管理部130が放電用FET55Bをオフにすることにより、二次電池62を外部短絡による大電流の放電が制御できない状態になることから保護できる。
【0064】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0065】
(1)上記実施形態ではバックアップ電源としてコンデンサ41を例に説明したが、バックアップ電源はこれに限られない。例えばバックアップ電源はボタン電池などの一次電池(ある程度長い時間に亘って電力を供給できるバックアップ電源の一例)であってもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では二次電池62とレギュレータ42との間にコンデンサ41が設けられている場合を例に説明したが、コンデンサ41はレギュレータ42と管理部130との間に設けられてもよい。レギュレータ42と管理部130との間にバックアップ電源を設けると、レギュレータ42によって電圧が降下するので、二次電池62とレギュレータ42との間にコンデンサ41を設ける場合に比べてコンデンサ41の容量を小さくできる。このため、瞬停をより低コストで抑制できる。
【0067】
(3)上記実施形態では駆動源の起動に用いられる二次電池として二輪車用の二次電池62を例に説明したが、駆動源の起動に用いられる二次電池はこれに限られない。例えば電気自動車やハイブリッド自動車などは車両の駆動源である電気モータに電力を供給する駆動用バッテリを備えている。一般に駆動用バッテリは外部の二次電池から供給される電力によって起動し、電気モータに電力を供給する。駆動源の起動に用いられる二次電池は上述した外部の二次電池として用いられるものであってもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では蓄電素子として二次電池62を例に説明したが、蓄電素子はこれに限られない。例えば、蓄電素子は電気化学反応を伴うキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 自動二輪車
41 コンデンサ(バックアップ電源の一例)
42 レギュレータ
53 電流センサ
55 遮断器
62 二次電池(蓄電素子の一例)
101 BMU(管理装置の一例)
130 管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B