(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】画像処理装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240402BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20240402BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H04N7/18 M
A61B1/045 622
A61B1/00 552
(21)【出願番号】P 2021550817
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2019038778
(87)【国際公開番号】W WO2021064867
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【氏名又は名称】中村 聡延
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】志野 亮作
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087269(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/047324(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/116465(WO,A1)
【文献】特開平08-249492(JP,A)
【文献】特開2009-226072(JP,A)
【文献】特開2013-078382(JP,A)
【文献】特開2015-112431(JP,A)
【文献】特開平10-113333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像の各々において、前記管腔内の壁面を平面状に展開した展開画像を生成する展開画像生成手段と、
前記展開画像に基づき、パノラマ画像を取得するパノラマ画像取得手段と、
第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示する表示制御手段と、
前記撮影部のパラメータと、前記壁面における複数の特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、に基づき、前記管腔内の2点間の距離を算出する距離算出手段と、を有し、
前記距離算出手段は、
前記撮影部のパラメータと、前記特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、前記特徴点を被撮影対象とする画像と、に基づき、前記特徴点間の相対ベクトルを算出し、
前記複数の特徴点を結ぶことで形成した前記2点間の経路のうち当該経路を構成する前記特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の前記和を、前記2点間の距離として算出する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記内視鏡の挿入位置から前記被撮影位置までの距離を示す情報を、前記被撮影位置情報として前記表示装置に表示する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2撮影工程において撮影される画像に基づき、前記被撮影位置を特定する被撮影位置特定手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記被撮影位置特定手段が特定した被撮影位置を示すマークを、前記被撮影位置情報として前記パノラマ画像上に表示する、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記距離算出手段は、入力された画像に対して当該画像の被撮影対象の撮影部からの距離を出力するように学習された推論器に、前記特徴点を被撮影対象とする画像を入力することで、当該特徴点に対する前記撮影部からの距離を取得する、請求項
1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像に基づき、前記管腔内の壁面を平面状に展開したパノラマ画像を取得するパノラマ画像取得手段と、
第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示する表示制御手段と、
前記撮影部のパラメータと、前記壁面における複数の特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、に基づき、前記管腔内の2点間の距離を算出する距離算出手段と、を有し、
前記距離算出手段は、
前記撮影部のパラメータと、前記特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、前記特徴点を被撮影対象とする画像と、に基づき、前記特徴点間の相対ベクトルを算出し、
前記複数の特徴点を結ぶことで形成した前記2点間の経路のうち当該経路を構成する前記特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の前記和を、前記2点間の距離として算出する、画像処理装置。
【請求項6】
前記距離算出手段は、前記複数の特徴点を被撮影対象とする複数の画像間において同一箇所を表す特徴点の組み合わせを検出し、当該特徴点の組み合わせを同一の特徴点とみなす、請求項
5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記パノラマ画像上における注目箇所を示すマークを、前記表示装置に表示する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記被撮影位置から前記注目箇所までの距離、又は、前記内視鏡の挿入位置から前記注目箇所までの距離、の少なくとも一方を示す情報を、前記表示装置に表示する、請求項
7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記注目箇所は、病変部位、又は、前記内視鏡の挿入時において前記内視鏡が接触した箇所である、請求項
7または
8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記表示制御手段は、前記被撮影位置から前記注目箇所までの距離が所定距離以下となった場合に警告を出力する、請求項
7~9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記パノラマ画像取得手段は、前記内視鏡の排出工程において撮影した複数の画像に基づき、前記パノラマ画像を生成する、請求項1~
10のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記表示制御手段は、前記撮影部の現在の向きを示す情報を、前記表示装置に表示する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記表示制御手段は、前記撮影部の向きの調整に関する指示情報を出力する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記表示制御手段は、前記第1撮影工程において撮影した複数の画像に基づく前記パノラマ画像と共に、前記第2撮影工程において撮影した複数の画像に基づく前記パノラマ画像を前記表示装置に表示する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
画像処理装置が実行する制御方法であって、
第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像の各々において、前記管腔内の壁面を平面状に展開した展開画像を生成し、
前記展開画像に基づき、パノラマ画像を取得し、
第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示し、
前記撮影部のパラメータと、前記壁面における複数の特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、に基づき、前記管腔内の2点間の距離を算出し、かつ、
前記撮影部のパラメータと、前記特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、前記特徴点を被撮影対象とする画像と、に基づき、前記特徴点間の相対ベクトルを算出し、
前記複数の特徴点を結ぶことで形成した前記2点間の経路のうち当該経路を構成する前記特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の前記和を、前記2点間の距離として算出する、
制御方法。
【請求項16】
第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像の各々において、前記管腔内の壁面を平面状に展開した展開画像を生成する展開画像生成手段と、
前記展開画像に基づき、パノラマ画像を取得するパノラマ画像取得手段と、
第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示する表示制御手段
と、
前記撮影部のパラメータと、前記壁面における複数の特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、に基づき、前記管腔内の2点間の距離を算出する距離算出手段
としてコンピュータを機能させ
、
前記距離算出手段は、
前記撮影部のパラメータと、前記特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、前記特徴点を被撮影対象とする画像と、に基づき、前記特徴点間の相対ベクトルを算出し、
前記複数の特徴点を結ぶことで形成した前記2点間の経路のうち当該経路を構成する前記特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の前記和を、前記2点間の距離として算出する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡検査における表示に関する処理を行う画像処理装置、制御方法及び記憶媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、臓器の管腔内を撮影した画像を表示する内視鏡システムが知られている。例えば、特許文献1には、消化管の内壁面の合成展開画像を生成し、モニタ等の表示画面に表示する内視鏡システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡システムのように、連続的に得られる複数の画像から検査対象となる病変部等を表示した画像を目視により判定する場合には、重要な検査箇所の見逃し等が生じてしまう可能性がある。このような検査箇所の見逃し等を抑制するには、検査中に現在撮影されている位置を検査者が的確に把握する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、内視鏡検査において、現在撮影されている位置に関する情報を好適に提示することが可能な画像処理装置、制御方法及び記憶媒体を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
画像処理装置の一の態様は、画像処理装置であって、第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像の各々において、前記管腔内の壁面を平面状に展開した展開画像を生成する展開画像生成手段と、前記展開画像に基づき、パノラマ画像を取得するパノラマ画像取得手段と、第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示する表示制御手段と、前記撮影部のパラメータと、前記壁面における複数の特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、に基づき、前記管腔内の2点間の距離を算出する距離算出手段と、を有し、前記距離算出手段は、前記撮影部のパラメータと、前記特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、前記特徴点を被撮影対象とする画像と、に基づき、前記特徴点間の相対ベクトルを算出し、前記複数の特徴点を結ぶことで形成した前記2点間の経路のうち当該経路を構成する前記特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の前記和を、前記2点間の距離として算出する。
【0007】
制御方法の一の態様は、画像処理装置が実行する制御方法であって、第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像の各々において、前記管腔内の壁面を平面状に展開した展開画像を生成し、前記展開画像に基づき、パノラマ画像を取得し、第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示し、前記撮影部のパラメータと、前記壁面における複数の特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、に基づき、前記管腔内の2点間の距離を算出し、かつ、前記撮影部のパラメータと、前記特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、前記特徴点を被撮影対象とする画像と、に基づき、前記特徴点間の相対ベクトルを算出し、前記複数の特徴点を結ぶことで形成した前記2点間の経路のうち当該経路を構成する前記特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の前記和を、前記2点間の距離として算出する。
【0008】
プログラムの一の態様は、第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像の各々において、前記管腔内の壁面を平面状に展開した展開画像を生成する展開画像生成手段と、前記展開画像に基づき、パノラマ画像を取得するパノラマ画像取得手段と、第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示する表示制御手段と、前記撮影部のパラメータと、前記壁面における複数の特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、に基づき、前記管腔内の2点間の距離を算出する距離算出手段としてコンピュータを機能させ、前記距離算出手段は、前記撮影部のパラメータと、前記特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、前記特徴点を被撮影対象とする画像と、に基づき、前記特徴点間の相対ベクトルを算出し、前記複数の特徴点を結ぶことで形成した前記2点間の経路のうち当該経路を構成する前記特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の前記和を、前記2点間の距離として算出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内視鏡検査時での被撮影位置を検査者に好適に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】内視鏡検査において表示装置が表示する第1表示例である。
【
図5】内視鏡検査において表示装置が表示する第2表示例である。
【
図6】内視鏡検査において表示装置が表示する第3表示例である。
【
図7】内視鏡検査において表示装置が表示する第4表示例である。
【
図8】内視鏡検査時での表示処理の概要を示すフローチャートの一例である。
【
図9】パノラマ画像生成処理のフローチャートの一例である。
【
図10】距離算出処理のフローチャートの一例である。
【
図11】(A)展開画像上において、抽出された特徴点を明示した図である。(B)特徴点P2の近傍を拡大した画像である。(C)近傍特徴点となる特徴点間を線で結んだ展開画像を示す。
【
図12】各特徴点の3次元空間上での撮影部からの距離を特徴点毎に明示した展開画像を示す。
【
図13】撮影画像の横方向又は縦方向のいずれか一方のみを考慮した場合の、撮影画像における長さと実際の長さとの対応関係を示す図である。
【
図14】(A)
図12に示す展開画像において、一部の領域を画素と対応付けて示した図である。(B)相対ベクトルのx方向及びy方向の長さを明示した画素の拡大図である。
【
図15】挿入部から病変部位までの2点間の距離を算出する場合に使用する5枚の展開画像の特徴点同士の対応関係を示した図である。
【
図16】(A)挿入部から病変部位までの特徴点と特徴点間に設けられたリンクとを示したグラフである。(B)距離算出部が探索した最短経路を明示した図である。(C)最短経路を構成する各相対ベクトルの長さ(ノルム)を明示した図である。
【
図17】変形例における内視鏡システムの概略構成図である。
【
図18】第2実施形態における画像処理装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、画像処理装置、制御方法及び記憶媒体の実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
(1)
システム構成
図1は、内視鏡検査システム100の概略構成を示す。
図1に示すように、内視鏡検査システム100は、主に、画像処理装置1と、表示装置2と、画像処理装置1に接続された内視鏡スコープ3と、を備える。以後では、代表例として、大腸の内視鏡検査における処理の説明を行う。
【0013】
画像処理装置1は、内視鏡スコープ3が時系列により撮影する画像(「撮影画像Ic」とも呼ぶ。)を内視鏡スコープ3から取得し、撮影画像Icに基づく画面を表示装置2に表示させる。撮影画像Icは、撮影対象である被検者の大腸の管腔を撮影した画像であり、被検者への内視鏡スコープ3の挿入工程又は排出工程において所定の時間間隔により撮影された画像である。本実施形態においては、画像処理装置1は、過去の内視鏡検査における内視鏡スコープ3の挿入工程又は排出工程において大腸の管腔の略全体を細切れに撮影した複数の撮影画像Icに基づき、管腔の壁面を平面上に展開した画像(「パノラマ画像Ip」とも呼ぶ。)を生成する。そして、画像処理装置1は、被検者に対して再び行う内視鏡検査において、内視鏡スコープ3により現在撮影されている被撮影位置に関する情報を、パノラマ画像Ipと対応付けて表示装置2に表示させる。この処理の詳細は後述する。以後では、撮影対象である管腔の略全体を撮影した一連の撮影画像Icが生成される工程(即ち内視鏡スコープ3の挿入工程又は排出工程)を、「撮影工程」とも呼ぶ。
【0014】
表示装置2は、画像処理装置1から供給される表示信号に基づき所定の表示を行うディスプレイ等である。
【0015】
内視鏡スコープ3は、被検者の大腸に挿入されることで大腸の管腔を撮影する機器である。内視鏡スコープ3は、主に、画像処理装置1と接続するための接続部31と、検査者が所定の入力を行うための操作部32と、管腔内に挿入され、柔軟性を有するシャフト33と、超小型撮像素子などの撮影部を内蔵した先端部34とを有する。操作部32は、例えば、先端部34の垂直面上で互いに垂直な2軸(「X軸」及び「Y軸」とする)における方向を夫々段階的に調整可能なダイヤル部を有している。また、操作部32は、例えば、病変が生じていると疑われる箇所(「病変部位」と呼ぶ。)などの注目箇所を検査者が発見した場合に、当該注目箇所を指定するボタン等を有する。この場合、例えば、検査者は、検査中に表示装置2が表示する撮影画像Icを参照し、注目箇所が表示された場合に、上述のボタンを選択することで、表示中の撮影画像Icが注目箇所を含むことを指定する。上述のボタンが選択された場合、操作部32は、所定の信号(「操作信号S1」とも呼ぶ。)を画像処理装置1に供給する。
【0016】
(2)
ハードウェア構成
図2は、画像処理装置1のハードウェア構成を示す。画像処理装置1は、主に、プロセッサ11と、メモリ12と、インターフェース13と、入力部14と、光源部15と、音出力部16と、を含む。これらの各要素は、データバス19を介して接続されている。
【0017】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されているプログラム等を実行することにより、所定の処理を実行する。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサである。
【0018】
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの各種のメモリ(記憶媒体)により構成される。なお、メモリ12は、画像処理装置1に接続又は内蔵されたハードディスクなどの外部記憶装置であってもよく、フラッシュメモリなどの記憶媒体であってもよい。メモリ12には、画像処理装置1が本実施形態における各処理を実行するためのプログラムが記憶される。メモリ12は、機能的には、撮影画像記憶部20と、注目箇所情報記憶部21と、パノラマ画像記憶部22とを有している。これらの記憶部の詳細については後述する。また、メモリ12は、作業メモリとしても使用される。
【0019】
インターフェース13は、画像処理装置1と表示装置2とを接続するためのインターフェース、及び、画像処理装置1と内視鏡スコープ3とを接続するためのインターフェースを含む。例えば、インターフェース13は、プロセッサ11が生成した表示信号を表示装置2に供給する。また、インターフェース13は、光源部15が生成する光等を内視鏡スコープ3に供給する。また、インターフェース13は、内視鏡スコープ3から供給される撮影画像Icを示す電気信号をプロセッサ11に供給する。また、撮影画像記憶部20、注目箇所情報記憶部21、及びパノラマ画像記憶部22が外部記憶装置に含まれる場合、インターフェース13は、例えば、USB、SATA(Serial AT Attachment)などに準拠したインターフェースを含む。
【0020】
入力部14は、検査者による操作に基づく入力信号を生成する。入力部14は、例えば、ボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等である。光源部15は、内視鏡スコープ3の先端部34に供給するための光を生成する。また、光源部15は、内視鏡スコープ3に供給する水や空気を送り出すためのポンプ等も内蔵してもよい。音出力部16は、プロセッサ11の制御に基づき音を出力する。
【0021】
(3)データの概要
次に、撮影画像記憶部20、注目箇所情報記憶部21、及びパノラマ画像記憶部22にそれぞれ保持するデータの概要について説明する。
【0022】
撮影画像記憶部20は、プロセッサ11の制御に基づき、内視鏡検査の撮影工程(挿入工程又は排出工程)において大腸の管腔全体を撮影した一連の撮影画像Icを記憶する。これらの撮影画像Icは、パノラマ画像Ipの生成に用いられる画像であり、被検者の識別情報(例えば患者ID)と関連付けて記憶される。また、各撮影画像Icには、撮影が行われた撮影工程や画像間の撮影順序などを識別するためのタイムスタンプの情報等が関連付けられている。
【0023】
なお、一般に、内視鏡スコープ3の挿入工程よりも排出工程の方が内視鏡スコープ3が管腔内を円滑に移動できる。そして、内視鏡検査の内視鏡スコープ3の挿入工程において生成された撮影画像Icよりも、内視鏡検査の内視鏡スコープ3の排出工程において生成された撮影画像Icの方が、より鮮明に管腔内を撮影した画像となる。よって、好適には、プロセッサ11は、内視鏡検査の内視鏡スコープ3の排出工程において大腸の管腔を撮影した一連の撮影画像Icを撮影画像記憶部20に記憶し、パノラマ画像Ipの生成に用いるとよい。
【0024】
注目箇所情報記憶部21は、検査対象となる大腸の管腔において、検査上注目すべき箇所である注目箇所を示した情報(「注目箇所情報」とも呼ぶ。)を記憶する。注目箇所は、例えば、検査者により病変部位等として指定された部位、又は、病変部位等を検出するための画像解析プログラムにより検出された部位に相当する。なお、注目箇所は、病変部位に限らず、炎症が生じている箇所、手術痕その他の切り傷が生じている箇所、ひだや突起が生じている箇所、前回検査時における内視鏡スコープ3の挿入工程において先端部34が管腔内の壁面に接触した(閊えた)箇所などであってもよい。注目箇所情報は、例えば、注目箇所を表わす撮影画像Icそのものであってもよく、当該撮影画像Icから注目箇所を切り取った部分画像であってもよく、注目箇所に重複又は最も近い管腔内の特徴点に関する情報であってもよい。特徴点の抽出方法等については、後述する。また、注目箇所情報は、病変部位などの異常部位であるか、又は、内視鏡スコープ3の挿入工程で接触した箇所であるか等の注目箇所の種別情報をさらに含んでもよい。
【0025】
パノラマ画像記憶部22は、プロセッサ11が生成したパノラマ画像Ipを記憶する。プロセッサ11は、パノラマ画像Ipの生成に必要な撮影画像Icが撮影画像記憶部20に記憶された後、所定のタイミングにおいてパノラマ画像Ipを生成し、生成したパノラマ画像Ipを被検者の識別情報等と関連付けてパノラマ画像記憶部22に記憶する。また、パノラマ画像Ipには、パノラマ画像Ipの生成に用いた撮影画像Icの撮影日時(タイムスタンプ)に関する情報、及び、被検者の識別情報等が関連付けられているとよい。また、パノラマ画像記憶部22は、パノラマ画像Ipに加えて、パノラマ画像Ipの生成時に各撮影画像Icから抽出された特徴点に関する情報をさらに記憶してもよい。この特徴点に関する情報は、例えば、管腔内の2点間の距離の算出において用いられる。
【0026】
(4)
機能ブロック
図3は、画像処理装置1の機能ブロック図である。
図3に示すように、画像処理装置1のプロセッサ11は、機能的には、取得部41と、注目箇所情報生成部42と、パノラマ画像生成部43と、被撮影位置特定部44と、距離算出部45と、表示制御部46と、を有する。
【0027】
取得部41は、インターフェース13を介して内視鏡スコープ3が撮影した撮影画像Icを所定間隔により取得する。そして、取得部41は、取得した撮影画像Icを、被検者の識別情報等と関連付けて撮影画像記憶部20に記憶する。この場合、例えば、取得部41は、入力部14による入力情報等に基づき被検者の識別情報等を検査開始までに取得し、当該情報を内視鏡スコープ3から取得した撮影画像Icに付加するとよい。また、取得部41は、取得した撮影画像Icを、表示制御部46に供給する。この撮影画像Icは、表示装置2に即時に表示される。
【0028】
さらに、取得部41は、同一の被検者に対する過去の内視鏡検査において撮影された撮影画像Icが撮影画像記憶部20に記憶されている場合には、取得した撮影画像Icを被撮影位置特定部44に供給する。また、取得部41は、注目箇所を指定する操作信号S1を内視鏡スコープ3から受信した場合、操作信号S1と同一タイミングにより内視鏡スコープ3から受信した撮影画像Icと当該操作信号S1とを、注目箇所情報生成部42に供給する。
【0029】
注目箇所情報生成部42は、取得部41から供給される撮影画像Icと、操作信号S1とに基づき、注目箇所情報を生成し、生成した注目箇所情報を注目箇所情報記憶部21に記憶する。例えば、注目箇所情報生成部42は、操作信号S1と共に内視鏡スコープ3から供給された撮影画像Icは病変部位などの注目箇所を表していると判断し、当該撮影画像Icを注目箇所情報として注目箇所情報記憶部21に記憶する。他の例では、注目箇所情報生成部42は、取得部41から供給される撮影画像Icに対し、病変部位等を検出するための画像解析プログラムを実行する。そして、注目箇所情報生成部42は、撮影画像Icにおいて病変部位等の注目箇所を検出した場合、検出した注目箇所を示す注目箇所情報を、注目箇所情報記憶部21に記憶する。この場合の注目箇所情報は、注目箇所が検出された撮影画像Icそのものであってもよく、注目箇所を表す特徴量の情報であってもよい。ここで、病変部位等を検出するための画像解析プログラムは、例えば、異常検知(所謂アノマリーディテクション)に用いられる任意のアルゴリズムに基づくプログラムであってもよい。
【0030】
さらに別の例では、注目箇所情報生成部42は、内視鏡スコープ3の挿入工程において内視鏡スコープ3の先端部34の閊え(壁面への接触)が生じた箇所(「接触箇所」とも呼ぶ。)を注目箇所として検出する。そして、注目箇所情報生成部42は、検出した注目箇所を示す注目箇所情報を注目箇所情報記憶部21に記憶する。この場合、注目箇所情報生成部42は、撮影画像Icに対する画像解析により接触箇所を検出してもよく、先端部34に接触センサ等が設けられている場合には、当該センサにより接触箇所を検出してもよい。例えば、注目箇所情報生成部42は、前者の場合、先端部34の閊えが生じた際に撮影された撮影画像Icを注目箇所情報とし、後者の場合、センサが接触を検知したときに生成された撮影画像Icを注目箇所情報とする。
【0031】
なお、好適には、注目箇所情報生成部42は、検出した注目箇所の種別の情報を注目箇所情報に含めるとよい。例えば、注目箇所情報生成部42は、上述の画像解析又は接触センサの出力等に基づき、接触箇所を検出した場合には、接触箇所であることを示す識別情報を、生成する注目箇所情報に含める。同様に、注目箇所情報生成部42は、操作信号S1又は異常を検出する画像解析プログラムに基づき、病変部位(又はそれに準ずる異常部位)が存在すると判断した場合には、病変部位であることを示す識別情報を、生成する注目箇所情報に含める。
【0032】
パノラマ画像生成部43は、撮影画像記憶部20に記憶された撮影画像Icに基づき、対象の被検者の大腸の管腔全体を平面状に展開したパノラマ画像Ipを生成する。パノラマ画像生成部43によるパノラマ画像Ipの生成処理の詳細については後述する。パノラマ画像生成部43は、生成したパノラマ画像Ipをパノラマ画像記憶部22に記憶する。このとき、パノラマ画像生成部43は、例えば、パノラマ画像Ipの生成に用いた撮影画像Icの撮影日時、及び、被検者を識別する情報等をパノラマ画像Ipに関連付けて記憶する。
【0033】
ここで、パノラマ画像Ipの生成タイミングについて補足説明する。例えば、パノラマ画像生成部43は、内視鏡検査の撮影工程において撮影された一連の撮影画像Icが撮影画像記憶部20に記憶された後、直ちにこれらの撮影画像Icに基づきパノラマ画像Ipを生成する。他の例では、パノラマ画像生成部43は、表示制御部46からパノラマ画像Ipの生成指示があった場合に、撮影画像記憶部20から対象の被検者の撮影画像Icを取得し、パノラマ画像Ipを生成する。後者の例では、パノラマ画像生成部43は、表示制御部46からのパノラマ画像Ipの生成指示に基づきパノラマ画像Ipを生成後、生成したパノラマ画像Ipを表示制御部46へ直接供給してもよい。
【0034】
被撮影位置特定部44は、対象の被検者に対する最新の撮影画像Icと、当該被検者の管腔を表したパノラマ画像Ipとに基づき、パノラマ画像Ipにおける現在の被撮影位置を特定する。被撮影位置特定部44は、例えば、この場合、取得部41から供給される撮影画像Icと、上述のパノラマ画像Ipとの照合(マッチング)を行い、撮影画像Icに対応するパノラマ画像Ip中の領域を特定する。そして、被撮影位置特定部44は、撮影画像Icに対応するパノラマ画像Ip中の領域を示す情報を、第1被撮影位置情報「Itg1」として表示制御部46に供給する。
【0035】
撮影画像Icとパノラマ画像Ipとの照合について補足説明する。被撮影位置特定部44は、例えば、パノラマ画像Ipと同様に、撮影画像Icを管腔の壁面を展開した画像に変換し、変換後の画像とパノラマ画像Ipとで上述の照合を行う。この場合、被撮影位置特定部44は、パノラマ画像Ipと撮影画像Icとの特徴点をそれぞれ抽出し、特徴点のマッチングを行うことで、撮影画像Icに対応するパノラマ画像Ip中の領域を特定する。特徴点の抽出及び特徴点のマッチングの具体的な処理は、後述するパノラマ画像生成処理及び距離算出処理において説明する。
【0036】
距離算出部45は、撮影画像Icに基づき、被検者の管腔内の任意の2点間の距離を算出する。被撮影位置特定部44が算出する2点間の距離は、管腔に沿った距離を指すものとする。本実施形態では、距離算出部45は、管腔内の2点間の距離として、内視鏡スコープ3の挿入位置(即ち肛門の位置)、内視鏡スコープ3による被撮影位置、病変部位や接触箇所などの注目箇所から選択される任意の2点間の距離を算出する。距離算出部45による2点間の距離の算出方法については、後述する。距離算出部45は、算出した距離を示す情報を、第2被撮影位置情報「Itg2」として表示制御部46に供給する。
【0037】
表示制御部46は、内視鏡検査に関する表示信号を生成し、生成した表示信号を表示装置2に供給することで、内視鏡検査に関する画面を表示装置2に表示する。具体的には、表示制御部46は、被検者に対応するパノラマ画像Ipをパノラマ画像記憶部22から取得し、取得したパノラマ画像Ipを、表示装置2に表示する。この場合、表示制御部46は、被撮影位置特定部44から受信する第1被撮影位置情報Itg1に基づき、パノラマ画像Ip上において被撮影位置を対応付けて表示する。また、表示制御部46は、距離算出部45から受信する第2被撮影位置情報Itg2に基づき、内視鏡スコープ3の挿入位置から被撮影位置までの距離等をパノラマ画像Ipに対応付けて表示する。また、表示制御部46は、注目箇所情報記憶部21を参照し、検査者が注目又は注意すべき注目箇所をパノラマ画像Ip上において強調表示する。その他、表示制御部46は、検査者の作業を補助するための種々の表示を行う。具体的な表示装置2の表示例については、後述する。なお、被検者に対する内視鏡検査が過去に行われておらず、表示すべきパノラマ画像Ipを取得できない場合には、表示制御部46は、取得部41から供給される撮影画像Icを、表示装置2に表示する。また、被検者に対する内視鏡検査が過去に複数回行われていた場合には、表示制御部46は、対象の被検者に対する直前の内視鏡検査において生成された撮影画像Icに基づくパノラマ画像Ipを、表示装置2に表示するとよい。
【0038】
(5)
表示例
次に、表示制御部46が実行する処理の詳細について、
図4~
図7を参照して説明する。
【0039】
図4は、内視鏡検査において表示制御部46が生成する表示信号に基づき表示装置2が表示する画面の第1表示例である。第1表示例は、過去に内視鏡検査を行った被検者に対して再び内視鏡検査を行う際の表示装置2の表示画面を示している。
【0040】
第1表示例では、表示制御部46は、同一被検者に対する前回の内視鏡検査の撮影画像Icに基づき生成されたパノラマ画像Ipを、表示装置2に表示させる。ここで、パノラマ画像Ipは、被検者の大腸の内壁を展開した大域的な画像となる。また、表示制御部46は、パノラマ画像Ipと共に、現在の内視鏡検査においてリアルタイムに内視鏡スコープ3が生成する撮影画像Icを取得し、表示装置2に表示させる。
【0041】
また、第1表示例では、表示制御部46は、現在の被撮影位置を示す被撮影位置マーク50と、1回目の内視鏡検査において検出された注目箇所(ここでは病変部位)を示す病変部位マーク51と、管腔に沿った2点間の距離を示す距離情報60とを、パノラマ画像Ipに対応付けて表示する。
【0042】
この場合、表示制御部46は、被撮影位置特定部44が生成する第1被撮影位置情報Itg1に基づき、被撮影位置特定部44がパノラマ画像Ip上で特定した被撮影位置を囲む被撮影位置マーク50を、パノラマ画像Ip上に表示する。ここでは、一例として、表示制御部46は、内視鏡スコープ3から即時に取得された撮影画像Icのパノラマ画像Ipでの対応部分を包含する最小の矩形を、被撮影位置マーク50としてパノラマ画像Ip上に表示する。また、距離算出部45は、表示するパノラマ画像Ipの生成に用いた一連の撮影画像Icを撮影画像記憶部20から取得し、内視鏡スコープ3の挿入位置(即ち肛門)から被撮影位置までの距離(ここでは0.4m)を算出する。そして、表示制御部46は、距離算出部45が生成した第2被撮影位置情報Itg2に基づき、内視鏡スコープ3の挿入位置から被撮影位置までの距離を示す距離情報60を、パノラマ画像Ipに対応付けて表示する。
【0043】
このように、表示制御部46は、パノラマ画像Ipに対応付けて被撮影位置マーク50を表示することで、大腸全体における現在の被撮影位置を好適に検査者に認識させることができる。また、表示制御部46は、内視鏡スコープ3の挿入位置(即ち肛門)から被撮影位置までの距離(ここでは0.4m)を表示することで、現在の被撮影位置をより的確に検査者に把握させることができる。
【0044】
また、表示制御部46は、対象の被検者に対する前回の内視鏡検査時に生成された注目箇所(ここでは病変部位)を示す注目箇所情報を注目箇所情報記憶部21から参照し、当該病変部位を囲む病変部位マーク51を、パノラマ画像Ip上に表示する。ここでは、一例として、表示制御部46は、注目箇所情報として記憶された撮影画像Ic等とパノラマ画像Ipとを照合することで対象の病変部位を特定し、特定した病変部位を囲む最小の矩形を、病変部位マーク51としてパノラマ画像Ip上に表示する。また、距離算出部45は、パノラマ画像Ipの生成に用いた撮影画像Icを撮影画像記憶部20から取得し、被撮影位置から注目箇所である病変部位までの距離(ここでは0.7m)を算出する。そして、表示制御部46は、距離算出部45が生成した第2被撮影位置情報Itg2に基づき、被撮影位置から注目箇所である病変部位までの距離を示す距離情報60を、パノラマ画像Ipに対応付けて表示する。
【0045】
このように、表示制御部46は、パノラマ画像Ipに対応付けて被撮影位置マーク50と共に病変部位マーク51を表示することで、大腸全体における現在の被撮影位置と注目箇所(病変部位)との相対位置関係を好適に検査者に認識させることができる。また、表示制御部46は、被撮影位置から注目箇所である病変部位までの距離(ここでは0.7m)を表示することで、被撮影位置を病変部位に到達させるための目安を検査者に好適に提供することができる。なお、
図4に示す表示は、車両等に対する経路案内に用いられる表示と同等の機能を有し、内視鏡スコープ3に対するナビゲーションに好適に寄与する。この場合、パノラマ画像Ipは、検査対象となる大腸全体を表した地図に相当し、被撮影位置マーク50は、現在位置マークに相当し、病変部位マーク51は、目的地又は経由地のマークに相当する。
【0046】
図5は、表示制御部46が生成する表示信号に基づき表示装置2が表示する画面の第2表示例である。第2表示例は、過去に内視鏡検査を行った被検者に対して再び内視鏡検査を行う際の表示装置2の表示画面を示している。
【0047】
第2表示例では、表示制御部46は、第1表示例と同様に被撮影位置マーク50及び病変部位マーク51をパノラマ画像Ipに対応付けて表示すると共に、同一被検者に対する前回の検査時において検出された接触箇所を示す接触箇所マーク52を、パノラマ画像Ipに対応付けて表示している。
【0048】
この場合、表示制御部46は、被検者の前回の検査時に生成された注目箇所情報を注目箇所情報記憶部21から抽出する。そして、この場合、抽出された注目箇所情報は、夫々病変部位と接触箇所とを表しており、表示制御部46は、これらの注目箇所情報とパノラマ画像Ipとの照合等により、パノラマ画像Ip上での病変部位と接触箇所とを夫々特定する。そして、表示制御部46は、特定した病変部位を囲む病変部位マーク51と共に、特定した接触箇所を囲む接触箇所マーク52を、パノラマ画像Ipに対応付けて表示する。また、距離算出部45は、撮影画像記憶部20に記憶された同一被検者の前回の検査時に生成された撮影画像Icを参照し、内視鏡スコープ3の挿入位置から被撮影位置までの距離(0.4m)、被撮影位置から接触箇所までの距離(0.2m)、接触箇所から病変部位までの距離(0.5m)をそれぞれ算出する。そして、表示制御部46は、距離算出部45が算出したこれらの距離を示す距離情報60を、パノラマ画像Ipに対応付けて表示する。
【0049】
このように、表示制御部46は、前回の検査の挿入工程において内視鏡スコープ3の挿入が円滑に行われなかった接触箇所を特定し、接触箇所マーク52によりパノラマ画像Ip上にて明示する。これにより、内視鏡スコープ3の挿入において注意が必要な箇所を好適に検査者に認識させることができる。また、表示制御部46は、上記の接触箇所と被撮影位置との距離等をパノラマ画像Ipに対応付けて表示することで、上記の接触箇所と被撮影位置との位置関係をより的確に検査者に認識させることができる。
【0050】
また、第2表示例では、表示制御部46は、接触箇所と被撮影位置との距離が予め定めた所定の閾値(例えば0.2m)以下となったことを検知し、被撮影位置が当該接触箇所に近づいている旨の警告を示すテキスト情報61を、表示装置2に表示させる。これにより、表示制御部46は、接触箇所に先端部34が近づいていることを好適に検査者に知らせ、内視鏡スコープ3の挿入作業の注意喚起を行うことができる。また、表示制御部46は、テキスト情報61の表示に加えて、音出力部16によりテキスト情報61と同様の内容を音声出力してもよい。
【0051】
なお、表示制御部46は、病変部位と被撮影位置との距離が所定の閾値以下となった場合においても、被撮影位置が病変部位に近づいている旨の警告を示すテキスト情報を、表示装置2に表示させてもよい。上述の閾値は、例えば警告が検査者に対して最適なタイミングとなるように実験等に基づき予め定められる。これにより、表示制御部46は、病変部位の見逃し等を確実に抑制することができる。上述の表示に加えて、表示制御部46は、音出力部16により被撮影位置が病変部位に近づいている旨の警告を音声出力してもよい。
【0052】
図6は、表示制御部46が生成する表示信号に基づき表示装置2が表示する第3表示例である。第3表示例は、過去に内視鏡検査を行った被検者に対して再び内視鏡検査を行う際の、内視鏡スコープ3の挿入工程での表示装置2の表示画面を示している。
【0053】
表示制御部46は、第1表示例及び第2表示例と同様に被撮影位置マーク50及び病変部位マーク51をパノラマ画像Ipに対応付けて表示すると共に、先端部34に内蔵された撮影部の向き(視線方向)を示す撮影方向矢印62を矩形63内に表示している。ここで、撮影方向矢印62は、管腔の中心方向(即ち管腔の延伸方向)に対する撮影部の撮影方向のずれを示す。具体的には、撮影方向矢印62の向きは、管腔の中心方向に対する撮影部の撮影方向のずれの方向を示し、撮影方向矢印62の長さは、当該ずれの大きさを示す。なお、撮影方向矢印62を囲む矩形63の横方向及び縦方向は、例えば、操作部32のダイヤル部で先端部34の向きを調整する2軸を示すX軸、Y軸に夫々対応してもよく、撮影画像Icの横方向及び縦方向に対応してもよい。なお、撮影画像Icの縦方向及び横方向は、上述の先端部34の向きを調整するX軸及びY軸と夫々同一方向であってもよい。
【0054】
そして、表示制御部46は、管腔の中心方向に対する撮影部の撮影方向のずれを、例えば、内視鏡スコープ3から得られる最新の撮影画像Icに対して画像解析することで算出する。この場合、表示制御部46は、例えば、管腔内の最遠点を検出し、最遠点の位置に基づき管腔の中心方向に対する撮影部の撮影方向のずれを推定する。そして、表示制御部46は、算出したずれに基づき、撮影方向矢印62の向き及び大きさを決定する。なお、矩形63の横方向及び縦方向が撮影画像Icの横方向及び縦方向に対応しない場合には、表示制御部46は、撮影画像Icから算出した撮影部の撮影方向のずれを、矩形63の横方向及び縦方向を基準としたずれに変換後、撮影方向矢印62の向き及び大きさを決定する。この場合、表示制御部46は、例えば、撮影画像Icの縦方向及び横方向を基準としたずれを矩形63の横方向及び縦方向を基準としたずれに変換するための情報を予め記憶しておく。
【0055】
さらに、第3表示例では、表示制御部46は、管腔の壁面と先端部34とが所定距離以内に近づいていることを検知し、先端部34が壁面に近づき過ぎている旨の警告を示すテキスト情報64を表示装置2に表示している。このとき、表示制御部46は、先端部34が壁面に近づき過ぎている旨の警告に加えて、操作部32での具体的な操作を指示する指示情報(「X方向のダイヤルをプラス方向に回して下さい」)を含むテキスト情報64を、表示装置2に表示している。
【0056】
この場合、表示制御部46は、内視鏡スコープ3から得られる最新の撮影画像Icに対して公知の画像解析を行うことで、先端部34と撮影画像Icに表示されている壁面との距離を算出し、当該距離が予め定めた閾値以下の場合に上述の警告を出力する。上述の閾値は、例えば実験等に基づき予め定められる。なお、先端部34に撮影部以外のセンサ(近接センサなど)が設けられている場合には、表示制御部46は、当該センサの出力に基づき上述の距離を算出してもよい。また、この場合、表示制御部46は、例えば、撮影方向矢印62が示す方向と反対方向へ先端部34の向きを調整する旨を指示する指示情報を、テキスト情報64の一部として表示する。なお、表示制御部46は、テキスト情報64の表示に加えて、テキスト情報64と同等の内容を音出力部16により音声出力してもよい。
【0057】
このように、第3表示例では、表示制御部46は、現在の撮影方向のずれを撮影方向矢印62により示すことで、検査者による内視鏡スコープ3の挿入作業を好適に支援することができる。また、表示制御部46は、先端部34が壁面に近づいていることを検知した場合に、その旨の警告及び内視鏡スコープ3に対する操作に関する指示情報を出力することで、検査者による内視鏡スコープ3の挿入作業を円滑に実行させることができる。
【0058】
図7は、表示制御部46が生成する表示信号に基づき表示装置2が表示する第4表示例である。第4表示例は、過去に内視鏡検査を行った被検者に対する内視鏡検査時での表示装置2の表示画面を示している。
【0059】
第4表示例では、表示制御部46は、過去の内視鏡検査において生成された撮影画像Icに基づくパノラマ画像Ipを表示すると共に、今回の内視鏡検査において生成された撮影画像Icに基づくパノラマ画像(「第2パノラマ画像Ip2」とも呼ぶ。)を表示装置2に表示している。この場合、パノラマ画像生成部43は、今回の検査において生成された撮影画像Icを撮影画像記憶部20から抽出し又は取得部41から直接取得し、当該撮影画像Icに対して後述するパノラマ画像生成処理を行うことで、第2パノラマ画像Ip2を生成する。この場合、パノラマ画像生成部43は、例えば、所定の時間間隔ごとに、パノラマ画像生成処理を行い、表示装置2に表示させる第2パノラマ画像Ip2を更新する。第4表示例によれば、表示制御部46は、過去の内視鏡検査における被検者の管腔内の状態と、現在の内視鏡検査における被検者の管腔内の状態とを好適に比較可能に検査者に提示することができる。
【0060】
(6)
全体処理概要
図8は、本実施形態において内視鏡検査時に画像処理装置1が実行する表示処理の概要を示すフローチャートの一例である。画像処理装置1は、
図8の処理を、例えば、内視鏡検査において内視鏡スコープ3の挿入工程又は排出工程が開始される場合に実行する。この場合、画像処理装置1は、例えば、入力部14又は操作部32への所定の入力があった場合に、
図8の処理を開始すべきと判定する。
【0061】
まず、画像処理装置1は、現在行われる内視鏡検査の被検者に対する前回検査時の撮影画像Icが撮影画像記憶部20に記憶されているか否か判定する(ステップS100)。そして、同一の被検者に対する前回検査時の撮影画像Icが撮影画像記憶部20に記憶されている場合(ステップS100;Yes)、パノラマ画像生成部43は、パノラマ画像生成処理を実行する(ステップS101)。これにより、パノラマ画像生成部43は、前回検査時の撮影工程で得られた一連の撮影画像Icに基づき、被検者の大腸の管腔を展開した大域的なパノラマ画像Ipを生成する。なお、パノラマ画像生成部43は、前回検査後から今回検査までの任意のタイミングにおいてステップS101のパノラマ画像生成処理を行い、生成したパノラマ画像Ipをパノラマ画像記憶部22に記憶してもよい。
【0062】
次に、取得部41は、内視鏡スコープ3からリアルタイムで得られる撮影画像Icを取得し、取得した撮影画像Icを撮影画像記憶部20に記憶する(ステップS102)。そして、被撮影位置特定部44は、内視鏡スコープ3から得られる最新の撮影画像Icと、ステップS101で生成されたパノラマ画像Ipとの照合を行うことで、パノラマ画像Ip上での現在の被撮影位置を特定する(ステップS103)。また、距離算出部45は、管腔内の2点間の管腔に沿った距離を算出する距離算出処理を実行する(ステップS104)。これにより、距離算出部45は、内視鏡スコープ3の挿入位置から被撮影位置までの距離、被撮影位置から注目箇所までの距離などを算出する。
【0063】
そして、表示制御部46は、ステップS103及びステップS104での処理結果と、ステップS101で生成されたパノラマ画像Ipとに基づき、現在の被撮影位置及び注目箇所等をパノラマ画像Ipに対応付けて表示装置2に表示させる(ステップS105)。これにより、表示制御部46は、現在の被撮影位置及び注目箇所の管腔全体における位置関係を、好適に検査者に認識させることができる。
【0064】
そして、表示制御部46は、注目箇所に被撮影位置が所定距離以内に接近したか否か判定する(ステップS106)。そして、表示制御部46は、注目箇所に被撮影位置が所定距離以内に接近したと判定した場合(ステップS106;Yes)、注目箇所に被撮影位置が接近している旨の警告を出力する(ステップS107)。この場合、表示制御部46は、表示装置2により上記警告を表示してもよく、音出力部16により上記警告を音声出力してもよい。
【0065】
そして、ステップS107を終了した場合、又は、注目箇所に被撮影位置が所定距離以内に接近していない場合(ステップS106;No)、画像処理装置1は、進行されていた内視鏡検査が終了したか否か判定する(ステップS108)。例えば、画像処理装置1は、入力部14又は操作部32への所定の入力等を検知した場合に、内視鏡検査が終了したと判定する。そして、画像処理装置1は、内視鏡検査が終了したと判定した場合(ステップS108;Yes)、フローチャートの処理を終了する。一方、画像処理装置1は、内視鏡検査が終了していないと判定した場合(ステップS108;No)、ステップS102へ処理を戻す。そして、画像処理装置1は、再びステップS102~ステップS107の処理を実行する。
【0066】
一方、ステップS100において、同一の被検者に対する前回検査時の撮影画像Icが撮影画像記憶部20に存在しない場合(ステップS100;No)、取得部41は、内視鏡スコープ3からリアルタイムに供給される撮影画像Icを取得し、取得した撮影画像Icを撮影画像記憶部20に記憶する(ステップS109)。また、表示制御部46は、取得部41が取得した撮影画像Icを表示装置2に表示させる。
【0067】
そして、注目箇所情報生成部42は、内視鏡スコープ3から取得部41が取得する撮影画像Icに対する画像解析結果、又は、内視鏡スコープ3から供給される操作信号S1等に基づき、注目箇所が存在するか否か判定する(ステップS110)。そして、注目箇所情報生成部42は、注目箇所が存在すると判定した場合(ステップS110;Yes)、当該注目箇所に対応する注目箇所情報を生成し、生成した注目箇所情報を注目箇所情報記憶部21に記憶する(ステップS111)。
【0068】
そして、ステップS111の処理が終了した場合、又は、注目箇所が存在しない場合(ステップS110;No)、画像処理装置1は、進行している内視鏡検査が終了したか否か判定する(ステップS112)。例えば、画像処理装置1は、入力部14又は操作部32への所定の入力等を検知した場合に、内視鏡検査が終了したと判定する。そして、画像処理装置1は、内視鏡検査が終了したと判定した場合(ステップS112;Yes)、フローチャートの処理を終了する。一方、内視鏡検査が終了していない場合(ステップS112;No)、画像処理装置1は、引き続きステップS109~ステップS111の処理を実行する。
【0069】
(7)
パノラマ画像生成処理
次に、
図8のステップS101においてパノラマ画像生成部43が実行するパノラマ画像生成処理について具体的に説明する。
【0070】
図9は、パノラマ画像生成部43が実行するパノラマ画像生成処理のフローチャートの一例である。パノラマ画像生成部43は、
図8のステップS101において
図9のフローチャートの処理を実行する。
【0071】
例えば、パノラマ画像生成部43は、前回検査時における撮影工程(即ち内視鏡スコープ3の挿入工程又は排出工程)において得られた一連の撮影画像Icを撮影画像記憶部20から取得する(ステップS200)。次に、パノラマ画像生成部43は、パノラマ画像Ipの生成に使用する画像を、ステップS200で取得した撮影画像Icから選択する(ステップS201)。この場合、例えば、パノラマ画像生成部43は、画像が入力された場合に当該画像にボケやブレなどが存在するか否かの推論結果を出力するように構成された推論器に、ステップS200で取得した各撮影画像Icを入力する。そして、パノラマ画像生成部43は、ボケやブレなどが存在しないと推論器により推論された画像を、パノラマ画像Ipの生成に使用する画像として選択する。この場合、上述の推論器に必要なパラメータは、例えば、深層学習に基づく学習モデルの学習を行うことで予め生成され、メモリ12等に記憶される。
【0072】
次に、パノラマ画像生成部43は、ステップS201で選択した撮影画像Icの展開を行う(ステップS202)。例えば、パノラマ画像生成部43は、撮影画像Icにおいて視点位置から最も離れた位置に相当する最遠点を検出し、当該最遠点を中心として極座標変換を行うことで、撮影画像Icを展開した画像(「展開画像」とも呼ぶ。)を生成する。
【0073】
次に、パノラマ画像生成部43は、ステップS202で生成された各展開画像に対して特徴点の抽出処理を行う(ステップS203)。例えば、パノラマ画像生成部43は、AKAZE、SIFT、SURF、BRISKなどの任意の特徴抽出アルゴリズムを用いて、各展開画像中の特徴点を抽出する。
【0074】
そして、パノラマ画像生成部43は、展開画像間の特徴点のマッチングを行う(ステップS204)。この場合、パノラマ画像生成部43は、展開画像間において同じ特徴量を有する特徴点を検出し、これらの特徴点の組み合わせを同一点とみなすことで、展開画像間における特徴点の対応を認識する。この場合、パノラマ画像生成部43は、例えば、RANSACやK-Nearest Neghborなどの種々の特徴点マッチング手法を用いて、展開画像間における特徴点のマッチングを行う。
【0075】
そして、パノラマ画像生成部43は、ステップS204での特徴点のマッチング結果に基づき、ステップS202で生成した全ての展開画像を結合させることで、パノラマ画像Ipを生成する(ステップS205)。この場合、パノラマ画像生成部43は、マッチングした特徴点同士が重なるように、展開画像を非剛体変形することで、全ての展開画像を結合したパノラマ画像Ipを生成する。
【0076】
なお、パノラマ画像生成部43が実行すべきパノラマ画像生成処理は、
図9に示す処理に限定されず、管腔臓器又はこれと同等の構造を有する筒状構造体の内部を撮影した環状画像をパノラマ画像に変換する処理であればよい。例えば、特開2013-84156号公報には、環状画像をパノラマ画像に変換する処理が開示されている。
【0077】
(8)
距離算出処理
次に、
図8のステップS101において距離算出部45が実行する距離算出処理について具体的に説明する。
【0078】
図10は、距離算出部45が実行する距離算出処理のフローチャートの一例である。パノラマ画像生成部43は、
図8のステップS104において
図10のフローチャートの処理を実行する。
【0079】
まず、距離算出部45は、距離を算出する2点間の撮影画像Icを、前回の内視鏡検査にて生成された一連の撮影画像Icを記憶する撮影画像記憶部20から取得する(ステップS300)。この場合、例えば、距離算出部45は、距離を算出する対象となる2点の各点を夫々撮影範囲とする撮影画像Icと、これらの撮影画像Icの間において生成された他の撮影画像Icとを、撮影画像記憶部20から取得する。
【0080】
例えば、内視鏡スコープ3の挿入位置から被撮影位置までの距離を算出する場合について考察する。この場合、距離算出部45は、内視鏡スコープ3の挿入位置を撮影範囲とする撮影画像Icと、現在行われている内視鏡検査で得られる最新の撮影画像Icに対応する撮影画像Icとを、前回の内視鏡検査で生成された一連の撮影画像Icから夫々特定する。そして、距離算出部45は、特定した2つの撮影画像Ic及びこれらの間に生成された撮影画像Icを、距離を算出する2点間の撮影画像Icとして、撮影画像記憶部20から取得する。
【0081】
なお、距離算出部45は、内視鏡スコープ3の挿入位置から被撮影位置までの距離を算出する場合、前回の内視鏡検査で生成された撮影画像Icを取得する代わりに、現在行われている内視鏡検査で生成された撮影画像Icを取得してもよい。この場合、距離算出部45は、現在の内視鏡検査の開始から現在までに取得された撮影画像IcをステップS300において取得する。この場合であっても、距離算出部45は、内視鏡スコープ3の挿入位置から被撮影位置までの距離を算出することができる。
【0082】
次に、距離算出部45は、
図9に示すパノラマ画像生成処理のステップS201~ステップS204と同一処理を、ステップS300で取得した撮影画像Icに対して実行する。具体的には、距離算出部45は、距離算出に使用する画像(即ちブレ等が生じていない画像)を、ステップS300で取得した撮影画像Icから選択する(ステップS301)。次に、距離算出部45は、ステップS301で選択した撮影画像Icの展開を行う(ステップS302)。そして、距離算出部45は、ステップS302で生成された各展開画像に対して特徴点の抽出処理を行う(ステップS303)。そして、距離算出部45は、展開画像間において同じ特徴量を有する特徴点を特徴点マッチング手法によりマッチングを行い、展開画像間における対応を認識する(ステップS304)。
【0083】
なお、例えば、パノラマ画像生成部43は、パノラマ画像生成処理のステップS201~ステップS204での処理結果(例えば、展開画像、特徴点の情報及び特徴点のマッチング結果)を、撮影画像記憶部20に記憶する各撮影画像Icと関連付けて記憶してもよい。この場合、距離算出部45は、ステップS301~ステップS304の各処理を実行する代わりに、パノラマ画像生成部43が撮影画像Icに関連付けて記憶した処理結果を参照することで、ステップS301~ステップS304の処理結果を得ることができる。
【0084】
次に、距離算出部45は、ステップS303で抽出された特徴点に対して、近傍特徴点の探索及び接続を行う(ステップS305)。この場合、距離算出部45は、各展開画像の特徴点について、近傍となる特徴点の探索を行い、近傍となる特徴点同士を接続するリンクを設ける。この処理の詳細については、
図11を参照して後述する。
【0085】
次に、距離算出部45は、各特徴点の3次元空間上での撮影部からの距離を算出する(ステップS306)。この場合、距離算出部45は、例えば機械学習を用いた深さ推定アルゴリズムに基づき、各特徴点の3次元空間上での撮影部からの距離を算出する。この処理の詳細については、
図12を参照して説明する。
【0086】
そして、距離算出部45は、ステップS306で接続された特徴点間の3次元空間上での相対ベクトルを、ステップS302で取得した展開画像と、撮影部のパラメータと、ステップS306で算出した各特徴点の距離と、に基づき算出する(ステップS307)。この処理の詳細については、
図13及び
図14を参照して説明する。
【0087】
次に、距離算出部45は、距離を算出する2点間の最短経路の探索を行う(ステップS308)。この場合、距離算出部45は、距離を算出する2点間に存在する特徴点間のリンクを繋ぎ合わせることで、距離を算出する2点間の経路を形成し、経路を形成する各リンクに対応する相対ベクトル長の合計が最小となる経路を、最短経路として決定する。そして、距離算出部45は、最短経路を形成する各リンクに対応する相対ベクトル長の合計値を、求めるべき2点間の距離として算出する(ステップS309)。ステップS308及びステップS309の処理の詳細については、
図15及び
図16を参照して説明する。
【0088】
ここで、ステップS305の近傍特徴点の探索及び接続について、
図11(A)~(C)を参照して説明する。
図11(A)は、あるパノラマ画像Ipから生成した展開画像上において、ステップS303で抽出された特徴点「P1」~「P6」を明示した図である。
図11(B)は、特徴点P2の近傍を拡大した画像である。
【0089】
この場合、ステップS305では、距離算出部45は、各特徴点P1~P6について、展開画像上において所定距離(所定画素)以内となる近傍特徴点の探索を行う。例えば、特徴点P2の近傍特徴点を探索する場合、
図11(B)に示すように、距離算出部45は、特徴点P2を中心とした所定距離(矢印参照)を半径する円68内に存在する特徴点を探索する。そして、この場合、距離算出部45は、特徴点P1、P3、P4を、それぞれ特徴点P2の近傍特徴点とみなす。
【0090】
図11(C)は、近傍特徴点となる特徴点間を線で結んだ展開画像を示す。
図11(C)に示すように、距離算出部45は、近傍特徴点となる特徴点間においてリンクを設ける。例えば、特徴点P2は、特徴点P1、P3、P4が近傍特徴点となるため、特徴点P2と特徴点P1、P3、P4との間に夫々リンクが設けられる。そして、距離算出部45は、
図11(A)~(C)に示した処理を、ステップS302で生成した全ての展開画像に対して実行する。
【0091】
次に、ステップS306における、各特徴点の3次元空間上での撮影部からの距離の算出について説明する。
図12は、特徴点P1~P6の各々に対する3次元空間上での撮影部からの距離を明示した展開画像を示す。
【0092】
距離算出部45は、例えば、入力された画像に対して各画素(サブピクセルであってもよい)での撮影部からの距離を推論する推論器に対し、対象の展開画像を入力する。そして、距離算出部45は、各特徴点に対応する各画素に対する推論器の推論値を参照することで、各特徴点の3次元空間上での撮影部からの距離を取得する。この推論器は、入力された画像に対して各画素に対する撮影部からの距離を推論するように学習された学習モデルであり、例えば深層学習に基づく学習モデルである。このような学習モデルを学習する場合、例えば、内視鏡科医の訓練に用いられる大腸ファントムを複眼カメラで撮影して算出した距離を正解データ、当該大腸ファントムを撮影した内視鏡画像を入力画像とし、これらの組合せを学習データとして用いる。なお、撮影された画像の各画素の深さ(距離)を推定する機械学習の手法は、DORN(Deep Oridinal Regression Network for Monocular Depth Estimation)などが存在する。
【0093】
次に、ステップS307における、特徴点間の3次元空間上での相対ベクトルの算出について、
図13及び
図14を参照して説明する。
【0094】
図13は、撮影画像Icの横方向又は縦方向のいずれか一方のみを考慮した場合の、撮影画像Icにおける長さ(距離)と実際の長さ(距離)との対応関係を示す図である。ここでは、撮影部の撮影範囲内に存在する棒状物体81の長さを「L」、撮影画像Ic上における棒状物体81の像81aの長さ(ピクセル数)を「La」、撮影画像Icの幅(画素数)を「S」とする。また、撮像部から棒状物体81までの距離を「D」、撮像部のレンズ毎に一意に定まる撮像部のパラメータである視野角(即ちfov値)を「fv」とする。この場合、棒状物体81の長さLは、
図13に示す幾何学的な関係に基づき、以下の式(1)により表される。
L=2D・tan(fv/2)・(La/S) (1)
なお、距離算出部45は、撮像部の視野角fvに代えて、撮像部の他のパラメータ(例えば焦点距離)を用いて、
図13に示す幾何学的関係に基づき、長さLを同様に算出してもよい。
【0095】
図14(A)は、
図12に示す展開画像において、一部の領域を画素と対応付けて示した図である。ここでは、説明便宜上、展開画像に平行かつ夫々垂直な「x軸」及び「y軸」、x軸及びy軸に垂直な「z軸」を定める。以後では、一例として、特徴点P5と特徴点P6とを結ぶリンクの相対ベクトル「T
56=(Tx、Ty、Tz)」のx方向、y方向、z方向の各成分「Tx」、「Ty」、「Tz」の算出方法について考察する。
【0096】
まず、相対ベクトルT56のz方向成分Tzは、以下の式(2)に示すように、相対ベクトルT56の始点及び終点である特徴点P5及び特徴点P6の深さ方向の距離「Az」及び「Bz」の差として求められる。
Tz=Bz-Az (2)
【0097】
ここで、相対ベクトルT
56が通る画素「Px1」に撮像された地点の、撮影部からの距離を「Dp」、相対ベクトルT
56が対象の画素Px1を横切るx、y方向の長さを夫々「Rx」、「Ry」(0<Rx、Ry<1)(単位はピクセル)とする。
図14(B)は、相対ベクトルT
56の長さRx、Ryを明示した画素Px1の拡大図である。また、撮像部のx方向及びy方向のfov値(視野角)を夫々「fvx」、「fvy」、撮像部のx方向及びy方向の幅(サイズ)を夫々「Sx」、「Sy」とする。
【0098】
この場合、対象の画素Px1上の相対ベクトルT56のx方向成分「Px」及びy方向成分「Py」は、夫々、式(1)に上記各記号を当てはめた以下の式(3)及び式(4)により表される。
Px=2Dp・tan(fvx/2)・(1/Sx)・Rx (3)
Py=2Dp・tan(fvy/2)・(1/Sy)・Ry (4)
【0099】
そして、距離算出部45は、相対ベクトルT56が横切る各画素に対してx方向成分Px及びy方向成分Pyを算出し、夫々足し合わせることにより、相対ベクトルT56のx方向成分Tx及びy方向成分Tyを算出する。即ち、距離算出部45は、以下の式(5)及び式(6)に従い、相対ベクトルT56のx方向成分Tx及びy方向成分Tyを算出する。
Tx=ΣPx (5)
Ty=ΣPy (6)
【0100】
このように、距離算出部45は、展開画像と、撮像部のパラメータと、各特徴点の撮影部からの距離とに基づき、特徴点間の相対ベクトルの各成分Tx、Ty、Tzを好適に算出することができる。
【0101】
次に、ステップS308及びステップS309における最短経路の探索及び距離の算出について、
図15及び
図16を用いて説明する。
【0102】
距離算出部45は、設定した特徴点間のリンクに基づき、距離を求める2点間の最短経路を探索する。この場合、距離算出部45は、ステップS304でマッチングされた展開画像間の特徴点については、同一点(即ち距離0で結合している)とみなす。
【0103】
図15は、挿入部69から病変部位70までの2点間の距離を算出する場合に使用する5枚の展開画像54~58の特徴点同士の対応関係を示した図である。
図15は、挿入部69を被撮影対象とする展開画像54と、挿入部69から病変部位70に至るまでの中間地点を被撮影対象とする展開画像55~57と、病変部位70を被撮影対象とする展開画像58とを夫々示している。
【0104】
ここで、展開画像54上の枠71A内の各特徴点は、展開画像55の枠71B内の各特徴点とステップS304のマッチング処理においてマッチングしている。よって、この場合、距離算出部45は、枠71A内の各特徴点と枠71B内の各特徴点とを、夫々、同一点(即ち距離0で結合している)とみなす。同様に、距離算出部45は、展開画像55の枠72A内の各特徴点と展開画像56の枠72B内の各特徴点とを同一点とみなし、展開画像56の枠73A内の各特徴点と展開画像57の枠73B内の特徴点とを同一点とみなし、展開画像57の枠74Aと展開画像58の枠74B内の特徴点とを同一点とみなす。
【0105】
図16(A)は、挿入部69から病変部位70までの特徴点とこれらの特徴点間に設けられたリンクとを示す。距離算出部45は、マッチングした特徴点を同一点とみなすことにより、
図16(A)に示すように、挿入部69から病変部位70までの経路をグラフとして認識する。そして、距離算出部45は、車両のナビゲーションなどにおいて用いられる任意の最短経路探索アルゴリズム(例えばダイクストラ法)を用いることで、挿入部69から病変部位70までの最短経路を算出する。この場合、例えば、距離算出部45は、各リンクのコストを、対応する特徴点間の相対ベクトルのノルム(長さ)とみなし、2点間の経路を構成するリンクの合計コストが最小となる経路を、最短経路として探索する。
【0106】
図16(B)は、
図16(A)において距離算出部45が探索した最短経路「LT」を明示した図である。
図16(C)は、最短経路LTを構成する各相対ベクトルの長さ(ノルム)「t1」~「t13」を明示した図である。距離算出部45は、最短経路LTを構成する各リンクに対応する相対ベクトル長t1~t13を加算することで、最短経路LTの経路長を算出する。そして、距離算出部45は、算出した経路長(=「Σ
N=1
13(t
N)」)を、挿入部69から病変部位70までの距離とする。
【0107】
このように、距離算出部45は、特徴点間の相対ベクトルの算出後、これらの特徴点を結ぶことで形成した2点間の経路のうち当該経路を構成する特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の経路長を、2点間の距離として算出する。これにより、距離算出部45は、管腔に沿った管腔内の任意の2点間の長さを、的確に算出することができる。
【0108】
(9)変形例
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。以後の変形例は、組み合わせて上述の実施形態に適用してもよい。
【0109】
(変形例1)
表示制御部46は、内視鏡スコープ3の挿入工程で得られた撮影画像Icに基づき生成したパノラマ画像Ipを、内視鏡スコープ3の排出工程において表示装置2に表示させてもよい。
【0110】
この場合、表示制御部46は、排出工程において管腔内における処置を行う場合に、直前の挿入工程で得られた撮影画像Icに基づき、パノラマ画像Ipを生成し、表示装置2に表示させる。この例では、過去の内視鏡検査において生成された撮影画像Icを用いずにパノラマ画像Ipを生成するため、被検者に対する過去の内視鏡検査で得られた撮影画像Icを必要としない。従って、本変形例では、表示制御部46は、被検者に対する最初の検査においても、排出工程において管腔内における処置を行う場合に、現在の被撮影位置及び病変部位等に関する情報を、パノラマ画像Ipと対応付けて好適に表示することができる。
【0111】
(変形例2)
撮影画像記憶部20、注目箇所情報記憶部21、及びパノラマ画像記憶部22は、画像処理装置1とは別の記憶装置に記憶されてもよい。
【0112】
図17は、変形例2における内視鏡検査システム100Aの概略構成図である。なお、
図17では、簡潔化のため、表示装置2及び内視鏡スコープ3等を図示していない。
図17に示す内視鏡検査システム100Aは、撮影画像記憶部20、注目箇所情報記憶部21、及びパノラマ画像記憶部22を記憶するサーバ装置4を備える。また、内視鏡検査システム100Aは、サーバ装置4とネットワークを介してデータ通信が可能な複数の画像処理装置1(1A、1B、…)を備える。
【0113】
この場合、各画像処理装置1は、ネットワークを介して撮影画像記憶部20、注目箇所情報記憶部21及びパノラマ画像記憶部22の参照及び更新を行う。この場合、各画像処理装置1のインターフェース13は、通信を行うためのネットワークアダプタなどの通信インターフェースを含む。この構成では、各画像処理装置1は、上述の実施形態と同様、撮影画像記憶部20、注目箇所情報記憶部21及びパノラマ画像記憶部22の参照及び更新を好適に行うことができる。
【0114】
また、
図17に示す内視鏡検査システム100Aでは、各画像処理装置1は、撮影画像記憶部20、注目箇所情報記憶部21及びパノラマ画像記憶部22に記憶した情報を共有する。よって、同一被検者に対する1回目の内視鏡検査と2回目の内視鏡検査とが別の画像処理装置1を用いて行われた場合であっても、2回目の内視鏡検査において使用される画像処理装置1は、
図4~
図7に示す各表示を行うことができる。この場合、1回目の検査を行った画像処理装置1がパノラマ画像Ipを生成してパノラマ画像記憶部22に記憶し、2回目の検査を行う画像処理装置1が当該パノラマ画像Ipをパノラマ画像記憶部22から取得して
図4~
図7に示す各表示を行うこともできる。
【0115】
(変形例3)
表示装置2は、画像処理装置1の一部であってもよい。この場合、画像処理装置1のプロセッサ11は、表示装置2に相当する表示部に対し、
図4~
図7に示す画面を表示するための表示信号を供給する。また、表示装置2は、ディスプレイに限らず映像を投影するプロジェクタなどであってもよい。
【0116】
(変形例4)
注目箇所情報記憶部21が記憶する注目箇所情報に相当する情報は、撮影画像記憶部20に記憶されてもよい。
【0117】
例えば、撮影画像記憶部20は、注目箇所に相当する撮影画像Icに対し、注目箇所である旨のフラグ情報を関連付けて記憶してもよい。この場合、注目箇所情報記憶部21は存在しなくともよい。この態様であっても、プロセッサ11は、撮影画像記憶部20を参照することで、注目箇所の存在を好適に認識し、上述した実施形態と同様に表示装置2での表示等に反映することができる。
【0118】
また、
図3において、パノラマ画像生成部43は、生成したパノラマ画像Ipをパノラマ画像記憶部22に記憶する代わりに、生成したパノラマ画像Ipを表示制御部46へ供給してもよい。この態様では、パノラマ画像記憶部22は存在しなくともよい。
【0119】
<第2実施形態>
図18は、第2実施形態における画像処理装置1Xのブロック図である。画像処理装置1Xは、パノラマ画像取得部43Xと、表示制御部46Xとを備える。
【0120】
パノラマ画像取得部43Xは、第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の撮影画像Icに基づき、管腔内の壁面を平面状に展開したパノラマ画像Ipを取得する。パノラマ画像取得部43Xは、例えば、パノラマ画像生成処理を行うことでパノラマ画像Ipを生成する第1実施形態のパノラマ画像生成部43とすることができる。他の例では、パノラマ画像取得部43Xは、他の装置により生成されたパノラマ画像Ipを、当該他の装置又はパノラマ画像Ipを記憶する記憶装置から取得してもよい。
【0121】
表示制御部46Xは、第2撮影工程における管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、パノラマ画像Ipと対応付けて表示装置2に表示する。被撮影位置情報は、例えば、第1実施形態の第1被撮影位置情報Itg1又は第2被撮影位置情報Itg2若しくはこれらの両方とすることができる。
【0122】
第2実施形態によっても、画像処理装置1Xは、第2撮影工程における管腔の被撮影位置を好適に検査者に把握させることができる。
【0123】
その他、上記の各実施形態(変形例を含む、以下同じ)の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが以下には限られない。
【0124】
[付記1]
第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像に基づき、前記管腔内の壁面を平面状に展開したパノラマ画像を取得するパノラマ画像取得部と、
第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示する表示制御部と、
を有する画像処理装置。
【0125】
[付記2]
前記表示制御部は、前記内視鏡の挿入位置から前記被撮影位置までの距離を示す情報を、前記被撮影位置情報として前記表示装置に表示する、付記1に記載の画像処理装置。
【0126】
[付記3]
前記第2撮影工程において撮影される画像に基づき、前記被撮影位置を特定する被撮影位置特定部をさらに有し、
前記表示制御部は、前記被撮影位置特定部が特定した被撮影位置を示すマークを、前記被撮影位置情報として前記パノラマ画像上に表示する、付記1または2に記載の画像処理装置。
【0127】
[付記4]
前記撮影部のパラメータと、前記壁面における複数の特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、に基づき、前記管腔内の2点間の距離を算出する距離算出部をさらに備える、付記1~3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0128】
[付記5]
前記距離算出部は、入力された画像に対して当該画像の被撮影対象の撮影部からの距離を出力するように学習された推論器に、前記特徴点を被撮影対象とする画像を入力することで、当該特徴点に対する前記撮影部からの距離を取得する、付記4に記載の画像処理装置。
【0129】
[付記6]
前記距離算出部は、
前記撮影部のパラメータと、前記特徴点の各々に対する前記撮影部からの距離と、前記特徴点を被撮影対象とする画像と、に基づき、前記特徴点間の相対ベクトルを算出し、
前記複数の特徴点を結ぶことで形成した前記2点間の経路のうち当該経路を構成する前記特徴点間の相対ベクトルの長さの和が最小となる経路の前記和を、前記2点間の距離として算出する、付記4または5に記載の画像処理装置。
【0130】
[付記7]
前記距離算出部は、前記複数の特徴点を被撮影対象とする複数の画像間において同一箇所を表す特徴点の組み合わせを検出し、当該特徴点の組み合わせを同一の特徴点とみなす、付記6に記載の画像処理装置。
【0131】
[付記8]
前記表示制御部は、前記パノラマ画像上における注目箇所を示すマークを、前記表示装置に表示する、付記1~7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0132】
[付記9]
前記表示制御部は、前記被撮影位置から前記注目箇所までの距離、又は、前記内視鏡の挿入位置から前記注目箇所までの距離、の少なくとも一方を示す情報を、前記表示装置に表示する、付記8に記載の画像処理装置。
【0133】
[付記10]
前記注目箇所は、病変部位、又は、前記内視鏡の挿入時において前記内視鏡が接触した箇所である、付記8または9に記載の画像処理装置。
【0134】
[付記11]
前記表示制御部は、前記被撮影位置から前記注目箇所までの距離が所定距離以下となった場合に警告を出力する、付記8~10のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0135】
[付記12]
前記パノラマ画像取得部は、前記内視鏡の排出工程において撮影した複数の画像に基づき、前記パノラマ画像を生成する、付記1~11のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0136】
[付記13]
前記表示制御部は、前記撮影部の現在の向きを示す情報を、前記表示装置に表示する、付記1~12のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0137】
[付記14]
前記表示制御部は、前記撮影部の向きの調整に関する指示情報を出力する、付記1~13のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0138】
[付記15]
前記表示制御部は、前記第1撮影工程において撮影した複数の画像に基づく前記パノラマ画像と共に、前記第2撮影工程において撮影した複数の画像に基づく前記パノラマ画像を前記表示装置に表示する、付記1~14のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【0139】
[付記16]
画像処理装置が実行する制御方法であって、
第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像に基づき、前記管腔内の壁面を平面状に展開したパノラマ画像を取得し、
第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示する、
制御方法。
【0140】
[付記17]
第1撮影工程において内視鏡に設けられた撮影部により管腔を撮影した複数の画像に基づき、前記管腔内の壁面を平面状に展開したパノラマ画像を取得するパノラマ画像取得部と、
第2撮影工程における前記管腔の被撮影位置に関する被撮影位置情報を、前記パノラマ画像と対応付けて表示装置に表示する表示制御部
としてコンピュータを機能させるプログラムを格納した記憶媒体。
【0141】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0142】
1、1X 画像処理装置
2 表示装置
3 内視鏡スコープ
11 プロセッサ
12 メモリ
13 インターフェース
14 入力部
15 光源部
16 音出力部
20 撮影画像記憶部
21 注目箇所情報記憶部
22 パノラマ画像記憶部
100、100A 内視鏡検査システム