(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】圧電体薄膜素子の製造方法及び電子素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 30/088 20230101AFI20240402BHJP
【FI】
H10N30/088
(21)【出願番号】P 2021562414
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2019047792
(87)【国際公開番号】W WO2021111612
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭
(72)【発明者】
【氏名】江口 秀幸
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-253331(JP,A)
【文献】特開2011-007648(JP,A)
【文献】特開2010-043330(JP,A)
【文献】特開2003-215060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のウエハ基板から所定数の圧電体薄膜素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に圧電膜を成膜する成膜工程と、 前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記圧電膜成膜面を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記圧電膜の一部を含む素子構造を有した前記圧電体薄膜素子の所定数分のパターンを、前記圧電膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記圧電体薄膜素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記圧電膜成膜面上の欠陥の分布データを取得し、
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記圧電膜が前記圧電体薄膜素子として機能する領域中にある欠陥の数若しくは面積又は当該領域中に欠陥がある素子数が、最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行
し、
前記ウエハ基板の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項2】
前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項1記載の圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項3】
一枚のウエハ基板から所定数の圧電体薄膜素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に圧電膜を成膜する成膜工程と、前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記圧電膜成膜面を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記圧電膜の一部を含む素子構造を有した前記圧電体薄膜素子の所定数分のパターンを、前記圧電膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記圧電体薄膜素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記圧電膜成膜面上の欠陥の分布データを取得し、
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記圧電膜が前記圧電体薄膜素子として機能する領域中にある欠陥の数若しくは面積又は当該領域中に欠陥がある素子数が、最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行
し、
前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項4】
一枚のウエハ基板から所定数の圧電体薄膜素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に圧電膜を形成する成膜工程と、前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記圧電膜成膜面を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記圧電膜の一部を含む素子構造を有した前記圧電体薄膜素子の所定数分のパターンを、前記圧電膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記圧電体薄膜素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記圧電膜成膜面上の欠陥の分布データを取得し、
圧電体薄膜素子の領域ごとに欠陥の影響度を示す欠陥影響係数を予め設定しておき、1枚のウエハ基板上の欠陥の個数をn、n番目の欠陥の面積をSnとし、n番目の欠陥が仮想的にレイアウトされる圧電体薄膜素子の領域の欠陥影響係数をKnとしたとき、評価関数Lを式(1)で定義し、
【数1】
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記評価関数Lが最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行する圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項5】
前記ウエハ基板の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項4記載の圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項6】
前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項4又は5に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。
【請求項7】
一枚のウエハ基板から所定数の電子素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に前記電子素子の作用膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記作用膜を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記作用膜の一部を含む素子構造を有した前記電子素子の所定数分のパターンを、前記作用膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記電子素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記作用膜上の欠陥の分布データを取得し、
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記作用膜が前記電子素子として機能する領域中にある欠陥の数若しくは面積又は当該領域中に欠陥がある素子数が、最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行
し、
前記ウエハ基板の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する電子素子の製造方法。
【請求項8】
前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項7記載の電子素子の製造方法。
【請求項9】
一枚のウエハ基板から所定数の電子素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に前記電子素子の作用膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記作用膜を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記作用膜の一部を含む素子構造を有した前記電子素子の所定数分のパターンを、前記作用膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記電子素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記作用膜上の欠陥の分布データを取得し、
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記作用膜が前記電子素子として機能する領域中にある欠陥の数若しくは面積又は当該領域中に欠陥がある素子数が、最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行
し、
前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する電子素子の製造方法。
【請求項10】
一枚のウエハ基板から所定数の電子素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に前記電子素子の作用膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記作用膜を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記作用膜の一部を含む素子構造を有した前記電子素子の所定数分のパターンを、前記作用膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記電子素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記作用膜上の欠陥の分布データを取得し、電子素子の領域ごとに欠陥の影響度を示す欠陥影響係数を予め設定しておき、1枚のウエハ基板上の欠陥の個数をn、n番目の欠陥の面積をSnとし、n番目の欠陥が仮想的にレイアウトされる電子素子の領域の欠陥影響係数をKnとしたとき、評価関数Lを式(1)で定義し、
【数2】
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記評価関数Lが最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行する電子素子の製造方法。
【請求項11】
前記ウエハ基板の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項10に記載の電子素子の製造方法。
【請求項12】
前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項10又は11に記載の電子素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体薄膜素子の製造方法及び電子素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、一枚のウエハ基板から所定数の電子素子を製造するにあたり、成膜工程、パターニング工程、ダイシング工程を経て、個々の電子素子が得られる。このとき、パターニング工程における所定数の電子素子のウエハ基板に対するレイアウトが固定であると、ダイシング工程でもそのレイアウトに従って切り出すから、ウエハ基板上のどの位置がどの電子素子のどの位置になるか一定である。この場合に、ウエハ基板上の電子素子となる領域に欠陥が生じると、その欠陥を含んだ電子素子を製造することとなることを回避できない。また、ウエハ基板上の電子素子となる領域中の重要な機能領域に欠陥が生じた場合も、同様である。
例えば、圧電体薄膜素子を製造するにあたり、圧電膜は高温で長時間結晶成長させるため、圧電体薄膜素子の製作工程においては初期にウエハ基板に成膜されるのが一般的である。
したがって、圧電膜成膜面上の欠陥が圧電体薄膜素子の圧電機能領域に位置した場合は、圧電機能や耐電圧特性に深刻な影響を及ぼす可能性がある。
そのため外観的に欠陥が機能領域に見える場合は不良として扱うので圧電体薄膜素子の歩留まりが低下する。
【0003】
特許文献1に記載のプローブユニットの製造方法にあっては、パターニング段階でウエハを検査し、欠陥の検査情報を取得する。そして、欠陥個所を避けるようにウエハを切り出すことで歩留まりを向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明によると、 欠陥箇所を避けるために、一枚のウエハ基板上の所定数の電子素子同士のレイアウトが都度異なってしまうため、パターンニング及びダイシングもウエハごと個別に対応しなければならず、生産効率が低下する。
【0006】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、ウエハ基板上に成膜した膜に欠陥があっても、生産効率を低下させることなく、歩留まりを向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、一枚のウエハ基板から所定数の圧電体薄膜素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に圧電膜を成膜する成膜工程と、 前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記圧電膜成膜面を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記圧電膜の一部を含む素子構造を有した前記圧電体薄膜素子の所定数分のパターンを、前記圧電膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記圧電体薄膜素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記圧電膜成膜面上の欠陥の分布データを取得し、
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記圧電膜が前記圧電体薄膜素子として機能する領域中にある欠陥の数若しくは面積又は当該領域中に欠陥がある素子数が、最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行し、
前記ウエハ基板の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する圧電体薄膜素子の製造方法である。
また、請求項2記載の発明は、前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウト に掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項1記載の圧電体薄膜素子の製造方法である。
また、請求項3記載の発明は、一枚のウエハ基板から所定数の圧電体薄膜素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に圧電膜を成膜する成膜工程と、前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記圧電膜成膜面を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記圧電膜の一部を含む素子構造を有した前記圧電体薄膜素子の所定数分のパターンを、前記圧電膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記圧電体薄膜素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記圧電膜成膜面上の欠陥の分布データを取得し、
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記圧電膜が前記圧電体薄膜素子として機能する領域中にある欠陥の数若しくは面積又は当該領域中に欠陥がある素子数が、最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行し、
前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する圧電体薄膜素子の製造方法である。
【0008】
請求項
4記載の発明は、
一枚のウエハ基板から所定数の圧電体薄膜素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に圧電膜を形成する成膜工程と、前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記圧電膜成膜面を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記圧電膜の一部を含む素子構造を有した前記圧電体薄膜素子の所定数分のパターンを、前記圧電膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記圧電体薄膜素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記圧電膜成膜面上の欠陥の分布データを取得し、
圧電体薄膜素子の領域ごとに欠陥の影響度を示す欠陥影響係数を予め設定しておき、1枚のウエハ基板上の欠陥の個数をn、n番目の欠陥の面積をSnとし、n番目の欠陥が仮想的にレイアウトされる圧電体薄膜素子の領域の欠陥影響係数をKnとしたとき、評価関数Lを式(1)で定義し、
【数3】
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記評価関数Lが最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行する圧電体薄膜素子の製造方法である。
【0009】
請求項5記載の発明は、前記ウエハ基板の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項4記載の圧電体薄膜素子の製造方法である。
【0010】
請求項6記載の発明は、前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項4又は5に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。
【0011】
請求項7記載の発明は、一枚のウエハ基板から所定数の電子素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に前記電子素子の作用膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記作用膜を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記作用膜の一部を含む素子構造を有した前記電子素子の所定数分のパターンを、前記作用膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記電子素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記作用膜上の欠陥の分布データを取得し、
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記作用膜が前記電子素子として機能する領域中にある欠陥の数若しくは面積又は当該領域中に欠陥がある素子数が、最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行し、
前記ウエハ基板の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する電子素子の製造方法である。
請求項8記載の発明は、前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項7記載の電子素子の製造方法である。
請求項9記載の発明は、一枚のウエハ基板から所定数の電子素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に前記電子素子の作用膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記作用膜を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記作用膜の一部を含む素子構造を有した前記電子素子の所定数分のパターンを、前記作用膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記電子素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記作用膜上の欠陥の分布データを取得し、
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記作用膜が前記電子素子として機能する領域中にある欠陥の数若しくは面積又は当該領域中に欠陥がある素子数が、最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行し、
前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウトに掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する電子素子の製造方法である。
【0012】
請求項
10記載の発明は、一枚のウエハ基板から所定数の電子素子を製造する方法であって、
ウエハ基板に前記電子素子の作用膜を形成する成膜工程と、
前記成膜工程の後、前記ウエハ基板の前記作用膜を検査する検査工程と、
前記検査工程の後、前記作用膜の一部を含む素子構造を有した前記電子素子の所定数分のパターンを、前記作用膜成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程と、
前記パターニング工程の後、前記パターニング工程における所定数分のパターンのレイアウトに従って前記電子素子を個片に分離するダイシング工程と、を有し、
前記検査工程において、前記作用膜上の欠陥の分布データを取得し、電子素子の領域ごとに欠陥の影響度を示す欠陥影響係数を予め設定しておき、1枚のウエハ基板上の欠陥の個数をn、n番目の欠陥の面積をSnとし、n番目の欠陥が仮想的にレイアウトされる電子素子の領域の欠陥影響係数をKnとしたとき、評価関数Lを式(1)で定義し、
【数4】
前記欠陥の分布データを参照しつつ、前記所定数分のパターンのレイアウトを全体として、前記ウエハ基板に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、前記評価関数Lが最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、
前記算出値に従って前記パターニング工程及びダイシング工程を実行する電子素子の製造方法。
【0013】
請求項11記載の発明は、前記ウエハ基板の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項10に記載の電子素子の製造方法。
【0014】
請求項12記載の発明は、前記ウエハ基板の切り欠き部が前記所定数分のパターンのレイアウト に掛かる特定の角度を忌避して、前記回転の角度を算出する請求項10又は11に記載の電子素子の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ウエハ基板上に成膜した膜に欠陥があっても、所定数分のパターンのレイアウトを全体として回転又は/及びXYシフトして可及的に欠陥を避けてパターニング工程及びダイシング工程を実行するため、生産効率を低下させることなく、歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るウエハ基板の平面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係り、成膜工程を経た後のウエハの部分断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係り、検査工程で検出した欠陥を重ねて示したウエハの平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係り、パターンレイアウトを重ねて示したウエハの平面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係り、1素子分のパターンを示す平面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係り、1素子分のパターンの領域分けを示す平面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係り、評価関数に基づく再配置を行う前のウエハ上の欠陥分布の一例を示す平面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係り、評価関数に基づく回転再配置による最適化を行った後のウエハ上の欠陥分布の一例を示す平面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係り、評価関数に基づくXYシフトによる最適化を行った後のウエハ上の欠陥分布の一例を示す平面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係り、上部電極パターニング後の1素子分の平面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係り、上部電極パターニング後のウエハの部分断面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係り、圧電膜パターニング後の1素子分の平面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係り、圧電膜パターニング後のウエハの部分断面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係り、ウエハ基板パターニング後の1素子分の平面図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係り、ウエハ基板パターニング後のウエハの部分断面図である。
【
図16】本発明の第1実施形態に係り、裏面にノズル板を接合した後の1素子分の平面図である。
【
図17】本発明の第1実施形態に係り、裏面にノズル板を接合した後のウエハの部分断面図である。
【
図18】本発明の第1実施形態に係り、圧電体薄膜素子(インクジェットアクチュエータ)の部分断面図である。
【
図19】本発明の第1実施形態に係り、圧電体薄膜素子(インクジェットアクチュエータ)が実装された様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0018】
〔第1実施形態〕
第1実施形態の圧電体薄膜素子の製造方法につき説明する。インクジェットプリンターに使用するインクジェットアクチュエータを圧電体薄膜素子により構成する場合を例とする。
まず、
図1に示すようなウエハ基板11に対し成膜工程を実行する。ウエハ基板11としてはシリコン基板が一般的に用いられる。ウエハ基板11には、結晶方位をわかるようにするための目印として、オリフラ(オリエンテーション・フラット(orientation flat))、ノッチ等と呼ばれる切り欠き部12が設けられている。
本成膜工程では、
図2に示すようにウエハ基板11上に、下部電極膜(振動板)13、圧電膜14、上部電極膜15の順で成膜し積層する。
圧電体材料の代表的なものは、ペロブスカイト型結晶構造の酸化物であるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)(以下「PZT」という)や、このPZTにマグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)などを添加したものなどがある。特に、ペロブスカイト型結晶構造の正方晶系PZTの場合には、<001>軸方向(C軸方向)に大きな圧電変位が得られ、 菱面体晶系PZTの場合には、<111>軸方向に大きな圧電変位が得られる。
圧電膜(PZT膜)は、600℃以上の高温で厚み3μm程度成膜される。このとき成膜装置内部にもPZT膜が堆積するが、その一部が剥落してウエハに付着し欠陥となりやすい。装置内部は常に清浄に保つことが望ましいが、装置の清掃・部品交換等のメンテナンスコストや設備の稼働率とのバランスがあり、一定レベル以上に欠陥の発生率を抑制することは難しい。したがって圧電膜を成膜した後のウエハには一定レベルの欠陥の発生は許容せざるをえない。
図3は、圧電膜14成膜後のウエハ基板11の圧電膜14成膜面に欠陥dが表出した様子を模式的に示す。
【0019】
ウエハ基板11に圧電膜14を成膜する成膜工程の後、ウエハ基板11の圧電膜14成膜面を検査する検査工程を実行する。本検査工程において、圧電膜14成膜面上の欠陥dの分布データを取得する。圧電膜14まで成膜したウエハ基板11を、ウエハ欠陥検査装置に掛け、切り欠き部12を基準にした欠陥dの位置座標を得る。なお、欠陥dの分布データの形式は問わない。ウエハ基板11の全面に亘って、どの位置が欠陥であるか否かがわかる情報であればよい。ウエハ欠陥検査装置としては、SEM式検査装置、明視野式検査装置、暗視野式検査装置その他、特に種類が限定されるものではない。
【0020】
図4は、ウエハ基板11上に配置する所定数分のパターンのレイアウト(以下「ウエハパターンレイアウト」という)16を示している。本例のウエハパターンレイアウト16は、1素子分のパターン17を28個分有する。
1素子分のパターン17を
図5に示す。
圧電体薄膜素子の1素子分のパターン17は、
図5に示すように圧力室領域17aと、配線領域17bと、給電パッド領域17cと、無機能領域17dとを有する。各領域分けのみを
図6に示す。圧力室領域17aは、各々の圧電素子の上部電極を含む領域であり、圧電素子に駆動電圧が印加されることにより、圧電膜14の圧電効果によりインク吐出動作が駆動される部分であるため最重要である。配線領域17bと、給電パッド領域17cは、圧力室領域17aと同様に、上部電極膜15を所定形状に残した部分であり、その下地には圧電膜14は残る。無機能領域17dについては、上部電極膜15及び圧電膜14は除去される。
以上の圧電体薄膜素子の領域17a,17b,17c,17dごとに設計的な欠陥dの影響度を示す欠陥影響係数を予め設定しておく。
例えば、圧力室領域17aの欠陥影響係数Kaを、Ka=1とし、配線領域17bの欠陥影響係数Kbを、Kb=0.2とし、給電パッド領域17cの欠陥影響係数Kcを、Kc=0.3とし、無機能領域17dの欠陥影響係数Kdを、Kd=0とする。
1枚のウエハ基板11上の欠陥dの個数をn、n番目の欠陥の面積をSnとし、n番目の欠陥dnが仮想的にレイアウトされる圧電体薄膜素子の領域の欠陥影響係数をKnとしたとき、評価関数を式(1)で定義する。欠陥dが異なる領域に跨る場合は、領域ごとに1個の欠陥として計算する。
【0021】
【0022】
検査工程で取得した欠陥の分布データを参照しつつ、ウエハパターンレイアウト16を全体として、ウエハ基板11に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたときの評価関数Lを計算する。そして、評価関数Lが最小となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出する。なお、XYシフトは、ウエハ基板11の表面に平行な2軸座標面上における当該2軸座標上の移動を指す。
評価関数Lが最小となる回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出したら、実際にその算出値に従った回転の角度又は/及びXYシフト量にウエハパターンレイアウト16をウエハ基板11に対して配置して、パターニング工程及びダイシング工程を実行する。
【0023】
図7は、上記評価関数Lに基づく再配置を行う前のウエハ基板11上の欠陥分布の一例を示す。
図7に示すように10個の欠陥d1~d10が検出されている。欠陥影響係数の高い圧力室領域17aに7個の欠陥d1,d3,d4,d5,d6,d8,d10が配置されている。また、これらの欠陥は、それぞれ別の7素子分のパターン17に分かれて存在しているため、7個の圧電体薄膜素子が不良となる可能性がある。
【0024】
図8は、
図7と同じ欠陥の分布があった場合について、上記評価関数Lに基づく回転再配置による最適化を行った後のウエハ基板11上の欠陥分布の一例を示す。
上記評価関数Lが最小となるように回転の角度を選択しているので、
図8に示すように、圧力室領域17a、配線領域17b、給電パッド領域17cに存在する欠陥は減少した。特に欠陥影響係数を大きく設定している圧力室領域17aに存在する欠陥を顕著に減少させることができる。
また、圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中にある欠陥dの数としても、減少した。
圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中にある欠陥dの面積としても、減少した。
当該領域17a,17b,17c中に欠陥がある素子数としても、減少した。
以上により、全28素子が良品となる可能性が高いレイアウトにすることができる。
【0025】
また、回転による再配置ではなく、XYシフトによる例を示す。
図9は、
図7と同じ欠陥の分布があった場合について、上記評価関数Lに基づくXYシフトによる最適化を行った後のウエハ基板11上の欠陥分布の一例を示す。
この場合も同様に、上記評価関数Lが最小となるようにXYシフト量を選択しているので、
図9に示すように、圧力室領域17a、配線領域17b、給電パッド領域17cに存在する欠陥は減少した。特に欠陥影響係数を大きく設定している圧力室領域17aに存在する欠陥を顕著に減少させることができる。
また、圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中にある欠陥dの数としても、減少した。
圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中にある欠陥dの面積としても、減少した。
当該領域17a,17b,17c中に欠陥がある素子数としても、減少した。
以上により、全28素子が良品となる可能性が高いレイアウトにすることができる。
【0026】
さらに、以上の回転又はXYシフトのみならず、回転とXYシフトの双方を操作量として、ウエハ基板11に対するウエハパターンレイアウト16の配置の最適化を行ってもよい。
なお、ウエハ基板11の結晶方位に由来する特定の角度を忌避して、回転の角度を算出することがよい。ウエハ基板は特定の結晶方位が割れやすいからである。割れについては、シリコンウエハの取り扱い時のみでなく、素子の切断時・空洞部18のための裏面からのエッチング時・ノズルとの接合時などの衝撃や応力が割れを誘発する可能性があり、特定の工程において結晶の劈開方向が一致すると割れる可能性がある。
また、ウエハ基板11の切り欠き部12がウエハパターンレイアウト16に掛かる特定の角度を忌避して、回転の角度を算出する。切り欠き部12がウエハパターンレイアウト16に掛かると、切り欠き部12が配置されたパターン17については製品にならず、歩留まりが低下するからである。
無論、XYシフト量についても、切り欠き部12がウエハパターンレイアウト16に掛かる場合を忌避する。(なお、当然にウエハパターンレイアウト16がウエハ基板11内に収まっていることを条件とする。)
以上のように、何らかの要請により選択できない角度、XYシフト量を忌避する。
したがって、評価関数Lが最小となる回転の角度、XYシフト量を選択できないときは、可及的に最小に近い値を選択する。
【0027】
検査工程の後、以上のレイアウトも決定すれば、圧電膜14の一部を含む素子構造を有した圧電体薄膜素子の所定数分(本実施形態では28個分)のパターンを、圧電膜14成膜面上にレイアウトして形成するパターニング工程を実行する。
パターニング工程においては、
図10及び
図11に示すように上部電極膜15をエッチングして所定のパターンに形成する。
次に、
図12及び
図13に示すように、上部電極膜15の下の圧電膜14をエッチングして所定のパターンに形成する。
次に、
図14及び
図15に示すように、ウエハ基板11を裏面からエッチングして所定のパターンの空洞部18を形成する。空洞部18は、圧力室18a、圧力室18aへのインク供給路を有したパターンである。なお、17Aは表面側、17Bを裏面側とする。
次に、
図16及び
図17に示すように、ウエハ基板11の裏面にノズル孔19aを有したノズル板19を接合して、各ノズル孔19aを各圧力室18aに接続する。
【0028】
以上のパターニング工程の後、上記パターニング工程におけるウエハパターンレイアウト16に従ってウエハ基板11を切断して圧電体薄膜素子27を個片に分離するダイシング工程を実行する。
1素子分のパターン17部分が切り出され、1個の圧電体薄膜素子27となる。
圧電体薄膜素子27は、駆動回路(不図示)に接続されて、
図18に示すように上部電極膜15と下部電極膜13との間に駆動電圧が印加されて、圧電膜14が変形させられて振動板を兼ねる下部電極膜13が振動する。
インクジェットヘッドとして使用される際には、
図19に示すようにインクタンク28に接続され、圧力室18aにインク29が供給され、上記の振動板の振動によりインク滴30がノズル孔19aから吐出される。
【0029】
以上のように第1実施形態の圧電体薄膜素子の製造方法によれば、一枚のウエハ基板11から所定数の圧電体薄膜素子27を製造するにあたり、ウエハ基板11上に成膜した圧電膜14に生じた欠陥dを、素子の機能に影響のない領域又は影響の少ない領域に退避させるので、圧電体薄膜素子を歩留まり良好に製造することができる。
ウエハパターンレイアウト16を、全体として回転又は/及びXYシフト移動させるので、ウエハパターンレイアウト16中の1素子分のパターン同士の相対的位置関係は不変である。したがって、パターニング工程と、ダイシング工程は、ウエハパターンレイアウト16の全体として回転又は/及びXYシフトした移動量を同じ量だけ移動した基準により実行すればよく、生産効率を落とすことがない。
以上のようにして、ウエハ基板11上に成膜した膜(14)に欠陥dがあっても、所定数分のパターンのレイアウト16を全体として回転又は/及びXYシフトして可及的に欠陥dを避けてパターニング工程及びダイシング工程を実行するため、生産効率を低下させることなく、歩留まりを向上することができる。
また本実施例ではパターニングの後、ウエハ基板の切断を実行したが、ウエハ基板を所定の大きさに切断し、切断された各ウエハ基板に対してパターニングを行い、圧電体薄膜素子を個片に分離しても本発明の効果は同様である。
【0030】
〔他の実施形態〕
他の実施形態を開示する。
(A)以上の第1実施形態では、式(1)で定義される評価関数Lが最小又は可及的に最小に近い値となる回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出し、当該算出値に従ってパターニング工程及びダイシング工程を実行した。
第1実施形態における評価関数Lを以下のパラメーターに置き換えた方法も実施できる。
【0031】
(A1)圧電膜が圧電体薄膜素子として機能する領域中にある欠陥の数が最小又は可及的に最小に近い値となる回転の角度又は/及びXYシフト量を算出する。
第1実施形態において、1枚のウエハ基板上の欠陥dの個数をnとしたが、そのうち圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中にある欠陥dの数をmとする。
ウエハパターンレイアウト16を、ウエハ基板11に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、欠陥の数mが最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出する。
同様に、当該算出値に従ってパターニング工程及びダイシング工程を実行する。
これにより、圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中にある欠陥dの数mは減少するので、圧電体薄膜素子を歩留まり良好に製造することができる。
【0032】
(A2)圧電膜が圧電体薄膜素子として機能する領域中にある欠陥の面積が最小又は可及的に最小に近い値となる回転の角度又は/及びXYシフト量を算出する。
圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中にある欠陥dの面積をDSとする。
ウエハパターンレイアウト16を、ウエハ基板11に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、面積DSが最小又は可及的に最小に近い値となる回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出する。
同様に、当該算出値に従ってパターニング工程及びダイシング工程を実行する。
これにより、圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中にある欠陥dの面積DSは減少するので、圧電体薄膜素子を歩留まり良好に製造することができる。
【0033】
(A3)圧電膜が前記圧電体薄膜素子として機能する領域中に欠陥がある素子数が最小又は可及的に最小に近い値となる回転の角度又は/及びXYシフト量を算出する。
圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中に欠陥dがある素子数をNとする。
ウエハパターンレイアウト16を、ウエハ基板11に対し仮想的に回転又は/及びXYシフトさせたとき、欠陥のある素子数Nが最小又は可及的に最小に近い値となる当該回転の角度又は/及びXYシフト量の算出値を算出する。
同様に、当該算出値に従ってパターニング工程及びダイシング工程を実行する。
これにより、圧電膜14が圧電体薄膜素子として機能する領域17a,17b,17c中に欠陥dがある素子数Nは減少するので、圧電体薄膜素子を歩留まり良好に製造することができる。
【0034】
(B)以上の第1実施形態では、製造対象を圧電体薄膜素子としたが、その他の電子素子一般にも適用できる。その場合、欠陥を検査する対象膜は、電子素子の作用膜とする。圧電体薄膜素子の圧電変換作用膜は、上記の圧電膜14である。そのほかの電気―力学間の変換作用膜、光学―電気間の変換作用膜、電気-温度間変換作用膜、電気的作用膜等を奏する半導体その他の材料の膜を有したデバイスの製造に、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、圧電体薄膜素子及びその他の電子素子の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
11 ウエハ基板
12 切り欠き部
13 下部電極膜(振動板)
14 圧電膜
15 上部電極膜
16 ウエハパターンレイアウト
17 1素子分のパターン
18a 圧力室
19 ノズル板
19a ノズル孔
27 圧電体薄膜素子
28 インクタンク
29 インク
30 インク滴
d 欠陥