(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電力供給制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20240402BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240402BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20240402BHJP
【FI】
B60L1/00 L
H02J7/00 302B
H02J7/00 P
B60L58/27
(21)【出願番号】P 2022039216
(22)【出願日】2022-03-14
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森川 堅治
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-045613(JP,A)
【文献】特開2013-042621(JP,A)
【文献】特開2020-120560(JP,A)
【文献】特開2019-022345(JP,A)
【文献】特開2018-111339(JP,A)
【文献】特開2011-239590(JP,A)
【文献】特開2004-156622(JP,A)
【文献】特開2021-083214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00
H02J 7/00
B60L 58/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給される電力を用いて動作し、前記電力の供給の優先順位が設定された複数の電動装置を搭載した車両で用いられる電力供給制御装置であって、
前記車両において所定の条件が満たされたか否かを判定する判定部と、
前記所定の条件が満たされた場合、前記優先順位を変更する変更部と、を有する、
電力供給制御装置
であって、
前記電動装置には、車室の内部を加温するエアコンが含まれ、
前記所定の条件は、前記車両が走行不能状態になり、かつ、前記車両の外気温が閾値未満であることであり、
前記変更部は、
前記車両が走行不能状態になったときに前記外気温が閾値未満である場合、前記エアコンの前記優先順位を最上位に変更する、
電力供給制御装置。
【請求項2】
バッテリから供給される電力を用いて動作し、前記電力の供給の優先順位が設定された複数の電動装置を搭載した車両で用いられる電力供給制御装置であって、
前記車両において所定の条件が満たされたか否かを判定する判定部と、
前記所定の条件が満たされた場合、前記優先順位を変更する変更部と、を有する、
電力供給制御装置
であって、
前記電動装置には、荷室の内部を冷却する冷却装置が含まれ、
前記所定の条件は、前記車両が走行不能状態になることであり、
前記変更部は、
前記車両が走行不能状態となった場合、前記冷却装置の前記優先順位を最上位に変更する、
電力供給制御装置。
【請求項3】
バッテリから供給される電力を用いて動作し、前記電力の供給の優先順位が設定された複数の電動装置を搭載した車両で用いられる電力供給制御装置であって、
前記車両において所定の条件が満たされたか否かを判定する判定部と、
前記所定の条件が満たされた場合、前記優先順位を変更する変更部と、を有する、
電力供給制御装置
であって、
前記電動装置には、生コンクリートを攪拌するミキシングドラムが含まれ、
前記所定の条件は、前記車両が走行不能状態になることであり、
前記変更部は、
前記車両が走行不能状態となった場合、前記ミキシングドラムの前記優先順位を最上位に変更する、
電力供給制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両で用いられる電力供給制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される各電動装置には優先順位が設定され、その優先順位に基づいてバッテリからの電力供給が行われることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した優先順位に基づく電力供給について、利便性の向上が望まれている。
【0005】
本開示の一態様の目的は、優先順位に基づく電力供給において利便性の向上を実現することができる電力供給制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電力供給制御装置は、バッテリから供給される電力を用いて動作し、前記電力の供給の優先順位が設定された複数の電動装置を搭載した車両で用いられる電力供給制御装置であって、前記車両において所定の条件が満たされたか否かを判定する判定部と、前記所定の条件が満たされた場合、前記優先順位を変更する変更部と、を有する、電力供給制御装置であって、前記電動装置には、車室の内部を加温するエアコンが含まれ、前記所定の条件は、前記車両が走行不能状態になり、かつ、前記車両の外気温が閾値未満であることであり、前記変更部は、前記車両が走行不能状態になったときに前記外気温が閾値未満である場合、前記エアコンの前記優先順位を最上位に変更する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、優先順位に基づく電力供給において利便性の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一態様に係る車両および電力供給制御装置の構成を模式的に示す図
【
図2】本開示の一態様に係る電力供給制御装置の動作の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
まず、
図1を用いて、本実施の形態の車両1および電力供給制御装置100の構成について説明する。
図1は、車両1および電力供給制御装置100の構成を模式的に示す図である。なお、車両1は、例えば電気自動車であるが、これに限定されない。
【0011】
車両1は、バッテリ10、電動装置群20、および電力供給制御装置100を有する。
【0012】
バッテリ10は、充放電可能な二次電池である。バッテリ10は、電動装置群20に含まれる各電動装置と電気的に接続されている(図示略)。
【0013】
電動装置群20は、バッテリ10から供給される電力を用いて動作する複数の電動装置である。電動装置としては、例えば、走行用モータ、走行制御用コンピュータ、DCDCコンバータ、バッテリヒータ、センサ類、灯火類、ワイパー、エアコン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、電動装置群20には、架装装置が含まれてもよい。架装装置としては、例えば、生コンクリートを攪拌するミキシングドラム、荷室内を冷却する冷却装置等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
各電動装置には、バッテリ10から電力供給を受けることができる順序を示す優先順位が設定されている。例えば、基本設定では、DCDCコンバータに最上位の優先順位が設定されている。
【0015】
電力供給制御装置100は、優先順位に基づく電力供給の利便性の向上を実現するために、後述する各種処理を行うコンピュータである。
【0016】
図示は省略するが、電力供給制御装置100は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、作業用メモリであるRAM(Random Access Memory)、入力ポート、出力ポート等を有する。
【0017】
以下に説明する電力供給制御装置100の各機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAMにて実行することにより実現される。電力供給制御装置100は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)によって実現されてもよい。
【0018】
図1に示すように、電力供給制御装置100は、判定部110および変更部120を有する。
【0019】
判定部110は、車両1において、所定の条件が満たされたか否かを判定する。
【0020】
変更部120は、所定の条件が満たされた場合、電動装置群20の優先順位を変更する。
【0021】
ここで、優先順位の変更例1~4について説明する。
【0022】
<変更例1>
電動装置群20には、バッテリ10を加温するバッテリヒータが含まれているとする。所定の条件は、バッテリ10の温度が閾値未満になることであるとする。
【0023】
判定部120は、例えばバッテリセンサ(図示略)により検知されたバッテリ10の温度が閾値未満となったか否かを判定する。変更部120は、バッテリ10の温度が閾値未満となった場合、バッテリヒータの優先順位を最上位に変更する。
【0024】
これにより、バッテリヒータへの電力供給が最優先で行われるので、バッテリ10の低温状態を原因とする電力制限を一刻も早く脱することができる。
【0025】
<変更例2>
電動装置群20には、車室(図示略)の内部を加温するエアコンが含まれているとする。所定の条件は、車両1が走行不能状態になり、かつ、車両1の外部の気温が閾値未満であることであるとする。
【0026】
判定部120は、車両1が走行不能状態になったときに、例えば外気温センサ(図示略)により検知された外気温が閾値未満であるか否かを判定する。変更部120は、外気温が閾値未満である場合、エアコンの優先順位を最上位に変更する。
【0027】
これにより、エアコンへの電力供給が最優先で行われるので、例えば寒冷地等において車両1が立ち往生してしまった場合でも、車室内の暖房を維持でき、人命を保護することができる。
【0028】
<変更例3>
電動装置群20には、荷室(図示略)の内部を冷却する冷却装置が含まれているとする。所定の条件は、車両1が走行不能状態になることであるとする。
【0029】
判定部120は、車両1が走行不能状態になったか否かを判定する。変更部120は、車両1が走行不能状態になった場合、冷却装置の優先順位を最上位に変更する。
【0030】
これにより、冷却装置への電力供給が最優先で行われるので、車両1が立ち往生してしまった場合でも、荷室内の冷却を維持でき、荷室内の品物(例えば、要冷蔵または要冷凍の生鮮食品等)を保護することができる。
【0031】
<変更例4>
電動装置群20には、生コンクリートを攪拌するミキシングドラムが含まれているとする。所定の条件は、車両1が走行不能状態になることであるとする。
【0032】
判定部120は、車両1が走行不能状態になったか否かを判定する。変更部120は、車両1が走行不能状態になった場合、ミキシングドラムの優先順位を最上位に変更する。
【0033】
これにより、ミキシングドラムへの電力供給が最優先で行われるので、車両1が立ち往生してしまった場合でも、ミキシングドラムの攪拌を維持でき、生コンクリートを保護することができる。
【0034】
次に、
図2を用いて、電力供給制御装置100の動作について説明する。
図2は、電力供給制御装置100の動作の流れを示す図である。
【0035】
図2に示すフローは、車両1の起動後に開始され、車両1の起動中(例えば、走行中や駐車中)において繰り返される。
【0036】
まず、判定部110は、車両1において所定の条件が満たされたか否かを判定する(ステップS1)。
【0037】
次に、所定の条件が満たされていない場合(ステップS1:NO)、フローは、ステップS1へ戻る。この場合、再度ステップS1が行われる。
【0038】
一方、所定の条件が満たされた場合(ステップS1:YES)、変更部120は、電動装置群20の優先順位の変更を行う(ステップS2)。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態の電力供給制御装置100は、バッテリから供給される電力を用いて動作し、電力の供給の優先順位が設定された電動装置群20を搭載した車両1で用いられる電力供給制御装置であって、車両1において所定の条件が満たされたか否かを判定する判定部110と、所定の条件が満たされた場合、優先順位を変更する変更部120と、を有することを特徴とする。
【0040】
この特徴により、車両1の状況に応じて優先すべき電動装置を変更することができる。すなわち、本実施の形態の電力供給制御装置100は、優先順位に基づく電力供給において利便性の向上を実現することができる。
【0041】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0042】
例えば、変更部120は、所定の条件が満たされた場合、ユーザ(例えば、車両1の乗員)に対して、優先順位の変更を実行するか否かの問い合わせ(例えば、車載ディスプレイにおける画面表示等)を行ってもよい。そして、変更部120は、その問い合わせに対して、ユーザによって優先順位の変更の実行を指示する操作が行われた場合に、上記変更例1~4で説明した優先順位の変更を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示の電力供給制御装置は、車両における電力供給の優先順位の動的な変更に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
10 バッテリ
20 電動装置群
100 電力供給制御装置
110 判定部
120 変更部