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特許7464072複合正極活材料、複合正極活材料の調製方法、正極シート及びリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】複合正極活材料、複合正極活材料の調製方法、正極シート及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240402BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240402BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240402BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022050298
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2022165914
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】202110423357.0
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼ 吉先
(72)【発明者】
【氏名】李 于利
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 思▲鳴▼
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-116308(JP,A)
【文献】特開2015-015169(JP,A)
【文献】特表2018-523277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、C01G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活材料を含むコア層と、
前記コア層を被覆し、Nb、MgF 2 、NbBO 4 、ZrP 2 7 、Mn 2 PO 4 F、Al 2 3 、MgO、ZrO 2 及びMg 3 (BO 3 2 のうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むフッ化水素バリア層と、
前記フッ化水素バリア層を被覆し、W、Zr、A1 2 3 、Sc、ZrO 2 、Nb、Zn、AlPO 4 、Ta及びAlのうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む物理的バリア層と、
前記コア層と前記フッ化水素バリア層との間に配置され、Ti、Al、MgO、Zr、Mg 3 (BO 3 2 、W、AlF 3 及びAl 2 3 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む犠牲層と
を含み、
前記フッ化水素バリア層の組成と前記物理的バリア層の組成と前記犠牲層の組成とは互いに異なり、
前記フッ化水素バリア層の厚さは250nm~500nmの範囲であり、
前記物理的バリア層の厚さは1nm~125nmの範囲であり、
前記犠牲層の厚さは125nm~250nmの範囲であり、
100重量部の前記コア層に基づき、前記フッ化水素バリア層は5~10重量部の範囲であり、
100重量部の前記コア層に基づき、前記物理的バリア層は0.02~2.5重量部の範囲であり、
100重量部の前記コア層に基づき、前記犠牲層は2.5~5重量部の範囲である
複合正極活材料。
【請求項2】
前記物理的バリア層の厚さは25nm~125nmの範囲である、
請求項に記載の複合正極活材料。
【請求項3】
前記正極活材料は、一般式LiCo1-αMαO2で表される複合コバルト酸リチウム、一般式LiNi1-x-y Cox Mny 2 で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウム及び一般式LiNi1-x-y Cox Aly 2 で表されるニッケルコバルトアルミン酸リチウムのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含み、
0<α≦0.2、0≦x≦1、0≦y≦1且つ0≦x+y≦1であり、
Mは、上記の一般式の化合物の原子価状態の合計がゼロになるように、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択される、
請求項1に記載の複合正極活材料。
【請求項4】
犠牲層の前駆体材料と活材料粒子を混合し、第1混合物が得られ、前記第1混合物を250℃~350℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い分け、第1被覆生成物を得るステップS1-2と、
フッ化水素バリア層の前駆体材料と前記第1被覆生成物を混合し、第2混合物が得られ、前記第2混合物を250℃~350℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い分け、それによって第2被覆生成物を得るステップS2-2と、
物理的バリア層の前駆体材料と前記第2被覆生成物を混合し、第3混合物が得られ、前記第3混合物を500℃~600℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い分け、それによって複合正極活材料を得るステップS3-2と
を含み、
前記犠牲層の前駆体材料は、Ti、Al、MgO、Zr、Mg 3 (BO 3 2 、W、AlF 3 及びAl 2 3 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含み、
前記フッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、MgF 2 、NbBO 4 、ZrP 2 7 、Mn 2 PO 4 F、Al 2 3 、MgO、ZrO 2 及びMg 3 (BO 3 2 のうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含み、
前記物理的バリア層の前駆体材料は、W、Zr、A1 2 3 、Sc、ZrO 2 、Nb、Zn、AlPO 4 、Ta及びAlのうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含み、
前記フッ化水素バリア層の前駆体材料と前記物理的バリア層の前駆体材料と前記犠牲層の前駆体材料とは互いに異なる
複合正極活材料の調製方法。
【請求項5】
前記犠牲層の前駆体材料は、第1犠牲層の前駆体物質、第2犠牲層の前駆体物質及び任意の第3犠牲層の前駆体物質を含み、前記第1犠牲層の前駆体物質、前記第2犠牲層の前駆体物質及び任意の前記第3犠牲層の前駆体物質は互いに異なり、
前記第1犠牲層の前駆体物質の量及び前記第2犠牲層の前駆体物質の量はそれぞれ20重量部~70重量部の範囲であり、任意の前記第3犠牲層の前駆体物質の量は0重量部~50重量部の範囲であり、
それによって前記第1犠牲層の前駆体物質、前記第2犠牲層の前駆体物質及び任意の前記第3犠牲層の前駆体物質は100重量部の前記犠牲層の前駆体材料を構成する、
請求項に記載の複合正極活材料の調製方法。
【請求項6】
前記フッ化水素バリア層の前駆体材料は、第1フッ化水素バリア層の前駆体物質及び第2フッ化水素バリア層の前駆体物質を含み、前記第1フッ化水素バリア層の前駆体物質と前記第2フッ化水素バリア層の前駆体物質は互いに異なり、
前記第1フッ化水素バリア層の前駆体物質の量及び前記第2フッ化水素バリア層の前駆体物質の量は、30重量部~70重量部の範囲であり、
それによって前記第1フッ化水素バリア層の前駆体物質及び前記第2フッ化水素バリア層の前駆体物質は、100重量部の前記フッ化水素バリア層の前駆体材料を構成する、
請求項4に記載の複合正極活材料の調製方法。
【請求項7】
前記物理的バリア層の前駆体材料は、第1物理的バリア層の前駆体物質、第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の第3物理的バリア層の前駆体物質を含み、前記第1物理的バリア層の前駆体物質、前記第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の前記第3物理的バリア層の前駆体物質は互いに異なり、
前記第1物理的バリア層の前駆体物質の量及び前記第2物理的バリア層の前駆体物質の量はそれぞれ20重量部~70重量部の範囲であり、且つ任意の前記第3物理的バリア層の前駆体物質の量は0重量部~50重量部の範囲であり、
それによって前記第1物理的バリア層の前駆体物質、前記第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の前記第3物理的バリア層の前駆体物質は100重量部の前記物理的バリア層の前駆体材料を構成する、
請求項に記載の複合正極活材料の調製方法。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の複合正極活材料を含む、
リチウムイオン二次電池用の正極シート。
【請求項9】
正極シートと、
負極シートと、
セパレータと
を含み、
前記正極シートは、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の複合正極活材料を含
む、
リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の分野に関し、具体的には、複合正極活材料、その複合正極活材料の調製方法、その複合正極活材料を含む正極シート及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子技術の継続的な発展に伴い、人々の、電子機器のエネルギー供給をサポートする電池装置へのニーズも高まっている。今、より多くの電力を蓄積し、高電力を出力できる電池が必要とされる。従来の鉛蓄電池とニッケル水素電池は、新型電子製品のニーズを満たすことができない。従って、リチウム電池は人々の関心を引き起こす。リチウム電池の開発過程において、その容量と性能を効果的に向上させた。
【0003】
従来技術において、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム(NCA)及びニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)は、一般的に電池用の正極活材料として使用される。リチウムイオン二次電池の使用過程において、電解液には必然的に微量の水分子が含まれる。微量の水分子が電解液中のフッ素含有物質と接触すると、電解液が加水分解され、フッ化水素酸(HF)が生成される。多数の電気サイクルの後、蓄積されたフッ化水素酸は次のように正極活材料と反応する。
【0004】
2HF+LiCoO2 →CoO+LiF+H2 O、
10HF+10LiNi0.5 Co0.3 Mn0.2 1.8 →10LiF+5H2 O+5NiO+2MnO2 +Co3 4 、及び
10HF+10LiNi0.5 Co0.3 Al0.2 1.7 →10LiF+5H2 O+5NiO+Al2 3 +Co3 4
【0005】
その結果、正極活物質中の酸素が析出し、その結晶構造が破壊される。正極活材料が大量に腐食される場合に、その反応生成物が正極表面に集まり、従ってリチウムイオンの輸送に悪影響を及ぼす。更に、正極活物質の結晶構造の破壊及び副生成物の集積も、正極活物質の容量を減少させ、正極材料の抵抗を増やす。最終的に、リチウムイオン二次電池の抵抗が増加し、サイクル保持率と膨れなどの性能が低下し、リチウムイオン電池の性能に深刻な影響を及ぼす。
【0006】
フッ化水素による正極活物質の腐食を回避するために、従来技術において、正極活材料を被覆する方法は、通常、正極活物質とフッ化水素との接触を回避するために使用される。一般的に使用される被覆材は、アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸塩である。しかし、正極活物質は、電解液中のリチウムイオンの吸蔵と放出を可能にする必要があるため、正極活物質を被覆する被覆層は緻密な材料ではなく、それによってフッ化水素の一部が被覆層の内部に入り、正極活物質と反応し、リチウムイオン二次電池の電気的性能に悪影響を及ぼす。更に、従来技術において、正極活物質を被覆するバリア層は、アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸塩のみであるため、フッ化水素と正極活物質との接触はある程度遮断されるが、被覆材の抵抗が高いため、このように生成された正極複合物の抵抗の不利な増加をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、複合正極活材料、複合正極活材料の調製方法、正極シート及びリチウムイオン二次電池を提供し、それによって従来技術における、リチウムイオン二次電池を被覆する正極活材料がフッ化水素と正極活材料との接触を効果的に遮断できないという問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様によれば、正極活材料を含むコア層と、そのコア層を被覆し、Nb、Ba、Zr、Mn、Mg、Al及びCaのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO、F、B及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を備えたフッ化水素バリア層と、そのフッ化水素バリア層を被覆する物理的バリア層とを含む、複合正極活材料を提供する。
【0009】
更に、複合正極活材料において、フッ化水素バリア層は、Nb、Zr、Mg、Al及びMnのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO、F、B及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。
【0010】
更に、上記の複合正極活材料において、100重量部のコア層に基づき、フッ化水素バリア層は0.02重量部~10重量部の範囲であり、好ましくは、100重量部のコア層に基づき、フッ化水素バリア層は5重量部~10重量部の範囲である。
【0011】
更に、上記の複合正極活材料において、フッ化水素バリア層の厚さは1nm~500nmの範囲であり、好ましくは、フッ化水素バリア層の厚さは50nm~500nmの範囲であり、より好ましくは、フッ化水素バリア層の厚さは250nm~500nmの範囲である。
【0012】
更に、上記の複合正極活材料において、物理的バリア層は、Ta、W、Hf、Zr、Nb、Sc、Zn及びAlのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含み、好ましくは、物理的バリア層は、Ta、W、Zr、Nb、Sc、Zn及びAlのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。
【0013】
更に、上記の複合正極活材料において、100重量部のコア層に基づき、物理的バリア層は0.02重量部~5重量部の範囲であり、好ましくは、100重量部のコア層に基づき、物理的バリア層は0.02重量部~2.5重量部の範囲である。
【0014】
更に、上記の複合正極活材料において、物理的バリア層の厚さは1nm~250nmの範囲であり、好ましくは、物理的バリア層の厚さは1nm~125nmの範囲であり、より好ましくは、物理的バリア層の厚さは25nm~125nmの範囲である。
【0015】
更に、上記の複合正極活材料において、正極活材料は、一般式LiCo1-αMα2 で表される複合コバルト酸リチウム、一般式LiNi1-x-y Cox Mny 2 で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウム及び一般式LiNi1-x-y Cox Aly 2 で表されるニッケルコバルトアルミン酸リチウムのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含み、0<α≦0.2、0≦x≦1、0≦y≦1且つ0≦x+y≦1で、Mは、上記の一般式の化合物の原子価状態の合計がゼロになるように、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0016】
更に、上記の複合正極活材料において、更に犠牲層を含み、その犠牲層はコア層とフッ化水素バリア層との間に配置される。
【0017】
更に、上記の複合正極活材料において、犠牲層は、Ti、Al、Mg、Zr、Sr、Zn、W及びScのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO、F及びBのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含み、好ましくは、犠牲層は、元素Ti、Al、Zr、W及びMgのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO、F及びBのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。
【0018】
更に、上記の複合正極活材料において、100重量部のコア層に基づき、犠牲層は0.02重量部~5重量部の範囲であり、好ましくは、100重量部のコア層に基づき、犠牲層は2.5重量部~5重量部の範囲である。
【0019】
更に、上記の複合正極活材料において、犠牲層の厚さは1nm~250nmの範囲であり、好ましくは、犠牲層の厚さは25nm~250nmの範囲であり、より好ましくは、犠牲層の厚さは125nm~250nmの範囲である。
【0020】
本発明の他の1つの態様によれば、フッ化水素バリア層の前駆体材料と活材料粒子を混合し、第1混合物が得られ、その第1混合物を250℃~350℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い
分け、フッ化水素バリア層の被覆生成物が得られ、そのフッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、Ba、Zr、Mn、Ca、Mg、Alの単体とそれらの酸化物、フッ化物、ホウ酸塩、硫酸塩、リン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むステップS1-1と、物理的バリア層の前駆体材料とフッ化水素バリア層の被覆生成物を混合し、第2混合物が得られ、その第2混合物を500℃~600℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い分け、
それによって複合正極活材料が得られるステップS2-1とを含む、複合正極活材料の調製方法を提供する。
【0021】
本発明の他の1つの態様によれば、犠牲層の前駆体材料と活材料粒子を混合し、第1混合物が得られ、その第1混合物を250℃~350℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼
し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い分け、それに
よって第1被覆生成物が得られ、その犠牲層の前駆体材料は、Ti、Al、Mg、Zr、Sr、Zn、Sc、Wとそれらの酸化物、フッ化物及びホウ酸塩のいずれか1つ又は任意の組み合わせを含むステップS1-2と、フッ化水素バリア層の前駆体材料と第1被覆生成物を混合し、第2混合物が得られ、その第2混合物を250℃~350℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用
して篩い分け、それによって第2被覆生成物が得られ、そのフッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、Ba、Zr、Mn、Ca、Mg、Alの単体とそれらの酸化物、フッ化物、ホウ酸塩、硫酸塩及びリン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むステップS2-2と、物理的バリア層の前駆体材料と第2被覆生成物を混合し、第3混合物が得られ、その第3混合物を500℃~600℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、
か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い分け、それによっ
て複合正極活材料が得られるS3-2とを含む、複合正極活材料の調製方法を提供する。
【0022】
更に、上記の複合正極活材料の調製方法において、犠牲層の前駆体材料は、第1犠牲層の前駆体物質、第2犠牲層の前駆体物質及び任意の第3犠牲層の前駆体物質を含み、その第1犠牲層の前駆体物質、第2犠牲層の前駆体物質及び任意の第3犠牲層の前駆体物質は互いに異なり、その第1犠牲層の前駆体物質の量及び第2犠牲層の前駆体物質の量はそれぞれ20重量部~70重量部の範囲であり、その任意の第3犠牲層の前駆体物質の量は0重量部~50重量部の範囲であり、それによって第1犠牲層の前駆体物質、第2犠牲層の前駆体物質及び任意の第3犠牲層の前駆体物質は100重量部の犠牲層の前駆体材料を構成する。
【0023】
更に、上記の複合正極活材料の調製方法において、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、第1フッ化水素バリア層の前駆体物質及び第2フッ化水素バリア層の前駆体物質を含み、その第1フッ化水素バリア層の前駆体物質と第2フッ化水素バリア層の前駆体物質は互いに異なり、その第1フッ化水素バリア層の前駆体物質の量及び第2フッ化水素バリア層の前駆体物質の量は、30重量部~70重量部の範囲であり、それによって第1フッ化水素バリア層の前駆体物質及び第2フッ化水素バリア層の前駆体物質は、100重量部のフッ化水素バリア層の前駆体材料を構成する。
【0024】
更に、上記の複合正極活材料の調製方法において、物理的バリア層の前駆体材料は、Ta、W、Hf、Zr、Nb、Sc、Zn、Alの単体とそれらの酸化物及びリン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含み、好ましくは、物理的バリア層の前駆体材料は、第1物理的バリア層の前駆体物質、第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の第3物理的バリア層の前駆体物質を含み、その第1物理的バリア層の前駆体物質、第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の第3物理的バリア層の前駆体物質は互いに異なり、その第1物理的バリア層の前駆体物質の量及び第2物理的バリア層の前駆体物質の量はそれぞれ20重量部~70重量部の範囲であり、且つ任意の第3物理的バリア層の前駆体物質の量は0重量部~50重量部の範囲であり、それによって第1物理的バリア層の前駆体物質、第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の第3物理的バリア層の前駆体物質は100重量部の物理的バリア層の前駆体材料を構成する。
【0025】
本発明のもう1つの態様によれば、上記の態様のいずれか1項に記載の複合正極活材料を含むリチウムイオン二次電池用の正極シートを提供する。
【0026】
本発明のもう1つの態様によれば、正極シート、負極シート及びセパレータを含み、その正極シートは上記の態様のいずれか1項に記載の複合正極活材料を含むリチウムイオン二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の複合正極活材料、複合正極活材料の調製方法、正極シート及びリチウムイオン二次電池によれば、フッ化水素と正極活物質との接触及び反応を効果的に防止し、正極活物質の金属の溶出を抑制し、正極活物質のバルク相における結晶構造の安定性を確保し、従って、それを含むリチウムイオン二次電池は多くのサイクルの後でも良好な放電出力能力を維持でき、且つサイクル保持率の向上と抵抗増大率の低下を達成する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
説明すべきものは、本出願における実施例及び実施例の特徴は、衝突がない場合に互いに組み合わせることができることである。以下では、実施例を結合して本発明を詳細に説明する。以下の実施例は単なる例示であり、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0029】
背景技術で説明するように、従来技術では、リチウムイオン二次電池の正極活材料は、一般的に、アルミニウム、酸化アルミニウム又はアルミン酸塩で被覆される。しかし、上記の材料は、フッ化水素と正極活材料との接触を効果的に遮断することができないため、更なる改善が依然として必要である。従来技術の問題に対し、本出願の典型的な実施形態によれば、複合正極活材料が提供され、それは、コア層、フッ化水素バリア層及び物理的バリア層を含み、ここで、コア層は正極活材料を含み、フッ化水素バリア層はコア層を被覆し、物理的バリア層はフッ化水素バリア層を被覆する。フッ化水素バリア層は、Nb、Ba、Zr、Mn、Mg、Al及びCaのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO、F、B及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。
【0030】
従来技術における、アルミニウム、酸化アルミニウム又はアルミン酸塩で被覆されたリチウムイオン二次電池の正極活材料とは異なり、本出願の複合正極活材料では、コア層は最初にフッ化水素バリア層で被覆され、次にフッ化水素バリア層は物理的バリア層で被覆される。本出願では、物理的バリア層とフッ化水素バリア層の二重被覆構造を使用するため、電解液中に存在するフッ化水素は、2つのバリア層から完全に遮断される。いくつかの実施形態では、フッ化水素は、2つのバリア層の内部の正極活材料に影響を及ぼさないように、物理的バリア層から完全に遮断される。他のいくつかの実施形態では、フッ化水素は、物理的バリア層とフッ化水素バリア層との間に部分的に浸透することができるが、フッ化水素バリア層に入って正極活物質を腐食することはない。従って、本出願の複合正極活材料を使用する場合に、フッ化水素と正極活物質との接触及び反応を効果的に防止し、正極活物質の金属の溶出を抑制し、正極活物質のバルク相における結晶構造の安定性を確保し、従って、それを含むリチウムイオン二次電池は多くのサイクルの後でも良好な放電出力能力を維持でき、且つ高温時の電池のガス発生現象を抑制する。
【0031】
本出願では、フッ化水素バリア層は、Nb、Ba、Zr、Mn、Mg、Al及びCaのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO、F、B及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。好ましくは、フッ化水素バリア層は、以下の式で示される物質を含む。
【0032】
x y z
ここで、xは1~5の整数、yは0~6の整数、zは0~24の整数であり、条件は、yとzの少なくとも1つが非ゼロであり、上記の一般式の化合物の原子価状態の合計がゼロであるということである。
【0033】
Mは、Nb、Ba、Zr、Mn、Mg、Al及びCaで構成された群のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択され、Aは、F、B及びPで構成された群のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0034】
本出願のいくつかの実施形態では、フッ化水素バリア層は、NbBO4 、BaSO4 、ZrP2 7 、Mn2 PO4 F、CaSn4 (PO4 6 、MgF2 、Nb2 3 、ZrO2 、MnO2 、Nb3 (PO4 5 、Nb(BO3 3 、Zr(BO3 4 又はMn(BO3 4 のうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0035】
コア層と物理的バリア層との間にフッ化水素バリア層が追加され、且つフッ化水素バリア層は、導電率を効果的に向上させることができるNb、Ba、Zr、Mn、Mg、Al又はCa元素を含むため、本出願の複合正極活材料は、フッ化水素と正極活物質との接触を効果的に防止する物理的バリアを提供しながら、導電性能を効果的に向上させることができ、従って、従来技術における複合正極活材料の抵抗増加の問題を克服する。本発明の複合正極活材料は、電池の良好な放電出力能力を維持するだけでなく、電池の抵抗増大を効果的に抑制することができる。
【0036】
本出願のいくつかの実施形態では、フッ化水素バリア層は、Nb、Zr、Mg、Al及びMnのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO、F、B及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。上記の元素を含んだフッ化水素バリア層を使用する場合に、本出願のフッ化水素バリア層は、電池の抵抗増大をより効果的に抑制することができる。
【0037】
好ましくは、フッ化水素バリア層は、NbBO4 、BaSO4 、ZrP2 7 、Mn2 PO4 F、CaSn4 (PO4 6 、Zr(BO3 4 及びMgF2 のうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。更に好ましい実施形態では、フッ化水素バリア層は、NbBO4 、MgF2 及びMn2 PO4 Fのうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0038】
本出願の更なる実施形態では、100重量部のコア層に基づき、フッ化水素バリア層は、0.02重量部~10重量部の範囲であり、好ましくは、100重量部のコア層に基づき、フッ化水素バリア層は、5重量部~10重量部の範囲である。フッ化水素バリア層が0.02重量部未満の場合に、形成された層の厚さが薄すぎるため、フッ化水素の浸透を効果的に遮断することができない。フッ化水素バリア層が10重量部を超えると、形成された層の厚さが厚すぎるため、電解質中の遊離リチウムイオンの吸蔵及び放出効率が低下し、それによってリチウムイオン二次電池の容量が不利に低下する。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、様々な実施例について、フッ化水素バリア層の量の下限は、100重量部のコア層に基づき、0.02重量部、0.03重量部、0.04重量部、0.05重量部、0.06重量部、0.07重量部、0.08重量部、0.09重量部、0.1重量部、0.15重量部、0.2重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.35重量部、0.4重量部、0.45重量部、0.5重量部、0.55重量部、0.6重量部、0.65重量部、0.7重量部、0.75重量部、0.8重量部、0.85重量部、0.9重量部、0.95重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部又は5重量部であればよく、且つフッ化水素バリア層の量の上限は、100重量部のコア層に基づき、10重量部、9.5重量部、9重量部、8.5重量部、8重量部、7.5重量部、7重量部、6.5重量部、6重量部又は5.5重量部であればよい。
【0040】
具体的には、100重量部のコア層に基づき、フッ化水素バリア層の量は、0.02重量部~10重量部、0.05重量部~10重量部、0.1重量部~10重量部、0.2重量部~10重量部、0.5重量部~10重量部、1重量部~10重量部、2重量部~10重量部、3重量部~10重量部、4重量部~10重量部、5重量部~10重量部、0.5重量部~9.5重量部、0.5重量部~9重量部、0.5重量部~8.5重量部、0.5重量部~8重量部、1重量部~9重量部、1重量部~8重量部、1重量部~7重量部、1重量部~6重量部、2重量部~9.5重量部、2重量部~9重量部、2重量部~8重量部、2重量部~7重量部、2重量部~6重量部、2重量部~5.5重量部、3重量部~9.5重量部、3重量部~9重量部、3重量部~8重量部、3重量部~7重量部、3重量部~6重量部、3重量部~5.5重量部、4重量部~9.5重量部、4重量部~9重量部、4重量部~8重量部、4重量部~7重量部、4重量部~6重量部又は4重量部~5.5重量部の範囲であればよい。
【0041】
本発明の更なる実施形態では、フッ化水素バリア層の厚さは1nm~500nmの範囲であり、好ましくはフッ化水素バリア層の厚さは50nm~500nmの範囲であり、より好ましくは、フッ化水素バリア層の厚さは250nm~500nmの範囲である。様々な実施例について、フッ化水素バリア層の厚さの下限は、1nm、1.5nm、2nm、2.5nm、3nm、3.5nm、4nm、4.5nm、5nm、7.5nm、10nm、12.5nm、15nm、17.5nm、20nm、22.5nm、25nm、27.5nm、30nm、32.5nm、37.5nm、40nm、42.5nm、45nm、47.5nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、又は250nmであればよく、且つその上限は、500nm、475nm、450nm、425nm、400nm、375nm、350nm、325nm、300nm、又は275nmであればよい。
【0042】
具体的には、フッ化水素バリア層の厚さは、1nm~500nm、2.5nm~500nm、5nm~500nm、10nm~500nm、25nm~500nm、50nm~500nm、100nm~500nm、150nm~500nm、200nm~500nm、250nm~500nm、25nm~475nm、25nm~450nm、25nm~425nm、25nm~400nm、50nm~450nm、50nm~400nm、50nm~350nm、50nm~300nm、100nm~475nm、100nm~450nm、100nm~400nm、100nm~350nm、100nm~300nm、100nm~275nm、150nm~475nm、150nm~450nm、150nm~400nm、150nm~350nm、150nm~300nm、150nm~275nm、200nm~475nm、200nm~450nm、200nm~400nm、200nm~350nm、200nm~300nm、又は200nm~275nmの範囲でればよい。
【0043】
本出願のいくつかの実施形態では、物理的バリア層は、Ta、W、Hf、Zr、Nb、Sc、Zn及びAlのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。本発明の物理的バリア層は上記の元素を含むので、形成された物理的バリア層はより緻密な構造を有する。この構造により、電解液中のリチウムイオンは、物理的バリア層を効果的に通過することによって正極活物質において吸蔵及び放出を行うことができ、しかし、電解液中のフッ化水素は、緻密な物理的バリア層を通過することができず、それによってフッ化水素が正極活物質への腐食を効果的に防止する。
【0044】
本出願のいくつかの好ましい実施形態では、物理的バリア層は、以下の式で示された物質を含む。
【0045】
M’x y z
ここで、xは1~3の整数、yは0~5の整数、zは0~20の整数であり、条件は、yとzの両方が同時にゼロではなく、上記の一般式の化合物の原子価状態の合計がゼロであるということである。
【0046】
M’は、Ta、W、Hf、Zr、Nb、Sc、Zn及びAlで構成された群のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0047】
本出願のいくつかの実施形態では、フッ化水素バリア層は、Ta3 (PO4 5 、Nb3 (PO4 5 、W(PO4 2 、Zr3 (PO4 4 、ZrO2 、Al2 3 、ZnO、AlPO4 、NbO2 、WO3 及びTa2 5 のうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、物理的バリア層は、Ta、W、Zr、Nb、Sc、Zn及びAlのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO及びPのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。
【0049】
好ましい実施形態では、M’は、Ta、Nb、W、Zr及びAlで構成された群のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0050】
本出願のいくつかの実施形態では、物理的バリア層は、W(PO4 2 、Zr3 (PO4 4 、ZrO2 、Al2 3 、ZnO、AlPO4 、NbO2 、WO3 及びTa2 5 のうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。より好ましい実施形態では、物理的バリア層は、W(PO4 2 、Zr3 (PO4 4 、Al2 3 及びZrO2 、AlPO4 のうち1つ及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0051】
本出願の更なる実施形態では、100重量部のコア層に基づき、物理的バリア層は、0.02重量部~5重量部の範囲であり、好ましくは、100重量部のコア層に基づき、物理的バリア層は、0.02重量部~2.5重量部の範囲である。物理的バリア層が0.02重量部未満の場合に、形成された物理的バリア層は緻密な構造を形成できないため、電解液中のフッ化水素が物理的バリア層を透過でき、従ってフッ化水素を正極活物質から効果的に隔絶することができない。物理的バリア層が5重量部を超える場合に、形成された物理的バリア層の厚さが厚すぎるため、抵抗が不利に増え、形成された物理的バリア層が過度に緻密な構造を有するため、リチウムイオンが効果的な吸蔵及び放出を行うことができず、リチウムイオン二次電池の容量が不利に低下する。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態では、様々な実施例について、物理的バリア層の量の下限は、100重量部のコア層に基づき、0.02重量部、0.03重量部、0.04重量部、0.05重量部、0.06重量部、0.07重量部、0.08重量部、0.09重量部、0.1重量部、0.15重量部、0.2重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.35重量部、0.4重量部、0.45重量部、0.5重量部、0.55重量部、0.6重量部、0.65重量部、0.7重量部、0.75重量部、0.8重量部、0.85重量部、0.9重量部、0.95重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、又は2.5重量部であればよく、且つ物理的バリア層の量の上限は、100重量部のコア層に基づき、2.6重量部、2.7重量部、2.8重量部、2.9重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、又は5重量部であればよい。
【0053】
具体的には、100重量部のコア層に基づき、物理的バリア層は、0.02重量部~5重量部、0.02重量部~4.5重量部、0.02重量部~4重量部、0.02重量部~3.5重量部、0.02重量部~3重量部、0.02重量部~2.6重量部、0.1重量部~5重量部、0.1重量部~4.5重量部、0.1重量部~4重量部、0.1重量部~3.5重量部、0.1重量部~3重量部、0.1重量部~2.6重量部、0.5重量部~5重量部、0.5重量部~4.5重量部、0.5重量部~4重量部、0.5重量部~3.5重量部、0.5重量部~3重量部、0.5重量部~2.6重量部、1重量部~5重量部、1重量部~4.5重量部、1重量部~4重量部、1重量部~3.5重量部、1重量部~3重量部、1重量部~2.6重量部、2重量部~5重量部、2重量部~4.5重量部、2重量部~4重量部、2重量部~3.5重量部、2重量部~3重量部、2重量部~2.6重量部、2.5重量部~5重量部、2.5重量部~4.5重量部、2.5重量部~4重量部、2.5重量部~3.5重量部、2.5重量部~3重量部、又は2.5重量部~2.6重量部の範囲であればよい。
【0054】
本発明の更なる実施形態では、物理的バリア層の厚さは1nm~250nmの範囲であり、好ましくは、物理的バリア層の厚さは1nm~125nmの範囲であり、より好ましくは、物理的バリア層の厚さは25nm~125nmの範囲である。物理的バリア層は、様々な実施例について、その下限が1nm、1.5nm、2.5nm、3nm、3.5nm、4nm、4.5nm、5nm、7.5nm、10nm、12.5nm、15nm、17.5nm、20nm、22.5nm、25nm、27.5nm、30nm、32.5nm、35nm、37.5nm、40nm、42.5nm、45nm、47.5nm、50nm、100nm、又は125nmであればよく、且つその上限が250nm、225nm、200nm、175nm、150nm、145nm、140nm、135nm、又は130nmであればよい。
【0055】
具体的には、物理的バリア層の厚さは、1nm~250nm、1nm~225nm、1nm~200nm、1nm~175nm、1nm~150nm、1nm~130nm、5nm~250nm、5nm~225nm、5nm~200nm、5nm~175nm、5nm~150nm、5nm~130nm、25nm~250nm、25nm~225nm、25nm~200nm、25nm~175nm、25nm~150nm、25nm~130nm、50nm~250nm、50nm~225nm、50nm~200nm、50nm~175nm、50nm~150nm、50nm~130nm、100nm~250nm、100nm~225nm、100nm~200nm、100nm~175nm、100nm~150nm、100nm~130nm、125nm~250nm、125nm~225nm、125nm~200nm、125nm~175nm、125nm~150nm、又は125nm~130nmの範囲であればよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、コア層に含まれる正極活材料は、一般式LiCo1-αMα2 で表される複合コバルト酸リチウム、一般式LiNi1-x-y Cox Mny 2 で表されるニッケルコバルトマンガン酸リチウム、及び一般式LiNi1-x-y Cox Aly 2 で表されるニッケルコバルトアルミン酸リチウムのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含み、0<α≦0.2、0≦x≦1、0≦y≦1及び0≦x+y≦1、Mは、上記の一般式の化合物の原子価状態の合計がゼロになるように、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの好ましい実施形態では、一般式LiCo1-αMα2 のMは、Mg、Sc、Ti、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Hf、Ta、W、Re、Cr、Y、Sb、Lu、Au、Pb、Er、Na、Al、Si、Ge、Mn、Ca、Te、Hg、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Vのうち1つ以上である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、複合正極活材料は更に犠牲層を含み、犠牲層はコア層とフッ化水素バリア層とのに配置される。犠牲層とフッ化水素は以下のように反応する。
【0058】
HF+MO→MF+H2 O、及び
HF+M→MF+H2
【0059】
従って、フッ化水素が物理的バリア層及びフッ化水素バリア層を透過する場合に、正極活材料に更なる保護を提供する。本発明において、犠牲層は、フッ化水素と反応するギブズ自由エネルギーGs-HF<0の任意の材料を含まればよく、それによってフッ化水素と接触するときに反応でき、更に物理的バリア層とフッ化水素バリア層を透過したフッ化水素を消耗する。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態では、犠牲層はTi、Al、Mg、Zr、Sr、Zn、W及びScのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、及びO、F及びBのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含み、好ましくは、犠牲層は以下の式で示された物質を含む。
【0061】
M”x A’yz
ここで、xは1~3の整数、yは0~4の整数、zは0~12の整数であり、条件は、yとzの両方が同時にゼロではなく、上記の一般式の化合物の原子価状態の合計がゼロであるということである。
【0062】
M”は、Ti、Al、Mg、Zr、Sr、Zn、W及びScで構成された群のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択され、A’は、F及びBで構成された群のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0063】
本出願のいくつかの実施形態では、犠牲層は、Ti(BO3 4 、Al(BO3 3 、Zr(BO3 4 、SrB4 7 、Zn(BO3 2 、Sc(BO3 3 、Mg(BO3 2 、Sr2 Mg(BO3 4 、TaBO4 、AlF3 、ZnO、Sc2 3 、TiO2 、Al2 3 、MgO、ZrO2 、SrO2 及びMgF2 のうち1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0064】
更に好ましい実施形態では、犠牲層は、Ti、Al、W、Zr及びMgのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせ、並びにO及びBのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせで構成された物質を含む。
【0065】
好ましい実施形態では、M”は、Ti、Al、W及びMgで構成された群のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0066】
より好ましい実施形態では、犠牲層は、Ti(BO3 4 、Al(BO3 3 、SrB4 7 、TiO2 、Al2 3 、MgO、ZrO2 及びMgF2 のうち1つ及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0067】
本出願の更なる実施形態では、100重量部のコア層に基づき、犠牲層は、0.02重量部~5重量部の範囲であり、好ましくは、100重量部のコア層に基づき、犠牲層は、2.5重量部~5重量部の範囲である。犠牲層が0.02重量部未満の場合に、形成された層の厚さが薄すぎ、浸透したフッ化水素を効果的に消耗できず、それによってフッ化水素がコア層の正極活物質と接触し、従ってリチウムイオン二次電池の容量とサイクル保持に悪影響を与える。犠牲層が10重量部を超える場合、形成された層の厚さが厚すぎ、それによって抵抗が不利に増加し、リチウムイオン二次電池の容量が不利に低下する。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態では、様々な実施例について、犠牲層の下限は、100重量部のコア層に基づき、0.02重量部、0.03重量部、0.04重量部、0.05重量部、0.06重量部、0.07重量部、0.08重量部、0.09重量部、0.1重量部、0.15重量部、0.2重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.35重量部、0.4重量部、0.45重量部、0.5重量部、0.55重量部、0.6重量部、0.65重量部、0.7重量部、0.75重量部、0.8重量部、0.85重量部、0.9重量部、0.95重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、又は2.5重量部であればよく、且つ犠牲層の上限は、100重量部のコア層に基づき、2.6重量部、2.7重量部、2.8重量部、2.9重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、又は5重量部であればよい。
【0069】
具体的には、100重量部のコア層に基づき、犠牲層の量は、0.02重量部~5重量部、0.02重量部~4.5重量部、0.02重量部~4重量部、0.02重量部~3.5重量部、0.02重量部~3重量部、0.02重量部~2.6重量部、0.1重量部~5重量部、0.1重量部~4.5重量部、0.1重量部~4重量部、0.1重量部~3.5重量部、0.1重量部~3重量部、0.1重量部~2.6重量部、0.5重量部~5重量部、0.5重量部~4.5重量部、0.5重量部~4重量部、0.5重量部~3.5重量部、0.5重量部~3重量部、0.5重量部~2.6重量部、1重量部~5重量部、1重量部~4.5重量部、1重量部~4重量部、1重量部~3.5重量部、1重量部~3重量部、1重量部~2.6重量部、2重量部~5重量部、2重量部~4.5重量部、2重量部~4重量部、2重量部~3.5重量部、2重量部~3重量部、2重量部~2.6重量部、2.5重量部~5重量部、2.5重量部~4.5重量部、2.5重量部~4重量部、2.5重量部~3.5重量部、2.5重量部~3重量部、又は2.5重量部~2.6重量部の範囲であればよい。
【0070】
本発明の更なる実施形態では、犠牲層の厚さは1nm~250nmの範囲であり、好ましくは、犠牲層の厚さは25nm~250nmの範囲であり、より好ましくは、犠牲層の厚さは125nm~250nmの範囲である。犠牲層の厚さは、様々な実施例について、その下限が1nm、1.5nm、2.5nm、3nm、3.5nm、4nm、4.5nm、5nm、7.5nm、10nm、12.5nm、15nm、17.5nm、20nm、22.5nm、25nm、27.5nm、30nm、32.5nm、35nm、37.5nm、40nm、42.5nm、45nm、47.5nm、50nm、100nm、125nmであればよく、且つその上限が250nm、225nm、200nm、175nm、150nm、145nm、140nm、135nm、又は130nmであればよい。
【0071】
具体的には、犠牲層の厚さは、1nm~250nm、1nm~225nm、1nm~200nm、1nm~175nm、1nm~150nm、1nm~130nm、5nm~250nm、5nm~225nm、5nm~200nm、5nm~175nm、5nm~150nm、5nm~130nm、25nm~250nm、25nm~225nm、25nm~200nm、25nm~175nm、25nm~150nm、25nm~130nm、50nm~250nm、50nm~225nm、50nm~200nm、50nm~175nm、50nm~150nm、50nm~130nm、100nm~250nm、100nm~225nm、100nm~200nm、100nm~175nm、100nm~150nm、100nm~130nm、125nm~250nm、125nm~225nm、125nm~200nm、125nm~175nm、125nm~150nm、又は125nm~130nmの範囲であればよい。
【0072】
本発明の他の1つの典型的な実施形態によれば、フッ化水素バリア層の前駆体材料と活材料粒子を混合し、第1混合物が得られ、その第1混合物を250℃~350℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を
使用して篩い分け、フッ化水素バリア層の被覆生成物が得られ、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、Ba、Zr、Mn、Ca、Mg、Alの単体とそれらの酸化物、フッ化物、ホウ酸塩、硫酸塩、リン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むステップS1-1と、物理的バリア層の前駆体材料とフッ化水素バリア層の被覆生成物を混合し、第2混合物が得られ、その第2混合物を500℃~600℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩
い分け、それによって複合正極活材料が得られるステップS2-1とを含む、複合正極活材料の調製方法を提供する。
【0073】
本方法で調製された正極活材料は、コア層、物理的バリア層及びフッ化水素バリア層の3層構造を含む。500℃~600℃の温度範囲で2時間~4時間のか焼により、物理的
バリア層が緻密な構造になり、従ってフッ化水素の浸透を効果的に防止する。フッ化水素バリア層は、Nb、Ba、Zr、Mn、Ca、Mg、Alの単体及びそれらの酸化物、フッ化物、ホウ酸塩、硫酸塩、リン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む前駆体物質を焼結することによって調製され、従って本出願の方法によって調製された複合正極活材料は、フッ化水素と正極活物質との間の接触を効果的に防止することができ、同時に、従来技術における複合正極活材料の抵抗の増加の問題を克服することができる。従って、電池の良好な放電出力能力を維持できるだけでなく、電池の抵抗増大を効果的に抑制することができる。好ましい実施形態では、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、Mg、Zr、Mn、Alの単体とそれらの酸化物、フッ化物、ホウ酸塩、硫酸塩及びリン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0074】
本発明の他の1つの典型的な実施形態によれば、犠牲層の前駆体材料と活材料粒子を混合し、第1混合物が得られ、その第1混合物を250℃~350℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い
分け、それによって第1被覆生成物が得られ、犠牲層の前駆体材料は、Ti、Al、Mg、Zr、Sr、Zn、Sc、Wの単体とそれらの酸化物、フッ化物及びホウ酸塩のいずれか1つ又は任意の組み合わせを含むステップS1-2と、フッ化水素バリア層の前駆体材料と第1被覆生成物を混合し、第2混合物が得られ、その第2混合物を250℃~350℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッ
シュの篩を使用して篩い分け、それによって第2被覆生成物が得られ、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、Ba、Zr、Mn、Ca、Mg、Alの単体とそれらの酸化物、フッ化物、ホウ酸塩、硫酸塩及びリン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むステップS2-2と、物理的バリア層の前駆体材料と第2被覆生成物を混合し、第3混合物が得られ、その第3混合物を500℃~600℃の範囲の温度で2時間~4時間か焼し、か焼物を粉砕し、200メッシュ~400メッシュの篩を使用して篩い分け、
それによって複合正極活材料が得られるS3-2とを含む、複合正極活材料の調製方法を提供する。好ましい実施形態では、犠牲層の前駆体材料は、Ti、Al、Mg、Zr、Wの単体とそれらの酸化物、フッ化物及びホウ酸塩の任意の1つ又はそれらの任意の組み合わせを含み、且つ、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、Mg、Zr、Mn、Alの単体とそれらの酸化物、フッ化物、ホウ酸塩、硫酸塩及びリン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0075】
本方法で調製された正極活材料は、コア層、犠牲層、物理的バリア層、フッ化水素バリア層の4層構造を含む。犠牲層は、Ti、Al、Mg、Zr、Sr、Zn、Sc、Wの単体とそれらの酸化物、フッ化物及びホウ酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む犠牲層の前駆体材料で調製され、従ってフッ化水素がコア層の正極活物質と接触して反応する前に、犠牲層がフッ化水素と反応でき、それによってフッ化水素が正極活物質への腐食を回避することができる。500℃~600℃の温度範囲で2時間~4時間のか焼により、物理的バリア層が緻密な構造になり、従ってフッ化水素の浸透を効果的に防
止する。フッ化水素バリア層は、Nb、Ba、Zr、Mn、Ca、Mg、Alの単体及びそれらの酸化物、フッ化物、ホウ酸塩、硫酸塩、リン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含む前駆体物質を焼結することによって調製され、従って本出願の方法によって調製された複合正極活材料は、フッ化水素と正極活物質との間の接触を効果的に防止することができ、同時に、従来技術における複合正極活材料の抵抗の増加の問題を克服することができる。従って、電池の良好な放電出力能力を維持できるだけでなく、電池の抵抗増大を効果的に抑制することができる。
【0076】
本出願のいくつかの実施形態では、犠牲層の前駆体材料は、Ti、Al、Mg、Zr、Sr、Zn、Scの単体とMgO、ZrO2 、Mg(BO3 2 、AlF3 、Sr2 Mg(BO3 4 、TaBO4 、ZnO、Sc2 3 、Ti(BO3 4 、Al(BO3 3 、TiO2 、Al2 3 、MgO及びMgF2 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましい実施形態では、犠牲層の前駆体材料は、Ti、Al、Mg、Zr、Wの単体とMgO、ZrO2 、Mg(BO3 2 、AlF3 及びAl2 3 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。より好ましい実施形態では、犠牲層の前駆体材料は、Ti、Al、Wの単体とMgO、ZrO2 、Mg(BO3 2 及びAl2 3 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0077】
本出願のいくつかの実施形態では、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、Ba、Zr、Mn、Caの単体とNbBO4 、BaSO4 、ZrP2 7 、Mn2 PO4 F、CaSn4 (PO4 6 、MgF2 、NbO2 、ZrO2 及びMnO2 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましい実施形態では、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、Nb、Mg、Zr、Mn、Alの単体とMgF2 、NbBO4 、Mn2 PO4 F、ZrP2 7 、Al2 3 、MgO、ZrO2 、Mg(BO3 2 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。より好ましい実施形態では、犠牲層の前駆体材料は、Nbの単体とMgF2 、NbBO4 、Mn2 PO4 Fのいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0078】
本出願のいくつかの実施形態では、犠牲層の前駆体材料は、第1犠牲層の前駆体物質、第2犠牲層の前駆体物質及び任意の第3犠牲層の前駆体物質を含み、その第1犠牲層の前駆体物質、第2犠牲層の前駆体物質及び任意の第3犠牲層の前駆体物質は互いに異なり、ここで、第1犠牲層の前駆体物質の量及び第2犠牲層の前駆体物質の量はそれぞれ20重量部~70重量部の範囲であり、任意の第3犠牲層の前駆体物質の量は0重量部~50重量部の範囲であり、それによって第1犠牲層の前駆体物質、第2犠牲層の前駆体物質及び任意の第3犠牲層の前駆体物質は100重量部の犠牲層の前駆体材料を構成する。
【0079】
いくつかの好ましい実施形態では、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、1つのフッ化水素バリア層の前駆体物質のみを含む。他のいくつかの実施形態では、フッ化水素バリア層の前駆体材料は、第1フッ化水素バリア層の前駆体物質及び第2フッ化水素バリア層の前駆体物質を含み、ここで、第1フッ化水素バリア層の前駆体物質の量及び第2フッ化水素バリア層の前駆体物質の量は、30重量部~70重量部の範囲であり、それによって第1フッ化水素バリア層の前駆体物質及び第2フッ化水素バリア層の前駆体物質は、100重量部のフッ化水素バリア層の前駆体材料を構成する。
【0080】
本出願のいくつかの実施形態では、物理的バリア層の前駆体材料は、Ta、W、Hf、Zr、Nb、Sc、Zn、Alの単体とそれらの酸化物及びリン酸塩のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含み、好ましくは、物理的バリア層の前駆体材料は、第1物理的バリア層の前駆体物質、第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の第3物理的バリア層の前駆体物質を含み、その第1物理的バリア層の前駆体物質、第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の第3物理的バリア層の前駆体物質は互いに異なる。
【0081】
本出願のいくつかの実施形態では、物理的バリア層の前駆体材料は、Ta、W、Hf、Zr、Nb、Sc、Zn、Alの単体とAl2 3 、ZrO2 、AlPO4 、W(PO4 2 、Zr3 (PO4 4 、ZnO、NbO2 、WO3 及びTa2 5 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。好ましい実施形態では、物理的バリア層の前駆体材料は、W、Zr、Al、Sc、Nb、Zn、Taの単体とAl2 3 、ZrO2 、AlPO4 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。より好ましい実施形態では、物理的バリア層の前駆体材料は、W、Zr、Scの単体とAl2 3 、ZrO2 、AlPO4 のいずれか1つ又はそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0082】
本出願のいくつかの好ましい実施形態では、物理的バリア層の前駆体材料は、第1物理的バリア層の前駆体物質、第2物理的バリア層の前駆体物質を含み、ここで、第1物理的バリア層の前駆体物質の量及び第1物理的バリア層の前駆体物質の量はそれぞれ、20重量部~70重量部の範囲であり、且つ、任意の第3物理的バリア層の前駆体物質の量は、0重量部~50重量部の範囲であり、それによって第1物理的バリア層の前駆体物質、第2物理的バリア層の前駆体物質及び任意の第3物理的バリア層の前駆体物質は、100重量部の物理的バリア層の前駆体材料を構成する。
【0083】
本発明の他の典型的な実施形態によれば、本発明の正極活材料を含むリチウムイオン二次電池用の正極シートを提供する。本発明の正極活材料を含むため、本発明のリチウムイオン二次電池用の正極シートは、フッ化水素と正極活物質との接触及び反応を効果的に防止し、正極活物質の金属の溶出を抑制し、正極活物質のバルク相における結晶構造の安定性を確保し、従って、それを含むリチウムイオン二次電池は多くのサイクルの後でも良好な放電出力能力を維持でき、高温時の電池のガス発生現象を抑制する。
【0084】
本発明の他の典型的な実施形態によれば、正極シート、負極シート及びセパレータを含み、ここで、正極シートは本発明の複合正極活材料を含むリチウムイオン二次電池を提供する。本発明の複合正極活材料を含む場合に、本発明のリチウムイオン二次電池は、フッ化水素が正極材料への腐食を効果的に回避し、良好な放電出力能力を維持し、複数のサイクル後の抵抗を低減し、且つ高温時の電池のガス発生現象を抑制する。
【実施例
【0085】
以下では、具体的な実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明の請求される保護の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0086】
(実施例1)
複合正極活材料の調製
8.4gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、8.4gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体、及び8.4gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約300℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕し
た後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって第1被覆生成物(犠牲層を被覆した正極活材料)が得られた。
【0087】
25.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と25.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1050.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約350℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物
を破砕した後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって第2被覆生成物(犠牲層とフッ化水素バリア層を被覆した正極活材料)が得られた。
【0088】
16.7gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、16.7gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び16.7gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1100.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相の重量の5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約550℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破
砕した後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって複合正極活材料が得られた。
【0089】
リチウムイオン二次電池の製造
正極の作製
92.0gの複合正極活材料、5.0gのグラファイト導電剤及び3.0gのポリフッ化ビニリデン接着剤を混合し、それによって正極混合物が得られ、且つ得られた正極混合物を33.0gのN-メチルピロリドンに分散させ、正極混合物スラリーが得られた。その後、正極混合物スラリーをアルミ箔上に塗布し、正極集電体が得られた。正極集電体を乾燥させ、且つ打ち抜き成形プロセスを利用して正極シートを形成した。
【0090】
負極の作製
97.0gの黒鉛粉末、2.0gのスチレンブタジエンゴム及び1.0gのカルボキシメチルセルロースを適量の水に加えて撹拌し、負極スラリーを形成した。その後、得られた負極スラリーを銅箔上に塗布し、それによって負極集電体が得られた。負極集電体を乾燥させ、且つ打ち抜き成形プロセスを利用して負極シートを形成した。
【0091】
電解液の調製
15.0gのエチレンカルボナート、70.0gの炭酸ジメチル、15.0gの六フッ化リン酸リチウムを混合し、電解液を調製した。
【0092】
電池の組み立て
ドライ実験室でCR2016ボタン電池を組み立てた。上記のステップで調製された正極シートを正電極として使用し、負極シートを負電極として使用した。正電極、負電極、セパレータをボタン電池の電池ケースに組み立て、電解液を注入した。電池の組み立てが完了した後に、約24時間静置してエージングし、それによってニッケルコバルトマンガン酸リチウムボタン電池が得られた。
【0093】
(実施例2)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0094】
8.4gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、8.4gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体、及び8.4gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の2.5%(wt/wt)とした。
【0095】
50.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と50.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。100.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1025.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の10%(wt/wt)とした。
【0096】
8.4gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、8.4gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び8.4gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1125.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。
【0097】
(実施例3)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0098】
16.7gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、16.7gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体及び16.7gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の5wt%(wt/wt)とした。
【0099】
25.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と25.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1050.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5wt%(wt/wt)とした。
【0100】
8.4gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、8.4gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び8.4gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1100.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。
【0101】
(実施例4)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0102】
8.4gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、8.4gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体、及び8.4gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の2.5%(wt/wt)とした。
【0103】
25.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と25.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1025.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0104】
0.067gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、0.067gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び0.067gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。0.2gの物理的バリア層の前駆体材料及び1075.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の0.02%(wt/wt)とした。
【0105】
(実施例5)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0106】
8.4gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、8.4gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体、及び8.4gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の2.5%(wt/wt)とした。
【0107】
0.1gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と0.1gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。0.2gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1025.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の0.02%(wt/wt)とした。
【0108】
8.4gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、8.4gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び8.4gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1025.2gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。
【0109】
(実施例6)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0110】
0.067gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、0.067gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体、及び0.067gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。0.2gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の0.02%(wt/wt)とした。
【0111】
25.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と25.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.2gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0112】
8.4gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、8.4gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び8.4gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.2gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。
【0113】
(実施例7)
複合正極活材料の調製
25.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と25.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1050.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約350℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出
し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによ
ってフッ化水素バリア層被覆生成物(フッ化水素バリア層を被覆した正極活材料)が得られた。
【0114】
8.4gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、8.4gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び8.4gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約550℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メ
ッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって複合正極活材料が得られた。
【0115】
実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0116】
(実施例8)
複合正極活材料の調製
25.0gのZrO2 を犠牲層の前駆体材料として量る。25.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約300℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メッシュの篩
で篩い分け処理を行い、それによって第1被覆生成物(犠牲層を被覆した正極活材料)が得られた。
【0117】
50.0gのMgF2 をフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1025.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合した。混合物を焙焼炉に入れ、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量が主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)であり、約350℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、
200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって第2被覆生成物(犠牲層とフッ化水素バリア層を被覆した正極活材料)が得られた。
【0118】
12.5gの第1物理的バリア層の前駆体物質Scの単体及び12.5gの第2物理的バリア層の前駆体物質ZrO2 を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1075.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約550℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破
砕した後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって複合正極活材料が得られた。
【0119】
実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0120】
(実施例9)
複合正極活材料の調製
25.0gのMg(BO3 2 を犠牲層の前駆体材料として量った。25.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に入れ、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約300℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メ
ッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって第1被覆生成物が得られた。
【0121】
50.0gのNbBO4 をフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1025.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約350℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、
200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって第2被覆生成物が得られた。
【0122】
25.0gのNbの単体を物理的バリア層の前駆体材料として量った。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1075.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約550℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メ
ッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって複合正極活材料が得られた。
【0123】
実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0124】
(実施例10)
複合正極活材料の調製
12.5gのWの単体及び12.5gのAlF3 を量り、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。25.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約300℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機
でか焼物を破砕した後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって第1被
覆生成物が得られた。
【0125】
50.0gのZrP2 7 をフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1025.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約350℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後
、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって第2被覆生成物が得られた。
【0126】
25.0gのZnを物理的バリア層の前駆体材料として量った。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1075.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約550℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メッシュ
の篩で篩い分け処理を行い、それによって複合正極活材料が得られた。
【0127】
実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0128】
(実施例11)
複合正極活材料の調製
25.0gのAl2 3 を犠牲層の前駆体材料として量った。25.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約300℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メッシュ
の篩で篩い分け処理を行い、それによって第1被覆生成物が得られた。
【0129】
50.0gのMn2 PO4 Fをフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1025.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約350℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した
後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって第2被覆生成物が得られた。
【0130】
25.0gのAlPO4 を物理的バリア層の前駆体材料として量った。25.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1075.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2.5%(wt/wt)とした。混合物を焙焼炉に入れ、約550℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メ
ッシュの篩で篩い分け処理を行い、それによって複合正極活材料が得られた。
【0131】
実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0132】
(実施例12)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0133】
50.0gのAl2 3 をフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0134】
50.0gのTaの単体を物理的バリア層の前駆体材料として量った。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0135】
(実施例13)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0136】
50.0gのMgOをフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0137】
50.0gのZrの単体を物理的バリア層の前駆体材料として量った。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0138】
(実施例14)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0139】
50.0gのZrO2 をフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0140】
50.0gのAlの単体を物理的バリア層の前駆体材料として量った。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0141】
(実施例15)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0142】
25.0gのAl2 3 及び25.0gのMgOを量り、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0143】
25.0gのTaの単体及び25.0gのZrの単体を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0144】
(実施例16)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0145】
25.0gのZrO2 及び25.0gのMg(BO3 2 を量り、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0146】
25.0gのAlの単体及び25.0gのNbの単体を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0147】
(実施例17)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0148】
16.7gのNbの単体及び33.3gのMgF2 を量り、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比は1:2とした。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0149】
12.5gのWの単体、25.0gのZrの単体及び12.5gのAl2 3 を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体材料の重量比は1:2:1とした。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0150】
(実施例18)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0151】
33.3gのNbの単体及び16.7gのMgF2 を量り、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比は2:1とした。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0152】
12.5gのWの単体、12.5gのZrの単体及び25.0gのAl2 3 を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体材料の重量比は1:1:2とした。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0153】
(実施例19)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0154】
12.5gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、25.0gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体、及び12.5gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:2:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の5%(wt/wt)とした。
【0155】
16.7gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体及び33.3gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:2であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1050.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0156】
12.5gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、25.0gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び12.5gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:2:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1100.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0157】
(実施例20)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0158】
12.5gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、12.5gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体及び25.0gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:2であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の5%(wt/wt)とした。
【0159】
33.3gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体及び16.7gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が2:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1050.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0160】
12.5gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、12.5gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び25.0gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:2であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1100.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0161】
(実施例21)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0162】
11.67gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、11.67gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体及び11.67gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで、3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。35.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の3.5%(wt/wt)とした。
【0163】
37.5gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と37.5gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。75.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1035.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の7.5%(wt/wt)とした。
【0164】
11.67gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、11.67gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び11.67gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。35.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1110.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の3.5%(wt/wt)とした。
【0165】
(実施例22)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0166】
6.67gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、6.67gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体及び6.67gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで、3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。20.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の2%(wt/wt)とした。
【0167】
10.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と10.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。20.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1020.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の2%(wt/wt)とした。
【0168】
3.33gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、3.33gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び3.33gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。10.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1040.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の1%(wt/wt)とした。
【0169】
(比較例1)
複合正極活材料の調製
25.0gのAl2 3 及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを量り、混合機に加え、均一に混合した。混合物を焙焼炉に入れ、約300℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メッシュの篩で篩
い分け処理を行い、それによって第1被覆生成物が得られた。
【0170】
50.0gのZnO及び1025.0gの第1被覆生成物を量り、混合機に加え、均一に混合した。混合物を焙焼炉に入れ、約350℃の温度で2時間か焼した。か焼物を取り
出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、それに
よって第2被覆生成物が得られた。
【0171】
25.0gのAl2 3 及び1075.0gの第2被覆生成物を量り、混合機に加え、均一に混合した。混合物を焙焼炉に入れ、約550℃の温度で2時間か焼した。か焼物を
取り出し、破砕機でか焼物を破砕した後、200メッシュの篩で篩い分け処理を行い、そ
れによって複合正極活材料が得られた。
【0172】
実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0173】
(比較例2)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0174】
50.0gのMgOをフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0175】
0.033gのWの単体、0.033gのZrの単体及び0.033gのAl2 3 を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体材料の重量比が1:1:1とした。0.1gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の0.01%(wt/wt)とした。
【0176】
(比較例3)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0177】
50.0gのMgOをフッ化水素バリア層の前駆体材料として量った。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0178】
25.0gのWの単体、25.0gのZrの単体及び25.0gのAl2 3 を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体材料の重量比が1:1:1とした。75.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の7.5%(wt/wt)とした。
【0179】
(比較例4)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0180】
0.05gのNbの単体及び0.05gのMgF2 を量り、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比は1:1とした。0.1gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の0.01%(wt/wt)とした。
【0181】
16.7gのWの単体、16.7gのZrの単体及び16.7gのAl2 3 を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体材料の重量比が1:1:1とした。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1000.1gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0182】
(比較例5)
実施例7と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0183】
60.0gのNbの単体及び60.0gのMgF2 を量り、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比は1:1とした。120.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここでフッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の12%(wt/wt)とした。
【0184】
16.7gのWの単体、16.7gのZrの単体及び16.7gのAl2 3 を量り、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合し、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体材料の重量比が1:1:1とした。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1120.0gのフッ化水素バリア層被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0185】
(比較例6)
実施例1と同様の方式で、複合正極活物質を調製すると共にリチウムイオン二次電池を製造し、その区別は、以下の通りとした。
【0186】
0.033gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、0.033gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体及び0.033gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで、3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。0.1gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の0.01%(wt/wt)とした。
【0187】
25.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と25.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1000.1gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0188】
16.7gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、16.7gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び16.7gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1050.1gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0189】
(比較例7)
25.0gの第1犠牲層の前駆体物質Tiの単体、25.0gの第2犠牲層の前駆体物質Alの単体及び25.0gの第3犠牲層の前駆体物質MgOを量り、ここで、3つの犠牲層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、犠牲層の前駆体材料として均一に混合した。75.0gの犠牲層の前駆体材料と1000.0gのニッケルコバルトマンガン酸リチウムを混合機に加え、均一に混合し、ここで、犠牲層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)重量の7.5%(wt/wt)とした。
【0190】
25.0gの第1フッ化水素バリア層の前駆体物質Nbの単体と25.0gの第2フッ化水素バリア層の前駆体物質MgF2 を量り、ここで、2つのフッ化水素バリア層の前駆体物質の重量比が1:1であり、フッ化水素バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gのフッ化水素バリア層の前駆体材料及び1050.0gの第1被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで、フッ化水素バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0191】
16.7gの第1物理的バリア層の前駆体物質Wの単体、16.7gの第2物理的バリア層の前駆体物質Zrの単体及び16.7gの第3物理的バリア層の前駆体物質Al2 3 を量り、ここで、3つの物理的バリア層の前駆体物質の重量比が1:1:1であり、物理的バリア層の前駆体材料として均一に混合した。50.0gの物理的バリア層の前駆体材料及び1100.0gの第2被覆生成物を混合機に加え、均一に混合し、ここで物理的バリア層の前駆体材料の重量は、主相(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)の重量の5%(wt/wt)とした。
【0192】
(比較例8)
正極活物質(ニッケルコバルトマンガン酸リチウム)に対して被覆処理を行わなかった。
【0193】
実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を製造した。
【0194】
電池性能の試験
容量保持率の測定
以下では、上記の各実施例及び各比較例で生産されたリチウムイオン二次電池の容量保持率を測定した。まず、周囲温度23℃、充電電圧4.35V、充電電流0.5mA、充電時間10時間の条件で充電し、次に、放電電流2.5mA、終端電圧3.0Vの条件で放電し、初期放電容量(1サイクル目の放電容量)を測定した。続いて、周囲温度23℃、充電電圧4.35V、充電電流0.5mA、充電時間10時間の充電条件及び放電電流2.5mA、終端電圧3.0Vの放電条件で繰り返して充放電した。その後、100サイクル目の放電容量を測定した。次に、以下の式に基づき、1サイクル目の放電容量と100サイクル目の放電容量を使用し、100サイクル後の容量保持率(%)を計算した。
【0195】
100サイクル後の容量保持率[%]=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0196】
抵抗の測定
リチウムイオン二次電池を60℃の温度に保持し、0.5Cの充電を1回行い、その後、電池の初期抵抗値を確定した。0.5Cとは、電池容量(理論容量)を2時間で放電しきる電流値である。60℃の温度で100回の充放電サイクルを実行し、完了後に電池の最終抵抗値を測定した。以下の式によって、電池の抵抗増大率(%)を計算した。
【0197】
抵抗増大率(%)=(最終抵抗値-初期抵抗値)/初期抵抗値×100
【0198】
複合正極活材料の厚さの測定
XPSディープエッチング法を使用して薄膜の厚さを測定し、得られた薄膜の厚さが1μm~10μmの範囲である場合に、測定結果を留保し、得られた薄膜の厚さが10μmを超える場合に、電界放出型走査電子顕微鏡を使用して測定し、且つ、得られた10μmを超える薄膜の厚さを留保した。
【0199】
表1は、各比較例及び各実施例に含まれる本発明の複合正極活物質を用いて製造されたリチウムイオン二次電池の評価結果を示す。
【0200】
【表1】
注記:上記の表の比較例1中の層の厚さは、対応する位置での3つの層の厚さを表すだけであり、比較例1中の3つの層が、本発明の犠牲層、フッ化水素バリア層、物理的バリア層として機能できることを意味するものではない。
【0201】
以上の実験結果によると、本発明の上記の実施例は以下の以下の技術的効果を達成することを示し、実施例1~22の結果と比較例8(正極活物質を処理しない)の結果とを比較すると、本出願の複合正極活材料を使用した後に、フッ化水素と正極活物質との接触及び反応を効果的に防止し、正極活物質中の金属の溶出を抑制し、正極活物質のバルク相における結晶構造の安定性を確保し、従って、それを含むリチウムイオン二次電池は多くのサイクルの後でも良好なサイクル保持率を維持でき、且つ低い初期抵抗値を有し、抵抗の増大を抑制することが分かった。
【0202】
実施例7と比較例3の結果を比較すると、物理的バリア層の厚さが本出願で限定された厚さよりも大きい場合に、抵抗の増大率はいずれも100%増加するが、物理的バリア層が厚すぎるため、初期抵抗値と最終抵抗値の両方が、実施例7の実験結果よりもはるかに高く、同時に比較例3の結果と比較し、実施例7の容量及びサイクル保持率も大幅に向上することが分かった。
【0203】
実施例7と比較例2の結果を比較すると、物理的バリア層の厚さが本出願で限定された厚さよりも小さい場合に、初期抵抗値が近い場合に、比較例2の最終抵抗値が実施例7の結果よりもはるかに高く、抵抗増大率が150%に達し、同時に比較例2のサイクル保持率も実施例7の結果よりもはるかに低いことが分かった。
【0204】
実施例7と比較例5の結果を比較すると、フッ化水素バリア層の厚さが本出願で限定された厚さよりも大きい場合に、比較例5の容量が実施例7の容量に近いが、実施例7の初期抵抗値、最終抵抗値及び抵抗増大率がいずれも比較例5の結果よりもはるかに小さく、実施例7がより優れたサイクル保持率を達成することが分かった。
【0205】
実施例7と比較例4の結果を比較すると、フッ化水素バリア層の厚さが本出願で限定された厚さよりも小さい場合に、初期抵抗値がいずれも10Ωである場合に、実施例7の最終抵抗値がわずか20Ωであり、比較例4の結果よりもはるかに小さく、従って抵抗増大率の低下を達成することが分かった。同時に、比較例4と比較すると、実施例7は優れたサイクル保持率を達成した。
【0206】
実施例1と比較例7の結果を比較すると、犠牲層の厚さが本出願で限定された厚さよりも大きい場合に、比較例7の抵抗増大率が実施例1の結果よりも低いが、比較例7の初期抵抗値(16Ω)が実施例1よりもはるかに高いため、その最終抵抗値も受け入れられない結果(31.52Ω)を示すことが分かった。
【0207】
実施例1と比較例6の結果を比較すると、犠牲層の厚さが本出願で限定された厚さよりも小さい場合に、比較例6のサイクル保持率が受け入れられない低下(81%)を示すことが分かった。
【0208】
また、実施例7、実施例12~18及び比較例8の結果によると、物理的バリア層とフッ化水素バリア層のみを含む場合に、サイクル保持率の向上と抵抗増大率の低下も効果的に達成することができた。
【0209】
上記の説明は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者にとって、本発明は、様々な修正及び変更を有することができる。本発明の精神及び原則の範囲内で行われた修正、同等の交換、改良などはいずれも本発明の保護範囲に含まれる。