(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】搬送システム及び搬送台車の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B65G1/04 555A
(21)【出願番号】P 2022140951
(22)【出願日】2022-09-05
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】千田 暁慧
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070282(JP,A)
【文献】特開2021-165209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容する複数段の収容棚と、
収容棚に設けられた走行路と、
前記走行路を挟むようにして前記収容棚は複数、対向配置されており、
前記走行路に沿って走行し、前記収容棚に収容された物品を搬出し、他の物品を前記収容棚へ搬入する搬送台車と、
前記走行路に沿う方向で前記収容棚の中心部に対して両側に設けられ、前記搬送台車が昇降する昇降路と、
前記収容棚の前記走行路に沿う方向で一方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が上昇する上昇路と、
前記収容棚の前記走行路に沿う方向で他方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が下降する下降路と
を含み、
前記搬送台車が、前記走行路を、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向き、若しくは、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きのいずれか一方に走行するように、前記収容棚の段毎に進行方向が定められており、
前記収容棚の少なくとも1つの段では、前記搬送台車が、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きに走行するように、進行方向が定められており、
前記搬送台車は、前記昇降路から前記上昇路へ、及び、前記下降路から前記昇降路へ進入が禁止されている
搬送システム。
【請求項2】
前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きに進行方向が定められた段のうち、少なくとも1つの段に対して、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きの他の段が少なくとも1つ対応付けられており、
対応する前記1つの段の走行路と前記他の段の走行路と前記昇降路によって循環経路が形成される
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きに進行方向が定められた段のうち、少なくとも1つの段に対して、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きの他の段が少なくとも2つ対応付けられており、
対応する前記1つの段の走行路と2つの前記他の段の走行路と前記昇降路によって循環経路が形成される
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きに進行方向が定められた段のうち、少なくとも1つの段に対して、上段及び下段にそれぞれ、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きの段が少なくとも1つずつ対応付けられている
請求項3に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記搬送台車は、前記上昇路で上昇した段から、異なる段を目標としてアクセスする場合、前記下降路側の前記昇降路で他の段へ上昇又は下降し、
目標の段で前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きで走行し、
前記上昇路側の前記昇降路で、前記上昇路で上昇した段へ戻り、
戻った後の段で、前記下降路へ走行する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項6】
物品を収容する複数段の収容棚と、
収容棚に設けられた走行路と、
前記走行路を挟むようにして前記収容棚は複数、対向配置されており、
前記走行路に沿って走行し、前記収容棚に収容された物品を搬出し、他の物品を前記収容棚へ搬入する搬送台車と、
前記走行路に沿う方向で前記収容棚の中心部に対して両側に設けられ、前記搬送台車が昇降する昇降路と、
前記収容棚の前記走行路に沿う方向で一方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が下降する下降路と、
前記収容棚の前記走行路に沿う方向で他方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が上昇する上昇路と
を含み、
前記搬送台車が、前記走行路を、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向き、若しくは、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きのいずれか一方に走行するように、前記収容棚の段毎に進行方向が定められており、
前記収容棚の少なくとも1つの段では、前記搬送台車が、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きに走行するように、進行方向が定められており、
前記搬送台車は、前記昇降路から前記下降路へ、及び、前記上昇路から前記昇降路へ進入が禁止されている
搬送システム。
【請求項7】
物品を収容する複数段の収容棚と、
収容棚に設けられた走行路と、
前記走行路を挟むようにして前記収容棚は複数、対向配置されており、
前記走行路に沿って走行し、前記収容棚に収容された物品を搬出し、他の物品を前記収容棚へ搬入する搬送台車と、
前記走行路に沿う方向で前記収容棚の中心部に対して両側に設けられ、前記搬送台車が昇降する昇降路と、
前記収容棚の前記走行路に沿う方向で一方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が上昇する上昇路と、
前記収容棚の前記走行路に沿う方向で他方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が下降する下降路と
を含み、
前記搬送台車が、前記走行路を、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向き、若しくは、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きのいずれか一方に走行するように、前記収容棚の段毎に進行方向が定められており、
前記収容棚の少なくとも1つの段では、前記搬送台車が、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きに走行するように、進行方向が定められており、
前記搬送台車は、前記昇降路から前記上昇路へ、及び、前記下降路から前記昇降路へ進入が禁止されている搬送システムにて、
コンピュータが、
前記上昇路にて上昇する段、前記下降路側の昇降路での昇降、前記上昇路側の昇降路での昇降、前記下降路へ向かう進行方向が定められている段、該段での前記下降路への移動の順で、前記搬送台車の搬送経路を決定し、
決定した搬送経路を前記搬送台車に指示する
搬送台車の制御方法。
【請求項8】
荷物を載置可能であって、複数階層に分けられた収容棚と、
前記収容棚の階層それぞれに対応する走行路のうち、台車が上昇するための上昇路及び台車が下降する下降路に接続された大階層走行路と、
前記大階層走行路以外の階層に設けられた小階層走行路と、
大階層走行路と下降路との間、または、大階層走行路と上昇路との間に設けられた昇降路と、
により構成される立体走行可能な台車走行システムにて、
荷物を積載して上昇路から大階層走行路に進入した台車を、
大階層走行路にて積載物を荷下ろしした後、前記大階層走行路にて荷物を積載して下降路へ至る経路、
または、
大階層走行路にて積載物を荷下ろしした後、前記大階層走行路より昇降路を経て小階層走行路へ進入し、前記小階層走行路にて荷物を積載したのち、昇降路を経て大階層走行路より下降路へ至る経路、
または、
大階層走行路から昇降路を経て進入した小階層走行路にて積載物を荷下ろしした後、前記小階層走行路にて荷物を積載したのち、昇降路を経て大階層走行路より下降路へ至る経路、
または、
大階層走行路から昇降路を経て進入した小階層走行路にて積載物を荷下ろしした後、前記小階層走行路から昇降路を経て前記大階層走行路へ進入し、前記大階層走行路にて荷物を積載したのち、下降路へ至る経路
で走行させ、
且つ、
前記台車の前記昇降路における各階層間を移動する際の移動方向を、上昇側若しくは下降側のいずれかに制限する
搬送台車の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倉庫における自動搬送ロボットの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
中規模又は大規模の倉庫において、物品を自動的に倉庫に搬入したり、物品を自動的に搬出したりする自動搬送システムが用いられている。自動搬送システムは、物品を受け入れる収容部を数段で有する収容棚に対し、上下方向及び間口方向に移動して物品を出し入れするピッキング装置を複数稼働させて構成される。
【0003】
特許文献1、2には、物品をコンテナ単位で収容する大規模な収容棚が開示されている。特許文献1、2等の大規模倉庫では、収容棚に対して設けられたレールに沿って、ロボットが垂直移動及び水平移動しながら物品(コンテナ)を収容部に出し入れする方法が開示されている。特許文献1では、ロボットは、垂直方向に移動するためのレールに沿って昇降しつつ、各段で水平方向に移動している。特許文献2では、収容棚を構成するフレームのロボットに対向する面全てにレールが設けられており、ロボットはレールに噛み合う機構によって縦横自在に移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許7077349号
【文献】特許6937022号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、昇降するための垂直方向の移動を、収容棚の両端などの場所に限った場合、各段に存在するロボットは昇降するために両端に集まり、渋滞する可能性が高まって移動効率が低下する。特許文献2でロボットは縦横自在に移動できるが、自由度が高過ぎて制御が複雑になる。
【0006】
本発明は、斯かる事情を鑑みてなされたものであり、効率的な搬送を実現する搬送システム及び搬送台車の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態の搬送システムは、物品を収容する複数段の収容棚と、収容棚に設けられた走行路と、前記走行路を挟むようにして前記収容棚は複数、対向配置されており、前記走行路に沿って走行し、前記収容棚に収容された物品を搬出し、他の物品を前記収容棚へ搬入する搬送台車と、前記走行路に沿う方向で前記収容棚の中心部に対して両側に設けられ、前記搬送台車が昇降する昇降路と、前記収容棚の前記走行路に沿う方向で一方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が上昇する上昇路と、前記収容棚の前記走行路に沿う方向で他方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が下降する下降路とを含み、前記搬送台車が、前記走行路を、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向き、若しくは、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きのいずれか一方に走行するように、前記収容棚の段毎に進行方向が定められており、前記収容棚の少なくとも1つの段では、前記搬送台車が、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きに走行するように、進行方向が定められており、前記搬送台車は、前記昇降路から前記上昇路へ、及び、前記下降路から前記昇降路へ進入が禁止されている。
【0008】
本開示の搬送システムでは、搬送台車は、段毎に定められた一方通行の進行方向に従って走行する。少なくとも1つの段で搬送台車は、収容棚を基準にして上昇路と反対側の下降路側から、上昇路側へ戻るような向きに走行する。搬送台車は、上昇路から上昇した後、走行路の走行方向に沿う方向における収容棚の中心に対して両側に設けられている昇降路から、上昇路まで戻ることは禁止されている。即ち、搬送台車は、上昇路から一旦いずれかの段へ上昇した後、他の段の走行路への上昇に上昇路を使用できない。同様にして、下降路まで到達した搬送台車は、他の段の走行路への下降に下降路を使用できない。搬送台車は、収容棚内で一方通行走行しながら物品を搬入出する。
【0009】
従来の一方通行では同一階層に複数の台車が進入することで、上昇路及び下降路での分岐、合流による待機時間が増え渋滞が発生する。本発明では昇降路による近接階層を周回するループ構造を用いてループ内で搬入及び搬出を行なうため、従来の一方通行経路に対して、搬送台車が上昇路及び下降路を通過する頻度を大幅に削減することが可能となり、特定の箇所(昇降箇所)での渋滞を低減することが可能になる。
【0010】
本開示の一実施形態の搬送システムでは、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きに進行方向が定められた段のうち、少なくとも1つの段に対して、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きの他の段が少なくとも1つ対応付けられており、対応する前記1つの段の走行路と前記他の段の走行路と前記昇降路によって循環経路が形成される。
【0011】
本開示の搬送システムでは、上昇路側から下降路側へ向かう向きに走行可能な1つの段に対し、下降路側から上昇路側へ向かう向きに走行可能な段が少なくとも1つ対応付けられている。対応する段の間での移動は昇降路である。対応する少なくとも2つの段と、昇降路とで循環経路が形成される。搬送台車は、収容棚でループを描くように一方通行で走行する。
【0012】
本開示の一実施形態の搬送システムでは、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きに進行方向が定められた段のうち、少なくとも1つの段に対して、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きの他の段が少なくとも2つ対応付けられており、対応する前記1つの段の走行路と2つの前記他の段の走行路と前記昇降路によって循環経路が形成される。
【0013】
本開示の搬送システムでは、上昇路側から下降路側へ向かう向きに進行方向が定められた段に対し、下降路側から上昇路側へ向かう向きに走行可能な少なくとも2つの段が対応付けられている。対応する少なくとも3つの段と、昇降路とで選択的に循環経路が形成される。搬送台車は、収容棚でループを描くように一方通行で走行する。
【0014】
本開示の一実施形態の搬送システムでは、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きに進行方向が定められた段のうち、少なくとも1つの段に対して、上段及び下段にそれぞれ、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きの段が少なくとも1つずつ対応付けられている。
【0015】
本開示の搬送システムでは、上昇路側から下降路側へ向かう向きに進行方向が定められた段の上段及び下段はそれぞれ、下降路側から上昇路側へ向かう向きに進行方向が定められている。搬送台車は、上昇路から上昇した段から下降路側へ走行した後、昇降路で上段又は下段に昇降し、下降側から上昇路側へ戻るようにして走行し、上昇路側の昇降路で昇降して上昇した段に戻り、ループを描くようにして走行可能である。
【0016】
本開示の一実施形態の搬送システムでは、前記搬送台車は、前記上昇路で上昇した段から、異なる段を目標としてアクセスする場合、前記下降路側の前記昇降路で他の段へ上昇又は下降し、目標の段で前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きで走行し、前記上昇路側の前記昇降路で、前記上昇路で上昇した段へ戻り、戻った後の段で、前記下降路へ走行する。
【0017】
本開示の搬送システムでは、上昇路から走行してきた搬送台車は、他の段へアクセスする場合、下降路側から上って下降路側から上昇路側への向きで走行する。このように、搬送台車は、ループを描くように一方通行を実現する。
【0018】
本開示の一実施形態の搬送システムでは、前記搬送台車は、物品を前記収容棚へ収容しつつ、他の物品を前記収容棚から搬出する場合、前記搬出対象の物品が収容されている段へアクセス可能な走行経路内の収容部へ前記物品を搬入した後に、前記他の物品を搬出する、搬送経路で走行する。
【0019】
本開示の搬送システムでは、搬送台車は、ループを描くように一方通行で走行する間に、アクセス可能な空き収容部へ物品を収容し、目的の物品を搬出するように決定された搬送経路で走行する。これにより、渋滞や衝突を回避しつつ、効率的に走行可能となる。
【0020】
本開示の一実施形態の搬送システムでは、前記搬送台車へ搬送経路を指示する制御装置を更に備え、前記制御装置は、搬出対象物品の搬出リクエストと、搬入対象物品の搬入リクエストとを受け付け、前記搬出リクエスト及び前記搬入リクエストに基づいて前記搬送台車が搬送する搬入対象物品の搬入先の収容部を含む搬送経路を決定する。
【0021】
本開示の搬送システムでは、制御装置が、システムあての搬出リクエスト及び搬入リクエストに基づいて、搬送経路を決定し、搬送台車へ指示する。搬出されるべき物品が収容されている収容部へたどり着くまでにアクセス可能な空き収容部へ、物品を搬入できる経路が決定できる。
【0022】
本開示の一実施形態の搬送システムは、物品を収容する複数段の収容棚と、収容棚に設けられた走行路と、前記走行路を挟むようにして前記収容棚は複数、対向配置されており、前記走行路に沿って走行し、前記収容棚に収容された物品を搬出し、他の物品を前記収容棚へ搬入する搬送台車と、前記走行路に沿う方向で前記収容棚の中心部に対して両側に設けられ、前記搬送台車が昇降する昇降路と、前記収容棚の前記走行路に沿う方向で一方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が下降する下降路と、前記収容棚の前記走行路に沿う方向で他方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が上昇する上昇路とを含み、前記搬送台車が、前記走行路を、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向き、若しくは、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きのいずれか一方に走行するように、前記収容棚の段毎に進行方向が定められており、前記収容棚の少なくとも1つの段では、前記搬送台車が、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向きに走行するように、進行方向が定められており、前記搬送台車は、前記昇降路から前記下降路へ、及び、前記上昇路から前記昇降路へ進入が禁止されている。
【0023】
本開示の搬送システムでは、搬送台車の収容棚へのアクセスが、収容棚の上部であってもよい。収容棚が例えば地下に構築され、上部に作業エリアがあるような場合である。この場合、搬送台車は収容棚へ最初に下降路で収容棚のいずれかの段へ進入し、収容棚から作業エリアへ戻る際に、上昇する。この場合も、搬送台車は、段毎に定められた一方通行の進行方向に従って走行する。少なくとも1つの段で搬送台車は、収容棚を基準にして、最初に進入する際に使用した下降路と反対側の上昇路側から、下降路側へ戻るような向きに走行する。
【0024】
本開示の一実施形態の搬送台車の制御方法は、物品を収容する複数段の収容棚と、収容棚に設けられた走行路と、前記走行路を挟むようにして前記収容棚は複数、対向配置されており、前記走行路に沿って走行し、前記収容棚に収容された物品を搬出し、他の物品を前記収容棚へ搬入する搬送台車と、前記走行路に沿う方向で前記収容棚の中心部に対して両側に設けられ、前記搬送台車が昇降する昇降路と、前記収容棚の前記走行路に沿う方向で一方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が上昇する上昇路と、前記収容棚の前記走行路に沿う方向で他方の前記昇降路の外側に設けられ、前記搬送台車が下降する下降路とを含み、前記搬送台車が、前記走行路を、前記上昇路側から前記下降路側へ向かう向き、若しくは、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きのいずれか一方に走行するように、前記収容棚の段毎に進行方向が定められており、前記収容棚の少なくとも1つの段では、前記搬送台車が、前記下降路側から前記上昇路側へ向かう向きに走行するように、進行方向が定められており、前記搬送台車は、前記昇降路から前記上昇路へ、及び、前記下降路から前記昇降路へ進入が禁止されている搬送システムにて、コンピュータが、前記上昇路にて上昇する段、前記下降路側の昇降路での昇降、前記上昇路側の昇降路での昇降、前記下降路へ向かう進行方向が定められている段、該段での前記下降路への移動の順で、前記搬送台車の搬送経路を決定し、決定した搬送経路を前記搬送台車に指示する。
【0025】
本開示の搬送台車の制御方法では、搬送台車は、段毎に定められた一方通行の進行方向に従うように、コンピュータからの指示によって走行する。少なくとも1つの段で搬送台車は、収容棚を基準にして上昇路と反対側の下降路側から、上昇路側へ戻るような向きにコンピュータの指示によって走行する。搬送台車は、上昇路から上昇した後、走行路の走行方向に沿う方向の収容棚の中心に対して両側に設けられている昇降路から、上昇路まで戻ることは禁止されている。即ち、搬送台車は、上昇路から一旦いずれかの段へ上昇した後、他の段の走行路への上昇に上昇路を使用できない。同様にして、下降路まで到達した搬送台車は、他の段の走行路への下降に下降路を使用できない。コンピュータからの処理によって、搬送台車は、収容棚内で小さなループを描くように一方通行走行しながら物品を搬入出する。
【0026】
本開示の一実施形態の搬送台車の制御方法は、荷物を載置可能であって、複数階層に分けられた収容棚と、前記収容棚の階層それぞれに対応する走行路のうち、台車が上昇するための上昇路及び台車が下降する下降路に接続された大階層走行路と、前記大階層走行路以外の階層に設けられた小階層走行路と、大階層走行路と下降路との間、または、大階層走行路と上昇路との間に設けられた昇降路と、により構成される立体走行可能な台車走行システムにて、荷物を積載して上昇路から大階層走行路に進入した台車を、大階層走行路にて積載物を荷下ろしした後、前記大階層走行路にて荷物を積載して下降路へ至る経路、または、大階層走行路にて積載物を荷下ろしした後、前記大階層走行路より昇降路を経て小階層走行路へ進入し、前記小階層走行路にて荷物を積載したのち、昇降路を経て大階層走行路より下降路へ至る経路、または、大階層走行路から昇降路を経て進入した小階層走行路にて積載物を荷下ろしした後、前記小階層走行路にて荷物を積載したのち、昇降路を経て大階層走行路より下降路へ至る経路、または、大階層走行路から昇降路を経て進入した小階層走行路にて積載物を荷下ろしした後、前記小階層走行路から昇降路を経て前記大階層走行路へ進入し、前記大階層走行路にて荷物を積載したのち、下降路へ至る経路で走行させ、且つ、前記台車の前記昇降路における各階層間を移動する際の移動方向を、上昇側若しくは下降側のいずれかに制限する。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、搬送台車の収容棚に対する昇降時の渋滞を回避し、効率的な搬送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の搬送システムの概要を示す略示斜視図である。
【
図3】搬送台車の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図5】制御装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】記憶される搬出リクエストの一例の説明図である。
【
図7】制御装置による搬送経路の指示手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】搬入を伴う搬出のための搬送経路を決定する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】指示に基づき搬送が完了した場合の制御装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。以下の実施の形態では、本開示の搬送システムについて説明する。
【0030】
図1は、本開示の搬送システム100の概要を示す略示斜視図であり、
図2は、搬送システム100の略示上面図である。搬送システム100は、物品の倉庫に設置されている。以下の説明では、
図1中の矢符により示す上下、左右及び前後を使用する。また、説明を簡潔にするため、
図1及び
図2の搬送システム100は、左右方向を短縮させている。
【0031】
本開示における搬送システム100は、収容棚10、搬送台車2及び制御装置3(
図3参照)をそれぞれ複数含む。搬送システム100は、物品を収容可能なコンテナ4を、倉庫内の作業エリアにて搬送台車2で受け付け、収容棚10へ搬入するとともに、指定された物品が収容されたコンテナ4を収容棚10から搬送台車2によって搬出し、作業エリアへ搬送するシステムである。
【0032】
収容棚10は、物品を入れるためのコンテナ4を上下方向に多段に複数収容可能な棚である。収容棚10は、搬送台車2の走行路(
図1中の左右方向)に対して対向配置されている。コンテナ4を移送する搬送台車2は、収容棚10の間を走行する。
【0033】
走行路に沿う方向における収容棚10の中心に対して両側に、搬送台車2が昇降する昇降路112,113が設けられている。昇降路112,113の外側に、搬送台車2が上昇する上昇路12と、搬送台車2が下降する下降路13が設けられている。上昇路12は、
図1において走行路に沿う方向を左右方向とした場合の昇降路112の右側に設けられている。下降路13は、昇降路113の左側に設けられている。上昇路12と昇降路112との間、及び、下降路13と昇降路113との間には、空間が設けられており、以後、その空間を分岐エリア14と呼ぶ。
【0034】
このように構成されている収容棚10に収容されている物品を、上下、左右、又は前後方向に移動可能な搬送台車2が、各々の収容部101へコンテナ4を搬出しに行き、コンテナ4を搬入しに行くことが可能である。
【0035】
本開示の搬送システム100の搬送台車2の走行は、
図1中の白抜きの矢印で示すように、収容棚10に設けられた走行路を、各段について定められた向きで、一方通行で走行することによって実現される。分岐エリア14における走行路は、収容棚10の段数よりも少ない階層数で設けられている。
図1の例では、収容棚10が6段であることに対し、分岐エリアは2段である。走行路は、各段に設けられている。
【0036】
搬送台車2は、車輪を有して、収容棚10の各段に設けられたレール又は走行ラインである走行路に沿って走行する。搬送台車2は、収容棚10の間を
図1における左右方向に走行する。搬送台車2は、コンテナ4を積載する荷台を有する。搬送台車2は、対向配置された収容棚10の収容部101、即ち
図1における前後方向に対向する収容部101に対してコンテナ4を荷台から搬入したり、収容部101から荷台へコンテナ4を搬出したりするフォークを利用した機構を有する。
【0037】
走行路の上下の移動は、上昇路12及び下降路13と、昇降路112,113とで実行される。昇降路112,113は、収容棚10のフレームに設けられてもよい。上昇路12及び下降路13と、昇降路112,113には、搬送台車2が有する昇降車輪が係合して昇降可能な昇降レールを有する。上昇路12において搬送台車2は、上昇のみ可能に制御され、上昇路12にて上昇した搬送台車2は、制御装置3に指示された階層まで上昇する。昇降路112,113において搬送台車2は、所定の段数、
図1の例では1段のみ上昇又は下降するように制御される。下降路13において搬送台車2は、下降のみ可能に制御される。搬送台車2は、下降路13で床面(GND層)まで下降する。床面に下降した搬送台車2は、作業エリアまで床面を走行して戻る。なお、上昇路12、下降路13、昇降路112,113は、搬送台車2を積載して昇降するエレベータであってもよい。
【0038】
床面より高い走行路における左右方向の移動は、段毎に定められている進行方向に一方通行とする。上昇路12から到達できる分岐エリア14と同一の階層(大階層)は、下降路13側への左向きの移動のみが可能である。他の階層(小階層)は、下降路13側から上昇路12側へ戻ってくる右向きの移動のみが可能である。
【0039】
また、上昇路12で上昇し、収容棚10まで走行した搬送台車2は、上昇路12へ戻ることは禁止されている。下降路13まで移動した搬送台車2は、その段において、上昇路12側へ移動することが禁止されている。
【0040】
このようなルールで走行可能な収容棚10内での搬送台車2の移動は例えば以下のように行なわれる。上昇路12にて分岐エリア14に到達した搬送台車2は、そのまま左方向へ一方通行で走行し、下降路13側の昇降路113にて、1段上又は1段下の小階層に昇降する。大階層の1段上及び1段下の小階層の走行路は、逆の方向即ち右方向へ一方通行の向きに進行方向が定められている。搬送台車2は、
図1の上昇路12側(右端)の昇降路112まで戻ってくるように走行し、上昇路12側の昇降路112にて、元の大階層へ1段下又は1段上に昇降する。大階層に戻った搬送台車2は、左方向へ一方通行で走行し、下降路13側(左端)の昇降路113で1段上又は1段下へ再度昇降するか、又は下降路13まで移動する。再度1段上又は1段下へ昇降した搬送台車2は上昇路12側の昇降路112まで戻る。
【0041】
複数の搬送台車2はそれぞれ、制御装置3と無線により通信が可能である。搬送台車2は、制御装置3から搬送経路の指示を受け付ける。搬送台車2は、指示された搬送経路を上述の一方通行及びループのルールに従って走行し、指示された収容部101へのコンテナ4の搬入、及び指示された収容部101からのコンテナ4の搬出を実行する。
【0042】
制御装置3は、複数の搬送台車2それぞれの位置を、各搬送台車2からの位置の通知に基づき認識可能であるものとする。制御装置3は、認識した位置に基づき、行先又は経由する収容部101への移動を指示する。
【0043】
このように、
図1及び
図2に示す搬送システム100において、搬送台車2は、収容棚10において一方通行で、垂直面上でループを描くように走行しながらコンテナ4を出し入れする。従来の一方通行では同一階層に複数の台車が進入することで、上昇路及び下降路での分岐、合流による待機時間が増え渋滞が発生する。本発明では昇降路112,113による近接階層を周回するループ構造を用いてループ内で搬入及び搬出を行なうため、従来の一方通行経路に対して、搬送台車2が上昇路12及び下降路13を通過する頻度を大幅に削減することが可能となり、特定の箇所(昇降箇所)での渋滞を低減することが可能になる。
【0044】
本開示の搬送システム100を構成する搬送台車2及び制御装置3の処理の詳細を以下に説明する。
図3は、搬送台車2の内部構成を示すブロック図である。搬送台車2は、制御部20と、車輪駆動部21と、フォーク駆動部22と、通信部23と、位置検知部24と、読取部25とを備える。
【0045】
制御部20は、マイクロコントローラであり、CPU(Central Processing Unit )、メモリ及びI/Oを備える。制御部20は、内蔵する不揮発性のメモリに記憶された制御プログラムP2に基づき、搬送台車2の動作を制御する。
【0046】
車輪駆動部21は、搬送台車2の走行車輪及び昇降車輪を駆動するモータを含む。車輪駆動部21は、制御部20から出力される制御信号に基づき、モータの出力を制御する。フォーク駆動部22は、制御部20から出力される制御信号に基づき、コンテナ4の出し入れを実現するフォークを駆動させる。
【0047】
通信部23は、無線通信デバイスである。通信部23は、例えばBluetooth(登録商標)の近距離無線通信を実現する。通信部23は他に、無線LAN(Local Area Network)を実現するデバイスであってもよい。制御部20は、位置検知部24で検出した位置を、自機を識別する搬送台車識別データと対応付けて通信部23により制御装置3へ送信できる。制御部20は、制御装置3からの搬送経路の指示を通信部により受信する。通信部23は、制御部20の一部として実装されていてもよい。
【0048】
位置検知部24は、搬送台車2の収容棚10における位置を検出する。位置検知部24は、一例ではカメラを用い、収容棚10のフレームの各所に付されているアドレスコード(文字、バーコード、二次元コード等)を読み取る。位置検知部24は、他の一例では、近距離無線通信リーダであって、収容棚10のフレームの各所に付されたタグの識別データ(アドレスコード)を読み取る。位置検知部24は、他の一例では、所定の電波の受信機であって、電波強度から搬送台車2の位置を特定してもよい。位置検知部24は、他の一例では、GPS受信機であってもよい。
【0049】
読取部25は、荷台に載置されたコンテナ4のコンテナ識別データを読み取る。読取部25は例えば、コンテナ4それぞれに付されたタグから、コンテナ識別データを近距離無線通信リーダによって読み取ってもよい。読取部25は他の例では、カメラを用い、コンテナ4に貼付されたバーコード又は二次元コードからコンテナ識別データを読み取ってもよい。なお読取部25は必須ではなく、どの搬送台車2にどのコンテナが載置されたかは、作業エリアの端末から入力されるものとしてもよい。
【0050】
図4は、制御装置3の内部構成を示すブロック図である。制御装置3は、複数の搬送台車2と無線により通信が可能であって、各搬送台車2の動作を制御する中央装置である。制御装置3は、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータを用いて各搬送台車2を制御する。制御装置3は、PLC(Programmable Logic Controller )を用いて記憶されたプログラムに従って各搬送台車2を制御してもよい。
【0051】
制御装置3は、処理部30、記憶部31、入出力部32及び通信部33を備える。処理部30は、CPU又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いる。処理部30は、記憶部31に記憶されている制御プログラム(プログラム製品)P3に基づく処理を実行する。
【0052】
記憶部31は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive )又はフラッシュメモリ等である不揮発性の記憶媒体である。記憶部31には制御プログラムP3が記憶されているほか、処理部30が参照する設定データ等が記憶されている。制御プログラムP3は、コンピュータから読み取り可能な記憶媒体9に記憶されていた制御プログラム(プログラム製品)P9を処理部30が読み出して記憶部31に記憶したものであってもよい。
【0053】
記憶部31に記憶されている設定データには、搬送台車2を各々識別する搬送台車識別データ、収容棚10の収容部101を識別する収容部識別データ、コンテナ4を識別するコンテナ識別データが含まれている。コンテナ4に収められている物品の物品識別データが含まれていてもよい。
【0054】
収容部識別データは、マップに対応付けられ、搬送台車2がいずれの経路によって各収容部101にアクセスできるかを特定できるように記憶されている。収容部識別データが、収容部101の実際の並び方に対応する番号であって、これによって並び方が識別できてもよい。収容部識別データは、上述の一方通行での走行経路における通過可能順序に応じて配列を構成しておいてもよい。詳細は後述する。
【0055】
記憶部31には、収容部101に収められているコンテナ4を識別するために、収容部識別データとコンテナ識別データとの対応関係を格納したデータベース310が記憶されており、搬入出の都度に更新される。記憶部31のデータベース310にはコンテナ識別データと、コンテナの内容物品の物品識別データとの対応関係が格納され、物品識別データによって搬出のリクエストを受け付けてもよい。
【0056】
入出力部32は、作業エリアのコントローラと接続されるインタフェースである。処理部30は、入出力部32によって作業エリアのコントローラから、搬出のリクエストを受け付け、データベース310に格納する。搬出のリクエストは、搬出が要求されるコンテナのコンテナ識別データと、搬送先の場所を示すデータとを含む。
【0057】
通信部33は、無線通信デバイスである。通信部33は、例えばBluetooth(登録商標)の近距離無線通信によって搬送台車2からデータを受信し、搬送台車2へ搬送経路を送信する。通信部33は他に、無線LANを実現するデバイスであってもよい。
【0058】
このように構成される搬送システム100による制御を、フローチャートを参照して説明する。
図5は、制御装置3による処理手順の一例を示すフローチャートである。制御装置3の処理部30は起動中、
図5に示す処理手順を実行し続ける。
【0059】
制御装置3の処理部30は、入出力部32を介して搬出リクエストを受信すると(ステップS101)、受信した搬出リクエストの識別番号とリクエストの内容を、未処理の搬出リクエストとしてデータベース310に格納する(ステップS102)。処理部30は、搬出リクエストに含まれるコンテナ識別データで識別されるコンテナが収容されている収容部101の収容部識別データを特定する(ステップS103)。
【0060】
処理部30は、搬出リクエストの識別番号に対応付けて、特定した収容部識別データを記憶し(ステップS104)、処理を終了する。
【0061】
図6は、記憶される搬出リクエストの一例の説明図である。
図6に示す例では、リクエスト識別番号に対応付けて、コンテナ識別番号、収容部識別データ、状態データが記憶されている。
図6の例では、リクエスト識別番号「000123」に対応付けて、コンテナ識別番号「00034567」、コンテナが収容されている収容部101の収容部識別データ「01020304」、状態データとして「未処理」が記憶されている。収容部識別データ「01020304」は例えば、対向配置された1組の収容棚10のうち、後側の収容棚10における下から3段目、上昇路12側から4番目の収容部101を示す(
図10参照)。同様にして、対向配置された1組の収容棚10のうち、後側の収容棚10における下から4段目、上昇路12側から3番目の収容部101からの搬出リクエスト「000124」も記憶されている。
【0062】
図6に示した収容棚10からの搬出リクエストに対し、作業エリアからは搬入リクエストが制御装置3に登録される。例えば、作業エリアにて、収容棚10に搬入(収容)すべきコンテナ4が搬送台車2に載置されると、搬送台車2の荷台に載置されたコンテナ4のコンテナ識別データが読み取られる。搬送台車2が、読み取ったコンテナ識別データと、搬送台車2自身の搬送台車識別データとを含む搬入リクエストを、制御装置3へ送信する。あるいは作業エリアにて、作業者が搬送台車2にコンテナ4を載置し、その搬送台車2の搬送台車識別データ及び載置したコンテナのコンテナ識別データを作業者が認識するか、作業エリアの端末装置によって読み取り、これらのデータを含む搬入リクエストが制御装置3へ送信されてもよい。制御装置3へ送信された搬入リクエストは、順次、未処理のリクエストであることが識別できるように、状態データを対応付けて制御装置3のデータベース310に格納される。
【0063】
作業エリアにて、作業者が搬送台車2を上昇路12にセットすると、搬送台車2から制御装置3へ入庫(搬入出開始)を通知する。あるいは昇降路112に、上昇する搬送台車2及び搬送台車2に積載されているコンテナ4のコンテナ識別データの入力装置が設けられており、作業者がこれらのデータを入力し、入庫を制御装置3へ通知してもよい。また、搬送台車2が自動的に上昇路12まで走行し、上昇路12への入庫を自動的に通知してもよい。上昇路12への入庫が通知されると、制御装置3から搬送台車2へ搬送経路が指示される。
【0064】
図7は、制御装置3による搬送経路の指示手順の一例を示すフローチャートである。制御装置3は、対向配置された収容棚10の組それぞれに対して以下に示す処理を実行する。
【0065】
制御装置3の処理部30は、搬送台車2、上昇路12の入力装置、あるいは作業エリアの端末装置から、搬送台車2の入庫の通知を受け付ける(ステップS201)。処理部30は、入庫された搬送台車2の搬送台車識別データを特定し(ステップS202)、搬送台車識別データに対応付けて、その搬送台車2が入庫中であることをデータベース310に記憶する(ステップS203)。
【0066】
処理部30は、ステップS202で特定した搬送台車識別データが対応付けられている搬入リクエストが記憶部31に記憶されているか否かを判断する(ステップS204)。
【0067】
記憶部31に記憶されていると判断された場合(S204:YES)、入庫した搬送台車2には、収容すべきコンテナ4が載置され、搬入リクエストが制御装置3へ送信されているはずである。したがって処理部30は、搬入リクエストに含まれている収容すべきコンテナ4のコンテナ識別データを特定する(ステップS205)。処理部30は、搬入リクエストに対して搬送中であることを示すように、搬入リクエストの状態データを更新する(ステップS206)。
【0068】
処理部30は、未処理の搬出リクエストのリストから、対象の搬送台車2が上昇した上昇路12に対応する収容棚10に収容されているコンテナ4を搬出する搬出リクエストを、優先的に抽出する(ステップS207)。処理部30は、抽出された搬出リクエストから、1つを選択し(ステップS208)、搬出中であることを示す状態データで搬出リクエストを更新する(ステップS209)。ステップS207の抽出及びステップS208の選択のアルゴリズムは、複数のバリエーションが存在してよく、これについては詳細を後述する。
【0069】
処理部30は、搬出リクエストに含まれる収容部識別データに基づき、搬入を伴う搬出のための搬送経路を決定する処理を、一方通行のルールに基づき実行する(ステップS210)。処理部30は、決定した搬送経路の指示を搬送台車2へ送信し(ステップS211)、指示処理を終了する。
【0070】
ステップS204において記憶部31に記憶されていないと判断された場合(S204:NO)、入庫した搬送台車2には、コンテナ4が載置されておらず、搬出のみのために入庫されたものである。したがって処理部30は、未処理の搬出リクエストのリストから、対象の搬送台車2が上昇した上昇路12に対応する収容棚10に収容されているコンテナ4を搬出する搬出リクエストを、優先的に抽出する(ステップS212)。処理部30は、抽出された搬出リクエストから、1つを選択し(ステップS213)、搬出中であることを示す状態データで搬出リクエストを更新する(ステップS214)。
【0071】
処理部30は、搬出リクエストに含まれる収容部識別データの収容部101へアクセスするための搬送経路を決定し(ステップS215)、収容部101での搬出処理を含む搬送経路の指示を搬送台車2へ送信し(ステップS216)、処理を終了する。
【0072】
ステップS215において処理部30は、上述した一方通行のルールに基づき、収容部101へアクセスするための「上昇路12で上昇する階層」、「下降路13側の昇降路113で上昇するか下降するか」を含む搬送経路を決定する。処理部30は続けて、「搬入対象の収容部101の位置」、「搬出対象の収容部101からの搬出」、「上昇路12側の昇降路112で上昇するか下降するか」、及び「下降路13へ移動」の順で搬送経路を指示する。
【0073】
図8は、搬入を伴う搬出のための搬送経路を決定する手順の一例を示すフローチャートである。
図8のフローチャートに示す処理手順は、
図7のフローチャートにおけるステップS210の処理手順の詳細に対応する。
【0074】
処理部30は、搬出リクエストに含まれる収容部識別データによって識別される搬出対象の収容部101へアクセスするための階層を決定する(ステップS301)。ステップS301において処理部30は、分岐エリア14と同一の大階層あるいは、床面と等しい階層(以下、GND層という)から決定する。
【0075】
処理部30は、ステップS301において決定した階層は、GND層以外の大階層であるか否かを判断する(ステップS302)。階層は大階層であると判断された場合(S302:YES)、処理部30は、大階層に対応付けられている段の走行路からアクセス可能な空いている収容部を特定する(ステップS303)。処理部は、特定した収容部101の収容部識別データに、積載する予定のコンテナのコンテナ識別データを対応付けて記憶し(ステップS304)、収容先を確保する。
【0076】
処理部30は、ステップS301で決定した大階層への移動、ステップS303で特定した収容部識別データへの収容部101の移動、搬入、搬出リクエストに含まれる収容部識別データの収容部101への移動、搬出、下降路13への移動、の順で搬送経路を決定し(ステップS305)、
図7のフローチャートにおけるステップS211へ処理を戻す。
【0077】
ステップS302において、階層はGND層であると判断された場合(S302:NO)、処理部30は、同一の組内の収容棚10で空いている収容部101を特定する(ステップS306)。特定した収容部101の収容部識別データに、積載する予定のコンテナ4のコンテナ識別データを対応付けて記憶し(ステップS307)、収容先を確保する。
【0078】
処理部30は、特定した収容部101へアクセスするための大階層を特定する(ステップS308)。処理部30は、特定した大階層への移動、ステップS306で特定した収容部識別データの収容部101への移動、搬入、下降路13への移動、搬出リクエストに含まれる収容部識別データの収容部101への移動、搬出の順で搬送経路を決定し(ステップS309)、
図7のフローチャートにおけるステップS211へ処理を戻す。
【0079】
なお、
図1に示したように収容棚10のGND層に収容部101が存在しない場合、ステップS302において判断は常にYESとなり、処理部30は、ステップS305によって搬送経路を決定する。
【0080】
制御装置3からの指示に応じて搬送台車2が荷台のコンテナ4を、空いている収容部101に収容し、搬出リクエストの対象のコンテナ4を搬出すると、以下の処理を実行する。
図9は、指示に基づき搬送が完了した場合の制御装置3の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御装置3は、入庫した搬送台車2それぞれに対して以下の処理を実行する。
【0081】
制御装置3の処理部30は、搬入されたコンテナ4のコンテナ識別データを収容先の収容部101の収容部識別データに対応付けて記憶する(ステップS401)。処理部30は、搬入リクエストを、搬入完了を示すデータを対応付けて更新するか、若しくは消去して、搬入完了として処理し(ステップS402)、データベース310における搬送台車2の搬送台車識別データと、搬入対象のコンテナのコンテナ識別データとの対応関係を消去する(ステップS403)。
【0082】
入庫した搬送台車2が、搬入を行なわない場合(荷台が空である場合)、ステップS401-S403の処理は省略される。
【0083】
搬出処理が完了した時点で、制御装置3の処理部30は、搬出されたコンテナが収容されていた収容部101の収容部識別データに対応付けられていたコンテナ識別データを消去する(ステップS404)。処理部30は、搬送する搬送台車2の搬送台車識別データに対応付けてコンテナ識別データとの対応関係をデータベース310に記憶する(ステップS405)。処理部30は、対応する搬出リクエストを、搬出完了を示すデータを対応付けて更新するか、若しくは消去して、搬出完了として処理する(ステップS406)。
【0084】
処理部30は、対象の搬送台車2が作業エリアへ対象のコンテナ4を搬出したことを検知すると(ステップS407)、搬送台車識別データとコンテナ識別データの対応関係を消去し(ステップS408)、処理を終了する。処理部30は、搬出リクエストを完了させたステップS406の処理をステップS408の処理のタイミングで実行してもよい。
【0085】
制御装置3の
図7-
図8のフローチャートに示した手順に応じた搬送台車2の搬送経路の例を、図面を参照しつつ、説明する。
【0086】
図10は、搬送手順の説明図である。
図10は、対向配置された1組の収容棚10の内の一方(後側)を前側から見た略示側面図に対応する。収容棚10は上下に、GND層の上へ6段、各段に5つの収容部101を含むものとして説明する。
図10では、各収容部101に該当するブロックに、収容部識別データを付して説明する。
【0087】
なお
図10は、第1組の2番目(後側)の収容棚10を例とする。
図10の例では、各収容部101の収容部識別データは、組の識別番号、組内の収容棚10の識別番号、段数、上昇路12側を若い番号とした番号とで構成される。例えば、1段目は、図中の右部(上昇路12側)から順に、「01020101」、「01020102」、「01020103」、…と続き、2段目は同様に右部から順に、「01020201」、「01020202」、…と続き、3段目は「01020301」、…と続く。
【0088】
図10に示す例に対して、第1組の1番目(前側)の収容棚10の各収容部101の収容部識別データは、1段目は順に、「01010101」、「01010102」、「01010103」、…と続き、2段目は同様に入庫側から順に、「01010201」、「01010202」、…と続き、3段目は「01010301」、…と続く。
【0089】
収容部識別データ「01010101」である第1組の1番目(前側)の収容棚10の収容部101と、収容部識別データ「01020101」の第1組の2番目(後側)の収容棚10の収容部101とは対向している。同様に、収容部識別データ「01010504」である第1組の1番目(前側)の収容棚10の収容部101と、収容部識別データ「01020504」の第1組の2番目(後側)の収容棚10の収容部101とは対向している。搬送台車2は、対向している収容部101それぞれに対し、同一の位置に停止してフォークを前後に出し入れしてアクセスできる。
【0090】
図10中の白抜きの矢符で示すように、収容棚10では段毎に、上昇路12側から下降路13側へ向かう向き、若しくは、下降路13側から上昇路12側へ向かう向きのいずれか一方に走行するように、進行方向が定められている。少なくとも1つの段では、搬送台車2が下降路13側から、上昇路12側へ向かう向きに走行するように進行方向が定められている。搬送台車2は、昇降路112から上昇路12への進入は禁止され、下降路13から昇降路113への進入も禁止されている。
【0091】
図10の例では更に、上昇路12側から下降路13側へ向かう向きに進行方向が定められた2段目及び5段目に対して、下降路13側から上昇路12側へ向かう向きの他の段が少なくとも2つ対応付けられている。しかも、その2つの段は、2段目及び5段目に対しそれぞれ、上段及び下段である。上下に分かれているとは限らない。これにより、対応する1つの段の走行路と2つの他の段の走行路と昇降路112,113によって循環経路が形成されている。換言すると、昇降路113で上昇した搬送台車2は昇降路112で下降する。昇降路113で下降した搬送台車2は昇降路112で上昇する。
【0092】
図10に示す例において、上昇路12側の分岐エリア14から直接的にアクセス可能である段数は、2段目及び5段目である。例えば、搬出リクエストに含まれる収容部識別データが、
図10に示す例においてハッチングで示す、「01020403」である場合、制御装置3は搬送台車2に対し、以下のような搬送経路を指示する。4段目の収容部101へのアクセスは、5段目の大階層からのみ可能であることを設定データ(マップ)から読み込めるため、制御装置3は、搬送台車2へ、上昇路12で「5段目に移動」し、下降路13側の昇降路113で1段下へ「下降」する指示を搬送経路に含める。制御装置3は更に、4段目において、上昇路12側へ3つ目の収容部101まで移動し、搬出を実行し、上昇路12側の昇降路112まで戻るように移動し、昇降路112で大階層の5段目まで「上昇」することを指示する。制御装置3は続いて、5段目の大階層の走行路から下降路13まで移動し、下降路13から下降してGND層を走行して作業エリアへ戻ることを指示する。
【0093】
同様にして搬出リクエストに含まれる収容部識別データが、
図10に示す例においてハッチングで示す「01020304」である場合、制御装置3は搬送台車2に対し、以下のような搬送経路を指示する。3段目の収容部101へのアクセスは、2段目の大階層からのみ可能であることが設定データ(マップ)から読み込めるため、制御装置3は、搬送台車2へ、上昇路12で「2段目に移動」し、下降路13側の昇降路113で1段上へ「上昇」することを指示する。制御装置3は、更に、入庫側へ2つ目の収容部101まで移動し、搬出処理を実行し、上昇路12側の昇降路112まで移動し、昇降路112で2段目まで「下降」することを指示する。制御装置3は続いて、2段目の走行路から下降路13まで移動し、下降路13から下降してGND層を走行して作業エリアへ戻ることを指示する。
【0094】
図8のフローチャートに示した搬送経路を更に詳細に説明する。
図11は、搬送経路の他の説明図である。制御装置3の記憶部31のデータベース310には、上述したように収容部識別データ「01020304」の収容部101に収容されているコンテナ4の搬出リクエストが、未処理の状態で記憶されているものとする。このとき、制御装置3の処理部30は、第1組「01」の収容棚10に対応する上昇路12にて、搬送台車2にコンテナ4が載置されて入庫したことを制御装置3が検知する(S201)。その搬送台車2の荷台に収容されている場合には(S204:YES)、処理部30は、載置されているコンテナのコンテナ識別データを特定する(S205)。
【0095】
処理部30は、未処理の搬出リクエストのうち、低い階層の「01020304」の収容部101に収容されているコンテナの搬出リクエストを選択する(S208)。処理部30は、「01020304」の収容部101への経路、即ち2段目の走行経路からアクセス可能な「01020201」から「01020205」の収容部101、1段上の3段目の「01020301」から「01020305」の5つの収容部101、若しくは、1段下の1段目の「01020101」から「01020105」の5つ収容部101のうち、空いている収容部101を特定する(S303)。このとき、処理部30は、2段目の収容部101、即ち「01020304」の収容部101へ到達する前に通過する「01020201」から「01020205」及び「01020305」の6つ収容部101を優先的に特定するとよい。それらの中に空いている収容部101が存在しない場合、1段上の3段目の「01020301」から「01020303」の収容部101、又は1段下の1段目の「01020101」から「01020105」の収容部101のうちのいずれかを特定するとよい。
【0096】
図11中、ハッチングで示す「01020203」の収容部101が空いている場合、処理部30は、これを優先的に特定する。この場合の搬送経路を、
図11中の太線の白抜き矢符で示す。処理部30は、「2段目への移動」、「『01020203』の収容部101へ移動」、「『01020203』の収容部101へ、積載しているコンテナ4を搬入」、「下降路13側の昇降路113へ移動」、「昇降路113で上昇」、「『01020304』の収容部101へ移動」、「『01020304』の収容部101からコンテナを搬出」、「上昇路12側の昇降路112へ移動」、「昇降路112で下降」、「下降路13へ移動」という搬送経路を決定する(S305)。
【0097】
図11において、「01020304」の収容部101に収容されているコンテナの搬出リクエストを選択した後、2段目の走行経路からアクセス可能な空いている収容部101が特定できない場合、処理部30は、再度搬出リクエストを選択し直すとよい。したがって制御装置3は、空いている収容部101へ先に到達できる搬出リクエストを優先的に選択してもよい。
【0098】
図12は、搬送経路の他の説明図である。
図10で示したように収容部識別データ「01020304」の収容部101に収容されているコンテナ4の搬出リクエストを選択し(S208)、ハッチングで示す「01020103」の収容部101のみが空いている場合、処理部30は、以下のような搬送経路を決定する(S305)。この場合の搬送経路を、
図12中の太線の白抜き矢符で示す。搬送経路は、「2段目への移動」、「下降路13側の昇降路113へ移動」、「昇降路113で下降」、「『01020103』の収容部101へ移動」、「『01020103』の収容部101へ、積載しているコンテナ4を搬入」、「上昇路12側の昇降路112へ移動」、「昇降路112で上昇」、「2段目において下降路13側の昇降路113へ移動」、「昇降路113で上昇」、「『01020304』の収容部101へ移動」、「『01020304』の収容部101からコンテナを搬出」、「上昇路12側の昇降路112へ移動」、「昇降路112で下降」、「下降路13へ移動」という順序である。
【0099】
大階層のみで搬入、搬出が完結する場合は、ループさせずに、昇降路113で昇降を行なわず下降路13からGNDに下降してもよい。
図13は、搬送経路の他の説明図である。
図13に示すように、収容部識別データ「01020204」の収容部101、即ち、大階層に位置する収容部101に収容されているコンテナの搬出リクエストを選択し(S208)、同一階層の「01020202」の収容部の収容部101が空いている場合、処理部30は、以下のような搬送経路を決定する(S305)。この場合の搬送経路を、
図13中の太線の白抜き矢符で示す。搬送経路は、「2段目への移動」、「『01020202』の収容部101へ移動」、「『01020202』の収容部101へ、積載しているコンテナ4を搬入」、同一階層の「『01020204』の収容部101へ移動」、「『01020204』の収容部101からコンテナを搬出」、「下降路13へ移動」という順序である。
【0100】
このように搬送システム100において制御装置3の処理部30は、各搬送台車2へ、「上昇路12で上昇する階層」、「下降路13側の昇降路113で昇降するか下降するか」、「搬入対象の収容部101の位置」、「搬出対象の収容部101の位置」、「上昇路12側の昇降路112での昇降」、「下降路13」の順で対象を識別して移動経路を指示する。「搬入対象の収容部101の位置」の「搬出対象の収容部101の位置」の前後には、対象の収容部101の位置によって、昇降路112、113での昇降が不要な場合も昇降が必要な場合もあるがいずれも一方通行である。
図11,12中の白抜きの矢符で示すように、大階層から他の階層へアクセスする場合、搬送台車2は循環経路上を移動する。
【0101】
上述したように搬送台車2は各収容部101へのアクセスを一方通行の走行経路で実現する。これにより、搬送台車2どうしの衝突が起こらず、昇降も上昇路12及び下降路13に限られないので、渋滞が緩和され、効率的な搬送が期待できる。
【0102】
ここで、従来の収容棚における搬送台車の動きを比較として説明する。
図14は、従来の方法の説明図である。
図14は、
図10-
図13に示した収容棚10と同様に、5つの収容部を左右方向に有する6段の多段棚を例とする。多段棚には右端に、上昇路91を備え、左端に下降路92を備える。従来の方法においては、上昇路91から各段へアクセス可能である。下降路92へも各段からアクセス可能である。搬送台車2は、上昇路91から移動し、搬出のみ、搬入のみであれば対象の収容部へ向けて移動し、搬出あるいは搬入を実施するので、逆方向の動きをせず、衝突を回避することはできる。しかしながら、上昇路91及び下降路92において、昇降する搬送台車2が渋滞する事態が起こりやすい。
【0103】
これに対し、
図10-
図13で示したように、本開示の搬送システム100において搬送台車2は、小階層では一方通行で走行するが、小階層は大階層からのみアクセス可能である。昇降路112,113は大階層と小階層との間での1段程度の定められた昇降を行なう。搬入対象のコンテナ4を搬送しながら、搬出すべきコンテナ4へアクセスする搬送台車2は、
図12で示した搬送経路のように、時に遠回りとなる経路を走行するが、結果的に渋滞が起こることを回避し、効率的に搬送可能となる。
【0104】
上述した走行経路では、大階層から小階層へ1段上昇するか、あるいは、下降してアクセスした。本開示の搬送システム100では、収容棚10の段数に応じて、昇降路112,113での昇降段数を変更してもよい。
【0105】
図15は、搬送経路の他の説明図である。
図15の例において、収容棚10の段数は「10」である。
図15では、大階層は2段目、5段目及び9段目である。9段目の大階層の段には、
図15中の太線白抜き矢印で示すように、10段目のみならず、7段目及び8段目の合計3つの段が対応付けられている。このように、昇降路112,113における上昇段数及び下降段数は、1段に限られない。ただし、搬入出の頻度に応じて上昇段数及び下降段数は2段程度に設計しておくのが望ましい。
【0106】
図16は、搬送経路の他の説明図である。
図16の例において、収容棚10の段数は「6」である。
図16では、大階層は2段目、4段目、6段目である。2段目の大階層には1段目の段が対応付けられている。4段目の大階層には3段目の段が、6段目の大階層には5段目の段が対応付けられている。そして、
図16中の白抜きの矢符で示すように、段毎に、上昇路12側から下降路13側へ向かう向き、若しくは、下降路13側から上昇路12側へ向かう向きのいずれか一方に走行するように、進行方向が定められている。
図16の例では更に、上昇路12側から下降路13側へ向かう向きに進行方向が定められた2段目、4段目及び6段目に対して、下降路13側から上昇路12側へ向かう向きの他の段が1つずつ対応付けられている。これにより、対応する1つの段の走行路と他の1つの段の走行路と昇降路112,113によって循環経路が形成されている。
【0107】
図16に示すように、各大階層の段には、少なくとも1つの段が対応付けられて循環経路が形成されるとよい。
図10、
図15、
図16に示した搬送経路の組み合わせは可能である。つまり、1つの大階層には1つの他の段のみが対応付けられ、他の1つの大階層には上段及び下段の2つの段が対応付けられ、他の1つの大階層には、上2つの段、又は下2つの段が対応付けられる、といった混在した搬送経路であってもよい。
【0108】
図17は、搬送経路の他の説明図である。
図1、2、
図10-
図13、
図15、
図16の例では、昇降路112,113を収容棚10の左右端に1つずつ設ける構成とした。しかしながらこれに限らず、収容棚10を搬送台車2の走行方向に2つに分け、その分けた部分に昇降路114,115を更に設けた構成としてもよい。この場合、収容棚10の左端の下降路13側の昇降路113まで到達しなくても、中央にある昇降路114を用いて小階層へアクセス可能である。
【0109】
図18は、収容棚10の他の例を示す略示上面図である。
図18は、
図2の上面図に対応する。
図18の収容棚10は、前後方向にコンテナ4を2つずつ収容する点が異なる。つまり収容棚10は、多列多段の棚である。
図18に示す収容棚10においても、搬送経路の決定自体は、空いている収容部101の判断が異なる以外、前後方向が1つずつの収容棚1に対する処理と同様である。
【0110】
制御装置3が指示する搬送経路は
図10-
図13、
図15、
図16、
図17等に限られない。図中の白抜き矢印で示す各段に定められた進行方向が守られれば、他の経路も可能である。ただし、搬送台車2が小階層から大階層へ向かうとき、元の大階層へ戻る経路となるように制御することが好適である。なお、分岐エリア14では、隣の収容棚10の組への移動を実施可能としてもよい。
【0111】
上述の実施形態で示した収容棚10は、作業エリアのあるフロアから上方に向けて多段の構成であった。しかしながら収容棚10はこれに限らず、作業エリアのあるフロアから下方に向けて多段の構成であってもよい(図示を省略)。この場合も、搬送台車2は、段毎に定められた一方通行の進行方向に従って走行する。搬送台車2は下降路を経て収容棚10の大階層へ到達し、いずれかの段で下降路から上昇路に向けて走行する。大階層から小階層へ進入する場合、搬送台車は、上昇路側の昇降路で上昇あるいは下降し、小階層で上昇路側から下降路側へ走行し、下降路側の昇降路で下降あるいは上昇し、大階層に戻り、大階層から上昇路へ向かう。この場合であっても、制御装置3(あるいは搬送台車2自身)による制御の方法は、上述の内容と同様である。
【0112】
上述の実施形態では、制御装置3が複数の搬送台車2に対し、各々の位置と、搬出リクエストと、各搬送台車2に載置される荷物の有無とに応じて、搬送経路を指示する構成として説明した。しかしながら、これに限らず、搬送台車2の制御部20がコンピュータとして、搬出対象の収容部101及び空きの収容部101の情報を制御装置3から取得し、自機(搬送台車2自身)の位置に応じて搬送経路を決定し、車輪駆動部21に走行及び昇降を指示するようにしてもよい。
【0113】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0114】
100 搬送システム
10 収容棚
112,113 昇降路
12 上昇路
13 下降路
14 分岐エリア
2 搬送台車
3 制御装置
30 処理部
31 記憶部
310 データベース