IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-電子機能回路付き電子カード 図1
  • 特許-電子機能回路付き電子カード 図2
  • 特許-電子機能回路付き電子カード 図3
  • 特許-電子機能回路付き電子カード 図4
  • 特許-電子機能回路付き電子カード 図5
  • 特許-電子機能回路付き電子カード 図6
  • 特許-電子機能回路付き電子カード 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電子機能回路付き電子カード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20240402BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240402BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240402BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240402BHJP
【FI】
G06K19/07 090
G06K19/07 040
G06K19/07 180
G06K19/077 108
G06K19/077 264
H02J50/12
H02J50/80
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022528422
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2021004028
(87)【国際公開番号】W WO2021245980
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2020098118
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 達也
【審査官】土谷 慎吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145879(WO,A1)
【文献】特開2000-194808(JP,A)
【文献】特開2012-238126(JP,A)
【文献】特開平05-266269(JP,A)
【文献】特開2007-104514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 19/077
H02J 50/12
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信用の通信アンテナと、当該通信アンテナに電気的に接続された無線通信ICと、受電コイルと、当該受電コイルと共に受電共振回路を構成する共振キャパシタと、前記受電共振回路に接続された整流平滑回路と、第1の受電表示素子および第2の受電表示素子と、前記受電共振回路からの電力を管理する電力管理回路と、前記受電共振回路からの電力で動作する電子機能回路と、前記整流平滑回路と前記電子機能回路との間に接続される電圧変換回路と、を備え、
前記第1の受電表示素子は、前記整流平滑回路の出力に接続され、
前記第2の受電表示素子は、前記電圧変換回路の出力または前記電子機能回路に接続され、
前記第1の受電表示素子と前記第2の受電表示素子は、それぞれ異なる電圧で点灯するように設定され、
前記無線通信ICは近距離無線通信を実行し、
前記受電コイルは前記近距離無線通信用の周波数の磁界より電力を受電し、
前記電子機能回路は、前記受電共振回路からの受電電力で動作し、
前記通信アンテナ及び前記受電コイルは、前記近距離無線通信用の周波数で共鳴する電磁界エネルギーを共有し、
前記電力管理回路は、前記共鳴する電磁界エネルギーから前記受電コイルにより電力を受電した場合に
前記第1の受電表示素子が前記受電コイルで受電した状態で点灯し、
前記第2の受電表示素子が前記電子機能回路が動作可能な電圧に達した状態で点灯し、
前記第1の受電表示素子および前記第2の受電表示素子を駆動することで、状態の異なる種類の複数の受電状況を利用者へ通知する
電子機能回路付き電子カード。
【請求項2】
前記第1の受電表示素子は前記受電コイルによる受電の強度を通知する、
請求項1に記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項3】
前記電力管理回路は、前記受電コイルによる受電に対する学習機能を備え、前記無線通信ICと前記電子機能回路の動作タイミングを調整する、
請求項1又は2に記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項4】
前記電子機能回路は、生体認証回路及び生体センサである、
請求項1から3のいずれかに記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項5】
前記生体認証回路は指紋認証回路である、
請求項4に記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項6】
前記第1の受電表示素子および前記第2の受電表示素子は、前記電子機能回路の動作において視認可能な、前記生体センサから離れた位置に配置されている、
請求項4又は5に記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項7】
前記通信アンテナと前記受電コイルとは同一平面上に配置される、
請求項1から6のいずれかに記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項8】
前記近距離無線通信用の周波数はISMバンドの周波数である、
請求項1から7のいずれかに記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項9】
前記近距離無線通信用の周波数は6.78MHz帯又は13.56MHz帯の周波数である、
請求項1から7のいずれかに記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項10】
前記通信アンテナは前記受電コイルと磁気結合する、
請求項1から9のいずれかに記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項11】
前記通信アンテナと前記受電コイルとの磁気結合の結合係数は、前記通信アンテナと前記受電コイルとの配置及び構造により定められ、0.001から0.3の範囲内に設定された、
請求項10に記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項12】
前記電力管理回路は、前記無線通信ICが起動した後に、前記受電コイルによる受電電力で前記電子機能回路を動作させる、
請求項1から11のいずれかに記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項13】
前記受電コイルによる前記受電電力を蓄電する蓄電デバイスを備える、
請求項1から12のいずれかに記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項14】
前記電力管理回路は、前記無線通信ICが起動した後に、前記蓄電デバイスからの電力で前記電子機能回路を動作させる、
請求項13に記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項15】
前記電力管理回路は、前記電子機能回路の動作が終了した後に、前記受電コイルによる前記受電電力で前記蓄電デバイスを蓄電する、
請求項13又は14に記載の電子機能回路付き電子カード。
【請求項16】
前記蓄電デバイスに対する充放電の制御を行う充放電制御回路と、前記蓄電デバイスへの充電状態を表示する充電表示素子を備え、
前記充放電制御回路は前記蓄電デバイスへの充電制御及び前記充電表示素子の駆動を行う、
請求項13から15のいずれかに記載の電子機能回路付き電子カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体認証回路などの電子機能回路を備える電子機能回路付き電子カードに関する。
【背景技術】
【0002】
生体認証回路などの電子機能回路を有する電子カードは、カードリーダーにかざして、ワイヤレスで通信し、ワイヤレスで電力を受けることが要求される。
【0003】
電子機能回路付きICカードの例として、リーダーより発せられる磁場によりワイヤレス受電して、これによりリーダーとの間で送受信する指紋認証付ICカードが特許文献1に示されている。この指紋認証付ICカードは、アンテナ・コイル、外部端子、ICカードの制御処理用マイクロプロセッサ、インジケータ及び指紋認証処理制御用プロセッサから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-238126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の指紋認証付ICカードにおいて、インジケータはICカードの状態を示す。具体的には、指紋処理用プロセッサに接続されているので、指紋認証の成否に応じて点灯又は消灯を行うものと考えられる。
【0006】
ところで、リーダーにかざして、そのリーダーからワイヤレスで受電した電力で動作する電子機能回路付き電子カードは、リーダーから電力を受電して初めて所定の電子機能を実現するので、リーダーからの受電状況によって受電電力が不足すると、適正な動作がなされない場合がある。つまり、電子機能回路付き電子カードの利用者にとっては、適正な受電がなされているのか、いないのか、または、例えば電子機能回路における指紋認証が成功するのか、しないのか、分からず、操作に手間取り、大きなストレスを感じる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、通信装置などからのワイヤレス受電の状態が利用者に分かるようにして、受電の状態を安定させ、利用者が容易に受電の状態を安定させることができ、生体認証などの電子機能回路の安定した適正な動作を速やかに行えるようにした電子機能回路付き電子カードを提供することにある。
【0008】
本開示の一例としての電子機能回路付き電子カードは、
近距離無線通信用の通信アンテナと、当該通信アンテナに電気的に接続された無線通信ICと、受電コイルと、当該受電コイルと共に受電共振回路を構成する共振キャパシタと、前記受電共振回路に接続された整流平滑回路と、受電表示素子と、前記受電共振回路からの電力を管理する電力管理回路と、前記受電共振回路からの電力で動作する電子機能回路と、を備え、
前記無線通信ICは近距離無線通信を実行し、
前記受電コイルは前記近距離無線通信用の周波数の磁界より電力を受電し、
前記電子機能回路は、前記受電共振回路からの受電電力で動作し、
前記通信アンテナ及び前記受電コイルは、前記近距離無線通信用の周波数で共鳴する電磁界エネルギーを共有し、
前記電力管理回路は、前記共鳴する電磁界エネルギーから前記受電コイルにより電力を受電した場合に、前記受電表示素子を駆動することで、受電状況を利用者へ示す、ことを特徴とする。
【0009】
上記構成により、受電コイルにより受電した場合に、受電表示素子が表示されることで利用者は受電状況を把握できる。
【0010】
本発明によれば、通信装置などからのワイヤレス受電の状態を利用者が容易に把握でき、十分な電力が得られる電子カードの配置を利用者に促し、利用者は容易に受電の状態を安定させることができ、電子機能回路の安定した適正な動作を速やかに行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)、図1(B)は、第1の実施形態に係る電子機能回路付き電子カードにおける主要部の構成及びそれらの配置例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る電子機能回路付き電子カード101Aの回路構成を示すブロック図である。
図3図3は電子機能回路付き電子カード101A,101Bの動作シーケンスを示す図である。
図4図4は第2の実施形態に係る電子機能回路付き電子カード102及び送電装置の構成を示す図である。
図5図5は第2の実施形態に係る電子機能回路付き電子カード102の回路構成を示すブロック図である。
図6図6は第3の実施形態に係る、直流共鳴送電装置と電子機能回路付き電子カード内の受電部との回路構成を示す図である。
図7図7は、特に図6中の電力変換回路72、共鳴調整回路71R,21R、及び整流平滑回路22の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0013】
《第1の実施形態》
図1(A)、図1(B)は、第1の実施形態に係る電子機能回路付き電子カードにおける主要部の構成及びそれらの配置例を示す図である。 図1(A)に示す電子機能回路付き電子カード101A、図1(B)に示す電子機能回路付き電子カード101Bは、通信アンテナ11、受電コイル21L、指紋センサ31、受電表示素子51,52を備える。
【0014】
通信アンテナ11は、例えばNFC(Near field communication)リーダライタの通信アンテナと磁界結合する。受電コイル21Lは送電装置の送電コイルやリーダライタの通信アンテナと磁界結合する。通信アンテナ11と受電コイル21Lとは同一平面上に配置されている。
【0015】
指紋センサ31は、この電子機能回路付き電子カード101A,101Bを持つユーザーの指紋を検知する。受電表示素子51,52は、指紋センサ31に利用者の指が接する状態でも指や手の甲で隠れない、視認可能な位置に配置されている。
【0016】
電子機能回路付き電子カード101Aでは、通信アンテナ11と受電コイル21Lとが、それぞれ独立したコイル開口を有するように配置されている。電子機能回路付き電子カード101Bでは、通信アンテナ11及び指紋センサ31が受電コイル21Lのコイル開口の内側に配置されている。また、受電コイル21Lの全体に重なる磁性シート60が配置されている。つまり、通信アンテナ11及び受電コイル21Lの磁路の一部を構成する共用の磁性シート60を備える。この構成により、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの結合係数を適正に定めやすい。通信アンテナ11と受電コイル21Lとの磁気結合の適正な結合係数は、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの配置及び構造により定められ、0.001から0.3の範囲内に設定されることが好ましい。このように通信アンテナ11と受電コイル21Lとが適度に結合することにより、受電コイル21Lだけでなく、通信アンテナ11を受電に利用でき、また、通信アンテナ11だけでなく、受電コイル21Lを通信に用いることができる。
【0017】
以上に示した電子機能回路付き電子カード101A,101Bは、通信アンテナ11と受電コイル21Lとは磁気的に結合し、いずれもNFCの周波数帯で動作する。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係る電子機能回路付き電子カード101Aの回路構成を示すブロック図である。電子機能回路付き電子カード101Bについても回路構成は図2に示すとおりである。
【0019】
電子機能回路付き電子カード101Aは、NFC用の通信アンテナ11と、この通信アンテナ11に電気的に接続されたNFC-IC13と、通信アンテナ11に磁気結合する受電コイル21Lと、この受電コイル21Lと共に受電共振回路21を構成する共振キャパシタ21Cと、受電共振回路21に接続された整流平滑回路22と、受電コイル21Lによる電力で動作する、指紋センサ31及び指紋認証MCU30と、を備える。電子機能回路付き電子カード101Aは、さらに、電力管理MCU20を備える。上記NFCは本発明に係る「近距離無線通信」に対応する。また、上記NFC-IC13は本発明に係る「無線通信IC」に対応する。
【0020】
電子機能回路付き電子カード101Aは、NFCリーダライタや直流共鳴送電装置にかざすことにより使用される。NFC用の周波数帯は、6.78MHz帯、13.56MHz帯などのISMバンド(産業科学医療用バンド)の周波数帯、または2.4GHz帯、5.7GHz帯、920MHz帯の周波数帯である。
【0021】
通信アンテナ11及び受電コイル21Lは上記NFC用の同一の周波数帯に応答する。NFC-IC13はNFC通信を実行する。受電コイル21LはNFC通信の信号の電力を受電する。指紋認証MCU30は、NFC-IC13が起動した後に、受電コイル21Lによる受電電力で指紋センサ31を動作させる。通信アンテナ11及び受電コイル21Lは、通信アンテナ11と受電コイル21Lとの磁気結合により、NFC通信の周波数帯で共鳴する電磁界エネルギーを共有する。
【0022】
通信アンテナ11とNFC-IC13との間にフィルタ回路12が設けられている。このフィルタ回路12は、通信における電磁雑音を低減するために、通信アンテナ11からみた入力インピーダンスを高くするための回路である。通信アンテナ11からみた入力インピーダンスがハイインピーダンスであると、通信アンテナ11が得る電磁界エネルギーは大きく減衰し、通信アンテナ11が得る電磁界エネルギーを電力として利用することは困難である。一方、受電コイル21Lは、共振キャパシタ21Cと電気的に接続され、受電共振回路21を構成し、受電コイル21Lからみた入力インピーダンスは小さく設計され、入力インピーダンスはローインピーダンスとなる。このため、受電コイル21Lが得る電磁界エネルギーは減衰が少なく、受電コイル21Lが得る電磁界エネルギーを電力として利用することが可能となる。
【0023】
電力管理MCU20は、整流平滑回路22から受電の有無を示す受電通知信号を受け、整流平滑回路22の整流制御を行う。また、電圧変換回路23に動作制御信号を与え、電圧変換回路23から電圧変換回路23の状態を示す利用情報を受け取る。また、NFC-IC13から通信通知信号を受ける。さらに、NFC-IC13から、NFC-IC13の状態を示す利用情報を受け取る。また、電力管理MCU20は指紋認証MCU30からその状態を示す利用情報を受け取る。
【0024】
電力管理MCU20は、図2中に示すように、電力管理に関する学習機能のための処理、データ処理、タイミング管理の処理等を行い、それら利用データの記憶部を備える。
【0025】
電力管理MCU20は、受電コイル21Lによる受電に対する学習機能を備え、NFC-IC13は指紋認証の動作タイミングを調整する。例えば、電子機能回路付き電子カード101Aをリーダライタにかざして、受電を開始してから、または電圧変換回路23から規定電圧が出力されてから、実際に指紋認証が完了するまでに要する時間を記録し、指紋認証MCU30に対する問い合わせ(認証結果の読み取り)までの適正な時間を統計的に学習する。このことにより、指紋認証の結果が出た直後のタイミングで指紋認証MCUへ問い合わせを行うことになり、指紋認証MCU30への無駄な問い合わせを何度も行うことが回避され、無駄な電力消費も回避される。
【0026】
指紋認証MCU30とNFC-IC13とは認証に関する通知を行う。指紋認証MCU30は、図2中に示すように、指紋画像の採取、画像処理、認証処理等を行い、認証処理に用いる指紋登録情報の記憶部を備える。
【0027】
整流平滑回路22の出力部には、抵抗R1、LED1及びツェナーダイオードZD1による、受電表示回路が設けられている。また、電圧変換回路23の出力部には、抵抗R2、LED2及びツェナーダイオードZD2による、受電表示回路が設けられている。LED1,LED2は本発明に係る「受電表示素子」に対応する。
【0028】
電子機能回路付き電子カード101Aをリーダライタに近接させると、受電共振回路21はリーダライタから電力を受電するので、整流平滑回路22の出力電圧が上昇する。この電圧が、(ツェナーダイオードZD1のツェナー電圧-LED1の順方向降下電圧)を超えるとLED1が点灯する。つまり、受電表示素子51が点灯する。このLED1が点灯する電圧が整流平滑回路22から出力される条件は、指紋認証MCU30及び指紋センサ31が動作するに要する電圧に満たなくても、とにかく受電がなされたと見なせる条件である。
【0029】
電子機能回路付き電子カード101Aをリーダライタの適切な位置に正しくかざすと、電圧変換回路23の出力電圧が規定値に達する。電圧変換回路23の出力電圧が、(ツェナーダイオードZD2のツェナー電圧-LED2の順方向降下電圧)を超えるとLED2が点灯する。つまり、受電表示素子52が点灯する。このLED2が点灯する電圧が電圧変換回路23から出力される条件は、指紋認証MCU30が動作可能となる電圧に達する条件である。
【0030】
このように、受電表示素子51,52は受電コイル21Lによる受電の強度を通知する。したがって、利用者は、電子機能回路付き電子カード101Aをリーダライタに近接させたとき、電子機能回路付き電子カード101Aの受電表示素子51(LED1)が点灯することを視認することで、受電状態にあることを確認でき、続いて受電表示素子52(LED2)が点灯するように、電子機能回路付き電子カード101Aのかざす位置を微調整することができる。
【0031】
図3は上記電子機能回路付き電子カード101A,101Bの動作シーケンスを示す図である。
【0032】
先ず、リーダライタから読み取りコマンドが発せられる。電子機能回路付き電子カードのNFC-IC13は、その読み取りコマンドを受けて、指紋認証MCU30へ指紋認証のためのコマンドを発する。これにより、指紋認証MCU30は指紋センサ31へREADコマンドを発し、指紋センサ31から指紋の画像情報を受ける。指紋認証MCU30は、その指紋情報が本人のものであるか否か照合し、OKであるかNGであるかの結果をNFC-IC13へ返す。そして、NFC-IC13はリーダライタへ認証結果を返す。
【0033】
もし、指紋センサ31の動作に要する十分な電力を受電できていなければ、指紋認証MCU30はNFC-IC13へNG(Time Out)を返す。これにより、NFC-IC13はリーダライタへNG(Time Out)を返す。
【0034】
指紋センサ31の動作に要する十分な電力を受電できていなければ、指紋認証を失敗するが、実際には、利用者は受電表示素子51だけでなく、受電表示素子52も点灯するように、電子機能回路付き電子カード101A,101Bをリーダライタに適切な配置で、適当な時間をもって、速やかにかざすので、上記NGとなる可能性は著しく低く、リトライに要する時間も回避できる。
【0035】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、蓄電デバイスを備える電子機能回路付き電子カードについて例示する。
【0036】
図4は第2の実施形態に係る電子機能回路付き電子カード102及び送電装置の構成を示す図である。電子機能回路付き電子カード102は通信アンテナ11、受電コイル21L、指紋認証MCU30、指紋センサ31、WPT(Wireless Power Transfer)/充放電回路71、受電表示素子50及び充電表示素子54を備える。図中の「コンタクト」は金属端子コネクタである。電子機能回路付き電子カード102は非接触カード(リーダライタや送電装置等にかざすカード)であるが、このコンタクトを通した接触通信も可能としている。
【0037】
送電装置としては、NFCリーダライタ、NFC機能を有するスマートフォン、直流共鳴送電装置等がある。受電コイル21Lは、これら通信装置のアンテナや送電装置のコイルと磁気的に結合して受電する。
【0038】
図5は第2の実施形態に係る電子機能回路付き電子カード102の回路構成を示すブロック図である。この電子機能回路付き電子カード102は蓄電デバイス40と充放電制御回路41を備える。充放電制御回路41は電圧変換回路23の出力電圧を入力して蓄電デバイス40の充放電の制御を行う。電力管理MCU20は充放電制御回路41に対して充放電のための制御信号を与える。図5に示す、共振キャパシタ21C、整流平滑回路22、電圧変換回路23及び充放電制御回路41によって、図4に示したWPT/充放電回路71が構成されている。 指紋認証MCU30及び指紋センサ31は、電圧変換回路23の出力電圧又は充放電制御回路41からの放電出力電圧で動作する。
【0039】
指紋認証MCU30は、NFC-IC13が起動した後に、受電コイル21Lによる受電電力で指紋センサ31を動作させる。または、NFC-IC13が起動した後に、蓄電デバイス40からの電力で指紋センサ31を動作させる。
【0040】
整流平滑回路22の出力部には、抵抗R1、LED1及びツェナーダイオードZD1による、受電表示回路が設けられている。また、指紋認証MCU30の出力(指紋センサ31の入力)には、抵抗R3、LED3及びツェナーダイオードZD3による、受電表示回路が設けられている。LED1,LED3は図4に示す受電表示素子50に対応する。LED1は緑色LEDであり、LED3は青色LEDである。受電表示素子50はLED1とLED3の混合色が表示される。したがって、単に受電がなされて、まだ指紋認証が行われようとする前は、受電表示素子50は緑色表示する。その後、指紋認証MCU30が指紋センサ31を動作させるための電圧を指紋センサ31へ出力したとき、受電表示素子50は、緑色と青色の混合色であるシアン色表示する。
【0041】
電力管理MCU20は整流平滑回路22から受電通知を受けると、充放電制御回路41を有効化する。充放電制御回路41は、電圧変換回路23の出力電圧が、蓄電デバイス40の充電に要する電圧に達しなければ、蓄電デバイス40の電力を指紋認証MCU30へ供給する。
【0042】
電力管理MCU20は、指紋認証MCU30の動作が終了したことを検知すれば、充放電制御回路41へ充電のための制御信号を出力する。これにより、充放電制御回路41は、電圧変換回路23の出力電圧が、蓄電デバイス40の充電に要する電圧を超えていれば、蓄電デバイス40を充電する。このように、電力管理MCU20は、指紋認証MCU30の動作が終了した後に、充放電制御回路41を制御して受電コイル21Lによる受電電力を蓄電デバイス40に蓄電する。
【0043】
充放電制御回路41には、抵抗R4、LED4及びツェナーダイオードZD4による、充電表示回路が設けられている。充放電制御回路41は、蓄電デバイス40の充電を行う条件で、上記充電表示回路へ規定の電圧を出力してLED4を点灯させる。LED4は図4に示す充電表示素子54に対応する。
【0044】
その他の構成は図2に示した電子機能回路付き電子カード101Aと同じである。
【0045】
本実施形態によれば、受電表示素子50によって受電の強度が利用者に通知されるので、利用者はリーダライタに対する電子機能回路付き電子カード102のかざす位置の調整を容易に行える。また、受電表示素子50によって、指紋認証が行われる段階であることが利用者に通知されるので、指紋認証時の指先の静止や挟持力の安定化等を容易に行うことができ、そのことにより、指紋認証が速やかになされる。
【0046】
また、本実施形態によれば、指紋認証後の充電表示素子54の表示によって、蓄電デバイス40への充電状態を把握できるので、利用者は指紋認証が完了したことを容易に把握でき、その後の操作を速やかに行うことができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、図4に示したNFCリーダライタやスマートフォンからの受電電力で蓄電デバイス40の充電が可能であり、NFCリーダライタやスマートフォンからの受電電力が小さくても、生体認証が可能となる。
【0048】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、直流共鳴送電装置と電子機能回路付き電子カード内の受電部の回路構成の例について示す。
【0049】
図6は第3の実施形態に係る、直流共鳴送電装置と電子機能回路付き電子カード内の受電部との回路構成を示す図である。図7は、特に図6中の電力変換回路72、共鳴調整回路71R,21R、及び整流平滑回路22の回路構成を示す図である。
【0050】
図6において、送電装置は直流電源Viと、この直流電源Viの電圧を変換する電圧変換回路73と、送電コイル71L及び共鳴調整回路71Rに対して交番電力を供給する電力変換回路72及びその電力管理回路70とを備える。
【0051】
図6において、電子機能回路付き電子カードは、図4等で既に示したとおり、受電コイル21L、共鳴調整回路21R、整流平滑回路22、電圧変換回路23及び電力管理MCU20を備える。抵抗Roは指紋認証MCU等の負荷回路である。
【0052】
送電コイル71L及び共鳴調整回路71Rによる送電側の共振回路と、受電コイル21L及び共鳴調整回路21Rによる受電側の共振回路と、によって共鳴フィールドが構成される。
【0053】
図7に示す例では、等価的に第1スイッチング素子Q1、ダイオードDds1及びキャパシタCds1の並列接続回路で構成される第1スイッチ回路S1と、等価的に第2スイッチング素子Q2、ダイオードDds2及びキャパシタCds2の並列接続回路で構成される第2スイッチ回路S2と、スイッチング素子Q1,Q2の制御を行う図外のスイッチング制御回路と、共振キャパシタCrと、を備える。共振キャパシタCrは図6に示した共鳴調整回路71Rの例であり、送電コイル71Lと共振キャパシタCrとで送電共振回路が構成されている。
【0054】
第1スイッチ回路S1の第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチ回路S2の第2スイッチング素子Q2は交互にオン/オフされる。
【0055】
スイッチング制御回路は第1スイッチング素子Q1及び第2スイッチング素子Q2を所定の動作周波数で、相補的に交互にスイッチングすることで、直流電圧を送電共振回路に断続的に与えて、送電コイル71Lに共振電流を発生させる。これにより、第1スイッチ回路S1及び第2スイッチ回路S2の両端電圧を方形波または台形波状の電圧波形とする。例えばNFC通信で用いられる13.56MHzでスイッチング動作させる。
【0056】
電子機能回路付き電子カード内の受電回路は、受電コイル21Lと共振キャパシタCrsによる受電共振回路と整流平滑回路22とを備える。整流平滑回路22は、ダイオードDds3及びキャパシタCds3の並列接続回路と、ダイオードDds4及びキャパシタCds4の並列接続回路とを備える。
【0057】
ダイオードDds3,Dds4は、受電コイル21Lと共振キャパシタCrsによる受電共振回路に発生する電圧を整流し、キャパシタCoはその電圧を平滑する。この例では、受電コイル21Lと共振キャパシタCrsとは受電共振回路を構成している。そして、上記送電共振回路と受電共振回路とが共鳴する。
【0058】
以上に示したように直流共鳴によるワイヤレス給電によって、送電装置は高出力でワイヤレス送電でき、電子機能回路付き電子カードは大きな電力を受電することができる。また、蓄電デバイスを短時間で充電することが可能となる。
【0059】
最後に、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【0060】
例えば、以上に示した各実施形態では、電子機能回路付き電子カードの利用者の指紋を認証する機能を有する電子機能回路付き電子カードを例示したが、指紋以外に、指静脈認証、カメラ画像による認証、声による認証等で生体認証を行う場合にも同様に適用できる。
【0061】
また、例えば、生体認証以外に、加速度、温湿度、照度、音量等の電子機能を有する電子機能回路付き電子カードにも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
Cds1,Cds2,Cds3,Cds4,Co…キャパシタ
Cr,Crs…共振キャパシタ
Dds1,Dds2,Dds3,Dds3,Dds4…ダイオード
20…電力管理MCU
30…指紋認証MCU
Q1…第1スイッチング素子
Q2…第2スイッチング素子
R1,R2,R3,R4,Ro…抵抗
S1…第1スイッチ回路
S2…第2スイッチ回路
Vi…直流電源
ZD1,ZD2,ZD3,ZD4…ツェナーダイオード
11…通信アンテナ
12…フィルタ回路
13…NFC-IC
20…電力管理MCU
21…受電共振回路
21C…共振キャパシタ
21L…受電コイル
21R…共鳴調整回路
22…整流平滑回路
23…電圧変換回路
30…指紋認証MCU
31…指紋センサ
40…蓄電デバイス
41…充放電制御回路
50,51,52…受電表示素子
54…充電表示素子
60…磁性シート
70…電力管理回路
71…WPT/充放電回路
71L…送電コイル
71R…共鳴調整回路
72…電力変換回路
73…電圧変換回路
101A,101B,102…電子機能回路付き電子カード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7