(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】超音波発生装置、振動子、および、物体検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/521 20060101AFI20240402BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20240402BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20240402BHJP
G01S 15/931 20200101ALN20240402BHJP
【FI】
G01S7/521 A
H04R1/40 330
H04R17/00 332Y
G01S15/931
(21)【出願番号】P 2022554115
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036290
(87)【国際公開番号】W WO2022071522
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2020167922
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅江 一平
(72)【発明者】
【氏名】井奈波 恒
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-043957(JP,A)
【文献】特表2020-501678(JP,A)
【文献】特開2003-202370(JP,A)
【文献】特開昭55-126876(JP,A)
【文献】特開2017-021034(JP,A)
【文献】特開2000-028716(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104090266(CN,A)
【文献】特開昭61-294998(JP,A)
【文献】特開昭61-114178(JP,A)
【文献】特開昭58-156295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/18 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧が印加されると圧電効果により振動して超音波を発生する圧電体、および、前記圧電体の表面の異なる領域に設けられた3つ以上の電極を備える振動子と、
発生させる超音波の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、前記3つ以上の電極から、前記超音波発生指示における指向性に対応する、交流電圧を印加する電極である
2つ以上の電圧印加電極と、グランド電位にする電極である
1つのグランド電極と、の組み合わせを選択して、前記電圧印加電極に交流電圧を印加して超音波を発生させる制御を行う制御部と、を備える超音波発生装置。
【請求項2】
前記3つ以上の電極のうち、前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせと、発生する超音波の指向性と、の対応関係情報を記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、前記対応関係情報を参照して前記超音波を発生させる制御を行う、請求項1に記載の超音波発生装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記対応関係情報として、前記3つ以上の電極のうち、2つ以上の指向性の超音波を発生させる場合の前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせと、前記2つ以上の指向性と、の対応関係情報を記憶しており、
前記制御部は、発生させる超音波の2つ以上の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、前記対応関係情報を参照し、前記3つ以上の電極から、前記超音波発生指示における2つ以上の指向性に対応する前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせを選択して、前記電圧印加電極に交流電圧を印加して2つ以上の指向性の超音波を発生させる制御を行う、請求項2に記載の超音波発生装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記2つ以上の指向性を持つ超音波を同時送信する、請求項3に記載の超音波発生装置。
【請求項5】
前記電極は4つ以上であって、4つ以上の
前記電極のうち、前記圧電体の第1の面に少なくとも
3つ以上の電極が
一直線上の配置以外の配置で配されるとともに、前記第1の面と対向する第2の面
に1つの電極が配され、
前記制御部は、前記第1の面に配された
3つ以上の前記電極のうち少なくとも1以上の電極を前記電圧印加電極として選択するとともに、前記第2の面に配された電極を前記グランド電極として選択し、
前記制御部は、前記第1の面に配された
3つ以上の前記電極のうち前記電圧印加電極とする電極を切り替えることにより、発生する超音波の指向性を制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超音波発生装置。
【請求項6】
前記3つ以上の電極のうち、前記圧電体の第1の面に少なくとも2
つ以上の電極が配されるとともに、前記第1の面と対向する第2の面
に1つの電極が配され、
前記第2の面に配された前記電極の面積は、前記第1の面に配された2つ以上の前記電極の面積の合計以上であり、
前記制御部は、前記第1の面に配された
2つ以上の電極のうち少なくとも1以上の電極を前記電圧印加電極として選択するとともに、前記第2の面に配された電極を前記グランド電極として選択し、
前記制御部は、前記第1の面に配された電極のうち前記電圧印加電極とする電極を切り替えることにより、発生する超音波の指向性を制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超音波発生装置。
【請求項7】
交流電圧が印加されると圧電効果により振動して超音波を発生する圧電体と、
前記圧電体の表面の異なる領域に設けられた3つ以上の電極であって、選択される、交流電圧を印加する電極である
2つ以上の電圧印加電極とグランド電位にする電極である
1つのグランド電極との組み合わせによって、発生する超音波の指向性が異なる、前記3つ以上の電極と、を備える振動子。
【請求項8】
送信部にて振動子から超音波を送信し、受信部にて前記振動子により前記超音波の反射波を受信する物体検出装置において、
前記振動子は、
交流電圧が印加されると圧電効果により振動して超音波を発生する圧電体と、
前記圧電体の表面の異なる領域に設けられた3つ以上の電極であって、選択される、交流電圧を印加する電極である
2つ以上の電圧印加電極とグランド電位にする電極である
1つのグランド電極との組み合わせによって、発生する超音波の指向性が異なる、前記3つ以上の電極と、を備え、
前記送信部は、前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせを変更する切替部を備え、
前記受信部は、増幅回路およびフィルタ処理部を備え、
前記フィルタ処理部は、送信信号の周波数に関する情報を取得し、受信信号に対して当該送信信号の周波数と整合をとるような周波数の補正を行う、物体検出装置。
【請求項9】
前記3つ以上の電極のうち、前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせと、発生する超音波の指向性と、の対応関係情報を記憶する記憶部を備え、
前記送信部は、前記対応関係情報を参照して前記切替部を制御して前記振動子から超音波を送信する、請求項
8に記載の物体検出装置。
【請求項10】
前記記憶部は、前記対応関係情報として、前記3つ以上の電極のうち、2つ以上の指向性の超音波を発生させる場合の前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせと、前記2つ以上の指向性と、の対応関係情報を記憶しており、
前記送信部は、発生させる超音波の2つ以上の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、前記対応関係情報を参照し、前記3つ以上の電極から、前記超音波発生指示における2つ以上の指向性に対応する前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせを選択して、前記電圧印加電極に交流電圧を印加して2つ以上の指向性の超音波を発生させるように前記切替部を制御して前記振動子から超音波を送信する、請求項
9に記載の物体検出装置。
【請求項11】
前記送信部は、2つ以上の指向性の超音波を、周波数、位相および振幅の少なくともいずれかを異ならせて発生させる制御を行い、
前記受信部は、その直後に前記振動子を介して超音波を検出した場合に、検出した超音波の周波数、位相および振幅のうち異ならせたものに基づいて、当該超音波が前記2つ以上の指向性の超音波のいずれの反射波であったのかを特定する、請求項
8に記載の物体検出装置。
【請求項12】
前記送信部は、前記2つ以上の指向性を持つ超音波を同時送信し、
前記受信部は、その直後に前記振動子を介して超音波を検出した場合に、検出した超音波の周波数、位相および振幅のうち異ならせたものに基づいて、当該超音波が前記2つ以上の指向性の超音波のいずれの反射波であったのかを特定する、請求項
11に記載の物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波発生装置、振動子、および、物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電体に対して交流電圧を印加して圧電効果により振動させて超音波を発生させる技術がある。また、超音波の指向性を調整するために、例えば、振動子(超音波センサ)の筐体に特殊な設計を行う手法がある。
【0003】
上述の手法では超音波の指向性を制御(変更)できないので、超音波の指向性を制御するために、例えば、複数の振動子を用いる手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-289939号公報
【文献】特許第4274679号公報
【文献】特許第5513706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、超音波の指向性を制御するために、複数の振動子を用いると、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本開示の課題の一つは、圧電体に対して交流電圧を印加して振動させて超音波を発生させるとともに、超音波の指向性を制御することができる超音波発生装置、振動子、および、物体検出装置を低コストで実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としての超音波発生装置は、交流電圧が印加されると圧電効果により振動して超音波を発生する圧電体、および、前記圧電体の表面の異なる領域に設けられた3つ以上の電極を備える振動子と、発生させる超音波の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、前記3つ以上の電極から、前記超音波発生指示における指向性に対応する、交流電圧を印加する電極である電圧印加電極と、グランド電位にする電極であるグランド電極と、の組み合わせを選択して、前記電圧印加電極に交流電圧を印加して超音波を発生させる制御を行う制御部と、を備える。
【0008】
このような構成により、3つ以上の電極から電圧印加電極とグランド電極の組み合わせを変えることで超音波の指向性を制御することができるので、超音波発生装置を低コストで実現できる。
【0009】
また、上述の超音波発生装置において、前記3つ以上の電極のうち、前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせと、発生する超音波の指向性と、の対応関係情報を記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記対応関係情報を参照して前記超音波を発生させる制御を行う。
【0010】
このような構成により、記憶部に記憶させた対応関係情報を用いて、3つ以上の電極から、超音波発生指示における指向性に対応する電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択することができる。
【0011】
また、上述の超音波発生装置において、前記記憶部は、前記対応関係情報として、前記3つ以上の電極のうち、2つ以上の指向性の超音波を発生させる場合の前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせと、前記2つ以上の指向性と、の対応関係情報を記憶しており、前記制御部は、発生させる超音波の2つ以上の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、前記対応関係情報を参照し、前記3つ以上の電極から、前記超音波発生指示における2つ以上の指向性に対応する前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせを選択して、前記電圧印加電極に交流電圧を印加して2つ以上の指向性の超音波を発生させる制御を行う。
【0012】
このような構成により、3つ以上の電極から電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択することで、2つ以上の指向性の超音波を発生させることができる。
【0013】
また、上述の超音波発生装置において、前記制御部は、前記2つ以上の指向性を持つ超音波を同時送信する。
【0014】
このような構成により、2つ以上の指向性を持つ超音波を同時に発生させることができる。
【0015】
また、上述の超音波発生装置において、前記3つ以上の電極のうち、前記圧電体の第1の面に少なくとも2以上の電極が配されるとともに、前記第1の面と対向する第2の面に少なくとも1以上の電極が配され、前記制御部は、前記第1の面に配された電極のうち少なくとも1以上の電極を前記電圧印加電極として選択するとともに、前記第2の面に配された電極を前記グランド電極として選択し、前記制御部は、前記第1の面に配された電極のうち前記電圧印加電極とする電極を切り替えることにより、発生する超音波の指向性を制御する。
【0016】
このような構成により、対向する2面に電極を配置することで、3面以上に電極を配置する場合と比較して指向性を制御しやすくなり、設計コストを低減できる。
【0017】
また、本開示の一例としての振動子は、交流電圧が印加されると圧電効果により振動して超音波を発生する圧電体と、前記圧電体の表面の異なる領域に設けられた3つ以上の電極であって、選択される、交流電圧を印加する電極である電圧印加電極とグランド電位にする電極であるグランド電極との組み合わせによって、発生する超音波の指向性が異なる、前記3つ以上の電極と、を備える。
【0018】
このような構成により、3つ以上の電極から電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを変えることで超音波の指向性を制御することができる振動子を低コストで実現できる。
【0019】
また、本開示の一例としての物体検出装置は、送信部にて振動子から超音波を送信し、受信部にて前記振動子により前記超音波の反射波を受信する物体検出装置において、前記振動子は、交流電圧が印加されると圧電効果により振動して超音波を発生する圧電体と、前記圧電体の表面の異なる領域に設けられた3つ以上の電極であって、選択される、交流電圧を印加する電極である電圧印加電極とグランド電位にする電極であるグランド電極との組み合わせによって、発生する超音波の指向性が異なる、前記3つ以上の電極と、を備え、前記送信部は、前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせを変更する切替部を備え、前記受信部は、増幅回路およびフィルタ処理部を備え、前記フィルタ処理部は、送信信号の周波数に関する情報を取得し、受信信号に対して当該送信信号の周波数と整合をとるような周波数の補正を行う。
【0020】
このような構成により、3つ以上の電極から電圧印加電極とグランド電極の組み合わせを変えることで超音波の指向性を制御することができる物体検出装置を低コストで実現できる。
【0021】
また、上述の物体検出装置において、前記3つ以上の電極のうち、前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせと、発生する超音波の指向性と、の対応関係情報を記憶する記憶部を備え、前記送信部は、前記対応関係情報を参照して前記切替部を制御して前記振動子から超音波を送信する。
【0022】
このような構成により、記憶部に記憶させた対応関係情報を用いて、3つ以上の電極から、超音波発生指示における指向性に対応する電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択することができる。
【0023】
また、上述の物体検出装置において、前記記憶部は、前記対応関係情報として、前記3つ以上の電極のうち、2つ以上の指向性の超音波を発生させる場合の前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせと、前記2つ以上の指向性と、の対応関係情報を記憶しており、前記送信部は、発生させる超音波の2つ以上の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、前記対応関係情報を参照し、前記3つ以上の電極から、前記超音波発生指示における2つ以上の指向性に対応する前記電圧印加電極と前記グランド電極との組み合わせを選択して、前記電圧印加電極に交流電圧を印加して2つ以上の指向性の超音波を発生させるように前記切替部を制御して前記振動子から超音波を送信する。
【0024】
このような構成により、3つ以上の電極から電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択することで、2つ以上の指向性の超音波を発生させることができる。
【0025】
また、上述の物体検出装置において、前記送信部は、前記2つ以上の指向性の超音波を、周波数、位相および振幅の少なくともいずれかを異ならせて発生させる制御を行い、前記受信部は、その直後に前記振動子を介して超音波を検出した場合に、検出した超音波の周波数、位相および振幅のうち異ならせたものに基づいて、当該超音波が前記2つ以上の指向性の超音波のいずれの反射波であったのかを特定する。
【0026】
このような構成により、2つ以上の指向性の超音波の反射波を検出した場合に、周波数や位相や振幅に基づいて、反射波が2つ以上の指向性の超音波のいずれの反射波であるのかを特定することができる。
【0027】
また、上述の物体検出装置において、前記送信部は、前記2つ以上の指向性を持つ超音波を同時送信し、前記受信部は、その直後に前記振動子を介して超音波を検出した場合に、検出した超音波の周波数、位相および振幅のうち異ならせたものに基づいて、当該超音波が前記2つ以上の指向性の超音波のいずれの反射波であったのかを特定する。
【0028】
このような構成により、2つ以上の指向性を持つ超音波を同時に発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、第1実施形態の物体検出システムを備えた車両を上方から見た外観の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のECUおよび物体検出装置の概略的なハードウェア構成を模式的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の振動子の概観を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の振動子から発生する超音波の指向性の説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の物体検出装置が物体までの距離を検出するために利用する技術の概要の説明図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の物体検出装置の詳細な構成を模式的に示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の指向性対応情報を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の物体検出システムが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態の送信波対応情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施形態(第1実施形態、第2実施形態)について図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、あくまで一例であって、本発明は以下の記載内容に限定されるものではない。
【0031】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の物体検出システムを備えた車両を上方から見た外観の模式図である。第1実施形態の物体検出システムは、超音波の送受信を行い、当該送受信の時間差などを利用することで、周囲に存在する物体(例えば後述する
図2に示される障害物O)に関する情報を検知する車載センサシステムである。
【0032】
より具体的には、
図1に示されるように、第1実施形態の物体検出システムは、車載制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100と、車載ソナーとしての物体検出装置201~204と、を備えている。ECU100は、一対の前輪3Fと一対の後輪3Rとを含んだ四輪の車両1の内部に搭載されており、物体検出装置201~204は、車両1の外装に搭載されている。
【0033】
図1に示される例では、一例として、物体検出装置201~204が、車両1の外装としての車体2の後端部(リヤバンパ)において、互いに異なる位置に設置されているが、物体検出装置201~204の設置位置は、
図1に示される例に限定されるものではない。例えば、物体検出装置201~204は、車体2の前端部(フロントバンパ)に設置されてもよいし、車体2の側面部に設置されてもよいし、後端部、前端部、および側面部のうち2つ以上に設置されてもよい。
【0034】
なお、第1実施形態において、物体検出装置201~204が有するハードウェア構成および機能は、それぞれ同一である。したがって、以下では、説明の簡潔化のため、物体検出装置201~204を総称して「物体検出装置200」(超音波発生装置の一例)と記載することがある。また、第1実施形態において、物体検出装置200の個数は、
図1に示されるような4つに限定されるものではない。
【0035】
図2は、第1実施形態のECU100および物体検出装置200の概略的なハードウェア構成を模式的に示すブロック図である。
【0036】
図2に示されるように、ECU100は、通常のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。より具体的に、ECU100は、入出力装置110と、記憶装置120と、プロセッサ130と、を備えている。
【0037】
入出力装置110は、ECU100と外部(
図1に示される例では物体検出装置200)との間における情報の送受信を実現するためのインターフェースである。
【0038】
記憶装置120は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などといった主記憶装置、および/または、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などといった補助記憶装置を含んでいる。
【0039】
プロセッサ130は、ECU100において実行される各種の処理を司る。プロセッサ130は、例えばCPU(Central Processing Unit)などといった演算装置を含んでいる。プロセッサ130は、記憶装置120に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、例えば自動駐車などといった各種の機能を実現する。
【0040】
一方、
図2に示されるように、物体検出装置200は、送受波器210と、制御部220と、を備えている。
【0041】
送受波器210は、圧電素子などにより構成された振動子211(超音波センサの一例)と、切替部212と、を有しており、振動子211により、超音波の送受信を行う。
【0042】
より具体的には、送受波器210は、振動子211の振動に応じて発生する超音波を送信波として送信し、当該送信波として送信された超音波が外部に存在する物体で反射されて戻ってくることでもたらされる振動子211の振動を受信波として受信する。
図2に示される例では、送受波器210からの超音波を反射する物体として、路面RS上に設置された障害物Oが例示されている。
【0043】
ここで、
図3は、第1実施形態の振動子211の概観を示す模式図である。振動子211は、9枚(3×3枚)の上部電極4a~4i(第1の面に配された電極)と、配線5a~5iと、圧電体6と、下部電極7(第2の面に配された電極)と、配線8と、を備える。なお、9枚の上部電極4a~4iと下部電極7は、3つ以上の電極の一例であり、以下では合わせて「10枚の電極」とも称する。また、配線5a~5iと配線8を「10本の配線」とも称する。
【0044】
9枚の上部電極4a~4iは、圧電体6の上部側の表面の異なる領域に設けられ、互いに電気的に絶縁されている。配線5a~5iは、それぞれ、上部電極4a~4iに対して設けられている。
【0045】
圧電体6は、交流電圧が印加されると圧電効果により振動して超音波を発生する。
【0046】
下部電極7は、圧電体6の下部側の表面に設けられている。配線8は、下部電極7に対して設けられている。
【0047】
つまり、
図3の例は、3つ以上の電極のうち、圧電体6の第1の面に少なくとも2以上の電極が配されるとともに、第1の面と対向する第2の面に少なくとも1以上の電極が配される場合の一例である。この場合、プロセッサ223は、第1の面に配された電極のうち少なくとも1以上の電極を電圧印加電極として選択するとともに、第2の面に配された電極をグランド電極として選択する。そして、プロセッサ223は、第1の面に配された電極のうち電圧印加電極とする電極を切り替えることにより、発生する超音波の指向性を制御する(詳細は後述)。
【0048】
図2に戻って、制御部220は、通常のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。より具体的には、制御部220は、入出力装置221と、記憶装置222と、プロセッサ223と、を備えている。
【0049】
入出力装置221は、制御部220と外部(
図1に示される例ではECU100および送受波器210)との間における情報の送受信を実現するためのインターフェースである。
【0050】
記憶装置222は、ROMやRAMなどといった主記憶装置、および/または、HDDやSSDなどといった補助記憶装置を含んでいる。記憶装置222は、例えば、指向性対応情報230を記憶する。指向性対応情報230は、10枚の電極のうち、交流電圧を印加する電極である電圧印加電極とグランド電位にする電極であるグランド電極との組み合わせと、発生する超音波の指向性と、の対応関係情報の一例である。
【0051】
ここで、
図7は、第1実施形態の指向性対応情報230を示す図である。指向性対応情報230では、超音波の出力方向や広がり方に関する情報である指向性情報ごとに、電圧印加電極とグランド電極の組み合わせが対応付けられている。一例として、上部電極4a(
図3)を電圧印加電極とし、残りの9枚の電極をグランド電極とする組み合わせが考えられる。電圧印加電極とグランド電極の組み合わせが異なれば、圧電体6に対する電圧のかかり方が異なって、圧電体6の振動する場所が異なるので、圧電体6から発生する超音波の指向性も異なる。なお、グランド電極は、複数であってもよいし、1つであってもよい。また、電圧印加電極とグランド電極のいずれでもない電極は絶縁状態にする。
【0052】
また、振動子211から発生する超音波の出力方向は、
図3において、おおよそ符号Dで示す方向である。ここで、
図4は、第1実施形態の振動子から発生する超音波の指向性の説明図である。電圧印加電極とグランド電極の組み合わせによって、圧電体6から発生する超音波の出力方向は符号D1~D3に例示するように、様々な方向に変わりえる。また、超音波の広がり方も様々に変わりえる。そして、例えば、予め実験によって、
図7に示すような指向性対応情報230を作成しておくことができる。
【0053】
図2に戻って、プロセッサ223は、制御部220において実行される各種の処理を司る。プロセッサ223は、例えばCPUなどといった演算装置を含んでいる。プロセッサ223は、記憶装置222に記憶されたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、各種の機能を実現する。
【0054】
プロセッサ223は、例えば、ECU100から、発生させる超音波の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、指向性対応情報230を参照し、10枚の電極から、超音波発生指示における指向性に対応する電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択して、電圧印加電極に交流電圧を印加して超音波を発生させる制御を行う。
【0055】
なお、電圧印加電極とグランド電極の組み合わせが決まった場合、切替部212は、プロセッサ223からの指示により、10本の配線のうち、電圧印加電極に対応する配線を電源に接続する切り替えを行うとともに、グランド電極に対応する配線をグランドに接続する切り替えを行い、さらに、その他の配線を絶縁状態とする切り替えを行う。
【0056】
第1実施形態の物体検出装置200は、いわゆるTOF(Time Of Flight)法と呼ばれる技術により、物体までの距離を検出する。TOF法とは、送信波が送信された(より具体的には送信され始めた)タイミングと、受信波が受信された(より具体的には受信され始めた)タイミングとの差を考慮して、物体までの距離を算出する技術である。
【0057】
ここで、
図5は、第1実施形態の物体検出装置200が物体までの距離を検出するために利用する技術の概要の説明図である。より具体的には、
図5は、第1実施形態の物体検出装置200が送受信する超音波の信号レベル(例えば振幅)の時間変化をグラフ形式で例示的かつ模式的に示した図である。
図5に示されるグラフにおいて、横軸は、時間に対応し、縦軸は、物体検出装置200が送受波器210(振動子211)を介して送受信する信号の信号レベルに対応する。
【0058】
図5に示されるグラフにおいて、実線L11は、物体検出装置200が送受信する信号の信号レベル、つまり振動子211の振動の度合の時間変化を表す包絡線の一例を表している。この実線L11からは、振動子211がタイミングt0から時間Taだけ駆動されて振動することで、タイミングt1で送信波の送信が完了し、その後タイミングt2に至るまでの時間Tbの間は、慣性による振動子211の振動が減衰しながら継続する、ということが読み取れる。したがって、
図5に示されるグラフにおいては、時間Tbが、いわゆる残響時間に対応する。
【0059】
実線L11は、送信波の送信が開始したタイミングt0から時間Tpだけ経過したタイミングt4で、振動子211の振動の度合が、一点鎖線L21で表される所定の閾値Th1を超えるピークを迎える。この閾値Th1は、振動子211の振動が、検知対象の物体(例えば
図2に示される障害物O)により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものか、または、検体対象外の物体(例えば
図2に示される路面RS)により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものか、を識別するために予め設定された値である。
【0060】
なお、
図5には、閾値Th1が時間経過によらず変化しない一定値として設定された例が示されているが、第1実施形態において、閾値Th1は、時間経過とともに変化する値として設定されてもよい。
【0061】
ここで、閾値Th1を超えたピークを有する振動は、検知対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。一方、閾値Th1以下のピークを有する振動は、検知対象外の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものだとみなすことができる。
【0062】
したがって、実線L11からは、タイミングt4における振動子211の振動が、検知対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信によってもたらされたものである、ということが読み取れる。
【0063】
なお、実線L11においては、タイミングt4以降で、振動子211の振動が減衰している。したがって、タイミングt4は、検知対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信が完了したタイミング、換言すればタイミングt1で最後に送信された送信波が受信波として戻ってくるタイミング、に対応する。
【0064】
また、実線L11においては、タイミングt4におけるピークの開始点としてのタイミングt3は、検知対象の物体により反射されて戻ってきた送信波としての受信波の受信が開始したタイミング、換言すればタイミングt0で最初に送信された送信波が受信波として戻ってくるタイミング、に対応する。したがって、実線L11においては、タイミングt3とタイミングt4との間の時間ΔTが、送信波の送信時間としての時間Taと等しくなる。
【0065】
上記を踏まえて、TOF法により検知対象の物体までの距離を求めるためには、送信波が送信され始めたタイミングt0と、受信波が受信され始めたタイミングt3と、の間の時間Tfを求めることが必要となる。この時間Tfは、タイミングt0と、受信波の信号レベルが閾値Th1を超えたピークを迎えるタイミングt4と、の差分としての時間Tpから、送信波の送信時間としての時間Taに等しい時間ΔTを差し引くことで求めることができる。
【0066】
また、超音波を反射した物体が、検知対象の物体(例えば
図2に示される障害物O)か、検体対象外の物体(例えば
図2に示される路面RS)かを調べるときなどに、振動子211から発生させる超音波の指向性を制御(変更)したい場合がある。
【0067】
しかしながら、超音波の指向性を制御するために、複数の超音波センサを用いると、コストが高くなるという問題がある。そこで、第1実施形態では、単一の超音波センサ(振動子211)で超音波の指向性を制御することで、低コストを実現する。
【0068】
図6は、第1実施形態の物体検出装置200の詳細な構成を模式的に示すブロック図である。なお、
図6には、送信側の構成(送信部)と受信側の構成(受信部)とが分離された状態で図示されているが、このような図示の態様は、あくまで説明の便宜のためのものである。したがって、第1実施形態では、前述したように、送信波の送信と受信波の受信との両方が単一の送受波器210により実現される。ただし、第1実施形態の技術は、送信側の構成と受信側の構成とが分離された構成にも適用可能である。
【0069】
また、第1実施形態において、
図6に示される構成のうち少なくとも一部は、ハードウェアとソフトウェアとの協働の結果、より具体的には、物体検出装置200のプロセッサ223が記憶装置222からコンピュータプログラムを読み出して実行した結果として実現される。ただし、第1実施形態では、
図6に示される構成のうち少なくとも一部が、専用のハードウェア(回路:circuitry)によって実現されてもよい。
【0070】
まず、物体検出装置200の送信側の構成について簡単に説明する。
【0071】
図6に示されるように、物体検出装置200は、送信側の構成として、送信制御部430と、送波器411と、符号生成部412と、搬送波出力部413と、乗算器414と、増幅回路415と、を備えている。
【0072】
送波器411は、前述した振動子211によって構成され、振動子211により、増幅回路415から出力される(増幅された)送信信号に応じた送信波を送信する。
【0073】
ここで、第1実施形態において、送波器411は、以下に説明する構成に基づき、送信波を、所定の符号長の識別情報を含むように符号化した上で送信する。
【0074】
符号生成部412は、例えば0または1のビットの連続からなるビット列の符号に対応したパルス信号を生成する。なお、ビット列の長さは、送信信号に付与される識別情報の符号長に対応する。符号長は、例えば
図1に示される4つの物体検出装置200の各々から送信される送信波を互いに識別可能な程度の長さに設定される。
【0075】
搬送波出力部413は、識別情報を付与する対象の信号としての搬送波を出力する。例えば、搬送波出力部413は、搬送波として、所定の周波数の正弦波を出力する。
【0076】
乗算器414は、符号生成部412からの出力と、搬送波出力部413からの出力と、を乗算することで、識別情報を付与するように搬送波を変調する。そして、乗算器414は、識別情報が付与された変調後の搬送波を、送信波のもととなる送信信号として、増幅回路415に出力する。なお、第1実施形態において、変調方式は、例えば振幅変調方式や位相変調方式などといった、一般的によく知られた複数の変調方式の単独または2以上の組み合わせが用いられうる。
【0077】
増幅回路415は、乗算器414から出力される送信信号を増幅し、増幅後の送信信号を送波器411に出力する。
【0078】
また、
図3も併せて参照し、送信制御部430(プロセッサ223)は、ECU100から、発生させる超音波の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、指向性対応情報230を参照し、10枚の電極から、超音波発生指示における指向性に対応する電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択する。そして、送信制御部430は、送波器411(振動子211)における電圧印加電極とグランド電極との組み合わせに応じて、切替部212を制御して、10本の配線のうち、電圧印加電極に対応する配線を電源に接続する切り替えを行うとともに、グランド電極に対応する配線をグランドに接続する切り替えを行い、さらに、その他の配線を絶縁状態とする切り替えを行う。
【0079】
このような構成により、第1実施形態において、送信制御部430、切替部212、符号生成部412、搬送波出力部413、乗算器414、増幅回路415、および送波器411を用いて、所定の識別情報が付与された送信波(超音波)を送信するとともに、送信派の指向性を制御することができる。
【0080】
次に、物体検出装置200の受信側の構成について簡単に説明する。
【0081】
図6に示されるように、物体検出装置200は、受信側の構成として、受波器421と、増幅回路422と、フィルタ処理部423と、相関処理部424と、包絡線処理部425と、閾値処理部426と、検出処理部427と、を備えている。
【0082】
受波器421は、前述した振動子211によって構成され、振動子211により、物体により反射された送信波を受信波として受信する。
【0083】
増幅回路422は、受波器421が受信した受信波に応じた信号としての受信信号を増幅する。
【0084】
フィルタ処理部423は、増幅回路422により増幅された受信信号にフィルタリング処理を施し、ノイズを低減する。なお、第1実施形態において、フィルタ処理部423は、送信信号の周波数に関する情報を取得し、当該送信信号の周波数と整合をとるような周波数の補正(例えば、特定の周波数を通過させるバンドパスフィルタを用いた補正や、ドップラーシフトによる周波数遷移に対する補正など)を受信信号に対してさらに施してもよい。
【0085】
相関処理部424は、例えば送信側の構成から取得される送信信号と、フィルタ処理部423によるフィルタリング処理後の受信信号と、に基づいて、送信波と受信波との識別情報の類似度に対応した相関値を取得する。相関値は、一般的によく知られた相関関数などに基づいて取得することが可能である。
【0086】
包絡線処理部425は、相関処理部424により取得された相関値に対応した信号の波形の包絡線を求める。
【0087】
閾値処理部426は、包絡線処理部425により求められた包絡線の値と、所定の閾値と、を比較する。
【0088】
検出処理部427は、閾値処理部426による比較結果に基づいて、受信波の信号レベルが閾値を超えたピークを迎えるタイミング(
図5に示されるタイミングt4)を特定し、TOF法により、物体までの距離を検出する。
【0089】
以上の構成に基づき、第1実施形態の物体検出システムは、次の
図8に示されるような処理を実行する。
図8に示される一連の処理は、例えば所定の制御周期で繰り返し実行されうる。
図8は、第1実施形態の物体検出システムが実行する処理を示すフローチャートである。
【0090】
図8に示されるように、第1実施形態では、まず、S1において、送信制御部430(
図6)は、ECU100から、発生させる超音波の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、指向性対応情報230を参照し、10枚の電極から、超音波発生指示における指向性に対応する電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択し、その組み合わせに応じて、切替部212を制御して、10本の配線のうち、電圧印加電極に対応する配線を電源に接続する切り替えを行うとともに、グランド電極に対応する配線をグランドに接続する切り替えを行い、さらに、その他の配線を絶縁状態とする切り替えを行う。
【0091】
次に、S2において、物体検出装置200の送波器411は、所定の識別情報が付与された送信波を送信する。
【0092】
次に、S3において、物体検出装置200の受波器421は、S2で送信された送信波に応じた受信波を受信する。そして、物体検出装置200の相関処理部424は、例えばECU100の制御のもとで、送信波と受信波との識別情報の類似度に応じた相関値の取得を開始する。
【0093】
次に、S5において、包絡線処理部425による処理と閾値処理部426による処理の後、検出処理部427は、TOF法により、物体までの距離を検出する。
【0094】
このように、第1実施形態の物体検出システムにおいて、振動子211と切替部212を備える送受波器210によれば、10枚の電極のうち電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを変えることで超音波の指向性を制御することができるので、超音波の指向性の制御を低コストで実現できる。
【0095】
そして、超音波の指向性を制御できるので、例えば、反射波が路面の反射波か障害物の反射波かを特定したい場合に、超音波の指向性を制御することで有力な情報を取得できる。反射波を特定できれば、後段処理においても、余計な情報(路面の反射波)に対するフィルタ処理などの時間を削減できる。
【0096】
また、上部電極4a~4i(
図3)について、9分割とし、真ん中の上部電極4eも電圧印加電極やグランド電極として選択可能としたことで、圧電体6に対する電圧のかかり方をより多様化させ、圧電体6から発生する超音波の指向性もより多様化させることができる。
【0097】
また、対向する2面に電極を配置することで、3面以上に電極を配置する場合と比較して指向性を制御しやすくなり、設計コストを低減できる。
【0098】
なお、振動子は、振動するために、所定以上のサイズが必要である。したがって、従来技術において、超音波の指向性を制御するために複数の振動子を用いる場合には、所定以上のサイズの振動子を複数用いる必要が生じ、コストが高くなる。一方、第1実施形態の技術によれば、単一の振動子211で超音波の指向性を制御できるので、低コストで済む。
【0099】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。第2実施形態では、振動子211から2つ以上の指向性の超音波を同時に発生させる場合について説明する。
【0100】
図7に示す指向性対応情報230は、10枚の電極のうち、2つ以上の指向性の超音波を発生させる場合の電圧印加電極とグランド電極との組み合わせと、その2つ以上の指向性と、の対応関係情報を記憶する。
【0101】
そして、制御部220(
図2)は、ECU100から、発生させる超音波の2つ以上の指向性の情報を含む超音波発生指示を受けた場合に、指向性対応情報230を参照し、3つ以上の電極から、超音波発生指示における2つ以上の指向性に対応する電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択して、電圧印加電極に交流電圧を印加して2つ以上の指向性の超音波を発生させる制御を行う。
【0102】
また、その場合に、制御部220は、2つ以上の指向性の超音波を、周波数と位相の少なくともいずれかを異ならせて発生させる制御を行い、その直後に送受波器210を介して超音波を検出した場合に、検出した超音波の周波数と位相のうち異ならせたものに基づいて、当該超音波が2つ以上の指向性の超音波のいずれの反射波であったのかを特定する。
【0103】
図9は、第2実施形態の送信波対応情報を示す図である。送信波対応情報は、記憶装置222(
図2)に記憶される。
図9に示すように、同時に発生させる2つの指向性の超音波を送信波1,2とすると、送信波1,2に対して、別々の周波数と位相を対応付けておく。そうすれば、制御部220は、その2つの指向性の超音波を発生させた直後に、送受波器210を介して超音波を検出した場合に、検出した超音波の周波数と位相に基づいて、当該超音波が2つの指向性の超音波のいずれの反射波であったのかを特定することができる。
【0104】
このようにして、第2実施形態によれば、3つ以上の電極から電圧印加電極とグランド電極との組み合わせを選択することで、2つ以上の指向性の超音波を同時に発生させることができる。
【0105】
また、2つ以上の指向性の超音波の反射波を検出した場合に、周波数や位相に基づいて、反射波が2つ以上の指向性の超音波のいずれの反射波であるのかを特定することができる。
【0106】
そして、2つ以上の指向性を持つ超音波を同時送信し、受信時に元の超音波を特定することで、複数の反射点が存在する障害物に対して発生するマルチパスによる信号強度の急激な低下を抑制することができる。
【0107】
以上、本開示の実施形態および変形例を説明したが、上述した実施形態および変形例はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態および変形例は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0108】
例えば、上部電極4について、上述の実施形態では全体も個別電極も矩形で9分割した例について説明したが、これに限定されない。全体や個別電極は矩形以外の形状(三角形、円形等)であってもよいし、分割数も9以外であってもよい。
【0109】
また、下部電極7を2つ以上の電極に分割してもよい。
【0110】
また、指向性対応情報230(対応関係情報)は、物体検出装置200の外部の記憶装置で記憶してもよい。
【符号の説明】
【0111】
1…車両、4…上部電極、5…配線、6…圧電体、7…下部電極、8…配線、100…ECU、200…物体検出装置、210…送受波器、211…振動子、212…切替部、220…制御部、221…入出力装置、222…記憶装置、223…プロセッサ、230…指向性対応情報