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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】エステル化合物及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/83 20060101AFI20240402BHJP
   C07C 67/14 20060101ALI20240402BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240402BHJP
   C08K 5/136 20060101ALI20240402BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20240402BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240402BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240402BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C07C69/83 CSP
C07C67/14
C08L63/00 C
C08K5/136
C08K3/00
B32B27/36
H05K3/46 T
H01L23/14 R
H01L23/30 R
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022555546
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 JP2021037068
(87)【国際公開番号】W WO2022075383
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020170110
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小椋 一郎
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-273169(JP,A)
【文献】特開平09-194431(JP,A)
【文献】特開平05-058958(JP,A)
【文献】特開平02-088635(JP,A)
【文献】特開2020-059620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A2):
【化1】
[式中、
環A及び環Aは、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し;
環Bは、それぞれ独立して、1個以上のフッ素原子で置換されたベンゼン環又はナフタレン環を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、又は-C(R -を示し;
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基、又は炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基を示し;
環Xは、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数5~10の芳香族炭素環、又はフッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数3~15の飽和炭素環を示し;
環Yは、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し;
aは、それぞれ独立して、0又は1を示し;
bは、それぞれ独立して、0~3の整数を示し;
nは、1以上の整数を示す。]
で表される化合物。
【請求項2】
環A 及び環A が、それぞれ独立して、ベンゼン環又はナフタレン環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、又は炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
環X が、それぞれ独立して、炭素原子数3~15の飽和炭素環である、請求項1~3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項5】
環Y が、それぞれ独立して、ベンゼン環又はナフタレン環である、請求項1~4の何れか1項に記載の化合物。
【請求項6】
環Bが、2個以上のフッ素原子で置換されたベンゼン環又はナフタレン環である、請求項1~5の何れか1項に記載の化合物。
【請求項7】
式(A2)で表される構造環A 、環A 、X 及び環X が合計で3個以上のフッ素原子を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の化合物。
【請求項8】
フッ素原子の含有率が、28質量%以上である、請求項1~の何れか1項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~の何れか1項に記載の化合物を含むエポキシ樹脂硬化剤。
【請求項10】
(B):
【化2】
[式中、
環A 及び環A は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、又は-C(R -を示し;
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基、又は炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基を示し;
環X は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数5~10の芳香族炭素環、又はフッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数3~15の飽和炭素環を示し;
aは、それぞれ独立して、0又は1を示し;
bは、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。
で表される化合物と、
式(C1):
【化3】
[式中、環Bは、1個以上のフッ素原子で置換されたベンゼン環又はナフタレン環を示す。
で表される化合物と、
式(D-1)又は(D-2):
【化4】
[式中、
Halは、ハロゲン原子を示し;
環Y は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示す。
で表される化合物又はその塩と、を含む混合物を反応させることを含むエステル化合物の製造方法。
【請求項11】
式(B):
【化5】
[式中、
環A 及び環A は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、又は-C(R -を示し;
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基、又は炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基を示し;
環X は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数5~10の芳香族炭素環、又はフッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数3~15の飽和炭素環を示し;
aは、それぞれ独立して、0又は1を示し;
bは、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。
で表される化合物と、
式(C1):
【化6】
[式中、環Bは、1個以上のフッ素原子で置換されたベンゼン環又はナフタレン環を示す。
で表される化合物と、
式(D-1)又は(D-2):
【化7】
[式中、
Halは、ハロゲン原子を示し;
環Y は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示す。
で表される化合物又はその塩と、を含む混合物を反応させて得られる生成物。
【請求項12】
式(A2):
【化8】
[式中、
環A 及び環A は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し;
環Bは、それぞれ独立して、1個以上のフッ素原子で置換されたベンゼン環又はナフタレン環を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、又は-C(R -を示し;
は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基、又は炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基を示し;
環X は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数5~10の芳香族炭素環、又はフッ素原子、炭素原子数1~6のアルキル基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素原子数3~15の飽和炭素環を示し;
環Y は、それぞれ独立して、フッ素原子、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のフッ素置換アリール基及び炭素原子数1~6のフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示し;
aは、それぞれ独立して、0又は1を示し;
bは、それぞれ独立して、0~3の整数を示し;
nは、1以上の整数を示す。]
で表される化合物、及びエポキシ樹脂を含む樹脂組成物。
【請求項13】
さらに無機充填材を含む、請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
無機充填材の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
プリント配線板の絶縁層形成用の請求項1214の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
半導体チップ封止用の請求項1214の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1216の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項18】
請求項1216の何れか1項に記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
【請求項19】
支持体と、当該支持体上に設けられた請求項1216の何れか1項に記載の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
【請求項20】
請求項1216の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を備えるプリント配線板。
【請求項21】
請求項20に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【請求項22】
ファンナウト(Fan-Out)型の半導体装置である、請求項21に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のエステル化合物、エポキシ樹脂硬化剤、その製造方法及びそれにより得られる生成物、並びにそれを含む樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を用いて得られる硬化物、シート状積層材料、樹脂シート、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂とその硬化剤を含む樹脂組成物は、優れた絶縁性、耐熱性、密着性などをその硬化物に付与できることから半導体やプリント配線基板などの電子部品材料として広く使われてきた。一方で5Gなどの高速通信の実現するためには、高周波環境において伝送損失が小さい回路設計を実現しなければならない。そのため、これまで以上に誘電特性(低誘電率、低誘電正接)に優れた新規絶縁材料の開発が求められている。
【0003】
誘電特性に優れる絶縁材料としては、例えば、特許文献1には、トリフルオロメチル基等の脂肪族フッ素含有基を含む活性エステル系化合物をエポキシ硬化剤として使用した樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1の化合物を硬化剤として使用した硬化物は、一般的なフェノール系硬化剤を使用した場合に比べて優れた誘電特性を示すものの、必ずしも満足できる水準とは言えず、また誘電特性、硬化性、耐熱性、耐湿性等の特性にも優れる硬化剤が要求されるなど、エポキシ樹脂の硬化剤として有用な新たなエステル化合物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再公表特許第2018/207532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、エポキシ樹脂硬化剤として有用な新規のエステル化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特にフッ素原子の導入構造、つまりどこにどのような構造のフッ素基を導入すれば誘電特性を最も高次に発現させることが可能か、という点に重点をおいて鋭意検討した結果、フッ素原子が芳香族炭素に直接結合した構造の導入が上記効果をより一層高い水準で達成できる手段であることを見出して本発明を完成するに至った。本発明は以下の内容を含む。
【0007】
[1] 式(1):
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、
環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
Xは、単結合又は2価の有機基を示し;
aは、0又は1を示し;
*1は、カルボニルの炭素原子との結合部位であり、カルボニルの炭素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、
式(2):
【0010】
【化2】
【0011】
[式中、
環Bは、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示し;
*2は、カルボニルの炭素原子との結合部位であり、カルボニルの炭素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、
式(3):
【0012】
【化3】
【0013】
[式中、
Yは、2価の有機基を示し;
*3は、酸素原子との結合部位であり、酸素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、を1分子中に含有する化合物。
[2] 環Bが、2個以上のフッ素原子で置換された芳香環である、上記[1]に記載の化合物。
[3] 式(1)で表される構造が、当該構造1単位中、3個以上のフッ素原子を含む、上記[1]又は[2]に記載の化合物。
[4] 式(A1):
【0014】
【化4】
【0015】
[式中、
環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
環Bは、それぞれ独立して、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示し;
Xは、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基を示し;
Yは、それぞれ独立して、2価の有機基を示し;
aは、それぞれ独立して、0又は1を示し;
nは、1以上の整数を示す。]
で表される上記[1]に記載の化合物。
[5] 式(A2):
【0016】
【化5】
【0017】
[式中、
環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
環Bは、それぞれ独立して、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示し;
は、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、又は-NHCO-を示し;
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し;
環Xは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環、又は置換基を有していてもよい非芳香環を示し;
環Yは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭素環を示し;
aは、それぞれ独立して、0又は1を示し;
bは、それぞれ独立して、0~3の整数を示し;
nは、1以上の整数を示す。]
で表される上記[4]に記載の化合物。
[6] フッ素原子の含有率が、28質量%以上である、上記[1]~[5]の何れかに記載の化合物。
[7] 上記[1]~[6]の何れかに記載の化合物を含むエポキシ樹脂硬化剤。
[8] 式(1):
【0018】
【化6】
【0019】
[式中、
環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
Xは、単結合又は2価の有機基を示し;
aは、0又は1を示し;
*1は、カルボニルの炭素原子との結合部位であり、カルボニルの炭素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、
式(2):
【0020】
【化7】
【0021】
[式中、
環Bは、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示し;
*2は、カルボニルの炭素原子との結合部位であり、カルボニルの炭素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、
式(3):
【0022】
【化8】
【0023】
[式中、
Yは、2価の有機基を示し;
*3は、酸素原子との結合部位であり、酸素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、を1分子中に含有する化合物の製造方法であって、
式(B1):
【0024】
【化9】
【0025】
[式中、各記号は、上記の通り。]
で表される化合物と、
式(C1):
【0026】
【化10】
【0027】
[式中、各記号は、上記の通り。]
で表される化合物と、
式(D1-1)又は(D1-2):
【0028】
【化11】
【0029】
[式中、Halは、ハロゲン原子を示し;その他の記号は、上記の通り。]
で表される化合物又はその塩と、を含む混合物を反応させることを含む製造方法。
[9] 式(B1):
【0030】
【化12】
【0031】
[式中、各記号は、上記の通り。]
で表される化合物と、
式(C1):
【0032】
【化13】
【0033】
[式中、各記号は、上記の通り。]
で表される化合物と、
式(D1-1)又は(D1-2):
【0034】
【化14】
【0035】
[式中、Halは、ハロゲン原子を示し;その他の記号は、上記の通り。]
で表される化合物又はその塩と、を含む混合物を反応させて得られる生成物。
[10] 式(1):
【0036】
【化15】
【0037】
[式中、
環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
Xは、単結合又は2価の有機基を示し;
aは、0又は1を示し;
*1は、カルボニルの炭素原子との結合部位であり、カルボニルの炭素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、式(2):
【0038】
【化16】
【0039】
[式中、
環Bは、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示し;
*2は、カルボニルの炭素原子との結合部位であり、カルボニルの炭素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、式(3):
【0040】
【化17】
【0041】
[式中、
Yは、2価の有機基を示し;
*3は、酸素原子との結合部位であり、酸素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、を1分子中に含有する化合物、及びエポキシ樹脂を含む樹脂組成物。
[11] さらに無機充填材を含む、上記[10]に記載の樹脂組成物。
[12] 無機充填材の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、60質量%以上である、上記[11]に記載の樹脂組成物。
[13] プリント配線板の絶縁層形成用の上記[10]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物。
[14] 半導体チップ封止用の上記[10]~[12]の何れかに記載の樹脂組成物。
[15] 上記[10]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[16] 上記[10]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物を含有する、シート状積層材料。
[17] 支持体と、当該支持体上に設けられた上記[10]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物から形成される樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
[18] 上記[10]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を備えるプリント配線板。
[19] 上記[18]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
[20] ファンナウト(Fan-Out)型の半導体装置である、上記[19]に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、新規のエポキシ樹脂硬化剤として有用な新規のエステル化合物の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、実施例A-1における生成物(A-1)のGPCチャートを示す。
図2図2は、実施例A-1における生成物(A-1)のIRチャートを示す。
図3図3は、実施例A-2における生成物(A-2)のGPCチャートを示す。
図4図4は、実施例A-2における生成物(A-2)のIRチャートを示す。
図5図5は、実施例A-3における生成物(A-3)のGPCチャートを示す。
図6図6は、実施例A-3における生成物(A-3)のIRチャートを示す。
図7図7は、実施例A-4における生成物(A-4)のGPCチャートを示す。
図8図8は、実施例A-4における生成物(A-4)のIRチャートを示す。
図9図9は、実施例A-5における生成物(A-5)のGPCチャートを示す。
図10図10は、実施例A-5における生成物(A-5)のIRチャートを示す。
図11図11は、比較例A-1における生成物(A-1’)のGPCチャートを示す。
図12図12は、比較例A-1における生成物(A-1’)のIRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0045】
本発明は、式(1):
【0046】
【化18】
【0047】
[式中、
環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;
Xは、単結合又は2価の有機基を示し;
aは、0又は1を示し;
*1は、カルボニルの炭素原子との結合部位であり、カルボニルの炭素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、
式(2):
【0048】
【化19】
【0049】
[式中、
環Bは、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示し;
*2は、カルボニルの炭素原子との結合部位であり、カルボニルの炭素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、
式(3):
【0050】
【化20】
【0051】
[式中、
Yは、2価の有機基を示し;
*3は、酸素原子との結合部位であり、酸素原子と結合してエステル構造を形成する。]
で表される構造と、を1分子中に含有する化合物(以下、「エステル化合物(A)」という場合がある)を提供する。
【0052】
エステル化合物(A)の1分子中における式(1)で表される構造の構造単位数は、一実施形態において、1以上であり、好ましくは1~100、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1、2、3、4又は5、特に好ましくは1、2又は3である。エステル化合物(A)の1分子中における式(2)で表される構造の構造単位数は、一実施形態において、1以上であり、好ましくは2以上であり、特に好ましくは2である。エステル化合物(A)の1分子中における式(3)で表される構造の構造単位数は、一実施形態において、1以上であり、好ましくは2以上、より好ましくは2~100、さらに好ましくは2~10、さらにより好ましくは2、3、4、5又は6、特に好ましくは2、3又は4である。
【0053】
エステル化合物(A)は、ヒドロキシ化合物とカルボン酸化合物(製造原料はカルボン酸ハロゲン化物又はカルボン酸無水物であってもよい)をエステル化したエステル化合物であり、式(1)及び(2)で表される構造は、ヒドロキシ化合物に由来する構造であり、式(3)で表される構造は、カルボン酸化合物に由来する構造である。エステル化合物(A)は、一実施形態において、その他のモノヒドロキシ化合物、その他のジヒドロキシ化合物、トリヒドロキシ化合物、テトラヒドロキシ化合物等のその他のヒドロキシ化合物に由来する構造;モノカルボキシ化合物、トリカルボキシ化合物、テトラカルボキシ化合物等のその他のカルボン酸化合物に由来する構造をさらに含んでいてもよい。当該実施形態において、エステル化合物(A)中のヒドロキシ化合物に由来する構造における、式(1)で表される構造及び(2)で表される構造の合計の割合は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらにより好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、98モル%以上、又は100モル%である。エステル化合物(A)中のカルボン酸化合物に由来する構造における、式(3)で表される構造の割合は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらにより好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、98モル%以上、又は100モル%である。
【0054】
エステル化合物(A)中、式(1)で表される構造における*1の結合部位の少なくとも一方が式(3)で表される構造における*3の結合部位と結合していることが好ましく、*1の結合部位の両方が*3の結合部位と結合していることがより好ましい。エステル化合物(A)中、式(2)で表される構造における*2の結合部位は、式(3)で表される構造における*3の結合部位と結合していることが好ましい。エステル化合物(A)中、式(3)で表される構造における*3の結合部位の少なくとも一方が式(1)で表される構造における*1の結合部位又は式(2)で表される構造における*2の結合部位と結合していることが好ましく、*3の結合部位の両方が*1の結合部位又は*2の結合部位と結合していることがより好ましい。エステル化合物(A)は、式(1)で表される構造における*1の結合部位及び式(2)で表される構造における*2の結合部位すべてと、式(3)で表される構造における*3の結合部位すべてが、互いに結合した下記で説明する式(A1)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0055】
以下、式(1)で表される構造について説明する。
【0056】
環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示す。
【0057】
芳香環とは、環上のπ電子系に含まれる電子数が4p+2個(pは自然数)であるヒュッケル則に従う環を意味する。芳香環は、炭素原子を環構成原子とする芳香族炭素環、又は環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する芳香族複素環であり得るが、一実施形態において、芳香族炭素環であることが好ましい。芳香環は、一実施形態において、5~14員の芳香環が好ましく、5~10員の芳香環がより好ましく、5又は6員の芳香環がさらに好ましい。
【0058】
芳香環の好適な具体例としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の単環式芳香環;ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、インダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、フタラジン環等の2個以上の単環式芳香環が縮合した縮合芳香環が挙げられ、一実施形態において、好ましくは、芳香族炭素環であり、より好ましくは、ベンゼン環又はナフタレン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0059】
環A及び環Aの芳香環における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(COR)から選ばれる基等が挙げられる。Rは、例えば、(1)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SO、-NHR、-N(R、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-N(R、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(CORから選ばれる基で置換されていてもよいアルキル基;(2)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SO、-NHR、-N(R、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-N(R、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(CORから選ばれる基で置換されていてもよいアルケニル基;又は(3)ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SO、-NHR、-N(R、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-N(R、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(CORから選ばれる基で置換されていてもよいアリール基等である。Rは、ハロゲン原子、置換又は無置換のアリール基等であり、具体的には、ハロゲン原子、アリール基、ハロゲン置換アリール基、アルキル-アリール基(1個以上のアルキル基で置換されたアリール基)、アリール-アリール基(1個以上のアリール基で置換されたアリール基)等である。Rは、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアリール基等であり、具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン置換アリール基、アルキル-アリール基、アリール-アリール基、アリール-アルキル基(1個以上のアリール基で置換されたアルキル基)等である。
【0060】
アルキル(基)とは、直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の飽和炭化水素基をいう。アルキル(基)は、特に指定が無い限り、好ましくは炭素原子数1~14、より好ましくは炭素原子数1~10、さらに好ましくは炭素原子数1~6のアルキル(基)である。アルキル(基)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、3,3-ジメチルシクロヘキシル基、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2-シクロヘキシルエチル基等が挙げられる。
【0061】
アルケニル(基)とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族不飽和炭化水素基をいう。アルケニル(基)は、特に指定が無い限り、好ましくは炭素原子数2~14、より好ましくは炭素原子数2~10、さらに好ましくは炭素原子数2~6のアルケニル(基)である。アルケニル(基)としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0062】
アリール(基)とは、芳香族炭素環における1個の水素原子を除いてなる1価の芳香族炭化水素基を意味する。アリール(基)は、特に指定が無い限り、好ましくは炭素原子数6~14、より好ましくは炭素原子数6~10のアリール(基)である。アリール(基)としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アントリル基、9-フェナントレニル基等が挙げられる。
【0063】
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、特に指定が無い限り、好ましくはフッ素原子である。ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アルケニル基、及びハロゲン置換アリール基は、それぞれ、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルケニル基、及び1個以上のハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、好ましくは、フッ素置換アルキル基、フッ素置換アルケニル基、及びフッ素置換アリール基である。フッ素置換アルキル基、フッ素置換アルケニル基、及びフッ素置換アリール基は、それぞれ、1個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基、1個以上のフッ素原子で置換されたアルケニル基、及び1個以上のフッ素原子で置換されたアリール基を意味する。
【0064】
環A及び環Aは、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい芳香族炭素環である。
【0065】
環A及び環Aは、一実施形態において、それぞれ独立して、より好ましくは、置換基を有していてもよいベンゼン環、又は置換基を有していてもよいナフタレン環である。
【0066】
環A及び環Aは、一実施形態において、それぞれ独立して、さらに好ましくは、(1)(a)ハロゲン原子;(b)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基;(c)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル-オキシ基(即ちアルコキシ基);(d)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルケニル基;(e)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基;及び(f)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール-オキシ基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環、或いは(2)(a)ハロゲン原子;(b)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基;(c)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル-オキシ基;(d)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルケニル基;(e)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基;及び(f)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール-オキシ基から選ばれる置換基を有していてもよいナフタレン環である。
【0067】
環A及び環Aは、一実施形態において、それぞれ独立して、さらにより好ましくは、(1)ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基及びハロゲン置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環、又は(2)ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基及びハロゲン置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいナフタレン環である。
【0068】
環A及び環Aは、一実施形態において、それぞれ独立して、特に好ましくは、(1)フッ素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基及びフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいベンゼン環、又は(2)フッ素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基及びフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいナフタレン環である。
【0069】
Xは、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基を示す。Xにおける2価の有機基は、一実施形態において、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の有機基であることが好ましい。Xにおける2価の有機基は、一実施形態において、非骨格原子として、水素原子に加えて或いは水素原子に代えて、ハロゲン原子を有していてもよい。Xにおける2価の有機基は、直鎖構造、分岐鎖構造及び/又は環状構造を含む。Xにおける2価の有機基は、芳香環を含まない2価の有機基であっても、芳香環を含む2価の有機基であってもよい。
【0070】
aは、0又は1を示し、一実施形態において、1が好ましく、他実施形態において、0が好ましい。
【0071】
式(1):
【0072】
【化21】
【0073】
[式中、各記号は、上記と同様である。]
で表される構造は、一実施形態において、好ましくは、式(1’):
【0074】
【化22】
【0075】
[式中、Xは、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、又は-NHCO-を示し;Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し;環Xは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環、又は置換基を有していてもよい非芳香環を示し;bは、0~3の整数を示し;その他の記号は、上記と同様である。]
で表される構造であり、より好ましくは、式(1’’-1)又は(1’’-2):
【0076】
【化23】
【0077】
[式中、Rは、それぞれ独立して、置換基を示し;cは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;その他の記号は、上記と同様である。]
の何れかで表される構造であり、さらに好ましくは、式(1’’’-1)~(1’’’-38):
【0078】
【化24】
【0079】
【化25】
【0080】
【化26】
【0081】
【化27】
【0082】
[式中、各記号は、上記と同様である。]
の何れかで表される構造であり、具体例としては、限定されるものではないが、式(1’’’’-1)~(1’’’’-87):
【0083】
【化28】
【0084】
【化29】
【0085】
【化30】
【0086】
【化31】
【0087】
【化32】
【0088】
【化33】
【0089】
【化34】
【0090】
【化35】
【0091】
【化36】
【0092】
【化37】
【0093】
【化38】
【0094】
【化39】
【0095】
[式中、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基又はハロゲン置換アルキル基を示し;mは、1又は2を示し;その他の記号は、上記と同様である。]
で表される構造が挙げられる。なお、b単位は、構造単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。c単位は、構造単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0096】
は、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、又は-NHCO-を示す。Xは、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、又は-SO-であり、より好ましくは、単結合、又は-C(R-であり、特に好ましくは、-C(R-である。
【0097】
は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。
【0098】
の「置換基を有していてもよいアリール基」における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(COR)から選ばれる基等が挙げられる。Rの「置換基を有していてもよいアルキル基」における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R’、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(COR)から選ばれる基等が挙げられる。Rは、上記同様であり、R’は、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SO、-NHR、-N(R、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-N(R、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(CORから選ばれる基で置換されていてもよいアリール基等である。Rは、上記同様である。
【0099】
は、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、(1)水素原子;(2)ハロゲン原子、アリール基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、及びハロゲン置換アリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基;又は(3)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基及びハロゲン置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基である。Rは、一実施形態において、それぞれ独立して、より好ましくは、水素原子、アリール基、アルキル基、ハロゲン置換アリール基、又はハロゲン置換アルキル基である。Rは、一実施形態において、それぞれ独立して、さらに好ましくは、水素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基、又はフッ素置換アルキル基である。Rは、一実施形態において、それぞれ独立して、特に好ましくは、水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。
【0100】
環Xは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環、又は置換基を有していてもよい非芳香環を示す。
【0101】
非芳香環とは、芳香環以外の環を意味する。非芳香環は、炭素原子を環構成原子とする非芳香族炭素環、又は環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する非芳香族複素環であり得るが、一実施形態において、非芳香族炭素環であることが好ましい。非芳香環は、飽和環であっても、不飽和非芳香環であってもよいが、一実施形態において、飽和環であることが好ましい。非芳香環は、一実施形態において、3~15員の非芳香環が好ましい。
【0102】
非芳香族炭素環としては、例えば、(a1)単環式非芳香族炭素環、(a2)2個以上の原子を共有する2個以上の環からなる橋かけ炭素環、及び(a3)1個以上の単環式非芳香族炭素環及び/又は橋かけ炭素環に1個以上の芳香族炭素環が縮合した芳香環-非芳香環複合縮合炭素環等が挙げられる。
【0103】
単環式非芳香族炭素環は、炭素原子を環構成原子とする単環式非芳香環であり、炭素-炭素二重結合を有していてもよく、炭素原子数3~15の単環式非芳香族炭素環が好ましく、炭素原子数3~8の単環式非芳香族炭素環がより好ましく、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環等のシクロアルカン環(単環式非芳香族飽和炭素環);シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロノネン環、シクロデセン環、シクロウンデセン環、シクロドデセン環、シクロペンタジエン環、1,3-シクロヘキサジエン環、1,4-シクロヘキサジエン環等のシクロアルケン環(単環式非芳香族不飽和炭素環)が挙げられる。
【0104】
橋かけ炭素環は、炭素原子を環構成原子とする橋かけ環であり、炭素-炭素二重結合を有していてもよく、炭素原子数8~15の橋かけ炭素環が好ましく、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環(ノルボルナン環)、ビシクロ[4.4.0]デカン環(デカリン環)、ビシクロ[5.3.0]デカン環、ビシクロ[4.3.0]ノナン環(ヒドリンダン環)、ビシクロ[3.2.1]オクタン環、ビシクロ[5.4.0]ウンデカン環、ビシクロ[3.3.0]オクタン環、ビシクロ[3.3.1]ノナン環等の二環系の飽和橋かけ炭素環;トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環(テトラヒドロジシクロペンタジエン環)、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン環(アダマンタン環)、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカン環等の三環系の飽和橋かけ炭素環;テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン環等の四環系の飽和橋かけ炭素環;ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカン環(テトラヒドロトリシクロペンタジエン環)等の五環系の飽和橋かけ炭素環等の飽和橋かけ炭素環;ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン環(ノルボルネン環)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン環(ノルボルナジエン環)、ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン環、ビシクロ[4.4.0]デカ-2-エン環等の二環系の不飽和橋かけ炭素環;トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-3,8-ジエン環(ジシクロペンタジエン環)等の三環系の不飽和橋かけ炭素環等の不飽和橋かけ炭素環が挙げられる。
【0105】
芳香環-非芳香環複合縮合炭素環としては、炭素原子を環構成原子とする複合縮合環であり、炭素原子数8~15の芳香環-非芳香環複合縮合炭素環が好ましく、例えば、インダン環、インデン環、テトラリン環、1,2-ジヒドロナフタレン環、1,4-ジヒドロナフタレン環等の二環系の複合縮合炭素環;フルオレン環、9,10-ジヒドロアントラセン環、9,10-ジヒドロフェナントレン環等の三環系の複合縮合炭素環;2,3-ベンゾフルオレン環等の四環系の複合縮合炭素環;2,3,6,7-ジベンゾフルオレン等の五環系の複合縮合炭素環等が挙げられる。
【0106】
非芳香族複素環としては、例えば、(b1)単環式非芳香族複素環、(b2)2個以上の原子を共有する2個以上の環からなる橋かけ複素環、及び(b3)1個以上の単環式芳香族環(単環式芳香族炭素環及び/又は単環式非芳香族複素環)及び/又は橋かけ環(橋かけ炭素環及び/又は橋かけ複素環)に1個以上の芳香環(芳香族炭素環及び/又は芳香族複素環)が縮合した芳香環-非芳香環複合縮合複素環等が挙げられる。
【0107】
単環式非芳香族複素環は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する単環式非芳香環であり、炭素-炭素二重結合及び/又は窒素-炭素二重結合を有していてもよく、3~15員の単環式非芳香族複素環が好ましく、3~8員の単環式非芳香族複素環がより好ましく、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、テトラヒドロフラン環、ピペリジン環、ピペラジン環、テトラヒドロピラン環、1,3-ジオキサン環、1,4-ジオキサン環、チアン環、1,3-ジチアン環、1,4-ジチアン環、モルホリン環、チオモルホリン環、オキサゾリジン環等の単環式非芳香族飽和複素環;2-ピロリン環、3-ピロリン環、2-ピラゾリン環、2-イミダゾリン環等の単環式非芳香族不飽和複素環等が挙げられる。
【0108】
橋かけ複素環は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する橋かけ環であり、炭素-炭素二重結合及び/又は窒素-炭素二重結合を有していてもよく、8~15員の橋かけ複素環が好ましく、例えば、7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン環(1,2-エポキシシクロヘキサン環)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン環)、デカヒドロキノリン環、デカヒドロイソキノリン環等の二環系の飽和橋かけ複素環;1-アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(1-アザアダマンタン環)、2-アザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(2-アザアダマンタン環)等の三環系の飽和橋かけ複素環等の飽和橋かけ複素環が挙げられる。
【0109】
芳香環-非芳香環複合縮合複素環は、環構成原子として、炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する複合縮合環であり、8~15員の芳香環-非芳香環複合縮合複素環が好ましく、例えば、2,3-ジヒドロベンゾフラン環、1,3-ジヒドロイソベンゾフラン環、2H-クロメン環、4H-クロメン環、1H-イソクロメン環、3H-イソクロメン環、インドリン環、イソインドリン環、2,3-ジヒドロベンゾチオフェン環、1,2-ジヒドロキノリン環、3,4-ジヒドロキノリン環、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン環、ベンゾオキサジン環等の二環系の複合縮合複素環;1,2,3,4-テトラヒドロカルバゾール環、1,2,3,4-ジベンゾフラン環等の三環系の複合縮合複素環等が挙げられる。
【0110】
非芳香環としては、一実施形態において、中でも、単環式非芳香族炭素環、橋かけ炭素環、芳香環-非芳香環複合縮合炭素環、単環式非芳香族複素環、橋かけ複素環、及び芳香環-非芳香環複合縮合複素環がより好ましく;単環式非芳香族炭素環、橋かけ炭素環、及び芳香環-非芳香環複合縮合炭素環がさらに好ましく;単環式非芳香族炭素環、及び橋かけ炭素環が特に好ましい。
【0111】
環Xの「置換基を有していてもよい芳香環」における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(COR)から選ばれる基等が挙げられる。環Xの「置換基を有していてもよい非芳香環」における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、-N(COR)、及び=Oから選ばれる基等が挙げられる。Rは、上記同様である。
【0112】
環Xは、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい芳香族炭素環、又は置換基を有していてもよい非芳香族炭素環である。
【0113】
環Xは、一実施形態において、それぞれ独立して、より好ましくは、(1)(a)ハロゲン原子;(b)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基;(c)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル-オキシ基;(d)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルケニル基;(e)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基;及び(f)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール-オキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香族炭素環、或いは(2)(a)ハロゲン原子;(b)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基;(c)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル-オキシ基;(d)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルケニル基;(e)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基;(f)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール-オキシ基;及び(g)オキソ基(=O)から選ばれる置換基を有していてもよい非芳香族炭素環である。
【0114】
環Xは、一実施形態において、それぞれ独立して、さらに好ましくは、(1)ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、ハロゲン置換アリール基及びハロゲン置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香族炭素環、又は(2)ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、ハロゲン置換アリール基、ハロゲン置換アルキル基及びオキソ基から選ばれる置換基を有していてもよい非芳香族炭素環である。
【0115】
環Xは、一実施形態において、それぞれ独立して、さらにより好ましくは、(1)フッ素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基及びフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香族炭素環、又は(2)フッ素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基、フッ素置換アルキル基及びオキソ基から選ばれる置換基を有していてもよい非芳香族炭素環である。
【0116】
環Xは、一実施形態において、それぞれ独立して、特に好ましくは、(1)フッ素原子、アルキル基及びフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい芳香族炭素環、又は(2)フッ素原子、アルキル基及びフッ素置換アルキル基から選ばれる置換基を有していてもよい非芳香族炭素環である。
【0117】
bは、それぞれ独立して、0~3の整数を示し、一実施形態において、好ましくは、0~2の整数であり、より好ましくは、0又は1である。
【0118】
は、それぞれ独立して、置換基を示す。
【0119】
における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(COR)から選ばれる基等が挙げられる。Rは、上記同様である。
【0120】
は、一実施形態において、好ましくは、それぞれ独立して、(a)ハロゲン原子;(b)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基;(c)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル-オキシ基;(d)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルケニル基;(e)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基;又は(f)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール-オキシ基である。Rは、一実施形態において、より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基又はハロゲン置換アルキル基である。Rは、一実施形態において、さらに好ましくは、それぞれ独立して、フッ素原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、フッ素置換アリール基又はフッ素置換アルキル基である。Rは、一実施形態において、特に好ましくは、それぞれ独立して、フッ素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基又はフッ素置換アルキル基である。
【0121】
cは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、一実施形態において、好ましくは、0、1又は2であり、より好ましくは、0又は1であり、特に好ましくは、0である。
【0122】
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基又はハロゲン置換アルキル基を示す。Rは、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、フッ素原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、フッ素置換アリール基又はフッ素置換アルキル基であり、より好ましくは、フッ素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基又はフッ素置換アルキル基である。
【0123】
式(1)で表される構造(式(1’)、(1’’-1)又は(1’’-2)で表される構造を含む)は、一実施形態において、フッ素原子を含有することが好ましい。このようなフッ素原子は、例えば、式(1)で表される構造であれば、Xで表される2価の有機基、及び/又は環A及び環Aで表される芳香環の置換基に含まれ、式(1’)で表される構造であれば、Rで表されるアルキル基又はアリール基の置換基、環A、環A及び環Xで表される芳香環の置換基、及び/又は環Xで表される非芳香環の置換基に含まれ得る。式(1)で表される構造は、一実施形態において、当該構造1単位中、好ましくは3個以上のフッ素原子を含み、より好ましくは4個以上のフッ素原子を含み、さらに好ましくは5個以上のフッ素原子を含む。
【0124】
以下、式(2)で表される構造について説明する。
【0125】
環Bは、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示す。環Bにおける「1個以上のフッ素原子で置換された芳香環」とは、芳香環を構成する芳香族炭素原子上の水素原子のうち少なくとも1個がフッ素原子で置換されていることを示す。
【0126】
環Bは、一実施形態において、好ましくは、1個以上のフッ素原子で置換された芳香族炭素環である。環Bは、一実施形態において、より好ましくは、1個以上のフッ素原子で置換されたベンゼン環、又は1個以上のフッ素原子で置換されたナフタレン環である。
【0127】
環Bの芳香環におけるフッ素原子置換数は、本発明の所望の効果をより顕著に得る観点から、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上である。
【0128】
環Bの芳香環は、本発明の所望の効果をより顕著に得る観点から、エステル構造を形成する酸素原子との結合部位に対してオルト位の芳香族炭素原子(酸素原子との結合部位の芳香族炭素原子に隣接する芳香族炭素原子)上の水素原子のうち少なくとも1個がフッ素原子で置換されていることが好ましく、2個がフッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0129】
式(2):
【0130】
【化40】
【0131】
[式中、各記号は、上記と同様である。]
で表される構造は、一実施形態において、好ましくは、式(2’-1)~(2’-3):
【0132】
【化41】
【0133】
[式中、Rf1及びRf2は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を示し且つRf1及びRf2のうち少なくとも1個が、フッ素原子であり;その他の記号は、上記と同様である。]
で表される構造であり、具体例としては、限定されるものではないが、式(2’’-1)~(2’’-19):
【0134】
【化42】
【0135】
[式中、各記号は、上記と同様である。]
で表される構造が挙げられる。一実施形態において、中でも、式(2’’-1)~(2’’-4)で表される構造であることが特に好ましい。
【0136】
f1及びRf2は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を示し且つRf1及びRf2のうち少なくとも1個が、フッ素原子である。
【0137】
f1及びRf2は、エポキシ樹脂の硬化反応速度を向上させる観点から、一実施形態において、好ましくは、Rf1及びRf2のうち少なくとも2個が、フッ素原子であり、より好ましくは、Rf1及びRf2のうち少なくとも3個が、フッ素原子であり、さらに好ましくは、Rf1及びRf2のうち少なくとも4個が、フッ素原子である。
【0138】
f1及びRf2は、エポキシ樹脂の硬化反応速度を向上させる観点から、一実施形態において、好ましくは、Rf1が2個の場合はRf1の一方が、フッ素原子であり、Rf1の他方及びRf2が、水素原子又はフッ素原子であり、Rf1が1個の場合はRf1が、フッ素原子であり、Rf2が、水素原子又はフッ素原子である。より好ましくは、Rf1が、フッ素原子であり、Rf2が、水素原子又はフッ素原子である。さらに好ましくは、Rf1が、フッ素原子であり、Rf2が、水素原子又はフッ素原子であり且つRf2のうち少なくとも1個が、フッ素原子である。特に好ましくは、Rf1及びRf2は、フッ素原子である。
【0139】
以下、式(3)で表される構造について説明する。
【0140】
Yは、2価の有機基を示す。Yにおける2価の有機基は、一実施形態において、炭素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる1個以上(例えば1~3000個、1~1000個、1~100個、1~50個)の骨格原子からなる2価の有機基であることが好ましい。Yにおける2価の有機基は、一実施形態において、非骨格原子として、水素原子に加えて或いは水素原子に代えて、ハロゲン原子を有していてもよい。Yにおける2価の有機基は、直鎖構造、分岐鎖構造及び/又は環状構造を含む。Yにおける2価の有機基は、芳香環を含まない2価の有機基であっても、芳香環を含む2価の有機基であってもよい。
【0141】
Yは、一実施形態において、好ましくは、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。
【0142】
2価の炭化水素基とは、1個以上(例えば1~50個、1~20個、1~10個)の炭素原子のみを骨格原子とする2価の炭化水素基である。2価の炭化水素基は、直鎖構造、分岐鎖構造及び/又は環状構造を含む。2価の炭化水素基は、芳香環を含まない炭化水素基であっても、芳香環を含む炭化水素基であってもよい。
【0143】
2価の炭化水素基としては、例えば、(1)アリール基を置換基として有していてもよいアルキレン基、(2)アリール基を置換基として有していてもよいアルケニレン基、(3)アリール基、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリーレン基、(4)(アリール基を置換基として有していてもよいアルキレン)-(アリール基、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリーレン)基、(5)(アリール基、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリーレン)-(アリール基、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリーレン)基、(6)(アリール基、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリーレン)-(アリール基を置換基として有していてもよいアルキレン)-(アリール基、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリーレン)基、(7)(アリール基を置換基として有していてもよいアルキレン)-(アリール基、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリーレン)-(アリール基を置換基として有していてもよいアルキレン)基等が挙げられ、一実施形態において、好ましくは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アルキレン-アリーレン基、アリーレン-アリーレン基、アリーレン-アルキレン-アリーレン基、又はアルキレン-アリーレン-アルキレン基であり、より好ましくは、アリーレン基、アリーレン-アリーレン基、又はアリーレン-アルキレン-アリーレン基であり、さらに好ましくは、アリーレン基である。
【0144】
アルキレン(基)とは、直鎖、分枝鎖及び/又は環状の2価の飽和炭化水素基をいう。アルキレン(基)は、特に指定が無い限り、好ましくは炭素原子数1~14、より好ましくは炭素原子数1~10、さらに好ましくは炭素原子数1~6のアルキレン(基)である。アルキレン(基)としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の直鎖アルキレン基;エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、エチルメチルメチレン基、ジエチルメチレン基等の分枝鎖アルキレン基;1,4-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、又は1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロペンチレン基、1,2-シクロペンチレン基等の環状アルキレンが挙げられる。
【0145】
アルケニレン(基)とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖、分枝鎖及び/又は環状の2価の脂肪族不飽和炭化水素基をいう。アルケニレン(基)は、特に指定が無い限り、好ましくは炭素原子数2~14、より好ましくは炭素原子数2~10、さらに好ましくは炭素原子数2~6のアルケニレン(基)である。アルケニレン(基)としては、例えば、-CH=CH-、-C(=CH)-、-CH=CH-CH-、-CH-CH=CH-、-CH=CH-CH-CH-、-CH-CH=CH-CH-、-CH-CH-CH=CH-等が挙げられる。
【0146】
アリーレン(基)とは、2価の芳香族炭化水素基を意味する。アリーレン(基)は、特に指定が無い限り、好ましくは炭素原子数6~14、より好ましくは炭素原子数6~10のアリーレン(基)である。アリーレン(基)としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、1,3-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、1,6-ナフチレン基、1,7-ナフチレン基、1,8-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、2,7-ナフチレン基等が挙げられる。
【0147】
Yにおける「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(COR)から選ばれる基等が挙げられる。Rは、上記同様である。
【0148】
式(3):
【0149】
【化43】
【0150】
[式中、各記号は、上記と同様である。]
で表される構造は、一実施形態において、好ましくは、式(3’):
【0151】
【化44】
【0152】
[式中、各記号は、上記と同様である。]
で表される構造であり、より好ましくは、式(3’’-1)又は(3’’-2):
【0153】
【化45】
【0154】
[式中、Rは、それぞれ独立して、置換基を示し;dは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し;その他の記号は、上記と同様である。]
の何れかで表される構造であり、具体例としては、限定されるものではないが、式(3’’’-1)~(3’’’-12):
【0155】
【化46】
【0156】
[式中、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基又はハロゲン置換アルキル基を示し;その他の記号は、上記と同様である。]
で表される構造が挙げられる。なお、d単位は、構造単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0157】
環Yは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭素環を示す。
【0158】
芳香族炭素環は、炭素原子を環構成原子とする芳香環である。芳香族炭素環は、一実施形態において、6~14員の芳香族炭素環が好ましく、6~10員の芳香族炭素環がより好ましい。芳香族炭素環の好適な具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環又はナフタレン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。
【0159】
環Yの「置換基を有していてもよい芳香族炭素環」における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-O-COR、-NH-COR、-NR-COR、及び-N(COR)から選ばれる基等が挙げられる。Rは、上記同様である。
【0160】
は、それぞれ独立して、置換基を示す。
【0161】
における置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シアノ基、-R、-OR、-SR、-SOR、-NHR、-NR、-COR、-CO-OR、-CO-NHR、-CO-NR、-NH-COR、-NR-COR、-N(COR)から選ばれる基等が挙げられる。Rは、上記同様である。
【0162】
は、一実施形態において、好ましくは、それぞれ独立して、(a)ハロゲン原子;(b)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル基;(c)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルキル-オキシ基;(d)ハロゲン原子及びアリール基から選ばれる置換基を有していてもよいアルケニル基;(e)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基;又は(f)ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基及びアルキル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール-オキシ基である。Rは、一実施形態において、より好ましくは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基又はハロゲン置換アルキル基である。Rは、一実施形態において、さらに好ましくは、それぞれ独立して、フッ素原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、フッ素置換アリール基又はフッ素置換アルキル基である。Rは、一実施形態において、特に好ましくは、それぞれ独立して、フッ素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基又はフッ素置換アルキル基である。
【0163】
dは、それぞれ独立して、0又は1以上の整数を示し、一実施形態において、好ましくは、0、1又は2であり、より好ましくは、0又は1であり、特に好ましくは、0である。
【0164】
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、ハロゲン置換アリール基又はハロゲン置換アルキル基を示す。Rは、一実施形態において、それぞれ独立して、好ましくは、フッ素原子、アリール基、アルキル基、アリール-オキシ基、アルキル-オキシ基、フッ素置換アリール基又はフッ素置換アルキル基であり、より好ましくは、フッ素原子、アリール基、アルキル基、フッ素置換アリール基又はフッ素置換アルキル基である。
【0165】
エステル化合物(A)は、一実施形態において、好ましくは、式(A1):
【0166】
【化47】
【0167】
[式中、環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;環Bは、それぞれ独立して、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示し;Xは、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基を示し;Yは、それぞれ独立して、2価の有機基を示し;aは、それぞれ独立して、0又は1を示し;nは、1以上の整数を示す。]
で表される化合物であり、より好ましくは、式(A2):
【0168】
【化48】
【0169】
[式中、環A及び環Aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環を示し;環Bは、それぞれ独立して、1個以上のフッ素原子で置換された芳香環を示し;Xは、それぞれ独立して、単結合、-C(R-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CONH-、又は-NHCO-を示し;Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し;環Xは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香環、又は置換基を有していてもよい非芳香環を示し;環Yは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭素環を示し;aは、それぞれ独立して、0又は1を示し;bは、それぞれ独立して、0~3の整数を示し;nは、1以上の整数を示す。]
で表される化合物である。式(A1)及び(A2)中、a単位は、構造単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。b単位は、構造単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。n単位は、構造単位毎に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0170】
nは、1以上の整数を示す。nは、一実施形態において、1~100の整数であることが好ましく、1~20の整数であることがより好ましく、1~10の整数(1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)であることがさらに好ましく、1、2、3、4又は5であることがよりさらに好ましく、1、2又は3であることが特に好ましい。nの値が大きい場合は、エポキシ樹脂を硬化させる際に架橋密度が増大し、硬化性を向上させることができる。nの値が小さい場合は、溶剤溶解性が高く、粘度が低くなるため、作業性や工程性を向上させることができる。
【0171】
式(A1)中の式(1)で表される構造は、一実施形態において、好ましくは、式(1’)で表される構造であり、より好ましくは、式(1’’-1)又は(1’’-2)の何れかで表される構造であり、さらに好ましくは、式(1’’’-1)~(1’’’-38)の何れかで表される構造であり、具体例としては、限定されるものではないが、式(1’’’’-1)~(1’’’’-87)で表される構造が挙げられる。
【0172】
式(A1)及び(A2)中の式(2)で表される構造は、一実施形態において、好ましくは、式(2’-1)~(2’-3)で表される構造であり、具体例としては、限定されるものではないが、式(2’’-1)~(2’’-19)で表される構造が挙げられる。一実施形態において、中でも、式(2’’-1)~(2’’-4)で表される構造であることが特に好ましい。
【0173】
式(A1)中の式(3)で表される構造は、一実施形態において、好ましくは、式(3’)で表される構造であり、より好ましくは、式(3’’-1)又は(3’’-2)の何れかで表される構造であり、具体例としては、限定されるものではないが、式(3’’’-1)~(3’’’-12)で表される構造が挙げられる。
【0174】
式(A2)中の式(1’)で表される構造は、一実施形態において、好ましくは、式(1’’-1)又は(1’’-2)の何れかで表される構造であり、より好ましくは、式(1’’’-1)~(1’’’-38)の何れかで表される構造であり、具体例としては、限定されるものではないが、式(1’’’’-1)~(1’’’’-87)で表される構造が挙げられる。
【0175】
式(A2)中の式(3’)で表される構造は、一実施形態において、好ましくは、式(3’’-1)又は(3’’-2)の何れかで表される構造であり、具体例としては、限定されるものではないが、式(3’’’-1)~(3’’’-12)で表される構造が挙げられる。
【0176】
エステル化合物(A)中に含まれるフッ素原子の含有率は、本発明の所望の効果をより顕著に得る観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上又は28質量%以上である。上限値は特に限定されないが、例えば、60質量%以下とし得る。フッ素原子の含有率は、後述する製造方法において、原料の種類を変更することにより、当業者が所望の範囲に任意に調整可能であり得る。
【0177】
エステル化合物(A)の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下、より好ましくは20000以下、より好ましくは10000以下であり得る。エステル化合物(A)の重量平均分子量の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、400以上、600以上、800以上等であり得る。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0178】
エステル化合物(A)における、式(1)で表される構造及び式(3)で表される構造により形成されるエステル構造、並びに式(2)で表される構造及び式(3)で表される構造により形成されるエステル構造の合計に基づくエステル当量(以下「エステル基当量」という場合がある)は、特に限定されるものではないが、好ましくは700g/eq.以下、より好ましくは500g/eq.以下、さらに好ましくは450g/eq.以下、さらにより好ましくは400g/eq.以下、特に好ましくは350g/eq.以下であり得る。エステル化合物(A)のエステル基当量の下限は、特に限定されるものではないが、例えば、150g/eq.以上、180g/eq.以上、200g/eq.以上等であり得る。
【0179】
以下、エステル化合物(A)の製造方法について説明する。
【0180】
本発明は、エステル化合物(A)の製造方法であって、
式(B1):
【0181】
【化49】
【0182】
[式中、各記号は、上記の通り。]
で表される化合物(以下、「ヒドロキシ化合物(B1)」という場合がある)と、
式(C1):
【0183】
【化50】
【0184】
[式中、各記号は、上記の通り。]
で表される化合物(以下、「ヒドロキシ化合物(C1)」という場合がある)と、
式(D1-1)又は(D1-2):
【0185】
【化51】
【0186】
[式中、Halは、ハロゲン原子(好ましくは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)を示し;その他の記号は、上記の通り。]
で表される化合物又はその塩(以下、まとめて「カルボン酸化合物(D1)」という場合がある)と、を含む混合物を反応(すなわちエステル化反応)させることを含む製造方法を提供する。
【0187】
エステル化合物(A)の製造方法においては、一実施形態において、カルボン酸化合物成分として、カルボン酸化合物(D1)が、分子ごとに、ヒドロキシ化合物成分として、ヒドロキシ化合物(B1)と、或いはヒドロキシ化合物(B1)及びヒドロキシ化合物(C1)の両方と、縮合反応して、エステル化することにより、本発明のエステル化合物(A1)が得られる。一実施形態において、ヒドロキシ化合物(B1)、ヒドロキシ化合物(C1)、及びカルボン酸化合物(D1)に加えて、ヒドロキシ化合物成分として、その他のヒドロキシ化合物成分を、カルボン酸化合物成分として、その他のカルボン酸化合物成分を同時に混合させて、エステル化させてもよい。
【0188】
エステル化合物(A)の製造方法は、一実施形態において、好ましくは、ヒドロキシ化合物(B1)及びヒドロキシ化合物(C1)と、カルボン酸化合物(D1)と、を反応(すなわちエステル化反応)させることを含む、式(A1)で表される化合物の製造方法である:
【0189】
【化52】
【0190】
[式中、各記号は、上記と同様である。]。
【0191】
エステル化合物(A)の製造方法は、一実施形態において、より好ましくは、ヒドロキシ化合物(B1)として式(B2)で表される化合物及びヒドロキシ化合物(C1)と、カルボン酸化合物(D1)として式(D2-1)又は(D2-2)の何れかで表される化合物又はその塩(以下、まとめて「カルボン酸化合物(D2)」という場合がある)と、を反応(すなわちエステル化反応)させることを含む、式(A2)で表される化合物の製造方法である:
【0192】
【化53】
【0193】
[式中、各記号は、上記と同様である。]。
【0194】
塩としては、例えば、セシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0195】
カルボン酸化合物(D1)は、一実施形態において、式(D1-2)で表される化合物であることが好ましい。カルボン酸化合物(D2)は、一実施形態において、式(D2-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0196】
エステル化合物(A)の製造方法のエステル化反応においては、好適な実施形態において、塩基を用いてもよい。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)等の第3級アミン類等が挙げられる。塩基はそのまま使用してもよいし、或いは溶液に希釈して使用してもよい。塩基は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0197】
塩基としてアルカリ金属水酸化物を使用した場合、一実施形態において、反応性が向上し、出発原料が残存しにくいという利点がある。塩基として第3級アミン類を使用した場合、一実施形態において、無水条件下で生成したエステル結合が加水分解を受けにくく、収率が向上するという利点がある。
【0198】
塩基の使用量は、一実施形態において、カルボン酸化合物(D1)におけるカルボキシ基(-COOH)又はカルボン酸ハライド基(-COHal)100モルに対して、好ましくは、80~300モルであり、原料残存率、塩基除去性等の点から、より好ましくは100~150モルであり得る。
【0199】
エステル化合物(A)の製造方法のエステル化反応においては、一実施形態において、必要に応じて、縮合剤を用いてもよい。縮合剤としては、例えば、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-シクロヘキシル-3-モルホリノエチルカルボジイミド、1-シクロヘキシル-3-(4-ジエチルアミノシクロヘキシル)カルボジイミド、1,3-ジエチルカルボジイミド、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等のカルボジイミド系縮合剤またはその塩等が挙げられる。縮合剤の使用量はカルボン酸化合物(D1)におけるカルボキシ基(-COOH)又はカルボン酸ハライド基(-COHal)100モルに対して、例えば、50~100モルであり得る。エステル化合物(A)の製造方法のエステル化反応においては、一実施形態において、必要に応じて、縮合剤に加えて、縮合促進剤を加えてもよい。縮合促進剤としては、例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)等が挙げられる。縮合促進剤の使用量はカルボン酸化合物(D1)におけるカルボキシ基(-COOH)又はカルボン酸ハライド基(-COHal)100モルに対して、例えば、50~100モルであり得る。
【0200】
エステル化合物(A)の製造方法のエステル化反応の反応系における、ヒドロキシ化合物(B1)と、ヒドロキシ化合物(C1)と、カルボン酸化合物(D1)の混合比率に関しては、目的生成物の物性及びエポキシ樹脂硬化物の物性等に合わせて適宜の比率を選択できる。エポキシ樹脂硬化物の誘電特性や耐湿性に重点をおいた設計を施す場合、合成反応物中に未反応のカルボン酸ハライドや芳香族性水酸基が残存しない方が好ましい。したがって、カルボン酸化合物(D1)のモル数(d)とヒドロキシ化合物(B1)のモル数(b)とヒドロキシ化合物(C1)のモル数(c)の混合比率は、2(d):(2(b)+(c))=90:100~100:90の範囲となるような比率が好ましく、2(d):(2(b)+(c))=95:100~100:95の範囲となるような比率がより好ましい。また、ヒドロキシ化合物(B1)とヒドロキシ化合物(C1)とカルボン酸化合物(D1)の混合比率(モル比)は、(b):(d):(c)=0.5:1.5:2.0(n=0.5に相当)~5.0:6.0:2.0(n=5に相当)の範囲が好ましく、更に好ましくは、(b):(d):(c)=1.0:2.0:2.0(n=1に相当)~2.5:3.5:2(n=2.5に相当)の範囲である。
【0201】
エステル化合物(A)の製造方法のエステル化反応は、一実施形態において、溶媒を使用せずに無溶剤系で進行させてもよいし、有機溶媒を使用して有機溶剤系でも進行させてもよい。エステル化反応のための有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤が挙げられる。中でも、反応後の精製効率の観点から、ケトン系溶媒(例えばメチルイソブチルケトン)、芳香族炭化水素溶媒(例えばトルエン)等の疎水性溶媒が好ましい。有機溶媒は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0202】
エステル化合物(A)の製造方法のエステル化反応における反応温度は、特に限定されるものではないが、一実施形態において、0~70℃の範囲が好ましい。
【0203】
エステル化合物(A)の製造方法のエステル化反応における反応時間は、特に限定されるものではないが、一実施形態において、30分間~8時間の範囲が好ましい。
【0204】
エステル化合物(A)の製造方法のエステル化反応は、一実施形態において、ヒドロキシ化合物(B1)とヒドロキシ化合物(C1)とカルボン酸(D1)を含む混合物(有機溶剤系又は無溶剤系)を撹拌しながら、そこに塩基を滴下し、滴下後にさらに撹拌することによっても製造することができる。この場合、滴下時間は、特に限定されるものではないが、10分間~3時間の範囲が好ましい。滴下後の撹拌時間は、30分間~5時間の範囲が好ましい。
【0205】
エステル化合物(A)の製造方法では、エステル化反応後にエステル化合物(A)を精製してもよい。エステル化反応後、副生塩や過剰量の出発原料を系内から除去するために、水栓や精密濾過などの精製工程を施してもよい。例えば、一実施形態において、エステル化反応終了後、副生塩を溶解するに必要な量の水を添加して、静置分液して水層を棄却する。さらに必要に応じて酸を添加して中和して水洗を繰り返す。その後、薬剤或いは共沸による脱水工程を経て精密濾過によって不純物を除去精製した後に、必要に応じて、有機溶媒を蒸留除去すればエステル化合物(A)を得ることができる。有機溶媒を完全に除去しないでそのまま樹脂組成物の溶剤に使用することもできる。
【0206】
エステル化合物(A)の製造方法におけるエステル化反応では、一実施形態において、複数のエステル化合物が同時に生成し得るため、混合物として、1種又は2種以上のエステル化合物(A)、及び任意にエステル化合物(A)以外の1種又は2種以上のエステル化合物を含む、生成物が得られる場合がある。エステル化合物(A)以外のエステル化合物には、式(1)で表される構造を含まない化合物(例えば式(A1)のn=0)、反応中間体化合物(例えば片末端がヒドロキシ基又はカルボキシ基)、原料不純物に由来する化合物等が含まれ得る。エステル化反応で得られる生成物は、そのままエポキシ樹脂硬化剤として使用することができ、適宜不要な化合物を除去しても使用することができる。
【0207】
エステル化合物(A)は、エポキシ樹脂硬化剤として使用することができる。エステル化合物(A)は、エポキシ樹脂硬化剤として使用することにより、優れた誘電特性を備える硬化物を得ることができ得る。また、エステル化合物(A)は、エポキシ樹脂硬化剤として使用することにより、硬化性、耐熱性、耐湿性(耐加水分解性)等に優れた硬化物を得ることができ得る。エステル化合物(A)を使用したシート状積層材料、又は半導体封止材を用いることにより、高周波領域での伝送損失を抑制したプリント配線基板やファンナウト(Fan-Out)型を含む半導体装置を提供でき得る。
【0208】
以下、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0209】
本発明は、エステル化合物(A)、及びエポキシ樹脂を含む樹脂組成物を提供する。
【0210】
本発明の樹脂組成物に使用するエポキシ樹脂は、1分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のエポキシ基を有する化合物であれば種類は限定されない。
【0211】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、誘電特性や耐湿性や難燃性などを一層向上させる観点から、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂が特に好ましい。エポキシ樹脂(Y)は2種以上を併用してもよい。
【0212】
エポキシ樹脂は、一実施形態において、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂等のフッ素原子を含有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0213】
エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。また、ビルドアップ多層回路基板用層間絶縁フィルム用途では、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状の芳香族系エポキシ樹脂(液状エポキシ樹脂)を含有する態様が好ましく、該液状エポキシ樹脂及び1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状の芳香族系エポキシ樹脂(固体状エポキシ樹脂)を含有する態様がより好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を使用することで、樹脂組成物を樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性を示し、取扱い性に優れたフィルムを形成できると同時に、樹脂組成物の硬化物の破断強度が向上し、ビルドアップ多層回路基板の耐久性が向上する。またエポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂を併用する場合、配合割合(液状:固体状)は質量比で1:0.1~1:2の範囲が好ましい。かかる範囲内で液状エポキシ樹脂を用いることで、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上し、ラミネートの際の十分な流動性を得ることもできるようになる。一方、かかる範囲内で固形エポキシ樹脂を用いることで、樹脂組成物の粘着性を低下させ、樹脂シートの形態で使用する場合に、真空ラミネート時の脱気性を向上させることができる。また、真空ラミネート時に保護フィルムや支持フィルムの剥離性を良好にし、硬化後の耐熱性を向上させることもできる。
【0214】
エステル化合物(A)及びエポキシ樹脂の質量合計に対するフッ素原子の含有率は、一実施形態において、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上である。上限値は特に限定されないが、例えば、60質量%以下とし得る。
【0215】
本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%~60質量%であり、より好ましくは10質量%~50質量%であり、さらに好ましくは20質量%~40質量%であり、特に好ましくは20質量%~35質量%である。一実施形態において、エポキシ樹脂の含有量をこの範囲内とすることで、樹脂組成物の硬化性が向上する傾向にあり得る。
【0216】
本発明の樹脂組成物において、エステル化合物(A)の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下であり得る。また、のエステル化合物(A)の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上等であり得る。一実施形態において、エステル化合物(A)の含有量をこの範囲内とすることで、硬化物の誘電特性が優れたものとなると共に、硬化性、耐熱性、耐湿性等に優れた硬化物を提供でき得る。
【0217】
本発明の樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有していてもよい。一実施形態において、本発明の樹脂組成物に無機充填材を含有させることにより、線熱膨張率を低下させ、誘電正接を低下させることができ得る。
【0218】
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。なかでも、無定形シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカ等のシリカが好ましく、とくに絶縁層の表面粗さを低下させるという点で溶融シリカ、球状シリカがより好ましく、球状溶融シリカが更に好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されている球状溶融シリカとして、アドマテックス社製「SOC2」、「SOC1」等が挙げられる。
【0219】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、絶縁層表面が低粗度となり、微細配線形成を行うことを可能にするという観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましく、1μm以下が更に一層好ましく、0.8μm以下が殊更好ましい。一方、樹脂組成物の粘度が上昇し、取り扱い性が低下するのを防止するという観点から、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましく、0.07μm以上が更に一層好ましく、0.1μm以上が殊更好ましい。上記無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、堀場製作所社製 LA-950等を使用することができる。
【0220】
無機充填材は、アミノシラン系カップリング剤、ウレイドシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、スチリルシラン系カップリング剤、アクリレートシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理してその耐湿性、分散性を向上させたものが好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0221】
本発明の樹脂組成物において、無機充填材の含有量は、樹脂組成物に要求される特性によっても異なるが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。無機充填材の含有量の下限は、例えば、0質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上等であり、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。一実施形態において、無機充填材の含有量が少なすぎると、硬化物の線熱膨張率が高くなり、一方で、含有量が多すぎると樹脂シートを調製する際にフィルム化が困難となる場合や、硬化物が脆くなる場合がある。
【0222】
本発明の樹脂組成物は、さらに熱可塑性樹脂を含有していてもよい。一実施形態において、本発明の樹脂組成物に熱可塑性樹脂を含有させることにより、硬化物の機械強度を向上させることができ、更に樹脂シートの形態で使用する場合のフィルム成型能を向上させることもでき得る。
【0223】
熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができ、特にフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は8000~200000の範囲であるのが好ましく、12000~100000の範囲がより好ましい。なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として島津製作所社製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0224】
本発明の樹脂組成物において、熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、下限は、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上等であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。一実施形態において、熱可塑性樹脂の含有量が0.1~10質量%の範囲内であることにより、フィルム成型能や機械強度向上の効果が発揮され、さらに溶融粘度の上昇や湿式粗化工程後の絶縁層表面の粗度を低下させることができ得る。
【0225】
本発明の樹脂組成物は、さらにエステル化合物(A)以外のエポキシ樹脂硬化剤を含有していてもよい。
【0226】
エステル化合物(A)以外のエポキシ樹脂硬化剤としては、TD2090、TD2131(DIC社製)、MEH-7600、MEH-7851、MEH-8000H(明和化成社製)、NHN、CBN、GPH-65、GPH-103(日本化薬社製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(新日鐵化学社製)、LA7052、LA7054、LA3018,LA1356(DIC社製)などのフェノール系硬化剤;F-a、P-d(四国化成社製)、HFB2006M(昭和高分子社製)などのベンゾオキサジン系硬化剤;メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物などの酸無水物系硬化剤;PT30、PT60、BA230S75(ロンザジャパン社製)などのシアネートエステル系硬化剤;ベンゾオキサジン系硬化剤などが挙げられる。
【0227】
本発明の樹脂組成物において、エステル化合物(A)以外のエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、下限は、0質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上等であり得る。
【0228】
本発明の樹脂組成物は、さらにエポキシ樹脂硬化促進剤を含有していてもよい。一実施形態において、本発明の樹脂組成物にエポキシ樹脂硬化促進剤を含有させることにより、硬化時間及び硬化温度を効率的に調整することができ得る。
【0229】
エポキシ樹脂硬化促進剤としては、例えば、TPP、TPP-K、TPP-S、TPTP-S(北興化学工業社製)などの有機ホスフィン化合物、キュアゾール2MZ、2E4MZ、Cl1Z、Cl1Z-CN、Cl1Z-CNS、Cl1Z-A、2MZ-OK、2MA-OK、2PHZ(四国化成工業社製)などのイミダゾール化合物、ノバキュア(旭化成工業社製)、フジキュア(富士化成工業社製)などのアミンアダクト化合物、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7,4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4-ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の有機金属錯体又は有機金属塩等が挙げられる。硬化促進剤は2種以上を併用してもよい。
【0230】
本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、下限は、0質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上等であり得る。
【0231】
本発明の樹脂組成物は、さらに難燃剤を含有していてもよい。難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、リン酸塩、リン酸エステル、ポリリン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスフィン酸エステル、ホスホン酸塩、ホスホン酸エステル等のリン系難燃剤;脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、尿素化合物等の窒素系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等のアンチモン化合物等の無機系難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、塩素化パラフィン、臭素化ポリカーボネート樹脂、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ベンジルポリアクリレート樹脂等のハロゲン系難燃剤等が挙げられ、中でも、リン系難燃剤が好ましい。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0232】
本発明の樹脂組成物において、難燃剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下であり、下限は、0質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上等であり得る。
【0233】
本発明の樹脂組成物は、さらに有機充填材を含有していてもよい。有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられ、ゴム粒子が好ましい。ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されず、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER-91(日本合成ゴム社製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、アイカ工業社製)パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業社製)などが挙げられる。有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm~1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm~0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製「FPAR-1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。
【0234】
本発明の樹脂組成物において、有機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、下限は、0質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上等であり得る。
【0235】
本発明の樹脂組成物は、不揮発成分として、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、マレイミド系ラジカル重合性化合物、ビニルフェニル系ラジカル重合性化合物、(メタ)アクリル系ラジカル重合性化合物、アリル系ラジカル重合性化合物、ポリブタジエン系ラジカル重合性化合物等のラジカル重合性化合物;過酸化物系ラジカル重合開始剤、アゾ系ラジカル重合開始剤等のラジカル重合開始剤;エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シリコーン系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤等の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン酸エステル系分散剤、ポリオキシアルキレン系分散剤、アセチレン系分散剤、シリコーン系分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤等の分散剤;ボレート系安定剤、チタネート系安定剤、アルミネート系安定剤、ジルコネート系安定剤、イソシアネート系安定剤、カルボン酸系安定剤、カルボン酸無水物系安定剤等の安定剤等が挙げられる。その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0236】
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発性成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有する場合がある。有機溶剤としては、不揮発性成分の少なくとも一部を溶解可能なものである限り、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。有機溶剤は、使用する場合、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0237】
有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、一実施形態において、樹脂組成物中の全成分を100質量%とした場合、例えば、60質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下等であり得る。
【0238】
本発明の樹脂組成物は、上記の成分のうち必要な成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調製することができる。
【0239】
本発明の樹脂組成物は、エステル化合物(A)を含む。このような樹脂組成物を用いることにより、優れた誘電特性を備える硬化物を得ることができ得る。このような樹脂組成物を用いることにより、硬化性、耐熱性、耐湿性(耐加水分解性)等に優れた硬化物を得ることができ得る。
【0240】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物は、硬化性に優れ得る。したがって、一実施形態において、例えば、下記試験例1の方法で測定したゲルタイムが、好ましくは100秒以下、より好ましくは80秒以下、さらに好ましくは70秒以下、特に好ましくは60秒以下であり得る。
【0241】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、耐熱性又は耐湿性(耐加水分解性)に優れ得る。したがって、一実施形態において、例えば、下記試験例2の方法で測定した、130℃、85%RHの条件で、200時間、3.3Vの電圧を、直流電源を接続した配線に与えた場合の200時間後の評価基板の絶縁抵抗値が、好ましくは1.0×10Ω以上、より好ましくは1.0×10Ω以上、さらに好ましくは1.0×10Ω以上、特に好ましくは1.0×10Ω以上であり得る。
【0242】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、優れた誘電特性を有し得る。したがって、一実施形態において、例えば、下記試験例3のように5.8GHz、23℃で測定した場合の樹脂組成物の硬化物(190℃90分加熱して得られる硬化物)の誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.0200以下、0.0100以下、又は0.0090以下、より好ましくは0.0080以下、又は0.0070以下、さらに好ましくは0.0065以下、又は0.0060以下、特に好ましくは0.0055以下、又は0.0050以下となり得る。
【0243】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物は、耐熱性に優れ得る。したがって、一実施形態において、例えば、下記試験例4の方法で測定した、樹脂組成物の硬化物(190℃90分加熱して得られる硬化物)のガラス転移温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは140℃以上、さらにより好ましくは150℃以上、特に好ましくは160℃以上であり得る。
【0244】
本発明の樹脂組成物は、絶縁用途の樹脂組成物、特に、絶縁層を形成するための樹脂組成物として好適に使用することができる。具体的には、絶縁層上に形成される導体層(再配線層を含む)を形成するための当該絶縁層を形成するための樹脂組成物(導体層を形成するための絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。また、後述するプリント配線板において、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層形成用樹脂組成物)として好適に使用することができる。本発明の樹脂組成物はまた、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト、アンダーフィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途で広範囲に使用できる。
【0245】
また、例えば、以下の(1)~(6)工程を経て半導体チップパッケージが製造される場合、本発明の樹脂組成物は、再配線層を形成するための絶縁層としての再配線形成層用の樹脂組成物(再配線形成層形成用の樹脂組成物)、及び半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)としても好適に使用することができる。半導体チップパッケージが製造される際、封止層上に更に再配線層を形成してもよい。
(1)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(2)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(3)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(4)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(5)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、及び
(6)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程
【0246】
また、本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
【0247】
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物を含有するシート状積層材料の形態で用いることが好適である。
【0248】
シート状積層材料としては、以下に示す樹脂シート、プリプレグが好ましい。
【0249】
一実施形態において、樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを含んでなり、樹脂組成物層は本発明の樹脂組成物から形成される。
【0250】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化、及び当該樹脂組成物の硬化物が薄膜であっても絶縁性に優れた硬化物を提供できるという観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、5μm以上、10μm以上等とし得る。
【0251】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0252】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0253】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0254】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0255】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」、東レ社製の「ルミラーT60」、帝人社製の「ピューレックス」、ユニチカ社製の「ユニピール」等が挙げられる。
【0256】
支持体の厚さは、特に限定されないが、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0257】
一実施形態において、樹脂シートは、さらに必要に応じて、任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0258】
樹脂シートは、例えば、液状の樹脂組成物をそのまま、或いは有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、これを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0259】
有機溶剤としては、樹脂組成物の成分として説明した有機溶剤と同様のものが挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0260】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分間~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0261】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0262】
一実施形態において、プリプレグは、シート状繊維基材に本発明の樹脂組成物を含浸させて形成される。
【0263】
プリプレグに用いるシート状繊維基材は特に限定されず、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー不織布等のプリプレグ用基材として常用されているものを用いることができる。プリント配線板の薄型化の観点から、シート状繊維基材の厚さは、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは20μm以下である。シート状繊維基材の厚さの下限は特に限定されない。通常、10μm以上である。
【0264】
プリプレグは、ホットメルト法、ソルベント法等の公知の方法により製造することができる。
【0265】
プリプレグの厚さは、上述の樹脂シートにおける樹脂組成物層と同様の範囲とし得る。
【0266】
本発明のシート状積層材料は、プリント配線板の絶縁層を形成するため(プリント配線板の絶縁層用)に好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するため(プリント配線板の層間絶縁層用)により好適に使用することができる。
【0267】
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物を硬化して得られる硬化物からなる絶縁層を含む。
【0268】
プリント配線板は、例えば、上述の樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して絶縁層を形成する工程
【0269】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材であって、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。また、該基板は、その片面又は両面に導体層を有していてもよく、この導体層はパターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に導体層(回路)が形成された内層基板は「内層回路基板」ということがある。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0270】
内層基板と樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0271】
内層基板と樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施され得る。
【0272】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0273】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0274】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0275】
工程(II)において、樹脂組成物層を硬化(例えば熱硬化)して、樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0276】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、一実施形態において、硬化温度は好ましくは120℃~250℃、より好ましくは150℃~240℃、さらに好ましくは170℃~230℃である。硬化時間は好ましくは5分間~120分間、より好ましくは10分間~100分間、さらに好ましくは15分間~100分間とすることができる。
【0277】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃~120℃、好ましくは60℃~115℃、より好ましくは70℃~110℃の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間予備加熱してもよい。
【0278】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)~工程(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板を形成してもよい。
【0279】
他の実施形態において、本発明のプリント配線板は、上述のプリプレグを用いて製造することができる。製造方法は基本的に樹脂シートを用いる場合と同様である。
【0280】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0281】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。通常、この工程(IV)において、スミアの除去も行われる。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0282】
粗化処理に用いる膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃~90℃の膨潤液に絶縁層を1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に絶縁層を5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0283】
粗化処理に用いる酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~100℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0284】
また、粗化処理に用いる中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。
【0285】
中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0286】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されるものではないが、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。また、粗化処理後の絶縁層表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されるものではなく、例えば、1nm以上、2nm以上等とし得る。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0287】
工程(V)は、導体層を形成する工程であり、絶縁層上に導体層を形成する。導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0288】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0289】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm~35μm、好ましくは5μm~30μmである。
【0290】
一実施形態において、導体層は、メッキにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にメッキして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができ、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0291】
まず、絶縁層の表面に、無電解メッキによりメッキシード層を形成する。次いで、形成されたメッキシード層上に、所望の配線パターンに対応してメッキシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出したメッキシード層上に、電解メッキにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なメッキシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0292】
他の実施形態において、導体層は、金属箔を使用して形成してよい。金属箔を使用して導体層を形成する場合、工程(V)は、工程(I)と工程(II)の間に実施することが好適である。例えば、工程(I)の後、支持体を除去し、露出した樹脂組成物層の表面に金属箔を積層する。樹脂組成物層と金属箔との積層は、真空ラミネート法により実施してよい。積層の条件は、工程(I)について説明した条件と同様としてよい。次いで、工程(II)を実施して絶縁層を形成する。その後、絶縁層上の金属箔を利用して、サブトラクティブ法、モディファイドセミアディティブ法等の従来の公知の技術により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0293】
金属箔は、例えば、電解法、圧延法等の公知の方法により製造することができる。金属箔の市販品としては、例えば、JX日鉱日石金属社製のHLP箔、JXUT-III箔、三井金属鉱山社製の3EC-III箔、TP-III箔等が挙げられる。
【0294】
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0295】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0296】
本発明の半導体装置は、好適な実施形態において、ファンナウト(Fan-Out)型の半導体装置である。
【実施例
【0297】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件は、室温(25℃)である。特に気圧の指定が無い場合の圧力条件は、大気圧(1atm)である。
【0298】
<実施例A-1>
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)228g(1.0mol)、ペンタフルオロフェノール184g(1.0mol)、イソフタル酸クロリド305g(1.5mol)およびメチルイソブチルケトン800gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。系内を50℃まで加温してトリエチルアミン404g(4.0mol)を激しく撹拌しながら1時間要して滴下した。滴下終了後、更に1時間撹拌を続けた。水300gを添加して副生塩を溶解して静置分液して下層の水層を棄却した。その後、水層のpHが7になるまで水洗を繰り返した後に脱水処理して精密濾過によって不溶不純物を除去した。その液を減圧下170℃まで昇温して溶剤を乾燥させることによって生成物(A-1)540gを得た。生成物(A-1)のエステル基当量は203g/eq.、フッ素原子含有量は15.6質量%であった。得られた生成物(A-1)について、下記のGPC測定条件およびIR測定条件に基づきゲル浸透クロマトグラフ分析法(GPC)及び赤外分光分析法(IR)による測定を行った。図1は、得られた生成物(A-1)のGPCチャートを示す。図2は、得られた生成物(A-1)のIRチャートを示す。マススペクトル分析では、n=0成分に相当するm/z=498、n=1成分に相当するm/z=856、n=2成分に相当するm/z=1214の各ピークを確認できた。
【0299】
(GPC測定条件)
測定装置:東ソー株式会社製「HPLC-8420GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperHZ4000」(1本)+東ソー株式会社製「TSKgel SuperHZ3000」(1本)+東ソー株式会社製「TSKgel SuperHZ2000」(2本)
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/分
【0300】
(IR測定条件)
測定装置:JASCO株式会社製「FT/IR-4600」
【0301】
<実施例A-2>
ビスフェノールAの代わりに2,7-ジヒドロキシナフタレン160g(1.0mol)を使用した以外は実施例A-1と同様にして生成物(A-2)(エステル化合物の混合物)601gを得た。生成物(A-2)のエステル基当量は194g/eq.、フッ素原子含有量は24.1質量%であった。得られた生成物(A-2)について、実施例A-1と同様にGPC及びIRによる測定を行った。図3は、得られた生成物(A-2)のGPCチャートを示す。図4は、得られた生成物(A-2)のIRチャートを示す。またマススペクトル分析では、n=0成分に相当するm/z=498、n=1成分に相当するm/z=788、n=2成分に相当するm/z=1078の各ピークを確認できた。
【0302】
<実施例A-3>
ビスフェノールAの代わりにジシクロペンタジエン-フェノール重付加物(軟化点85℃,水酸基当量165g/eq.)330g(水酸基2.0mol)を使用した以外は実施例A-1と同様にして生成物(A-3)642gを得た。生成物(A-3)のエステル基当量は233g/eq.、フッ素原子含有量は13.6質量%であった。得られた生成物(A-3)について、実施例A-1と同様にGPC及びIRによる測定を行った。図5は、得られた生成物(A-3)のGPCチャートを示す。図6は、得られた生成物(A-3)のIRチャートを示す。またマススペクトル分析では、n=0成分に相当するm/z=498、n=1成分に相当するm/z=948、n=2成分に相当するm/z=1399の各ピークを確認できた。
【0303】
<実施例A-4>
ビスフェノールAの代わりに2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)336g(1.0mol)を使用した以外は実施例A-1と同様にして生成物(A-4)640gを得た。生成物(A-4)のエステル基当量は238g/eq.、フッ素原子含有量は29.2質量%であった。得られた生成物(A-4)について、実施例A-1と同様にGPC及びIRによる測定を行った。図7は、得られた生成物(A-4)のGPCチャートを示す。図8は、得られた生成物(A-4)のIRチャートを示す。またマススペクトル分析では、n=0成分に相当するm/z=498、n=1成分に相当するm/z=964、n=2成分に相当するm/z=1430の各ピークを確認できた。
【0304】
<実施例A-5>
ペンタフルオロフェノールの代わりに4-フルオロフェノール121g(1.0mol)を使用した以外は実施例A-4と同様にして生成物(A-5)535gを得た。生成物(A-5)のエステル基当量は215g/eq..、フッ素原子含有量は20.7質量%であった。得られた生成物(A-5)について、実施例A-1と同様にGPC及びIRによる測定を行った。図9は、得られた生成物(A-5)のGPCチャートを示す。図10は、得られた生成物(A-5)のIRチャートを示す。またマススペクトル分析では、n=0成分に相当するm/z=354、n=1成分に相当するm/z=820、n=2成分に相当するm/z=1286の各ピークを確認できた。
【0305】
<比較例A-1>
ペンタフルオロフェノールの代わりにフェノール94g(1.0mol)を使用した以外は実施例A-1と同様にして生成物(A-1’)502gを得た。生成物(A-1’)のエステル基当量は208g/eq..、フッ素原子含有量は18.2質量%であった。得られた生成物(A-1’)について、実施例A-1と同様にGPC及びIRによる測定を行った。図11は、得られた生成物(A-1’)のGPCチャートを示す。図12は、得られた生成物(A-1’)のIRチャートを示す。またマススペクトル分析では、n=0成分に相当するm/z=318、n=1成分に相当するm/z=784、n=2成分に相当するm/z=1250の各ピークを確認できた。
【0306】
上記の生成物(A-1)~(A-5)及び(A-1’)に含まれる主成分の化合物、エステル基当量及びフッ素原子含有量を表1にまとめる。
【0307】
【表1】
【0308】
<実施例B-1:樹脂組成物(B-1)の調製>
実施例A-1で得られた生成物(A-1)203gとビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC-3000」、エポキシ当量275g/eq.)275gをメチルエチルケトン500gに溶解し、硬化促進剤としてジメチルアミノピリジン5.0gを添加して硬化性評価用の樹脂組成物(B-1)を調製した。
【0309】
<実施例B-2:樹脂組成物(B-2)の調製>
実施例A-1で得られた生成物(A-1)の代わりに実施例A-2で得られた生成物(A-2)194gを使用した以外は、実施例B-1と同様にして樹脂組成物(B-2)を調製した。
【0310】
<実施例B-3:樹脂組成物(B-3)の調製>
実施例A-1で得られた生成物(A-1)の代わりに実施例A-3で得られた生成物(A-3)233gを使用した以外は、実施例B-1と同様にして樹脂組成物(B-3)を調製した。
【0311】
<実施例B-4:樹脂組成物(B-4)の調製>
実施例A-1で得られた生成物(A-1)の代わりに実施例A-4で得られた生成物(A-4)238gを使用した以外は、実施例B-1と同様にして樹脂組成物(B-4)を調製した。
【0312】
<実施例B-5:樹脂組成物(B-5)の調製>
実施例A-1で得られた生成物(A-1)の代わりに実施例A-5で得られた生成物(A-5)215gを使用した以外は、実施例B-1と同様にして樹脂組成物(B-5)を調製した。
【0313】
<比較例B-1:樹脂組成物(B-1’)の調製>
実施例A-1で得られた生成物(A-1)の代わりに比較例A-1で得られた活性生成物(A-1’)208gを使用した以外は、実施例B-1と同様にして樹脂組成物(B-1’)を調製した。
【0314】
<試験例1:ゲルタイムの測定による硬化性評価>
160℃キュアプレートにより、上記の樹脂組成物(B-1)~(B-5)及び(B-1’)のゲルタイムを測定した。実施例B-1~5及び比較例B-1で調製した樹脂組成物(B-1)~(B-5)及び(B-1’)の硬化性を評価した結果を表2に示す。
【0315】
【表2】
【0316】
本発明の化合物のフッ素原子が芳香族炭素に直接結合した構造は、電子密度の関係で、エステル交換反応(活性エステルの架橋反応)が速いため、硬化性の向上に寄与していると考えられる。
【0317】
<実施例C-1:樹脂組成物(C-1)の調製>
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、三菱化学社製「828US」)15部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量291、日本化薬社製「NC3000H」)15部とをメチルエチルケトン(以下「MEK」と略称する。)15部、シクロヘキサノン15部に攪拌しながら加熱溶解させた。そこへ実施例A-1で得られた生成物(A-1)(エステル基当量203g/eq.、固形分65%のトルエン溶液)40部、硬化促進剤(広栄化学工業社製、「4-ジメチルアミノピリジン」)0.15部、球形シリカ(平均粒径0.5μm、フェニルアミノシラン処理付「SO-C2」、アドマテックス社製、単位質量あたりのカーボン量0.18%)100部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL6954BH30」、固形分30質量%のMEK溶液、重量平均分子量40000)15部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物(C-1)を調製した。
【0318】
<実施例C-2:樹脂組成物(C-2)の調製>
生成物(A-1)40部の代わりに実施例A-2で得られた生成物(A-2)38部を使用したこと以外は、実施例C-1と同様にして樹脂組成物(C-2)を調製した。
【0319】
<実施例C-3:樹脂組成物(C-3)の調製>
生成物(A-1)40部の代わりに実施例A-3で得られた生成物(A-3)46部を使用したこと以外は、実施例C-1と同様にして樹脂組成物(C-3)を調製した。
【0320】
<実施例C-4:樹脂組成物(C-4)の調製>
生成物(A-1)40部の代わりに実施例A-4で得られた生成物(A-4)47部を使用したこと以外は、実施例C-1と同様にして樹脂組成物(C-4)を調製した。
【0321】
<実施例C-5:樹脂組成物(C-5)の調製>
生成物(A-1)40部の代わりに実施例A-5で得られた生成物(A-5)42部を使用したこと以外は、実施例C-1と同様にして樹脂組成物(C-5)を調製した。
【0322】
<比較例C-1:樹脂組成物(C-1’)の調製>
生成物(A-1)40部の代わりに比較例A-1で得られた生成物(A-1’)41部を使用したこと以外は、実施例C-1と同様にして樹脂組成物(C-1’)を調製した。
【0323】
<試験例2:絶縁信頼性の評価>
(1)樹脂シートの作製
実施例C-1~5及び比較例C-1で得られた樹脂組成物(C-1)~(C-5)及び(C-1’)をポリエチレンテレフタレート(厚さ38μm、以下「PET」と略称する。)上に、乾燥後の樹脂厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂シートを作製した。
【0324】
(2)積層板の下地処理
内層回路の形成されたガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、残銅率60%、基板厚み0.3mm、松下電工社製R5715ES)の両面をメック社製CZ8100に浸漬して銅表面の粗化処理を行った。
【0325】
(3)樹脂シートのラミネート
(1)で作製した樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機製作所社製)を用いて、積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaで圧着させることにより行った。
【0326】
(4)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた樹脂シートからPETフィルムを剥離し、170℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化した。
【0327】
(5)粗化処理
積層板を、膨潤液である、アトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガンドPに60℃で10分間浸漬し、次に粗化液として、アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に80℃で20分間浸漬、最後に中和液として、アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントPに40℃で5分間浸漬した。この粗化処理後の積層板をサンプルAとした。
【0328】
(6)セミアディティブ工法によるメッキ形成
絶縁層表面に回路を形成するために、積層板を、PdClを含む無電解メッキ用溶液に浸漬し、次に無電解銅メッキ液に浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、30μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を180℃にて60分間行った。この積層板をサンプルBとした。
【0329】
(7)絶縁信頼性の評価(耐熱耐湿性評価)
円形に切り抜いたレジストテープ(日東電工社製、エレップマスキングテープ N380)をサンプルBの導体層上に貼り、塩化第二鉄水溶液にて、30分間浸漬させた。レジストテープの貼っていない部分の導体層を除去し、絶縁層上に円形の導体層が形成された評価基板を作製した。その後、絶縁層の一部分を削ることにより下地の銅箔を露出させた。そして、露出させた銅箔と円形の導体層とを配線(ワイヤー)で接続させた。評価基板の配線に直流電源(高砂製作所社製、TP018-3D)を接続し、130℃、85%RHの条件で、200時間、3.3Vの電圧を与えた。200時間後に抵抗値を測定し、抵抗値が1.0×10Ω以上のものを「○」とし、1.0×10Ω以上1.0×10Ω未満のものを「△」とし、1.0×10Ω未満のものを「×」とした。
【0330】
<試験例3:誘電特性(誘電正接)の測定>
試験例2(1)で作製した樹脂シートを190℃で90分熱硬化させて、PETフィルムを剥離してシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断し、関東応用電子開発社製空洞共振器摂動法誘電率測定装置CP521およびアジレントテクノロジー社製ネットワークアナライザーE8362Bを使用して、空洞共振法で測定周波数5.8GHz、23℃にて誘電正接(tanδ)の測定を行った。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0331】
<試験例4:ガラス転移温度の測定>
試験例3で得たシート状の硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、動的粘弾性測定装置(EXSTAR6000、SIIナノテクノロジー社製)を使用して引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重200mN、昇温速度2℃/分の測定条件にて測定した。得られたtanδのピークトップをガラス転移温度(℃)として算出した。
【0332】
試験例2~4の測定結果及び評価結果を下記表3に示す。
【0333】
【表3】
【0334】
表2と表3に示されるように、樹脂組成物の成分としてエステル化合物(A)を用いた場合、従来の活性エステル化合物を用いた場合に比べ、硬化物の硬化性、誘電特性、耐熱性、耐湿性が優れることがわかる。
【0335】
特に、フッ素原子が芳香族炭素に直接結合した構造は、剛直性が高く、温度変化や電場変化に対して、分子鎖の揺らぎが小さいため、絶縁信頼性ないし誘電特性の向上に寄与していると考えられる。
【0336】
すなわちエステル化合物(A)を用いた樹脂組成物及び硬化物は、工程性や信頼性を犠牲にすることなく、5Gデバイスなどの高周波環境において求められる低伝送損失性を高度な水準で具備できる材料である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12