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特許7464150繊維強化材における繊維層を識別する、識別装置、識別方法、及び、識別プログラム
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  • 特許-繊維強化材における繊維層を識別する、識別装置、識別方法、及び、識別プログラム 図1
  • 特許-繊維強化材における繊維層を識別する、識別装置、識別方法、及び、識別プログラム 図2
  • 特許-繊維強化材における繊維層を識別する、識別装置、識別方法、及び、識別プログラム 図3
  • 特許-繊維強化材における繊維層を識別する、識別装置、識別方法、及び、識別プログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】繊維強化材における繊維層を識別する、識別装置、識別方法、及び、識別プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20240402BHJP
【FI】
G01N23/046
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022572909
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032693
(87)【国際公開番号】W WO2022145091
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020218938
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 貴範
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052489(WO,A1)
【文献】特開2017-156271(JP,A)
【文献】特表2013-511406(JP,A)
【文献】特開2020-126023(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196855(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
B29C 70/00-70/88
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維層からなる補強材を初期形状から変形させて所定形状で成形した繊維強化材に関して、
前記繊維強化材の内部の物理量分布を受信する受信部と、
前記物理量分布に基づいて、前記繊維強化材に含まれる繊維がいずれの前記繊維層に属するかを識別するコントローラと、
を備える識別装置であって、
前記コントローラは、
前記初期形状と前記所定形状を対応付ける変形データに基づいて、前記物理量分布を前記初期形状にマッピングした第1データを生成し、
前記第1データの二値化を行って、前記繊維層を識別するラベルを前記初期形状にマッピングした第2データを生成し、
前記変形データに基づいて前記第2データを前記所定形状にマッピングすることで、前記ラベルを前記所定形状にマッピングする、識別装置。
【請求項2】
前記二値化は、前記初期形状で成形した繊維強化材の内部の物理量分布と前記繊維層の分布を対とする教師データに基づいて生成された学習モデルに基づく、請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記二値化は、セマンティック・セグメンテーションに基づく、請求項1又は2に記載の識別装置。
【請求項4】
前記変形データは、前記補強材を前記所定形状から前記初期形状まで展開する計算手法に基づいて生成されたデータである、請求項1~3のいずれか一項に記載の識別装置。
【請求項5】
複数の繊維層からなる補強材を初期形状から変形させて所定形状で成形した繊維強化材に関して、前記繊維強化材の内部の物理量分布に基づいて、前記繊維強化材に含まれる繊維がいずれの前記繊維層に属するかを識別する識別方法であって、
前記初期形状と前記所定形状を対応付ける変形データに基づいて、前記物理量分布を前記初期形状にマッピングした第1データを生成し、
前記第1データの二値化を行って、前記繊維層を識別するラベルを前記初期形状にマッピングした第2データを生成し、
前記変形データに基づいて前記第2データを前記所定形状にマッピングすることで、前記ラベルを前記所定形状にマッピングする、識別方法。
【請求項6】
複数の繊維層からなる補強材を初期形状から変形させて所定形状で成形した繊維強化材に関して、前記繊維強化材の内部の物理量分布に基づいて、前記繊維強化材に含まれる繊維がいずれの前記繊維層に属するかを識別する識別プログラムであって、
コンピュータに、
前記初期形状と前記所定形状を対応付ける変形データに基づいて、前記物理量分布を前記初期形状にマッピングした第1データを生成するステップと、
前記第1データの二値化を行って、前記繊維層を識別するラベルを前記初期形状にマッピングした第2データを生成するステップと、
前記変形データに基づいて前記第2データを前記所定形状にマッピングすることで、前記ラベルを前記所定形状にマッピングするステップと、
を実行させるための識別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維強化材における繊維層を識別する、識別装置、識別方法、及び、識別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検査対象物に関して、X線タルボ撮影装置によってモアレ画像を取得し、モアレ画像に基づいて生成した二次元の再構成画像に基づいて、当該検査対象物の良否判定を行うための評価指標を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-184450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高強度の繊維(強化繊維)を母材(マトリックス)と複合した、いわゆる繊維強化材によって成形された構造物の内部の強化繊維の向きを検査しようとする場合、検査対象である強化繊維がどの繊維層に属するかを識別する必要がある。しかしながら、特許文献1に開示される技術を用いる場合、繊維層の識別を自動的に行うことは困難であるため、代わりに、作業員が手動で繊維層の識別を行う必要があった。したがって、強化繊維の向きの検査に必要な時間とコストが膨大なものとなっていた。
【0005】
より具体的には、構造物の屈曲部など、複数の繊維層からなる補強材を折り曲げて形成した箇所では、補強材の折り曲げ方向に関する情報を確認しなければ、繊維強化材に含まれる繊維がいずれの繊維層に属するかを識別する際の識別の精度を向上させにくい。そのため、繊維層の識別作業に時間とコストがかかるという問題が生じていた。また、繊維層の識別作業に習熟した作業員を養成するための時間とコストが生じるという問題が生じていた。
【0006】
本開示は上述の状況を鑑みて成されたものである。即ち、本開示は、繊維強化材における繊維層の識別を自動化し、強化繊維の向きの検査に必要な時間とコストを削減することができる、識別装置、識別方法、及び、識別プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る識別装置は、複数の繊維層からなる補強材を初期形状から変形させて所定形状で成形した繊維強化材に関して、繊維強化材の内部の物理量分布を初期形状にマッピングした第1データを生成する。そして、第1データの二値化を行って、繊維層を識別するラベルを初期形状にマッピングした第2データを生成し、変形データに基づいて第2データを所定形状にマッピングする。
【0008】
上記二値化は、初期形状で成形した繊維強化材の内部の物理量分布と繊維層の分布を対とする教師データに基づいて生成された学習モデルに基づくものであってもよい。
【0009】
上記二値化は、セマンティック・セグメンテーションに基づくものであってもよい。
【0010】
上記変形データは、補強材を所定形状から初期形状まで展開する計算手法に基づいて生成されたデータであってもよい。
【0011】
本開示に係る識別方法、及び、識別プログラムは、複数の繊維層からなる補強材を初期形状から変形させて所定形状で成形した繊維強化材に関して、繊維強化材の内部の物理量分布を初期形状にマッピングした第1データを生成する。そして、第1データの二値化を行って、繊維層を識別するラベルを初期形状にマッピングした第2データを生成し、変形データに基づいて第2データを所定形状にマッピングする。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、繊維強化材における繊維層の識別を自動化し、強化繊維の向きの検査に必要な時間とコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、複数の繊維層からなる補強材を模式的に表す斜視図である。
図2図2は、繊維束を模式的に表す斜視図である。
図3図3は、曲げ部における繊維層を模式的に表す斜視図である。
図4図4は、一実施形態に係る識別装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
また、いくつかの図において、X,Y,Zは3次元座標系におけるそれぞれ軸方向を意味する。本明細書および添付の特許請求の範囲を通じて、これらの方向を引用するのは説明の便宜のために過ぎず、実施形態を制限するものではない。また各軸方向は互いに直交するとは限らない。
【0016】
[繊維強化材における補強材の態様]
繊維強化材は、一般に、高強度の繊維(強化繊維)からなる補強材を母材(マトリックス)と複合したものである。強化繊維は例えばグラファイト、ボロンナイトライド、あるいは炭化ケイ素のごときセラミックスよりなる。あるいは、ケブラーのごとき樹脂、あるいは適宜の金属や合金よりなることがありうる。マトリックスは、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは炭化ケイ素のごとき適宜のセラミックスである。マトリックスがセラミックスよりなるものは、特にセラミックス基複合材料(CMC)と呼ばれる。
【0017】
主に図1を参照するに、本実施形態による繊維強化材には、例えば強化繊維を3次元的に織成した補強材を利用することができる。補強材において、X,Y方向に繊維が走り、これらの繊維が互いを緩やかに拘束している。一例によれば、繊維束3,5はそれぞれX,Y方向に走り、また互いに層(繊維層)をなして互いに結合し、以って、複数の繊維層からなる補強材をなす。もちろんこれは例示に過ぎず、繊維は互いに直交ではなく斜め織であってもよく、また補強材は厚さ方向に積層されていない2次元的なものであってもよい。
【0018】
図2を参照するに、これらの繊維束3,5は、それぞれ、互いに略平行な複数の強化繊維1を束ねたものである。図示の例では各強化繊維1は真直だが、互いに撚り合わされていてもよい。一の繊維束3,5は例えば500ないし800本の強化繊維1を束ねたものだが、その数は任意に増減することができる。
【0019】
かかる複数の繊維層からなる補強材は、プレスやバギングのごとき公知の成形方法により、初期形状から適宜設定された所定形状に成形される。成形に引き続き、あるいは成形と並行して、マトリックス原料を含浸して固化することにより、マトリックスが形成されて繊維強化材が製造される。もちろんこれは説明の便宜に過ぎず、種々の製品が繊維強化材により製造される。
【0020】
繊維強化材における繊維層、繊維束の分布および向きは、物体内部を非破壊で観察可能な計測装置を利用して3次元的に観察することができる。例えばCMCのごとく光学的に不透明なものであっても、X線を利用したコンピュータ断層撮影(X線CT)を利用することができる。あるいは透明な樹脂を利用した繊維強化樹脂ならば、光学的手段を利用することも可能である。もちろん、これらに代えて、または加えて、他の粒子による内部観察手段を利用することができる。
【0021】
図3に示すように、補強材が多様な方向に曲がることが必要である。このように、構造物の屈曲部など、複数の繊維層からなる補強材を折り曲げて形成した箇所では、繊維強化材に含まれる繊維束がいずれの繊維層に属するかを識別する際の識別の精度を向上させにくい状況が生じる。折れ曲がりの角度が急峻になるほど、また、折れ曲がりの方向が複数方向に増えるほど、注目する繊維束が属する繊維層の識別の難易度が増す。
【0022】
[識別装置の構成]
図4は、識別装置の構成を示すブロック図である。
【0023】
図4に示すように、識別装置20は、受信部21と、データベース23と、コントローラ25と、出力部27と、を備える。コントローラ25は、受信部21、データベース23、出力部27と通信可能なように接続される。
【0024】
その他、出力部27は、識別装置20自体が備えていてもよいし、識別装置20の外部に設置されて、無線又は有線のネットワークによって識別装置20と接続されるものであってもよい。
【0025】
受信部21は、無線又は有線によって計測装置30と通信可能なように接続される。受信部21は、計測装置30によって取得した繊維強化材の内部の物理量分布に関するデータを受信する。
【0026】
データベース23は、後述するラベル生成部253によって実施する二値化に必要な情報を格納する。例えば、ラベル生成部253が学習モデルを用いて二値化を行う場合、屈曲していない形状(初期形状)にある補強材をそのまま成形して得られる繊維強化材の内部の物理量分布と繊維層の分布を対とする教師データに基づいて生成された学習モデルを格納する。
【0027】
例えば、学習モデルは、繊維強化材の内部のある位置に注目した際に、当該位置及びその周辺の物理量の分布に基づいて、当該位置が、補強材を構成する複数の繊維層のいずれに属すかを示すラベルを出力するよう構成されていてもよい。このように、一定の領域に属する各ドットに対するラベル付けを行って二値化を行う手法の例としては、セマンティック・セグメンテーションが挙げられる。
【0028】
その他、データベース23は、受信部21によって取得した繊維強化材の内部の物理量分布に関するデータを格納するものであってもよい。
【0029】
出力部27は、後述するコントローラ25によって生成された情報を出力する。特に、出力部27は、コントローラ25によって、繊維強化材の所定形状に対してマッピングされたラベルであって、繊維強化材を構成する複数の繊維層のいずれかを識別するラベルをユーザ等に出力する。
【0030】
例えば、出力部27は、複数の表示画素の組合せにより図形、文字を表示することで、ユーザに情報を提示するディスプレイであってもよいし、音声により、ユーザに情報を通知するスピーカであってもよい。出力部27による情報の出力方法は、ここに挙げた例に限定されない。
【0031】
コントローラ25(制御部)は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。コントローラ25には、識別装置として機能するためのコンピュータプログラム(識別プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ25は、識別装置が備える複数の情報処理回路(251、253、255、257)として機能する。なお、コンピュータプログラム(識別プログラム)は、コンピュータによって読み書き可能な記憶媒体に格納されるものであってもよい。
【0032】
本開示では、ソフトウェアによって複数の情報処理回路(251、253、255、257)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(251、253、255、257)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(251、253、255、257)を個別のハードウェアにより構成してもよい。さらに、情報処理回路(251、253、255、257)は、計測装置30の監視または制御に用いる制御ユニットと兼用してもよい。
【0033】
図4に示すように、コントローラ25は、複数の情報処理回路(251、253、255、257)として、マッピング実行部251、ラベル生成部253、逆マッピング実行部255、変形データ取得部257を備える。
【0034】
変形データ取得部257は、繊維強化材を構成する補強材の所定形状と、補強材の初期形状とを対応付ける変形データを取得する。ここで、変形データとは、例えば、補強材の初期形状を表現するメッシュ構造の各ノード(変形前ノード)に対して、補強材の所定形状を表現するメッシュ構造の各ノード(変形後ノード)を対応付けたデータである。
【0035】
変形データ取得部257は、立体構造から平面の展開図を生成する既存の展開図算出の計算手法に基づいて、所定形状を平面状の初期形状に展開して、変形データを算出するものであってもよい。さらには、変形データ取得部257は、繊維強化材を成形する際の補強材を初期形状から所定形状まで変形させる工程を参照して、有限要素法を用いた変形シミュレーションなどにより、変形データを算出するものであってもよい。その他にも、変形データがユーザによって設定されるものであってもよい。
【0036】
なお、繊維強化材のうちユーザが解析対象範囲を設定し、当該解析対象範囲の形状を所定形状として、変形データ取得部257は変形データを算出するものであってもよい。さらには、変形データ取得部257は、ユーザが指定した初期形状を対象として変形データを算出するものであってもよい。その他、ユーザが変形データ自体を設定してもよい。
【0037】
マッピング実行部251は、変形データに基づいて、取得した物理量分布を初期形状にマッピングして第1データを生成する。具体的には、物理量分布に基づいて、所定形状に係る変形後ノードでの物理量が取得できている場合、当該変形後ノードに対応する変形前ノードを変形データに基づいて参照し、参照して得られた変形前ノードに、当該変形後ノードでの物理量を対応付ける。このようにして、初期形状に係る変形前ノードのそれぞれに対して、物理量分布に基づいて物理量の値が設定された第1データを、マッピング実行部251は生成する。
【0038】
ラベル生成部253は、第1データの二値化を行って、補強材を構成する繊維層を識別するラベルを初期形状にマッピングした第2データを生成する。例えば、データベース23に格納された学習モデルを使用して、初期形状に係る変形前ノードの位置にある繊維層を示すラベルを、当該変形前ノードに対応付ける。このようにして、初期形状に係る変形前ノードのそれぞれに対して、繊維層を識別するラベルが設定された第2データを、ラベル生成部253は生成する。
【0039】
逆マッピング実行部255は、変形データに基づいて、第2データを所定形状にマッピングすることで、ラベル生成部253にて設定されたラベルを所定形状にマッピングする。具体的には、第2データにおいて、初期形状に係る変形前ノードに対応付けられたラベルが取得できる場合、当該変形前ノードに対応する変形後ノードを変形データに基づいて参照し、参照して得られた変形後ノードに、変形前ノードでのラベルを対応付ける。このようにして、所定形状に係る変形後ノードのそれぞれに対して、繊維層を識別するラベルが設定されたデータを、逆マッピング実行部255は生成する。
【0040】
逆マッピング実行部255によって生成されたデータは、出力部27を経由して外部に出力される。
【0041】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本開示に係る識別装置、識別方法、及び、識別プログラムは、複数の繊維層からなる補強材を初期形状から変形させて所定形状で成形した繊維強化材に関して、繊維強化材の内部の物理量分布を初期形状にマッピングした第1データを生成する。そして、第1データの二値化を行って、繊維層を識別するラベルを初期形状にマッピングした第2データを生成し、変形データに基づいて第2データを所定形状にマッピングする。
【0042】
これにより、繊維強化材における繊維層の識別を自動化し、強化繊維の向きの検査に必要な時間とコストを削減することができる。また、構造物の屈曲部など、複数の繊維層からなる補強材を折り曲げて形成した箇所において、繊維強化材に含まれる繊維束がいずれの繊維層に属するかを識別する際の識別の精度を向上させることができる。
【0043】
上記二値化は、初期形状で成形した繊維強化材の内部の物理量分布と繊維層の分布を対とする教師データに基づいて生成された学習モデルに基づくものであってもよい。これにより、補強材の折り曲げ方向が複雑な所定形状であっても、初期形状で成形した繊維強化材の内部の物理量分布と繊維層の分布を対とする教師データに基づいて繊維層の識別を行うことができる。そのため、複雑な所定形状に対応した教師データを用意する必要がなく、さまざまな形状を持つ繊維強化材における繊維層の識別を自動化することができる。その結果、繊維層の識別の精度を向上させることができる。
【0044】
上記二値化は、セマンティック・セグメンテーションに基づくものであってもよい。これにより、物理量分布を測定した繊維強化材の内部を、繊維層ごとに複数の領域に分類することができる。その結果、繊維強化材の内部の繊維が属する繊維層を、繊維の位置情報に基づいて容易に判別できる。
【0045】
上記変形データは、補強材を所定形状から初期形状まで展開する計算手法に基づいて生成されたデータであってもよい。これにより、繊維強化材の解析中に、所定形状と初期形状との対応関係をユーザが別途指示する必要がなくなる。その結果、さまざまな形状を持つ繊維強化材における繊維層の識別を自動化することができる。その結果、繊維層の識別の精度を向上させることができる。
【0046】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサ、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置、又は、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
【0047】
本開示によれば、繊維強化材における繊維層の識別を自動化し、強化繊維の向きの検査に必要な時間とコストを削減することができるので、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「持続可能な生産消費形態を確保する。」に貢献することができる。
【0048】
本開示は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は、上述の説明から妥当な請求の範囲に係る事項によってのみ定められる。
【0049】
特願2020-218938号(出願日:2020年12月28日)の全内容は、ここに援用される。
【符号の説明】
【0050】
1 強化繊維
3,5 繊維束
20 識別装置
21 受信部
23 データベース
25 コントローラ
251 マッピング実行部
253 ラベル生成部
255 逆マッピング実行部
257 変形データ取得部
27 出力部
30 計測装置
図1
図2
図3
図4