(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】保護フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240402BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240402BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240402BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240402BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240402BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240402BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240402BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
C08J5/18 CEY
B32B27/00 M
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
B32B7/023
B32B7/12
(21)【出願番号】P 2023076325
(22)【出願日】2023-05-02
(62)【分割の表示】P 2021566409の分割
【原出願日】2019-12-23
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】建部 隆
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089433(JP,A)
【文献】国際公開第2019/045257(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/070131(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/167562(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/128995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
C08J 5/18
B32B 27/00
B32B 27/20
B32B 27/30
B32B 7/023
B32B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて接着される保護フィルムであって、
前記保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、シリカ粒子とを含み、
前記(メタ)アクリル系樹脂は、前記(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して、50~95質量%のメタクリル酸メチルに由来する構造単位と、1~25質量%のフェニルマレイミドに由来する構造単位と、1~25質量%のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位とを含む共重合体であり、
前記保護フィルムの面内遅相軸
と直交する方向に沿った断面において、
前記ゴム粒子は、長径と短径とを有する扁平形状を有し、
前記ゴム粒子の平均短径をRa、前記シリカ粒子の平均二次粒子径をRs2としたとき、
Rs2/Raが1.1以上であり、
前記保護フィルムのイエローインデックス(YI)は、1.2~1.8である、
保護フィルム。
【請求項2】
前記保護フィルムの、式(I)で表される波長550nmにおける位相差Ro、および、式(II)で表される波長550nmにおけるRtは、それぞれ下記関係を満たす、
請求項1に記載の保護フィルム。
|Ro|≦10nm
|Rt|≦10nm
式(I):Ro=(nx-ny)×d
式(II):Rt=((nx+ny)/2-nz)×d
(式中、
nxは、フィルムの面内遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を表し、
nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、フィルムの厚み(nm)を表す)
【請求項3】
Rs2/Raは、1.1~4.0である、
請求項1または2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
Raは、200nm以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記保護フィルムの厚みは、5~50μmである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の保護フィルム。
【請求項6】
前記ゴム粒子の含有量Mrと、前記シリカ粒子の含有量Msの質量比Mr/Msは、5~100である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の保護フィルム。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、光カチオン重合性組成物である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の保護フィルム。
【請求項8】
請求項1に記載の保護フィルムの製造方法であって、
50~95質量%のメタクリル酸メチルに由来する構造単位と、1~25質量%のフェニルマレイミドに由来する構造単位と、1~25質量%のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位とを含む(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、シリカ粒子と、溶媒とを含み、かつ前記ゴム粒子の平均一次粒子径をR、前記シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1としたとき、下記関係を満たすドープを得る工程と、
5<R/Rs1≦80
前記ドープを、支持体上に流延した後、乾燥および剥離して、膜状物を得る工程と、
前記膜状物を延伸して、前記保護フィルムを得る工程と
を有する、
保護フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびその製造方法、液晶表示装置、保護フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置に用いられる偏光板は、偏光子と、その両面に配置された保護フィルムとを含む。保護フィルムとしては、低吸湿性と寸法安定性を有し、かつ優れた透明性を有することから、(メタ)アクリル系樹脂フィルムが用いられている。
【0003】
ところで、偏光板は、通常、使用環境の湿度や温度によって、ベンドや部材の寸法変化を生じることがある。偏光板のベンドや部材の寸法変化によって応力が生じると、表示装置において、光学ムラを生じやすい。このような偏光板のベンドや部材の寸法変化などの応力に起因する光学ムラを抑制するために、偏光板の部材として、薄膜で、かつ光弾性係数の小さい保護フィルムを用いることが求められている。
【0004】
例えば、偏光子と、保護フィルムとしてアルキル(メタ)アクリレート単位と、ベンジル(メタ)アクリレート単位と、(メタ)アクリル酸単位とを有する(メタ)アクリル系樹脂組成物からなる光学フィルムとを有する偏光板が提案されている(例えば特許文献1)。このように、線膨張係数が低い光学フィルムを用いることで、偏光板のカールを抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、偏光板は、通常、偏光子と、保護フィルムとを接着剤を介して貼り合わせて作製される。接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤などの水系接着剤や、活性エネルギー線硬化型接着剤がある。中でも、疎水性を示す(メタ)アクリル系樹脂フィルムとの親和性が良いことや、短時間での接着が可能であり、偏光板の製造効率を高めうる観点などから、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることが検討されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されるような(メタ)アクリル系樹脂フィルム上で活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させると、当該接着剤の硬化収縮により、(メタ)アクリル系樹脂フィルムがツレやシワなどの変形を生じやすいという問題があった。ツレとは、フィルムの搬送方向に延設されるトタン状の変形をいい;シワとは、ランダムな方向に発生する波状の凸凹変形をいう。このようなツレやシワなどの変形は、特に保護フィルムが薄膜であるほど顕著であった。ツレやシワなどの変形が生じた保護フィルムを含む偏光板は、表示装置において光漏れを生じやすく、表示性能を低下させやすい。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、(メタ)アクリル系樹脂を含む保護フィルムと偏光子とを活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて偏光板を製造する際の、硬化収縮に伴う保護フィルムのツレやシワなどの変形を抑制でき、それによる光学ムラを抑制しうる偏光板、偏光板の製造方法およびそれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の構成によって解決することができる。
【0010】
本発明の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の表面に配置された保護フィルムと、前記保護フィルムと前記偏光子との間に配置され、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物からなる接着剤層と、前記保護フィルムの前記偏光子とは反対側の面に配置された粘着剤層とを含む偏光板であって、前記保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、シリカ粒子とを含み、前記(メタ)アクリル系樹脂は、前記(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して、50~95質量%のメタクリル酸メチルに由来する構造単位と、1~25質量%のフェニルマレイミドに由来する構造単位と、1~25質量%のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位とを含む共重合体であり、前記保護フィルムの面内遅相軸に沿った断面において、前記ゴム粒子は、長径と短径とを有する扁平形状を有し、前記ゴム粒子の短径をRa、前記シリカ粒子の平均二次粒子径をRs2としたとき、Rs2≧Raを満たし、前記保護フィルムのイエローインデックス(YI)は、1.2~1.8である。
【0011】
本発明の偏光板の製造方法は、1)保護フィルムを準備する工程と、2)偏光子の表面に、活性エネルギー線硬化型接着剤からなる層を介して保護フィルムを積層して、積層物を得る工程と、3)前記積層物に活性エネルギー線を照射して、前記活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させる工程と、4)前記保護フィルムの前記偏光子とは反対側の面に、粘着剤層を形成する工程と、を有する偏光板の製造方法であって、
前記1)の工程は、50~95質量%のメタクリル酸メチルに由来する構造単位と、1~25質量%のフェニルマレイミドに由来する構造単位と、1~25質量%のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位とを含む(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、シリカ粒子と、溶媒とを含み、かつ前記ゴム粒子の平均一次粒子径をR、前記シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1としたとき、5<R/Rs1≦80を満たすドープを得る工程と、前記ドープを、支持体上に流延した後、乾燥および剥離して、膜状物を得る工程と、前記膜状物を延伸して、前記保護フィルムを得る工程とを有する。
【0012】
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、前記液晶セルの一方の面に配置された第一偏光板と、前記液晶セルの他方の面に配置された第二偏光板と、を有し、前記第一偏光板と前記第二偏光板の少なくとも一方は、本発明の偏光板であり、前記偏光板の前記粘着剤層は、前記液晶セルと接着されている。
【0013】
本発明の保護フィルムは、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて偏光子と接着される保護フィルムであって、前記保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、シリカ粒子とを含み、前記(メタ)アクリル系樹脂は、前記(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して、50~95質量%のメタクリル酸メチルに由来する構造単位と、1~25質量%のフェニルマレイミドに由来する構造単位と、1~25質量%のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位とを含む共重合体であり、前記保護フィルムの面内遅相軸に沿った断面において、前記ゴム粒子は、長径と短径とを有する扁平形状を有し、前記ゴム粒子の平均短径をRa、前記シリカ粒子の平均二次粒子径をRs2としたとき、Rs2≧Raを満たし、前記保護フィルムのイエローインデックス(YI)は、1.2~1.8である。
【0014】
本発明の保護フィルムの製造方法は、50~95質量%のメタクリル酸メチルに由来する構造単位と、1~25質量%のフェニルマレイミドに由来する構造単位と、1~25質量%のアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位とを含む(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、シリカ粒子と、溶媒とを含み、かつ前記ゴム粒子の平均一次粒子径をR、前記シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1としたとき、5<R/Rs1≦80を満たすドープを得る工程と、前記ドープを、支持体上に流延した後、乾燥および剥離して、膜状物を得る工程と、前記膜状物を延伸して、前記保護フィルムを得る工程とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、(メタ)アクリル系樹脂を含む保護フィルムと偏光子とを活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて偏光板を製造する際の、硬化収縮に伴う保護フィルムのツレやシワなどの変形を抑制でき、それによる光学ムラを抑制しうる偏光板、偏光板の製造方法およびそれを用いた液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る偏光板を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、まず、保護フィルムのYIを適度に高くすることで、硬化収縮に伴う保護フィルムの変形を少なくしうることを見出した。
【0018】
このメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。YIが適度に高い保護フィルムは、活性エネルギー線を適度に吸収しうるため、活性エネルギー線硬化型接着剤への活性エネルギー線の到達量を、(接着不良を生じない程度に)適度に少なくすることができる。特に、活性エネルギー線硬化型接着剤が適度に保護フィルムに浸透し、同じような光吸収性を持つもの同士が同時に硬化されることで、接着力が向上しやすくなる。それにより、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮を少なくすることができる。
【0019】
さらに、本発明者らは、保護フィルムにゴム粒子とシリカ粒子の両方を含有させ、かつシリカ粒子の平均二次粒子径Rs2を、ゴム粒子の平均短径Raと同じかそれよりも大きくすることで、硬化収縮に伴う保護フィルムの変形を顕著に抑制できることを見出した。
【0020】
このメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。ゴム粒子は、応力緩和作用(活性エネルギー線硬化型接着剤が硬化収縮しようとする力によって保護フィルムが受ける応力を低減する作用)を発現するとともに、適度に大きいシリカ粒子の凝集体は、保護フィルムの機械的強度(弾性率)を高めうる。これらの作用により、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮に起因する応力を緩和しつつ、保護フィルムのツレやシワなどの変形を生じにくくしうる。
【0021】
すなわち、1)保護フィルムのYIを適度に高くし、かつ2)保護フィルムとしてゴム粒子とシリカ粒子の両方を含有させ、かつシリカ粒子の平均二次粒子径Rs2を、ゴム粒子の平均短径Raと同じかそれよりも大きくなるように調整することで、硬化収縮に伴う保護フィルムの変形を少なくすることができる。
【0022】
保護フィルムのYIは、例えば保護フィルム中の(メタ)アクリル系樹脂のモノマー組成(特にフェニルマレイミドに由来する構造単位の含有量)や、保護フィルムの厚みにより調整することができる。保護フィルム中のシリカ粒子の平均二次粒子径Rs2とゴム粒子の平均短径Raとの関係は、例えば原料として用いるシリカ粒子の平均一次粒子径Rs1やゴム粒子の平均一次粒子径R、それらの比(R/Rs1)、樹脂の種類およびフィルムの延伸倍率などによって調整することができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
1.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と、その表面に配置された保護フィルムと、保護フィルムと偏光子との間に配置された接着剤層とを含む。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る偏光板100を示す断面図である。
【0026】
図1に示されるように、本実施の形態に係る偏光板100は、偏光子110(偏光子)と、その一方の面に配置された保護フィルム120(保護フィルム)と、他方の面に配置された対向フィルム130と、保護フィルム120と偏光子110との間に配置された接着剤層140と、対向フィルム130と偏光子110との間に配置された接着剤層150とを有する。
【0027】
また、偏光板100は、保護フィルム120の偏光子110とは反対側の面に配置された粘着剤層160をさらに有する。粘着剤層160は、偏光板100を、液晶セルなどの表示素子(不図示)に貼り付けるための層である。粘着剤層160の表面は、通常、剥離フィルム(不図示)で保護されている。
【0028】
1-1.偏光子110
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子である。偏光子は、通常、ポリビニルアルコール系偏光フィルムでありうる。ポリビニルアルコール系偏光フィルムの例には、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものや、二色性染料を染色させたものが含まれる。
【0029】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよいし;ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、さらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子110の吸収軸は、通常、最大延伸方向と平行である。
【0030】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムとしては、例えば、特開2003-248123号公報、特開2003-342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1~4モル%、重合度2000~4000、けん化度99.0~99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが用いられる。
【0031】
偏光子の厚みは、5~30μmであることが好ましく、偏光板を薄型化する観点などから、5~20μmであることがより好ましい。
【0032】
1-2.保護フィルム120
保護フィルムは、表示装置にしたときに、偏光子と、液晶セルなどの表示素子との間に配置され、位相差を調整するための位相差フィルムとして機能しうる。具体的には、保護フィルムは、後述するように、例えば活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて偏光子と接着されて、偏光板を構成するものである。そのような保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、シリカ粒子とを含む。
【0033】
1-2-1.(メタ)アクリル系樹脂
保護フィルムに含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、保護フィルムのイエローインデックス(YI)を後述する範囲に調整するとともに、脆さを改善する観点などから、メタクリル酸メチルに由来する構造単位(U1)と、フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)と、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(U3)とを含むことが好ましい。
【0034】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位(U1)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して50~95質量%であることが好ましく、70~90質量%であることがより好ましい。
【0035】
フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)は、活性エネルギー線(好ましくは紫外光)を適度に吸収しやすいマレイミド骨格を有するため、保護フィルムに適度な光吸収性を付与しうる。
【0036】
フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して1~25質量%であることが好ましい。フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)の含有量が1質量%以上であると、保護フィルムに適度な光吸収性を付与しやすい。フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)の含有量が25質量%以下であると、保護フィルムの脆性が損なわれにくい。フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)の含有量は、上記観点から、7~15質量%であることがより好ましい。
【0037】
アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(U3)は、フィルムに柔軟性を付与しうるため、フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)を含むことによるフィルムの脆性の低下を抑制しうる。また、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(U3)は、例えばシェル部を構成する重合体(b)がアクリル酸ブチルに由来する構造単位を含むゴム粒子と良好な親和性を有するため、ゴム粒子の分散性も高めうる。
【0038】
アクリル酸アルキルエステルは、アルキル部分の炭素原子数が1~7、好ましくは1~5のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルの例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシルなどが含まれる。
【0039】
アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(U3)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して1~25質量%であることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(U3)の含有量が1質量%以上であると、(メタ)アクリル樹脂に適度な柔軟性を付与しうるため、フィルムが脆くなりすぎず、破断しにくい。アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(U3)の含有量が25質量%以下であると、(メタ)アクリル樹脂のTgが低下しすぎないため、保護フィルムの耐熱性が損なわれにくいだけでなく、機械的強度も損なわれにくい。アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の含有量は、上記観点から、5~15質量%であることがより好ましい。
【0040】
フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)の、フェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)とアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(U3)の合計量に対する比率は、20~70質量%であることが好ましい。当該比率が20質量%以上であると、保護フィルムの耐熱性を高めやすく、70質量%以下であると、保護フィルムが脆くなりすぎない。
【0041】
(メタ)アクリル系樹脂のモノマーの種類や組成は、1H-NMRにより特定することができる。
【0042】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましく、120~150℃であることがより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂のTgが上記範囲内にあると、保護フィルムの耐熱性を高めやすい。(メタ)アクリル系樹脂のTgを調整するためには、例えばフェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)やアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(U3)の含有量を調整することが好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012またはASTM D 3418-82に準拠して測定することができる。
【0044】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が50万以上であると、溶液流延に用いるドープの粘度が低くなりすぎないため、ゴム粒子の凝集を抑制しやすい。さらに、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が50万以上であると、保護フィルムに十分な機械的強度(靱性)を付与しうる。(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、上記観点から、50万~300万であることがより好ましく、60万~200万であることがさらに好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算にて測定することができる。具体的には、東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定することができる。測定条件は、後述する実施例と同様としうる。
【0046】
(メタ)アクリル系樹脂の含有量は、保護フィルムに対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0047】
1-2-2.ゴム粒子
ゴム粒子は、保護フィルムに靱性(しなやかさ)を付与する機能を有しうる。ゴム粒子は、ゴム状重合体を含む粒子である。ゴム状重合体は、ガラス転移温度が20℃以下の軟質な架橋重合体である。そのような架橋重合体の例には、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、およびオルガノシロキサン系架橋重合体が含まれる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂との屈折率差が小さく、保護フィルムの透明性が損なわれにくい観点では、(メタ)アクリル系架橋重合体が好ましく、アクリル系架橋重合体(アクリル系ゴム状重合体)がより好ましい。
【0048】
すなわち、ゴム粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含む粒子であることが好ましい。
【0049】
アクリル系ゴム状重合体(a)について:
アクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分として含む架橋重合体である。主成分として含むとは、アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が後述する範囲となることをいう。アクリル系ゴム状重合体(a)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位と、それと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位と、1分子中に2以上のラジカル重合性基(非共役な反応性二重結合)を有する多官能性単量体に由来する構造単位とを含む架橋重合体であることが好ましい。
【0050】
アクリル酸エステルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチルなどのアルキル基の炭素数1~12のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。アクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0051】
アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、アクリル系ゴム状重合体(a1)を構成する全構造単位に対して40~80質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。アクリル酸エステルの含有量が上記範囲内であると、保護フィルムに十分な靱性を付与しやすい。
【0052】
共重合可能な他の単量体は、アクリル酸エステルと共重合可能な単量体のうち、多官能性単量体以外のものである。すなわち、共重合可能な単量体は、2以上のラジカル重合性基を有しない。共重合可能な単量体の例には、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、メチルスチレンなどのスチレン類;(メタ)アクリロニトリル類;(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸が含まれる。中でも、共重合可能な他の単量体は、スチレン類を含むことが好ましい。共重合可能な他の単量体は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0053】
共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ゴム状重合体(a)を構成する全構造単位に対して5~55質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましい。
【0054】
多官能性単量体の例には、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトロメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0055】
多官能性単量体に由来する構造単位の含有量は、アクリル系ゴム状重合体(a)を構成する全構造単位に対して0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。多官能性単量体の含有量が0.05質量%以上であると、得られるアクリル系ゴム状重合体(a)の架橋度を高めやすいため、得られるフィルムの硬度、剛性が損なわれすぎず、10質量%以下であると、フィルムの靱性が損なわれにくい。
【0056】
アクリル系ゴム状重合体(a)を構成する単量体組成は、例えば熱分解GC-MSにより検出されるピーク面積比により測定することができる。
【0057】
ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましい。ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)が0℃以下であると、フィルムに適度な靱性を付与しうる。ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、前述と同様の方法で測定される。
【0058】
ゴム状重合体のガラス転移温度(Tg)は、ゴム状重合体の組成によって調整することができる。例えばアクリル系ゴム状重合体(a)のガラス転移温度(Tg)を低くするためには、アクリル系ゴム状重合体(a)中の、アルキル基の炭素原子数が4以上のアクリル酸エステル/共重合可能な他の単量体の質量比を多くする(例えば3以上、好ましくは4~10とする)ことが好ましい。
【0059】
アクリル系ゴム状重合体(a)を含む粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)からなる粒子、または、ガラス転移温度が20℃以上の硬質な架橋重合体(c)からなる硬質層と、その周囲に配置されたアクリル系ゴム状重合体(a)からなる軟質層とを有する粒子(これらを、「エラストマー」ともいう)であってもよいし;アクリル系ゴム状重合体(a)の存在下で、メタクリル酸エステルなどの単量体の混合物を、少なくとも1段以上重合して得られるアクリル系グラフト共重合体からなる粒子であってもよい。アクリル系グラフト共重合体からなる粒子は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含むコア部と、それを覆うシェル部とを有するコアシェル型の粒子であってもよい。
【0060】
アクリル系ゴム状重合体を含むコアシェル型のゴム粒子について:
(コア部)
コア部は、アクリル系ゴム状重合体(a)を含み、必要に応じて硬質な架橋重合体(c)をさらに含んでもよい。すなわち、コア部は、アクリル系ゴム状重合体からなる軟質層と、その内側に配置された硬質な架橋重合体(c)からなる硬質層とを有してもよい。
【0061】
架橋重合体(c)は、メタクリル酸エステルを主成分とする架橋重合体でありうる。すなわち、架橋重合体(c)は、メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位と、それと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位と、多官能性単量体に由来する構造単位とを含む架橋重合体であることが好ましい。
【0062】
メタクリル酸アルキルエステルは、前述のメタクリル酸アルキルエステルであってよく;共重合可能な他の単量体は、前述のスチレン類やアクリル酸エステルなどであってよく;多官能性単量体は、前述の多官能性単量体とした挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0063】
メタクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位の含有量は、架橋重合体(c)を構成する全構造単位に対して40~100質量%でありうる。共重合可能な他の単量体に由来する構造単位の含有量は、他の架橋重合体(c)を構成する全構造単位に対して60~0質量%でありうる。多官能性単量体に由来する構造単位の含有量は、他の架橋重合体を構成する全構造単位に対して0.01~10質量%でありうる。
【0064】
(シェル部)
シェル部は、アクリル系ゴム状重合体(a)にグラフト結合した、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分として含むメタクリル系重合体(b)(他の重合体)を含む。主成分として含むとは、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が後述する範囲となることをいう。
【0065】
メタクリル系重合体(b)を構成するメタクリル酸エステルは、メタクリル酸メチルなどのアルキル基の炭素数1~12のメタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。メタクリル酸エステルは、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0066】
メタクリル酸エステルの含有量は、メタクリル系重合体(b)を構成する全構造単位に対して50質量%以上であることが好ましい。メタクリル酸エステルの含有量が50質量%以上であると、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を主成分として含むメタクリル系樹脂との相溶性が得られやすい。メタクリル酸エステルの含有量は、上記観点から、メタクリル系重合体(b)を構成する全構造単位に対して70質量%以上であることがより好ましい。
【0067】
メタクリル系重合体(b)は、メタクリル酸エステルと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位をさらに含んでもよい。共重合可能な他の単量体の例には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルなどのアクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなどの脂環、複素環または芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体(環含有(メタ)アクリル系単量体)が含まれる。
【0068】
共重合可能な単量体に由来する構造単位の含有量は、メタクリル系重合体(b)を構成する全構造単位に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0069】
ゴム粒子におけるグラフト成分の比率(グラフト率)は、10~250質量%であることが好ましく、15~150質量%であることがより好ましい。グラフト率が一定以上であると、グラフト成分、すなわち、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主成分とするメタクリル系重合体(b)の割合が適度に多いため、ゴム粒子とメタクリル系樹脂との相溶性を高めやすく、ゴム粒子を一層凝集させにくい。また、フィルムの剛性などが損なわれにくい。グラフト率が一定以下であると、アクリル系ゴム状重合体(a)の割合が少なくなりすぎないため、フィルムの靱性や脆性改善効果が損なわれにくい。
【0070】
グラフト率は、以下の方法で測定される。
1)コアシェル型の粒子2gを、メチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpm、温度12℃にて1時間遠心し、不溶分と可溶分とに分離する(遠心分離作業を合計3回セット)。
2)得られた不溶分の重量を下記式に当てはめて、グラフト率を算出する。
グラフト率(質量%)=[{(メチルエチルケトン不溶分の質量)-(アクリル系ゴム状重合体(a)の質量)}/(アクリル系ゴム状重合体(a)の質量)]×100
【0071】
ゴム粒子の形状について:
保護フィルムの面内遅相軸に平行な断面において、ゴム粒子は、長径と短径とを有する扁平な形状を有する。
【0072】
具体的には、(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、延伸方向に対して直交する方向が、面内遅相軸となる。一方、ゴム粒子は、延伸方向に平行な方向が長径となり、延伸方向に対して直交する方向が短径となる。したがって、保護フィルムの面内遅相軸に平行な断面において、ゴム粒子の短径は、面内遅相軸と略平行(具体的には、±10°以下)であることが好ましく、長径は、面内遅相軸と直交していることが好ましい。
【0073】
ゴム粒子の平均短径Raは、後述するRs2≧Ra、好ましくは後述するRs2/Raをさらに満たす範囲であれば特に制限されず、例えば300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。ゴム粒子の平均短径Raが300nm以下であると、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮量と保護フィルムの(ゴム粒子に起因する)収縮量との差が大きくなりすぎないので、それによるひずみを生じにくい。
ゴム粒子の平均短径Raの下限値は、特に制限されないが、例えば50nmであることが好ましく、100nmであることがより好ましい。ゴム粒子の平均短径Raが50nm以上であると、ゴム粒子の延伸張力に対する応力(縮もうとする力)が保護フィルムに加わりやすため、応力緩和作用を発現しやすい、すなわち、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮しようとする力によって保護フィルムが受ける応力を低減しうる。
【0074】
ゴム粒子の平均長径Rbの平均短径Raに対する比、すなわち、ゴム粒子のアスペクト比Rb/Raは、1.1~4.0であることが好ましい。ゴム粒子のアスペクト比が1.1以上であると、ゴム粒子の応力緩和が発生しやすいため、活性エネルギー線硬化型接着剤のフィルムの硬化収縮に起因する応力を緩和しやすい。ゴム粒子のアスペクト比が4.0以下であると、ゴム粒子の応力緩和によってゴム粒子とその周囲の樹脂マトリクスとの間に空隙が発生するのを抑制しやすい。ゴム粒子のアスペクト比は、1.3~2.5であることがより好ましい。
【0075】
ゴム粒子の平均短径Ra、平均長径Rbおよびアスペクト比Rb/Raは、以下の方法で測定することができる。
1)保護フィルムの面内遅相軸と平行な断面を、TEM観察する。観察領域は、保護フィルムの厚みに相当する領域としてもよいし、5μm×5μmの領域としてもよい。保護フィルムの厚みに相当する領域を観察領域とする場合、測定箇所は1箇所としうる。5μm×5μmの領域を観察領域とする場合、測定箇所は4箇所としうる。
2)得られたTEM画像における各ゴム粒子の短径、長径を測定し、それぞれ平均値をとって、平均短径Ra、平均長径Rbとする。そして、得られた平均長径Rbの平均短径Raに対する比Rb/Raを、アスペクト比とする。
なお、各ゴム粒子の短径は、TEM画像において、ゴム粒子が外接する長方形の短手方向の長さ(短辺の長さ)として測定されうる。ゴム粒子の長径は、後述するTEM画像において、ゴム粒子が外接する長方形の長手方向の長さ(長辺の長さ)として測定されうる。
【0076】
ゴム粒子の平均短径Raやアスペクト比Rb/Raは、例えば、原料となるゴム粒子の平均一次粒子径Rや、保護フィルムの延伸条件によって調整することができる。ゴム粒子の平均短径Raを小さくするためには、例えば原料として平均一次粒子径Rが小さいゴム粒子を用いたり、保護フィルムの延伸倍率を高くしたりすることが好ましい。
【0077】
ゴム粒子の含有量Mrは、特に限定されないが、保護フィルムに対して5~25質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0078】
1-2-3.シリカ粒子
シリカ粒子は、保護フィルムの表面を粗面化して、滑り性を付与しうる。
【0079】
シリカ粒子は、フィルムのヘイズを調整する観点などから、疎水化剤で表面処理されていてもよい。疎水化剤で表面処理されるとは、シリカ粒子の表面のヒドロキシ基の水素原子が、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、オクチルシリル基、ジメチルポリシロキサン基などのシリル基で置換されることをいう。
【0080】
表面処理に用いられる疎水化剤の例には、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のクロロシラン類;テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン等のアルコキシシラン類;トリエチルシラン、オクチルシラン等のアルキルシラン類;ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン類;ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイル;アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル類;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン類が含まれる。
【0081】
シリカ粒子の例には、AEROSIL R972、R972V、R974、R812(以上、日本アエロジル社製、AEROSIL(登録商標))などの市販品が含まれる。中でも、AEROSIL R812Vが好ましい。
【0082】
(Rs2とRaの関係)
シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2は、ゴム粒子の平均短径Raと同じかそれよりも大きいこと、すなわち、Rs2≧Raを満たすことが好ましい。
【0083】
具体的には、Rs2/Raは、1.1~4.0であることが好ましい。Rs2/Raが1.1以上であると、シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2が、ゴム粒子の平均短径Raに対して十分に大きいため、保護フィルムに十分な強度を付与でき、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮に起因する保護フィルムのツレやシワなどの変形を一層生じにくい。Rs2/Raが4.0以下であると、保護フィルムのヘイズの増大を抑制しやすいだけでなく、ゴム粒子の平均短径Raが小さすぎないため、応力緩和作用も損なわれにくい。それにより、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮に起因する保護フィルムのツレやシワなどの変形を一層生じにくい。Rs2/Raは、同様の観点から、1.5~3.0であることが好ましい。
【0084】
Rs2/Raは、例えば原料として用いるシリカ粒子の平均一次粒子径Rs1やゴム粒子の平均一次粒子径R、それらの比(R/Rs1)、シリカ粒子とゴム粒子の含有比率(Mr/Ms)、樹脂の種類、フィルムの延伸倍率などによって調整することができる。
【0085】
すなわち、Rs2≧Raを満たす(好ましくはRs2/Raを一定以上にする)ためには、例えば原料段階のゴム粒子の平均一次粒子径Rは小さくすることが好ましく、Mr/Msは適度に小さくすることが好ましく、ゴム粒子は分散させやすくする(凝集させにくくする)ことが好ましく、フィルムの延伸倍率は高くすることが好ましい。原料であるゴム粒子の平均一次粒子径RやR/Rs1が適度に小さいと、シリカ粒子の比表面積が大きくなり、適度に凝集しやすいからである。フェニルマレイミドに由来する構造単位を多く含む樹脂は、極性が適度に高いため、例えば疎水化処理されているシリカ粒子との親和性は低く、シリカ粒子同士で凝集しやすいからである。フィルムの延伸倍率が高いと(ゴム粒子の平均短径Raが小さいと)、ゴム粒子による応力緩和作用が発現しやすいからである。
【0086】
(平均一次粒子径Rs2)
シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2は、Rs2≧Raを満たす(好ましくはRs2/Raを一定以上にする)ような範囲であればよい。具体的には、シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2は、150~400nmであることが好ましい。シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2が150nm以上であると、Rs2≧Raを満たしやすい(好ましくはRs2/Raを一定以上に調整しやすい)だけでなく、シリカ粒子の凝集体が適度に大きいため、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮に起因する保護フィルムのツレやシワなどの変形を生じにくくしうる。シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2が400nm以下であると、保護フィルムのヘイズの増大を抑制しうる。シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2は、同様の観点から、200~350nmであることがより好ましい。
【0087】
(平均一次粒子径Rs1)
シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1は、Rs2≧Raを満たす(好ましくはRs2/Raを一定以上にする)ような凝集体を形成できる程度であればよく、特に制限されないが、例えば5~100nmであることが好ましい。シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1が上記範囲内であると、適度に凝集しやすいため、適度に大きい凝集体(Rs2≧Raを満たす、好ましくはRs2/Raが一定以上となる凝集体)を形成しやすい。それにより、保護フィルムに適度な強度を付与しうるため、保護フィルムのツレやシワなどの変形を生じにくくしうる。シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1は、同様の観点から、10~50nmであることがより好ましい。
【0088】
シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1および平均二次粒子径Rs2は、ゴム粒子と同様の方法で測定することができる。すなわち、
1)保護フィルムの面内遅相軸と平行な断面を、TEM観察する。観察領域は、前述と同様とする。
2)得られたTEM画像における任意の10個の凝集体の粒子径を測定し、それらの平均値を、「平均二次粒子径Rs2」とする。それぞれの凝集体の粒子径は、TEM画像より測定する。
また、任意の10個のシリカ粒子の一次粒子径を測定し、それらの平均値を「平均一次粒子径Rs1」とする。
【0089】
(比表面積)
シリカ粒子のBET法により測定される比表面積は、50~800m2/gであることが好ましい。このような比表面積を有するシリカ粒子は、平均一次粒子径が上記範囲内となりやすく、適度に凝集しやすいからである。シリカ粒子の比表面積は、例えば保護フィルムの他の成分から、シリカ粒子を分離した後、BET法により測定することができる。
【0090】
シリカ微粒子の含有量Msは、保護フィルムに含まれる(メタ)アクリル系樹脂に対して0.1~1.0質量%であることが好ましい。シリカ微粒子の含有量が0.1質量%以上であると、フィルムの表面に十分な大きさの凝集体を形成しやすいため、滑り性を高めやすく、1.0質量%以下であると、フィルムのヘイズの増大を抑制しうる。シリカ粒子の含有量は、同様の観点から、(メタ)アクリル系樹脂に対して0.3~0.7質量%であることがより好ましい。
【0091】
ゴム粒子の含有量Mrとシリカ粒子の含有量Msの質量比Mr/Msは、5~100であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。Mr/Msが5以上であると、シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2が大きくなりすぎないため、Rs2/Raを一定以下としやすく、かつゴム粒子の量も十分であるため、応力緩和作用が得られやすい。Mr/Msが100以下であると、シリカ粒子の平均二次粒子径Rs2が小さくなりすぎないため、Rs2≧Raを満たすように(好ましくはRs2/Raが一定以上となるように)調整しやすく、かつ十分な量のシリカ粒子の二次粒子を形成しうる。それにより、いずれも保護フィルムに適度な強度を付与しやすく、保護フィルムのツレやシワを一層抑制しうる。
【0092】
1-2-4.物性
(YI)
保護フィルムのイエローインデックス(YI)は、1.2~1.8であることが好ましい。保護フィルムのYIが1.2以上であると、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して偏光子と接着させる際に、保護フィルムが活性エネルギー線(例えば紫外線)を適度に吸収しうるため、活性エネルギー線硬化型接着剤に到達する活性エネルギー線の量を適度に少なくしうる。それにより、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮を少なくし、それに起因する保護フィルムのツレやシワを少なくすることができる。保護フィルムのYIが1.8以下であると、活性エネルギー線を吸収しすぎることによる、接着不良を抑制できる。保護フィルムのYIは、同様の理由から、1.4~1.6であることがより好ましい。
【0093】
保護フィルムのYIは、JISK 7103に定められているフィルムのYI(イエローインデックス:黄色味の指数)に準拠して測定することができる。
具体的には、保護フィルムについて、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U-3300と附属の彩度計算プログラムを用いて、JIS Z 8701に定められている光源色の三刺激値X、Y、Zを求める。そして、下記式に当てはめて、YIを算出する。
YI=100(1.28X-1.06Z)/Y
【0094】
保護フィルムのYIは、例えば(メタ)アクリル系樹脂の組成(特にフェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)の含有量)や、フィルムの厚みによって調整することができる。保護フィルムのYIを高くするためには、例えば(メタ)アクリル系樹脂中のフェニルマレイミドに由来する構造単位(U2)の含有量を多くすることが好ましい。一方、保護フィルムのYIが高すぎることによる接着不良を抑制するためには、例えば保護フィルムの厚みを薄くすることが好ましい。
【0095】
(位相差RoおよびRt)
保護フィルムは、求められる光学特性に応じた位相差を有することが好ましい。保護フィルムは、例えば、IPSモード用の位相差フィルムとして用いる観点では、波長550nm、23℃55%RHで測定される面内方向の位相差Roおよび厚み方向の位相差Rtは、それぞれ下記式を満たすことが好ましい。
|Ro|≦10nm
|Rt|≦10nm
【0096】
RoおよびRtは、それぞれ下記式で定義される。
式(I):Ro=(nx-ny)×d
式(II):Rt=((nx+ny)/2-nz)×d
(式中、
nxは、フィルムの面内遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を表し、
nyは、フィルムの面内遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、
nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を表し、
dは、フィルムの厚み(nm)を表す。)
【0097】
保護フィルムの面内遅相軸は、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)により確認することができる。
【0098】
RoおよびRtは、以下の方法で測定することができる。
1)保護フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿する。このフィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚みdを市販のマイクロメーターを用いて測定する。
2)調湿後のフィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRoおよびRtを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃55%RHの環境下で測定する。
【0099】
保護フィルムの位相差RoおよびRtは、例えば(メタ)アクリル系樹脂のモノマー組成や延伸条件によって調整することができる。
【0100】
(光弾性係数)
保護フィルムの、23℃55%RHにおける光弾性係数は、-4.0×10-12~4.0×10-12Pa-1であることが好ましい。光弾性係数が上記範囲内であると、例えば高温高湿下において偏光板の反りにより保護フィルムに応力が発生しても、当該応力に起因する位相差が発現しにくいため、例えば液晶表示装置の画面の中央部分に発生する円形の光学ムラを生じにくい。保護フィルムの光弾性係数は、上記観点から、-1.0×10-12~1.0×10-12Pa-1であることがより好ましい。
【0101】
保護フィルムの光弾性係数は、以下の方法で測定することができる。
すなわち、KOBRA-31PRW(王子計測機器社製)を用いて、保護フィルムの面内遅相軸方向に引張り荷重(応力)を加えて、引張り試験を行い、その際発現する位相差を波長589nmで測定する。具体的には、引張り荷重(応力)を1~15Nの範囲で10点での張力(N)に対する波長589nmの光における位相差(nm)をプロットして、当該プロットを直線近似したときの傾きを算出し、光弾性係数とする。測定は、23℃55%RH下で行うことができる。なお、面内遅相軸方向を特定できない場合は、保護フィルムの幅方向に引張り荷重を加えるものとする。
【0102】
保護フィルムの光弾性係数は、(メタ)アクリル系樹脂のモノマー組成により調整することができる。保護フィルムの光弾性係数の絶対値を小さくするためには、例えばホモポリマーにしたときの光弾性係数が負となるメタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量と、ホモポリマーにしたときの光弾性係数が正となるフェニルマレイミドに由来する構造単位の含有量との比を、全体として光弾性係数を打ち消すような範囲に調整することが好ましい。
【0103】
(内部ヘイズ)
保護フィルムの内部ヘイズは、1.0%以下であることが好ましく、0.1%以下であることがより好ましく、0.05%以下であることがさらに好ましい。保護フィルムの内部ヘイズは、前述と同様の方法で測定することができる。保護フィルムの内部ヘイズは、ゴム粒子の含有量などによって調整されうる。
【0104】
(残留溶媒量)
保護フィルムは、好ましくはキャスト法で製膜されることから、残留溶媒をさらに含みうる。残留溶媒量は、保護フィルムに対して700ppm以下であることが好ましく、30~700ppmであることがより好ましい。残留溶媒の含有量は、保護フィルムの製造工程における、支持体上に流延させたドープの乾燥条件によって調整されうる。
【0105】
保護フィルムの残留溶媒量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより測定することができる。ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法では、試料を容器に封入し、加熱し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら揮発成分を定量するものである。ヘッドスペース法では、ガスクロマトグラフにより、揮発成分の全ピークを観測することを可能にするとともに、電磁気的相互作用を利用した分析法を用いることによって、高精度で揮発性物質やモノマーなどの定量も併せて行うことができる。
【0106】
(厚み)
保護フィルムの厚みは、YIが上記範囲を満たすように設定されればよいが、例えば5μm以上60μm未満であることが好ましい。保護フィルムの厚みが5μm以上であると、YIを一定以上に調整しやすいため、活性エネルギー線硬化型接着剤に到達する活性エネルギー線量を適度に少なくすることができる。保護フィルムの厚みが60μm以下であると、YIが高くなりすぎて活性エネルギー線硬化型接着剤への活性エネルギー線の到達量が過剰に少なくなるのを抑制しうるため、接着性の低下を生じにくい。また、保護フィルムの厚みが60μm以下であると、ベンドのドライビングフォースとなる偏光子とパネルとの間の距離が短くなるため、パネルの反りも生じにくい。保護フィルムの厚みは、同様の観点から、5~50μmであることがより好ましく、30~50μmであることがより好ましい。
【0107】
1-3.対向フィルム130
対向フィルムは、透明性を有する樹脂フィルムであればよく、特に制限されない。湿熱耐久性を高める観点では、透湿度が低い樹脂フィルムであることが好ましい。
【0108】
対向フィルムを構成する樹脂の例には、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂が含まれる。
【0109】
((メタ)アクリル系樹脂)
対向フィルムに含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含む単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルに由来する構造単位と、それと共重合可能なメタクリル酸メチル以外の共重合モノマーに由来する構造単位とを含む共重合体であってもよい。
【0110】
共重合モノマーは、特に制限されず、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルなどの、メタクリル酸メチル以外のアルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸エステル類;無水マレイン酸、グルタル酸無水物が含まれる。共重合モノマーは、1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0111】
中でも、フィルムの透湿度を上記範囲に調整しやすい観点などから、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含む単独重合体(ポリメチルメタクリレート)、またはメタクリル酸メチルに由来する構造単位と、グルタルイミド構造単位(例えば(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を、アミンなどのイミド化剤と反応させたものなど)、グルタル酸無水物に由来する構造単位、または六員環ラクトン(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(ラクトン環構造単位)とを含む共重合体であることが好ましく、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を含む単独重合体(ポリメチルメタクリレート)がより好ましい。
【0112】
メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全構造単位に対して80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましい。
【0113】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、90℃以上であることが好ましく、100~150℃であることがより好ましい。(メタ)アクリル系樹脂のTgが90℃以上である対向フィルムは、良好な耐熱性を有しうる。ガラス転移温度は、前述と同様の方法で測定することができる。
【0114】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されず、製膜法に応じて、適宜設定されうる。例えば、(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、溶融流延方式(メルト)で製膜される場合は、10万~30万であることが好ましく、溶液流延方式(キャスト法)で製膜される場合は、40万~300万であることが好ましく、50万~200万であることがより好ましい。重量平均分子量は、前述と同様の方法で測定することができる。
【0115】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが含まれる。中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0116】
(セルロースエステル樹脂)
セルロースエステル樹脂の例には、トリアセチルセルロースなどが含まれる。
【0117】
中でも、対向フィルムは、透湿性が低いものであることが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂を含むことがより好ましい。
【0118】
対向フィルムの厚みは、特に限定されないが、透湿度を低くしやすい観点などから、保護フィルムの厚みよりも厚いことが好ましい。具体的には、対向フィルムの厚みは、40~100μmであることが好ましく、50~80μmであることがより好ましい。
【0119】
1-3-5.保護フィルム120および対向フィルム130の製造方法
保護フィルムおよび対向フィルムは、任意の方法で製造されてよく、溶融流延方式で製造されてもよいし、溶液流延方式で製造されてもよい。
【0120】
中でも、高分子量の(メタ)アクリル系樹脂を用いることができるなどの観点から、少なくとも本発明の保護フィルムは、溶液流延方式で製造されることが好ましい。すなわち、保護フィルムは、1)前述の(メタ)アクリル系樹脂と、ゴム粒子と、シリカ粒子と、溶媒とを含むドープを得る工程と、2)得られたドープを支持体上に流延した後、乾燥および剥離して、膜状物を得る工程と、3)得られた膜状物を延伸する工程とを経て製造されうる。
【0121】
1)の工程について
(メタ)アクリル系樹脂とゴム粒子とシリカ粒子とを、溶媒に溶解または分散させて、ドープを調製する。
【0122】
原料としてのゴム粒子の平均一次粒子径をR、原料としてのシリカ粒子の平均一次粒子径をRs1としたとき、5<R/Rs1≦80を満たすことが好ましい。R/Rs1が上記範囲であると、得られる保護フィルムにおけるRs2/Raを上記範囲に調整しやすいからである。R/Rs1は、同様の観点から、10~60であることが好ましく、20~50であることがより好ましい。
【0123】
ゴム粒子の平均一次粒子径Rは、R/Rs1が上記範囲を満たすような程度であればよく、特に制限されないが、例えば400nm以下であることが好ましく、220nm以下であることがより好ましい。ゴム粒子の平均一次粒子径Rが400nm以下であると、得られる保護フィルムにおいて、Rs2/Raを一定以上に調整しやすい。ゴム粒子の平均一次粒子径Rの下限値は、特に制限されないが、例えば100nmであることが好ましい。ゴム粒子の平均一次粒子径Rが100nm以上であると、得られる保護フィルムにおいて、Rs2/Raを一定以下に調整しやすい。シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1は、前述と同様でありうる。
【0124】
原料であるゴム粒子やシリカ粒子の平均一次粒子径は、分散液中のゴム粒子またはシリカ粒子の分散粒径を、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子株式会社製 ELSZ-2000ZS)で測定することができる。
【0125】
ドープに用いられる溶媒は、少なくとも(メタ)アクリル系樹脂を溶解させうる有機溶媒(良溶媒)を含む。良溶媒の例には、メチレンクロライドなどの塩素系有機溶媒や;酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフランなどの非塩素系有機溶媒が含まれる。中でも、メチレンクロライドが好ましい。
【0126】
ドープに用いられる溶媒は、貧溶媒をさらに含んでいてもよい。貧溶媒の例には、炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールが含まれる。ドープ中のアルコールの比率が高くなると、膜状物がゲル化しやすく、金属支持体からの剥離が容易になりやすい。炭素原子数1~4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールを挙げることができる。これらのうちドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいことなどからエタノールが好ましい。
【0127】
2)の工程について
得られたドープを、支持体上に流延する。ドープの流延は、流延ダイから吐出させて行うことができる。
【0128】
次いで、支持体上に流延されたドープ中の溶媒を蒸発させ、乾燥させる。乾燥されたドープを支持体から剥離して、膜状物を得る。
【0129】
支持体から剥離する際のドープの残留溶媒量(剥離時の膜状物の残留溶媒量)は、例えば25質量%以上であることが好ましく、30~37質量%であることがより好ましい。剥離時の残留溶媒量が37質量%以下であると、剥離による膜状物が伸びすぎるのを抑制しやすい。
【0130】
剥離時のドープの残留溶媒量は、下記式で定義される。以下においても同様である。
ドープの残留溶媒量(質量%)=(ドープの加熱処理前質量-ドープの加熱処理後質量)/ドープの加熱処理後質量×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、140℃30分の加熱処理をいう。
【0131】
剥離時の残留溶媒量は、支持体上でのドープの乾燥温度や乾燥時間、支持体の温度などによって調整することができる。
【0132】
3)の工程について
得られた膜状物を乾燥させる。乾燥は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。また、乾燥は、必要に応じて延伸しながら行ってもよい。
【0133】
例えば、膜状物の乾燥工程は、膜状物を予備乾燥させる工程(予備乾燥工程)と、膜状物を延伸する工程(延伸工程)と、延伸後の膜状物を乾燥させる工程(本乾燥工程)とを含んでもよい。
【0134】
(予備乾燥工程)
予備乾燥温度(延伸前の乾燥温度)は、延伸温度よりも高い温度でありうる。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき(Tg-50)~(Tg+50)℃であることが好ましい。予備乾燥温度が(Tg-50)℃以上であると、溶媒を適度に揮発させやすいため、搬送性(ハンドリング性)を高めやすく、(Tg+50)℃以下であると、溶媒が揮発しすぎないため、この後の延伸工程における延伸性が損なわれにくい。初期乾燥温度は、(a)テンター延伸機やローラーで搬送しながら非接触加熱型で乾燥させる場合は、延伸機内温度または熱風温度などの雰囲気温度として測定されうる。
【0135】
(延伸工程)
延伸は、求められる光学特性に応じて行えばよく、少なくとも一方の方向に延伸することが好ましく、互いに直交する二方向に延伸(例えば、膜状物の幅方向(TD方向)と、それと直交する搬送方向(MD方向)の二軸延伸)してもよい。
【0136】
保護フィルムを製造する際の延伸倍率は、5~100%であることが好ましく、20~100%であることがより好ましい。二軸延伸する場合は、各方向にける延伸倍率が、それぞれ上記範囲内であることが好ましい。
【0137】
延伸倍率(%)は、(延伸後のフィルムの延伸方向大きさ-延伸前のフィルムの延伸方向大きさ)/(延伸前のフィルムの延伸方向大きさ)×100として定義される。なお、二軸延伸を行う場合は、TD方向とMD方向のそれぞれについて、上記延伸倍率とすることが好ましい。
【0138】
延伸温度(延伸時の乾燥温度)は、前述と同様に、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg(℃)以上であることが好ましく、(Tg+10)~(Tg+50)℃であることがより好ましい。延伸温度がTg(℃)以上、好ましくは(Tg+10)℃以上であると、溶媒を適度に揮発させやすいため、延伸張力を適切な範囲に調整しやすく、(Tg+50)℃以下であると、溶媒が揮発しすぎないため、延伸性が損なわれにくい。保護フィルムの製造時における延伸温度は、例えば115℃以上としうる。延伸温度は、前述と同様に、(a)延伸機内温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
【0139】
延伸開始時の膜状物中の残留溶媒量は、剥離時の膜状物中の残留溶媒量と同程度であることが好ましく、例えば20~30質量%であることが好ましく、25~30質量%であることがより好ましい。
【0140】
膜状物のTD方向(幅方向)の延伸は、例えば膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げる方法(テンター法)で行うことができる。膜状物のMD方向の延伸は、例えば複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用する方法(ロール法)で行うことができる。
【0141】
(本乾燥工程)
残留溶媒量をより低減させる観点から、延伸後に得られた膜状物をさらに乾燥させることが好ましい。例えば、延伸後に得られた膜状物を、ロールなどで搬送しながらさらに乾燥させることが好ましい。
【0142】
本乾燥温度(未延伸の場合は乾燥温度)は、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg-50)~(Tg-30)℃であることが好ましく、(Tg-40)~(Tg-30)℃であることがより好ましい。後乾燥温度が(Tg-50)℃以上であると、延伸後の膜状物から溶媒を十分に揮発除去しやすく、(Tg-30)℃以下であると、膜状物の変形などを高度に抑制しうる。本乾燥温度は、前述と同様に、(a)熱風温度などの雰囲気温度を測定することが好ましい。
【0143】
1-4.接着剤層140、150
接着剤層140は、保護フィルムと偏光子との間に配置され、それらを接着させる。同様に、接着剤層150は、対向フィルムと偏光子との間に配置され、それらを接着させる。
【0144】
接着剤層140は、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物からなる層である。
【0145】
活性エネルギー線硬化性接着剤は、光ラジカル重合性組成物であってもよいし、光カチオン重合性組成物であってもよい。中でも、光カチオン重合性組成物が好ましい。
【0146】
光カチオン重合性組成物は、エポキシ系化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む。
【0147】
エポキシ系化合物とは、分子内に1以上、好ましくは2以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ系化合物の例には、脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させて得られる水素化エポキシ系化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル);脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ系化合物;脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1以上有する脂環式エポキシ系化合物が含まれる。エポキシ系化合物は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0148】
光カチオン重合開始剤は、例えば芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩などのオニウム塩;鉄-アレーン錯体などでありうる。
【0149】
光カチオン重合開始剤は、必要に応じてオキセタン、ポリオールなどのカチオン重合促進剤、光増感剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、溶剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0150】
接着剤層150は、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物からなる層であってもよいし、それ以外の接着剤(例えば完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液(水糊))から得られる層であってもよい。すなわち、接着剤層150は、対向フィルムに合わせて選択されればよい。対向フィルム130が(メタ)アクリル系樹脂またはポリエステル樹脂を含むフィルムである場合は、接着剤層150は、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物からなる層であることが好ましい。
【0151】
接着剤層140および150の厚みは、特に限定されないが、例えば0.01~10μmであり、好ましくは0.01~5μm程度でありうる。
【0152】
1-5.粘着剤層160
粘着剤層は、保護フィルムの偏光子とは反対側の面に配置されている。粘着剤層は、本発明の偏光板を、液晶セルなどの表示素子と貼り合わせるための層である。
【0153】
粘着剤層は、ベースポリマー、プレポリマーおよび/または架橋性モノマー、架橋剤ならびに溶媒を含む粘着剤組成物を、乾燥および部分架橋させたものであることが好ましい。すなわち、粘着剤組成物の少なくとも一部が架橋したものでありうる。
【0154】
粘着剤組成物の例には、(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤組成物、シリコーン系ポリマーをベースポリマーとするシリコーン系粘着剤組成物、ゴムをベースポリマーとするゴム系粘着剤組成物が含まれる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性、加工性の観点では、アクリル系粘着剤組成物が好ましい。
【0155】
アクリル系粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋剤と架橋可能な官能基含有モノマーとの共重合体でありうる。
【0156】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数2~14のアクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
【0157】
架橋剤と架橋可能な官能基含有モノマーの例には、アミド基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー(アクリル酸など)、ヒドロキシル基含有モノマー(アクリル酸ヒドロキシエチルなど)が含まれる。
【0158】
アクリル系粘着剤組成物に含まれる架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤などが挙げられる。粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、通常、ベースポリマー(固形分)100質量部に対して、例えば0.01~10質量部でありうる。
【0159】
粘着剤組成物は、必要に応じて粘着付与剤、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の充填剤、顔料、着色剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤などの各種の添加剤をさらに含んでもよい。
【0160】
粘着剤層の厚みは、通常、3~100μm程度であり、好ましくは5~50μmである。
【0161】
粘着剤層の表面は、離型処理が施された剥離フィルムで保護されている。剥離フィルムの例には、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルムなどのプラスチックフィルムが含まれる。
【0162】
2.偏光板の製造方法
本発明の偏光板は、偏光子の表面に、活性エネルギー線硬化型接着剤からなる層を介して保護フィルムを積層する工程と、積層物に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させる工程と、保護フィルムの偏光子とは反対側の面に、粘着剤層を形成する工程とを経て製造されうる。
【0163】
例えば、
図1の偏光板は、1)偏光子の一方の面に、活性エネルギー線硬化型接着剤からなる層を介して保護フィルムを積層する工程と、2)偏光子の他方の面に、接着剤からなる層を介して対向フィルムを積層する工程と、3)積層物に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させる工程と、4)積層物の保護フィルム上に、粘着剤層および剥離フィルムを貼り付ける工程とを経て得られる。以下、対向フィルムと偏光子との接着に用いられる接着剤が、活性エネルギー線硬化型接着剤である例で説明する。
【0164】
1)の工程について
保護フィルムの表面に、必要に応じてコロナ処理などの表面処理を施す。次いで、偏光子の一方の面に、活性エネルギー線硬化性接着剤の層を介して保護フィルムを積層する。
【0165】
2)の工程について
同様に、対向フィルムの表面に、必要に応じてコロナ処理などの表面処理を施す。次いで、偏光子の他方の面に、活性エネルギー線硬化性接着剤の層を介して、対向フィルムを積層する。
【0166】
3)の工程について
得られた液層物に、活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させる。それにより、偏光子と保護フィルムとの間、および、偏光子と対向フィルムとの間を、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化物層を介してそれぞれ接着させる。
【0167】
照射する活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、X線、および電子線のいずれであってもよい。取扱いが容易であり、硬化速度も十分であることから、一般的には、紫外線が好ましい。紫外線の照射条件は、接着剤を硬化しうる条件であればよい。紫外線の照射量は、積算光量で50~1500mJ/cm2であることが好ましく、100~500mJ/cm2であることがさらに好ましい。
【0168】
なお、1)の工程と2)の工程は、同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。製造効率を高める観点では、1)の工程と2)の工程とは同時に行うことが好ましい。
【0169】
4)の工程について
次いで、得られた偏光板の保護フィルム上に、粘着剤層およびその剥離フィルムを、さらに貼り付ける。具体的には、保護フィルム上に、粘着剤層を設けた剥離フィルムを転写するなどの方法により、粘着剤層を形成することができる。
【0170】
本発明の偏光板においては、少なくとも保護フィルムのYIが、適度に高く調整されている。それにより、保護フィルムは、活性エネルギー線を適度に吸収しうるため、活性エネルギー線硬化型接着剤に到達する活性エネルギー線の量を、接着不良を生じない程度に少なくすることができる。それにより、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮を少なくすることができる。さらに、保護フィルムは、ゴム粒子とシリカ粒子とを含み、かつシリカ粒子の平均二次粒子径Rs2が、ゴム粒子の平均短径Raよりも適度に大きい。それにより、ゴム粒子の応力緩和作用を得つつ、シリカ粒子の凝集体の作用により保護フィルムの機械的強度(弾性率)が高められる。これらの作用により、偏光子と良好に接着させつつ、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化収縮に起因する保護フィルムのツレやシワなどの変形を抑制することができる。
【0171】
3.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、液晶セルの一方の面に配置された第一偏光板と、液晶セルの他方の面に配置された第二偏光板とを含む。そして、第一偏光板と第二偏光板の少なくとも一方は、本発明の偏光板である。
【0172】
図2は、本発明の一実施の形態に係る液晶表示装置を示す断面図である。
図2に示されるように、本発明の液晶表示装置200は、液晶セル210と、それを挟持する第一偏光板220および第二偏光板230と、バックライト240とを含む。
【0173】
液晶セル210の表示モードは、例えばSTN(Super-Twisted Nematic)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Bend)、HAN(Hybridaligned Nematic)、VA(Vertical Alignment、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)、PVA(Patterned Vertical Alignment))、IPS(In-Plane-Switching)などでありうる。例えば、携帯機器用途の液晶表示装置では、IPSモードが好ましい。
【0174】
第一偏光板220は、液晶セル210の視認側の面に、粘着剤層224を介して配置されている。第一偏光板220は、第一偏光子221と、第一偏光子221の視認側の面に配置された対向フィルム222(F1)と、第一偏光子221の液晶セル側の面に配置された保護フィルム223(F2)と、第一偏光子221と対向フィルム222(F1)との間および第一偏光子221と保護フィルム223(F2)との間に配置された2つの接着剤層225とを含む。
【0175】
第二偏光板230は、液晶セル210のバックライト240側の面に、粘着剤層234を介して配置されている。第二偏光板230は、第二偏光子231と、第二偏光子231の液晶セル210側の面に配置された保護フィルム232(F3)と、第二偏光子231のバックライト240側の面に配置された対向フィルム233(F4)と、第二偏光子231と保護フィルム232(F3)との間および第二偏光子231と対向フィルム233(F4)との間に配置された2つの接着剤層235とを含む。
【0176】
第一偏光子221の吸収軸と第二偏光子231の吸収軸とは直交している(クロスニコルとなっている)ことが好ましい。なお、液晶セル210、第一偏光板220および第二偏光板230で構成されたユニットは、液晶表示パネル250ともいう。
【0177】
そして、第一偏光板220および第二偏光板230の少なくとも一方が、本発明の偏光板である。すなわち、第一偏光板220が本発明の偏光板である場合、対向フィルム222(F1)は、本発明の偏光板における対向フィルム(
図1では対向フィルム130)であり、保護フィルム223(F2)は、本発明の偏光板における保護フィルム(
図1では保護フィルム120)であり、粘着剤層224は、本発明の偏光板における粘着剤層(
図1では粘着剤層160)である。同様に、第二偏光板230が本発明の偏光板である場合、対向フィルム233(F4)は、本発明の偏光板における対向フィルム(
図1では対向フィルム130)であり、保護フィルム232(F3)は、本発明の偏光板における保護フィルム(
図1では保護フィルム120)であり、粘着剤層234は、本発明の偏光板における粘着剤層(
図1では粘着剤層160)である。
【実施例】
【0178】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0179】
1.保護フィルムの材料
(1)樹脂
表1に示される樹脂1~8を準備した。
【表1】
【0180】
樹脂1~8のガラス転移温度および重量平均分子量は、以下の方法で測定した。
【0181】
(ガラス転移温度)
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121-2012に準拠して測定した。
【0182】
(重量平均分子量)
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製 HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製 TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL 直列)を用いて測定した。試料20mg±0.5mgをテトラヒドロフラン10mlに溶解し、0.45mmのフィルターで濾過した。この溶液をカラム(温度40℃)に100ml注入し、検出器RI温度40℃で測定し、スチレン換算した値を用いた。
【0183】
(2)ゴム粒子
ゴム粒子R1(カネカ社製カネエースM210、平均一次粒子径R:200nm)
ゴム粒子R2(三菱ケミカル社製メタブレンW450A、平均一次粒子径R:400nm)
ゴム粒子R3(綜研化学社製アクリル粒子MX-80H3wT、平均一次粒子径R:800nm)
ゴム粒子R4(三菱ケミカル社製メタブレンW300A、平均一次粒子径R:100nm)
【0184】
(3)シリカ粒子
シリカ粒子S1(アエロジル(登録商標)R812、日本アエロジル社製、疎水性ヒュームドシリカ、平均一次粒子径Rs1:7nm、比表面積:260±30m2/g)
シリカ粒子S2(アエロジル(登録商標)OX50、日本アエロジル社製、平均一次粒子径Rs1:40nm、親水性ヒュームドシリカ、比表面積:50±15m2/g)
シリカ粒子S3(アエロジル(登録商標)R972V、日本アエロジル社製、平均一次粒子径Rs1:16nm、疎水性ヒュームドシリカ、比表面積:110±20m2/g)
【0185】
ゴム粒子およびシリカ粒子の平均一次粒子径は、以下の方法で測定した。
【0186】
(平均一次粒子径)
ゴム粒子およびシリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定した。
【0187】
2.保護フィルムの作製
<保護フィルム101の作製>
(ゴム粒子分散液の調製)
10質量部のゴム粒子R1と、90質量部のME16(メチレンクロライドとエタノールが84:16の質量比である混合溶媒)とを含む溶液とを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マイルダー分散機マイルダー分散機(大平洋機工株式会社製)を用いて1500rpm条件下で分散し、ゴム粒子分散液を得た。
【0188】
(シリカ粒子分散液の調製)
20質量部のシリカ粒子S1(アエロジル(登録商標)R812、日本アエロジル社製)と、80質量部のME50溶液とを、ディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散し、添加液を得た。
次いで、溶解タンク中の十分攪拌されているME16の90質量部に、10質量部の上記添加液を、ゆっくりと添加した後、アトライターにて分散させた。これを日本精線株式会社製のファインメットNFでろ過し、シリカ粒子分散液を得た。
【0189】
(ドープの調製)
次いで、下記組成のドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにメチレンクロライド、およびエタノールを添加した。次いで、加圧溶解タンクに、樹脂1を撹拌しながら投入した。次いで、上記調製したゴム粒子分散液を投入して、これを撹拌しながら、完全に溶解させた。これを、(株)ロキテクノ製のSHP150を使用して濾過し、ドープを得た。
樹脂1:80質量部
メチレンクロライド:90質量部
エタノール:10質量部
ゴム粒子分散液:200質量部
シリカ粒子分散液:30質量部
【0190】
(製膜)
次いで、上記保存後のドープを用いて製膜を行った。具体的には、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度30℃、1800mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。
【0191】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したドープ中の残留溶媒量が30質量%になるまで溶媒を蒸発させた。次いで、剥離張力128N/mで、ステンレスベルト支持体から剥離し、膜状物を得た。剥離時の膜状物の残留溶媒量は30質量%であった。
【0192】
次いで、剥離したフィルムを多数のローラーで搬送させながら、得られた膜状物を、テンターにて140℃(Tg+15℃)の条件下で幅方向(TD方向)に50%延伸した。その後、ロールで搬送しながら、105℃(Tg-20℃)でさらに乾燥させ、テンタークリップで挟んだ端部をスリットして巻き取り、膜厚40μmの保護フィルム101(ロール体)を得た。
【0193】
<保護フィルム102~123の作製>
フィルムの組成、延伸条件および厚みの少なくとも一つを、表2に示されるように変更した以外は保護フィルム101と同様にして保護フィルム102~120を得た。なお、フィルムの厚みは、流延量により調整した。
【0194】
<保護フィルム124の作製>
流延量を調整して、フィルムの厚みを表2に示されるように変更した以外は保護フィルム108と同様にして保護フィルム124を得た。
【0195】
<評価>
得られた保護フィルム102~124のフィルム断面観察および光学特性の測定を、以下の方法で行った。
【0196】
(フィルム断面観察)
(1)ゴム粒子の平均短径Ra、平均長径Rb
得られた保護フィルム中のゴム粒子の平均短径Ra、平均長径RbおよびRb/Ra(アスペクト比)は、以下の手順で求めた。
1)保護フィルムの断面(厚み方向に沿った断面のうちTD方向に平行な断面)を、TEM観察した。観察領域は、5μm×5μmとした。
2)得られたTEM画像における、各ゴム粒子の短径および長径を、それぞれ測定した。
3)上記1)および2)の操作を、観察領域を変えて合計4箇所行った。そして、4箇所の平均値から、それぞれ平均短径Ra、平均長径Rbを算出し、アスペクト比Rb/Raを算出した。
【0197】
(2)シリカ粒子の平均一次粒子径Rs1、平均二次粒子径Rs2
上記(1)の1)と同様に、保護フィルムの断面(厚み方向に沿った断面のうちTD方向に平行な断面)を、観察領域5μm×5μmでTEM観察したときの、任意の10個のシリカの一次粒子の粒子径を測定した。そして、これらの平均値を、平均一次粒子径Rs1とした。
同様にして、10個のシリカの二次粒子(凝集体)の粒子径を測定し、それらの平均値を、平均二次粒子径Rs2とした。二次粒子径Rs2の測定は、ゴム粒子と同様TEM画像解析により行った。
【0198】
(光学特性の測定)
(1)YI
得られた保護フィルムのイエローインデックス(YI)を、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U-3300と附属の彩度計算プログラムを用いて測定した。測定は、10点行い、それらの平均値を求めた。
【0199】
(2)位相差(Ro、Rt)
保護フィルムのRoおよびRtは、以下の方法で測定した。
1)保護フィルムを23℃55%RHの環境下で24時間調湿した。得られたフィルムの平均屈折率をアッベ屈折計で測定し、厚みdを市販のマイクロメーターを用いて測定した。
2)調湿後のフィルムの、測定波長550nmにおけるリターデーションRoおよびRtを、それぞれ自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃55%RHの環境下で測定した。
【0200】
(3)光弾性係数
KOBRA-31PRW(王子計測機器社製)を用いて、光学フィルムの最大延伸方向(延伸倍率が最大となる方向)に引張り荷重(応力)を加えて、引張り試験を行い、その際発現する位相差を波長589nmで測定した。具体的には、引張り荷重(応力)を1~15Nの範囲で10点での張力(N)に対する位相差(nm)をプロットして、当該プロットを直線近似したときの傾きを算出し、光弾性係数とした。測定は、23℃55%RH下で行った。
【0201】
保護フィルム101~124の組成および延伸条件を表2に示し、評価結果を表3に示す。
【0202】
【0203】
【0204】
3.粘着剤層付きPETフィルムの作製
(粘着剤組成物の調製)
(メタ)アクリル系ポリマー溶液の固形分100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名:タケネートD110N、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、三井化学(株)製)0.1質量部、過酸化物系架橋剤のベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT、日本油脂(株)製)0.4質量部とを添加し、撹拌して、粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)を得た。
【0205】
(粘着剤層の作製)
得られた粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された、厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、離型フィルム)上に、ファウンテンコータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥し、厚み20μmの粘着剤層を形成した。それにより、粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0206】
4.偏光板の作製と評価
<偏光板201の作製>
(偏光子の作製)
厚さ25μmのポリビニルアルコール系フィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5gおよび水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5gおよび水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚み12μmの偏光子を得た。
【0207】
(活性エネルギー線硬化型接着剤A1の調製)
下記成分を混合した後、脱泡して、活性エネルギー線硬化型接着剤A1を調製した。
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:45質量部
エポリードGT-301(ダイセル社製の脂環式エポキシ樹脂):40質量部
1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル:15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート:2.3質量部(固形分)
9,10-ジブトキシアントラセン:0.1質量部
1,4-ジエトキシナフタレン:2.0質量部
なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合した。
【0208】
(偏光板の作製)
次いで、保護フィルムとしての上記作製した保護フィルム101の表面に、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分でコロナ放電処理を施した。次いで、保護フィルム101のコロナ放電処理面に、上記調製した活性エネルギー線硬化型接着剤A1を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗布して、活性エネルギー線硬化型接着剤A1からなる層を形成した。
同様に、対向フィルムとしての汎用のPMMAフィルム(三菱ケミカル社製アクリペット、厚み60μm)の表面にコロナ放電処理を施した後、上記調製した活性エネルギー線硬化型接着剤A1を、硬化後の膜厚が3μmとなるように塗布して、活性エネルギー線硬化型接着剤A1からなる層を形成した。
【0209】
次いで、上記作製した偏光子の一方の面に、活性エネルギー線硬化型接着剤A1からなる層を介して保護フィルム101を配置し、他方の面に、活性エネルギー線硬化型接着剤A1からなる層を介して汎用のPMMAフィルムを配置して、積層物を得た。積層は、偏光子の吸収軸と、保護フィルムの遅相軸とが直交するように行った。
【0210】
次いで、得られた積層物に、ベルトコンベヤー付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、メタルハライドランプ光源にて、積算光量が400mJ/cm2となるように紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型接着剤A1を硬化させた。
【0211】
そして、得られた積層物の保護フィルム201上に、上記作製した粘着剤層付きPETフィルムを貼り合わせて、保護フィルム101(対向フィルム)/接着剤層/偏光子/接着剤層/汎用のPMMAフィルム(保護フィルム)/粘着剤層/PETフィルムの積層構造を有する偏光板301を得た。
【0212】
<偏光板202~226の作製>
保護フィルムと対向フィルムの組み合わせを、表2に示されるように変更した以外は偏光板201と同様にして偏光板202~226を得た。
【0213】
<評価>
得られた偏光板の(1)変形の有無(ツレ・シワ)および(2)接着性を、以下の方法で測定した。
【0214】
(1)偏光板の変形(ツレ・シワの有無)
フィルム表面を蛍光灯の反射にて測定した。そして、以下の基準に基づいて偏光板のツレおよびシワを評価した。
○:蛍光灯の歪みが見えない
△:弱い歪みが一部に見える
×:強い歪みが見える
△以上であれば良好と判断した。
【0215】
(2)偏光板の接着性
得られた偏光板の光学フィルムを、当該光学フィルムと偏光子との界面で剥離したときの剥離強度(接着性)を、23℃・55%RHの環境下で、90°ピール試験(JIS Z0237:2009に準拠)を、株式会社イマダ製90°剥離試験治具(P90‐200N)により測定した。
○:剥離強度が2.0(N/25mm)以上
△:剥離強度が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満
×:剥離強度が1.0(N/25mm)未満
△以上であれば、良好と判断した。
【0216】
また、得られた偏光板を用いて液晶表示装置を作製し、(3)表示特性(ベンドムラ、光学ムラ、光漏れ)を評価した。
【0217】
(3)表示特性
(液晶表示装置の作製)
IPS型液晶表示装置であるLG社製 50V型 液晶テレビ 50UK6400EJCから、予め貼り合わされていた2枚の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれ貼り合わせて、タッチパネル部材を有する液晶表示装置を得た。偏光板の貼り合わせは、保護フィルムが液晶セル側となるようにした。
【0218】
(3-1)ベンドムラ
上記作製した液晶表示装置を、40℃80%RHの環境下で80時間放置した。次いで、60℃ドライの環境下で液晶表示装置を黒表示させた状態で、表示画面の4頂点付近の輝度と表示画面中央部付近の輝度との差(中心部と周辺部との画像ムラ)を目視観察した。そして、以下の評価基準に基づいて、ベンドムラの評価を行った。
○:ベンドムラが全く認められない
△:ベンドムラが僅かに認められるが、実使用上問題なし
×:明らかなベンドムラが認められ、実使用上問題あり
なお、ベンドムラは、例えば保護フィルムの厚みが厚いときに生じやすいパネルのベンドによって生じるムラであり、画面中央に円形のムラとして見えるものである。△以上であれば良好と判断した。
【0219】
(3-2)光学ムラ
上記作製した液晶表示装置を、80℃DRYの環境下で80時間放置した。次いで、液晶表示装置を黒表示させた状態で、表示画面の4頂点付近の輝度と表示画面中央部付近の輝度との差(中心部と周辺部との画像ムラ)を目視観察した。そして、以下の基準に基づいて光学ムラを評価した。
○:光学ムラが全く認められない
△:光学ムラが僅かに認められるが、実使用上問題なし
×:明らかな光学ムラが認められ、実使用上問題あり
なお、光学ムラは、光弾性によって生じるムラであり、4頂点付近が白く見えるものである。△以上であれば良好と判断した。
【0220】
(3-3)光漏れ
上記作製した液晶表示装置を黒表示させた状態で、以下の基準に基づいて光漏れを評価した。
◎:光漏れが全く認められない
○:光漏れが僅かに認められるが、実使用上問題なし
△:光漏れが認められるが、実使用上は許容される品質である
×:明らかな光漏れが認められ、実使用上問題あり
なお、光漏れは、偏光板のツレやシワ、接着性、および位相差値(Ro、Rt)に起因して生じるムラであり、線状や波状に白抜けて見えるものである。△以上であれば良好と判断した。
【0221】
得られた偏光板201~226の構成を表4に示し、評価結果を表5に示す。
【0222】
【0223】
【0224】
表5に示されるように、偏光板201~206、208、210、212、221~224および226(実施例)は、いずれも偏光板のツレやシワが抑制され、かつ良好な接着性を有することがわかる。また、これらの偏光板を用いた表示装置も、ツレやシワに起因する光漏れが抑制されることがわかる。また、表示装置は、ベンドムラや光学ムラも生じないことがわかる。
【0225】
特に、保護フィルムの厚みが薄いほど、接着性やベンド、光学ムラを一層少なくできることがわかる(偏光板201、202および206の対比、偏光板210と226との対比)。
【0226】
また、Rs2/Raが4以下であると、保護ツレやシワ、光漏れを一層抑制しうることがわかる(偏光板202と224との対比)。
【0227】
また、Raが200nm以下であると、保護ツレやシワ、光漏れを一層抑制しうることがわかる(偏光板202と222との対比)。
【0228】
これに対して、偏光板207、211、213~217、219、220および225(比較例)は、いずれも偏光板のツレやシワが生じることがわかる。それにより、表示装置も、ツレやシワに起因する光漏れが生じることがわかる。
【0229】
偏光板209および218(比較例)は、いずれも偏光板の接着性が低く、それにより、表示装置の光漏れが生じることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本発明によれば、(メタ)アクリル系樹脂を含む保護フィルムと偏光子とを活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて偏光板を製造する際の、硬化収縮に伴う保護フィルムのツレやシワなどの変形を抑制でき、それによる光学ムラを抑制しうる偏光板、偏光板の製造方法およびそれを用いた液晶表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0231】
100 偏光板
110 偏光子
120、223、233 保護フィルム
130、224、234 対向フィルム
140、150、225、235 接着剤層
160、224、234 粘着剤層
200 液晶表示装置
210 液晶セル
220 第一偏光板
221 第一偏光子
230 第二偏光板
231 第二偏光子
240 バックライト
250 液晶表示パネル