(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】防護シート及び防護衣
(51)【国際特許分類】
B32B 25/14 20060101AFI20240402BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20240402BHJP
B32B 25/18 20060101ALI20240402BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240402BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20240402BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B32B25/14
A41D13/00 102
B32B25/18
C08K3/013
C08L9/02
C08L21/00
(21)【出願番号】P 2023103765
(22)【出願日】2023-06-23
【審査請求日】2023-07-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 志貴
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-178911(JP,A)
【文献】特開2021-195479(JP,A)
【文献】特開2021-000765(JP,A)
【文献】登録実用新案第3141254(JP,U)
【文献】特開2003-055880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 25/14
A41D 13/00
B32B 25/18
C08K 3/013
C08L 9/02
C08L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側と外側とを備える防護シートであって、
内側に位置する第1ゴム層と、外側に位置する第2ゴム層と、前記第1ゴム層と前記第2ゴム層との間に積層配置される補強布と、を備え、
前記第1ゴム層と前記第2ゴム層とでは異なる種類のゴムが用いられ、
前記第2ゴム層には、赤外反射剤が、当該第2ゴム層の全固形分のうち当該赤外反射剤を除いた固形分に対して、5wt%以上30wt%以下含有されて
おり、
前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層の一方は、アクリロニトリルブタジエンゴムが用いられ、他方は、クロロブチルゴムが用いられている、防護シート。
【請求項2】
前記第1ゴム層には、赤外線反射剤が、当該第1ゴム層の全固形分のうち当該赤外反射剤を除いた固形分に対して、5wt%以上30wt%以下含有されている、請求項1に記載の防護シート。
【請求項3】
前記アクリロニトリルブタジエンゴムは、アクリロニトリル含有量が36wt%以上である、請求項
1に記載の防護シート。
【請求項4】
前記赤外線反射剤は、粒子状であり、その粒子径は500nm以上1500nm以下である、請求項1に記載の防護シート。
【請求項5】
前記赤外線反射剤粒子は、チタン、マンガン、カルシウム、鉄、ビスマス、クロム、ニッケルの金属元素を少なくとも1種類以上含む顔料である、請求項1に記載の防護シート。
【請求項6】
前記補強布は、織物、編物、または不織布である、請求項1に記載の防護シート。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の防護シートを用いた、防護衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有毒なガスや液体等から人体を防護すると共に、炎天下等で使用される場合にも表面温度上昇抑制が可能な防護シートおよび防護衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有毒なガスや液体等から人体を保護する防護シートに関する技術が、たとえば、特許第5784812号公報(特許文献1)に開示されている。このような防護シートには、材料表面の良好な耐ガス浸透性および耐液防護性が求められ、材料の表面処理に関する技術が、たとえば、特開2003-2903号公報(特許文献2)および特開2010-24279号公報(特許文献3)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5784812号公報
【文献】特開2003-2903号公報
【文献】特開2010-24279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防護シートを用いた防護衣は、全身が覆われることから、屋外での使用時には、日射による輻射熱の影響で、防護衣の内部は高温となる。そのために、長時間にわたる防護衣の着用は困難であり、その結果、防護衣を着用して行う作業の作業効率が低下する。
【0005】
本開示では、上記課題を解決することにあり、日射による輻射熱の影響を抑制することで、防護衣の内部温度の上昇を抑制することが可能な、防護シートおよび防護衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示の防護シートは、内側と外側とを備える防護シートであって、内側に位置する第1ゴム層と、外側に位置する第2ゴム層と、前記第1ゴム層と前記第2ゴム層との間に積層配置される補強布と、を備え、前記第1ゴム層と前記第2ゴム層とでは異なる種類のゴムが用いられ、前記第2ゴム層には、赤外反射剤が、当該第2ゴム層の全固形分のうち当該赤外反射剤を除いた固形分に対して、5wt%以上30wt%以下含有されている、防護シート。
【0007】
[2]:[1]に記載の防護シートであって、前記第1ゴム層には、赤外線反射剤が、当該第1ゴム層の全固形分のうち当該赤外反射剤を除いた固形分に対して、5wt%以上30wt%以下含有されている。
【0008】
[3]:[1]又は[2]に記載の防護シートであって、前記第1ゴム層及び前記第2ゴム層の一方は、アクリロニトリルブタジェンゴムが用いられ、他方は、クロロブチルゴムが用いられている。
[4]:[3]に記載の防護シートであって、前記アクリロニトリルブタジェンゴムは、アクリロニトリル含有量が36wt%以上である。
【0009】
[5]:[1]~[4]のいずれか1に記載の防護シートであって、前記赤外線反射剤は、粒子状であり、その粒子径は平均粒子径は600nm以上1500nm以下である。
【0010】
[6]:[1]~[5]のいずれか1に記載の防護シートであって、前記赤外線反射剤は、チタン、マンガン、カルシウム、鉄、ビスマス、クロム、ニッケルの金属元素を1種類以上含む顔料である。
【0011】
[7]:[1]~[6]のいずれか1に記載の防護シートであって、前記補強布は、織物、編物、または不織布である。
【0012】
[6]本開示の防護衣は、[1]~[7]のいずれか1に記載の防護シートを用いている。
【発明の効果】
【0013】
本開示に従えば、ガス状及び液状有機化学物質に対して浸透抑制能があり、日射による輻射熱の影響を抑制することで、防護衣の内部温度の上昇を抑制することが可能な、防護シートおよび防護衣の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4の断面構造図である。
【
図2】実施の形態2の防護シート1Bの断面構造図である。
【
図3】実施の形態3の防護シート1Cの断面構造図である。
【
図4】実施の形態4の防護シート1Dの断面構造図である。
【
図5】比較例1の防護シート2の断面構造図である。
【
図6】比較例1の防護シート3の断面構造図である。
【
図7】比較例1の防護シート4の断面構造図である。
【
図9】ガス浸透性試験に用いる試験容器を示す概略図である。
【
図12】実施の形態5の防護衣の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示に基づいた各実施の形態の防護シートおよび防護衣について、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。理解を容易にするために、図に示す膜厚さ、および、層厚さについては、実際の比率とは異なっている。
【0016】
明細書中、「外側」とは、防護シートの使用時において、有毒なガスや液体等に曝される側を意味し、「内側」とは、防護シートの使用時において、有毒なガスや液体等に曝されない側を意味する。したがって、この防護シートを防護衣に用いた場合には、着用者に触れる側が「内側」となる。
【0017】
[実施の形態1:防護シート1A-1~1A-4]
図1を参照して、本実施の形態の防護シート1A-1~1A-4について説明する。
図1は、防護シート1A-1~1A-4の断面構造図である。
【0018】
本実施の形態の防護シート1A-1~1A-4は、内側と外側とを備え、内側に位置する第1ゴム層11と、外側に位置する第2ゴム層13と、第1ゴム層11と第2ゴム層1
3との間に積層配置される補強布12と、を備える。
【0019】
第1ゴム層11と第2ゴム層13とでは、異なるゴムが用いられる。本実施の形態では、第1ゴム層11には、アクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)が用いられ、第2ゴム層13には、クロロブチルゴムが用いられる。補強布12には、糸の太さが70デシテックスのナイロンの織物が用いられている。糸の太さは、この太さには限定されない。また、材料もナイロンに限定されない。例えば、ポリエステル、綿等も用いることができる。また、織物以外でも、ニット、薄織物、不織布等を用いることもできる。
【0020】
第1ゴム層11の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、第2ゴム層13の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、補強布12に織物基布を用いた場合の厚み、約0.1mmである。なお、補強布12にニット生地を用いた場合には、補強布12の厚みは、約0.2mm~0.3mm程度となる。
【0021】
アクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)は、合成ゴムの1つであり、アクリロニトリルと1,3-ブタジエンとの共重合体である。アクリロニトリルの含有量により、
24wt%以下(低ニトリル)、25~30wt%(中ニトリル)、31~35wt%(中高ニトリル)、36~42wt%(高ニトリル)、および、43wt%以上(極高ニトリル)に分類される。本実施の形態のアクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)は、高ニトリル以上が好ましく、より好ましくは、極高ニトリルであるとよい。本実施の形態の防護シート1A-1~1A-4では、極高ニトリルに分類されるアクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)を用いる。
【0022】
第2ゴム層13には、赤外反射剤が含有されている。赤外反射剤とは、自然光に含まれる近赤外域(780nm~2500nm)の光を反射することが可能な材料を意味する。たとえば、赤外反射剤としては、チタン、マンガン、カルシウム、鉄、ビスマス、クロム、ニッケル等の金属元素を1種類以上含む顔料が用いることができる。本実施の形態では、第2ゴム層13に含まれる赤外反射剤の含有量は、第2ゴム層13の全固形分のうち赤外反射剤を除いた固形分(100wt%)に対して対して、5wt%~30wt%程度であり、好ましくは15~20wt%である。第1ゴム層11に添加剤が含まれる場合、この添加剤は、赤外反射剤を除いた固形分に入る。
【0023】
(防護シート1A-1~1A-4の製造方法)
第1ゴム層11および第2ゴム層13に用いられる、クロロブチルゴムあるいはアクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)の製造方法について説明する。まず、原料ゴムへ添加剤(加硫剤、促進剤、補強材、軟化剤、顔料など)および赤外反射を配合することによって、赤外反射剤を混合した原料ゴムを得ることができる。この原料ゴムを混練し、延伸、シート化する。
【0024】
次に、布帛の片側に赤外線反射剤を混合したクロロブチルゴムシートを積層し(ステップ1)、次に、布帛の反対側にもNBRゴムシート積層する(ステップ2)。その後、本積層シートに対して加熱加硫を行う(ステップ3)。ステップ1とステップ2との順序が逆でもよい。
【0025】
以上により、第1ゴム層11、補強布12、および、第2ゴム層13の三層構造を備える防護シート1A-1~1A-4が得られる。
【0026】
赤外反射剤は、第1ゴム層11の全固形分のうち、当該赤外反射剤を除いた固形分(原料ゴム+添加剤)(100wt%)に対し、5wt%~30wt%、好ましくは15~20wt%配合する。たとえば、チタン、マンガン、カルシウムの金属元素からなる赤外反
射剤(石原産業株式会社製「SG-101」)を用いることができる。本実施の形態では、赤外反射剤を除いた固形分(原料ゴム+添加剤)(100wt%)に対し、赤外反射剤を、それぞれ、5,15,20,30wt%配合したクロロブチルゴムシートを用いて、防護シート1A-1~1A-4を作製した。
[実施の形態2:防護シート1B]
図2を参照して、本実施の形態の防護シート1Bについて説明する。
図2は、防護シート1Bの断面構造図である。
【0027】
本実施の形態の防護シート1Bは、第1ゴム層14、補強布15、および、第2ゴム層16の三層構造を得るまでの工程は、実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4と同じであるが、ゴム種が逆転している。つまり、第1ゴム層14にクロロブチルゴムを用い、第2ゴム層16にアクリロニトリルブタジエンゴム(NBRゴム)に赤外反射剤を含有したものを用いる。赤外反射剤は、第2ゴム層16の全固形分のうち当該赤外反射剤を除いた固形分(100wt%)に対して、15wt%配合している。
【0028】
第1ゴム層14には、クロロブチルゴムが用いられ、第2ゴム層16には、アクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)が用いられている。補強布15には、糸の太さが70デシテックスのナイロンの織物が用いられている。糸の太さは、この太さには限定されない。また、材料もナイロンに限定されない。例えば、ポリエステル、綿等も用いることができる。また、織物以外でも、ニット、薄織物、不織布等を用いることもできる。
【0029】
第1ゴム層14の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、第2ゴム層16の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、補強布15に織物基布を用いた場合の厚み、約0.1mmである。なお、補強布15にニット生地を用いた場合には、補強布15の厚みは、約0.2mm~0.3mm程度となる。本実施の形態では第1ゴム層の厚さ、第2ゴム層の厚さ、補強布の材料及び厚さは、実施の形態1と同じにした。
【0030】
(防護シート1Bの製造方法)
防護シート1Bの製造方法としては、実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4と同様に、布帛の片側に赤外線反射剤を混合したNBRゴムシートを積層し(ステップ1)、次に、布帛の反対側にもクロロブチルゴムシート積層する(ステップ2)。その後、本積層シートに対して加熱加硫を行う(ステップ3)。ステップ1とステップ2との順序が逆でもよい。
【0031】
以上により、第1ゴム層14、補強布15、および、第2ゴム層16の三層構造を備える防護シート1Bが得られる。
[実施の形態2:防護シート1C]
図3を参照して、本実施の形態の防護シート1Cについて説明する。
図3は、防護シート1Cの断面構造図である。
【0032】
(防護シート1C)
防護シート1Cは、第1ゴム層17、補強布18、および、第2ゴム層19の三層構造を得るまでの工程は、実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4と同じであるが、第1ゴム層17及び第2ゴム層19の両方に、赤外反射剤を、それぞれの層の全固形分のうち当該赤外反射剤を除いた固形分に対して、15wt%配合している。
【0033】
第1ゴム層17には、クロロブチルゴムが用いられ、第2ゴム層19には、アクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)が用いられている。補強布18には、糸の太さが70デシテックスのナイロンの織物が用いられている。糸の太さは、この太さには限定されない。また、材料もナイロンに限定されない。例えば、ポリエステル、綿等も用いることがで
きる。また、織物以外でも、ニット、薄織物、不織布等を用いることもできる。
【0034】
第1ゴム層17の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、第2ゴム層19の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、補強布18に織物基布を用いた場合の厚み、約0.1mmである。なお、補強布18にニット生地を用いた場合には、補強布15の厚みは、約0.2mm~0.3mm程度となる。本実施の形態では第1ゴム層の厚さ、第2ゴム層の厚さ、補強布の材料及び厚さは、実施の形態1と同じにした。
【0035】
(防護シート1Cの製造方法)
実施の形態1の防護シート1Aと同様に、補強布18の片側に赤外線反射剤を混合したNBRゴムシートを積層し(ステップ1)、次に、補強布18の反対側にも赤外線反射剤を混合したクロロブチルゴムシート積層する(ステップ2)。その後、本積層シートに対して加熱加硫を行う(ステップ3)。ステップ1とステップ2との順序が逆でもよい。
【0036】
以上により、第1ゴム層17、補強布18、および、第2ゴム層19の三層構造を備える防護シート1Cが得られる。
[実施の形態4:防護シート1D]
図4を参照して、本実施の形態の防護シート1Dについて説明する。
図4は、防護シート1Dの断面構造図である。
【0037】
(防護シート1D)
防護シート1Dは、第1ゴム層21、補強布22、および、第2ゴム層23の三層構造は実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4と同じであるが、三層構造に加え、最内層に生地20を積層している。
【0038】
第1ゴム層21には、クロロブチルゴムが用いられ、第2ゴム層23には、アクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)が用いられている。補強布22には、糸の太さが70デシテックスのナイロンの織物が用いられている。糸の太さは、この太さには限定されない。また、材料もナイロンに限定されない。例えば、ポリエステル、綿等も用いることができる。また、織物以外でも、ニット、薄織物、不織布等を用いることもできる。
【0039】
第1ゴム層21の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、第2ゴム層23の厚さは、約0.08mm~0.2mm程度、補強布22に織物基布を用いた場合の厚み、約0.1mmである。なお、補強布22にニット生地を用いた場合には、補強布22の厚みは、約0.2mm~0.3mm程度となる。本実施の形態では第1ゴム層の厚さ、第2ゴム層の厚さ、補強布の材料及び厚さは、実施の形態1と同じにした。
【0040】
(防護シート1Dの製造方法)
補強布22の片側に赤外線反射剤を混合したクロロブチルゴムシートを積層し(ステップ1)、次に、補強布22の反対側にもNBRゴムシート積層する(ステップ2)。その後、NBRゴムシートに生地20を積層する(ステップ3)。本積層シートに対して加熱加硫を行う(ステップ4)。ステップ1とステップ2との順序が逆でもよい。
【0041】
以上により、生地20、第1ゴム層21、補強布22、および、第2ゴム層23の四層構造を備える防護シート1Dが得られる。
【0042】
[比較例1:防護シート2]
図5を参照して、比較例1の防護シート2について説明する。
図5は、防護シート2の断面構造図である。
(防護シート2)
比較例1の防護シート2は、第1ゴム層24、補強布25、および、第2ゴム層26の三層構造である。防護シート2では、第2ゴム層26には赤外反射剤を、第2ゴム層26の全固形分のうち当該赤外反射剤を除いた固形分(100wt%)に対して、15wt%配合したクロロブチルゴムを用いる。第1ゴム層24には赤外反射剤を配合していないクロロブチルゴムを用いた。
【0043】
第1ゴム層24及び、第2ゴム層26にはクロロブチルゴムが用いられている。比較例1では、第1ゴム層の厚さ、第2ゴム層の厚さ、補強布の材料及び厚さは、実施の形態1と同じにした。
【0044】
(防護シート2の製造方法)
補強布25の片側にクロロブチルゴムシートを積層し(ステップ1)、次に、補強布25の反対側に赤外反射剤を配合したクロロブチルゴムシート積層する(ステップ2)。その後、本積層シートに対して加熱加硫を行う(ステップ3)。
【0045】
以上により、第1ゴム層24、補強布25、および、第2ゴム層26の三層構造を備える防護シート2が得られる。
【0046】
[比較例2:防護シート3]
図6を参照して、比較例2の防護シート3について説明する。
図6は、防護シート23断面構造図である。
(防護シート3)
比較例2の防護シート3は、第1ゴム層27、補強布28、および、第2ゴム層29の三層構造である。防護シート3では、第2ゴム層29に、赤外線反射剤の代わりにカーボンブラックを、第2ゴム層29の全固形分のうち当該カーボンブラックを除いた固形分(100wt%)に対して、1.5wt%配合した。
【0047】
第1ゴム層27には、クロロブチルゴムが用いられ、第2ゴム層29には、アクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)が用いられている。比較例2では、第1ゴム層の厚さ、第2ゴム層の厚さ、補強布の材料及び厚さは、実施の形態1と同じにした。
【0048】
(防護シート2の製造方法)
補強布28の片側にカーボンブラックを配合したクロロブチルゴムシートを積層し(ステップ1)、次に、補強布28の反対側にアクリロニトリルブタジエン(NBR)ゴムシート積層する(ステップ2)。その後、本積層シートに対して加熱加硫を行う(ステップ3)。
【0049】
以上により、第1ゴム層27、補強布28、および、第2ゴム層29の三層構造を備える防護シート3が得られる。
【0050】
[比較例3:防護シート4]
図7を参照して、比較例3の防護シート4について説明する。
図7は、防護シート4の断面構造図である。
(防護シート4)
比較例3の防護シート4は、第1ゴム層30、補強布31、および、第2ゴム層32の三層構造である。防護シート4では、第2ゴム層32に赤外反射剤を、第2ゴム層32の全固形分のうち当該赤外反射剤を除いた固形分(100wt%)に対し、1wt%配合した。
【0051】
第1ゴム層30には、アクリロニトリルブタジェンゴム(NBR)が用いられ、第2ゴ
ム層32には、クロロブチルゴムが用いられている。比較例3では、第1ゴム層の厚さ、第2ゴム層の厚さ、補強布の材料及び厚さは、実施の形態1と同じにした。
【0052】
(防護シート4の製造方法)
補強布31の片側に赤外反射剤を1wt%配合したクロロブチルゴムシートを積層し(ステップ1)、次に、補強布31の反対側にアクリロニトリルブタジエン(NBR)ゴムシート積層する(ステップ2)。その後、本積層シートに対して加熱加硫を行う(ステップ3)。
【0053】
以上により、第1ゴム層30、補強布31、および、第2ゴム層32の三層構造を備える防護シート4が得られる。
【0054】
[評価方法]
次に、
図9から
図11を参照して、防護シートの評価方法について説明する。
図9は、ガス浸透性試験に用いる試験容器を示す概略図、
図10は、液浸透性試験法の概略図、
図11は表面温度測定法の概略図である。
【0055】
評価対象として、耐ガス浸透性(6hr最大浸透濃度/ppm)については、2-クロロエチルエチルスルフィドに対するガス浸透性試験を用いて評価した。
図9を参照して、ガス浸透性試験は、上方セル(150cc)100および下方セル(150cc)101で、実施の形態の試験品104を挟み込む。試験品104の上面には、試験液(2-クロロエチルエチルスルフィド)103を滴下した。試験品104を挟み込んだ上方セル(150cc)100および下方セル(150cc)101は、パラフィンシール105により密閉した。その後、サンプリング口102から下方セル内の気体をサンプリングし、ガスクロマトグラフィーによりガス透過性を評価した。判定基準は、下方セルの6hr最大浸透濃度が30ppm以下であると◎、30ppm超-60ppm未満であると〇、61ppm以上であると×、とした。
【0056】
図10を参照して、液浸透性試験法は、ガラスプレート110上に濾紙111を置き、更にその上へ、実施の形態の試験品112を置く。さらにその上に液状化学物質113(赤色染料を溶解したフタル酸ジプロピル)を20μL滴下した。その後、その上に底面積1cm
2の錘を所定荷重114(1kgf/cm
2)で置き、12時間後の濾紙の着色により液の浸透有無を判定した。判定基準は、浸透なしの場合〇、浸透ありの場合×、とした
【0057】
日射影響(表面温度)の評価については、JIS L 1951(生地の遮熱性試験)を参考に作製した試験装置を用いた。、生地表面温度をFLIR製のサーモカメラによる読み取ることで判定した。
図11に示す試験装置においては、環境温度を20度~25度とし、光源には、レフランプ120(岩崎電気PRS-500W)を用いた。レフランプ120の出力は500Wである。試験台121の上に厚さ5mmのスペーサー124および防護シートサンプル121を乗せ、防護シートサンプル121とレフランプの距離が40cmになるように調整した。生地表面温度については、光照射から15分後の防護シートサンプル121に対して、試験台122-防護シートサンプル121の中心-サーモカメラ123の角度が45度、防護シートサンプル121とサーモカメラ123の距離が60cmの位置で表面温度を測定した。判定基準として、光照射から15分後の表面温度が50℃以下であると◎、50℃超から60℃未満であると〇、60℃以上であると×とした。
【0058】
日射影響(日射反射率)の評価については、分光光度計(島津製作所株式会社製、UV-VIS-NIR分光光度計SolidSpec-3700)を用いた。300-250
0nmの分光反射率を測定し、JIS K 5602:2008(塗膜の日射反射率)に基づき近紫外・可視光域(300-780nm)および近赤外域(780-2500nm)で判定した。判定基準は、近紫外・可視光域の日射反射率が15%未満であると〇、15%以上であると×、とした。また、近赤外域の日射反射率が40%以上であると〇、40%未満であると×、とした。
【0059】
[評価結果]
次に、
図8を参照して、評価結果について説明する。
図8は、上記で作製した防護シートの構成と評価結果を示す図である。
【0060】
実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4では、下方セルの6hr最大浸透濃度が60ppm以下であり、液浸透性試験においても浸透が見られず、日射影響(表面温度)が60℃未満であり、第2ゴム層へ赤外反射剤を15%以上配合した場合には50℃以下になり、優良な結果が得られた。
【0061】
このように、実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4は、比較例の評価よりも耐ガス浸透性、耐液性能に優れ、且つ赤外線反射効果により表面温度上昇を低く抑えることが可能であることがわかる。その結果、防護シート1Aの外側に有害なガスや液体等が接したとしても、防護材料1A-1~1A-4の内側への有害なガスや液体等の浸透を抑制する事が可能で、日射影響を極力排除可能となることが示唆される。
【0062】
実施の形態2の防護シート1Bでは、下方セルの6hr最大浸透濃度が60ppm以下であり、液浸透性試験においても浸透が見られず、日射影響(表面温度)についても60℃以下と優良な結果が得られた。
【0063】
このように、実施の形態2の防護シート1Bにおいても、実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4と同様に赤外線反射効果により表面温度上昇を低く抑えることが可能であることがわかる。その結果、防護シート1Bの内側への日射影響を極力排除可能となることが示唆される。
【0064】
実施の形態3の防護シート1Cでは、下方セルの6hr最大浸透濃度が60ppm以下であり、液浸透性試験においても浸透が見られず、日射影響(表面温度)についても60℃以下と優良な結果が得られた。
【0065】
このように、実施の形態3の防護シート1Cにおいても、実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4と同様に赤外線反射効果により表面温度上昇を低く抑えることが可能であることがわかる。その結果、防護シート1Cの内側への日射影響を極力排除可能となることが示唆される。
【0066】
実施の形態4の防護シート1Dでは、下方セルの6hr最大浸透濃度が60ppm以下であり、液浸透性試験においても浸透が見られず、日射影響(表面温度)についても60℃以下と優良な結果が得られた。
【0067】
このように、実施の形態4の防護シート1Dにおいても、実施の形態1の防護シート1A-1~1A-4と同様に赤外線反射効果により表面温度上昇を低く抑えることが可能であることがわかる。その結果、防護シート1Dの内側への日射影響を極力排除可能となることが示唆される。
【0068】
比較例1の防護シートでは、第1ゴム層と第2ゴム層のゴム種がクロロブチルゴムで同じのために、防護性の評価において、下方セルの6hr最大浸透濃度が80ppmであり
、液浸透性試験においても浸透が見られ、防護シートとして不適格であった。
【0069】
比較例2の防護シートでは、赤外反射剤ではなく近赤外域の光を吸収するカーボンブラックが1.5wt%配合されているため、表面温度が65℃まで上昇し、近赤外域の日射反射率が6.5%であり、防護シートとして不適格であった。
【0070】
比較例3の防護シートでは、表面温度が43℃と低いものの、赤外反射剤の配合量が1wt%と少ないためゴム本来の色が影響してしまい、近紫外・可視光域の日射反射率が15%以上となり、防護シートとして不適格であった。
【0071】
[実施の形態5:防護衣150]
図10を参照して、本実施の形態における防護衣150の構成について説明する。
図10は、防護衣150の構成を示す正面図である。この防護衣150は、上記各実施の形態で説明した防護シート1A-1~1A-4、防護シート1B、防護シートCまたは、防護シート1Dを用いて製造したものである。
【0072】
一例として、防護シート1A-2を用いる場合、この防護衣150の具体的な防護シートの製造方法としては、まず、布帛の片側に赤外線反射剤を混合したクロロブチルゴムシートを積層する(ステップ1)。次に、布帛の反対側にもNBRゴムシート積層する(ステップ2)。次に、加熱加硫を行う(ステップ3)。なお、ステップ1とステップ2とは順序が逆でもよい。
【0073】
防護シート1A-1~1A-4、防護シート1B、防護シートCまたは、防護シート1Dを用いて製造した防護衣150は、表面(外側)に有害なガスや液体等が接したとしても、有害なガスや液体等の防護衣150の通過を阻止することができ、着用者を確実に保護できる。それと共に、日射環境で使用する際にも表面温度上昇が小さく着用者の熱ストレス対策に寄与可能なものである。よって、着用者の作業効率を上げることに繋がる。
【0074】
なお、防護衣150として、上衣、下衣、および、頭巾を有する防護衣を一例にしたが、本開示における防護シートは、有害なガスや液体等に汚染される領域に出入り際に着用される衣服等に広く適用することが可能である。
【0075】
上記では、防護シートを防護衣に適用した例を示したが、本発明の防護シートは、他にも、例えば、防護手袋、防護靴下、防護フード、防護カバー、フィルター、防護天幕、寝袋等、さらに、これらアイテムを収納する収納袋、に適用することができる。また、防護性を有する容器、装置などのパッキン、ガスケットなどのシール材としても用いることができる。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1A-1~1A-4,1B,1C,1D,2,3,4 防護シート
11,14,17,21,24,27,30 第1ゴム層
13,16,19,23,26,29,32 第2ゴム層
12,15,18,22,25,28,31 補強布
20 生地
【要約】
【課題】日射による輻射熱の影響を抑制することで、防護衣の内部温度の上昇を抑制することが可能な、防護シートおよび防護衣を提供することを目的とする。
【解決手段】内側と外側とを備える防護シートであって、内側に位置する第1ゴム層と、外側に位置する第2ゴム層と、前記第1ゴム層と前記第2ゴム層との間に積層配置される補強布と、を備え、前記第1ゴム層と前記第2ゴム層とでは異なる種類のゴムが用いられ、前記第2ゴム層に、又は、前記第1ゴム層と前記第2ゴム層の両方に、赤外線反射剤が5wt%以上30wt%以下の配合量で含有されている。
【選択図】
図1