(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】乗客コンベアシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B66B31/00 A
B66B31/00 C
(21)【出願番号】P 2023128759
(22)【出願日】2023-08-07
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】濱口 萌子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】水戸 陵人
(72)【発明者】
【氏名】山田 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】立岡 利茂弥
(72)【発明者】
【氏名】成田 岳人
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-090880(JP,A)
【文献】中国実用新案第215558260(CN,U)
【文献】特開2022-108604(JP,A)
【文献】特許第7098781(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアに乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間に、空中投影画像を表示する空中投影表示部と、
前記空中投影表示部における表示を制御する表示制御部と、
前記乗客の現在位置を含む位置情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記表示制御部は、前記乗客の現在位置に基づき前記空中投影表示部における表示を制御し、
前記表示制御部は、前記空中投影画像に対して前記乗客コンベアの進行方向の手前側において前記空中投影画像と前記乗客との距離が第2所定距離以内となると、前記空中投影画像を非表示とする、または、前記空中投影画像の表示位置を前記推定通過空間外に変更す
る乗客コンベアシステム。
【請求項2】
乗客コンベアに乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間に、空中投影画像を表示する空中投影表示部と、
前記空中投影表示部における表示を制御する表示制御部と、
前記乗客の現在位置を含む位置情報を取得する情報取得部と、を備え、
前記表示制御部は、前記乗客の現在位置に基づき前記空中投影表示部における表示を制御し、
前記表示制御部は、前記空中投影画像に対して前記乗客コンベアの進行方向の手前側において前記空中投影画像と前記乗客との距離が第3所定距離以内となると、所定時間経過後に前記空中投影画像を非表示とする、または、前記空中投影画像の表示位置を前記推定通過空間外に変更す
る乗客コンベアシステム。
【請求項3】
乗客コンベアに乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間に、空中投影画像を表示する空中投影表示部と、
前記空中投影表示部における表示を制御する表示制御部と、
前記乗客コンベアの混雑の度合いを示す混雑度を取得する情報取得部
と、を備え、
前記表示制御部は、前記混雑度に基づき前記空中投影表示部における表示を制御す
る乗客コンベアシステム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記混雑度が第1所定値以上である場合、前記空中投影画像を非表示とする、請求項
3に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項5】
前記空中投影表示部は、複数の前記空中投影画像が前記乗客コンベアの進行方向に沿って表示されるように複数備えられ、
前記表示制御部は、前記混雑度が第2所定値よりも低い場合、前記複数の空中投影表示部が全て前記空中投影画像を表示した場合の前記空中投影画像の間隔よりも広い間隔で前記空中投影画像が表示されているように、前記空中投影表示部の前記空中投影画像の表示および非表示を制御する、請求項
3に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項6】
乗客コンベアに乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間に、空中投影画像を表示する空中投影表示部と、
前記空中投影表示部における表示を制御する表示制御部と、
前記乗客が撮影された画像を取得する情報取得部と、
前記画像に基づき、望ましくない方法により前記乗客コンベアに乗車している乗客である不適切乗車乗客の有無を判定する乗客判定部と、を備え、
前記表示制御部は、前記不適切乗車乗客がいる場合、前記不適切乗車乗客の前記乗客コンベアの進行方向側に前記空中投影画像を表示し、少なくとも前記不適切乗車乗客が当該空中投影画像を通過するまで前記空中投影画像を表示し続け
る乗客コンベアシステム。
【請求項7】
前記空中投影画像の全体を視認可能な領域が、前記推定通過空間における、前記空中投影画像の中心部までの距離が第1所定距離となる所定位置を全て含むように、該空中投影画像の投影位置、投影方向、および視野角が設定されている、
請求項
1~6の何れか1項に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項8】
前記空中投影表示部は、前記乗客コンベアの進行方向の左側の前記推定通過空間の領域に前記空中投影画像を表示する第1空中投影表示部と、前記進行方向の右側の前記推定通過空間の領域に前記空中投影画像を表示する第2空中投影表示部と、を備える、
請求項
1~6の何れか1項に記載の乗客コンベアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客に情報を提示する乗客コンベアが知られている。例えば特許文献1には、乗客コンベアの内側部に設けられた一又は複数の表示装置に、乗客の状態に基づいて、乗客の移動を抑制するための情報を表示する乗客コンベアの情報提示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗客は進行方向を向いた状態で乗客コンベアに乗車することが多い。そのため、乗客コンベアの内側部に情報が表示されても乗客の目に止まりにくいという問題がある。本発明の一態様は、乗客コンベアに乗車中の乗客に、より確実に視認される画像を表示することができる乗客コンベアシステムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る乗客コンベアシステムは、乗客コンベアに乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間に、空中投影画像を表示する空中投影表示部と、前記空中投影表示部における表示を制御する表示制御部と、を備える。
【0006】
上記の構成によれば、空中投影画像が乗客コンベアに乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間に表示される。これにより、空中投影画像が乗客の視野に入りやすくなる。その結果、より確実に乗客に視認される画像を表示することができる乗客コンベアシステムを実現することができる。
【0007】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記空中投影画像の全体を視認可能な領域が、前記推定通過空間における、前記空中投影画像の中心部までの距離が第1所定距離となる所定位置を全て含むように、該空中投影画像の投影位置、投影方向、および視野角が設定されていてもよい。
【0008】
上記の構成によれば、推定通過空間における、空中投影画像の中心部からの距離が第1所定距離となる所定位置の全ては、空中投影画像の全体を視認可能な領域に含まれている。これにより、所定位置を含む所定位置よりもさらに空中投影画像から離れる推定通過空間においては、空中投影画像を視認することができるので、例えば、所定位置を適宜設定することにより、空中投影画像の乗客への提示を所望の空間内で行うことができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記乗客の現在位置を含む位置情報を取得する情報取得部を備え、前記表示制御部は、前記乗客の現在位置に基づき前記空中投影表示部における表示を制御してもよい。
【0010】
上記の構成によれば、空中投影表示部による空中投影画像の表示は乗客の現在位置により制御される。そのため、乗客の位置にあわせた空中投影画像の表示を行うことができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記表示制御部は、前記空中投影画像に対して前記乗客コンベアの進行方向の手前側において前記空中投影画像と前記乗客との距離が第2所定距離以内となると、前記空中投影画像を非表示とする、または、前記空中投影画像の表示位置を前記推定通過空間外に変更してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、例えば、第2所定距離を空中投影画像の近傍とすることで、乗客にできるだけ長く空中投影画像を視認してもらいつつ、乗客が空中投影画像を通過することを防ぎ、乗客が空中投影画像を通過する際に感じる不快感を低減することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記表示制御部は、前記空中投影画像に対して前記乗客コンベアの進行方向の手前側において前記空中投影画像と前記乗客との距離が第3所定距離以内となると、所定時間経過後に前記空中投影画像を非表示とする、または、前記空中投影画像の表示位置を前記推定通過空間外に変更してもよい。
【0014】
上記の構成によれば、例えば、移動ステップが第3所定距離を移動する時間を所定時間とすることで、歩行せずに立ち止まって乗車している乗客に対しては、乗客が空中投影画像を通過することを防ぐことができ、移動ステップを歩行している乗客に対しては、空中投影画像を表示し続けて当該乗客に空中投影画像を通過させることができる。そのため、好ましい方法で乗車している乗客(歩行せず立ち止まって乗車している乗客)に対しては不快感を低減し、好ましくない方法で乗車している乗客(歩行している乗客)に対しては、歩行意欲を抑制することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記乗客コンベアの混雑の度合いを示す混雑度を取得する情報取得部をさらに備え、前記表示制御部は、前記混雑度に基づき前記空中投影表示部における表示を制御してもよい。
【0016】
上記の構成によれば、空中投影表示部による表示は乗客コンベアの混雑度により制御される。そのため、混雑度にあわせた空中投影画像の表示を行うことができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記表示制御部は、前記混雑度が第1所定値以上である場合、前記空中投影画像を非表示としてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、混雑度が第1所定値以上である場合、空中投影画像は表示されない。これにより、例えば、乗客が空中投影画像の近傍で検出されると空中投影画像を非表示とする制御を行う場合、混雑度が高いことに起因して空中投影画像の表示のONOFFが繰り返されるような事態が生じることを防ぐことができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記空中投影表示部は、複数の前記空中投影画像が前記乗客コンベアの進行方向に沿って表示されるように複数備えられ、前記表示制御部は、前記混雑度が第2所定値よりも低い場合、前記複数の空中投影表示部が全て前記空中投影画像を表示した場合の前記空中投影画像の間隔よりも広い間隔で前記空中投影画像が表示されているように、前記空中投影表示部の前記空中投影画像の表示および非表示を制御してもよい。
【0020】
混雑度が低い場合は、乗客と空中投影画像との距離が遠くても、乗客は空中投影画像を認識できるため、空中投影画像を少なくしても乗客は十分な時間、空中投影画像を認識することができる。上記の構成によれば、混雑度が低い場合に空中投影画像を間引くことができるため、乗客に十分な時間、空中投影画像を認識してもらいつつ、消費電力を低減させることができる。
【0021】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記乗客が撮影された画像を取得する情報取得部と、前記画像に基づき、望ましくない方法により前記乗客コンベアに乗車している乗客である不適切乗車乗客の有無を判定する乗客判定部と、を備え、前記表示制御部は、前記不適切乗車乗客がいる場合、前記不適切乗車乗客の前記乗客コンベアの進行方向側に前記空中投影画像を表示し、少なくとも前記不適切乗車乗客が当該空中投影画像を通過するまで前記空中投影画像を表示し続けてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、不適切乗車乗客に対しては、不適切乗車乗客が空中投影画像を通過するように空中投影画像を表示することができる。これにより、不適切乗車乗客に不快感を与え、不適切乗車乗客の乗客コンベアの利用を抑制することができる。
【0023】
本発明の他の態様に係る乗客コンベアシステムでは、前記空中投影表示部は、前記乗客コンベアの進行方向の左側の前記推定通過空間の領域に前記空中投影画像を表示する第1空中投影表示部と、前記進行方向の右側の前記推定通過空間の領域に前記空中投影画像を表示する第2空中投影表示部と、を備えていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、例えば、二人が並立可能な移動ステップを有する乗客コンベアであっても、左右の人それぞれに空中投影画像を表示することができる。そのため、より個々の乗客に即した表示を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、乗客コンベアに乗車中の乗客に、より確実に視認される画像を表示することができる乗客コンベアシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態1に係る表示装置を含む乗客コンベアシステムの機能ブロック図の一例を示す図である。
【
図2】上記乗客コンベアシステムの構成の一例を示す模式図である。
【
図3】上記表示装置の空中投影表示部の構造を説明する図である。
【
図4】上記空中投影表示部の配置例を示す図である。
【
図5】上記空中投影画像の視野角を説明する図である。
【
図7】上記空中投影画像の他の配置例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る乗客コンベアシステムの機能ブロック図の一例を示す図である。
【
図10】上記乗客コンベアシステムの空中投影表示部の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。ただし、以下の説明は本発明に係る乗客コンベアシステム1の一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0028】
<乗客コンベアシステムの概要>
乗客コンベアシステム1は、乗客コンベア40の乗客に向けて空中投影画像G1を空中に表示するシステムである。
図1は、本発明の実施形態1に係る表示装置10を含む乗客コンベアシステム1の機能ブロック図の一例を示す図である。
図2は乗客コンベアシステム1の構成の一例を示す模式図である。
【0029】
図1および
図2に示すように、乗客コンベアシステム1は、乗客コンベア40に乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間S(
図2参照)に、空中投影画像G1を表示させることで、乗客に提示したい画像がより確実に乗客コンベア40の乗客に視認されるように創意工夫されたものである。
【0030】
<乗客コンベアシステム>
図1に示すように、乗客コンベアシステム1は、表示装置10と、乗客コンベア制御装置30と、乗客コンベア40と、カメラ50と、センサ60と、を備えている。乗客コンベア40は、乗客を自動的に階上または階下に運ぶコンベアであり、例えば、エスカレータである。乗客コンベア40は上記に限らず、ムービングウォーク等、同一階において水平方向に乗客を運ぶ水平型のコンベアであってもよい。
【0031】
乗客コンベア制御装置30は、乗客コンベア40の運行を制御する。乗客コンベア制御装置30は、制御部31と、記憶部32と、を備えている。制御部31は乗客コンベア制御装置30の各部を統括的に制御する。制御部31の機能は、記憶部32に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。記憶部32は、乗客コンベア制御装置30が実行する各種のプログラム、およびプログラムによって使用されるデータを格納する。
【0032】
カメラ50は、乗客コンベア40およびその乗客を撮影する。カメラ50による撮影画像は表示装置10に送信される。センサ60は、所定の位置における人の通過を検出する。センサ60は、例えば、光電センサを用いることができる。
【0033】
センサ60は、空中投影画像G1に対して乗客コンベア40の進行方向D1の手前側において、空中投影画像G1と乗客との距離が第2所定距離以内となったことを検出するように配置される。また、センサ60は、空中投影画像G1に対して乗客コンベア40の進行方向D1の手前側において、空中投影画像G1と乗客との距離が第3所定距離以内となったことを検出するように配置される。センサ60は、空中投影画像G1ごとに設置されてよく、乗客コンベア40の乗車口に1つ設置し、移動ステップ43(
図2参照)の速度から第2所定距離または第3所定距離が算出されるものであってもよい。
【0034】
(表示装置)
表示装置10は、空中投影画像G1を表示する装置である。表示装置10は、制御部11と、記憶部12と、空中投影表示部20と、を備えている。
【0035】
制御部11は、表示装置10の各部を統括的に制御する。制御部11の機能は、記憶部12に記憶されたプログラムをCPUが実行することで実現されてよい。記憶部12は、制御部11が実行する各種のプログラム、およびプログラムによって使用されるデータを格納する。また、記憶部12は、空中投影画像情報を格納する。制御部11が備える各部および空中投影画像情報について詳しくは後述する。
【0036】
(空中投影表示部)
空中投影表示部20は、表示制御部112の制御に基づき、乗客コンベア40に乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間Sに、空中投影画像G1を表示する。空中投影表示部20は、複数の空中投影画像G1が乗客コンベア40の進行方向D1に沿って表示されるように複数備えられている。上記に限らず、空中投影表示部20は1つであってもよい。
【0037】
推定通過空間Sは任意に設定されるものであり、例えば、推定通過空間Sは、
図2に示すように、乗客コンベア40の移動ステップ43上の空間を含む。また、推定通過空間Sは乗車口41から降車口42を含み、移動ステップ43からの高さが2m以下であり、進行方向D1に対する幅は、両側のハンドレールからの外側に向けての距離を0.5m以下として設定することができる。推定通過空間Sの高さは、移動ステップ43に直立した乗客の顔が含まれるように設定されることが望ましい。推定通過空間Sの幅は、乗客がハンドレールから乗り出した場合に乗客の顔が含まれるように設定されるのが望ましい。
【0038】
空中投影画像G1は、このような乗客コンベア40に乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間Sに表示される。そのため、空中投影画像G1は乗客の視野に入りやすくなる。
【0039】
空中投影表示部20は、光の反射を利用して画像(映像)を空中に表示する。
図1に示すように、空中投影表示部20は、元画像表示装置201と、光学素子202と、を備えている。
図3は、空中投影表示部20の構造を説明する図である。
図3に示すように、元画像表示装置201は表示面201aを有し、空中投影画像G1として表示したい画像を表示面201aに表示する。表示制御部112は、元画像表示装置201の表示面201aの表示を制御することで、空中投影画像G1の表示を制御する。元画像表示装置201は、画像または映像を表示面201aに表示できるものであれば特に限定されず、例えば、液晶ディスプレイを用いることができる。
【0040】
光学素子202は、元画像表示装置201が表示している画像と同じ画像を空中に結像し、空中投影画像G1を空中に表示する。
図3に示すように、光学素子202は、光学素子202内の特殊な構造の透光部材に、元画像表示装置201から放たれる光を通過させることで、光学素子202に対して元画像表示装置201とは反対側の所定の空間位置に元画像表示装置201から放たれる光を集光させ、元画像表示装置201が表示している画像と同じ画像を所定の空間位置に結像させる。言い換えると、空中投影表示部20は、元画像表示装置201の各位置から出射された光を、光学素子202を介して、それぞれ対応する空間位置に集光させることによって推定通過領域S内の空中に空中投影画像G1を表示する表示装置である。これにより、空中投影表示部20は、例えばミストなどのような、空中表示を実現するための媒体を空間に散布することなく、空中投影画像G1を空中に表示することができる。
【0041】
また、空中投影表示部20では画像が空中に投影されるため、画像の表示箇所において画像表示のためのスクリーンや表示板等の物理的な構成を必要としない。したがって、空中投影表示部20によれば、乗客が推定通過空間S内の画像表示のための物理的な構成と接触する危険性を回避しつつ、推定通過空間Sに画像を表示することができる。
【0042】
図4は、空中投影表示部20の配置例を示す図である。
図4の4001は空中投影表示部20の配置の一例を示し、
図4の4002は空中投影表示部20の配置の他の例を示す。
図4の4001に示すように、光学素子202は、乗客コンベア40に沿って配置されている壁Wに沿って、配置されていてもよく、
図4の4002に示すように、壁Wに対して傾斜して配置されていてもよい。
【0043】
元画像表示装置201は光学素子202に対して斜めに配置され、光学素子202と元画像表示装置201との成す角θである場合、空中投影画像G1は、光学素子202と空中投影画像G1との成す角がθとなる位置で表示される。角度θは例えば、0°より大きく90°以下とすることができる。光学素子202の材質は特に限定されず、例えば、ガラスまたは樹脂であってもよい。
【0044】
この様に、空中投影表示部20を壁W内に設けることで、空中投影表示部20を設けるための空間を別途設ける必要がなく空中投影表示を実現することができる。また、上記に限らず、空中投影表示部20は天井に設けられ、乗客コンベア40の上部から空中投影画像G1が表示されてもよい。
【0045】
(空中投影画像)
図5は、空中投影表示部20の空中投影画像G1の視野角θ1を説明する図である。
図5に示すように、空中投影画像G1は視野角θ1を有する。空中投影画像G1は視野角θ1の範囲でのみ視認可能となる。視野角θ1は例えば30°~60°程度である。光学素子202の大きさ、角度、元画像表示装置201から光学素子202までの距離等を調整することで、空中投影画像G1の大きさ、視野角θ1、光学素子202の面と空中投影画像G1の視野角中心との角度θ2を変更することができる。
【0046】
図2に示すように、空中投影画像G1は、空中投影画像G1の全体を視認可能な領域R1が、推定通過空間Sにおける、空中投影画像G1の中心部C1までの距離が第1所定距離L1となる所定位置P1を全て含むように、該空中投影画像G1の投影位置、投影方向、および視野角θ1が設定されている。
【0047】
空中投影画像G1の全体を視認可能な領域R1は、空中投影画像G1上の各点における視野角θ1が重なる領域である。領域R1に存在する乗客が空中投影画像G1をみると、空中投影画像G1の全体が確認できる。領域R1は、空中投影画像G1の投影位置、投影方向、および視野角θ1を調整することにより、所望の範囲に設定することができる。
【0048】
そのため、例えば、推定通過空間Sにおいて所定位置P1を設定し、所定位置P1を全て含むように、該空中投影画像G1の投影位置、投影方向、および視野角θ1を調整して領域R1を設定することで、空中投影画像G1の乗客への提示を所望の空間内で行うことができる。なお、所定位置P1を全て含むように領域R1が設定されるので、所定位置P1を含む所定位置P1よりもさらに空中投影画像G1から離れる推定通過空間Sにおいても、空中投影画像G1全体を視認することができる。
【0049】
図6の6001、
図6の6002および
図6の6003は、それぞれ空中投影画像G1の配置例を示す図である。
図6の6001に示すように、空中投影画像G1は、乗客が空中投影画像G1を通過した場合において、乗客の顔の位置に空中投影画像G1が位置するように表示されてもよい。また、
図6の6001では空中投影画像G1は略鉛直方向に表示されているが、
図6の6002に示すように、乗客コンベア40の傾斜にあわせて鉛直方向から傾斜させて空中投影画像G1が表示されていてもよい。例えば、空中投影画像G1は、乗客コンベア40の傾きに対して略垂直となるように、鉛直な方向から進行方向D1の手前側に傾斜するように表示されてもよい。
【0050】
また、
図6の6003に示すように、空中投影画像G1は、乗客の足元に表示されてもよい。その場合、乗客が視認しやすいように、鉛直方向から進行方向D1の進行側に傾斜するように空中投影画像G1が表示されてもよい。空中投影画像G1の低い位置への表示は、例えば、空中投影表示部20をハンドレール下のガラス面に埋め込むことで実現することができる。
【0051】
空中投影画像G1の大きさは特に限定されず、空中投影画像G1の少なくとも一部が推定通過空間Sに含まれていればよい。
【0052】
(表示装置の制御部)
図1に示すように、制御部11は、情報取得部111と、表示制御部112と、混雑度算出部113と、乗客判定部114と、を備えている。情報取得部111は、乗客コンベア制御装置30から乗客コンベア40の運行情報を取得する。
【0053】
また、情報取得部111は、乗客が撮影された画像、および、乗客の現在位置を含む位置情報を取得する。情報取得部111は、乗客の位置情報をセンサ60から取得してもよく、カメラ50の撮影した画像を画像解析することにより取得してもよい。さらに、情報取得部111は、乗客コンベア40の混雑の度合いを示す混雑度を取得する。情報取得部111は、混雑度算出部113から混雑度を取得する。情報取得部111は、表示装置10外で算出された混雑度を取得してもよい。
【0054】
混雑度算出部113は、乗客コンベア40の混雑度を算出する。混雑度算出部113は、算出した混雑度を情報取得部111に出力する。混雑度は、例えば、乗客コンベア40の定員に対する実際の乗客数で算出される。混雑度算出部113は、例えば、カメラ50による撮像画像に基づいて混雑度を算出してもよいし、乗客コンベア40の駆動装置の負荷により混雑度を算出してもよい。また、混雑度算出部113は、乗客コンベア40の乗車口41に設けられたセンサ60における所定時間内の乗客の検出回数により混雑度を算出してもよい。
【0055】
乗客判定部114は、撮影画像(画像)に基づき、望ましくない方法により乗客コンベア40に乗車している乗客である不適切乗車乗客の有無を判定する。乗客判定部114は、例えば、カメラ50の撮影した画像を画像解析することにより不適切乗車乗客の有無を判定する。乗客判定部114は、判定結果を表示制御部112に出力する。不適切乗車乗客としては、例えば、乗客コンベア40を歩行する乗客、ハンドレールをつかんでいない乗客、ハンドレールから乗り出す乗客、キャリーバッグから手を離している乗客等があげられる。
【0056】
(表示制御部)
表示制御部112は、乗客の現在位置に基づき空中投影表示部20における表示を制御する。具体的には、表示制御部112は、空中投影画像G1に対して乗客コンベア40の進行方向の手前側において空中投影画像G1と乗客との距離が第2所定距離以内となると、空中投影画像G1を非表示とする、または、空中投影画像G1の表示位置を推定通過空間S外に変更する。第2所定距離は、目が疲れずに空中投影画像G1をはっきり見られる最短距離(明視距離)を設定してもよく、例えば、25cmとすることができる。
【0057】
空中投影画像G1が非表示となる、または、空中投影画像G1の表示位置が推定通過空間S内から推定通過空間S外に変更されると、乗客の身体は空中投影画像G1を通過しない。そのため、例えば、第2所定距離を空中投影画像G1の近傍とすることで、乗客にできるだけ長く空中投影画像G1を視認してもらいつつ、乗客が空中投影画像G1を通過することを防ぎ、乗客が空中投影画像G1を通過する際に感じる不快感を低減することができる。表示制御部112は、空中投影画像G1の表示位置を推定通過空間S内から推定通過空間S外に変更するかわりとして、推定通過空間S内であっても空中投影画像G1を小さくして乗客の身体を通過しない位置に表示してもよい。
【0058】
表示制御部112は、空中投影画像G1を非表示とした後、空中投影画像G1が表示されていた位置を乗客が通過し終えた際に、空中投影画像G1を再表示してもよい。表示制御部112は、空中投影画像G1の表示位置を推定通過空間S内から推定通過空間S外に変更した後、本来、空中投影画像G1が表示されていた位置を乗客が通過し終えた際に、空中投影画像G1の表示位置を推定通過空間S外から推定通過空間S内に変更してもよい。これにより、空中投影画像G1の表示を早急に復旧させることができ、乗客に提示したい画像がより確実に乗客コンベア40の乗客に視認される。
【0059】
表示制御部112は、空中投影画像G1を非表示とした後、結像領域R2(
図4の4001参照)を乗客が通過し終えた際に、空中投影画像G1を再表示してもよい。表示制御部112は、空中投影画像G1の表示位置を推定通過空間S内から推定通過空間S外に変更した後、結像領域R2を乗客が通過し終えた際に、空中投影画像G1の表示位置を推定通過空間S外から推定通過空間S内に変更してもよい。結像領域R2は光学素子202および空中投影画像G1で囲われる領域であり、結像領域R2に人がいると空中投影画像G1の表示(結像)の妨げとなる。そのため、上記のように再表示等を行うことで、良好に空中投影画像G1を表示させることができる。
【0060】
また、表示制御部112は、後続の乗客がいない場合は、乗客コンベア40に乗客が乗車するまで、空中投影画像G1を非表示としてもよい。なお、表示制御部112は、空中投影画像G1の表示内容により空中投影画像G1を非表示とせずに常に表示していてもよい。
【0061】
(変形例1)
表示制御部112は、空中投影画像G1に対して乗客コンベア40の進行方向D1の手前側において空中投影画像G1と乗客との距離が第3所定距離以内となると、所定時間経過後に空中投影画像G1を非表示とする、または、空中投影画像G1の表示位置を推定通過空間S外に変更してもよい。
【0062】
これにより、例えば、移動ステップ43が第3所定距離を移動する時間を所定時間とすることで、歩行せずに立ち止まって乗車している乗客に対しては、乗客が空中投影画像G1を通過することを防ぐことができ、移動ステップ43を歩行している乗客に対しては、空中投影画像G1を表示し続けて当該乗客に空中投影画像G1を通過させることができる。そのため、好ましい方法で乗車している乗客(歩行せず立ち止まって乗車している乗客)に対しては不快感を低減し、好ましくない方法で乗車している乗客(歩行している乗客)に対しては、歩行意欲を抑制することができる。
【0063】
(変形例2)
表示制御部112は、混雑度に基づき空中投影表示部20における表示を制御してもよい。具体的には表示制御部112は、混雑度が第1所定値以上である場合、空中投影画像G1を非表示としてもよい。
【0064】
これにより、混雑度が第1所定値以上である場合、空中投影画像G1は表示されない。そのため、例えば、乗客が空中投影画像G1の近傍で検出されると空中投影画像G1を非表示とする制御を行う場合、混雑度が高いことに起因して空中投影画像G1の表示のONOFFが繰り返されるような事態が生じることを防ぐことができる。
【0065】
また、表示制御部112は、混雑度が第2所定値よりも低い場合、複数の空中投影表示部20が全て空中投影画像G1を表示した場合の空中投影画像G1の間隔よりも広い間隔で空中投影画像G1が表示されているように、空中投影表示部20の空中投影画像G1の表示および非表示を制御してもよい。言い換えると、表示制御部112は、混雑度が第2所定値よりも低い場合、乗客コンベア40において表示されている複数の空中投影画像G1のうちいくつかの空中投影画像G1を間引いてもよい。
【0066】
図7は、空中投影画像G1の他の配置例を示す図である。
図7の7001は、乗客コンベア40における複数の空中投影画像G1の全てが表示されている状態を示し、
図7の7002は、乗客コンベア40における複数の空中投影画像G1のうち、いくつかの空中投影画像G1が間引かれた状態を示す。
【0067】
表示制御部112は、混雑度が第2所定値よりも低い場合、乗客コンベア40において表示されている複数の空中投影画像G1のうちいくつかの空中投影画像G1を非表示とすることで複数の空中投影画像G1を間引き、複数の空中投影画像G1が全て表示された場合の空中投影画像G1の間隔よりも広い間隔で空中投影画像G1を表示する。
【0068】
混雑度が低い場合は、乗客と空中投影画像G1との距離が遠くても、乗客は空中投影画像G1を認識できるため、空中投影画像G1を少なくしても乗客は十分な時間、空中投影画像G1を認識することができる。そのため、混雑度が低い場合に空中投影画像G1を間引くことで、乗客に十分な時間、空中投影画像G1を認識してもらいつつ、消費電力を低減させることができる。
【0069】
(変形例3)
表示制御部112は、不適切乗車乗客の有無に基づき、空中投影表示部20における表示を制御してもよい。具体的には、表示制御部112は、乗客判定部114により不適切乗車乗客がいると判定された場合、不適切乗車乗客の乗客コンベア40の進行方向側に空中投影画像G1を表示し、少なくとも不適切乗車乗客が当該空中投影画像G1を通過するまで空中投影画像G1を表示し続けてもよい。
【0070】
これにより、不適切乗車乗客に対しては、不適切乗車乗客が空中投影画像G1を通過するように空中投影画像G1を表示することができるため、不適切乗車乗客に不快感を与え、不適切乗車乗客の乗客コンベア40の利用を抑制することができる。
【0071】
なお、表示制御部112は、不適切乗車乗客が当該空中投影画像G1を通過し終えた後も空中投影画像G1を表示し続けてもよく、不適切乗車乗客が当該空中投影画像G1を通過し終えた際に空中投影画像G1を非表示としてもよい。
【0072】
(空中投影画像の表示例)
図8は、空中投影画像G1の表示例を示す図である。
図8に示す空中投影画像G1は、記憶部12に空中投影画像情報として記憶されている。空中投影画像G1は情報E1に示すように広告を示す画像でもよく、情報E2に示すように運転方向を示す矢印の画像でもよい。また、情報E3に示すような警告を示す文字とイラストを組み合わせた画像であってもよく、情報E4に示すように、降車口42がある階の情報を示す画像であってもよい。
【0073】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0074】
図9は、本発明の実施形態2に係る乗客コンベアシステム1Aの機能ブロック図の一例を示す図である。乗客コンベアシステム1Aは乗客コンベアシステム1と比較して、表示装置10Aの空中投影表示部20Aが第1空中投影表示部20Xおよび第2空中投影表示部20Yを備えている点が異なり、その他の構成は同じである。
【0075】
第1空中投影表示部20Xおよび第2空中投影表示部20Yはそれぞれ、空中投影表示部20と同様の構成を有する。第1空中投影表示部20Xと第2空中投影表示部20Yとは、配置位置および空中投影画像G1の表示位置が異なる。
【0076】
図10は乗客コンベアシステム1Aの空中投影表示部20Aの配置例を示す図である。
図10に示すように、第1空中投影表示部20Xは乗客コンベア40の進行方向D1の左側の推定通過空間Sの領域に空中投影画像G1Xを表示する。第2空中投影表示部20Yは、進行方向D1の右側の推定通過空間Sの領域に空中投影画像G1Yを表示する。そのため、第1空中投影表示部20Xは乗客コンベア40の進行方向D1の左側に配置され、第2空中投影表示部20Yは、進行方向D1の右側に配置される。
【0077】
これにより、例えば、二人が並立可能な移動ステップ43を有する乗客コンベア40であれば、左右の人それぞれに空中投影画像G1(空中投影画像G1Xまたは空中投影画像G1Y)を表示することができる。そのため、より個々の乗客に即した表示を行うことができる。
【0078】
なお、
図10では、第1空中投影表示部20Xと第2空中投影表示部20Yとが進行方向D1において同じ位置に配置され、空中投影画像G1Xと空中投影画像G1Yとが進行方向D1において同じ位置に表示されているが、上記限らない。第1空中投影表示部20Xと第2空中投影表示部20Yとが進行方向D1において異なる位置に配置され、空中投影画像G1Xと空中投影画像G1Yとが進行方向D1において異なる位置に表示されてもよい。また、乗客コンベアシステム1Aは、推定通過空間Sをいくつかの区画に分けて、各区画に対して、異なる空中投影画像G1を表示するように構成されていてもよい。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0080】
1、1A 乗客コンベアシステム
20、20A 空中投影表示部
20X 第1空中投影表示部
20Y 第2空中投影表示部
40 乗客コンベア
111 情報取得部
112 表示制御部
114 乗客判定部
C1 中心部
D1 進行方向
G1 空中投影画像
L1 第1所定距離
P1 所定位置
R1 空中投影画像の全体を視認可能な領域
S 推定通過空間
θ1 視野角
【要約】
【課題】乗客コンベアに乗車中の乗客に、より確実に視認される画像を表示する。
【解決手段】乗客コンベアシステム(1)は、乗客コンベア(40)に乗車している乗客の身体の少なくとも一部が通過する可能性がある推定通過空間(S)に、空中投影画像(G1)を表示する空中投影表示部(20)と、空中投影表示部(20)における表示を制御する表示制御部(112)と、を備える。
【選択図】
図1