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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】インクジェットインク及び錠剤印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20240402BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20240402BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240402BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C09D11/38
C09D11/328
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023180880
(22)【出願日】2023-10-20
【審査請求日】2023-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 理沙
(72)【発明者】
【氏名】小関 晟弥
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 泰久
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 拓実
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100336(JP,A)
【文献】国際公開第2022/050127(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/050128(WO,A1)
【文献】特許第7347700(JP,B1)
【文献】国際公開第2023/190504(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色102号と、還元イソマルツロースと、溶媒としての水と、一価アルコールと、湿潤剤とを含有し、
前記一価アルコールは、エタノール、NPA及びIPAの少なくとも1種を含み、
前記湿潤剤は、グリセリン及びPGの少なくとも1種を含み、
前記赤色102号の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内であり、
前記一価アルコールの配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内であり、
前記湿潤剤の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.05質量%以上10質量%以下の範囲内であることを特徴とするインクジェットインク。
【請求項2】
前記還元イソマルツロースの配合量が前記インクジェットインク全体の質量に対して3.0質量%以上8.5質量%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のインクジェットインクを使用して印刷した印刷部を備えたことを特徴とする錠剤印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク及び錠剤印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷用インキ(以下、単に「インクジェットインク」や「インク」とも称する。)には、例えばタール系色素等の食用染料を色材とすることにより可食性を有するものがある。
従来、インクジェットインクには、色材の劣化により、印刷した文字や画像等において色材の色味(色調)が変化する変色や、色材の彩度低下等による褪色が発生するものがある。例えばインクジェットインクにおいて耐光性が不足している場合、光の作用により色材が分解(光分解)されることによって変褪色(光変褪色)が生じ得る。このような変褪色は、印刷した文字や画像等(以下、「印刷画像」と総称する)における視認性の低下として認識される。
【0003】
こうした印刷画像の変褪色を抑制するために技術の開発が進められており、変褪色抑制のための種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、錠剤等へ文字や画像を印字する際に、視認性を高めるため発色性のある食用染料を含んだインクジェットインク等を使用する場合がある。そして、そのインク等に含まれる食用染料には、光による変色・褪色が大きいものがある。
【0004】
また、近年、乾燥性に優れるインクジェットインクの需要が高まっている。そこで、インクジェットインクの乾燥性を高めるために、インクジェットインクに含まれるアルコール(低級アルコール)等の乾燥性溶剤の含有量を増やすと、インクジェットプリンタに備わるノズルのノズル液面での乾燥が促進され、インクジェットインクの吐出性が悪化したり、色材の析出が発生したりする。特に食用赤色102号を含むインクジェットインクは、インクジェットインクの吐出性が悪化しやすい傾向がある。
【0005】
また、従来技術においては、錠剤等へ文字や画像を印字する際に、例えばインク液滴の着弾精度が高いといった良好な印字特性を得るために、インクジェットインク等に粘度調整剤を添加して、インクジェットインク等の粘度を調整する場合がある。
インクジェットインク等の粘度を調整するための粘度調整剤として、例えば、グリセリン等の不揮発性の液体、あるいはアルギン酸ナトリウムやヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘剤が用いられることがある。
【0006】
しかしながら、その粘度調整剤として、グリセリン等の不揮発性の液体を用いた場合には、インクジェットインク等の乾燥性が低下することがある。
また、その粘度調整剤として、アルギン酸ナトリウムやヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘剤を用いた場合には、インクジェットインク等に含まれる溶媒が速乾性溶媒(低級アルコールと水とを含んだ溶媒)であると、速乾性溶媒に対する増粘剤の溶解性が低下し、インク等の吐出安定性が低下することがある。また、粘度調整剤として、アルギン酸ナトリウムやヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘剤を用いた場合には、ノズル液面における乾燥が促進され、インク等の吐出安定性が低下することがある。
このように、従来技術に係るインクジェットインク等においては、乾燥性と、耐光性と、吐出安定性とが互いにトレードオフの関係にあるものが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6389506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、乾燥性と、耐光性と、吐出安定性とを備えたインキ(インクジェットインク)及び当該インキ(インクジェットインク)で印刷した印刷部を備える錠剤(錠剤印刷物)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るインキ(インクジェットインク)は、赤色102号と、還元イソマルツロースと、溶媒としての水と、一価アルコールと、湿潤剤とを含有し、前記一価アルコールは、エタノール、NPA及びIPAの少なくとも1種を含み、前記湿潤剤は、グリセリン及びPGの少なくとも1種を含み、前記赤色102号の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内であり、前記一価アルコールの配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内であり、前記湿潤剤の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.05質量%以上10質量%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る錠剤(錠剤印刷物)は、上記インキ(インクジェットインク)を用いて印刷した印刷部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、乾燥性と、耐光性と、吐出安定性とを備えたインクジェットインク及び当該インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態におけるインクジェットインクの浸透性及び耐光性について説明する概念図である。
図2】本発明の実施形態に係る錠剤(素錠)の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る錠剤(フィルムコーティング錠)の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る錠剤(素錠)の印刷画像の一例である。
図5】本発明の実施形態に係る錠剤(フィルムコーティング錠)の印刷画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という)に係るインクジェットインク(インキ)は、粘度調整剤を含んだインクジェットインクであって、例えば、医療用錠剤の表面にインクジェット印刷法で施される印刷画像等の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を維持することができ、且つ優れた吐出安定性(間欠再開性)と優れた乾燥性とを備えたインクジェットインク及び当該インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤印刷物に関するものである。以下、本発明の実施形態に係るインクジェットインク及びそのインクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤印刷物の構成について、詳細に説明する。
【0014】
〔インクジェットインクの構成〕
本実施形態に係るインクジェットインクは、可食性を有するインクジェットインクであって、食用染料(食用色素)である食用赤色102号(以下、単に「赤色102号」と表記する)と、還元イソマルツロースと、溶媒としての水と、一価アルコールと、湿潤剤とを含有し、一価アルコールは、エタノール、NPA及びIPAの少なくとも1種を含み、湿潤剤は、グリセリン及びPGの少なくとも1種を含み、赤色102号の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内であり、一価アルコールの配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内であり、湿潤剤の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.05質量%以上10質量%以下の範囲内である。
【0015】
本実施形態において使用する還元イソマルツロースは、インクジェットインクの粘度を調整する粘度調整剤として機能する物質である。また、この還元イソマルツロースは、被印刷物(例えば固体製剤)の表面にインクを固着させる固着性(インク固着性)も兼ね備えた物質である。
上記構成によれば、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、インクジェットインクの耐光性を維持することができ、且つ優れた吐出安定性と優れた乾燥性とを備えることができる。以下、耐光性の改善に関するメカニズムについて、図1を参照しつつ説明する。その後、吐出安定性の改善に関するメカニズムについて説明する。
【0016】
図1は、被印刷物(固体製剤)の表面におけるインクの固着と耐光性との関係を説明するための概念図である。ここで固体製剤として、例えば空隙が少ないフィルムコート部を備えた錠剤、即ちフィルムコート(FC)錠を用いるとする。なお、本発明はこれに限られず、素錠やカプセル錠を被印刷物としてもよい。
【0017】
図1(a)から図1(c)は、それぞれ組成の異なるインクジェットインクA~Cを錠剤(ここでは、フィルムコート錠)に印字し、一定時間経過させた状態における錠剤の厚さ方向の断面模式図である。本例において、インクジェットインクAは、色材として特定染料4を用い、溶媒として水と、エタノール、ノルマルプロピルアルコール(NPA)及びイソプロピルアルコール(IPA)の少なくとも一種である一価アルコールと、グリセリン及びプロピレングリコール(PG)の少なくとも1種である湿潤剤と、を含んだ混合物を用いたインクである。特定染料4には、赤色102号が例示できる。
【0018】
また、インクジェットインクBは、インクジェットインクAに所定の粘度調整剤を添加したインクである。ここで、インクジェットインクBに添加した粘度調整剤は、水への溶解度が相対的に高くインク固着性が相対的に低い粘度調整剤(例えば、マルトース)である。また、インクジェットインクCは、インクジェットインクAにインク固着性が相対的に高い粘度調整剤である還元イソマルツロースを添加したインクである。
【0019】
具体的には、図1(a)は、色材として特定染料4を含有し、溶媒として水と、エタノール、ノルマルプロピルアルコール(NPA)及びイソプロピルアルコール(IPA)の少なくとも一種である一価アルコールと、グリセリン及びプロピレングリコール(PG)の少なくとも1種である湿潤剤と、を含んだ混合物を含有するインクジェットインクAを錠剤の基材1の表面1Sに印字し、一定時間(例えば140時間)経過させた状態における錠剤の厚さ方向の断面模式図である。また、図1(b)は、インクジェットインクBを、錠剤の基材1の表面1Sに印字し、一定時間(例えば140時間)経過させた状態における錠剤の厚さ方向の断面模式図である。また、図1(c)は、インクジェットインクCを、錠剤の基材1の表面1Sに印字し、一定時間(例えば140時間)経過させた状態における錠剤の厚さ方向の断面模式図である。
【0020】
まず、インクジェットインクにおける粘度調整剤の添加の有無と、染料の浸透性についてインクジェットインクA,Bを例にとって説明する。
インクジェットインクに用いられる種々の色材のうち例えば食用染料として用いるタール系色素では、固体製剤などの表面に印刷した文字や画像等において変褪色が発生し得る。例えばタール系色素のうち赤色102号は、時間経過に伴う固体製剤への浸透や、光分解によって印刷画像の変褪色が発生していた。これに対し、インクジェットインクに粘度調整剤を添加することで、染料が固体製剤に浸透することを抑制し、印刷画像の変褪色を抑制することができる。
【0021】
図1(a)に示すように、粘度調整剤を含まないインクジェットインクAを印字した場合、印字から一定時間が経過すると特定染料4が錠剤の基材1の内部に浸透する。ここで、当該一定時間経過後のインクジェットインクAにおける特定染料4の浸透の深さを浸透深さX(μm)とする。これに対し、図1(b)に示すように、インク固着性が相対的に低い粘度調整剤(例えば、マルトース)を含むインクジェットインクBを印字した場合、印字から一定時間経過後において、インクジェットインクBの浸透深さY(μm)は、インクジェットインクAの浸透深さXよりも小さくなる(X>Y)。
【0022】
インクジェットインクBでは、所定の粘度調整剤の添加によってインクの粘度の上昇等が生じ、特定染料4の錠剤の基材1の内部への浸透が抑制される。このため、インクジェットインクBを印字した場合、印字から一定時間経過後においても、錠剤の基材1内において特定染料4が表面1Sの近傍に残留することとなる。つまり、所定の粘度調整剤を含むインクジェットインクは、粘度調整剤が添加されない場合と比べて、染料(即ち、赤色102号)の浸透による印刷画像の変褪色を抑制することができる。一方で、所定の粘度調整剤を添加したインクジェットインクBでは、光照射による印刷画像の変褪色(光変褪色)を十分に抑制できていないことがある。
【0023】
これに対し、本実施形態に係るインクジェットインクは、添加する粘度調整剤(即ち、インク固着性が相対的に高い粘度調整剤である還元イソマルツロース)及び溶媒の種類や物性を選択することにより、インクを被印刷物の表面に固着させて、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上するものである。本発明者らは、印刷画像の光変褪色を抑制するには、被印刷物(例えば錠剤)の表面上にインクを固着させることが有効であることを見出した。本例では、錠剤の表面1S上にインクが固着することにより、特定染料4が表面1S上に固着され、結果として、表面1S上に高濃度で特定染料4を残存させることができる。
【0024】
錠剤の基材1の表面1S上において特定染料4の濃度が高い場合、例えば表面1S上の特定染料4のうち光分解による光変褪色が生じる色材の割合が低減される。つまり、特定染料4の一部に光変褪色が生じても影響は限定的となり、印刷画像の視認性(可読性)の低下が抑制される。これにより、印刷画像全体としての視認性が維持され、結果として印刷画像の光変褪色を十分に抑制することができる。したがって、インクジェットインクの耐光性を向上することができる。そして本発明者らは、粘度調整剤の中でも水に対する溶解度が相対的に低い還元イソマルツロースが、色材として赤色102号を含むインクを被印刷物の表面に固着する固着剤として機能することを発見した。
【0025】
具体的には、本実施形態に係るインクジェットインクは、色材である食用染料として赤色102号を含み、粘度調整剤として、20℃の水100mlに対する溶解度が39g未満である還元イソマルツロースを含んでいる。このような構成によれば、被印刷物の表面に色材として用いる特定のタール系色素(本例では、赤色102号)を含むインクを固着させ、当該表面に上記特定のタール系色素を高濃度で残存させることができる。これにより、本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上することができる。
【0026】
図1(c)に示すように、本実施形態に係るインクジェットインクに相当するインクジェットインクCを錠剤の基材1の表面1Sに印字すると、インク中の特定染料4(ここでは、赤色102号)が表面1Sに固着される。具体的には、インクジェットインクCを印字した場合、印字から一定時間経過後の特定染料4の浸透深さZ(μm)は、所定の糖類を含むインクジェットインクBにおける特定染料4の浸透深さYよりもさらに低減されている(Y>Z)。例えば、インクジェットインクCでの特定染料4の浸透深さZは、インクジェットインクBでの特定染料4の浸透深さYの50%程度まで低減される。つまり、インクジェットインクCは、特定染料4の浸透をさらに抑制することができる。このため、当該表面1S上には特定染料4が高濃度で残存し、上述のように印刷画像の視認性の低下が抑制される。これにより、印刷画像の光変褪色が十分に抑制され、インクジェットインクCは、耐光性を向上することができる。
【0027】
一方、インクジェットインクBは、錠剤の基材1内部において表面1Sの近傍に特定染料4を残存させることはできるものの、特定染料4の浸透の抑制が十分でなく、表面1S上にインクを固着することはできない。つまり、インクジェットインクBでは、表面1S上に残存する特定染料4の濃度が低いため、印刷画像の光変褪色を十分に抑制できず、耐光性が向上(改善)されていない。
【0028】
このように、本実施形態に係るインクジェットインクは、インク固着性を備えた粘度調整剤として還元イソマルツロースを添加することで、特定のタール系色素(赤色102号)の被印刷物内部への浸透を大幅に抑制してインクを被印刷物の表面に固着させる。これにより、本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を抑制して耐光性を向上することができ、さらに、被印刷物内部への上記特定のタール系色素の浸透による印刷画像の変褪色をも抑制することができる。
【0029】
また、図1(c)に示すように、錠剤の基材1の表面1S上には、インクジェットインクCが若干盛り上がるようにして固着され得る。これにより、例えばインクジェットインクCを印字した場合、表面1S上において印字が濃く浮き出ているように認識される。このため、例えばインクジェットインクA,Bに比べて、インクジェットインクCでは、印刷画像の印刷時における視認性を向上することができる。つまり、本実施形態に係るインクジェットインクでは、印刷画像の光変褪色による視認性の低下を低減することに加え、印刷時点において印刷画像に良好な視認性を付与することができる。
【0030】
以下、本実施形態に係るインクジェットインクにおける耐光性の詳細について説明する。
本実施形態に係るインクジェットインクは、耐光試験前後でJIS Z 8781における色差△Eが20以下であればよい。ここで、耐光試験とは、例えば、本実施形態に係るインクジェットインクを用いて印刷された印刷画像について、可視光の照射前後における色度及び光学色濃度の変化量を示す色差ΔE(JIS Z 8781に準拠するもの)を比較する試験である。具体的には、当該印刷画像に累積120万ルクスの可視光を照射する前後で色差ΔEを測定し、その値を比較する。可視光の照射には、例えば光安定性試験装置(ナガノサイエンス LT―120A―WD)を用いる。また、耐光試験における印刷画像は、例えば印刷対象物である錠剤(例えばフィルムコーティング錠)にベタ印刷されたものである。
【0031】
医療用錠剤等への印刷画像の形成上必要十分な耐光性とは、120万ルクスの可視光を照射する耐光試験において、可視光の照射前後の印刷画像の色差ΔEが20以下を指す場合が多い。色差ΔEが20以下であることを十分な耐光性の判定基準とすることは、発明者らが各医療関係者も交えて実施したオピニオンテストの結果、導き出したものであり、色差ΔEが20を超えると印刷画像の視認性(例えば、印字の可読性)が低下していると認識されはじめる。つまり、可視光照射前後の色差ΔEが20以下であれば、光変褪色が十分に抑制され、耐光性に優れたインクジェットインクであるといえる。なお、一般的な商業印刷物での色差ΔEの目安である3~6よりは大きめな数字であるが、通常、曝光前後の錠剤を比較するようなことは無く、錠剤表面の印刷画像は自然と褪色することを想定しているため、この数字を得ることが出来た。
【0032】
以下、本実施形態に係るインクジェットインクを構成する各成分について、説明する。
(色材)
上記のように、本実施形態によるインクジェットインクは、食用染料として赤色102号を含んでいる。赤色102号は食用タール系色素であって、赤色102号はニューコクシンとも称される。
【0033】
本実施形態に係るインクジェットインクにおいて、赤色102号の配合割合、つまり赤色102号の含有量は、インク全体の質量に対して0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内である。このような構成であれば、印刷画像に良好な視認性を付与するとともに、優れた吐出安定性(即ち、優れた間欠再開性)を付与することができる。また、赤色102号の含有量が上記範囲内であれば、インク固着性が相対的に高い粘度調整剤である還元イソマルツロースの添加により確実に印刷物の表面に赤色102号を高濃度で残存させて、印刷画像における光変褪色を抑制し、本実施形態に係るインクジェットインクの耐光性を確実に向上することができる。
【0034】
これに対し、赤色102号の含有量が0.5質量%未満であると、印刷色全体が薄くなり印刷画像の視認性が低下する傾向がある。さらに、赤色102号の含有量が0.5質量%未満であると、印刷錠剤を保管した場合に耐光性が低下する、あるいは耐光性を発揮しない場合がある。
【0035】
また、赤色102号の含有量が3.0質量%を超えると、色材の溶解安定性の悪化によりインク中の色素が固体として析出したり、沈殿したりすることで、印刷時にインクジェットヘッドのノズルが詰まり、吐出安定性が低下し得る。
また、赤色102号の含有量は、インク全体の質量に対して1.0質量%以上2.5質量%以下の範囲内であればより好ましく、1.0質量%以上1.6質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。このような構成であれば、印刷画像にさらに良好な視認性を付与するとともに、さらに優れた吐出安定性を付与することができる。
【0036】
なお、本実施形態によるインクジェットインクには、上記特定のタール系色素、すなわち赤色102号以外の色素(色材)が含まれてもよい。赤色102号以外の色素は可食性のものであれば特に制限はない。本実施形態によるインクジェットインクに添加可能な色素は、例えば、従来公知の合成食用色素、天然食用色素から適宜選択して添加することができる。また、本実施形態に係るインクジェットインクに食用染料として赤色102号以外の色材を含む場合には、赤色102号以外の食用染料の合計含有量は、インク全体の質量に対して0.6質量%以下の範囲内であれば好ましく、0.4質量%以下の範囲内であればより好ましく、0.3質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。赤色102号以外の食用染料の合計含有量が上記範囲内であれば、インクジェットインクの耐光性を向上しつつ、印刷画像に良好な視認性を付与することができ、且つインクジェットインクに十分な吐出安定性を付与することができる。
【0037】
合成食用色素としては、例えば、タール系色素、天然色素誘導体、天然系合成色素等が挙げられる。タール系色素としては、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色1号、食用青色2号、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用5号アルミニウムレーキ、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ等が挙げられる。天然色素誘導体としては、例えば、ノルビキシンカリウム等が挙げられる。天然系合成色素としては、例えば、β-カロテン、リボフラビン等が挙げられる。
【0038】
また、天然食用色素としては、例えば、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、クロロフィル系色素、フラボノイド系色素、ベタイン系色素、モナスカス色素、その他の天然物を起源とする色素が挙げられる。アントシアニン系色素としては、例えば、赤ダイコン色素、赤キャベツ色素、赤米色素、エルダーベリー色素、カウベリー色素、グーズベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、シソ色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素、その他のアントシアニン系色素が挙げられる。カロチノイド系色素としては、例えば、アナトー色素、クチナシ黄色素、その他のカロチノイド系色素が挙げられる。キノン系色素としては、例えば、コチニール色素、シコン色素、ラック色素、その他のキノン系色素が挙げられる。フラボノイド系色素としては、例えば、ベニバナ黄色素、コウリャン色素、タマネギ色素、その他のフラボノイド系色素が挙げられる。ベタイン系色素としては、例えば、ビートレッド色素が挙げられる。モナスカス色素としては、例えば、ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素が挙げられる。その他の天然物を起源とする色素としては、例えば、ウコン色素、クサギ色素、クチナシ赤色素、スピルリナ青色素などが挙げられる。
【0039】
(粘度調整剤)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上述のとおり、被印刷物の表面に特定のタール系色素(赤色102号)を含むインクを固着させるインク固着性を備えた粘度調整剤を含んでいる。具体的には、本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる粘度調整剤は、還元イソマルツロースであって、20℃の水100mlに対する還元イソマルツロースの溶解度は、38gである。粘度調整剤が当該構成であれば、赤色102号を含むインクを被印刷物の表面に十分に固着させることができる。これにより、本実施形態によるインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上することができる。また、本実施形態において粘度調整剤として用いられる還元イソマルツロースは、それ自身がインクジェットインクの光照射による分解(光分解)を抑制する機能も有する。このため、光変褪色の発生自体を抑制することもできる。
【0040】
また、インクジェットインクに粘度調整剤として還元イソマルツロースを添加することで、インクジェットインクの粘度調整が容易となり、吐出安定性を向上させることができる。
【0041】
本実施形態に係るインクジェットインクにおける還元イソマルツロースの配合割合、すなわち還元イソマルツロースの含有量は、インク全体の質量に対して3.0質量%以上8.5質量%以下の範囲内であれば好ましい。このような構成であれば、還元イソマルツロースによるインクの固着効果がより確実に発揮され、インクジェットインクの耐光性を確実に向上することができる。また、本実施形態に係るインクジェットインクに高い吐出安定性を付与することができる。
【0042】
これに対し、還元イソマルツロースの配合割合が3.0質量%未満であると、インクの固着効果が低減し、耐光性が低下する場合がある。また、還元イソマルツロースの配合割合が3.0質量%未満であると、インクの粘度が十分でないために、吐出されたインク液滴が意図した位置に着弾しない場合(つまり、インク液滴の着弾精度が低下する場合)がある。また、還元イソマルツロースの配合割合が8.5質量%を超えると、インク粘度の上昇や、ノズル表面で還元イソマルツロースの析出が発生し、それらが印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まりの原因となり、吐出安定性が低下し得る。
【0043】
なお、還元イソマルツロースの配合割合は、インク全体の質量に対して4.0質量%以上8.0質量%以下の範囲内であればより好ましく、インク全体の質量に対して5.0質量%以上8.0質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。このような構成であれば、還元イソマルツロースによるインクの固着効果がさらに確実に発揮され、インクジェットインクの耐光性を確実に向上することができる。また、本実施形態に係るインクジェットインクにさらに高い吐出安定性を付与することができる。
【0044】
本実施形態に係るインクジェットインクの粘度、即ち粘度調整剤である還元イソマルツロースが添加されたインクジェットインクの粘度は、1.0mPa・s以上7.0mPa・s以下の範囲内であれば好ましい。このような構成であれば、インクに適度な粘性を付与することができるので、吐出されたインク液滴を意図した位置に着弾させることができる(つまり、インク液滴の着弾精度を高めることができる)。
【0045】
これに対し、インクジェットインクの粘度が1.0mPa・s未満であると、インクの粘度が低すぎて、吐出されたインク液滴が意図した位置に着弾しない場合(つまり、インク液滴の着弾精度が低下する場合)がある。また、インクジェットインクの粘度が7.0mPa・sを超えると、インクの粘度が高すぎて、インク液滴が吐出しにくくなる場合がある。
【0046】
なお、インクジェットインクの粘度は、2.0mPa・s以上6.0mPa・s以下の範囲内であればより好ましく、2.0mPa・s以上5.0mPa・s以下の範囲内であればさらに好ましく、2.5mPa・s以上3.5mPa・s以下の範囲内であれば最も好ましい。このような構成であれば、インク液滴の着弾精度をさらに高めることができる。
【0047】
(粘度測定方法)
インキの粘度は、例えば回転式粘度計を用いて、測定温度25℃で測定してもよい。
なお、本実施形態におけるインキの粘度は、回転式粘度計を用いて、測定温度25℃で測定した値である。
【0048】
また、本実施形態に係るインクジェットインクにおける赤色102号の質量に対する還元イソマルツロースの質量の比率(還元イソマルツロース/赤色102号)は、2.3以上6.5以下の範囲内であれば好ましく、3.1以上6.1以下の範囲内であればより好ましく、3.8以上6.1以下の範囲内であればさらに好ましい。このような構成であれば、還元イソマルツロースによるインクの固着効果がより確実に発揮され、インクジェットインクの耐光性を確実に向上することができる。また、本実施形態に係るインクジェットインクに高い吐出安定性を付与することができる。
【0049】
これに対し、上記比率(還元イソマルツロース/赤色102号)が2.3未満であると、インクの固着効果が低減し得る。また、上記比率(還元イソマルツロース/赤色102号)が2.3未満であると、印刷錠剤を保管した場合に耐光性が低下する、あるいは耐光性を発揮しない場合がある。また、上記比率(還元イソマルツロース/赤色102号)が2.3未満であると、インクの粘度が十分でないために、吐出されたインク液滴が意図した位置に着弾しない場合(つまり、インク液滴の着弾精度が低下する場合)がある。
【0050】
また、上記比率(還元イソマルツロース/赤色102号)が6.5を超えると、インク粘度の上昇や、ノズル表面で還元イソマルツロースの析出が発生し、それらが印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まりの原因となり、吐出安定性が低下し得る。
上述したように、インクジェットインクにおける還元イソマルツロースの添加量を特定の数値範囲に設定することで、耐光性と吐出安定性の両方を改善することができる。
【0051】
以下、吐出安定性の改善に関するメカニズムについて説明する。
インクジェットインクに添加された還元イソマルツロースは、インクジェットプリンタ等のインクジェット装置に備わるノズル表面のインク界面において被膜を形成し、溶媒蒸発を防止する機能も有する。また、その皮膜は、インクジェット装置に備わるピエゾによるインクの吐出動作において、容易に崩壊し、さらには再溶解する特性を備えている。
そのため、インクジェットインクに還元イソマルツロースを添加することで、インクジェット装置のノズル表面付近でのインクの物性変化が抑制され、かつ安定に吐出が可能となる。その結果、還元イソマルツロースが添加されたインクジェットインクにおいては、吐出安定性が高まる。
【0052】
(溶媒)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上記特定のタール系色素(赤色102号)及び上記粘度調整剤(還元イソマルツロース)に加え、当該特定のタール系色素及び当該粘度調整剤を溶解(分散)させるために溶媒(分散媒)を含有している。本実施形態に係るインクジェットインクには、溶媒として、水(例えば精製水)と、エタノール、ノルマルプロピルアルコール(NPA)及びイソプロピルアルコール(IPA)のうち少なくとも1種である一価アルコールと、グリセリン及びプロピレングリコール(PG)のうち少なくとも1種である湿潤剤と、が含まれている。
【0053】
一般に、還元イソマルツロースはアルコール類に溶解しづらい性質を有する。このため、本実施形態において、溶媒に、エタノール、ノルマルプロピルアルコール及びイソプロピルアルコールの少なくとも1種である一価アルコールと、グリセリン及びプロピレングリコールの少なくとも1種である湿潤剤(多価アルコール)とが含まれることにより、還元イソマルツロースの溶媒に対する溶解度が低下する。これにより、本実施形態に係るインクジェットインクにおいて、還元イソマルツロースによるインクの固着効果がより向上され、インクに含まれる上記特定のタール系色素(本例では、赤色102号)を被印刷物(例えば錠剤)の表面により高濃度で残存させることができる。したがって、本実施形態によるインクジェットインクの耐光性をさらに向上することができる。
【0054】
また、グリセリン及びプロピレングリコールは、湿潤剤として機能し、インクジェットノズルでのインクの乾燥を防止して、インクに十分な吐出安定性を付与することができる。また、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコールは揮発性が特に高いことから、インクジェットインクの耐転写性(乾燥性)を向上することができる。水に加えて上述のアルコール類を溶媒に添加することで、インクジェットインクの耐光性をさらに向上させるとともに、各成分に応じた性能をインクジェットインクに付与することができる。
【0055】
本実施形態に係るインクジェットインクにおいて、上述した一価アルコールの配合割合、つまり一価アルコールの含有量は、インク全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内である。このような構成であれば、インクに優れた乾燥性を付与することができる。また、一価アルコールの含有量が上記範囲内であれば、インクに適度な粘性を付与することができるので、吐出されたインク液滴を意図した位置に着弾させることができる(つまり、インク液滴の着弾精度を高めることができる)。
【0056】
これに対し、一価アルコールの含有量が30質量%未満であると、インクの乾燥性が低下する傾向がある。
【0057】
また、一価アルコールの含有量が60質量%を超えると、ノズル液面での乾燥が促進し、印刷時にインクジェットヘッドのノズルが詰まるため、吐出安定性が低下し得る。
また、一価アルコールの含有量は、インク全体の質量に対して35質量%以上55質量%以下の範囲内であればより好ましく、35質量%以上50質量%以下の範囲内であればさらに好ましい。このような構成であれば、インクの乾燥性が確実に維持され、且つ優れた吐出安定性を付与することができる。
【0058】
また、本実施形態に係るインクジェットインクにおいて上記溶媒の各成分の配合割合は限定するものではないが、上述した湿潤剤の配合割合、即ち湿潤剤の添加量は、インク全体の質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下の範囲内である。このような構成であれば、溶媒に対する還元イソマルツロースの溶解度が確実に低下し、上記特定のタール系色素を含むインクの固着効果がさらに向上する。このため、インクジェットインクにより優れた耐光性を付与することができる。また、上記構成であれば、ノズル液面の乾燥を防止することができるので、吐出安定性を向上させることができる。
【0059】
一方、湿潤剤の添加量が0.05質量%未満であると、溶媒に対する還元イソマルツロースの溶解度の低減効果が低下し、固着効果が低下する場合がある。また、湿潤剤の添加量が0.05質量%未満であると、ノズル液面の乾燥が促進し、吐出安定性が低下する場合がある。
【0060】
また、湿潤剤の添加量が10質量%を超えると、インク全体における一価アルコールの配合割合が相対的に低下するため、錠剤表面における印字表面の乾燥の遅れが増して、印刷した錠剤同士が接触したときに未乾燥のインクがもう一方の錠剤に付着して汚れとなるといった不具合(転写不良)の原因となることがある。
なお、湿潤剤の配合割合、即ち湿潤剤の添加量がインク全体の質量に対して、0.05質量%以上6質量%以下の範囲内であれば好ましく、0.05質量%以上4質量%以下の範囲内であればより好ましい。このような構成であれば、インクの乾燥性が確実に維持され、且つ優れた吐出安定性を付与することができる。
【0061】
(内添樹脂)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上述の色素や溶媒以外に、内添樹脂を含有してもよい。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能な内添樹脂は、可食性を有し、且つ水溶性粉末、ペースト、フレーク状の樹脂様物質であって、印字後の乾燥により錠剤表面に皮膜を形成可能な物質であればよい。上記内添樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール4000/ポリエチレングリコール1540等の高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、セラック樹脂、メタクリル酸コポリマー(製品名:オイドラギットS100)、マルトデキストリン、エリスリトール等が挙げられる。
【0062】
(レベリング剤)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上述の色素や溶媒、或いは内添樹脂以外に、レベリング剤を含有してもよい。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能なレベリング剤は、可食性を有し、且つ水溶性の界面活性剤であればよい。上記レベリング剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例:太陽化学社製ジステアリン酸デカグリセリンQ-182S、同社製モノラウリン酸デカグリセリンQ-12S)、ソルビタン脂肪酸エステル(例:日光ケミカルズ社NIKKOLSL-10)、ショ糖脂肪酸エステル(例:第一工業製薬社製 DKエステルF-110)、ポリソルベート(花王社製 エマゾールS-120シリーズ)等が挙げられる。
【0063】
〔印刷方法〕
本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷方法について特に限定されず、市販のインクジェットプリンタ等のインクジェット装置を用いた印刷が可能である。このため、本実施形態に係るインクジェットインクは、応用範囲が広く、非常に有用である。例えば、本実施形態に係るインクジェットインクは、ピエゾ素子(圧電セラミックス)をアクチュエータとする、所謂ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置で印刷し得るし、他の方式のインクジェット装置でも印刷し得る。
ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置としては、例えば、微小発熱素子を瞬間的に高温(200~300℃)にすることで発生する水蒸気圧力でインクジェットインクを吐出するサーマルインクジェット方式を採用した装置や、アクチュエータを静電気振動させることでインクジェットインクを吐出する静電タイプの装置、超音波のキャビテーション現象を利用する超音波方式を採用した装置等が挙げられる。また、本実施形態に係るインクジェットインクが荷電性能を備えていれば、連続噴射式(コンティニュアス方式)を採用した装置を利用することも可能である。
【0064】
〔錠剤〕
本実施形態では、本実施形態に係るインクジェットインクを、上述の印刷方法を用いて、例えば錠剤の表面に印字、印画してもよい。つまり、本実施形態に係る錠剤は、本実施形態に係るインクジェットインク用いて印刷した印刷部、すなわち印刷画像を備えていればよい。本実施形態に係るインクジェットインクであれば、例えば、医療用錠剤の表面にインクジェット印刷法を用いて施された印刷画像の耐光性を向上させることができる。以下、実施形態に係るインクジェットインクで印刷した印刷画像を備える錠剤の構成について説明する。
【0065】
本実施形態に係る錠剤は、例えば、医療用錠剤である。ここで、「医療用錠剤」とは、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠などのほか、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠などを含むものである。
【0066】
図2は、印刷(印字、印画)がなされた医療用錠剤(素錠)の一例を示す概略断面図である。図2には、断面視で、錠剤の基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷された素錠印刷物5が示されている。
図3は、印刷(印字、印画)がなされた医療用錠剤(フィルムコーティング錠)の一例を示す概略断面図である。図3には、断面視で、表面にフィルムコート層7が形成された錠剤の基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷されたフィルムコート錠印刷物9が示されている。
なお、本実施形態では、図4に示すように、素錠印刷画像11としてベタ画像を印刷してもよく、図5に示すように、フィルムコート錠印刷画像13として二次元バーコードを印刷してもよい。
【0067】
医療用錠剤中に含有される活性成分は特に限定されない。例えば、種々の疾患の予防・治療に有効な物質(例えば、睡眠誘発作用、トランキライザー活性、抗菌活性、降圧作用、抗アンギナ活性、鎮痛作用、抗炎症活性、精神安定作用、糖尿病治療活性、利尿作用、抗コリン活性、抗胃酸過多作用、抗てんかん作用、ACE阻害活性、β-レセプターアンタゴニストまたはアゴニスト活性、麻酔作用、食欲抑制作用、抗不整脈作用、抗うつ作用、抗血液凝固活性、抗下痢症作用、抗ヒスタミン活性、抗マラリア作用、抗腫瘍活性、免疫抑制活性、抗パーキンソン病作用、抗精神病作用、抗血小板活性、抗高脂血症作用等を有する物質など)、洗浄作用を有する物質、香料、消臭作用を有する物質等を含むが、それらに限定されない。
【0068】
本実施形態に係る錠剤は、必要に応じて、活性成分とともにその用途上許容される担体を配合することができる。例えば、医療用錠剤であれば、医薬上許容される担体を配合することができる。医薬上許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤等が適宜適量配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
【0069】
本実施形態では、錠剤として医療用錠剤を例に挙げて説明したが、本発明のこれに限定されるものではない。本実施形態に係るインクジェットインクの印刷対象は特に制限されず、例えば、ヒト以外の動物(ペット、家畜、家禽等)に投与する錠剤、飼料、肥料、洗浄剤、ラムネ菓子などの錠菓やサプリメント等の食品といった各種錠剤の表面に印刷してもよい。また、本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷対象のサイズについても特に制限されず、種々のサイズの錠剤について適用可能である。
【0070】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態に係るインクジェットインクは、赤色102号と、還元イソマルツロースと、溶媒としての水と、一価アルコールと、湿潤剤とを含有し、一価アルコールは、エタノール、NPA及びIPAの少なくとも1種を含み、湿潤剤は、グリセリン及びPGの少なくとも1種を含み、赤色102号の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内であり、一価アルコールの配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内であり、湿潤剤の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.05質量%以上10質量%以下の範囲内である。
このような構成であれば、乾燥性と、耐光性と、吐出安定性とを備えることができる。
【0071】
(2)本実施形態に係るインクジェットインクにおける還元イソマルツロースの配合量は、インクジェットインク全体の質量に対して3.0質量%以上8.5質量%以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、耐光性と吐出安定性とをさらに向上させることができる。
【0072】
(3)また、本実施形態に係るインクジェットインクの粘度は、1.0mPa・s以上7.0mPa・s以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、インクに適度な粘性を付与することができるので、吐出されたインク液滴を意図した位置に着弾させることができる(つまり、インク液滴の着弾精度を高めることができる)。
【0073】
(4)本実施形態に係る錠剤は、上述したインクジェットインクで印刷した印刷画像(印刷部の一例)3を備えている。
このような構成であれば、錠剤の表面等に直接印刷した印刷画像3等における光変褪色を十分に抑制し、印刷画像3の耐光性を十分に向上することができる。さらに、錠剤の表面に印刷された印刷画像部分に対しても可食性を付与することができる。
【0074】
[実施例]
<実施例1>
以下、実施例1によるインクジェットインクの調製手順を説明する。
(インクジェットインクの製造)
まず、印刷用インクを調製した。インクジェットインクは、色素(色材)、溶媒、湿潤剤、粘度調整剤(還元イソマルツロース)の各成分を含んでいる。調製の順序としては、まず、溶媒に湿潤剤と粘度調整剤(還元イソマルツロース)とを添加して透明ベース液を得た。次いで、その透明ベース液に色素を添加した。こうして、本実施例に係るインクを調製した。以下、具体的に各種成分について説明する。
【0075】
実施例1~30及び比較例1~12では、溶媒には精製水(イオン交換水)、エタノール、ノルマルプロピルアルコール(NPA:1-プロパノール)及びイソプロピルアルコール(IPA:2-プロパノール)を必要に応じてそれぞれ用いた。
また、実施例1~30及び比較例1~12では、湿潤剤として、グリセリン及びPG(プロピレングリコール)を必要に応じてそれぞれ用いた。
【0076】
本実施例では、エタノール、NPA及びIPAの少なくとも1種と、グリセリン及びPGの少なくとも1種とを精製水に添加し、よく撹拌して溶媒(混合溶媒)を得た。また前述の溶媒に粘度調整剤として還元イソマルツロースを添加し、1時間程度撹拌して透明ベース液を得た。前述の透明ベース液に、色材として食用染料である赤102号、赤3号、黄4号及び青1号を添加して実施例1のインクジェットインクを得た。実施例1のインクジェットインク全体に対して、色材である赤102号の配合割合を0.50質量%とし、赤3号の配合割合を0.03質量%とし、黄4号の配合割合を0.03質量%とし、青1号の配合割合を0.03質量%とし、溶媒のうち精製水の配合割合を52.96質量%とし、エタノールの配合割合を40.0質量%とし、プロピレングリコール(PG)の配合割合を0.1質量%とし、さらに粘度調整剤である還元イソマルツロースの配合割合を6.35質量%とした。
こうして、実施例1のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を12.7に調整した。
【0077】
<実施例2>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.0質量%とし、赤3号の配合割合を0.06質量%とし、黄4号の配合割合を0.06質量%とし、青1号の配合割合を0.06質量%とし、精製水の配合割合を52.37質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例2のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例2のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を6.4に調整した。
【0078】
<実施例3>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例3のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例3のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0079】
<実施例4>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.60質量%とし、赤3号の配合割合を0.10質量%とし、黄4号の配合割合を0.10質量%とし、青1号の配合割合を0.10質量%とし、精製水の配合割合を51.65質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例4のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例4のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.0に調整した。
【0080】
<実施例5>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を2.50質量%とし、赤3号の配合割合を0.15質量%とし、黄4号の配合割合を0.15質量%とし、青1号の配合割合を0.15質量%とし、精製水の配合割合を50.60質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例5のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例5のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を2.5に調整した。
【0081】
<実施例6>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を3.00質量%とし、赤3号の配合割合を0.18質量%とし、黄4号の配合割合を0.18質量%とし、青1号の配合割合を0.18質量%とし、精製水の配合割合を50.01質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例6のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例6のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を2.1に調整した。
【0082】
<実施例7>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を62.00質量%とし、エタノールの配合割合を30.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例7のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例7のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0083】
<実施例8>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を57.00質量%とし、エタノールの配合割合を35.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例8のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例8のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0084】
<実施例9>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を42.00質量%とし、エタノールの配合割合を50.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例9のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例9のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0085】
<実施例10>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を37.00質量%とし、エタノールの配合割合を55.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例10のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例10のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0086】
<実施例11>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を32.00質量%とし、エタノールの配合割合を60.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例11のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例11のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0087】
<実施例12>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.00質量%とし、エタノールに代えてNPAの配合割合を40.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例12のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例12のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0088】
<実施例13>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.00質量%とし、エタノールに代えてIPAの配合割合を40.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例13のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例13のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0089】
<実施例14>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.00質量%とし、エタノールの配合割合を35.0質量%とし、NPAの配合割合を5.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例14のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例14のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0090】
<実施例15>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.00質量%とし、エタノールの配合割合を35.0質量%とし、IPAの配合割合を5.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例15のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例15のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0091】
<実施例16>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.05質量%とし、PGの配合割合を0.05質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例16のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例16のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0092】
<実施例17>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を48.10質量%とし、PGの配合割合を4.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例17のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例17のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0093】
<実施例18>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を46.10質量%とし、PGの配合割合を6.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例18のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例18のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0094】
<実施例19>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を42.10質量%とし、PGの配合割合を10.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例19のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例19のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0095】
<実施例20>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.00質量%とし、PGに代えてグリセリンの配合割合を0.10質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例20のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例20のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0096】
<実施例21>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を55.85質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を2.50質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例21のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例21のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を1.9に調整した。
【0097】
<実施例22>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を55.35質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を3.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例22のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例22のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を2.3に調整した。
【0098】
<実施例23>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を54.35質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を4.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例23のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例23のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を3.1に調整した。
【0099】
<実施例24>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を53.35質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を5.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例24のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例24のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を3.8に調整した。
【0100】
<実施例25>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を51.35質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を7.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例25のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例25のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を5.3に調整した。
【0101】
<実施例26>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を50.35質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を8.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例26のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例26のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を6.1に調整した。
【0102】
<実施例27>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を49.85質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を8.50質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例27のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例27のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を6.5に調整した。
【0103】
<実施例28>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を40.35質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を18.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例28のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例28のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を13.7に調整した。
【0104】
<実施例29>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を3.00質量%とし、赤3号の配合割合を0.18質量%とし、黄4号の配合割合を0.18質量%とし、青1号の配合割合を0.18質量%とし、精製水の配合割合を27.86質量%とし、エタノールの配合割合を60.00質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を8.50質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例29のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例29のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を2.8に調整した。
【0105】
<実施例30>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を0.50質量%とし、赤3号の配合割合を0.03質量%とし、黄4号の配合割合を0.03質量%とし、青1号の配合割合を0.03質量%とし、精製水の配合割合を56.41質量%とし、エタノールの配合割合を30.00質量%とし、PGの配合割合を10.00質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を3.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例30のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例30のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を6.0に調整した。
【0106】
<実施例31>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を0.50質量%とし、精製水の配合割合を53.05質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例31のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例31のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を12.7に調整した。
【0107】
<実施例32>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.00質量%とし、精製水の配合割合を52.55質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例32のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例32のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を6.4に調整した。
【0108】
<実施例33>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を52.24質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例33のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例33のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0109】
<実施例34>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.60質量%とし、精製水の配合割合を51.95質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例34のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例34のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.0に調整した。
【0110】
<実施例35>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を2.50質量%とし、精製水の配合割合を51.05質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例35のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例35のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を2.5に調整した。
【0111】
<実施例36>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を3.00質量%とし、精製水の配合割合を50.55質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例36のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例36のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を2.1に調整した。
【0112】
<実施例37>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を57.24質量%とし、エタノールの配合割合を35.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例37のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例37のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0113】
<実施例38>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を42.24質量%とし、エタノールの配合割合を50.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例38のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例38のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0114】
<実施例39>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を52.29質量%とし、PGの配合割合を0.05質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例39のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例39のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0115】
<実施例40>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を48.34質量%とし、PGの配合割合を4.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例40のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例40のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0116】
<実施例41>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を53.59質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を5.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例41のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例41のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を3.8に調整した。
【0117】
<実施例42>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を50.59質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を8.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例42のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例42のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を6.1に調整した。
【0118】
<実施例43>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を56.09質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を2.50質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例43のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例43のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を1.9に調整した。
【0119】
<実施例44>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を55.59質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を3.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例44のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例44のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を2.3に調整した。
【0120】
<実施例45>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を50.09質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を8.50質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例45のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例45のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を6.5に調整した。
【0121】
<実施例46>
本実施例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、精製水の配合割合を48.59質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を10.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例46のインクジェットインクを得た。
こうして、実施例46のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を7.6に調整した。
【0122】
<比較例1>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を0.30質量%とし、赤3号の配合割合を0.02質量%とし、黄4号の配合割合を0.02質量%とし、青1号の配合割合を0.02質量%とし、精製水の配合割合を53.19質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例1のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例1のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を21.2に調整した。
【0123】
<比較例2>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を5.00質量%とし、赤3号の配合割合を0.31質量%とし、黄4号の配合割合を0.31質量%とし、青1号の配合割合を0.31質量%とし、精製水の配合割合を47.62質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例2のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例2のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を1.3に調整した。
【0124】
<比較例3>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を67.00質量%とし、エタノールの配合割合を25.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例3のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例3のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0125】
<比較例4>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を27.00質量%とし、エタノールの配合割合を65.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例4のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例4のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0126】
<比較例5>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.09質量%とし、エタノールの配合割合を40.00質量%とし、PGの配合割合を0.01質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例5のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例5のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0127】
<比較例6>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を37.10質量%とし、PGの配合割合を15.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例6のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例6のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を4.8に調整した。
【0128】
<比較例7>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.00質量%とし、還元イソマルツロースに代えてセロビオースの配合割合を6.35質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例7のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例7のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を0.0に調整した。
【0129】
<比較例8>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を52.00質量%とし、還元イソマルツロースに代えてガラクトースの配合割合を6.35質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例8のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例8のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を0.0に調整した。
【0130】
<比較例9>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を54.35質量%とし、還元イソマルツロースに代えてアラビアガムの配合割合を4.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例9のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例9のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を0.0に調整した。
【0131】
<比較例10>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を57.85質量%とし、還元イソマルツロースに代えてアルギン酸ナトリウムの配合割合を0.50質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例10のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例10のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を0.0に調整した。
【0132】
<比較例11>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を1.31質量%とし、赤3号の配合割合を0.08質量%とし、黄4号の配合割合を0.08質量%とし、青1号の配合割合を0.08質量%とし、精製水の配合割合を57.85質量%とし、還元イソマルツロースに代えてヒドロキシプロピルメチルセルロースの配合割合を0.50質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例11のインクジェットインクを得た。
こうして、比較例11のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を0.0に調整した。
【0133】
<比較例12>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を6.00質量%とし、赤3号の配合割合を0.37質量%とし、黄4号の配合割合を0.37質量%とし、青1号の配合割合を0.37質量%とし、精製水の配合割合を68.39質量%とし、PGに代えてポリエチレングリコールの配合割合を7.50質量%とし、PGに代えてポリグリセリン脂肪酸エステル類の配合割合を2.00質量%とし、還元イソマルツロースの配合割合を15.00質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例12のインクジェットインクを得た。なお、本比較例では、エタノールを添加しなかった。
こうして、比較例12のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を2.5に調整した。
【0134】
<比較例13>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を0.30質量%とし、精製水の配合割合を53.25質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例13のインクジェットインクを得た。なお、本比較例では、赤102号以外の色材を添加しなかった。
こうして、比較例13のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を21.2に調整した。
【0135】
<比較例14>
本比較例では、インクジェットインク全体に対して、赤102号の配合割合を5.00質量%とし、精製水の配合割合を48.55質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例14のインクジェットインクを得た。なお、本比較例では、赤102号以外の色材を添加しなかった。
こうして、比較例14のインクジェットインクにおける、還元イソマルツロースと赤102号との質量比(還元イソマルツロースの質量/赤102号の質量)を1.3に調整した。
【0136】
前述の実施例1~46及び比較例1~14の各インクを、それぞれメンブレンフィルターを通過させることによって液中の固体異物を除去した。具体的には、口径5.0μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させ、続いて口径0.8μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させることで精製インクをそれぞれ得た。
【0137】
<評価>
上記各実施例及び各比較例のインクについて、以下の方法で溶解性、粘度、可読性、初期吐出性、細線再現度、間欠再開性、錠剤乾燥性、耐光性をそれぞれ評価した。各評価結果を表1~4に示す。なお、表1~4中で「空欄」の部分は、当該物質を使用していないことを示す。また、比較例10において、粘度調整剤として使用したアルギン酸ナトリウムは、比較例10において使用した溶媒に対する溶解性が低かった。そのため、比較例10のインクの粘度、可読性、初期吐出性、細線再現度、間欠再開性、錠剤乾燥性、耐光性の各評価については評価不能として、表4においては「―」で表記した。
【0138】
(溶解性試験)
溶媒に色素(色材)や各種添加剤を添加した後に常温常湿下で1時間撹拌し、色素等の溶質が溶解したサンプルを低温条件下(5℃以下)で1週間保管してそれぞれ溶解性を検証した。
○:常温常湿下1時間撹拌後において溶質が全て溶解、低温保管時(5℃以下)析出物なし
△:常温常湿下1時間撹拌後において溶質が全て溶解、低温保管時(5℃以下)析出物あり
×:常温常湿下1時間撹拌後においても一部不溶
なお、溶解性試験の評価が「○」、「△」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0139】
(粘度測定)
各実施例及び各比較例のインキの粘度は、回転式粘度計を用いて、測定温度25℃の測定条件で測定した。
◎ :2.5mPa・s≦粘度≦3.5mPa・s
〇 :2.0mPa・s≦粘度<2.5mPa・s
〇 :3.5mPa・s<粘度≦5.0mPa・s
△ :5.0mPa・s<粘度≦6.0mPa・s
△-:1.0mPa・s≦粘度<2.0mPa・s
△-:6.0mPa・s<粘度≦7.0mPa・s
× :粘度<1.0mPa・s
× :7.0mPa・s<粘度
なお、粘度の評価が「◎」、「〇」、「△」、「△-」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0140】
(可読性)
光学濃度(OD値)に基づいて可読性の評価をした。可読性の評価基準は以下の通りである。
◎:0.3<OD
〇:0.2<OD≦0.3
△:0.15<OD≦0.2
×:OD≦0.15
なお、可読性の評価が「◎」、「○」、「△」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0141】
(初期吐出)
インクジェットヘッドには、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等の記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数1,280の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用いた。上記インクジェットヘッドを用いて、ノズルメンテナンス実施直後に、テストパターンを印刷した。そして、テストパターンの印刷状況から、不吐出領域発生に伴う印字画像の可読性を確認した。評価基準は以下の通りである。
◎:不吐出なし
○:可読性あり
×:可読性なし
なお、初期吐出性の評価が「◎」、「○」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0142】
(細線再現度)
インクジェットヘッドには、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等の記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数1,280の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用いた。上記インクジェットヘッドを用いて、ノズルメンテナンス実施直後に、テストパターンを印刷した。そして、テストパターンの印刷状況から、1ドット細線の印字画像再現性を確認した。評価基準は以下の通りである。
○:印刷イメージ通りに再現
△:印刷イメージから一部位置ずれが発生
×:印刷イメージから全体的に位置ずれが発生
なお、細線再限度が「○」、「△」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0143】
(間欠再開性(吐出安定性)試験)
印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数1,280の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、規定時間(15分間~60分間)フラッシング無く放置した後、1ドロップ6plの印刷ドロップ量にて、テストパターンを印刷し、全ノズルから不吐出量なく吐出できていることを確認した。なお、以下表1~4では、間欠印刷性(間欠再開性・吐出安定性)の評価結果として、インクの吐出が可能な放置時間を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:30分間以上60分間未満
〇:15分間以上30分間未満
△:5分間以上15分間未満
×:5分間未満
なお、間欠再開性(吐出安定性)試験の評価が「◎」、「○」、「△」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0144】
(錠剤乾燥性(耐転写性)試験)
下記錠剤に、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数1,280の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ10plの印刷ドロップ量にて実施例および各比較例のインクジェットインクにより画像をそれぞれ印刷した。
印刷10秒後、印刷された錠剤に、デジタルフォースゲージに貼り付けた白色コピー用紙を4~5Nの圧力で、0.4~0.5秒間接触させ、印刷したインクが転写しないことを確認した。なお、表1~4では、耐転写性(乾燥性)の評価結果として、転写したインクの濃度を目視した。評価基準は以下の通りである。
◎:インクの転写がない場合
○:インクの転写がごく僅かであり、目視確認が難しい場合
×:インクが色濃く転写した場合
なお、錠剤乾燥性(耐転写性)の評価が「◎」、「○」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0145】
(耐光試験)
印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数1,280の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、上記実施例1~46および比較例1~14の精製インクを1ドロップ6plの印刷ドロップ量にて画像を、下記錠剤にそれぞれ印刷した。なお、上記実施例1~46および比較例1~14の精製インクは、常湿環境下(60%RH)で使用(印刷)し、常湿環境下(50%RH)で耐光試験を行った。
印刷対象の錠剤は、テスト用フィルムコーティング錠(基剤:調整澱粉、コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース70%・酸化チタン30%の混合、直径:6.5mm)とした。また、印刷画像は、円形のベタ画像(直径4.0mm)とした。これによりフィルムコーティング錠印刷物を得た。
【0146】
色度及び光学色濃度を測定した各実施例および各比較例の上記フィルムコーティング錠印刷物に対して、光安定性試験装置(ナガノサイエンス LT―120A―WD)を用いて累積120万ルクスの可視光を照射した。可視光を照射したフィルムコーティング錠印刷物に対し分光光度計にて色度及び光学色濃度を測定し、可視光の照射前後における色度及び光学色濃度の変化量を示す色差ΔE(JIS Z 8781に準拠するもの)を比較した。比較した結果を表1~4に示した。上述のように、可視光の照射前後の色味の変化について、上述のように、発明者らは、JIS Z 8781における色差ΔEが20以下(ΔE≦20)であれば、光変褪色が十分に抑制され、優れた耐光性を持つことを導き出した。そこで、ΔE≦20であれば、インクジェットインクが優れた耐光性を有しているとして、本評価においては合格とし、ΔE≦13であれば、インクジェットインクが非常に優れた耐光性を有しているとして、本評価においてより優れたものと見なした。
◎:ΔE≦13
〇:13<ΔE≦15
△:15<ΔE≦20
×:20<ΔE
なお、耐光試験の評価が「◎」、「○」、「△」であれば、使用上問題がないため、合格とした。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
表1~4に示すように、実施例1~46のインクジェットインクでは、間欠再開性の評価結果が何れも「△」以上であり、十分な間欠再開性を有することが分かった。
また、表1~4に示すように、実施例1~46のインクジェットインクでは、錠剤乾燥性の評価結果が何れも「〇」以上であり、十分な錠剤乾燥性を有することが分かった。
また、表1~4に示すように、実施例1~46のインクジェットインクでは、耐光性の評価結果が何れも「△」以上であり、十分な耐光性を有することが分かった。
【0152】
以上のように、赤色102号と、還元イソマルツロースと、溶媒としての水と、一価アルコールと、湿潤剤とを含有し、一価アルコールがエタノール、NPA及びIPAの少なくとも1種を含み、湿潤剤がグリセリン及びPGの少なくとも1種を含み、赤色102号の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内であり、一価アルコールの配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内であり、湿潤剤の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.05質量%以上10質量%以下の範囲内であるインクジェットインクであれば、乾燥性(錠剤乾燥性)と、耐光性と、吐出安定性(間欠再開性)とを備えたインクジェットインク及び当該インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤印刷物を提供することができる。
【0153】
また、例えば、本発明は以下のような構成を取ることができる。
(1)
赤色102号と、還元イソマルツロースと、溶媒としての水と、一価アルコールと、湿潤剤とを含有し、
前記一価アルコールは、エタノール、NPA及びIPAの少なくとも1種を含み、
前記湿潤剤は、グリセリン及びPGの少なくとも1種を含み、
前記赤色102号の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内であり、
前記一価アルコールの配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内であり、
前記湿潤剤の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.05質量%以上10質量%以下の範囲内であることを特徴とするインクジェットインク。
(2)
前記還元イソマルツロースの配合量が前記インクジェットインク全体の質量に対して3.0質量%以上8.5質量%以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)に記載のインクジェットインク。
(3)
前記インクジェットインクの粘度が1.0mPa・s以上7.0mPa・s以下の範囲内であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のインクジェットインク。
(4)
上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のインクジェットインクを使用して印刷した印刷部を備えたことを特徴とする錠剤印刷物。
【0154】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0155】
1 錠剤の基材
1S 表面
3 印刷画像
4 特定染料
5 素錠印刷物
7 フィルムコート層
9 フィルムコート錠印刷物
11 素錠印刷画像(ベタ画像)
13 フィルムコート錠印刷画像(二次元バーコード)
【要約】
【課題】本発明は、乾燥性と、耐光性と、吐出安定性とを備えたインクジェットインク及び当該インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤印刷物を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係るインキは、赤色102号と、還元イソマルツロースと、溶媒としての水と、一価アルコールと、湿潤剤とを含有し、一価アルコールはエタノール、NPA及びIPAの少なくとも1種を含み、湿潤剤はグリセリン及びPGの少なくとも1種を含み、赤色102号の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.5質量%以上3.0質量%以下の範囲内であり、一価アルコールの配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して30質量%以上60質量%以下の範囲内であり、湿潤剤の配合割合がインクジェットインク全体の質量に対して0.05質量%以上10質量%以下の範囲内である。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5