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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20240402BHJP
   G01J 3/45 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H02K33/18 B
G01J3/45
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023506761
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047283
(87)【国際公開番号】W WO2022196015
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2021044445
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴久
(72)【発明者】
【氏名】永棹 航太
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-158348(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020847(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193499(WO,A1)
【文献】特開2016-142527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/18
G01J 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置を移動させることが可能な移動鏡と、
前記移動鏡の位置を移動させる駆動部と、を備える分析装置であって、
前記駆動部は、
一方の面に前記移動鏡を固定する筒部と、
前記筒部の他方の面で接続され、前記筒部を往復移動させるボイスコイルモータと、を備え、
前記ボイスコイルモータは、
筒状のヨークと、
前記ヨークの両端に設けられる磁石と、
前記ヨークを内包する筒状で、前記磁石を設けた前記ヨークを底面で固定する固定部と、
複数の窓が設けられ、前記固定部の開口面を覆う蓋部と、
前記ヨークと前記固定部との間に配置される筒状のコイルが固定された移動部と、
前記移動部に一端が固定され、他端が前記窓を通って前記筒部の他方の面で接続される複数の支持部と、を含む、分析装置。
【請求項2】
前記蓋部は、複数のパーツで構成され、前記複数のパーツを組み合わせることで前記窓が構成される、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記蓋部は、前記窓の数と同じ数の前記複数のパーツで構成される、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記複数の支持部は、少なくとも3本以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
前記ヨークの一端に設けられる前記磁石と他端に設けられる前記磁石とは、同じ磁力を有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡の位置を移動させる駆動部を含む分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FTIR(フーリエ変換型赤外分光光度計:Fourier Transform Infrared spectroscope)に利用されるマイケルソン二光束干渉計は、赤外光源から発した赤外光をビームスプリッタで固定鏡と移動鏡との2方向に分割し、固定鏡で反射して戻ってきた光と移動鏡で反射して戻ってきた光と再びビームスプリッタで合成する構成を有する。FTIRでは、移動鏡を入射光軸方向(前後方向)で前後に移動させることで、分割された二光束の光路長の差を変化させて干渉光を発生させている(国際公開第2016/166872号:特許文献1)。
【0003】
FTIRでは、移動鏡の位置を移動させる駆動部としてボイスコイルモータ(以下、VCMともいう)を用いている。VCMは、磁場中にコイルを設けた移動部を配置し、当該コイルに電流を流すことで発生する電磁力により、移動部の推力を得る駆動部である。また、VCMは、その構造上、移動部の高速な制御が可能であり、一定速度で移動部を往復移動させるなどの駆動に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/166872号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、VCMは、コイルを設けた移動部を配置する磁場の磁束密度が均一でない場合、移動部の推力が移動部の位置によって異なる。特に、磁束密度が弱い位置では、移動部の推力が不足し、一定速度で移動部を往復移動させることができない問題があった。FTIRでは、移動部に移動鏡を固定して往復移動させるが、VCMが一定速度で移動部を往復移動させることができない場合、測定データの再現性が低下する問題があった。さらに、FTIRの分解能を高めるためには、より広い範囲で移動鏡を往復移動させる必要があり、VCMにおいてより広い範囲で磁束密度を均一にすることが望まれている。
【0006】
ただ、VCMにおいてより広い範囲で磁束密度を均一にするには、ヨークの長さを長くすることが考えられるが、ヨークの長さを長くすることで磁束密度がストローク全体で低くなり、移動部の推力がストローク全体で低下する問題がある。また、ヨークの長さを長くすることで磁束密度が低くなることを補うために磁力の強い磁石を設けることも可能であるが、強い磁石を設けることで駆動部自体が大型化する問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、大型化することなくより広いストローク範囲で、一定速度で移動部を往復移動させることができる駆動部を備えた分析装置を提供することを一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う分析装置は、位置を移動させることが可能な移動鏡と、移動鏡の位置を移動させる駆動部と、を備える分析装置である。駆動部は、一方の面に移動鏡を固定する筒部と、筒部の他方の面で接続され、筒部を往復移動させるボイスコイルモータと、を備える。ボイスコイルモータは、筒状のヨークと、ヨークの両端に設けられる磁石と、ヨークを内包する筒状で、磁石を設けたヨークを底面で固定する固定部と、複数の窓が設けられ、固定部の開口面を覆う蓋部と、ヨークと固定部との間に配置される筒状のコイルが固定された移動部と、移動部に一端が固定され、他端が窓を通って筒部の他方の面で接続される複数の支持部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記の駆動部によれば、固定部の開口面に蓋部を設け、蓋部の窓を通って設けられる支持部で鏡を固定する筒部を支持するので、大型化することなくより広い範囲で移動部を往復移動させることができる。また、上記の分析装置では、より広い範囲で鏡を往復移動させることができるので、分解能の高い測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態の分析装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態の駆動部の構成を示す断面図である。
図3】実施の形態の駆動部の構成を示す断面斜視図である。
図4】実施の形態の駆動部の構成を示す斜視図である。
図5】実施の形態の駆動部の推力を示すグラフである。
図6】比較例の駆動部の推力を示すグラフである。
図7】変形例の蓋部の構成を示す図である。
図8】変形例の駆動部の構成を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[分析装置の構成]
図1は、実施の形態の分析装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、分析装置の一例としてFTIRを例に説明する。なお、実施の形態の分析装置は、FTIRに限定されるものではなく、例えば、非線形ラマン分光法などの鏡の位置を移動させ光路長差をつける装置を備える分析装置であれば同様に適用することができる。
【0013】
図1に示すFTIRは、干渉計室400内に収容された、赤外光源410、集光鏡431a、コリメータ鏡431b、ビームスプリッタ440、移動鏡450、固定鏡460から構成される主干渉計を有する。移動鏡450には、駆動部100が接続されており、駆動部100は、移動鏡450の位置を移動させる。主干渉計において、赤外光源410から射出された赤外光は集光鏡431a、コリメータ鏡431bを経由してビームスプリッタ440で2つに分割され、一方は固定鏡460、もう一方は移動鏡450で反射され、再び同一光路で合一されて赤外干渉光となる。
【0014】
該赤外干渉光が放物面鏡432により集光され、試料室470へ入射し、試料Sへ照射されると、試料Sに特有の波長において吸収を受ける。吸収を受けた赤外干渉光は楕円面鏡433を経由して赤外光検出器480で検出され、フーリエ変換されることによりパワースペクトルが作成される。
【0015】
[駆動部の構成]
FTIRでは、移動鏡450の移動速度を一定に保つことで、スペクトルを高い再現性で取得することができる。また、FTIRでは、移動鏡450を移動させる範囲をより広い範囲にすることで精度の高い測定が可能となる。本実施の形態では、移動鏡450を移動させる駆動部100にVCMを用いている。図2は、実施の形態の駆動部100の構成を示す断面図である。また、図3は、実施の形態の駆動部100の構成を示す断面斜視図である。
【0016】
駆動部100は、一方の面に移動鏡450を固定する筒部52と、移動鏡450を固定する面とは反対の筒部52の面(他方の面)で接続されるVCM1と、を備えている。VCM1は、筒部52を往復移動させることで移動鏡450の位置を移動させている。なお、筒部52の先端(図2の左側)には、移動鏡450が固定されており、筒部52および移動鏡450が直動機構により支持され往復移動する。直動機構は、例えばリニアガイドであり、筒部52を支持するガイド55bがレール55a上を直動運動する。ただし、直動機構は、レール55a上にガイド55bが接触支持されるリニアガイドに限定されず、磁気浮上やエアベアリングのような非接触でレール上にガイドが支持される構成でもよい。
【0017】
VCM1は、アウターヨークに対応する筒状の固定部73と、インナーヨークに対応し、固定部73の底面に固定される筒状のヨーク75とを有する。固定部73およびヨーク75は、鉄製(磁性材料製)で、固定部73の中心軸とヨーク75の中心軸とが一致するように固定部73がヨーク75を内包している。ヨーク75の中心軸方向(図中の左右方向)の両端には、磁石74a,74bが設けられている。そのため、ヨーク75は、磁石74bを挟んで固定部73の底面に固定されている。つまり、磁石74aとヨーク75と磁石74bとの順で固定部73の底面に固定されている。一方、当該底面と対向する固定部73の開口面には、蓋部76が設けられている。
【0018】
VCM1では、ヨーク75の両端に磁石を設け、2個の磁石を使用している。そのため、ヨーク75の一方の端に磁石を設け、1個の磁石を使用するVCMに比べて、VCM1では、移動部の推力を大きくすることができる。つまり、VCM1では、固定部73内の磁束密度を高めることで、移動部の推力を大きくするとともに磁場の均一性を確保して移動部を移動させる範囲を広く(ストロークを長く)できる。なお、磁石74aと磁石74bとは同じ磁石であるが、磁力が同じであれば形状が異なっていてもよい。
【0019】
また、VCM1では、固定部73の開口面から漏れていた磁束を、空気より透磁率の高い材料で形成した蓋部76で閉じ込めている。そのため、VCM1では、固定部73の開口面側の磁場の低下を抑えることができ、開口面側まで磁場の均一性を確保して移動部を移動させる範囲を広く(ストロークを長く)している。
【0020】
VCM1は、ヨーク75と固定部73との間に筒状のコイルを固定した移動部72aが設けられている。この移動部72aの一端には、筒部52と接続するための支持部72bが設けられている。支持部72bは、蓋部76に設けた窓77を通って4本設けられている。移動部72aと4本の支持部72bとは、コイルの導線を巻き付けるボビンとして一体的に形成してもよい。もちろん、コイルの導線を巻き付けた移動部72aに、4本の支持部72bを後から接続して形成してもよい。
【0021】
固定部73の側面には、中心軸方向に伸びる長孔形状のスリット73aが形成されている。スリット73aは、中心軸に対して対称に形成されており、図2では中心軸を挟んで上下方向に形成されている。移動部72aは、外周面に導線を巻いた円環形状のコイルを有しており、当該コイルがスリット73aを貫通するように配置された電力供給端子(電力供給線)72cを介して電源(図示略)と電気的に接続している。これにより、VCM1は、移動部72aのコイルに電力供給端子72cを介して電流を流すと、コイルは固定部73とヨーク75との間に形成される磁界によって電磁力(ローレンツ力)を受けて中心軸方向に移動することで、筒部52に固定された移動鏡450を往復移動させる。
【0022】
[蓋部の構成]
蓋部76の構成について説明する。図4は、実施の形態の駆動部の構成を示す斜視図である。図4に示すように、蓋部76は、4つのパーツ76a~76dで構成されている。この4つのパーツ76a~76dを組み合わせることで4つの窓77が構成される。蓋部76は、固定部73の開口面を単純に覆うだけでは筒部52や移動鏡450に移動部72aの推力を伝達することができない。そのため、VCM1では、窓77を通って筒部52や移動鏡450に接続される4本の支持部72bで、筒部52や移動鏡450に移動部72aの推力を伝達している。
【0023】
また、中心軸から1本の支持部72bを伸ばして筒部52や移動鏡450に移動部72aの推力を伝達することも可能であるが、1本の支持部72bの先に移動鏡450を接続して、移動部72aを往復移動させた場合、移動鏡450の機械剛性が下がり、共振周波数が下がることで高速駆動時の発振現象などが起こり、一定速度での駆動が出来ない。FTIRでは、高い再現性を得るためには移動鏡450を均一に往復移動させる必要があるため、複数の支持部72bで筒部52や移動鏡450に移動部72aの推力を伝達する必要がある。
【0024】
図4では、4本の支持部72bが中心軸に対して対称に設けられ、移動部72aから直線状に支持部72bが伸びている。4本の支持部72bで移動部72aと筒部52とを接続することで、移動部72a自体の固有振動数を高くすることができ、移動鏡450を均一に往復運動させることができる。また、4本の支持部72bを通すために4つ窓77を蓋部76に設ける場合、図4に示すように4つのパーツ76a~76dに蓋部76を分割し、4つのパーツ76a~76dを組み合わせて4つの窓77を構成する。このように、4つのパーツ76a~76dを組み合わせて4つの窓77を構成することで、VCM1の組立性が高くなる。なお、4つのパーツ76a~76dの取り外し方向は、それぞれ径方向である。
【0025】
[推力の均一性]
駆動部100の推力の均一性について説明する。図5は、実施の形態の駆動部100の推力を示すグラフである。図6は、比較例の駆動部の推力を示すグラフである。比較例の駆動部は、駆動部100が有するVCM1の構成を採用しておらず、図2に示すVCM1から磁石74aおよび蓋部76を除いた構成である。
【0026】
図5では、横軸をコイル位置、縦軸を推力として、コイル(移動部72a)の各位置での推力の変化を示している。なお、図5および図6で示しているコイル位置および推力の値は、比較可能な値として規格化したレベル値で示してある。駆動部100では、図5から分かるように、コイル位置の0レベル~56レベルまで推力の均一性が確保されており移動鏡450を移動させる使用範囲として確保することができる。
【0027】
一方、図6では、同じように横軸をコイル位置、縦軸を推力として、コイル(移動部)の各位置での推力の変化を示している。比較例の駆動部では、図6から分かるように、コイル位置の0レベル~40レベルまで推力の均一性が確保されており移動鏡を移動させる使用範囲として確保することができる。そのため、駆動部100では、比較例の駆動部に比べて使用範囲が16レベルも広くすることができ、使用範囲が約1.4倍に広がっている。また、駆動部100では、比較例の駆動部に比べて使用範囲を広くしつつも、同等の推力を確保している。
【0028】
なお、図5および図6では、所定の範囲で電流値を変化させてコイルに電流を流した場合の各位置での推力の変化を示すグラフを図示している。図5および図6から分かるように、コイルに流す電流値を所定の範囲変化させても、ほぼ同じコイル位置と推力との関係が得られる。
【0029】
[変形例]
(1) 図4で示したように蓋部76は、4つのパーツ76a~76dで構成されると説明した。しかし、これに限定されず、蓋部は、窓の数と同じ数の複数のパーツで構成されてもよい。図7は、変形例の蓋部の構成を示す図である。図7で示したように蓋部760には、5つの窓77が設けられるので、5つのパーツ760a~760eで構成される。
【0030】
ただし、蓋部は、分割するパーツの数を増えるほど、組立性を確保するために各々のパーツの大きさ(面積)を小さくする必要がある。たとえば、蓋部を5つのパーツに分割した場合、蓋部を4つのパーツに分割した場合に比べて、蓋部の面積が5%程度低下する。蓋部の面積が低下すると、蓋部からの磁束の漏れが増え駆動部の推力が低下する。つまり、支持部および窓の数を増やすことと、駆動部の推力とはトレードオフの関係がある。
【0031】
なお、蓋部を分割した複数のパーツは磁石と引き合うため、複数のパーツを組み合わせて蓋部を構成したり、蓋を複数のパーツに分けたりする作業は困難である。そのため、複数のパーツは、それぞれ蓋部の径方向に引き抜くことが可能な形状とすることが好ましい。
【0032】
(2) 図2に示す駆動部100では、4本の支持部72bで筒部52および移動鏡450を支持する構成について説明した。しかし、これに限定されず、筒部52および移動鏡450を支持する支持部72bの本数は、2本以上あればよい。図8は、変形例の駆動部の構成を示す断面斜視図である。なお、図8に示す駆動部100aは、図2に示す駆動部100の構成と同じ構成について同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0033】
駆動部100aは、4本の支持部72bで筒部52および移動鏡450を支持するのではなく、2本の支持部72bで筒部52および移動鏡450を支持している。図8では、2本の支持部72bが中心軸に対して対称に設けられ、移動部72aから直線状に支持部72bが伸びている。2本の支持部72bで移動部72aと筒部52とを接続する場合、4本の支持部72bで移動部72aと筒部52とを接続する場合に比べて移動部72a自体の固有振動数は低くなる。しかし、1本の支持部72bで移動部72aと筒部52とを接続する場合に比べて移動部72a自体の固有振動数は高くなるので、駆動部100aは、移動鏡450を均一に往復運動させることができる。
【0034】
なお、駆動部100aでは、2本の支持部72bを設けていない方向の振動が大きくなる。そのため、当該振動を減らすためには、駆動部は、3本の支持部72bで筒部52および移動鏡450を支持することが好ましい。
【0035】
また、2本の支持部72bを通すために2つ窓77を蓋部76に設ける場合、図8に示すように2つのパーツに蓋部76を分割し、2つのパーツを組み合わせて2つの窓77を構成する。このように、2つのパーツを組み合わせて2つの窓77を構成することで、駆動部100aの組立性が高くなる。
【0036】
[態様]
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0037】
(第1項)一態様に係る分析装置は、位置を移動させることが可能な移動鏡(450)と、移動鏡(450)の位置を移動させる駆動部(100,100a)と、を備える分析装置であって、駆動部(100,100a)は、移動鏡(450)の位置を移動させる駆動部であって、一方の面に鏡を固定する筒部(52)と、筒部の他方の面で接続され、筒部を往復移動させるボイスコイルモータ(70)と、を備え、ボイスコイルモータは、筒状のヨーク(75)と、ヨークの両端に設けられる磁石(74a,74b)と、ヨークを内包する筒状で、磁石を設けたヨークを底面で固定する固定部(73)と、複数の窓(77)が設けられ、固定部の開口面を覆う蓋部(76)と、ヨークと固定部との間に配置される筒状のコイルが固定された移動部(72a)と、移動部に一端が固定され、他端が窓を通って筒部の他方の面で接続される複数の支持部(72b)と、を含む。
【0038】
第1項に記載の駆動部によれば、固定部の開口面に蓋部を設け、蓋部の窓を通って設けられる支持部で鏡を固定する筒部を支持するので、大型化することなくより広い範囲で移動部を往復移動させることができる。また、第1項に記載の分析装置によれば、より広い範囲で鏡を往復移動させることができるので、波数分解能の高い測定が可能となる。
【0039】
(第2項)第1項に記載の分析装置によれば、蓋部は、複数のパーツ(76a~76d,760a~760e)で構成され、複数のパーツを組み合わせることで窓が構成される。
【0040】
第2項に記載の分析装置によれば、蓋部は、複数のパーツで構成されるので、ボイスコイルモータの組立性を高くすることができる。
【0041】
(第3項)第2項に記載の分析装置によれば、窓の数と同じ数の複数のパーツで構成される。
【0042】
第3項に記載の分析装置によれば、窓の数と同じ数の複数のパーツで構成することで、パーツの数を必要以上に増やすことを抑制して蓋部の面積の低下を抑えて駆動部の推力の低下を抑えることができる。
【0043】
(第4項)第1項~第3項のうちいずれか1項に記載の分析装置によれば、複数の支持部は、少なくとも3本以上である。
【0044】
第4項に記載の分析装置によれば、複数の支持部が少なくとも3本以上あるので、移動部の高い機械剛性を確保でき、を均一に往復移動させることができる。
【0045】
(第5項)第1項~第4項のうちいずれか1項に記載の分析装置によれば、ヨークの一端に設けられる磁石と他端に設けられる磁石とは、同じ磁力を有する。
【0046】
第5項に記載の分析装置によれば、同じ磁力を有する磁石を用いることで、固定部73内の磁束密度の均一性が高くなる。
【0047】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 VCM、52 筒部、72a 移動部、72b 支持部、72c 電力供給端子、73 固定部、73a スリット、74a,74b 磁石、75 ヨーク、76,760 蓋部、77 窓、100,100a 駆動部、410 赤外光源、431a 集光鏡、431b コリメータ鏡、432 物面鏡、433 楕円面鏡、440 ビームスプリッタ、450 移動鏡、460 固定鏡、470 試料室、480 赤外光検出器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8