(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】熱拡散デバイス
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240402BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F28D15/02 102A
F28D15/02 L
F28D15/02 101H
F28D15/04 E
(21)【出願番号】P 2023527531
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022014906
(87)【国際公開番号】W WO2022259716
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2021095017
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】森上 誠士
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113270(JP,A)
【文献】特開2020-106209(JP,A)
【文献】特開2002-062066(JP,A)
【文献】特開2006-114603(JP,A)
【文献】実開昭59-124874(JP,U)
【文献】特開昭58-035948(JP,A)
【文献】特開2000-349213(JP,A)
【文献】特開2018-185110(JP,A)
【文献】特開2011-102691(JP,A)
【文献】特開2002-267378(JP,A)
【文献】特開昭63-083587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00 - 15/06
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有し、厚さ方向に対向する第1内壁面及び第2内壁面を備える筐体と、
前記内部空間に封入された作動媒体と、
前記内部空間に配置された第1ウィック及び第2ウィックと、
前記内部空間に配置された第1端部と第2端部とを有する非通気性の仕切り壁と、を備え、
前記第1ウィック及び第2ウィックの各々は、前記厚さ方向に垂直な方向に沿い、前記筐体の前記第1内壁面及び前記第2内壁面に接する部分を有し、
前記筐体の内部空間には、蒸気流路が形成されており、
前記仕切り壁の第2端部は、前記筐体の内側面と接続しており、
前記厚さ方向から前記内部空間を平面視した際に、
前記仕切り壁は前記第1ウィックと前記第2ウィックとの間に挟まれている熱拡散デバイス。
【請求項2】
厚さ方向から前記内部空間を平面視した際に、
前記内部空間は、少なくとも第1領域、第2領域及び第3領域を含み、
前記第1領域と前記第2領域とは連続するように隣り合っており、
前記第1領域と前記第3領域とは連続するように隣り合っており、
前記第2領域と前記第3領域とは、前記仕切り壁を挟んで隣り合っており、
前記仕切り壁の第1端部は、前記第1領域に接しており、
前記第1ウィックは、前記第1領域から前記第2領域にかけて形成され、
前記第2ウィックは、前記第1領域から前記第3領域にかけて形成されている請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項3】
前記仕切り壁は、前記第1内壁面から前記第2内壁面まで厚さ方向に連続して形成されている請求項1又は2に記載の熱拡散デバイス。
【請求項4】
前記仕切り壁は、前記第1内壁面から前記第2内壁面までの厚さ方向にかけて形成されており、前記仕切り壁は、前記第1内壁面から前記第2内壁面までの間に非連続領域を有する請求項1又は2に記載の熱拡散デバイス。
【請求項5】
厚さ方向から前記内部空間を平面視した際、前記第2領域の面積に占める前記第1ウィックの面積の割合は60%以下である請求項1~4のいずれかに記載の熱拡散デバイス。
【請求項6】
厚さ方向から前記内部空間を平面視した際、前記第3領域の面積に占める前記第2ウィックの面積の割合は60%以下である請求項1~5のいずれかに記載の熱拡散デバイス。
【請求項7】
前記ウィックは、第1多孔体及び第2多孔体を含み、
前記ウィックにおいて、前記第1多孔体と前記第2多孔体との間には、前記第1多孔体及び前記第2多孔体が延びる方向に沿って間隔が設けられることにより液溜まり流路が形成されている、請求項1~6のいずれかに記載の熱拡散デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱拡散デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、素子の高集積化及び高性能化による発熱量が増加している。また、製品の小型化が進むことで、発熱密度が増加するため、放熱対策が重要となっている。この状況はスマートフォン及びタブレットなどのモバイル端末の分野において特に顕著である。熱対策部材としては、グラファイトシートなどが用いられることが多いが、その熱輸送量は十分ではないため、様々な熱対策部材の使用が検討されている。中でも、非常に効果的に熱を拡散させることが可能であるとして、面状のヒートパイプであるベーパーチャンバーの使用の検討が進んでいる。
【0003】
ベーパーチャンバーは、筐体の内部に、作動媒体と、毛細管力によって作動媒体を輸送するウィックとが封入された構造を有する。上記作動媒体は、発熱素子からの熱を吸収する蒸発部において発熱素子からの熱を吸収してベーパーチャンバー内で蒸発した後、凝縮部に移動し、冷却されて液相に戻る。液相に戻った作動媒体は、ウィックの毛細管力によって再び発熱素子側の蒸発部に移動し、発熱素子を冷却する。これを繰り返すことにより、ベーパーチャンバーは外部動力を有することなく自立的に作動し、作動媒体の蒸発潜熱及び凝縮潜熱を利用して、二次元的に高速で熱を拡散することができる。
【0004】
特許文献1には、作動流体を内部に封入し、該封入した作動流体を蒸発させる蒸発部と、該蒸発した作動流体を凝縮させる凝縮部と、を有するコンテナと、前記コンテナの対向する一対の内壁面のそれぞれに接触し、毛細管力によって前記凝縮した作動流体を前記凝縮部から前記蒸発部に移動させるウィックと、を備え、前記一対の内壁面、前記一対の内壁面に接触しない前記ウィックの側面、及び、前記ウィックの側面と隙間をあけて形成された対向面によって囲まれた空間に、前記凝縮した作動流体の液溜まり流路が形成されている、ことを特徴とする放熱モジュールが開示されている。
【0005】
また、特許文献1では、複数のウィックがコンテナ内に配置されている放熱モジュールが開示されている(特許文献1の
図7を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたような放熱モジュール(熱拡散デバイス)では、コンテナの形状や姿勢によっては、重力の影響により作動流体(作動媒体)の液だまりに偏りが生じることがある。液だまりに偏りが生じると、ウィックにより作動流体(作動媒体)が回収できない場合が生じる。また、液だまりの周囲は低温となるので、放熱モジュール(熱拡散デバイス)の面内温度均一性に偏りが生じる。
ウィックにより作動流体(作動媒体)が回収できなかったり、放熱モジュール(熱拡散デバイス)の面内温度均一性に偏りが生じると、最大熱輸送量が低下するという問題が生じる。
【0008】
ウィックにより作動流体(作動媒体)が回収できない問題を解消するためにウィックの数を増やしたり、1つのウィックを長く引き回すことも考えられるが、液だまりに偏りができるという問題は解消することができない。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、熱拡散デバイスの形状や姿勢により液だまりに偏りが生じることを防止することにより、面内温度均一性を高くし、最大熱輸送量が低下しにくい熱拡散デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の熱拡散デバイスは、内部空間を有し、厚さ方向に対向する第1内壁面及び第2内壁面を備える筐体と、前記内部空間に封入された作動媒体と、前記内部空間に配置された第1ウィック及び第2ウィックと、前記内部空間に配置された第1端部と第2端部とを有する非通気性の仕切り壁と、を備え、前記第1ウィック及び第2ウィックの各々は、前記厚さ方向に垂直な方向に沿い、前記筐体の前記第1内壁面及び前記第2内壁面に接する部分を有し、前記筐体の内部空間には、蒸気流路が形成されており、前記仕切り壁の第2端部は、前記筐体の内側面と接続しており、前記厚さ方向から前記内部空間を平面視した際に、前記仕切り壁は前記第1ウィックと前記第2ウィックとの間に挟まれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱拡散デバイスの形状や姿勢により液だまりに偏りが生じることを防止することにより、面内温度均一性を高くし、最大熱輸送量が低下しにくい熱拡散デバイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すベーパーチャンバーを、筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、従来のベーパーチャンバーを、筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、従来の筐体がL字型であるベーパーチャンバーの内部構造の一例を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーを筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合の一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、従来の筐体がL字型であるベーパーチャンバーを筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの仕切り壁の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10B】
図10Bは、本発明に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの仕切り壁の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10C】
図10Cは、本発明に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの仕切り壁の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10D】
図10Dは、本発明に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの仕切り壁の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の熱拡散デバイスについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0014】
本発明の熱拡散デバイスは、内部空間を有し、厚さ方向に対向する第1内壁面及び第2内壁面を備える筐体と、前記内部空間に封入された作動媒体と、前記内部空間に配置された第1ウィック及び第2ウィックと、前記内部空間に配置された第1端部と第2端部とを有する非通気性の仕切り壁と、を備え、前記第1ウィック及び第2ウィックの各々は、前記厚さ方向に垂直な方向に沿い、前記筐体の前記第1内壁面及び前記第2内壁面に接する部分を有し、前記筐体の内部空間には、蒸気流路が形成されており、前記仕切り壁の第2端部は、前記筐体の内側面と接続しており、前記厚さ方向から前記内部空間を平面視した際に、前記仕切り壁は前記第1ウィックと前記第2ウィックとの間に挟まれている。
【0015】
以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、「本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバー」や「本発明のベーパーチャンバー」と記載する。
【0016】
以下に、本発明の熱拡散デバイスの具体的な実施形態を示す。
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
【0017】
以下に示す図面は模式的なものであり、その寸法や縦横比の縮尺などは実際の製品とは異なる場合がある。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの一例を模式的に示す斜視図である。
【0019】
図1に示すベーパーチャンバー1は、気密状態に密閉された中空の筐体10を備える。
図1に示すように、筐体10の外壁面には、発熱素子である熱源(heat source)HSが配置される。熱源HSとしては、電子機器の電子部品、例えば中央処理装置(CPU)等が挙げられる。
【0020】
ベーパーチャンバー1は、全体として面状である。すなわち、筐体10は、全体として面状である。ここで、「面状」とは、板状及びシート状を包含し、幅方向Xの寸法(以下、幅という)及び長さ方向Yの寸法(以下、長さという)が厚さ方向Zの寸法(以下、厚さ又は高さという)に対して相当に大きい形状を意味する。例えば、幅及び長さが、厚さの10倍以上、好ましくは100倍以上である形状を意味する。
【0021】
ベーパーチャンバー1の大きさ、すなわち、筐体10の大きさは、特に限定されない。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、用途に応じて適宜設定することができる。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、各々、例えば、5mm以上500mm以下、20mm以上300mm以下又は50mm以上200mm以下である。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
ベーパーチャンバーが矩形以外の形状であるとき、ベーパーチャンバーの幅及び長さは、幅方向及び長さ方向における最大値として定める。
【0022】
筐体10は、外縁部が接合された対向する第1シート11及び第2シート12から構成されることが好ましい。第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、ベーパーチャンバーとして用いるのに適した特性、例えば熱伝導性、強度、柔軟性、可撓性等を有するものであれば、特に限定されない。第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、好ましくは金属であり、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、又はそれらを主成分とする合金等であり、特に好ましくは銅である。第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、好ましくは同じである。
【0023】
筐体10が第1シート11及び第2シート12から構成される場合、第1シート11及び第2シート12は、これらの外縁部において互いに接合される。かかる接合の方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー溶接、抵抗溶接、拡散接合、ロウ接、TIG溶接(タングステン-不活性ガス溶接)、超音波接合又は樹脂封止を用いることができる。好ましくはレーザー溶接、抵抗溶接又はロウ接を用いることができる。
【0024】
第1シート11及び第2シート12の厚さは、特に限定されないが、各々、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは30μm以上100μm以下、さらに好ましくは40μm以上60μm以下である。第1シート11及び第2シート12の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1シート11及び第2シート12の各シートの厚さは、全体にわたって同じであってもよく、一部が薄くてもよい。
【0025】
第1シート11及び第2シート12の形状は、特に限定されない。例えば、第1シート11は、厚みが一定の平板形状であり、第2シート12は、外縁部が外縁部以外の部分よりも厚い形状であってもよい。
【0026】
あるいは、第1シート11は、厚みが一定の平板形状であり、第2シート12は、厚みが一定で、かつ、外縁部に対して外縁部以外の部分が外側に凸の形状であってもよい。この場合、筐体10の外縁部に凹みが形成される。そのため、ベーパーチャンバーを搭載する際などに外縁部の凹みを利用することができる。また、外縁部の凹みに他の部品などを配置することができる。
【0027】
ベーパーチャンバー1全体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは50μm以上500μm以下である。
【0028】
厚さ方向Zから見た筐体10の平面形状は、長さ方向Yが長手方向となる矩形形状である。
なお、本発明に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーでは、筐体の形状は特に限定されず、例えば、L字型、C字型(コの字型)、階段型などであってもよい。
また、筐体はその平面形状の図形の内部に空間(貫通口)を有してもよい。筐体の平面形状は、ベーパーチャンバーの用途、ベーパーチャンバーの組み入れ箇所の形状、近傍に存在する他の部品に応じた形状であってもよい。
【0029】
次に、ベーパーチャンバー1の内部構造について説明する。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図2のB-B線断面図である。
【0030】
図2及び
図3に示すように、ベーパーチャンバー1の筐体10は、内部空間13を有し、厚さ方向Zに対向する第1内壁面11a及び第2内壁面12aを備える。
以下の説明において、便宜上、
図2における筐体10の上側の面を上面10U、左側の面を左側面10L、右側の面を右側面10R、下側の面を底面10Bと記載する。
なお、本発明のベーパーチャンバー1の使用時の姿勢は、特に限定されず、上面10Uを鉛直方向上側にして使用しなければならないものではない。
また、上面10U、左側面10L、右側面10R及び底面10Bは、いずれも、内部空間13を形成する筐体10の内側面である。
【0031】
図2に示すように、内部空間13には、作動媒体20が封入されている。
作動媒体20は、筐体10内の環境下において気-液の相変化を生じ得るものであれば特に限定されず、例えば、水、アルコール類、代替フロン等を用いることができる。例えば、作動媒体は水性化合物であり、好ましくは水である。
【0032】
図2に示すように、筐体10の第1領域13aには、封入した作動媒体20を蒸発させる蒸発部(evaporation portion)EPが設定されている。筐体10の内部空間13のうち、熱源HSの近傍であって熱源HSによって加熱される部分が、蒸発部EPに相当する。
【0033】
図2に示すように、内部空間13は、少なくとも第1領域13a、第2領域13b、第3領域13c及び第4領域13dを含む。
【0034】
第1領域13aと第2領域13bとは連続するように隣り合っている。
第1領域13aと第3領域13cとは連続するように隣り合っている。
第1領域13aと第4領域13dとは連続するように隣り合っている。
【0035】
第2領域13bと第3領域13cとは非通気性の第1仕切り壁14aを挟んで隣あっている。
第3領域13cと第4領域13dとは非通気性の第2仕切り壁14bを挟んで隣り合っている。
【0036】
第1仕切り壁14aは、第1端部14a1及び第2端部14a2を有し、第1端部14a1は、第1領域13aと接しており、第2端部14a2は、底面10Bと接続している。
第2仕切り壁14bは、第1端部14b1及び第2端部14b2を有し、第1端部14b1は、第1領域13aと接しており、第2端部14b2は、底面10Bと接続している。
【0037】
つまり、第2領域13bは、左側面10L、底面10B及び第1仕切り壁14aに囲まれた領域である。なお、第1領域13aと第2領域13bとは、左側面10Lと第1仕切り壁14aの第1端部14a1との最短距離を結ぶ境界により区別される。
また、第3領域13cは、第1仕切り壁14a、底面10B及び第2仕切り壁14bに囲まれた領域である。なお、第1領域13aと第3領域13cとは、第1仕切り壁14aの第1端部14a1と第2仕切り壁14bの第1端部14b1とを結ぶ境界により区別される。
また、第4領域13dは、第2仕切り壁14b、底面10B及び右側面10Rに囲まれた領域である。なお、第1領域13aと第4領域13dとは、第2仕切り壁14bの第1端部14b1と右側面10Rとの最短距離を結ぶ境界により区別される。
また、第1領域13aは、左側面10L、上面10U及び右側面10Rに囲まれた領域である。なお、第1領域13aと、第2領域13b、第3領域13c及び第4領域13dとの境界は上記の通りである。
【0038】
なお、
図2では、第1仕切り壁14aの第1端部14a
1及び第2仕切り壁14bの第1端部14b
1は、蒸発部EPから離れて形成されているが、本発明のベーパーチャンバーでは、各仕切り壁の第1端部は、蒸発部と接するように配置されていてもよい。
【0039】
図3に示すように、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは、第1内壁面10aから第2内壁面12aまで厚さ方向Zに連続して形成されている。
【0040】
第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bの幅(
図3中、幅方向Xの幅)は、200μm以上1000μm以下であることが好ましく、500μm以上600μm以下であることがより好ましい。
【0041】
第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは、非通気性であれば特に限定されないが、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、又はそれらを主成分とする合金等であることが好ましい。また、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは、第1シート11及び第2シート12と同じ材料で構成されることが好ましい。
第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bを構成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、好ましくは同じである。
また、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bと、第1シート11及び第2シート12とは同じ材料であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは、板材をレーザー溶接、抵抗溶接、拡散接合、ロウ接、TIG溶接(タングステン-不活性ガス溶接)、超音波接合又は樹脂接合することにより形成してもよい。
また、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは第1シート11及び第2シート12をエッチングして形成してもよい。
また、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは焼結金属を印刷し、焼結することにより形成してもよい。
【0043】
図2に示すように内部空間13には、ウィック35が配置されている。
ウィック35は、第1領域13aから第2領域13bにかけて形成された第1ウィック35aと、第1領域13aから第3領域13cにかけて形成された第2ウィック35bと、第1領域13aから第4領域13dにかけて形成された第3ウィック35cとを含む。
【0044】
第1ウィック35aは、第2領域13bの底面10B及び左側面10Lに沿って形成されている。
第2ウィック35bは、第3領域13cの底面10B及び第1仕切り壁14aに沿って形成されている。
第3ウィック35cは、第4領域13dの底面10B及び右側面10Rに沿って形成されている。
【0045】
ウィック35は、第1ウィック35a、第2ウィック35b及び第3ウィック35cの一方の端部が、蒸発部EPに届くように配置されている。
なお、第1ウィック35a、第2ウィック35b及び第3ウィック35cの他方の端部周辺の領域は、蒸発部EPから離れた位置であり、蒸発した作動媒体を凝縮させる凝縮部となる。
【0046】
図3に示すように、第1ウィック35a、第2ウィック35b及び第3ウィック35cは、厚さ方向Zに垂直な方向に沿い、筐体10の第1内壁面11a及び第2内壁面12aを内側に接する部分を有する。
【0047】
各ウィック35は、第1多孔体41と第2多孔体42とを含む。これらの多孔体は、毛細管力によって作動媒体20を輸送する機能を有する。
また、各ウィック35を構成する第1多孔体41及び第2多孔体42は、各々、筐体10の第1内壁面11a及び第2内壁面12aに接する部分を有する。これらの多孔体を筐体10の内部空間13に配置することにより、筐体10の機械的強度を確保しつつ、筐体10外部からの衝撃を吸収することができる。
各ウィック35を構成する第1多孔体41及び第2多孔体42の厚さは、筐体10の内部空間13の厚さとほぼ同じである。
筐体10の内部空間13において、第1ウィック35aと第1仕切り壁14aとの間、第2ウィック35bと第2仕切り壁14bとの間、及び、第3ウィック35cと第2仕切り壁14bとの間には、気相の作動媒体20が流通する蒸気流路50が形成されている。
【0048】
第1多孔体41及び第2多孔体42としては、例えば、エッチング加工又は金属加工により形成される金属多孔膜、メッシュ、不織布、焼結体、その他の多孔体などが用いられる。ウィックの材料となるメッシュは、例えば、金属メッシュ、樹脂メッシュ、もしくは表面コートしたそれらのメッシュから構成されるものであってよく、好ましくは銅メッシュ、ステンレス(SUS)メッシュ又はポリエステルメッシュから構成される。ウィックの材料となる焼結体は、例えば、金属多孔質焼結体、セラミックス多孔質焼結体から構成されるものであってよく、好ましくは銅又はニッケルの多孔質焼結体から構成される。
ウィックの材料となるその他の多孔体は、例えば、金属多孔体、セラミックス多孔体、樹脂多孔体から構成されるもの等であってもよい。
なお、メッシュ、不織布及び焼結体も、本明細書においては多孔体に含まれる。
【0049】
図3に示すように、各ウィック35において、第1多孔体41と第2多孔体42との間には、第1多孔体41及び第2多孔体42が延びる方向に沿って間隔が設けられることにより液溜まり流路51が形成されている。液溜まり流路51は、液相の作動媒体20が流通する液体流路として利用することができる。ウィック35がこのような形状であると、熱輸送効率を向上させることができる。
【0050】
次に、ベーパーチャンバー1を用いる場合の効果について説明する。
詳しくは後述するが、第1仕切り壁及び第2仕切り壁が形成されていない従来のベーパーチャンバーは姿勢により液だまりが一か所に偏って形成される場合がある。
しかし、ベーパーチャンバー1ではこのような液だまりが一か所に偏って形成されることを防ぐことができる。
この効果を以下に図面を用いて説明する。
図4は、
図1に示すベーパーチャンバーを、筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合の一例を模式的に示す断面図である。
【0051】
図4に示すように、ベーパーチャンバー1を、筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合、底面10B及び第1仕切り壁14aとの接続部、底面10B及び第2仕切り壁14bとの接続部、及び、右側面10Rの接続部に、液相の作動媒体20がたまりやすい。
このような液相の作動媒体20は、第1ウィック35a、第2ウィック35b及び第3ウィック35cにより速やかに回収される。
つまり、ベーパーチャンバー1では、液相の作動媒体20が一か所に偏ってたまりにくい。
そのため、ベーパーチャンバー1の面内温度均一性が保たれ、最大熱輸送量が低下することを防ぐことができる。
【0052】
また、気相の作動媒体20は、重力の影響を受けるものの、第2領域13b、第3領域13c及び第4領域13dにほぼ均等に移動する。
第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは非通気性なので、気相の作動媒体20は、第1仕切り壁14aを通じて第2領域13bと第3領域13cとを行き来できず、第2仕切り壁14bを通じて第3領域13cと第4領域13dとを行き来できない。
そのため、第2領域13b、第3領域13c及び第4領域13dのいずれかの領域に作動媒体20が偏ることも防ぐことができる。
すなわち、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは非通気性であることも、ベーパーチャンバー1の面内温度均一性を保つことに貢献している。
【0053】
また、作動媒体20が水である場合、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bは疎水性であることが好ましい。
第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bが疎水性である場合、水は、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bに付着しにくくなる。また、水が液相になった場合、水は、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bに沿って速やかに移動し、各ウィックに回収されやすくなる。
【0054】
図2に示すベーパーチャンバー1では、第2領域13b、第3領域13c及び第4領域13dに、それぞれ1本の第1ウィック35a、第2ウィック35b及び第3ウィック35cが配置されていたが、本発明の第1実施形態に係るベーパーチャンバーでは、各領域に複数のウィックが配置されていてもよい。
複数のウィックを配置することにより、作動媒体の回収効率が向上する。
【0055】
なおウィックの数を多くしすぎると、蒸気流路の占有面積比率が下がり、蒸気拡散圧力の損失が大きくなる。その結果、最大熱輸送量が低下しやすくなる。
内部空間に占めるウィックの好ましい割合は以下の通りである。
【0056】
ベーパーチャンバー1では、厚さ方向Zから内部空間13を平面視した際、第2領域13bの面積に占める第1ウィック35aの面積の割合は60%以下であることが好ましく30%以下であることがより好ましい。
ベーパーチャンバー1では、厚さ方向Zから内部空間13を平面視した際、第3領域13cの面積に占める第2ウィック35bの面積の割合は60%以下であることが好ましく30%以下であることがより好ましい。
ベーパーチャンバー1では、厚さ方向Zから内部空間13を平面視した際、第4領域13dの面積に占める第3ウィック35cの面積の割合は60%以下であることが好ましく30%以下であることがより好ましい。
【0057】
第2領域13bの面積に占める第1ウィック35aの面積の割合が60%を超えると、蒸気流路の占有面積比率が下がり、蒸気拡散圧力の損失が大きくなる。その結果、最大熱輸送量が低下しやすくなる。
第3領域13cの面積に占める第2ウィック35bの面積の割合、及び、第4領域13dの面積に占める第3ウィック35cの面積の割合についても同様のことがいえる。
【0058】
なお、第1仕切り壁及び第2仕切り壁が形成されていない従来のベーパーチャンバーを使用する場合の問題点も以下に説明する。
【0059】
図5は、従来のベーパーチャンバーを、筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示すベーパーチャンバー1´は、第1仕切り壁14a及び第2仕切り壁14bが形成されておらず、第1ウィック35a、第2ウィック35b及び第3ウィック35cに替えて、第1ウィック35a´、第2ウィック35b´及び第3ウィック35c´が配置されていること以外は、上記ベーパーチャンバー1と同じ構成である。
第1ウィック35a´、第2ウィック35b´及び第3ウィック35c´は、蒸発部EPから底面10B近傍まで延びるように形成されている。
左側面10Lと第1ウィック35a´との間、第1ウィック35a´と第ウィック35b´との間、第2ウィック35b´と第3ウィック35c´との間、及び、第3ウィック35c´と右側面10Rとの間には蒸気流路50が形成されている。
【0060】
ベーパーチャンバー1´が、右側面10Rが鉛直方向下側になるような姿勢で使用される場合、重力及び蒸気流路50を通る気相の作動媒体20の圧力(
図5中、矢印Pで示す)により、液相の作動媒体20が底面10B及び右側面10Rの接続部に偏って液だまりが形成される。
このような液だまりに偏りが生じると、第3ウィック35c´により作動媒体20は回収できるものの、第1ウィック35a´及び第2ウィック35b´により作動媒体20が回収できなくなる。液だまりの周囲は低温となるので、ベーパーチャンバー1´の面内温度均一性に偏りが生じる。
このような場合、ベーパーチャンバー1´の最大熱輸送量が低下する。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーについて説明する。
図6は、本発明の第2実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの一例を模式的に示す断面図である。
図6に示すベーパーチャンバー101では、厚さ方向Zから見た筐体110の平面形状はL字型である。
以下の説明において、便宜上、
図6における筐体110の上側の面を上面110U、左側の面を左側面110L、右側の面を右側面110R、下側の面を底面110Bと記載する。
筐体110では、右側面110Rがクランク状に形成されている。
なお、本発明のベーパーチャンバー101の使用時の姿勢は、特に限定されず、上面110Uを鉛直方向上側にして使用しなければならないものではない。
また、上面110U、左側面110L、右側面110R及び底面110Bは、いずれも、内部空間113を形成する筐体110の内側面である。
【0062】
図6に示すように、内部空間113は、少なくとも第1領域113a、第2領域113b、第3領域113c及び第4領域113dを含む。
【0063】
第1領域113aと第2領域113bとは連続するように隣り合っている。
第1領域113aと第3領域113cとは連続するように隣り合っている。
第1領域113aと第4領域113dとは連続するように隣り合っている。
【0064】
第2領域113bと第3領域113cとは非通気性の第1仕切り壁114aを挟んで隣り合っている。
第3領域113cと第4領域113dとは非通気性の第2仕切り壁114bを挟んで隣り合っている。
【0065】
第1仕切り壁114aは、第1端部114a1及び第2端部114a2を有し、第1端部114a1は、第1領域113aと接しており、第2端部114a2は、底面110Bと接続している。
第2仕切り壁114bは、第1端部114b1及び第2端部114b2を有し、第1端部114b1は、第1領域113aと接しており、第2端部114b2は、底面110Bと接続している。
【0066】
つまり、第2領域113bは、左側面110L、底面110B及び第1仕切り壁114aに囲まれた領域である。なお、第1領域113aと第2領域113bとは、左側面110Lと第1仕切り壁114aの第1端部114a1との最短距離を結ぶ境界により区別される。
また、第3領域113cは、第1仕切り壁114a、底面110B及び第2仕切り壁114bに囲まれた領域である。なお、第1領域113aと第3領域13cとは、第1仕切り壁114aの第1端部114a1と第2仕切り壁114bの第1端部114b1とを結ぶ境界により区別される。
また、第4領域113dは、第2仕切り壁114b、底面110B及び右側面110Rに囲まれた領域である。なお、第1領域113aと第4領域113dとは、第2仕切り壁114bの第1端部114b1と右側面110Rとの最短距離を結ぶ境界により区別される。
また、第1領域113aは、左側面110L、上面110U及び右側面110Rに囲まれた領域である。なお、第1領域113aと、第2領域113b、第3領域113c及び第4領域113dとの境界は上記の通りである。
【0067】
第1仕切り壁114a及び第2仕切り壁114bは、ベーパーチャンバー101を、上面110Uが鉛直方向下側に位置するようにした際に、液相の作動媒体20が重力により第1領域113aに移動できるように屈曲されている。
つまり、第1仕切り壁114a及び第2仕切り壁114bは、底面110Bから蒸発部EPに向かって屈曲して形成されている。
【0068】
内部空間113には、ウィック135が配置されている。
ウィック135は、第1領域113aから第2領域113bにかけて形成された第1ウィック135aと、第1領域113aから第3領域113cにかけて形成された第2ウィック135bと、第1領域113aから第4領域113dにかけて形成された第3ウィック135cとを含む。
【0069】
第1ウィック135aは、第2領域113bの底面110B、左側面110L及び第1仕切り壁114aの一部に沿って形成されている。
第2ウィック135bは、第3領域113cの底面110B、第1仕切り壁114a及び第2仕切り壁114bの一部に沿って形成されている。
第3ウィック135cは、第4領域113dの底面110B及び右側面110Rに沿って形成されている。
【0070】
次に、ベーパーチャンバー101を、底面110Bが鉛直方向下側に位置するような姿勢で使用した場合の効果を説明する。
【0071】
図6に示すベーパーチャンバー101では、第1仕切り壁114a及び第2仕切り壁114bがあるので、一か所に偏って液だまりが形成されにくい。
また、第2領域113b、第3領域113c及び第4領域113dに生じた液相の作動媒体20は、それぞれ、第1ウィック135a、第2ウィック135b及び第3ウィック135cにより速やかに回収される。
そのため、ベーパーチャンバー1の面内温度均一性が保たれ、最大熱輸送量が低下することを防ぐことができる。
【0072】
なお、第1仕切り壁及び第2仕切り壁が形成されていない従来のベーパーチャンバーを使用する場合の問題点も以下に説明する。
【0073】
図7は、従来の筐体がL字型であるベーパーチャンバーの内部構造の一例を模式的に示す断面図である。
図7に示すベーパーチャンバー101´は、第1仕切り壁114a及び第2仕切り壁114bが形成されておらず、第1ウィック135a、第2ウィック135b及び第3ウィック135cに替えて、第1ウィック135a´、第2ウィック135b´及び第3ウィック135c´が配置されていること以外は、上記ベーパーチャンバー101と同じ構成である。
第1ウィック135a´は、蒸発部EPから底面110B近傍まで延びるように形成されている。
第2ウィック135b´は、蒸発部EPから底面110Bに向かって延び、途中で屈曲して底面110Bと右側面110Rとの接続部近傍まで延びるように形成されている。
第3ウィック135c´は、右側面110Rに沿ってクランク状に形成されている。
第1ウィック135a´と第ウィック135b´との間、及び、第2ウィック135b´と第3ウィック135c´との間には蒸気流路50が形成されている。
【0074】
底面110Bが鉛直方向下側に位置するような姿勢でベーパーチャンバー101´を使用する場合、重力及び蒸気流路50を通る気相の作動媒体20の圧力(
図7中、矢印Pで示す)により、液相の作動媒体20が底面110B及び右側面110Rの接続部に偏って液だまりが形成される。
このような液だまりに偏りが生じると、第2ウィック135b´及び第3ウィック135c´により作動媒体20は回収できるものの、第1ウィック135a´により作動媒体20が回収できなくなる。液だまりの周囲は低温となるので、ベーパーチャンバー101´の面内温度均一性に偏りが生じる。
このような場合、ベーパーチャンバー101´の最大熱輸送量が低下する。
【0075】
次に、右側面110Rが鉛直方向下側に位置するようにベーパーチャンバー101又はベーパーチャンバー101´を使用する場合について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーを筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合の一例を模式的に示す断面図である。
図9は、従来の筐体がL字型であるベーパーチャンバーを筐体の右側面が鉛直方向下側に位置するようにして使用する場合の一例を模式的に示す断面図である。
【0076】
図8に示すように、右側面110Rが鉛直方向下側に位置するようにベーパーチャンバー101を使用した場合、底面110Bと第1仕切り壁114aとの接続部、底面110Bと第2仕切り壁114bとの接続部、及び、底面110Bと右側面110Rとの接続部に、液相の作動媒体20がたまりやすい。
このような液相の作動媒体20は、第1ウィック135a、第2ウィック135b及び第3ウィック135cにより速やかに回収される。
つまり、ベーパーチャンバー101では、液相の作動媒体20が一か所に偏ってたまりにくい。
そのため、ベーパーチャンバー101の面内温度均一性が保たれ、最大熱輸送量が低下することを防ぐことができる。
【0077】
一方、
図9に示すように、右側面110Rが鉛直方向下側に位置するようにベーパーチャンバー101´を使用した場合、重力及び蒸気流路50を通る気相の作動媒体20の圧力(
図9中、矢印Pで示す)により、液相の作動媒体20が底面110Bと右側面110Rの接続部に偏って液だまりが形成される。
このような液だまりに偏りが生じると、第3ウィック135c´により作動媒体20は回収できるものの、第1ウィック135a´及び第2ウィック135b´により作動媒体20が回収できなくなる。液だまりの周囲は低温となるので、ベーパーチャンバー101´の面内温度均一性に偏りが生じる。
このような場合、ベーパーチャンバー101´の最大熱輸送量が低下する。
【0078】
[その他の実施形態]
本発明の第1実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーでは、仕切り壁は、一体物の壁として形成されており、第1内壁面から第2内壁面まで厚さ方向に連続して形成されていた。
しかし、本発明に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーでは、仕切り壁は第1内壁面に形成された壁と、第2内壁面に形成された壁の2つの壁から形成されていてもよい。
また、本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーでは、仕切り壁は、第1内壁面から第2内壁面までの厚さ方向にかけて形成されており、仕切り壁は、第1内壁面から第2内壁面までの間に非連続領域を有していてもよい。
【0079】
このような仕切り壁の例について図面を用いて説明する。
図10A~
図10Dは、本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーの仕切り壁の一例を模式的に示す断面図である。
【0080】
図10Aに示す仕切り壁214は、第1内壁面11aから第2内壁面12aの厚さ方向Zにかけて形成された仕切り壁214Aと、第2内壁面12aから第1内壁面11aの厚さ方向Zにかけて形成された仕切り壁214Bとからなる。
幅方向Xにおける、仕切り壁214Aの形成位置と仕切り壁214Bの形成位置とはずれており、仕切り壁214Aと仕切り壁214Bとは接触している。
【0081】
図10Bに示す仕切り壁314は、第1内壁面11aから第2内壁面12aの厚さ方向Zにかけて形成されており、仕切り壁314の端部と、第2内壁面12aとの間には、非連続領域315が形成されている。
【0082】
図10Cに示す仕切り壁414は、第1内壁面11aから第2内壁面12aの厚さ方向Zにかけて形成された仕切り壁414Aと、第2内壁面12aから第1内壁面11aの厚さ方向Zにかけて形成された仕切り壁414Bとからなる。
仕切り壁414Aの端部と、仕切り壁414Bの端部との間には、非連続領域415が形成されている。
幅方向Xにおける、仕切り壁414Aの形成位置と仕切り壁414Bの形成位置とは同じである。
【0083】
図10Dに示す仕切り壁514は、第1内壁面11aから第2内壁面12aの厚さ方向Zにかけて形成された仕切り壁514Aと、第2内壁面12aから第1内壁面11aの厚さ方向Zにかけて形成された仕切り壁514Bとからなる。
幅方向Xにおける仕切り壁514Aの形成位置と仕切り壁514Bの形成位置とはずれている。
仕切り壁514Aと仕切り壁514Bとの間には、非連続領域515が形成されている。
【0084】
図10B~
図10Dに示すように非連続領域が形成されていたとしても、仕切り壁は、作動媒体が一か所にたまることを防ぐ効果を奏する。
そのため、このようなベーパーチャンバーであっても最大熱輸送量は低下しにくい。
【0085】
本発明の第1実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバー及び第2実施形態に係る熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーでは、筐体の内部空間は、第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域により形成されていた。
しかし、本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーでは、筐体の内部空間は、第1領域、第2領域及び第3領域のみから形成されていてもよい。
また、本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーでは、筐体の内部空間は、さらに他の領域を含んでいてもよい。
なお、当該他の領域は、第1領域と連続するように隣り合っており、かつ、さらに他の領域と仕切り壁を挟んで隣り合うことになる。また、このような他の領域には、第1領域から当該他の領域にかけてウィックが形成されることになる。
【0086】
[ベーパーチャンバーを備える電子機器]
本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーは、放熱を目的として電子機器に搭載され得る。したがって、本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーと、上記ベーパーチャンバーを構成する筐体の外壁面に取り付けられた電子部品と、を備える電子機器として使用することができる。
本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーは上記のとおり、外部動力を必要とせず自立的に作動し、作動媒体の蒸発潜熱及び凝縮潜熱を利用して、二次元的に高速で熱を拡散することができる。そのため、本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーを備える電子機器により、電子機器内部の限られたスペースにおいて、放熱を効果的に実現することができる。
電子部品は、
図1に示す熱源HSに相当する。
【0087】
電子機器としては、例えばスマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、ゲーム機器、ウェアラブルデバイス等が挙げられる。また、冷却すべき対象物である電子部品としては、例えば中央処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱素子が挙げられる。
【0088】
電子部品は、筐体の外壁面に直接取り付けられてもよく、あるいは、熱伝導性の高い粘着剤、シート、テープ等の他の部材を介して取り付けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の熱拡散デバイスであるベーパーチャンバーは、携帯情報端末等の分野において、広範な用途に使用できる。例えば、CPU等の熱源の温度を下げ、電子機器の使用時間を延ばすために使用することができ、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等に使用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1、1´、101、101´ ベーパーチャンバー
10、110 筐体
10U、110U 上面
10L、110L 左側面
10R、110R 右側面
10B、110B 底面
11 第1シート
11a 第1内壁面
12 第2シート
12a 第2内壁面
13、113 内部空間
13a、113a 第1領域
13b、113b 第2領域
13c、113c 第3領域
13d、113d 第4領域
14a、114a 第1仕切り壁
14a1、114a1 第1仕切り壁の第1端部
14a2、114a2 第1仕切り壁の第2端部
14b、114b 第2仕切り壁
14b1、114b1 第2仕切り壁の第1端部
14b2、114b2 第2仕切り壁の第2端部
20 作動媒体
35、135 ウィック
35a、35a´、135a、135a´ 第1ウィック
35b、35b´、135b、135b´ 第2ウィック
35c、35c´、135c、135c´ 第3ウィック
41 第1多孔体
42 第2多孔体
50 蒸気流路
51 液溜まり流路
214、214A、214B、314、414、414A、414B、514、514A、514B 仕切り壁
315、415、515 非連続領域