(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】導電性ペースト、硬化物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240402BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240402BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20240402BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240402BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240402BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L21/52 E
C09J4/02
C09J9/02
C09J11/04
C09J133/04
H01B1/22 A
(21)【出願番号】P 2023527626
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2022022051
(87)【国際公開番号】W WO2022259905
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2021094962
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】日下 慶一
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-057825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
C09J 4/02
C09J 9/02
C09J 11/04
C09J 133/04
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性充填剤(a)と、
バインダー(b)と、
を含み、
バインダー(b)が、下記一般式(1)で表される末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)と、
さらに(メタ)アクリレート化合物(b2)(前記(b1)を除く)およびアクリル樹脂(b3)から選択される少なくとも1種と、を含む、導電性ペースト。
【化1】
(一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、mは1~40の整数、nは0~10の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)の水酸基価換算による数平均分子量が400以上である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)は、R:メチル基、m:9、n:0で表されるポリオキシプロピレンモノメタクリレート、R:メチル基、m:17、n:0で表されるポリオキシプロピレンモノメタクリレート、R:メチル基、m:34、n:0で表されるポリオキシプロピレンモノメタクリレート、R:水素原子、m:17、n:0で表されるポリオキシプロピレンモノメタクリレート、またはR:メチル基、m:1、n:6で表されるプロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレートである、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)は、nが0であり、かつ水酸基価換算による数平均分子量が800以上である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
(メタ)アクリレート化合物(b2)は、単官能アクリルモノマーおよび多官能アクリルモノマーから選択される少なくとも1種を含み、
前記単官能アクリルモノマーは、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングルコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、グリシジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、および2-(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェートから選択される少なくとも1種であり、
前記多官能アクリルモノマーは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アタクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、4,4'-イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、1,4-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N'-ジ(メタ)アクリロイルエチレンジアミン、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、および1,4-ビス((メタ)アクリロイル)ピペラジンから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
アクリル樹脂(b3)は、前記アクリルモノマーの重合体または前記アクリルモノマーと他のモノマーとの共重合体であり、
前記他のモノマーは、エチレン、炭素原子数3~20の直鎖状α-オレフィン、および炭素数8~20の芳香族ビニル化合物から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
バインダー(b)は、末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)、(メタ)アクリレート化合物(b2)およびアクリル樹脂(b3)を含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
バインダー(b)(100質量%)は、末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)を5質量%以上60質量%以下の量で含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
バインダー(b)(100質量%)は、(メタ)アクリレート化合物(b2)を20質量%以上70質量%以下の量で含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項10】
バインダー(b)(100質量%)は、アクリル樹脂(b3)を5質量%以上50質量%以下の量で含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の導電性ペーストを硬化して得られる硬化物。
【請求項12】
基材と、
前記基材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、請求項1~10のいずれかに記載の導電性ペーストを硬化してなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、硬化物および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の放熱性を高めることを意図して、金属粒子を含む熱硬化性樹脂組成物を用いて半導体装置を製造する技術が知られている。樹脂よりも大きな熱伝導率を有する金属粒子を熱硬化性樹脂組成物に含めることで、その硬化物の熱伝導性を大きくすることができる。
【0003】
半導体装置への適用の具体例として、以下の特許文献1~2のように、金属粒子を含む組成物を用いて、半導体素子と基板(支持部材)とを接着/接合する技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、銀粒子と、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂と、分散媒とを含む接着剤組成物が開示されている。当該文献には、当該接着剤組成物が、充分に高い接着力かつ高い熱伝導率を有すると記載されている。
【0005】
特許文献2には、銀粒子と、熱硬化性樹脂と、アクリル樹脂等のバインダー樹脂とを含有する樹脂組成物が開示されている。当該文献には、当該樹脂組成物からなる熱伝導性接着用シートを用いることにより、低温焼結条件でも熱伝導性が高く、信頼性に優れた半導体装置を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-031227号公報
【文献】特開2021-036022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~2に記載の組成物を用いて、半導体素子と、基板とを接合する場合、接着力が十分ではなく、半導体素子をリードフレーム等にダイボンディングして半導体装置を製造し、この半導体装置を基板上に実装した状態で基板を加熱して基板に接合する時(リフローソルダリング時)に、当該組成物からなる接着層が剥離することがあった。さらに、当該文献に記載の組成物からなる接着層は、室温(25℃)における弾性率が高く、半導体素子との接続信頼性に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、所定の(メタ)アクリレート化合物をバインダーとして含む導電性ペーストは半導体素子、基板およびリードフレームとの密着性に優れ、さらに当該導電性ペーストを用いて製造される半導体装置が接続信頼性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0009】
本発明によれば、
導電性充填剤(a)と、
バインダー(b)と、
を含み、
バインダー(b)が、末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)を含む、導電性ペーストが提供される。
【0010】
本発明によれば、
前記導電性ペーストを硬化して得られる硬化物が提供される。
【0011】
本発明によれば、
基材と、
前記基材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、前記導電性ペーストを硬化してなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体素子、基板およびリードフレームとの密着性に優れた導電性ペースト、および当該導電性ペーストを用いて製造される接続信頼性に優れた半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
【
図3】実施例におけるチップ剥離強度の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「a~b」は特に断りがなければ「a以上」から「b以下」を表す。
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
【0015】
本実施形態の導電性ペーストは、導電性充填剤(a)と、バインダー(b)と、を含む。
【0016】
[導電性充填剤(a)]
本実施形態の導電性ペーストは、導電性充填剤(a)を含むことができる。
導電性充填剤(a)は、導電性ペーストに対して熱処理が施されることにより、凝集して金属粒子連結構造を形成する。すなわち、導電性ペーストを加熱して得られるダイアタッチペースト層において、金属粉同士は互いに凝集して存在する。これにより、導電性や熱伝導性、基材への密着性が発現される。
【0017】
本実施形態の導電性ペーストに用いられる導電性充填剤(a)としては、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉、銅粉、またはニッケル粉、あるいはこれらの合金を用いることができる。導電性および取扱い容易性の観点から銀粉を用いることが好ましい。
【0018】
導電性充填剤(a)の形状は、特に限定されないが、たとえば球状、フレーク状、および鱗片状等を挙げることができる。本実施形態においては、導電性充填剤(a)が球状粒子を含むことがより好ましい。これにより、導電性充填剤(a)の凝集の均一性を向上させることができる。また、コストを低減させる観点からは、導電性充填剤(a)がフレーク状粒子を含む態様を採用することもできる。さらには、コストの低減と凝集均一のバランスを向上させる観点から、導電性充填剤(a)が球状粒子とフレーク状粒子の双方を含んでいてもよい。
【0019】
導電性充填剤(a)の平均粒径(D50)は、たとえば0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.3μm以上8μm以下、より好ましくは0.6μm以上5μm以下である。導電性充填剤(a)の平均粒径が上記下限値以上であることにより、密着性が改善されるとともに、比表面積の過度な増大を抑制し、接触熱抵抗による熱伝導性の低下を抑えることが可能となる。また、導電性充填剤(a)の平均粒径が上記上限値以下であることにより、密着性が改善されるとともに、導電性充填剤間の金属粒子連結構造体の形成性を向上させることが可能となる。また、導電性ペーストのディスペンス性を向上させる観点からは、導電性充填剤(a)の平均粒径(D50)が0.3μm以上8μm以下であることが好ましく、0.6μm以上5μm以下であることがさらに好ましく、0.6μm以上2.7μm以下であることがより好ましく、0.6μm以上2.0μm以下であることが特に好ましい。なお、導電性充填剤(a)の平均粒径(D50)は、たとえば市販のレーザー式粒度分布計(たとえば、(株)島津製作所製、SALD-7000等)を用いて測定することができる。
【0020】
また、導電性充填剤(a)の最大粒径は、特に限定されないが、たとえば1μm以上50μm以下とすることができ、3μm以上30μm以下であることがより好ましく、4μm以上18μm以下であることが特に好ましい。これにより、密着性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0021】
導電性ペースト中における導電性充填剤(a)の含有量は、導電性ペーストの粘度に影響を与え、本発明の効果の観点から、たとえば導電性ペースト全体に対して30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上80質量%以下であることがより好ま
しい。
【0022】
[バインダー(b)]
本実施形態において、バインダー(b)は、末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)(以下、単に(メタ)アクリレート(b1)とも記載される。)を含む。
【0023】
(末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1))
末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)としては、当該構造を備えていれば、本発明の効果を奏する範囲で公知の(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。
【0024】
本実施形態においては、本発明の効果の観点から、(メタ)アクリレート(b1)が下記一般式(1)で表される化合物(b1-1)を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0025】
【0026】
一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
mは1~40、好ましくは1~37、より好ましくは1~35、特に好ましくは15~35の整数を表す。
nは0~10、好ましくは0~8、より好ましくは0~6の整数を表し、特に好ましくは0である。
【0027】
化合物(b1-1)の水酸基価換算による数平均分子量は、本発明の効果の観点から、400以上、好ましくは600以上、より好ましくは800以上とすることができる。
前記数平均分子量の上限値は、特に限定されないが5,000以下、好ましくは3,000以下である。
【0028】
本実施形態において、本発明の効果の観点から、化合物(b1-1)は、前記一般式(1)におけるnが0であり、かつ水酸基価換算による数平均分子量が800以上であることがより好ましい。
【0029】
本実施形態において、バインダー(b)中における(メタ)アクリレート(b1)の含有量は、バインダー(b)全体に対して5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態において、本発明の効果および得られる導電性ペーストの基材等への密着性の観点から、導電性ペースト中における化合物(b1)の含有量は、導電性ペースト全体に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
本実施形態のバインダー(b)は、さらに(メタ)アクリレート化合物(b2)およびアクリル樹脂(b3)から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0032】
((メタ)アクリレート化合物(b2))
(メタ)アクリレート化合物(b2)(前記(b1)を除く)は、導電性ペーストに含まれるバインダー樹脂の架橋反応に関与する反応性基を有する反応性希釈剤として用いられる。
【0033】
(メタ)アクリレート化合物(b2)としては、(メタ)アクリル基を1つのみ有する単官能アクリルモノマー、または(メタ)アクリル基を2つ以上有する多官能アクリルモノマーを用いることができる。
【0034】
単官能アクリルモノマーとしては、例えば、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングルコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、グリシジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、および2-(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェートなどを挙げることができる。単官能アクリルモノマーとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
単官能アクリルモノマーとしては、本発明の効果および得られる導電性ペーストの基材等への密着性の観点から、上記具体例のうち、2-フェノキシエチルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0036】
多官能アクリルモノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アタクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、4,4'-イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、1,4-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N'-ジ(メタ)アクリロイルエチレンジアミン、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、又は1,4-ビス((メタ)アクリロイル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0037】
多官能アクリルモノマーとしては、本発明の効果および得られる導電性ペーストの基材等への密着性の観点から、上記具体例のうち、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレートを用いることが好ましい。
(メタ)アクリレート化合物(b2)は、本発明の効果の観点から、単官能アクリルモノマーおよび多官能アクリルモノマーを何れも含むことがより好ましい。
【0038】
本実施形態において、バインダー(b)中における(メタ)アクリレート化合物(b2)の含有量は、バインダー(b)全体に対して20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
本実施形態において、本発明の効果および得られる導電性ペーストの基材等への密着性の観点から、導電性ペースト中における(メタ)アクリレート化合物(b2)の含有量は、導電性ペースト全体に対して2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
(アクリル樹脂(b3))
アクリル樹脂(b3)としては、1分子内にアクリル基を2個以上有する液状のものを用いることができる。
【0041】
アクリル樹脂(b3)としては、具体的には、上述したアクリルモノマーを重合または他のモノマーと共重合したものを用いることができる。
他のモノマーとしては、エチレン;プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等の炭素原子数3~20の直鎖状α-オレフィン、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ジフェニルエチレン、イソプロペニルベンゼン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン、イソプロペニルナフタレン、イソプロペニルアントラセン等の炭素数8~20の芳香族ビニル化合物;等を挙げることができる。
ここで、重合または共重合の方法としては限定されず、溶液重合など、一般的な重合開始剤および連鎖移動剤を用いる公知の方法を用いることができる。なお、アクリル樹脂としては、1種を単独で用いてもよいし、構造の異なる2種以上を用いてもよい。
【0042】
アクリル樹脂(b3)としては、例えば、その構造中にエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基およびヒドロキシル基を備えるものでもよい。かりに、アクリル樹脂が、エポキシ基をその構造中に備える場合、後述する硬化剤と反応し、硬化収縮することができる。また、かりに、アクリル樹脂がその構造中にアミノ基、カルボキシル基、または、ヒドロキシル基をその構造中に備え、主剤としてエポキシ樹脂を含む場合、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂が反応し、硬化収縮することができる。また、アクリル樹脂としては、例えば、その構造に炭素-炭素二重結合C=Cを備えるものであってもよい。かりに、アクリル樹脂がその構造に炭素-炭素二重結合を備える場合、アクリル樹脂をラジカル重合開始剤に起因する重合反応に巻き込み、硬化収縮することができる。
【0043】
上述したアクリル樹脂(b3)の市販品としては、具体的には、東亞合成社製のARUFON UG-4035、ARUFON UG-4010、ARUFON UG-4070、ARUFON UH-2000、ARUFON UH-2041、ARUFON UH-2170、ARUFON UP-1000などが挙げられる。
【0044】
本実施形態において、バインダー(b)中におけるアクリル樹脂(b3)の含有量は、バインダー(b)全体に対して5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態において、本発明の効果および得られる導電性ペーストの基材等への密着性の観点から、導電性ペースト中におけるアクリル樹脂(b3)の含有量は、導電性ペースト全体に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0046】
バインダー(b)は、本発明の効果の観点から、(メタ)アクリレート(b1)、(メタ)アクリレート化合物(b2)およびアクリル樹脂(b3)を含むことが好ましい。
すなわち、バインダー(b)(100質量%)は、
(メタ)アクリレート(b1)を、好ましくは5質量%以上60質量%以下、より好ましくは15質量%以上50質量%以下、
(メタ)アクリレート化合物(b2)を、好ましくは20質量%以上70質量%以下、より好ましくは30質量%以上60質量%以下、
アクリル樹脂(b3)を、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下、
の量で含むことができる。
【0047】
[その他の成分]
本実施形態の導電性ペーストは、上述の成分に加え、必要に応じて、当該分野で通常用いられる種々のさらなる成分を含み得る。さらなる成分としては、有機溶剤、シランカップリング剤、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤、低応力剤、無機フィラー等が挙げられるが、これらに限定されず、所望の性能に応じて選択することができる。
【0048】
有機溶剤としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリセリン等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3、5、5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)もしくはジイソブチルケトン(2、6-ジメチル-4-ヘプタノン)、γ-ブチロラクトン等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルもしくはリン酸トリペンチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタンもしくは1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;
酢酸2-(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;
2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類;
トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素類;
アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;
アセトアミドもしくはN,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;
低分子量の揮発性シリコンオイル、または揮発性有機変性シリコンオイル等が挙げられる。
【0049】
硬化促進剤は、反応性希釈剤として用いられるエポキシモノマーまたはバインダー樹脂として用いられるエポキシ樹脂と、硬化剤との反応を促進させるために用いられる。硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などが挙げられる。
【0050】
ラジカル重合開始剤としては、具体的には、アゾ化合物、過酸化物などを用いることができる。
【0051】
無機フィラーとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ等の溶融シリカ;結晶シリカ、非晶質シリカ等のシリカ;ナノシリカ;二酸化ケイ素;アルミナ;水酸化アルミニウム;窒化珪素;および窒化アルミ等が挙げられる。導電性ペーストのチキソコントロールの観点からナノシリカを用いることが好ましい。
前記ナノシリカとしては、フュームドシリカやコロイダルシリカを挙げることができる。前記ナノシリカの粒子径は、例えば1nm~100nm、好ましくは2nm~50nmである。
【0052】
本実施形態の導電性ペーストは、導電性充填剤(a)およびバインダー(b)を含み、バインダー(b)が(メタ)アクリレート(b1)、(メタ)アクリレート化合物(b2)およびアクリル樹脂(b3)を含むことが好ましい。
すなわち、本実施形態の導電性ペースト(100質量%)は、
導電性充填剤(a)を、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは40質量%以上80質量%以下、
(メタ)アクリレート(b1)を、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下、
(メタ)アクリレート化合物(b2)を、好ましくは2質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上15質量%以下、
アクリル樹脂(b3)を、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上15質量%以下、
の量で含むことができる。
【0053】
(導電性ペーストの調製)
導電性ペーストの調製方法は、特に限定されないが、たとえば上述した各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練を行い、さらに真空脱泡することにより、ペースト状の組成物を得ることができる。この際、たとえば予備混合を減圧下にて行う等、調製条件を適切に調整することによって、導電性ペーストの長期作業性を向上することができる。
【0054】
本実施形態の導電性ペーストは、用途に応じて粘度を調整することができる。導電性ペーストの粘度は、用いるバインダー樹脂の種類、希釈剤の種類、それらの配合量等を調整することにより制御することができる。本実施形態の導電性ペーストの粘度の下限値は、例えば、10Pa・s以上であり、好ましくは20Pa・s以上であり、より好ましくは30Pa・s以上である。これにより、導電性ペーストの作業性を向上させることができる。一方で、導電性ペーストの粘度の上限値は、例えば、1×103Pa・s以下であり、好ましくは5×102Pa・s以下であり、より好ましくは2×102Pa・s以下である。これにより、塗布性を向上させることができる。
【0055】
(用途)
本実施形態の導電性ペーストの用途について説明する。
本実施形態に係る導電性ペーストは、硬化することにより硬化物を得ることができる。当該硬化物は好ましくは高熱伝導性材料として用いることができ、例えば、基板と半導体素子とを接着し、高熱伝導性および高導電性を付与するために用いられる。ここで、半導体素子としては、例えば、半導体パッケージ、LEDなどが挙げられる。
【0056】
本実施形態に係る導電性ペーストから得られる硬化物(高熱伝導性材料)は、室温(25℃)で測定した弾性率(貯蔵弾性率)が200MPa以上6,000MPa以下、好ましくは300MPa以上3,000MPa以下、さらに好ましくは400MPa以上2,000MPa以下、特に好ましくは500MPa以上1,500MPa以下である。
このように本実施形態の導電性ペーストから得られる硬化物は、室温(25℃)における弾性率が低く、半導体素子、基板およびリードフレームとの密着性に優れることから接続信頼性に優れた半導体装置を提供することができる。
【0057】
本実施形態に係る導電性ペーストは、従来の導電性ペーストと比べて、接続信頼性が改善されており、製品信頼性が向上されている。これにより、発熱量が大きい半導体素子を基板に搭載する場合や半導体パッケージのサイズが小さい場合に好適に用いることができる。なお、本実施形態において、LEDとは、発光ダイオード(Light Emitting Diode)を示す。
【0058】
LEDを用いた半導体装置としては、具体的には、砲弾型LED、表面実装型(Surface Mount Device:SMD)LED、COB(Chip On Board)、Power LEDなどが挙げられる。
【0059】
なお、上記半導体パッケージの種類としては、具体的には、CMOSイメージセンサ、中空パッケージ、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FC-BGA(Flip Chip BGA)、MAP-BGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
【0060】
以下に、本実施形態に係る導電性ペーストを用いた半導体装置の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る半導体装置100は、基材30と、導電性ペーストの硬化物である接着剤層10を介して基材30上に搭載された半導体素子20とを備える。半導体素子20と基材30は、たとえばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。また、半導体素子20は、たとえば封止樹脂50により封止される。
【0061】
ここで、接着剤層10の厚さの下限値は、例えば、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストの硬化物の熱容量を向上し、放熱性を向上できる。また、接着剤層10の厚さの上限値は、例えば、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストが、放熱性を向上した上で好適な密着力を発現できる。
【0062】
図1において、基材30は、例えば、リードフレームである。この場合、半導体素子20は、ダイパッド32または基材30上に接着剤層10を介して搭載されることとなる。また、半導体素子20は、例えば、ボンディングワイヤ40を介してアウターリード34(基材30)へ電気的に接続される。リードフレームである基材30は、例えば、42アロイ、Cuフレームにより構成される。
【0063】
基材30は、有機基板や、セラミック基板であってもよい。有機基板としては、たとえばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等によって構成されるものが好ましい。なお、基材30の表面は、例えば、銀、金などの金属により被膜されていてもよい。これにより、接着剤層10と、基材30との接着性を向上できる。
【0064】
図2は、
図1の変形例であり、本実施形態に係る半導体装置100の一例を示す断面図である。本変形例に係る半導体装置100において、基材30は、たとえばインターポーザである。インターポーザである基材30のうち、半導体素子20が搭載される一面と反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール52が形成される。この場合、半導体装置100は、半田ボール52を介して他の配線基板へ接続されることとなる。
【0065】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する。
まず、基材30の上に、導電性ペーストを塗工し、次いで、その上に半導体素子20を配置する。すなわち、基材30、導電性ペースト、半導体素子20がこの順で積層される。導電性ペーストを塗工する方法としては限定されないが、具体的には、ディスペンシング、印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
【0066】
本実施形態の導電性ペーストは、基材30と半導体素子20との間の濡れ広がり性に優れており熱伝導性や接続性に優れるとともに、半導体素子20の直下領域からのはみ出し(フィレットの形成)が抑制されており、これらの特性のバランスに優れる。すなわち、本発明の導電性ペーストを用いて得られる半導体装置は熱伝導性、接続信頼性および汚染性が改善されており、結果として製品信頼性に優れる。
【0067】
次いで、導電性ペーストを前硬化、続いて後硬化することで、導電性ペーストを硬化させる。前硬化および後硬化といった熱処理により、導電性ペースト中の銀粒子が凝集し、複数の銀粒子同士の界面が消失してなる熱伝導層が接着剤層10中に形成される。これにより、接着剤層10を介して、基材30と、半導体素子20とが接着される。次いで、半導体素子20と基材30を、ボンディングワイヤ40を用いて電気的に接続する。次いで、半導体素子20を封止樹脂50により封止する。これにより半導体装置を製造することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
【0070】
[末端水酸基含有ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(b1)]
・PAGメタクリレート1:一般式(1)においてR:メチル基、m:9、n:0で表されるポリオキシプロピレンモノメタクリレート(水酸基価換算による数平均分子量582、商品名:PP-500D、日油化学社製)
・PAGメタクリレート2:一般式(1)においてR:メチル基、m:17、n:0で表されるポリオキシプロピレンモノメタクリレート(水酸基価換算による数平均分子量1079、商品名:PP-1000D、日油化学社製)
・PAGメタクリレート3:一般式(1)においてR:メチル基、m:34、n:0で表されるポリオキシプロピレンモノメタクリレート(水酸基価換算による数平均分子量2018、商品名:PP-2000D、日油化学社製)
・PAGメタクリレート4:一般式(1)においてR:水素原子、m:17、n:0で表されるポリオキシプロピレンモノメタクリレート(水酸基価換算による数平均分子量1069、商品名:AP-1000D、日油化学社製)
・PAGメタクリレート5:一般式(1)においてR:メチル基、m:1、n:6で表されるプロピレングリコールポリブチレングリコールモノメタクリレート(水酸基価換算による数平均分子量563、商品名:10PPB-500BD、日油化学社製)
【0071】
[(メタ)アクリレート(b2)]
・単官能アクリルモノマー:2-フェノキシエチルメタクリレート(商品名:ライトエステルPO、共栄社化学社製)
・2官能アクリルモノマー:1.6-ヘキサンジオールジメタクリレート(商品名:ライトエステル1.6HX、共栄社化学社製)
【0072】
[アクリル樹脂(b3)]
・アクリル樹脂1:グリシジル基含有アクリル/スチレン系共重合体(重量平均分子量11000、エポキシ当量556g/mol、商品名:ARUFON UG-4035、東亞合成社製)
【0073】
[ラジカル開始剤]
・ラジカル開始剤1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製、パーカドックスBC、過酸化物)
【0074】
[導電性充填剤]
・銀フィラー:フレーク銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製、TKR-88、D50:3μm)
【0075】
(比較例1、実施例1~5)
<ペースト状接着剤組成物の作製>
まず表1の「ワニス組成」に記載の配合量の成分を、常温で、3本ロールミルで混練することにより、ワニス状混合物を作製した。次いで、得られたワニス状混合物を、表1の「ペースト組成」に記載の配合量で用い、銀粉を混合し、常温で、3本ロールミルで混練することにより、ペースト状の組成物(導電性ペースト)を得た。
各実施例及び各比較例の導電性ペーストを、以下の項目について評価した。
【0076】
<吸湿後ダイシェア強度(長さ5mm×幅5mm×厚み350μmシリコンチップ)>
硬化条件:上記で得られた導電性ペーストを、銅フレーム上に塗布し、その上に、5mm×5mmのシリコンチップをマウントし、20μm厚にした。その後窒素雰囲気下で175℃、30分間で昇温し、5時間放置(1時間硬化とポストモールドキュア)して、試験片を得た。
吸湿条件:得られた試験片を、温度120℃、相対湿度100%の環境で24時間処理した。
ダイシェア強度の測定条件:吸湿処理後の試験片を、260℃のプレート上に20秒間置き、その状態でボンドテスター(DAGE 4000P型)によりチップ剥離強度を測定した。
図3は、チップ剥離強度の測定方法を示す模式図である。シリコンチップ220は、ブリードアウト防止剤で表面処理された銅フレーム200の上に導電性ペースト210を介して接着されている。シリコンチップ220の側面に治具230を押し当て、測定速度50μm/秒、測定高さ50μmの条件で、
図3に示した矢印方向に力を加えたときの最大応力としてダイシェア強度を測定して、これを接着強度とした。ダイシェア強度とその標準偏差の値を表1に示す。ダイシェア強度の単位は「N」である。ダイシェア強度の値が大きいほど、シリコンチップと銅フレームとが強固に接着されていることを示す。
【0077】
<室温(25℃)で測定した硬化物の弾性率(貯蔵弾性率)>
ペースト状重合性組成物の熱処理体を用いて約0.1mm×約10mm×約4mmに切り出し、評価用の短冊状サンプルを得た。このサンプルを用いて25℃における貯蔵弾性率(E’)を、DMA(動的粘弾性測定、引張モード)により昇温速度5℃/min、周波数10Hzの条件で測定した。
【0078】
<250℃で測定した硬化物の熱時弾性率>
ペースト状重合性組成物の熱処理体を用いて約0.1mm×約10mm×約4mmに切り出し、評価用の短冊状サンプルを得た。このサンプルを用いて250℃における貯蔵弾性率(E’)を、DMA(動的粘弾性測定、引張モード)により昇温速度5℃/min、周波数10Hzの条件で測定した。
【0079】
<信頼性(パッケージ剥離試験)>
上記で得られた導電性ペーストを、銅フレーム上に塗布し、その上に、長さ8mm×幅8mmの200μm厚のシリコンチップをマウントし、20μm厚にした。その後窒素雰囲気下で175℃、30分間で昇温し、1時間放置して、試験片を得た。その後エポキシモールディングコンパウンドで封止しパッケージを得た。その後ポストモールドキュアを175℃で4時間行い、パッケージ構造物を得た。このパッケージ構造物は長さ14mm、幅14mm、厚み0.8mmである。その後得られたパッケージ構造物を、温度85℃、相対湿度85%、168時間放置した。
所定の時間晒されたパッケージ構造物を取り出し、次いで、260℃のリフロー工程に3度通した。その後、このパッケージ構造物における、ペースト層と銅フレームとの間の剥離、および封止材と銅フレームとの間の剥離の有無を確認した。剥離が観察されないパッケージ構造物を〇、剥離が観察されたパッケージ構造物を×として評価した。結果を表1に示す。
【0080】
【0081】
表1の結果から、本発明の導電性ペーストを用いることにより、半導体素子、基板およびリードフレームとの密着性に優れるとともに、接続信頼性に優れる半導体装置が得られることが明らかとなった。
【0082】
この出願は、2021年6月7日に出願された日本出願特願2021-094962号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0083】
100 半導体装置
10 接着剤層
20 半導体素子
30 支持部材
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ボンディングワイヤ
50 封止樹脂
52 半田ボール
200 銅フレーム
210 導電性ペースト
220 シリコンチップ
230 治具