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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電子部品内蔵基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023574732
(86)(22)【出願日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2023023985
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2022209704
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敦
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-118342(JP,A)
【文献】国際公開第2000/063970(WO,A1)
【文献】特開2009-016440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/18
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する絶縁体と、
前記絶縁体に内蔵された複数の電子部品と、を備え、
それぞれの前記電子部品は、前記絶縁体の前記第1面側に向かう第1方向に第1電極を有すると共に前記第1方向と反対の第2方向に第2電極を有しており、
それぞれの前記電子部品の、前記第1面側からの上面視形状は矩形であり、
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品の前記第1面側の矩形の向きが不規則に配置されている、電子部品内蔵基板。
【請求項2】
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が並ぶ向きに沿った軸を定め、
前記軸と前記電子部品の1つの辺のなす角度が、隣り合う電子部品において異なる箇所が存在する、請求項1に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項3】
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が並ぶ向きに沿った軸を定め、
前記軸と前記電子部品の1つの辺のなす角度の平均が、5°以上、40°以下である、請求項1又は2に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項4】
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が並ぶ向きに沿った軸を定め、
隣り合う前記電子部品間において前記軸と前記電子部品の1つの辺のなす角度の差が、5°以上、45°以下である箇所が存在する、請求項1又は2に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項5】
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が並ぶ向きに沿った軸を定め、
前記軸と前記電子部品の1つの辺のなす角度の標準偏差が、5°以上である、請求項1又は2に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項6】
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品の中心間距離はほぼ等間隔である、請求項1又は2に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項7】
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が千鳥配置されている請求項1又は2に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項8】
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が格子配置されている請求項1又は2に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項9】
前記絶縁体が開口を有しており、1つの開口内に1つの前記電子部品が配置されている、請求項1又は2に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項10】
前記第1面側からの上面視において、前記開口の形状が円形である、請求項9に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項11】
前記第1面側からの上面視において、前記開口の形状が矩形である、請求項9に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項12】
前記開口内において、封止材が前記電子部品の周囲に充填されている請求項9に記載の電子部品内蔵基板。
【請求項13】
前記第1電極の前記第1面側の上面の中心、及び/又は、前記第2電極の前記第2面側の底面の中心に、ビア導体が接続されている、請求項1又は2に記載の電子部品内蔵基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電子部品が内蔵された部品内蔵基板が記載されている。特許文献1の図6A図6Bには、4つの電子部品が積層体の第1方向及び第2方向に沿って並んで、二次元配列されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/199825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような構成において、複数の電子部品を内蔵させた場合に、電子部品を内蔵させない場合に比べて基板の強度が低下することがあり、電子部品内蔵基板の強度を高くすることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、強度の高い電子部品内蔵基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子部品内蔵基板は、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する絶縁体と、前記絶縁体に内蔵された複数の電子部品と、を備え、それぞれの前記電子部品は、前記絶縁体の前記第1面側に向かう第1方向に第1電極を有すると共に前記第1方向と反対の第2方向に第2電極を有しており、それぞれの前記電子部品の、前記第1面側からの上面視形状は矩形であり、前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品の前記第1面側の矩形の向きが不規則に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、強度の高い電子部品内蔵基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電子部品内蔵基板の一例を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す電子部品内蔵基板の第1面側からの上面視図である。
図3図3は、電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度について説明するための、絶縁体である絶縁基板の第1面側からの上面視図である。
図4図4は、第1面側からの上面視において複数の電子部品が千鳥配置された例を模式的に示す上面視図である。
図5図5は、第1面側からの上面視において開口の形状が矩形である例を模式的に示す上面視図である。
図6図6は、絶縁体が第1面側からの上面視において開口を有さない封止材である例を模式的に示す上面視図である。
図7A】電子部品内蔵基板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。
図7B】電子部品内蔵基板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。
図7C】電子部品内蔵基板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。
図7D】電子部品内蔵基板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。
図8A】電子部品内蔵基板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。
図8B】電子部品内蔵基板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。
図8C】電子部品内蔵基板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。
図9A】電子部品内蔵基板の製造工程の別の一例を模式的に示す工程図である。
図9B】電子部品内蔵基板の製造工程の別の一例を模式的に示す工程図である。
図9C】電子部品内蔵基板の製造工程の別の一例を模式的に示す工程図である。
図9D】電子部品内蔵基板の製造工程の別の一例を模式的に示す工程図である。
図10A】電子部品内蔵基板の製造工程の別の一例を模式的に示す工程図である。
図10B】電子部品内蔵基板の製造工程の別の一例を模式的に示す工程図である。
図10C】電子部品内蔵基板の製造工程の別の一例を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電子部品内蔵基板について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
[電子部品内蔵基板]
図1は、本発明の実施形態に係る電子部品内蔵基板の一例を模式的に示す断面図である。
図2は、図1に示す電子部品内蔵基板の第1面側からの上面視図である。図2は、電子部品の第1電極が見えるように第1電極を覆う構成を省略して示している。
また、図1は、図2に示すA-A線に沿った断面図である。
【0011】
図1及び図2に示す電子部品内蔵基板100は、第1面11及び第1面11と反対側の第2面12を有する絶縁体としての絶縁基板10と、絶縁基板10に内蔵された複数の電子部品20とを備える。
それぞれの電子部品20は、絶縁基板10の第1面11側に向かう第1方向D1に第1電極21を有すると共に、第1方向D1と反対の第2方向D2に第2電極22を有している。
【0012】
各電子部品20と絶縁基板10の間には封止材30が封止されている。
第1面11側には、電子部品20の第1電極21に電気的に接続された第1ビア導体40が設けられ、さらに導体配線62及び絶縁層61を含む第1ビルドアップ層(再配線層)60が設けられている。
第2面12側には、電子部品20の第2電極22に電気的に接続された第2ビア導体50が設けられ、さらに導体配線72及び絶縁層71を含む第2ビルドアップ層(再配線層)70が設けられている。
【0013】
絶縁基板10としては、樹脂基板、ガラス基板、セラミック基板等を用いることができる。絶縁基板10は、その表面又は内部に導体配線が設けられているプリント配線板であってもよい。絶縁基板10として好ましくは、エポキシ樹脂等の樹脂とガラスクロス等の補強材とから形成された絶縁性の支持基板(コア材)を使用することができる。支持基板には、シリカ粒子、アルミナ粒子等の無機粒子が含まれていてもよい。
【0014】
絶縁基板10の第1面11及び第2面12は、互いに平行な面であり、絶縁基板10の対向する一対の主面を構成している。
【0015】
図1に示す実施形態の電子部品内蔵基板100では、絶縁基板10が開口15を有しており、1つの開口15内に1つの電子部品が配置されている。図1には5つの開口15に対して1つずつ、計5つの電子部品20が配置されている様子を示している。開口15内において、電子部品20と絶縁基板10の間には封止材30が充填されており、電子部品20の位置は開口15内で固定されている。
【0016】
電子部品20は、特に限定されず、例えば、コンデンサ(例えば積層セラミックコンデンサ(MLCC))、インダクタ等の受動部品が挙げられる。電子部品20は、直方体状の長手形状を有するチップ部品である。
【0017】
また、各電子部品20の寸法は、絶縁基板10の第2面12と平行な方向よりも、第2面12に対して直交する方向(第1方向D1又は第2方向D2)において、より大きいことが好ましい。これにより、電子部品20をより高密度に配置することができる。
【0018】
電子部品内蔵基板100内には、1種のみの電子部品20が配置されていてもよいし、2種以上の電子部品20が配置(混在)されていてもよい。
また、電子部品内蔵基板100内に配置される複数の電子部品20の数は特に限定されるものではないが、例えば3個以上とすることができる。また、1000個以下とすることができる。
【0019】
図2には、第1面11側からの上面視において、開口15の形状が円形であり、1つの開口15に対して1つの電子部品20が配置されている様子を示している。
電子部品20の第1面11側からの上面視形状は矩形である。電子部品20の上面視形状は長方形であっても正方形であってもよく、図2には電子部品20の第1面11側からの上面視形状が正方形である形態を示している。
【0020】
図2では、第1面11側からの上面視において、複数の電子部品20が格子配置されている。電子部品が格子配置されていることは、矩形の中心が格子配置されていることで判断される。また、図2では、複数の電子部品20の中心間距離はほぼ等間隔である。
なお、矩形の中心は、矩形の対角線の交点である。
複数の電子部品の中心間距離がほぼ等間隔であるかの目安としては、複数個所で測定した、電子部品の中心間距離の平均値に対して、中心間距離が平均値±20%を超える測定値が、全体の10%以下であるかを一つの基準とする。
【0021】
図2には、第1面11側からの上面視において、複数の電子部品20の第1面11側の矩形の向きが不規則に配置されていることを示している。
電子部品の矩形の向きが不規則であると、電子部品の向きが揃っていないので、熱膨張等により電子部品内蔵基板に加わる応力が特定の方向に集中しない。そのため、電子部品内蔵基板の強度が向上する。
また、電子部品の矩形の向きが不規則であると、上面視において、隣接する電子部品間における絶縁体の面積が広いところと狭いところができる。絶縁体の面積が広いところがあると、その部分の強度が強くなり剛性が高くなるので、電子部品内蔵基板の反りが抑制される。
【0022】
電子部品内蔵基板における電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の1つの辺のなす角度について説明する。
図3は、電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度について説明するための、絶縁体である絶縁基板の第1面側からの上面視図である。
図3には、電子部品20A、電子部品20B、電子部品20Cが、開口15A内、開口15B内、開口15C内にそれぞれ配置された状態を示している。
各電子部品の第1面側の矩形の中心Cを決めて、この矩形の中心Cの近傍に、矩形の中心Cができるだけその軸の近傍に多く並ぶような線を引く。矩形の中心Cの位置を座標に変換して、最小二乗法により近似直線を引くことで、電子部品が並ぶ向きに沿った軸Xを定めることができる。
【0023】
図2に示すように複数の電子部品が格子配置されている場合には、矩形の中心Cも格子配置されている。この場合、軸Xを横方向に引いても、縦方向に引いてもよい。図2には、軸を示す横方向及び縦方向の線の例を点線で示している。
【0024】
このように定めた軸Xと、電子部品の1つの辺(矩形の1つの辺)のなす角度θを求める。角度θは軸Xと電子部品の1つの辺がなす角度のうち最も鋭角になる角度である。軸Xと電子部品の1つの辺がなす角度は、軸Xと電子部品の辺が交差するところの角度ではなく、軸Xに平行な直線に対して最もそのなす角が小さくなる辺を選択して定める。
電子部品の1つの辺と軸Xが平行になる場合、角度θは0°である。
電子部品20Aは、軸Xに平行な、点線で示す直線XAと辺23Aのなす角度(θとしては示さず)が0°になる例である。
【0025】
角度θの最大値は45°である。電子部品20Bは、軸Xに平行な、点線で示す直線XBと辺23Bのなす角度が45°になる例である。
【0026】
また、電子部品20Cは、軸Xに平行な、点線で示す直線XCと辺23Cのなす角度が最大値でも最小値でもない例であり、一例として角度θが30°になる例である。
【0027】
電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度を定めた場合に、隣り合う電子部品において、この角度が異なる箇所が存在することが好ましい。
図3においては電子部品20Aと電子部品20Bが隣り合う電子部品であり、電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度が、隣り合う電子部品において異なっている。また、電子部品20Bと電子部品20Cが隣り合う電子部品であり、電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度が、隣り合う電子部品において異なっている。
【0028】
電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度を定めた場合に、軸と電子部品の1つの辺のなす角度の平均が、5°以上、40°以下であることが好ましい。
図2のように、第1面11側からの上面視において多数の電子部品が配置されている状態で各電子部品に対して軸と電子部品の辺のなす角度を求めてその平均値を求める。角度の平均値を求めるために用いる電子部品の数としては3個以上であることが好ましい。
【0029】
電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度を定めた場合に、隣り合う前記電子部品間において軸と電子部品の1つの辺のなす角度の差が、5°以上、45°以下である箇所が存在することが好ましい。
このような条件を満たすことも、複数の電子部品の第1面側の矩形の向きが不規則に配置されていることの指標となる。
例えば、図3において電子部品20Aのθは0°、電子部品20Bのθは45°であるので、隣り合う電子部品間において軸と電子部品の1つの辺のなす角度の差は45°である。電子部品20Bのθは45°、電子部品20Cのθは30°であるので、隣り合う電子部品間において軸と電子部品の1つの辺のなす角度の差は15°である。この場合、電子部品20A、電子部品20B、電子部品20Cの3つの電子部品に関連して、隣り合う電子部品間において軸と電子部品の1つの辺のなす角度の差が、5°以上、45°以下である箇所が2か所に存在するといえる。
【0030】
電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度を定めた場合に、軸と電子部品の1つの辺のなす角度の標準偏差が、5°以上であることが好ましい。
角度の標準偏差は、電子部品の第1面側の矩形の向きのばらつきの指標の1つとして用いることができる。標準偏差が0°であれば、電子部品の第1面側の矩形の向きがすべて揃っていることになる。角度の標準偏差を求めるために用いる電子部品の数としては3個以上であることが好ましい。
【0031】
電子部品内蔵基板において、複数の電子部品が密集して配置された場合に、電子部品内蔵基板の強度低下の問題が生じやすくなる。その観点から、複数の電子部品が密集している電子部品内蔵基板であると本発明の構成にすることによる効果が発揮されやすくなる。複数の電子部品が密集しているとみなせる構成の例としては、以下のような構成が挙げられる。
電子部品のサイズ:0603サイズ
電子部品の中心間距離:0.50mm以上、0.75mm以下、具体的には0.65mm
第1面側からの上面視における電子部品の面積比率:30%以上、50%以下、具体的には37%
【0032】
また、絶縁体が開口を有しており、1つの開口内に1つの電子部品が配置されている場合に、開口の内周と電子部品の間の最短距離が50μm以上、150μm以下であることが好ましい。なお、上記した好ましい最短距離の範囲は、電子部品のサイズが0603サイズの場合の好適範囲の例であり、電子部品のサイズにより開口の大きさと、好ましい最適な最短距離の範囲は異なる。例えば、開口の内周と電子部品の間の最短距離は、矩形の電子部品の短辺の長さの1/6以上、1/2以下であってもよい。
開口の内周と電子部品の間の最短距離を定める際には、開口の円の中心と電子部品の上面視形状の矩形の中心を合わせた状態で、開口の内周と電子部品の間の距離が最短になる箇所を選定する。
開口の内周と電子部品の間の最短距離が短いと、電子部品の第1面側の矩形の中心の位置が精度よく定まる。そのため、第1電極の第1面側の中心にビア導体が位置精度よく接続される。同様に、電子部品の第2面側の矩形の中心の位置が精度よく定まるので、第2電極の第2面側の中心にビア導体が位置精度よく接続される。
【0033】
再度図1を参照して、電子部品内蔵基板が備えることのできるその他の構成について説明する。
封止材30は、開口15内に電子部品20を封止するための部材であり、開口15内において各電子部品20の周囲に充填されている。封止材30は、エポキシ樹脂等の樹脂と、シリカ粒子、アルミナ粒子等の無機粒子から構成されるフィラーとを含んでいることが好ましい。
封止材としては例えばABFフィルム(味の素ファインテクノ(株)製)を使用することができる。
【0034】
第1ビア導体40は、各電子部品20に少なくとも1つずつ設けられており、各電子部品20の第1電極21は、第1ビア導体40を介して第1ビルドアップ層60に電気的に接続されている。
【0035】
第2ビア導体50は、各電子部品20に少なくとも1つずつ設けられており、各電子部品20の第2電極22は、第2ビア導体50を介して第2ビルドアップ層70に電気的に接続されている。
【0036】
第1ビルドアップ層60は、電子部品20同士や、電子部品20と他の部品やスルーホール、端子等とを電気的に接続しており、少なくとも1つの絶縁層61と少なくとも1つの導体配線62とが交互に積層されている。
【0037】
第2ビルドアップ層70も同様に、電子部品20同士や、電子部品20と他の部品やスルーホール、端子等とを電気的に接続しており、少なくとも1つの絶縁層71と少なくとも1つの導体配線72とが交互に積層されている。
【0038】
電子部品内蔵基板では、第1電極の第1面側の上面の中心、及び/又は、第2電極の第2面側の底面の中心に、ビア導体が接続されていることが好ましい。図1に示す電子部品内蔵基板100においては、第1電極21の第1面側の上面の中心に第1ビア導体40が接続されており、第2電極22の第2面側の上面の中心に第2ビア導体50が接続されている。
【0039】
[電子部品内蔵基板の変形例]
図4は、第1面側からの上面視において複数の電子部品が千鳥配置された例を模式的に示す上面視図である。図2と同様に電子部品の第1電極が見えるように第1電極を覆う構成を省略して示している。
【0040】
図4に示す電子部品内蔵基板101では、第1面11側からの上面視において、複数の電子部品20が千鳥配置されている。電子部品が千鳥配置されていることは、矩形の中心が千鳥配置されていることで判断される。また、図4では、複数の電子部品20の中心間距離はほぼ等間隔である。複数の電子部品20の配置以外は、図2に示す電子部品内蔵基板100とその構成は同様である。
【0041】
図4に示す電子部品内蔵基板101でも、図2及び図3を用いて説明した場合と同様に、第1面11側からの上面視において、複数の電子部品20の第1面11側の矩形の向きが不規則に配置されている。
【0042】
図4に示すように複数の電子部品が千鳥配置されている場合には、矩形の中心も千鳥配置されている。この場合、軸を横方向又は斜め方向(電子部品が一直線に並んでいる方向)に引く。図4には、軸を示す横方向及び斜め方向の線の例を点線で示している。
このように引いた軸を用いて、図3を用いて説明した場合と同様に、電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度を定めることができる。この角度を用いて定められる好ましい態様は、複数の電子部品が格子配置されている場合と同様である。
【0043】
図5は、第1面側からの上面視において開口の形状が矩形である例を模式的に示す上面視図である。図2と同様に電子部品の第1電極が見えるように第1電極を覆う構成を省略して示している。
【0044】
図5に示す電子部品内蔵基板102では、第1面11側からの上面視において、開口16の形状が矩形であり、1つの開口16に対して1つの電子部品20が配置されている様子を示している。
開口16の矩形は電子部品20の上面視形状の矩形と相似形であることが好ましく、開口16の矩形が電子部品20の上面視形状の矩形よりも一回り大きいサイズとなっている。例えば、開口の矩形と電子部品の上面視形状の矩形の相似比が、(開口/電子部品)=1.05以上、1.30以下であることが好ましい。
また、開口の内周と電子部品の間の最短距離が50μm以上、150μm以下であることが好ましい。開口の内周と電子部品の間の最短距離を定める際には、開口の矩形の中心と電子部品の上面視形状の矩形の中心を合わせた状態で、開口の内周と電子部品の間の距離が最短になる箇所を選定する。なお、上記した好ましい最短距離の範囲は、電子部品のサイズが0603サイズの場合の好適範囲の例であり、電子部品のサイズにより開口の大きさと、好ましい最適な最短距離の範囲は異なる。例えば、開口の内周と電子部品の間の最短距離は、矩形の電子部品の短辺の長さの1/6以上、1/2以下であってもよい。
【0045】
開口の形状が矩形であり、開口の矩形が電子部品の上面視形状の矩形に対してある程度大きい場合は、開口内の電子部品の位置がある程度ばらつく。一方、開口の矩形が電子部品の上面視形状の矩形とほぼ同じである場合は、電子部品は開口内でその位置がほぼ固定される。
【0046】
開口16の形状が矩形である電子部品内蔵基板102においては、開口16の向きを不規則にすることにより、電子部品20の上面視形状の矩形の向きが開口16の矩形の向きに沿って決まり、結果的に電子部品20の上面視形状の矩形の向きが不規則になる。
【0047】
図5に示す電子部品内蔵基板102では、開口16の向きは不規則であるが、開口16の矩形の中心が格子配置されている。開口16内に配置された電子部品20の上面視形状の矩形の中心も格子配置されている。電子部品20の上面視形状の矩形の中心から軸を求めることができる。図5には軸を示す縦方向及び横方向の線の例を点線で示している。
このように引いた軸を用いて、図3を用いて説明した場合と同様に、電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度を定めることができる。この角度を用いて定められる好ましい態様は、開口の形状が円形である場合と同様である。
【0048】
絶縁体は、開口を有する絶縁基板でなくてもよく、絶縁体として封止材を用いることができる。この場合、封止材は開口を有していなくてもよい。
図6は、絶縁体が第1面側からの上面視において開口を有さない封止材である例を模式的に示す上面視図である。図2と同様に電子部品の第1電極が見えるように第1電極を覆う構成を省略して示している。
【0049】
図6に示す電子部品内蔵基板103では、開口を有さない封止材30中に複数の電子部品20が配置されている。複数の電子部品の配置は格子配置、千鳥配置又はその他の配置のいずれであってもよい。
図6に示す電子部品内蔵基板103でも、図2及び図3を用いて説明した場合と同様に、第1面11側からの上面視において、複数の電子部品20の第1面11側の矩形の向きが不規則に配置されている。
【0050】
図6に示す電子部品内蔵基板103では、電子部品20の上面視形状の矩形の中心が格子配置されている。電子部品20の上面視形状の矩形の中心から軸を求めることができる。図6には軸を示す縦方向及び横方向の線の例を点線で示している。
このように引いた軸を用いて、図3を用いて説明した場合と同様に、電子部品が並ぶ向きに沿った軸と電子部品の辺のなす角度を定めることができる。この角度を用いて定められる好ましい態様は、絶縁基板の開口内に電子部品が配置されている場合と同様である。
【0051】
[電子部品内蔵基板の製造方法]
以下、電子部品内蔵基板の製造方法について説明する。
図7A図7B図7C図7D図8A図8B、及び図8Cは、電子部品内蔵基板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。
以下に説明する工程は、絶縁体である絶縁基板が開口を有しており、1つの開口内に1つの電子部品が配置されている電子部品内蔵基板(図2図4図5に示す形態)を製造する工程である。
【0052】
図7Aに示すように、所定の位置に開口15が設けられた絶縁基板10を準備し、絶縁基板10を粘着シート80に貼り付けて、開口15内に電子部品20を配置する。
電子部品20は粘着シート80に貼り付けられることにより倒れることなく開口内に自立する。粘着シート80としては熱発泡シートを用いることができる。
【0053】
図7Bに示すように、封止材30により開口15内を封止し、絶縁基板10の第1面11も封止材30で覆う。封止材30は真空ラミネートにより開口15内及び絶縁基板10の第1面11に設けることができる。続いて加熱して封止材30を硬化する。加熱温度は例えば180℃とする。
【0054】
図7Cに示すように、熱発泡シートである粘着シート80の剥離温度(例えば200℃)以上に加熱して粘着シート80の粘着力を失わせて、粘着シート80を剥離する。
【0055】
図7Dに示すように、絶縁基板10の第2面12側も封止材30で覆う。封止材30は真空ラミネートにより絶縁基板10の第2面12に設けることができる。続いて加熱して封止材30を硬化する。加熱温度は例えば180℃とする。
【0056】
図8Aに示すように、絶縁基板10の第1面11側、第2面12側のそれぞれの封止材30に対してレーザーによりビア穴33を形成する。ビア穴33の形成位置は電子部品20の第1電極21及び第2電極22がそれぞれビア穴33から露出する位置にする。レーザーとしては例えばCOレーザーを使用することができる。
【0057】
図8Bに示すように、電子部品20の第1電極21に電気的に接続された第1ビア導体40を設ける。電子部品20の第2電極22に電気的に接続された第2ビア導体50を設ける。
第1ビア導体40及び第2ビア導体50の形成は、導電性ペーストの印刷、金属めっき等の方法により行うことができる。
【0058】
図8Cに示すように、さらに絶縁基板10の第1面11側に導体配線62及び絶縁層61を含む第1ビルドアップ層(再配線層)60を設ける。また、絶縁基板10の第2面12側に導体配線72及び絶縁層71を含む第2ビルドアップ層(再配線層)70を設ける。
第1ビルドアップ層60及び第2ビルドアップ層70の形成は、例えばめっき(例えばセミアディティブ工法)を用いて行うことができる。
以上の工程により、絶縁基板10が開口15を有しており、1つの開口15内に1つの電子部品20が配置されている電子部品内蔵基板100を製造することができる。
【0059】
図9A図9B図9C図9D図10A図10B、及び図10Cは、電子部品内蔵基板の製造工程の別の一例を模式的に示す工程図である。
以下に説明する工程は、絶縁体が開口を有していない封止材である電子部品内蔵基板(図6に示す形態)を製造する工程である。
【0060】
図9Aに示すように、電子部品20を粘着シート80の所定の位置に貼りつけて配置する。
粘着シート80としては熱発泡シートを用いることができる。
【0061】
図9Bに示すように、封止材30により電子部品20を覆う。封止材30は真空ラミネートにより設けることができる。続いて加熱して封止材30を硬化する。加熱温度は例えば180℃とする。
【0062】
図9Cに示すように、熱発泡シートである粘着シート80の剥離温度(例えば200℃)以上に加熱して粘着シート80の粘着力を失わせて、粘着シート80を剥離する。
【0063】
図9Dに示すように、電子部品20の第2電極22の側も封止材30で覆う。封止材30は真空ラミネートにより電子部品20の第2電極22の側に設けることができる。続いて加熱して封止材30を硬化する。加熱温度は例えば180℃とする。
封止材30の、電子部品20の第1電極21の側の主面を封止材の第1面31、電子部品20の第2電極22の側の主面を封止材の第2面32とする。この封止材30が、第1面31及び第1面31と反対側の第2面32を有する絶縁体となる。
【0064】
図10Aに示すように、封止材30の第1面31側、第2面32側のそれぞれに対してレーザーによりビア穴33を形成する。ビア穴33の形成位置は電子部品20の第1電極21及び第2電極22がそれぞれビア穴33から露出する位置にする。レーザーとしては例えばCOレーザーを使用することができる。
【0065】
図10Bに示すように、電子部品20の第1電極21に電気的に接続された第1ビア導体40を設ける。電子部品20の第2電極22に電気的に接続された第2ビア導体50を設ける。
第1ビア導体40及び第2ビア導体50の形成は、導電性ペーストの印刷、金属めっき等の方法により行うことができる。
【0066】
図10Cに示すように、さらに封止材30の第1面31側に導体配線62及び絶縁層61を含む第1ビルドアップ層(再配線層)60を設ける。また、封止材30の第2面32側に導体配線72及び絶縁層71を含む第2ビルドアップ層(再配線層)70を設ける。
第1ビルドアップ層60及び第2ビルドアップ層70の形成は、例えばめっき(例えばセミアディティブ工法)を用いて行うことができる。
以上の工程により、絶縁体が開口を有していない電子部品内蔵基板103を製造することができる。
【0067】
本明細書には、以下の内容が開示されている。
【0068】
<1>
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する絶縁体と、
前記絶縁体に内蔵された複数の電子部品と、を備え、
それぞれの前記電子部品は、前記絶縁体の前記第1面側に向かう第1方向に第1電極を有すると共に前記第1方向と反対の第2方向に第2電極を有しており、
それぞれの前記電子部品の、前記第1面側からの上面視形状は矩形であり、
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品の前記第1面側の矩形の向きが不規則に配置されている、電子部品内蔵基板。
【0069】
<2>
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が並ぶ向きに沿った軸を定め、
前記軸と前記電子部品の1つの辺のなす角度が、隣り合う電子部品において異なる箇所が存在する、<1>に記載の電子部品内蔵基板。
【0070】
<3>
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が並ぶ向きに沿った軸を定め、
前記軸と前記電子部品の1つの辺のなす角度の平均が、5°以上、40°以下である、<1>又は<2>に記載の電子部品内蔵基板。
【0071】
<4>
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が並ぶ向きに沿った軸を定め、
隣り合う前記電子部品間において前記軸と前記電子部品の1つの辺のなす角度の差が、5°以上、45°以下である箇所が存在する、<1>~<3>のいずれかに記載の電子部品内蔵基板。
【0072】
<5>
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が並ぶ向きに沿った軸を定め、
前記軸と前記電子部品の1つの辺のなす角度の標準偏差が、5°以上である、<1>~<4>のいずれかに記載の電子部品内蔵基板。
【0073】
<6>
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品の中心間距離はほぼ等間隔である、<1>~<5>のいずれかに記載の電子部品内蔵基板。
【0074】
<7>
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が千鳥配置されている<1>~<6>のいずれかに記載の電子部品内蔵基板。
【0075】
<8>
前記第1面側からの上面視において、複数の前記電子部品が格子配置されている<1>~<6>のいずれかに記載の電子部品内蔵基板。
【0076】
<9>
前記絶縁体が開口を有しており、1つの開口内に1つの前記電子部品が配置されている、<1>~<8>のいずれかに記載の電子部品内蔵基板。
【0077】
<10>
前記第1面側からの上面視において、前記開口の形状が円形である、<9>に記載の電子部品内蔵基板。
【0078】
<11>
前記第1面側からの上面視において、前記開口の形状が矩形である、<9>に記載の電子部品内蔵基板。
【0079】
<12>
前記開口内において、封止材が前記電子部品の周囲に充填されている、<9>~<11>のいずれかに記載の電子部品内蔵基板。
【0080】
<13>
前記第1電極の前記第1面側の上面の中心、及び/又は、前記第2電極の前記第2面側の底面の中心に、ビア導体が接続されている、<1>~<12>のいずれかに記載の電子部品内蔵基板。
【符号の説明】
【0081】
10 絶縁基板(絶縁体)
11 第1面
12 第2面
15、15A、15B、15C、16 開口
20、20A、20B、20C 電子部品
21 第1電極
22 第2電極
23A、23B、23C 電子部品の1つの辺
30 封止材(絶縁体)
31 封止材の第1面
32 封止材の第2面
33 ビア穴
40 第1ビア導体
50 第2ビア導体
60 第1ビルドアップ層(再配線層)
61 絶縁層
62 導体配線
70 第2ビルドアップ層(再配線層)
71 絶縁層
72 導体配線
80 粘着シート
100、101、102、103 電子部品内蔵基板
【要約】
第1面11及び第1面11と反対側の第2面12を有する絶縁体10と、絶縁体10に内蔵された複数の電子部品20と、を備え、それぞれの電子部品20は、絶縁体10の第1面11側に向かう第1方向に第1電極21を有すると共に第1方向と反対の第2方向に第2電極22を有しており、それぞれの電子部品20の、第1面11側からの上面視形状は矩形であり、第1面11側からの上面視において、複数の電子部品20の第1面11側の矩形の向きが不規則に配置されている、電子部品内蔵基板100。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C