(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】設備監視システム、及び設備監視方法
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20240402BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240402BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2023577250
(86)(22)【出願日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2023035735
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平原 尚也
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-190122(JP,A)
【文献】特開2023-050257(JP,A)
【文献】特開平09-127181(JP,A)
【文献】特開2020-076618(JP,A)
【文献】特開平10-255554(JP,A)
【文献】特開2006-023086(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0270205(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2066535(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00 - 17/00
G01M 13/00 - 13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光解析ユニットと情報処理装置とを含んで構成され、
送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、
説明変数である、周波数毎の振動強度のパターンと、目的変数である、コロナ騒音に関する情報との関係を学習したモデルを記憶し、
測定点について取得した、周波数毎の振動強度のパターンを前記モデルに入力することにより、前記測定点におけるコロナ騒音に関する情報を取得する、
設備監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の設備監視システムであって、
前記コロナ騒音に関する情報は、コロナ騒音に特有の周波数の振動強度を示す情報である、
設備監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の設備監視システムであって、
前記モデルは、前記DASにより取得された周波数毎の振動強度のパターンを示すグラフについて画像認識処理を行うことにより抽出された特徴量が前記説明変数として入力されると、前記コロナ騒音に関する情報を目的変数として出力するように学習した機械学習モデルである、
設備監視システム。
【請求項4】
請求項1
乃至3のいずれか一項に記載の設備監視システムであって、
前記コロナ騒音に関する情報と送電設備の汚損状況との関係を示す情報であるコロナ騒音/汚損情報を記憶し、
前記測定点において取得した前記コロナ騒音に関する情報を前記コロナ騒音/汚損情報と対照することにより、前記測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を示す情報を取得する、
設備監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の設備監視システムであって、
前記測定点の近傍に存在する送電設備は送電線であり、前記汚損状況を示す情報は前記送電線のぬれ性である、
設備監視システム。
【請求項6】
請求項4に記載の設備監視システムであって、
前記測定点の近傍に存在する送電設備はがいしであり、前記汚損状況を示す情報は前記がいしの汚損の状況である、
設備監視システム。
【請求項7】
請求項4に記載の設備監視システムであって、
前記測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を示す情報をユーザに提示するユーザインタフェースを備える、
設備監視システム。
【請求項8】
光解析ユニットと情報処理装置とを含んで構成され、
送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得する設備監視システムが、
説明変数である、周波数毎の振動強度のパターンと、目的変数である、コロナ騒音に関する情報との関係を学習したモデルを記憶するステップと、
測定点について取得した、周波数毎の振動強度のパターンを前記モデルに入力することにより、前記測定点におけるコロナ騒音に関する情報を取得するステップと、
を実行する、設備監視方法。
【請求項9】
請求項8に記載の設備監視方法であって、
前記コロナ騒音に関する情報は、コロナ騒音に特有の周波数の振動強度を示す情報である、
設備監視方法。
【請求項10】
請求項8に記載の設備監視方法であって、
前記モデルは、前記DASにより取得された周波数毎の振動強度のパターンを示すグラフについて画像認識処理を行うことにより抽出された特徴量が前記説明変数として入力されると、前記コロナ騒音に関する情報を目的変数として出力するように学習した機械学習モデルである、
設備監視方法。
【請求項11】
請求項8
乃至10のいずれか一項に記載の設備監視方法であって、
前記コロナ騒音に関する情報と送電設備の汚損状況との関係を示す情報であるコロナ騒音/汚損情報を記憶するステップ、及び、
前記測定点において取得した前記コロナ騒音に関する情報を前記コロナ騒音/汚損情報と対照することにより、前記測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を示す情報を取得するステップ、
を実行する、設備監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備監視システム、及び設備監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、送電設備が備える光ファイバ複合架空地線(OPGW(OPtical fiber composite overhead Ground Wire))から後方レイリー散乱光を取得し、取得した後方レイリー散乱光に基づき光ファイバ複合架空地線の固有振動数を含む周波数領域についての振動情報を生成し、生成した振動情報に基づき送電設備の異常を検出する異常検出装置について記載されている。
【0003】
非特許文献1には、コロナ騒音と風音の両者を低減するための技術開発(低騒音スパイラル線(超親水性スパイラル線)の開発)に関して記載されている。同文献には、超高圧交流架空送電線の電線表面のぬれ性とコロナ騒音との間の関係について記載されている。
【0004】
非特許文献2には、コロナ騒音とがいしの汚損の状況(軽汚損、重汚損)との間の関係について記載されている。
【0005】
非特許文献3には、塩害対策に繋がる塗料に関して記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】“超親水性スパイラル線による送電線コロナ騒音の低減法”,宮島 清富,電力技術研究所,[online],インターネット<URL: https://criepi.denken.or.jp/intro/nenpo/2006/06kiban17.pdf>,令和5年9月14日検索
【文献】“汚損がいしのコロナ騒音低減対策について”,エネルギア総研レビュー No.51 10頁,送配電カンパニー 技術高度化グループ 児玉 健,中国電力株式会社,[online],インターネット<URL: https://www.energia.co.jp/eneso/kankoubutsu/review/no51/pdf/51_p10_11.pdf>,令和5年9月14日検索
【文献】“腐食が想定以上に進行。その原因は「塩害」では?”,KANSAI PAINT INSIGHTS,関西ペイント,[online],インターネット<URL: https://www.kansai.co.jp/insights/article/001.html>,令和5年9月14日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
送電線の支持物である鉄塔等の設備は、塩害等によって汚損が進行すると、表面の塗装が剥がれて鋼材素地が露出し、発錆により部材が減肉して最終的には強度不足となり部品交換が必要になる。そのため、こうした設備については、防錆のための塗装が随時行われている。
【0009】
ここで設備の汚損(腐食)の進行度合いは、設備が存在する環境によって異なる。そのため、例えば、設備毎に汚損の進行度合いを示す汚損区分(汚損レベル)を設定し、設定した汚損区分に応じて設備毎に防錆塗装を行うタイミングを決定することにより、メンテナンスコストの抑制を図っている。
【0010】
しかし、海岸/川岸から設備までの距離の違い、設備の周囲に存在する施設(工場等)からの距離の違い、設備が晒される風況の違い等、個々の設備が曝されている環境や状況は多様であり、また、例えば、非特許文献3にも記載されているように、海岸/川岸から遠く離れた場所でも汚損が急速に進行することがある等、汚損区分による画一的な分類では必ずしも個々の設備の汚損の進行度合いを正しく見積もることができない。
【0011】
また、設備の周辺の気流をシミュレーションすることにより、汚損を進行させる要因物質の飛来量を推定し、汚損の進行度合いを見積もるといった試みもなされているが、現状では必ずしも有意な結果が得られていない。
【0012】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、設備の汚損の進行度合いを適切に見積もることが可能な、設備監視システム、及び設備監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段の一つは、設備監視システムであって、光解析ユニットと情報処理装置とを含んで構成され、送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、説明変数である、周波数毎の振動強度のパターンと、目的変数である、コロナ騒音に関する情報との関係を学習したモデルを記憶し、測定点について取得した、周波数毎の振動強度のパターンを前記モデルに入力することにより、前記測定点におけるコロナ騒音に関する情報を取得する。
【0014】
ここで上記のコロナ騒音に関する情報は、例えば、コロナ騒音に特有の周波数の振動強度を示す情報である。また、コロナ騒音に特有の周波数は、コロナ音の周波数又はコロナハム音の周波数である。
【0015】
また、設備監視システムは、コロナ騒音に関する情報と送電設備の汚損状況を示す情報である汚損情報との関係を示す情報であるコロナ騒音/汚損情報を記憶し、前記測定点において取得した前記コロナ騒音に関する情報を前記コロナ騒音/汚損情報と対照することにより、前記測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を示す情報を取得する。
【0016】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、設備の汚損の進行度合いを適切に見積もることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】設備監視システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】DASにより振動状態を測定する仕組みを説明する図である。
【
図3A】光ファイバの周波数毎の振動強度の一例である。
【
図3B】光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化の一例である。
【
図4A】設備状態測定装置の主な構成を示す図である。
【
図4B】設備状態測定装置が備える主な機能を示す図である。
【
図5】風況情報提供処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下の説明において、符号の前に付した「S」の文字は処理ステップの意味である。
【0020】
図1に本発明の一実施形態として説明する設備監視システム(以下、「設備監視システム1」と称する。)の概略的な構成を示している。同図に示すように、設備監視システム1は、変電所6等に設けられる設備監視装置100を含む。設備監視装置100は、情報処理装置(コンピュータ)を用いて構成される。
【0021】
設備監視装置100は、送電線3に架設されているOPGW4(optical fiber composite overhead ground wire)(光ファイバ複合架空地線)の光ファイバ4aを振動検知センサとして用い、光ファイバ4aに沿って設定された複数の測定位置(以下、「測定点」と称する。)の夫々における光ファイバ4aの伸縮に基づく振動状態(振動強度、振動周波数)を測定する技術(分布型多点振動測定法(以下、「DAS」(Distributed Acoustic Sensing)と称する。)により、各測定点の振動状態を取得する。DASでは、例えば、C-OTDR(Coherent detection Optical Time Domain Reflectometer)の原理により各測定点の振動状態を取得する。
【0022】
図2は、設備監視装置100がDASにより各測定点の振動状態を測定する仕組みを説明する図である。同図に示すように、設備監視装置100は、光ファイバ4aの端面から光パルス(レーザーパルス。以下、「入射光」とも称する。)を入射し、各測定点における、光パルスの後方散乱光の位相差の変化速度(≒伸縮周波数)を測定する。尚、上記の位相差は、後方散乱光どうしの干渉による強度変化から推定する。そして、設備監視装置100は、測定した上記変化速度に基づき、各測定点における光ファイバ4aの縦波と横波の振動周波数(例えば、最大10kHzの範囲の振動周波数)を求める。また、設備監視装置100は、振動周波数毎の位相差に基づき、各測定点における振動強度(スペクトル強度、振動振幅)を求める。尚、設備監視装置100は、入射光を上記端面に入射した時点から戻り光を受光した時点までの経過時間に基づき、各測定点の位置(上記端面からの距離)を求める。
【0023】
上記の測定点は、例えば、光ファイバに沿って送電鉄塔2の径間よりも短い所定間隔d(m)毎に設定される(0(m)、d(m)、・・・・、N(m)、N+d(m)、N+2d(m))。例えば、
図1に示すように、所定間隔dを5(m)とし、送電線3の最長70(km)の範囲に測定点を設定した場合、光ファイバに沿って14000程度の測定点が設定される。
【0024】
設備監視装置100は、各測定点の振動状態に基づき、各測定点におけるコロナ騒音に関する情報を取得する。ここで上記の振動状態には、光ファイバ4aが外部から受けた音(音圧)の影響が含まれる。即ち、隣接する送電鉄塔2間(径間)の光ファイバ4aは、両端の送電鉄塔2を固定端とした弦であり、外部から受けた特定周波数の音に共振して固有振動が発生する。尚、例えば、音速を340(m/s)とした場合、1(Hz)以上の音波を観測するには、送電線3の長さが、波長(=340(m/s)/1(Hz))の1/2(=170m)以上であればよく、送電線3の多くはこの条件を満たしている。
【0025】
コロナ騒音は、送電線3に発生するコロナ放電に起因して発生する。コロナ騒音は、可聴周波数成分を含む不規則性の騒音成分(ランダム騒音)と、電源周波数及びその偶数倍の周波数成分(純音成分)とを含む。前者の電源周波数における成分は「コロナ音」と称される。また、後者の純音成分は、電源周波数(50Hz(東日本地域)、60Hz(西日本地域))の2倍の周波数(100Hz(東日本地域)、120Hz(西日本地域))での騒音レベル(音波強度)がとくに大きく、「コロナハム音」と称される。
【0026】
ここで上記のように、光ファイバ4aの振動状態には光ファイバ4aが外部から受けた音(音圧)の影響が含まれている。このため、測定点における光ファイバ4aの振動状態には、測定点におけるコロナ騒音に関する情報(音の大きさ、音の周波数成分等)が含まれている。
【0027】
また、非特許文献1(“超親水性スパイラル線による送電線コロナ騒音の低減法”,宮島 清富,電力技術研究所,[online], インターネット<URL: https://criepi.denken.or.jp/intro/nenpo/2006/06kiban17.pdf>, 令和5年9月14日検索)に記載されているように、コロナ騒音と、送電設備の汚損に影響を与える送電線3のぬれ性との間には一定の相関がある。
【0028】
また、非特許文献2(“汚損がいしのコロナ騒音低減対策について”,エネルギア総研レビュー No.51 10頁,送配電カンパニー 技術高度化グループ 児玉 健,中国電力株式会社,[online], インターネット<URL: https://www.energia.co.jp/eneso/kankoubutsu/review/no51/pdf/51_p10_11.pdf>,令和5年9月14日検索)には、コロナ騒音と、送電鉄塔2に設けられている送電設備の一つである「がいし」の汚損の度合(軽汚損、重汚損)との間に相関があることが記載されている。
【0029】
このため、コロナ騒音に関する情報に基づき、送電線3のぬれ性やがいしの汚損の状況等の、測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況に関する情報(以下、「汚損情報」と称する。)を取得することができる。さらに、汚損情報に基づき、測定点の近傍に存在する他の送電設備(例えば、測定点が設けられている径間の送電線3を支持している送電鉄塔2の支持物)の汚損状況に関する情報を取得することができる。
【0030】
図3Aは、コロナ騒音が存在する、送電線3のある径間のある測定点について測定された、光ファイバ4aの周波数毎の振動強度の一例である。同図に示すグラフの横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は振動強度(任意単位(Arbitrary Unit))である。同図に示す周波数毎の振動強度は周波数毎の振動強度の時間平均である。例示するグラフには、コロナ騒音(コロナ音、コロナハム音)に特徴的な周波数(コロナ音に相当する60(Hz)、コロナハム音に相当する120(Hz))にピークが表れている。
【0031】
図3Bは、コロナ騒音が存在する、送電線3のある径間のある測定点について測定された、光ファイバ4aの周波数毎の振動強度の時間変化の一例である。例示するグラフにおいて、時間は紙面の上から下に流れる。同図における色の濃淡は、周波数毎の振動強度(任意単位(Arbitrary Unit))を表す(色が薄い程、振動強度が大きい)。例示するグラフには、コロナ騒音に特徴的な周波数(コロナ音に相当する60(Hz))において色が薄く(振動強度が大きく)なっている(同図ではコロナハム音(120(Hz))については省略している)。
【0032】
設備監視装置100は、対象となる測定点において取得した光ファイバ4aの振動状態に基づき、測定点におけるコロナ騒音に関する情報を取得する。また、設備監視装置100は、コロナ騒音と送電設備の汚損情報の関係を記憶しており、取得した測定点におけるコロナ騒音に関する情報を上記関係と対照することにより、測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を示す情報を取得する。
【0033】
図4Aは、設備監視装置100の主な構成を示す図である。同図に示すように、設備監視装置100は、プロセッサ101、主記憶装置102(メモリ)、補助記憶装置103(外部記憶装置)、入力装置104、出力装置105、通信装置106、及び光解析ユニット107を備える。これらはバス(bus)や通信ケーブル等を介して通信可能に接続されている。尚、設備監視装置100は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。
【0034】
プロセッサ101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0035】
主記憶装置102は、プロセッサ101がプログラムを実行する際に利用する記憶装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0036】
補助記憶装置103は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)等で構成することができる。補助記憶装置103には、記録媒体の読取装置や通信装置106を介して、非一時的な記録媒体や非一時的な記憶装置を備えた他の情報処理装置からプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置103に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置102に随時読み込まれる。
【0037】
入力装置104は、外部からの情報の入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力装置等である。
【0038】
出力装置105は、処理経過や処理結果等の各種情報を外部に出力するインタフェースである。出力装置105は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置106を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0039】
入力装置104と出力装置105は、ユーザとの間での対話処理(情報の受け付け、情報の提供等)を実現するユーザインタフェースを構成する。
【0040】
通信装置106は、通信ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、公衆通信網、専用線等)を介して他の装置との間の通信を実現する装置である。通信装置106は、通信媒体を介して他の装置との間の通信を実現する、有線方式又は無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール(USB:Universal Serial Bus)等である。
【0041】
光解析ユニット107は、DASにより測定点の振動状態を測定する装置であり、C-OTDRによる振動測定機器や信号処理回路を含む。光解析ユニット107は、光ファイバ4aの端面に入力する光パルス(レーザー光)を生成するCW(連続波)レーザー光源、光パルス発生器、光増幅器、光学機器(光検波器、光干渉器)、信号処理回路(位相計算回路等)等を含む。尚、光解析ユニット107と光ファイバ4aとの接続は、例えば、変電所内に設けられているOPGWの芯線の接続口(ソケット)に光解析ユニット107のレーザー光源の出射部を光学的に接続することにより行われる。そのため、接続に際して停電等の電力系統への影響を生じさせることはない。
【0042】
設備監視装置100には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0043】
設備監視装置100が備える各種の機能は、プロセッサ101が、主記憶装置102に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、設備監視装置100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体によって実現される。設備監視装置100は、各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0044】
図4Bは、設備監視装置100の主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、設備監視装置100は、記憶部110、振動状態測定部120、コロナ騒音検出部130、コロナ騒音情報取得部135、汚損状況判定部140、及び、汚損状況提示部145の各機能を備える。
【0045】
上記機能のうち、記憶部110は、測定点毎振動状態111、モデル112、コロナ騒音情報113、コロナ騒音/汚損情報114、及び、設備汚損情報115を記憶する。
【0046】
振動状態測定部120は、DASにより各測定点の振動状態(振動強度、振動周波数)の時間変化(時系列データ)を測定し、測定した結果を測定点毎振動状態111として管理する。
【0047】
コロナ騒音検出部130は、測定点毎振動状態111(各測定点の振動状態の時間変化)に基づき、測定点や径間におけるコロナ騒音の有無を判定する。例えば、コロナ騒音検出部130は、
図3Aや
図3Bに示す情報(グラフ)から取得される、コロナ音及びコロナハム音に相当する周波数の振動強度の大きさのうちの少なくともいずれかが、夫々について設定された閾値を超えている場合に測定点にコロナ騒音が存在すると判定する。
【0048】
また、コロナ騒音検出部130は、例えば、周波数毎の振動強度のパターン(説明変数)とコロナ騒音の有無(目的変数)との関係を学習したモデル(統計モデル又は機械学習モデル。以下、「コロナ騒音検出モデル112A」と称する。)を記憶し、測定点について取得した、周波数毎の振動強度のパターンをコロナ騒音検出モデル112Aに入力することにより、測定点におけるコロナ騒音の有無を判定する。
【0049】
尚、コロナ騒音検出部130は、例えば、径間に設定されている一つ以上の測定点においてコロナ騒音が存在すると判定した場合に当該径間にコロナ騒音が存在すると判定する。
【0050】
コロナ騒音情報取得部135は、測定点毎振動状態111(各測定点の振動状態の時間変化)に基づき、測定点や径間におけるコロナ騒音に関する情報(コロナ音やコロナハム音に相当する振動強度、コロナ騒音に由来する他の周波数の振動強度等)を取得し、取得した情報をコロナ騒音情報113として管理する。
【0051】
例えば、コロナ騒音情報取得部135は、周波数毎の振動強度のパターン(説明変数)とコロナ騒音に関する情報(目的変数)との関係を学習したモデル(統計モデル又は機械学習モデル。以下、「コロナ騒音検出モデル112B」と称する。)を記憶し、測定点について取得した、周波数毎の振動強度のパターンをコロナ騒音検出モデル112Bに入力することにより、測定点におけるコロナ騒音に関する情報を取得し、取得した情報を各測定点のコロナ騒音情報113として管理する。
【0052】
汚損状況判定部140は、記憶部110が記憶している、コロナ騒音情報113を、コロナ騒音の特徴(例えば、コロナ音やコロナハム音の振動強度から推定されるコロナ騒音の大きさ)と送電設備の汚損状況との関係(例えば、非特許文献1に記載されているコロナ騒音と送電線のぬれ性の関係や、非特許文献2に記載されているコロナ騒音とがいしの汚損の状況(汚損の進行度合い)との関係)を示す情報であるコロナ騒音/汚損情報114と対照することにより、測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を示す情報を汚損情報として取得し、取得した汚損情報を設備汚損情報115として管理する。
【0053】
また、汚損状況判定部140は、測定点の近傍に存在する上記の送電設備の汚損状況に応じて当該測定点の近傍に存在する他の送電設備(例えば、当該測定点が設定されている径間の送電鉄塔2の支持物)の点検要否(汚損の進行度合い)を判定(例えば、送電設備(送電線3やがいし)の汚損の度合いが予め設定した閾値を超える場合に他の送電設備は点検要(汚損が進行している可能性がある)と判定)し、その結果を設備汚損情報115として管理する。
【0054】
汚損状況提示部145は、設備汚損情報115の内容をユーザに提供する。例えば、汚損状況提示部145は、ユーザインタフェースを介して設備汚損情報115の内容を表示装置に表示する。
【0055】
図5は、設備監視装置100が行う処理(以下、「設備監視処理S500」と称する。)を説明するフローチャートである。設備監視装置100は、例えば、定期的に、もしくはユーザが指定した任意のタイミングで設備監視処理S500を実行する。以下、同図とともに設備監視処理S500について説明する。
【0056】
まず、振動状態測定部120が、監視対象の径間の一つを選択する(S511)。
【0057】
続いて、振動状態測定部120が、選択中の径間の各測定点の振動状態をDASにより取得し、取得した各測定点の振動状態にフーリエ変換を施し、各測定点の周波数毎の振動強度の時間平均を求めて測定点毎振動状態111として管理する(S512)。
【0058】
続くS513~S517までの処理は、設備監視装置100が、選択中の径間の各測定点の振動状態を測定点毎振動状態111から順次選択しつつ繰り返し行われるループ処理である。
【0059】
まず、S513では、設備監視装置100が、選択中の径間の測定点の一つを選択する。
【0060】
S514では、コロナ騒音検出部130が、選択中の測定点の周波数毎の振動状態に基づき当該測定点のコロナ騒音の有無を判定する。コロナ騒音検出部130が当該測定点にコロナ騒音が有ると判定した場合(S514:Yes)、処理はS515に進む。一方、コロナ騒音検出部130が、当該測定点にコロナ騒音が無いと判定した場合(S514:No)、処理はS517に進む。
【0061】
S515では、コロナ騒音情報取得部135が、選択中の測定点の振動状態からコロナ騒音に関する情報を取得し、取得した情報を当該測定点のコロナ騒音情報113として管理する。
【0062】
S516では、汚損状況判定部140が、コロナ騒音情報113に基づき選択中の測定点の近傍に存在する送電設備(送電線3、がいし、支持物等)の汚損状況や送電設備(支持物等)の点検要否を判定し、判定した結果を設備汚損情報115として管理する。
【0063】
S517では、設備監視装置100が、S513で未選択の測定点があるか否かを判定する。未選択の測定点があれば(S517:Yes)、処理はS513に戻る。全ての測定点を選択済であれば(S517:No)、処理はS518に進む。
【0064】
S518では、設備監視装置100は、S511で未選択の径間があるか否かを判定する。未選択の径間があれば(S518:Yes)、処理はS512に戻る。全ての径間を選択済であれば(S518:No)、処理はS519に進む。
【0065】
S519では、汚損状況提示部145が、設備汚損情報115の内容をユーザに提示する。以上で設備監視処理S500は終了する。
【0066】
図6は、汚損状況提示部145が、設備汚損情報115の内容をユーザに提示する際に生成し表示する画面(以下、「汚損状況提示画面600」と称する。)の一例である。同図に示すように、例示する汚損状況提示画面600は、対象期間の表示欄611と、設備汚損情報表示欄612を有する。
【0067】
このうち対象期間の表示欄611には、コロナ騒音検出部130がコロナ騒音の検出に用いた測定点毎振動状態111の対象期間が表示される。
【0068】
設備汚損情報表示欄612には、設備汚損情報115の内容が表示される。本例では、設備汚損情報115の内容が、径間ID1151、送電鉄塔ID1152、測定点ID1153、汚損状況1154、点検要否1155等の各項目を有する複数のレコードからなる表形式で表示されている。
【0069】
径間ID1151には、径間の識別子である径間IDが格納される。
【0070】
送電鉄塔ID1152には、当該径間を構成している(当該径間の送電線3の両端を支持している)2つの送電鉄塔2の夫々の識別子(送電鉄塔ID)が格納される。
【0071】
測定点ID1153には、当該径間に設けられている測定点の識別子である測定点IDが格納される。
【0072】
汚損状況1154には、汚損状況判定部140が判定した、当該径間における送電設備(支持物等)の汚損状況を示す情報(本例では、「大」、「中」、「小」のいずれか)が格納される。
【0073】
点検要否1155には、当該径間における送電設備(支持物等)の点検要否を示す情報(本例では、「要」、「不要」のいずれか)が格納される。
【0074】
=効果等=
以上に説明したように、本実施形態の設備監視システム1によれば、DASを用いて測定点におけるコロナ騒音に関する情報を取得することができる。
【0075】
また、設備監視システム1によれば、測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を示す情報を取得することができる。
【0076】
また、設備監視装置100は、汚損状況提示画面600をユーザに提示するので、ユーザは、当該画面を参照することで、測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を容易に把握することができる。
【0077】
また、ユーザは、測定点の近傍に存在する送電設備の汚損状況を測定点毎に(測定点の間隔で)把握することができる。
【0078】
また、ユーザは、ぬれ性の高い送電線3や汚損が進行しているがいしの近傍に存在する、汚損の急速な進行が懸念される送電設備を把握することができ、塗装の要否や緊急性を適切に判断して送電設備の保守管理を効率よく行うことができる。
【0079】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0080】
例えば、コロナ騒音情報取得部135が、コロナ騒音情報113の内容を、ユーザインタフェースを介してユーザに提示するようにしてもよい。また、その場合、コロナ騒音情報取得部135が、ユーザから径間や測定点、測定点毎振動状態111を取得した期間等の指定を受け付け、受け付けた指定に応じてコロナ騒音情報113から抽出される情報をユーザに提示するようにしてもよい。
【0081】
また、例えば、設備監視装置100は、モデル112やコロナ騒音/汚損情報114の入力や設定を受け付けるためのユーザインタフェースを備えていてもよい。
【0082】
また、例えば、コロナ騒音検出部130によるコロナ騒音の有無の判定や、コロナ騒音情報取得部135によるコロナ騒音に関する情報の取得を、例えば、
図3Aや
図3Bに示すグラフ(画像)について画像認識処理を行うことにより抽出される特徴量を説明変数として入力すると、コロナ騒音の有無やコロナ騒音に関する情報を目的変数して出力するように学習した機械学習モデルを用いて行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 設備監視システム
2 送電鉄塔
3 送電線
4 OPGW
4a 光ファイバ
100 設備監視装置
107 光解析ユニット
110 記憶部
111 測定点毎振動状態
112 モデル
113 コロナ騒音情報
114 コロナ騒音/汚損情報
115 設備汚損情報
120 振動状態測定部
130 コロナ騒音検出部
135 コロナ騒音情報取得部
140 汚損状況判定部
S500 設備監視処理
600 汚損状況提示画面
【要約】
設備の汚損の進行度合いを適切に見積もる。設備監視システムは、光解析ユニットと情報処理装置とを含んで構成され、送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における光ファイバの周波数毎の振動強度をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、周波数毎の振動強度に基づき、測定点におけるコロナ騒音に関する情報を取得する。上記のコロナ騒音に関する情報は、コロナ騒音に特有の周波数の振動強度を示す情報である。また、上記のコロナ騒音に特有の周波数は、コロナ音の周波数又はコロナハム音の周波数である。設備監視システムは、コロナ騒音に関する情報と送電線の汚損状況との関係を示すコロナ騒音/汚損情報を記憶し、測定点において取得したコロナ騒音に関する情報をコロナ騒音/汚損情報と対照することにより送電設備の汚損状況を示す情報を取得する。