(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】RFIDモジュール
(51)【国際特許分類】
H04B 5/43 20240101AFI20240402BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240402BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20240402BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240402BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20240402BHJP
H04B 5/26 20240101ALI20240402BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H04B5/43
G06K19/077 196
G06K19/077 212
H01F5/00
H01F17/00 A
H01F17/00 C
H01Q7/00
H04B5/26
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2024506999
(86)(22)【出願日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2023031806
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2022140116
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022185616
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】松本 健吾
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-020835(JP,A)
【文献】特開2009-025855(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161608(WO,A1)
【文献】特開平09-116247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0066265(US,A1)
【文献】国際公開第2017/179612(WO,A1)
【文献】特開2002-230501(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0312255(US,A1)
【文献】国際公開第2007/138857(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/43
G06K 19/077
H01F 5/00
H01F 17/00
H01Q 7/00
H04B 5/26
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面と第2主面とを有する基板と、
前記基板の前記第1主面側に配置された電極である第1及び第2ランドと、
前記第2ランドに一方の端子が接続され、前記第1ランドに他方の端子が接続されるRFICチップと、
前記基板の前記第1主面側に配置されるコイル導体と、
前記基板内にある第1電極と、を備え、
前記コイル導体は、
一対の脚部と前記一対の脚部の一端同士を繋ぐ橋絡部とを有し、所定の巻回軸を跨いで一列に配列される複数のコイル素体と、
前記第1主面に配置され、前記コイル素体と接続することでコイル形状を形成する第1導体パターンと、を有し、
前記第1電極は、前記第2ランドと対向することで容量パターンを形成し、かつ、前記第1ランドに第1層間接続導体を介して接続され、
前記第2ランドは、前記コイル導体の一端に電気的に接続され、
前記第1電極は、前記コイル導体の他端に電気的に接続される、
RFIDモジュール。
【請求項2】
前記基板内にある第2導体パターンを備え、
前記第2導体パターンは、前記第1電極を貫通する前記第1層間接続導体と前記コイル導体の他端とに電気的に接続され、
前記第1電極は、第1ランドと対向し、
前記第1電極は、前記第2導体パターンよりも前記RFICチップに近い位置に配置されている、
請求項1に記載のRFIDモジュール。
【請求項3】
前記基板は、前記第1主面側に配置された第1基材層と前記第2主面側に配置された第2基材層を有し、
前記第1基材層は、前記第2基材層の前記第1主面側に積層され、
前記第1電極は、前記第2基材層の第1主面側に配置され、
前記第2導体パターンは、前記第2基材層の前記第2主面側に配置される、
請求項2に記載のRFIDモジュール。
【請求項4】
前記基板は、前記第2基材層の第2主面側が積層される第3基材層をさらに備える、
請求項3に記載のRFIDモジュール。
【請求項5】
前記RFIDモジュールは、前記第1基材層及び前記第2基材層をそれぞれ貫通する第2層間接続導体を備え、
前記第1層間接続導体は、前記第1基材層及び前記第2基材層をそれぞれ貫通し、
前記第1ランドと前記第2導体パターンの一端とが前記第1層間接続導体を介して接続され、
前記第2導体パターンの他端と前記コイル導体の他端とが前記第2層間接続導体を介して接続され、
第1及び第2層間接続導体は、前記第1基材層及び前記第2基材層のそれぞれの長手方向に対向し、
前記第2導体パターンは、前記第1及び第2層間接続導体間に配置される、
請求項
3に記載のRFIDモジュール。
【請求項6】
前記第1導体パターンは、
前記複数のコイル素体それぞれの前記一対の脚部の他端とそれぞれ接続される複数の第2電極と、
前記コイル素体の一対の脚部の他端の一方と接続する第2電極と、前記コイル素体と隣接するコイル素体の一対の脚部の他端の他方と接続する第2電極と、を接続する配線導体とを有し、
複数の前記第2電極及び前記配線導体は、前記第1基材層の第1主面側に配置されている、
請求項3から5のいずれか1つに記載のRFIDモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル導体が実装された基板を有するRFIDモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信デバイスであるRFID(Radio-Frequency Identification)モジュールを商品に付して、商品の管理が行われている。RFIDモジュールの一つの形態として、RFICチップ(Radio-Frequency Integrated Circuit)と共に、アンテナとして機能するコイル導体が絶縁基板上に配置されているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、コイル素体を一列に並べたコイル導体を備えるRFIDモジュールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたRFIDモジュールは共振周波数を下げにくく、通信周波数が低い周波数帯域の場合、共振点がずれることもあった。共振周波数を下げるためにコンデンサやコイルなどを用いるとモジュールのサイズが大型化してしまう。
【0006】
本発明は、大型化を抑制し、共振周波数を下げることが可能なRFIDモジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のRFIDモジュールは、互いに対向する第1主面と第2主面とを有する基板と、基板の第1主面側に配置された電極である第1及び第2ランドと、第2ランドに一方の端子が接続され、第1ランドに他方の端子が接続されるRFICチップと、基板の第1主面側に配置されるコイル導体と、基板内にある第1電極と、を備える。コイル導体は、一対の脚部と一対の脚部の一端同士を繋ぐ橋絡部とを有し、所定の巻回軸を跨いで一列に配列される複数のコイル素体と、第1主面に配置され、コイル素体と接続することでコイル形状を形成する第1導体パターンと、を有する。第1電極は、第2ランドと対向することで容量パターンを形成し、かつ、第1ランドに第1層間接続導体を介して接続される。第2ランドは、コイル導体の一端に電気的に接続され、第1電極は、コイル導体の他端に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大型化を抑制し、共振周波数を下げることが可能なRFIDモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態のRFIDモジュールの概略を示す透視斜視図
【
図9】実施形態の変形例における配線電極を示す平面図
【
図10】実施形態の変形例における配線電極を示す平面図
【
図11】実施形態の変形例における配線電極を示す平面図
【
図12】実施形態の変形例における積層基板の各基材層を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものであり、本発明がこの構成に限定されるものではない。また、以下の実施の形態において具体的に示される数値、形状、構成、ステップ、ステップの順序などは、一例を示すものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、全ての実施の形態において、各変形例における構成も同様であり、各変形例に記載した構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【0011】
(実施形態)
次に、本発明に係るRFIDモジュール1の概略構成について説明する。
図1は、本発明に係る実施形態のRFIDモジュール1の全体斜視図である。
図2は、実施形態のRFIDモジュール1の側面透視図である。図中において、X-Y-Z座標系は、発明の理解を容易にするものであって、発明を限定するものではない。X軸方向はRFIDモジュール1の長手方向を示し、Y軸方向は奥行き(幅)方向を示し、Z軸方向は厚さ方向を示している。X、Y、Z方向は互いに直交する。また、実施形態において、Z軸のプラス方向を上方向、Z軸のマイナス方向を下方向として説明する。
【0012】
実施形態のRFIDモジュール1は、積層基板3と、積層基板3の上面である第1主面3aに配置されたコイル集合体5及びRFICチップ7と、コイル集合体5及びRFICチップ7とを封止する樹脂層9とを備える。RFICチップ7は、入出力端子である第1端子7a及び第2端子7bを有する(
図5参照)。積層基板3の下面である第2主面3bと第1主面3aとは互いに対向している。
【0013】
次に、
図5及び
図6を参照する。積層基板3は、第1基材層11、第2基材層13、及び第3基材層15を有し、第3基材層15を底の基材として、コイル集合体5に向けて第2基材層13が第3基材層15の上に積層され、第1基材層11が第2基材層13の上にさらに積層されている。第1基材層11~第3基材層15は、それぞれ絶縁性であり、例えば、ガラスエポキシ基材やセラミック基材などである。
【0014】
第1基材層11の第3主面11aは、積層基板3の第1主面3aに相当する。第1基材層11の第2主面3b側の第4主面11bと、第2基材層13の第1主面3a側の第5主面13aとが接している。第2基材層13の第2主面3b側の第6主面13bと、第3基材層15の第1主面3a側の第7主面15aとが接している。第3基材層15の下面である第8主面15bは、第7主面15aと対向しており、積層基板3の第2主面3bに相当する。
【0015】
積層基板3の第1主面3a上に第1レジスト層16が積層され、積層基板3の第2主面3bの面上に第2レジスト層17が積層されている。第1レジスト層16は、第1基材層11上に配置された電極や配線のショートを防止し、第2レジスト層17は、後で説明する第1層間接続導体55及び第2層間接続導体57の下端を覆って保護する。第1レジスト層16及び第2レジスト層は、例えば、絶縁性の樹脂層である。
【0016】
図4に示すように、コイル集合体5は、複数のコイル素体21と、複数のコイル素体21を一体化する樹脂製のブロック体23とを有する。RFIDモジュール1は、コイル集合体5の複数のコイル素体21と、第1基材層11の上面である第3主面11aに配置された第1導体パターン26とにより巻回軸WAの周囲を巻回するコイル導体25が構成され(
図1参照)、コイル導体25がアンテナとして機能する。実施形態のRFIDモジュール1における通信周波数帯域は、例えば、860MHzから960MHzのUHF帯である。コイル集合体5の巻き数や寸法は通信特性に合わせて変更してもよい。
【0017】
図3に示すように、コイル素体21は、略平行に配置された一対の脚部31と、両脚部31の一端同士を繋ぐ橋絡部33と、両脚部31のそれぞれの他端の先端が略90°に屈曲された基板接続部35とを有する。
【0018】
ブロック体23は、各コイル素体21の配列状態を固定する。また、
図4に示すように、ブロック体23において各コイル素体21の両脚部31と橋絡部33とで囲まれた部分に樹脂が充填されている。すなわち、ブロック体23にはコイルコアを収容するための凹部がない。また、各コイル素体21の両脚部31は、ブロック体23の側面23aから露出している。なお、ブロック体23は、例えば、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂で形成される。
【0019】
各コイル素体21は、それぞれ、両脚部31と橋絡部33とにより巻回軸WAを跨ぐ位置でブロック体23に固定される。コイル集合体5が第1基材層11に実装された状態において、各コイル素体21は、一方の脚部31それぞれがコイル導体25の巻回軸WAに対して一方側に配置されるとともに、他方の脚部31それぞれが巻回軸WAに対して他方側に配置された状態で、巻回軸WAと平行な方向に配列されて固定される(
図1および
図4参照)。なお、各コイル素体21の基板接続部35は、ブロック体23に被覆されておらず、各基板接続部35がコイル集合体5を第1基材層11に実装するときの接続部となる。
【0020】
樹脂層9は、コイル集合体5及びRFICチップ7を封止するものであり、第1基材層11の第3主面11a及び第1レジスト層16に積層される。樹脂層9は、例えば、エポキシ樹脂などの一般的な封止用樹脂で形成されている。
【0021】
次に、
図7を参照して積層基板3について説明する。
図7は積層基板3の各基材を示す平面図である。
図7(a)は、最上層の第1基材層11の第3主面11aを示す平面図である。
図7(b)は、中層の第2基材層13の第5主面13aを示す平面図である。
図7(c)は、中層の第2基材層13の第5主面13aを透視した透視平面図である。
図7(d)は、最下層の第3基材層15の第7主面15aを示す平面図である。
【0022】
図7(a)に示すように、第1基材層11の上面である第3主面11aには、RFICチップ7の第1端子7a及び第2端子7bとそれぞれ接続される第1ランド41及び第2ランド43と、複数のコイル素体21のそれぞれと接続することでコイル形状を形成する第1導体パターン26とが配置されている。第1導体パターン26は、複数の第2電極27と、配線導体28、29、30と、補助電極45と、を有する。配線導体28は、一方側(Y軸方向プラス側)の第2電極27とX軸のプラス方向に1つずれた他方側(Y軸方向マイナス側)の第2電極27とを接続する。第1ランド41及び第2ランド43は、それぞれ、金属電極であり、RFICチップ7の第1端子7a及び第2端子7bとそれぞれ接触して電気的に接続する。第1ランド41から最も離れた他方側の第2電極27は、配線導体29を介して補助電極45と電気的に接続されている。第1ランド41に最も近い一方側の第2電極27は、配線導体30を介して第2ランド43と電気的に接続されている。
【0023】
図7(b)に示すように、第2基材層13の上面である第5主面13aには、第1ランド41及び第2ランド43の下方に第1電極47が配置されている。第1電極47は第1ランド41及び第2ランド43と対向しており、第1ランド41及び第2ランド43と第1電極47とで容量C1を発生する。
【0024】
図5、
図6、及び
図7(c)に示すように、第2基材層13の下面である第6主面13bには、補助電極49、51、及び第2導体パターン53が配置されている。
図7(c)は、第5主面13aを上方から透視した図である。
【0025】
積層基板3において、第1基材層11及び第2基材層13をそれぞれ貫通する第1層間接続導体55及び第2層間接続導体57が形成されている。第1層間接続導体55は、第1ランド41から、第1電極47、補助電極49まで接続する導電ビアである。第2層間接続導体57は、補助電極45と補助電極51とを接続する導電ビアである。
【0026】
第1及び第2層間接続導体55、57は、例えば、絶縁性の第1基材層11及び第2基材層13に設けられた孔に充填された導電性ペーストが固化(金属化)した導体であるが、メッキスルーホールでもよい。第1及び第2層間接続導体55、57は、それぞれ、第1基材層11及び第2基材層13のそれぞれの長手方向において対向して配置されている。
【0027】
第2導体パターン53の折り返し部53bは、配線パターンの延びる方向が折り返されている。第2導体パターン53は、例えば、第2基材層13の長手方向(積層基板3の長手方向)に延びる直線パターン53aと直線パターン53aの延びる方向が折り返される折り返し部53bとを有するミアンダパターンである。第2導体パターン53は、3本以上の奇数の直線パターン53aと折り返し部53bとを有し、補助電極49と補助電極51とを接続する。
【0028】
このように、ミアンダパターンの振幅方向が第2基材層13の長手方向(X軸方向)となるので、ミアンダパターンの振幅方向が第2基材層13の短手方向(Y軸方向)となる場合に比べて、折り返し部53bの個数を少なくすることができ、ミアンダパターンの中心と内側との経路長の差を小さくすることができる。ミアンダパターンを流れる電流は、ミアンダパターンの内側を流れやすいので、ミアンダパターンを設計した長さと実際に流れる長さとの差を小さくすることができるので、ミアンダパターンのL成分のずれを低減することができる。
【0029】
また、第2導体パターン53は、第1及び第2層間接続導体55、57の間に配置されている。したがって、第2導体パターン53が長手方向において第1及び第2層間接続導体55、57よりも外側に配置されていないので、製造工程もしくは製造後のハンドリング等において、RFIDモジュールと他の物品との接触等が発生する場合に、第2導体パターン53が削られるのを防止することができる。
【0030】
ミアンダパターンである第2導体パターン53のパターンの振幅の中心軸WBは、コイル導体25の巻回軸WAと交差しており、例えば、直交している。これにより、コイル導体25のインダクタンスL1と第2導体パターン53のインダクタンスL2とが相互干渉するのを低減することができる。
【0031】
図7(d)に示すように、第3基材層15が第2基材層13の下方に配置されている。積層基板3が、第2基材層13の第2主面3b側が積層される第3基材層15を備えることで、第2導体パターン53が第3基材層15により覆われるので、第2導体パターン53が擦れて剥がれるのを防止することができる。なお、第1層間接続導体55及び第2層間接続導体57は、第3基材層15の上面である第7主面15aにまで到達している。
【0032】
また、
図5及び
図6に示すように、第1電極47は、第2導体パターン53よりもRFICチップ7に近い位置に配置されている。これにより、第1電極47の大きさに対してより大きな容量C1を発生させることができる。
【0033】
第2電極27、配線導体28、29、30、第1ランド41、第2ランド43、補助電極45、第1電極47、補助電極49、51、及び第2導体パターン53は、それぞれ導体であり、例えば、銅箔をフォトリソグラフィによってパターニングしたものである。
【0034】
次に、
図8を参照して、RFIDモジュール1の回路構成について説明する。
図8はRFIDモジュール1の等価回路図である。
【0035】
RFIDモジュール1内においてLC並列共振回路が構成されており、通信周波数の電波に対してマッチングしているので、通信周波数の電波をコイル導体25が受信するとRFICチップ7に電流が流れる。コイル導体25はインダクタンスL1を有し、第2導体パターン53はインダクタンスL2を有する。容量C1は、第1ランド41、第2ランド43、第1基材層11、及び、第1電極47で構成される。また、RFICチップ7は、内部に抵抗Rと容量C2とを有する。
【0036】
RFIDモジュール1の合成インダクタンスLは、インダクタンスL1とL2とにより、L=L1+L2となる。また、RFIDモジュール1の合成容量Cは、容量C1とC2とにより、C=C1+C2となる。また、RFIDモジュール1の共振周波数fは、次の式により算出される。
【数1】
【0037】
したがって、コイル導体25の長さが長くなるほど、インダクタンスL1が大きくなり、合成インダクタンスLも大きくなって、共振周波数fが小さくなる。また、容量C1が大きくなるほど、合成容量Cも大きくなって、共振周波数fが小さくなる。通信周波数との共振周波数を小さくしなければいけない場合、従来のRFIDモジュールでは対応できなかったが、本実施形態1のRFIDモジュール1では、ミアンダパターンのコイル導体25を長くする、または、第1電極の面積を大きくする、または、その両方により、対応することができる。
【0038】
以上のように、実施形態のRFIDモジュール1は、互いに対向する第1主面3aと第2主面3bとを有する積層基板3と、積層基板3の第1主面3a側に配置された電極である第1ランド41及び第2ランド43と、第2ランド43に一方の第2端子7bが接続され、第1ランド41に他方の第1端子7aが接続されるRFICチップ7と、積層基板3の第1主面3a側に配置されるコイル導体25と、積層基板3内にある第1電極47と、を備える。コイル導体25は、一対の脚部31と一対の脚部31の一端同士を繋ぐ橋絡部33とを有し、所定の巻回軸を跨いで一列に配列される複数のコイル素体21と、第1主面3aに配置され、コイル素体21と接続することでコイル形状を形成する第1導体パターン26と、を有する。第1電極47は、第2ランド43と対向することで容量パターンを形成し、かつ、第1ランド41に第1層間接続導体55を介して接続され、第2ランド43は、コイル導体25の一端に電気的に接続され、第1電極47は、コイル導体25の他端に電気的に接続される。
【0039】
この構成のRFIDモジュール1によれば、第1ランド41と第2ランド43の間の直下において、第1ランド41と第1層間接続導体55を介して接続される第1電極47が第2ランド43と対向しているので容量が発生する。共振回路の一部で容量が発生するので、RFIDモジュール1の共振周波数を低くすることができる。また、第2ランド43を利用して容量パターンを形成しているので、新たに平行平板コンデンサを形成するよりも小さなスペースで容量パターンを形成することができる。共振周波数を低くするのに、コイル部品やコンデンサを必要としないので、共振周波数を低くするためにRFIDモジュール1の大型化をする必要もない。さらに、第1電極47及び第2ランド43の大きさによって容量を調整することができるので、共振周波数の調整を容易にすることができる。また、第1電極47が第1ランド41及び第2ランド43の間の直下に配置されているので、RFICチップ7が実装される第1ランド41及び第2ランド43周辺の積層基板3の剛性を向上させることができる。
【0040】
また、RFIDモジュール1は、積層基板3内にある第2導体パターン53を備え、第2導体パターン53は、第1電極47を貫通する第1層間接続導体55とコイル導体25の他端とに電気的に接続され、第1電極47は、第1ランド41と対向し、第1電極47は、第2導体パターン53よりもRFICチップ7に近い位置に配置されている。
【0041】
また、積層基板3は、第1主面3a側に配置された第1基材層11と第2主面3b側に配置された第2基材層13を有する。第1基材層11は、第2基材層13の第1主面3a側に積層される。第1電極47は、第2基材層13の第1主面側に積層され、第2導体パターン53は、第2基材層13の第2主面側に積層される。第1電極47と第2導体パターン53とを離れて配置しているので、第2導体パターン53が第1ランド41及び第2ランド43と容量成分を発生するのを低減し、容量成分を発生させる第1電極47の面積とインダクタンスを発生させる第2導体パターン53の長さを設計しやすくする。
【0042】
また、RFIDモジュール1は、第1基材層11及び第2基材層13をそれぞれ貫通する第2層間接続導体57を備える。RFICチップ7の他端である第1ランド41と第2導体パターン53の一端とが第1層間接続導体55を介して接続される。第2導体パターン53の他端とコイル導体25の他端である補助電極45とが第2層間接続導体57を介して接続される。第1及び第2層間接続導体55、57は、第1基材層11及び第2基材層13のそれぞれの長手方向に対向し、第2導体パターン53は、第1及び第2層間接続導体55、57間に配置される。
【0043】
また、第1導体パターン26は、複数のコイル素体21それぞれの一対の脚部31の他端とそれぞれ接続される複数の第2電極27と、コイル素体21の一対の脚部31の他端の一方と接続する第2電極27と、コイル素体21と隣接するコイル素体21の一対の脚部31の他端の他方と接続する第2電極27と、を接続する配線導体28とを有する。複数の第2電極27及び配線導体28は、第1基材層11の第1主面3a側に配置されている。これにより、複数のコイル素体21を積層基板3に配置してコイル導体25を構成することができる。
【0044】
次に、
図9を参照して実施形態の変形例1を説明する。
図9は、実施形態の変形例1における中層の第2基材層13の第6主面13bを示す透視平面図である。ミアンダパターンの第2導体パターン53は、S字形状のように配置されてもよい。補助電極49から補助電極51に向けて延びる直線パターン53aが第2基材層13の中央部寄りで折り返されて補助電極49に向けて延び、再び、第2基材層13の中央部寄りで折り返されて補助電極51に向けて延びもよい。変形例1において、2つの折り返し部53bが第2基材層13の長手方向において中央部寄りに配置されている。このような構成であっても、実施形態のRFIDモジュール1と同様の効果を得ることができる。
【0045】
次に、
図10を参照して実施形態の変形例2を説明する。
図10は、実施形態の変形例2における中層の第2基材層13の第5主面13aを透視した透視平面図である。補助電極49から補助電極51に向けて延びる直線パターン53aが第2基材層13の中央部寄りで折り返されて補助電極49に向けて延び、補助電極49の近傍で折り返されて補助電極51に向けて延びもよい。変形例2において、2つの折り返し部53bのうち1の折り返し部53bが第2基材層13の長手方向において中央部寄りに配置されている。このような構成であっても、実施形態のRFIDモジュール1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
次に、
図11を参照して実施形態の変形例3を説明する。
図11は、実施形態の変形例3における中層の第2基材層13の第5主面13aを透視した透視平面図である。第2導体パターン53は、ミアンダパターンの代わりに折り返し部を有するループパターンであってもよい。このような構成であっても、実施形態のRFIDモジュール1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
本発明は、上記各実施の形態のものに限らず、次のように変形実施することができる。
【0048】
上記実施形態において、第2導体パターン53のミアンダパターンの振幅方向が第2基材層13の長手方向(X軸方向)となっているがこれに限らない。第2導体パターン53のミアンダパターンの振幅方向が第2基材層13の短手方向(Y軸方向)であってもよい。
【0049】
上記実施の形態において、第1層間接続導体55及び第1ランド41は、第2ランド43よりも積層基板3の長手方向内側に配置されていたがこれに限らない。
図12(a)~(d)に示すように、第1層間接続導体55及び第1ランド41は、第2ランド43よりも積層基板3の長手方向外側に配置されてもよい。
【0050】
本発明をある程度の詳細さをもって各実施の形態において説明したが、これらの実施の形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、各実施の形態における要素の組合せや順序の変化は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0051】
(実施形態の概要)
本発明に係る第1の態様のRFIDモジュールは、互いに対向する第1主面と第2主面とを有する基板と、基板の第1主面側に配置された電極である第1及び第2ランドと、第2ランドに一方の端子が接続され、第1ランドに他方の端子が接続されるRFICチップと、基板の第1主面側に配置されるコイル導体と、基板内にある第1電極と、を備える。コイル導体は、一対の脚部と一対の脚部の一端同士を繋ぐ橋絡部とを有し、所定の巻回軸を跨いで一列に配列される複数のコイル素体と、第1主面に配置され、コイル素体と接続することでコイル形状を形成する第1導体パターンと、を有する。第1電極は、第2ランドと対向することで容量パターンを形成し、かつ、第1ランドに第1層間接続導体を介して接続される。第2ランドは、コイル導体の一端に電気的に接続され、第1電極は、コイル導体の他端に電気的に接続される。
【0052】
この態様のRFIDモジュールは、第1ランドと第2ランドの間において、第1ランドと第1層間接続導体を介して接続される第1電極が第2ランドと対向しているので容量C1が発生する。共振回路の一部で容量が発生するので、RFIDモジュールの共振周波数を低くすることができる。また、第2ランドを利用して容量パターンを形成しているので、新たに平行平板コンデンサを形成するよりも小さなスペースで容量パターンを形成することができる。共振周波数を低くするのに、コイル部品やコンデンサを必要としないので、共振周波数を低くするためにRFIDモジュールの大型化をする必要もない。さらに、第1電極及び第2ランドの大きさによって容量を調整することができるので、共振周波数の調整を容易にすることができる。また、RFICチップ7が実装される第1ランド41及び第2ランド43周辺の積層基板3の剛性を向上させることができる。
【0053】
第2の態様によれば、第1の態様のRFIDモジュールにおいて、基板内にある第2導体パターンを備える。第2導体パターンは、第1電極を貫通する第1層間接続導体とコイル導体の他端とに電気的に接続される。第1電極は、第1ランドと対向し、第1電極は、第2導体パターンよりもRFICチップに近い位置に配置されている。
【0054】
第3の態様によれば、第2の態様のRFIDモジュールにおいて、基板は、第1主面側に配置された第1基材層と第2主面側に配置された第2基材層を有する。第1基材層は、第2基材層の第1主面側に積層され、第1電極は、第2基材層の第1主面側に配置され、第2導体パターンは、第2基材層の第2主面側に配置される。
【0055】
第4の態様によれば、第3の態様のRFIDモジュールにおいて、基板は、第2基材層の第2主面側が積層される第3基材層をさらに備える。第3基材層により第2基材層の第2主面側に配置された第2導体パターンが覆われるので、第2導体パターンが他の物体とこすれて剥がれるのを防止することができる。
【0056】
第5の態様によれば、第3の態様または第4の態様のRFIDモジュールにおいて、RFIDモジュールは、第1基材層及び第2基材層をそれぞれ貫通する第2層間接続導体を備える。第2層間接続導体は、第1基材層及び第2基材層をそれぞれ貫通し、第1ランドと第2導体パターンの一端とが第1層間接続導体を介して接続される。第2導体パターンの他端とコイル導体の他端とが第2層間接続導体を介して接続される。第1及び第2層間接続導体は、第1基材層及び第2基材層のそれぞれの長手方向に対向し、第2導体パターンは、第1及び第2層間接続導体間に配置される。
【0057】
第6の態様によれば、第3の態様から第5の態様のいずれかのRFIDモジュールにおいて、第1導体パターンは、複数のコイル素体それぞれの一対の脚部の他端とそれぞれ接続される複数の第2電極と、コイル素体の一対の脚部の他端の一方と接続する第2電極と、コイル素体と隣接するコイル素体の一対の脚部の他端の他方と接続する第2電極と、を接続する配線導体とを有する。複数の第2電極及び配線導体は、第1基材層の第1主面側に配置されている、第2基材層の第2主面側が積層される第3基材層をさらに備える。
【0058】
第7の態様によれば、第2の態様から第6の態様のいずれかのRFIDモジュールにおいて、第2導体パターンは、パターンの延びる方向が折り返される折り返し部を有する。共振回路の一部である第2導体パターンはパターンの延びる方向が折り返される折り返し部を有するので、パターン長を長くすることができ、第2導体パターンのインダクタンスを大きくすることができる。これにより、RFIDモジュール1の共振周波数をさらに低くすることができる。
【0059】
第8の態様によれば、第7の態様のRFIDモジュールにおいて、第2導体パターンは、基板の長手方向に延びる直線パターンと直線パターンの延びる方向が折り返される折り返し部とを有するミアンダパターンである。
【符号の説明】
【0060】
1 RFIDモジュール
3 積層基板
3a 第1主面
3b 第2主面
5 コイル集合体
7 RFICチップ
7a 第1端子
7b 第2端子
9 樹脂層
11 第1基材層
11a 第3主面
11b 第4主面
13 第2基材層
13a 第5主面
13b 第6主面
15 第3基材層
15a 第7主面
15b 第8主面
16 第1レジスト層
17 第2レジスト層
21 コイル素体
23 ブロック体
23a 側面
25 コイル導体
26 第1導体パターン
27 第2電極
28、29,30 配線導体
31 脚部
33 橋絡部
35 基板接続部
41 第1ランド
43 第2ランド
45 補助電極
47 第1電極
49、51 補助電極
53 第2導体パターン
53a 直線パターン
53b 折り返し部
55 第1層間接続導体
57 第2層間接続導体
WA 巻回軸
WB 中心軸
【要約】
RFIDモジュールは、基板と、基板の第1主面側に配置された電極である第1及び第2ランドと、第2ランドに一方の端子が接続され、第1ランドに他方の端子が接続されるRFICチップと、基板の第1主面側に配置されるコイル導体と、基板内にある第1電極と、を備える。第1電極は、第2ランドと対向することで容量パターンを形成し、かつ、第1ランドに第1層間接続導体を介して接続される。第2ランドは、コイル導体の一端に電気的に接続され、第1電極は、コイル導体の他端に電気的に接続される。