(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20240402BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240402BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240402BHJP
C08K 9/12 20060101ALI20240402BHJP
C08L 71/08 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08J3/20 B CEZ
C08K3/36
C08K5/17
C08K9/12
C08L71/08
(21)【出願番号】P 2019012821
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2018028697
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(72)【発明者】
【氏名】清水 朋直
(72)【発明者】
【氏名】山川 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】永沢 友康
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-170771(JP,A)
【文献】特開2005-171208(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170649(WO,A1)
【文献】特開2014-152150(JP,A)
【文献】特開2019-143050(JP,A)
【文献】特開2008-031309(JP,A)
【文献】特開昭63-159214(JP,A)
【文献】特開2020-180903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08J 3/00- 7/18
C09C 1/00- 3/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリールエーテルケトン樹脂の含有率が50質量%以上である有機マトリックス中にシリカ系フィラーを含むフィラーが分散したポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を製造する方法であって、
シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂との総質量を基準とした質量%で表して30~90質量%がポリアリールエーテルケトン樹脂で、残部がシリカ系フィラーとなる配合割合で、前記シリカ系フィラーと前記ポリアリールエーテルケトン樹脂とを溶融混練する溶融混練工程を含み、
前記溶融混練工程では、シラノール基
を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物の存在下に、前記ポリアリールエーテルケトン樹脂の融点以上500℃以下の温度で前記溶融混練を行うことにより、製造目的物である前記ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を熱分解温度650℃の条件での熱分解ガスクロマトグラフ質量分析で分析を行った場合に、ヒドロキシベンゾニトリル及び/又はヒドロキシベンゾニトリル置換体が検出されるようにする、
ことを特徴とする、前記ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記ポリアリールエーテルケトン樹脂の融点以上500℃以下の温度に保持された溶融混練装置に、(1)前記ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーと前記アミン化合物とを一括で投入するか、又は(2)ポリアリールエーテルケトン樹脂を投入して溶融させた後にシリカ系フィラーとアミン化合物を一括で投入して、前記溶融混練を行う、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記溶融混練工程では、表面に前記アミン化合物が吸着したシリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂とを混練する、請求項1に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法。
【請求項4】
表面に前記アミン化合物が吸着したシリカ系フィラーを準備する工程として、
前記シリカ系フィラーと前記アミン化合物とを揮発性有機溶媒中で混合した後に該揮発性有機溶媒を除去する工程、又は
前記シリカ系フィラーを前記アミン化合物の蒸気で処理する工程
を更に含む、請求項3に記載のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーエンジニアリング樹脂は、電気・電子分野、航空宇宙分野、自動車産業、医療分野、一般工業分野等、幅広い用途に使用されている。このスーパーエンジニアリング樹脂の中でも、特にポリアリールエーテルケトン樹脂は、優れた化学的性質、物理的性質を有することから様々な分野での利用が有望視されている。
【0003】
さらに、スーパーエンジニアリング樹脂に、剛性、強度、寸法特性などを向上させることを目的として、無機フィラーを含有させ、樹脂複合材料として使用することが広く行われている。無機フィラーとしては、シリカ系フィラーなどが広く使用されている。
【0004】
たとえば、歯科治療の分野においては、ポリアリールエーテルケトン樹脂にシリカ系フィラーなどを含有させたポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を歯科材料として用いる技術が提案されており、義歯、人工歯、義歯床、歯科用インプラント(フィクスチャー、アバットメント、上部構造)、歯冠修復材料、支台築造材料の歯科の各種用途に使用することが例示されている(例えば、特許文献1、2)。
【0005】
ポリアリールエーテルケトン樹脂に無機フィラーを配合する方法としては、ポリアリールエーテルケトン樹脂を熱によって可塑化した状態で無機フィラーと混練する、溶融混練によって行われることが一般的である。溶融混練の際には、ポリアリールエーテルケトン樹脂と無機フィラーのなじみ性を向上させることが、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料が高い強度などの良好な物性を得る上で重要である。例えば、特許文献1及び2では、ポリアリールエーテルケトン樹脂と無機フィラーのなじみ性を向上させることを目的として、無機フィラーをシランカップリング剤で表面処理することにより、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の強度が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-144783号公報
【文献】特開2013-144784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料において、高い強度を得るための技術が提案されているが、より高強度なポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料が求められている。
【0008】
そこで本発明では、従来よりも高強度なポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料及びそれを製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物の存在下でポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとを溶融混練する事によって、高強度なポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料が得られることを見出すと共に、当該複合材料の構造的特徴に関する知見を得ることに成功し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリアリールエーテルケトン樹脂の含有率が50質量%以上である有機マトリックス中にシリカ系フィラーを含むフィラーが分散したポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を製造する方法であって、シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂との総質量を基準とした質量%で表して30~90質量%がポリアリールエーテルケトン樹脂で、残部がシリカ系フィラーとなる配合割合で、前記シリカ系フィラーと前記ポリアリールエーテルケトン樹脂とを溶融混練する溶融混練工程を含み、前記溶融混練工程では、シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物の存在下に、前記ポリアリールエーテルケトン樹脂の融点以上500℃以下の温度で前記溶融混練を行うことにより、製造目的物である前記ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を熱分解温度650℃の条件での熱分解ガスクロマトグラフ質量分析で分析を行った場合に、ヒドロキシベンゾニトリル及び/又はヒドロキシベンゾニトリル置換体が検出されるようにする、ことを特徴とする、前記ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法である。
【0011】
本発明の実施態様としては、前記シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物として、分子量が500以下であるアミン化合物を使用する、ことが好ましい。
【0012】
さらには、シリカ系フィラー、シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物及び揮発性溶媒を含む溶液から揮発性溶媒を除去することにより、シリカ系フィラーを、シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物で処理することが好ましい。
【0013】
また、シリカ系フィラーとシラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物とを、シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物が揮発する状態で共存させることにより、シリカ系フィラーを、シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物で処理することも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来よりも高強度である、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとを含むポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料及びその製造方法を提供することが出来る。
【0016】
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法を用いることによって、高い強度を有するポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明の製造方法によって得られた前記複合材料の分析結果から、本発明者らは以下のように推察している。
【0017】
すなわち、本発明の製造方法によって得られたポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を熱分解温度650℃の条件での熱分解ガスクロマトグラフ質量分析で分析を行った場合に、ヒドロキシベンゾニトリル及び/又はヒドロキシベンゾニトリル置換体が検出されることが確認された。後述する参考例に示されるように、特定のアミン化合物の存在下に溶融混錬を行うことなく製造した(従来の複合体に相当する比較例1の)複合体と、特定のアミン化合物と、を単に混ぜて熱分解ガスクロマトグラフ質量分析を行った場合には、これらは全く検出されないことから、ヒドロキシベンゾニトリル及び/又はヒドロキシベンゾニトリル置換体の検出は、ポリアリールエーテルケトン樹脂のケトン基とアミン化合物が溶融混練時の高温下で反応してケチミン構造が生成したことを示すものであると考えられる。そして、このケチミン部位と、シリカ系フィラーのシラノール基とが相互作用をしながら溶融混練が行われることによって、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーのなじみ性が向上し混練性が向上し、その結果、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーの複合化がより高度に進行し、複合材料の耐破断性が向上することによって強度(曲げ強さ)が向上したものと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法では、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとを溶融混練する。
【0020】
ポリアリールエーテルケトン樹脂は、その構造単位として、芳香族基、エーテル基(エーテル結合)およびケトン基(ケトン結合)を少なくとも含む熱可塑性樹脂であり、多くは、フェニレン基がエーテル基およびケトン基を介して結合した直鎖状のポリマー構造を持つ。ポリアリールエーテルケトン樹脂の代表例としては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが挙げられる。なお、ポリアリールエーテルケトン樹脂の構造単位を構成する芳香族基は、ビフェニル構造などのようにベンゼン環を2つまたはそれ以上有する構造を持ったものでもよい。また、ポリアリールエーテルケトン樹脂の構造単位中には、スルホニル基または共重合可能な他の単量体単位が含まれていてもよい。
【0021】
本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造方法により得られるポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を歯科用途で使用する際には、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の物性および色調の観点から、ポリアリールエーテルケトン樹脂としては、主鎖を構成するエーテル基とケトン基とが、エーテル・エーテル・ケトンの順に並んだ繰り返し単位を有するポリエーテルエーテルケトン、もしく、エーテル・ケトン・ケトンの順に並んだ繰り返し単位を有するポリエーテルケトンケトンが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法によって製造されるポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料はシリカ系フィラーを含むものであり、本発明の効果が特に得られやすいことから、配合されるポリアリールエーテルケトン樹脂の配合量は90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されないが、高強度で破断しにくいなどのポリアリールエーテルケトン樹脂の特性を得るために、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
シリカ系フィラーとは、シリカを主成分とする無機粒子である。シリカを主成分とするとは、フィラー中にシリカ成分を50質量%以上含むことを意味し、70質量%以上含まれることが好ましい。このようなシリカ系フィラーとしては、シリカ、シリカ-ジルコニア、シリカ-チタニア、シリカ-アルミナ、あるいはこれらに1族金属酸化物を添加した無機粒子などが挙げられる。
【0024】
シリカ系フィラーの粒径は特に制限されないが、0.05μm~5μmの範囲であることが好ましく、0.1μm~3μmの範囲であることがより好ましい。
【0025】
シリカ系フィラーは、シランカップリング剤で表面処理をすることも可能である。シランカップリング処理を行ったシリカ系フィラーを用いることで粘度の増大が抑制され、取り扱いが容易となるとともに、溶融混練時の負荷を抑制してポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の色調を良好なものとすることが容易となるため好ましい。なお、シリカ系フィラーは表面にシラノール基を有しており、シランカップリング処理を行うことによってシラノール基がシランカップリング剤によって被覆されるが、通常全てのシラノール基が被覆されることは無く、アミン化合物によるポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとの相互作用効果は失われない。なお、本発明においてシラノール基がシランカップリング剤によって被覆されるとは、シランカップリング剤がシラノール基と化学結合している場合やシランカップリング剤がシラノール基と反応せずに相互作用して存在しているだけの場合を含む。
【0026】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等を挙げることができる。
【0027】
なお、シランカップリング処理が過剰に行われてシリカ系フィラーの有機成分が多くなると、溶融混練時に混練物に気泡が混入したり、変色や色むらが発生したりすることが起こりやすくなる。シリカ系フィラー表面の有機成分の量は、大気雰囲気下にて昇温速度10℃/分でシリカ系フィラーの熱重量分析を行い、120℃から800℃までの重量減少率を測定することで算出可能である。該方法で算出した熱重量減少率は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。また、シランカップリング剤が少ない場合にはその効果が十分に得られないため、シランカップリング剤で表面処理された金属酸化物の熱重量減少が少ない場合は、該方法で算出した熱重量減少率は、0.03%以上であることが好ましく、0.07%以上であることがより好ましく、0.1%以上であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明の製造方法によって製造されるポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料中に配合されるシリカ系フィラーの配合量は特に限定されないが、本発明の効果が特に得られやすいことから、10質量%~70質量%の範囲であることが好ましく、15質量%~50質量%の範囲であることがより好ましく、20質量%~40質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の製造方法においては、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーの溶融混練を、アミン化合物の存在下で行う。このことによって高い強度を有するポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を得ることができる。この際に使用するアミン化合物は、分子内にアミノ基を有する化合物である。ポリアリールエーテルケトン樹脂のケトン基とアミン化合物が溶融混練時の高温下で反応してケチミン構造が生成し、このケチミン部位と、シリカ系フィラーのシラノール基が相互作用をする。この状態で溶融混練が行われることによって、混練時のポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーのなじみ性が向上し混練性が向上する。その結果、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーの複合化がより高度に進行し、複合材料の耐破断性が向上することによって強度が向上すると推察される。ただし、アミン化合物がシラノール基又は加水分解してシラノール基となる基を有する場合、該アミン化合物のシラノール基(加水分解してシラノール基となる基が加水分解して生成したシラノール基も含む)とシリカ系フィラーのシラノール基との反応が起こるため、ポリアリールエーテルケトン樹脂とアミン化合物の反応によるケチミン構造の生成能が低下し、本発明の効果が十分に得られない場合がある。そのため、本発明で用いるアミン化合物は、シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物である。シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物であれば、特に制限なく使用することができる。なお、本明細書中では、以下特に断りがない限り、アミン化合物はシラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物のことを示す。
【0030】
このようなアミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アマンタジンなどの第1級脂肪族アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミンなどの第2級脂肪族アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの第3級脂肪族アミン、スペルミジン、スペルミンなどが挙げられる。
【0031】
アミン化合物の分子量は特に限定されないが、分子量が大きい場合、立体障害により、ポリアリールエーテルケトン樹脂とアミン化合物の反応によるケチミン構造の生成能が低下する虞がある。そのため、アミン化合物の分子量は500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。
【0032】
アミン化合物の構造は特に限定されないが、立体的にポリアリールエーテルケトン樹脂とアミン化合物の反応によるケチミン構造の生成が起こりやすい観点から、脂肪族アミンであることが好ましく、第1級脂肪族アミンであることがより好ましい。なお、本発明において脂肪族アミンとは、アミノ基が炭素原子に結合しており、且つ分子内に芳香族基を有さないもののことを言い、分子内の主鎖もしくは側鎖に、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素、ホウ素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などの炭化水素基やアミノ基以外の元素を含んでいても良い。
【0033】
このような好ましいアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミンなどが挙げられる。
【0034】
アミン化合物の存在下で溶融混練を行う方法としては、特に限定されず、いかなる方法を用いてもよく、ポリアリールエーテルケトン樹脂の融点以上の温度に設定した溶融混練装置にポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとアミン化合物とを投入し、混練する方法、シリカ系フィラーをアミン化合物で処理し、該アミン化合物で処理したシリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂とを溶融混練装置に投入し、混練する方法が挙げられる。溶融混練装置としては、例えば、加熱装置付きミキサーや押出機(単軸溶融混練装置、二軸溶融混練装置、三軸溶融混練装置、四軸溶融混練装置など)を使用することができる。これらの中でも、連続的に製造可能で、後述するように次工程での取り扱いが容易な粒状(ペレット状)の複合材料を得ることが容易である押出機による溶融混練が好ましく、二軸溶融混練装置による溶融混練が最も好ましい。
【0035】
二軸溶融混練装置による溶融混練の条件としては、混練温度、スクリューの回転速度、スクリュー構成、原料投入速度などは適宜決定すれば良いが、混練温度は上述のようにポリアリールエーテルケトン樹脂の融点以上に設定する。ただし、温度が高すぎる場合には樹脂の劣化等が発生する虞がある。そのため、混練温度、すなわち、ニーディングスクリューを設置した部分の設定温度は、融点~500℃の範囲であることが好ましく、融点+10℃~450℃の範囲であることがより好ましい。すなわち、ポリアリールエーテルケトン樹脂としてポリエーテルエーテルケトン(融点340℃)を使用する場合、混練温度は340℃~500℃であることが好ましく、350℃~450℃であることがより好ましい。ポリアリールエーテルケトン樹脂としてポリエーテルケトンケトン(融点360℃)を使用する場合、混練温度は360℃~500℃であることが好ましく、370℃~450℃であることがより好ましい。
【0036】
ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとアミン化合物とを溶融混練装置に投入する方法はいかなる手法を用いてもよく、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとアミン化合物とを一括で投入する方法、ポリアリールエーテルケトン樹脂を投入して溶融させた後にシリカ系フィラーとアミン化合物を一括で投入する方法、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカフィラーを一括で投入した後にアミン化合物を投入する方法、ポリアリールエーテルケトン樹脂とアミン化合物を一括で投入した後にシリカ系フィラーを投入する方法、ポリアリールエーテルケトン樹脂を投入して溶融させた後にシリカ系フィラーを投入しさらにアミン化合物を投入する方法、ポリアリールエーテルケトン樹脂を投入して溶融させた後にアミン化合物を投入しさらにシリカ系フィラーを投入する方法などが挙げられる。この中でも、高温での揮発や分解がおこるアミン化合物が効率的にポリアリールエーテルケトン樹脂作用しやすいとの観点や作業性の観点から、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとアミン化合物とを一括で投入する方法もしくはポリアリールエーテルケトン樹脂を投入して溶融させた後にシリカ系フィラーとアミン化合物を一括で投入する方法が好ましい。また、作業性の観点から、シリカ系フィラーをアミン化合物で処理してシリカ系フィラーの表面にアミン化合物を吸着させ、該アミン化合物が表面に吸着したシリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂とを溶融混練することがより好ましい。
【0037】
シリカ系フィラーをアミン化合物で処理する方法(以下、シリカ系フィラーのアミン処理方法ともいう。)は特に限定されないが、例えば、シリカ系フィラーと液状のアミン化合物とを混合する方法、シリカ系フィラーとアミン化合物とを溶媒中で混合した後溶媒を除去する方法、シリカ系フィラーをアミン化合物の蒸気で処理する方法などが挙げられる。これらの中でも、設備の点や試薬の取扱性の観点から実施が容易であること、シリカ系フィラーの表面に吸着させるアミン化合物の量を制御することが容易であること、シリカ系フィラー表面のアミン化合物の分布が均一になりやすいことなどから、シリカ系フィラーとアミン化合物とを溶媒中で混合した後溶媒を除去する方法もしくはシリカ系フィラーをアミン化合物の蒸気で処理する方法が好ましい。
【0038】
シリカ系フィラーとアミン化合物を溶媒中で混合した後溶媒を除去する方法で用いる溶媒は、アミン化合物を溶解させることが出来、且つシリカ系フィラーを分散させることができれば、特に制限なく利用できるが、シリカ系フィラーの表面に十分な量のアミン化合物を吸着させたまま溶媒を除去することが容易であることから、揮発性溶媒であることが好ましい。本発明において、揮発性溶媒とは760mmHgでの沸点が100℃以下で、20℃における蒸気圧が1.0KPa以上であることを言う。
【0039】
このような揮発性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ペンタン、ヘキサン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、水、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエタンなどが挙げられる。これらの揮発性溶媒は単独で使用しても良いし、均一に混合できる場合には複数を混合しても良い。
【0040】
シリカ系フィラーとアミン化合物を溶媒中で混合した後に溶媒を除去する方法としては、公知の方法を特に制限なく使用することが可能であり、例えば、ろ過法、加熱乾燥法、減圧乾燥法、加熱減圧乾燥法、凍結乾燥法、スプレードライ法などが挙げられる。これらの手法を目的に応じて使用すれば良いが、比較的簡単な設備で効率的に溶媒除去を行える観点からは加熱しつつ減圧することで溶媒を除去する加熱減圧乾燥法を好ましい方法としてあげることが出来、効率的に大量生産を行える観点からはシリカ系フィラーを含む溶液(スラリー)を霧状に噴霧して溶媒を除去するスプレードライ法を好ましい方法としてあげることが出来る。各手法の乾燥条件は、使用するアミン化合物と溶媒の性状を鑑みて、適宜決定すれば良い。
【0041】
シリカ系フィラーとアミン化合物を溶媒中で混合した後に溶媒を除去する方法で使用するアミン化合物としては、揮発性が高すぎる場合には溶媒を除去する際に同時に除去されてしまい、シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂との相互作用を十分に促進できない虞があるため、アミン化合物は沸点が30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。このような好ましいアミン化合物としては、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンダジンなどが挙げられる。その中でも特に、上述のアミン化合物の分子量や構造の観点も考慮すると、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミンを、シリカ系フィラーとアミン化合物を溶媒中で混合した後溶媒を除去する方法で特に好ましいアミン化合物として例示することができる。
【0042】
シリカ系フィラーとアミン化合物とを溶媒中で混合した後溶媒を除去する方法では、溶媒中で混合する際のシリカ系フィラーとアミン化合物の配合比は特に限定されないが、アミン化合物の配合量はシリカ系フィラーに対して0.01質量%~10質量%の範囲であることが好ましく、0.03質量%~7質量%の範囲であることがより好ましく、0.05質量%~5質量%の範囲であることがさらに好ましい。溶媒中で混合する際のアミン化合物の配合量をシリカ系フィラーに対して0.01質量%~10質量%の範囲とすることにより、シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂との相互作用を十分に促進しつつ、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の色調を良好なものとすることが容易となる。また、反応効率の観点から、溶媒100質量部に対するシリカ系フィラーの配合量は、10質量部~200質量部の範囲が好ましく、15質量部~100質量部の範囲がより好ましく、25質量部~75質量部の範囲がさらに好ましい。
【0043】
シリカ系フィラーとアミン化合物とを溶媒中で混合する際の、シリカ系フィラー、アミン化合物、溶媒の添加順序に特に制限はない。例えば、シリカ系フィラーと溶媒とを混合してスラリーとし、これにアミン化合物を添加、混合してもよく、アミン化合物と溶媒とを混合してアミン化合物溶液とし、これにシリカ系フィラーを添加、混合してもよい。これらのうち、アミン化合物を添加する前にシリカ系フィラーと溶媒とを混合してスラリーとすることで、アミン化合物添加時にシリカ系フィラーがより分散した状態となり、より均一にシリカ系フィラーのアミン処理を行うことが容易となるため好ましい。
【0044】
シリカ系フィラーをアミン化合物の蒸気で処理する方法では、シリカ系フィラーと気体状のアミン化合物を共存させれば良く、例えば、シリカ系フィラーに気体状のアミン化合物を噴きつけたり、シリカ系フィラーとアミン化合物をアミン化合物が揮発する条件で共存させたりすることで実施することができ、作業性の観点から、密閉容器中でシリカ系フィラーとアミン化合物をアミン化合物が揮発する条件で共存させる方法が好ましい。密閉容器中でシリカ系フィラーとアミン化合物をアミン化合物が揮発する条件で共存させる方法では、温度や圧力は使用するアミン化合物の性状に合わせてアミン化合物が揮発するよう適宜選択すれば良く、密閉容器中を加熱もしくは冷却したり、加圧もしくは減圧したりしてもよいが、操作が簡単なことから常温・常圧下で行うことが好ましい。使用するアミン化合物としては、効率的に常温・常圧下で処理することが容易であるため揮発性が高いものが好ましいが、揮発性が高すぎる場合にはシリカ系フィラーを処理した後の保管中や溶融混練の初期段階で揮発してしまい、シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂との相互作用を十分に促進できない虞がある。そのため、アミン化合物のシリカ系フィラーと共存させる圧力下での沸点が、共存させる温度に対して、+100℃以下であるものが好ましく、+70℃以下であるものが好ましい。一方、アミン化合物の沸点は、常圧下で0℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。すなわち、例えば常温(25℃)・常圧下でシリカ系フィラーとアミン化合物を共存させる場合、アミン化合物は沸点が0℃~125℃の範囲にあるものが好ましく、30℃~95℃の範囲にあるものがより好ましい。このような特に好ましいアミン化合物としては、常温・常圧下でシリカ系フィラーとアミン化合物を共存させる場合は、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミンなどが挙げられる。その中でも特に、上述のアミン化合物の分子量や構造の観点も考慮すると、n-プロピルアミン、n-ブチルアミンを、密閉容器中でシリカ系フィラーとアミン化合物をアミン化合物が揮発する条件で共存させる方法で特に好ましいアミン化合物として例示することができる。
【0045】
シリカ系フィラーをアミン化合物の蒸気で処理する方法では、シリカ系フィラーとアミン化合物の配合比は特に限定されないが、アミン化合物の配合量はシリカ系フィラーに対して0.001質量%~50質量%の範囲であることが好ましく、0.005質量%~20質量%の範囲であることがより好ましく、0.01質量%~1質量%の範囲であることがさらに好ましい。アミン化合物の配合量をシリカ系フィラーに対して0.001質量%~50質量%の範囲とすることにより、シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂との相互作用を十分に促進しつつ、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の色調を良好なものとすることが容易となる。例えば、密閉容器中でシリカ系フィラーとアミン化合物をアミン化合物が揮発する条件で共存させる方法では、密閉容器中に上記の配合量のアミン化合物をシリカ系フィラーと直接接触しないように配置すれば良い。
【0046】
シリカ系フィラーがアミン化合物で処理されていることは、加熱脱着装置付きのガスクロマトグラフを使用することで確認可能である。具体的には、加熱脱着装置内にシリカ系フィラーを設置し、アミン化合物の沸点より100℃~200℃程度高い温度で加熱して発生した気体をガスクロマトグラフで分析し、アミン化合物が検出されれば、シリカ系フィラーがアミン化合物で処理されているとみなすことができる。
【0047】
なお、シリカ系フィラーをシランカップリング剤で表面処理する場合、アミン処理を行う前にシランカップリング処理を行っても良く、アミン処理を行った後にシランカップリング処理を行っても良く、アミン処理と同時にシランカップリング処理を行っても良い。シリカ系フィラーのシランカップリング剤による表面処理は、シリカ系フィラーとシランカップリング剤を同一の容器内で混合することで実施可能であり、従来公知の方法で行うことができる。例えば、シリカ系フィラーとシランカップリング剤と、アミン処理とシランカップリング処理を同時に行う場合にはアミン化合物と、その他必要な助剤などを同一容器に投入して混合する方法が挙げられる。その際、溶媒を用いても良いし、用いなくても良い。
【0048】
本発明の製造方法によって製造されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料には、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとアミン化合物のほか、物性を大幅に低下させない範囲でいかなる物質を配合しても良い。
【0049】
本発明の製造方法によって製造されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料には、ポリアリールエーテルケトン樹脂以外の樹脂成分を配合することも可能である。配合可能なその他の樹脂としては、特に制限されるものではないが、剛性や強靭性などのポリアリールエーテルケトン樹脂の物性を大幅に劣化させるもので無い樹脂が好ましく、例えば、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料にその他の樹脂を配合する場合、ポリアリールエーテルケトン樹脂は全樹脂の50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。
【0050】
本発明の製造方法によって製造されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料には、シリカ系フィラー以外の無機粒子を配合することも可能である。無機粒子としては、充填材、顔料、X線造影剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤などが特に制限無く利用できる。例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化鉄、酸化マンガン、Cr-Ti-Sbの複合酸化物、Ti-Ni-Sbの複合酸化物、Ti-Ni-Baの複合酸化物、Sn-Vの複合酸化物、Sn-Ti-Vの複合酸化物、Pr-Zr-Siの複合酸化物、Zr-Vの複合酸化物、Zr-V-Inの複合酸化物、Zr-Ti-V-Inの複合酸化物、Ti-Cr-Nbの複合酸化物、Cr-Ti-Wの複合酸化物、Cr-Ti-Sbの複合酸化物、Ti-W-Feの複合酸化物、Fe-Znの複合酸化物、Fe-Zn-Tiの複合酸化物、Cr-Feの複合酸化物、Zn-Cr-Feの複合酸化物、Zn-Al-Cr-Feの複合酸化物、Fe-Al-Tiの複合酸化物などの各種用途で使用される金属酸化物及び金属複合酸化物などが挙げられる。
【0051】
ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料中の、シリカ系フィラーとその他の無機粒子を合わせた無機フィラーの配合量は、10質量%~70質量%の範囲であることが好ましく、15質量%~50質量%の範囲であることがより好ましく、20質量%~40質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0052】
本発明の製造方法によって製造されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料は、溶融混練工程の後工程を必要に応じて実施してよい。例えば、溶融混練工程を経た直後の高温状態の溶融混練物を、そのまま射出成形や押出成形などにより所望の形状に成形する事ができる。また、溶融混練工程を経た直後の高温状態の溶融混練物を、一旦、ペレット状、パウダー状、あるいはブロック状などの二次加工部材に成形した後、これらの二次加工部材を用いてさらに射出成形、押出成形、レーザーフォーミング、切断加工、切削加工、研磨加工等の各種加工を実施して、所望の形状に成形しても良い。なお、二次加工部材の形状は、取り扱い易さの観点からペレット形状(特に直径0.5mm~5mm、長さ1mm~10mm程度の円柱状)であることが好ましい。ペレット形状の複合材料は、押出機(単軸溶融混練装置、二軸溶融混練装置、三軸溶融混練装置、四軸溶融混練装置など)からストランド状で押し出された複合材料を、所望の間隔で切断することで容易に得ることができる。ペレット状として得られた二次加工部材は、例えば射出成形、押出成形、加熱プレス成形などにより直接所望の形状に成形したり、射出成形、押出成形、加熱プレス成形などにより一旦ブロック形状やディスク形状に成形した後、これを切削加工して所望の形状にしたりすることが可能である。さらに、溶融混練物をそのまま所望の形状に成形した部材や、二次加工部材そのものや二次加工部材を経て所望の形状に成形した後に、成形時の応力を緩和して優れた強度を発揮させるために、熱処理工程を実施しても良い。熱処理工程は、ポリアリールエーテルケトン樹脂のガラス転移点以上で融点未満の温度で実施することが出来る。
【0053】
本発明の製造方法によって製造されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析で分析すると、ヒドロキシベンゾニトリルおよび/またはヒドロキシベンゾニトリル置換体が検出される。したがって、該ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料は、本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料に含まれる。
【0054】
なお、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析は、ガスクロマトグラフ質量分析に先立ち、分析試料を所定の温度に加熱し、その加熱により発生した揮発物や分解生成物などをガスクロマトグラフ質量分析で分析する手法である。本発明では、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料0.2mg~0.4mgをガスクロマトグラフ質量分析に接続された加熱装置(例えば、パイロライザー)に投入し、650℃で30秒間加熱して熱分解を行った後、発生した気体をガスクロマトグラフ質量分析装置に投入することで分析を実施する。ガスクロマトグラフは、カラムとしてジメチルポリシロキサンカラム、キャリアガスとしてヘリウムを使用し、質量分析は電子イオン化法により行う。得られたスペクトルを解析し、ヒドロキシベンゾニトリルおよび/またはヒドロキシベンゾニトリル置換体の検出の有無を評価する。
【0055】
評価対象となるヒドロキシベンゾニトリルおよび/またはヒドロキシベンゾニトリル置換体は、ベンゼン環にヒドロキシル基とニトリル基が直接結合している化合物であり、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料に使用されるポリアリールエーテルケトン樹脂の種類よって異なり、ポリアリールエーテルケトン樹脂の主鎖を形成する、エーテル基とケトン基が結合した芳香族基の構造に依存する。すなわち、ポリアリールエーテルケトン樹脂の主鎖を形成するエーテル基とケトン基が芳香族基のパラ位に結合していればヒドロキシベンゾニトリルのヒドロキシル基とニトリル基も同じくパラ位の関係にあることとなる。また、芳香族基に他の置換機が結合していれば、その置換基がそのまま保存されたもの、分解され脱落したもの、加熱によりの他の官能基に変換されたもののいずれかが検出される。そのため、好ましいポリアリールエーテルケトン樹脂として挙げられる、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリエーテルケトンケトン(PEKK)の場合、検出されるヒドロキシベンゾニトリルおよび/またはヒドロキシベンゾニトリル置換体は、4-ヒドロキシベンゾニトリルである。
【0056】
このようなヒドロキシベンゾニトリルおよび/またはヒドロキシベンゾニトリル置換体は、ポリリールエーテルケトン樹脂がアミン化合物と反応してその鎖中の一部のケトン基がケチミン構造を有した結果であると推定される。すなわち、アミン化合物と反応したポリアリールエーテルケトン樹脂が熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析で分析する際の650℃への加熱により、その主鎖のエステル結合部とエーテル結合部で分解されると共に、ケチミン構造部位がニトリル構造へと変化したため、ヒドロキシベンゾニトリルおよび/またはヒドロキシベンゾニトリル置換体が検出されると推定される。そのため、熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析でポリアリールエーテルケトン樹脂の構造に対応したヒドロキシベンゾニトリルおよび/またはヒドロキシベンゾニトリル置換体が検出されると言うことは、溶融混練時にポリアリールエーテルケトン樹脂の鎖中にニトリル構造が存在し、シリカ系フィラーのシラノール基と相互作用することが可能であり、分析した試料が高強度なポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料であると言うことができる。
【0057】
本発明の製造方法によって製造されたポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を含む本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の用途は特に限定されず、種々の用途に利用することができるが、例えば、歯科用材料として利用することが好ましい。本発明のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料は、高強度であることから口腔内での咀嚼に際して大きな押圧力に日常的に晒される歯科用材料として用いられた場合に優れた効果を発揮するとともに、シリカ系フィラーを含有しているため歯科用途として適度な弾性率と白色度を付与することが容易であるためである。歯科用途としては、義歯、人工歯、義歯床、歯科用インプラント、歯冠修復材料、支台築造材料など種々の用途に利用する事ができるが、強度、色調に対して特に高い要求がなされる歯冠修復用途に使用することが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例中に示した略号、称号については以下のとおりである。
【0059】
[ポリアリールエーテルケトン樹脂]
・P1:ポリエーテルエーテルケトン樹脂(ダイセルエボニック社製:VESTAKEEP1000G)。
【0060】
[シリカ系フィラー]
・F1:SiO2(球状、平均粒径1μm)
・F2:SiO2(球状、平均粒径2.8μm)
・F3:SiO2(球状、平均粒径0.4μm)
・F4:SiO2-TiO2(球状、平均粒径0.3μm、シリカ割合90質量%)
・F5:SiO2-ZrO2(不定形状、平均粒径1μm、シリカ割合73質量%)。
【0061】
[シラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物]
・A1:n-プロピルアミン(脂肪族1級アミン、分子量59、沸点48℃)
・A2:トリエチルアミン(脂肪族3級アミン、分子量101、沸点90℃)
・A3:n-ペンチルアミン(脂肪族1級アミン、分子量87、沸点104℃)
・A4:トリエタノールアミン(脂肪族3級アミン、分子量149、沸点335℃)。
【0062】
[シラノール基又は加水分解してシラノール基となる基を有するアミン化合物]
・A5:3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン(2級アミン、分子量339、沸点146℃/15mmHg)。
【0063】
[シランカップリング剤]
・S1:γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
・S2:3-スチリルプロピルトリメトキシシラン。
【0064】
各試験方法については、以下のとおりである。
(シリカ系フィラーのアミン処理方法)
<シリカ系フィラーとアミン化合物を溶媒中で混合した後に溶媒を除去する方法>
[方法1:加熱減圧乾燥法による処理]
2.5kgのイソプロピルアルコールに、1kgのシリカ系フィラーを投入して、30分間攪拌してスラリーを調製した。該スラリーに、所定量のアミン化合物と、必要に応じて所定量のシランカップリング剤を投入し、2時間攪拌した。その後、該スラリーを、ロータリーエバポレーターを用いて、攪拌状態で、減圧度10ヘクトパスカル、加熱条件40℃(温水バス温度)の条件で1時間乾燥させ、溶媒を除去し、得られた固形分を回収した。該固形分を、さらに90℃24時間真空乾燥し、アミン処理されたシリカ系フィラーを得た。
【0065】
[方法2:スプレードライ法による処理]
6kgの水に、4kgのシリカ系フィラーを投入して、30分間攪拌してスラリーを調製した。該スラリーに、所定量のアミン化合物と、必要に応じて所定量のシランカップリング剤を投入し、30分間攪拌した。その後、該スラリーをディスク式スプレードライヤー(坂本技研株式会社製:TSR-2W)を用いて、ディスクの回転速度10000rpm、乾燥温度200℃の条件でスプレードライを行い、アミン処理されたシリカ系フィラーを得た。
【0066】
<シリカ系フィラーをアミン化合物の蒸気で処理する方法>
[方法3:密閉容器中でシリカ系フィラーとアミン化合物をアミン化合物が揮発する条件で共存させる方法]
密閉可能な10Lポットに、12cm×15cm×t3cmバットに入れた所定量のアミン化合物と、同サイズの別のバットに入れた100gのシリカ系フィラーを、アミン化合物を入れたバットを最下段に置き、その上に設置した網目状の架台にシリカ系フィラーを入れたバットを置き、アミン化合物とシリカ系フィラーが直接接触しないように設置後、容器の蓋を閉めて密閉して室温(25℃)で1時間静置した。その後、ポット内のシリカ系フィラーを回収して、アミン処理されたシリカ系フィラーを得た。
【0067】
(シリカ系フィラーのシランカップリング剤による表面処理方法)
[方法4]
シリカ系フィラーを1kg、トルエンを2Lを計量混合してシリカ系フィラーを分散させた後、シランカップリング剤を24g加えて2時間の加熱攪拌を行った。その後、遠心分離機によって固形分を分別し、トルエンで2回洗浄を行った後、真空乾燥機にて90℃10時間乾燥を行った。
【0068】
(ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の製造)
所定量のポリアリールエーテルケトン樹脂と所定量のアミン処理されたもしくはアミン処理されていないシリカ系フィラーとを10Lの密閉可能な容器に投入した後2時間混合した。次いで、得られた混合物を二軸溶融混練装置(パーカーコーポレーション製:HK-25D)に投入し、原料投入速度4kg/h、バレル温度360℃、回転数500rpmの条件で溶融混練を行い、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を得た。ノズルから排出されたストランドは水槽で冷却後、ペレタイザーを使用して、直径1~3mm程度、長さ2~4mm程度の円柱状のペレットを得た。なお、本手法におけるポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとアミン化合物とを溶融混練装置に投入する方法は、ポリアリールエーテルケトン樹脂とシリカ系フィラーとアミン化合物とを一括で投入する方法に該当する。
【0069】
(ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の曲げ強さの評価)
射出成形機SE18DUZ(住友重機械工業社製)に、12×14×18mmのキャビティーを設けた金型ユニットを設置した。予備乾燥機付きホッパーにポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料のペレットを投入し、成形温度(シリンダ温度)を360~400℃、流動化温度360℃、金型温度を180℃に設定し、射出圧力180MPa、射出速度50mm/secの条件で射出充填を行った。180MPaの保圧かけを40秒間保持した。金型による冷却時間300秒の後、金型ユニットを開いてブロックを取り出した。
該ブロックを、ダイヤモンドカッターを用いて幅約4mm、厚さ約1.2mm、長さ約14mmに加工した。これを耐水研磨紙1500番で長さ方向に研磨して試験片とした。試験片の幅と厚さをマイクロメーターで測定し、万能引張試験機オートグラフ(島津製作所製:AG-I)を用いて、室温大気中、支点間距離12mm、クロスヘッドスピード1mm/minの条件で3点曲げ試験を行い、荷重-たわみ曲線を得た。
下式により、曲げ強度を求めた。
【0070】
F = 3PS/2WB2
ここで、F:曲げ強さ[Pa]、P:試験片破折時の荷重[N]、S:支点間距離[m]、W:試験片の幅[m]、B:試験片の厚さ[m]である。
試験は5個の試験片について行い、得られた結果より、平均および標準偏差を求めた。
【0071】
(ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の色調評価)
12×14×18mmに成形したポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料のブロックをダイヤモンドカッターで12mm×14mm×t1mmに切断して内部面を露出し、その後バフ研磨を行った。バフ研磨を行った内部面に対し、色差計(東京電色社製:TC-1800MKII)を用いて、黒背景下にて標準の光Cを照射した際の反射光から色調データ(L*値)を得た。L*値は、試料の明度を表す指標であり、数値が低いほど黒色に、高いほど白色に近い。本試料においては、白色度が高いほど顔料等による調色の自由度が高まるため、色調の点で優位であると言える。なお、3個のブロックからそれぞれ1個ずつの試験片を作製してL*値の測定を行い、その平均値をポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の色調データ(L*値)とした。
【0072】
(熱分解ガスクロマトグラフ質量分析による分析)
熱分解ガスクロマトグラフ装置(パイロライザー:フロンティア・ラボ社製EGA/PY-3030D、ガスクロマトグラフ:アジレント・テクノロジー社製7890B、質量分析装置:日本電子社製JMS-Q1500GC)のパイロライザーに試料約0.3mgを投入し650℃で30秒間加熱し、発生した気体をガスクロマトグラス質量分析装置に導入して分析を行った。ガスクロマトグラフィーのカラムはジメチルポリシロキサンカラム(フロンティア・ラボ社製:Ultra ALLOY+ -5)、キャリアガスはヘリウムを使用した。質量分析のイオン化は電子イオン化法によって行った。得られたスペクトルから、4-ヒドロキシベンゾニトリルのピークの有無を確認し、検出されたものをY、検出が確認できなかったものをNとした。
【0073】
<実施例1>
シリカ系フィラーF1を1kgと、アミン化合物A1を5gとを使用して方法1の加熱減圧乾燥法による処理によりシリカ系フィラーのアミン処理を行い、アミン処理されたシリカ系フィラーF1A1-11を得た。その後、該アミン処理されたシリカ系フィラーF1A1-11を400gと、PEEK樹脂を600gとを溶融混練してポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を得て、該ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の曲げ強さの評価を行った。シリカ系フィラーのアミン処理を行う条件を表1に、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の組成と曲げ強さと色調の評価結果を表2に、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析による分析による分析結果を表3に示す。
【0074】
<実施例2~29、比較例1~9>
シリカ系フィラーの種類、アミン化合物の種類、シリカ系フィラーをアミン化合物で処理する方法、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の組成を、それぞれ表1及び表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を得て、その曲げ強さと色調の評価を行った。シリカ系フィラーのアミン処理を行う条件を表1に、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料の組成と曲げ強さと色調の評価結果を表2に、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析による分析による分析結果を表3に示す。
【0075】
<参考例1>
比較例1で製造したポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料0.3mgと、n-プロピルアミン0.1mgを接触させてパイロライザー内に設置し、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析による分析を行った。結果を表3に示す。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
評価結果について、シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂とをシラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物の存在下で溶融混練した実施例1~29は、シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂とをシラノール基を有さず、かつ、加水分解してシラノール基となる基を有さないアミン化合物の非存在下で溶融混練した比較例1~9と比較して、高い曲げ強さを示した。なお比較例6は、シリカ系フィラーとポリアリールエーテルケトン樹脂とを加水分解してシラノール基となる基を有するアミン化合物の存在下で溶融混練をした場合である。
【0080】
シリカ系フィラーをアミン化合物で処理する際に加熱減圧乾燥法による処理(方法1)を使用し、その際のアミン化合物の配合量が異なる以外は同一の組成・方法でポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を製造した実施例1~5を比較すると、シリカフィラーに対するアミン化合物の配合量が5質量%以下である実施例1~4は、5質量%を超える実施例5と比較して白色度が高く、良好な色調であると言える。
【0081】
さらに、アミン化合物が同量でシランカップリング剤の有無が異なる実施例1と6を比較すると、シランカップリング剤を用いた実施例6の方が高い白色度を示し、良好な色調であると言える。
【0082】
シリカ系フィラーをアミン化合物で処理する際にスプレードライ法による処理(方法2)を使用した場合も、アミン化合物が同量でシランカップリング剤の有無が異なる実施例7と8を比較すると、シランカップリング剤を用いた実施例8の方が高い白色度を示し、良好な色調であると言える。
【0083】
シリカ系フィラーをアミン化合物の蒸気で処理する際に、密閉容器中でシリカ系フィラーとアミン化合物をアミン化合物が揮発する条件で共存させる方法による処理(方法3)を使用した場合においても、方法1を使用した場合と同様の結果であった。アミン化合物の配合量が異なる以外は同一の組成・方法でポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料を製造した実施例9~13を比較すると、シリカフィラーに対するアミン化合物の配合量が1質量%以下である実施例9~12は、1質量%を超える実施例13と比較して白色度が高く、良好な色調であると言える。
【0084】
また、熱分解ガスクロマトグラフ分析により、ヒドロキシベンゾニトリルおよび/またはヒドロキシベンゾニトリル置換体である4-ヒドロキシベンゾニトリルが検出された実施例1、7、9、14、17、18は、検出されなかった比較例1、6と比較して高い曲げ強さを示した。なお、参考例1に示すように、4-ヒドロキシベンゾニトリルが検出されない比較例1のポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料と、アミン化合物を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置中で共存させた場合においても、4-ヒドロキシベンゾニトリルは検出されなかったため、4-ヒドロキシベンゾニトリルが分析段階で新たに発生することはなく、ポリアリールエーテルケトン樹脂複合材料由来の化合物であることが示される。