(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】スペーサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F02F 1/10 20060101AFI20240402BHJP
F01P 3/02 20060101ALI20240402BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F02F1/10 D
F01P3/02 A
B32B5/18
(21)【出願番号】P 2019207662
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2019013335
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 耕治
(72)【発明者】
【氏名】桑元 隆広
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-128256(JP,A)
【文献】特開2015-083791(JP,A)
【文献】特開2015-222071(JP,A)
【文献】特開2012-036742(JP,A)
【文献】特開2016-122737(JP,A)
【文献】特開2008-057665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/10
F01P 3/02
B32B 5/18
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料からなる成形体と、前記成形体に一体に固着された多孔質体とを備え、内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路に配置されるスペーサであって、
前記多孔質体は、少なくともその一部が圧縮された状態を保持可能であるとともに所定の外的要因が付加されたことを契機に圧縮前の状態に復元し膨大化する特性を有し
、前記成形体の複数箇所に固着され、かつ少なくとも第1多孔質体及び第2多孔質体を含み、
前記成形体には、該成形体を成形するための前記樹脂材料の導入部位であるとともに、前記多孔質体と重なる位置に設けられ
たゲート跡である樹脂導入部と、前記多孔質体側とは反対側に突出するとともに、前記樹脂導入部側から前記樹脂導入部とは離間する方向に延在するように形成された突条部とを備
え、該突条部は前記成形体の成形の際に前記樹脂材料の流動状態を調整したことにより形成されており、
前記樹脂導入部は、前記第1多孔質体と重なる位置に設けられた第1樹脂導入部と、前記第2多孔質体と重なる位置に設けられた第2樹脂導入部と、を含み、
前記突条部は、少なくとも、前記第1樹脂導入部側から前記第1多孔質体と前記第2多孔質体との間の領域に向って延在する第1突条部を含むことを特徴とするスペーサ。
【請求項2】
請求項1において、
前記突条部の端部に前記樹脂導入部が形成され、前記突条部は該樹脂導入部を起点として延在していることを特徴とするスペーサ。
【請求項3】
請求項1において、
前記多孔質体は第3多孔質体をさらに含み、該樹脂導入部は前記第3多孔質体と重なる位置に設けられた第3樹脂導入部さらに含み、
前記突条部は、前記第2樹脂導入部側から前記
第2多孔質体と前記
第3多孔質体との間の領域に向って延在する第2突条部をさらに含むことを特徴とするスペーサ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項において、
前記多孔質体は、正面視矩形状のシートであり、
前記突条部は、前記樹脂導入部から前記多孔質体の角部まで延在するように形成されていることを特徴とするスペーサ。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項において、
前記突条部は、その幅が前記樹脂導入部の幅よりも大きくなるように形成されており、
前記樹脂導入部は、前記突条部の前記多孔質体側とは反対側の面に設けられていることを特徴とするスペーサ。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のスペーサにおいて、
前記成形体には、切欠き形状とされた切欠部が設けられ、
前記多孔質体には、前記切欠部と対応する位置に前記切欠部を避けるような凹部が設けられ、
前記突条部は、少なくともその一部が、前記凹部の外縁に沿うように延在していることを特徴とするスペーサ。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項において、
前記成形体には、貫通孔が設けられており、
前記多孔質体には、前記貫通孔と対応する位置に前記貫通孔を囲むような連通孔が設けられており、
前記突条部は、少なくともその一部が、前記連通孔の外縁に沿うように延在していることを特徴とするスペーサ。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項において、
前記多孔質体はセルロース系スポンジであり、
前記所定の外的要因が、水分であることを特徴とするスペーサ。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項において、
前記成形体の多孔質体側とは反対側の面には、前記多孔質体側に窪むとともに、前記突条部に沿って凹条部が設けられていることを特徴とするスペーサ。
【請求項10】
樹脂材料からなる成形体と、前記成形体に一体に固着された多孔質体とを備え、内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路に配置されるスペーサであって、
前記多孔質体は、少なくともその一部が圧縮された状態を保持可能であるとともに所定の外的要因が付加されたことを契機に圧縮前の状態に復元し膨大化する特性を有し、
前記成形体には、該成形体を成形するための前記樹脂材料の導入部位であるとともに、前記多孔質体と重なる位置に設けられたゲート跡である樹脂導入部と、前記多孔質体側に窪んで形成され
た、凹底面を有する凹条部とを備え、該凹条部は前記成形体の成形の際に前記樹脂材料の流動状態を調整したことにより形成されており、
前記凹条部は、前記多孔質体と重なる位
置から重ならない位置まで延びるように配置されていることを特徴とするスペーサ。
【請求項11】
樹脂材料からなる成形体と、前記成形体に一体に成形され固着された多孔質体とを備え、内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路に配置されるスペーサを、成形型を用いて製造するスペーサの製造方法であって、
前記多孔質体は、少なくともその一部が圧縮された状態を保持可能であるとともに所定の外的要因が付加されたことを契機に圧縮前の状態に復元し膨大化する特性を有し、かつ前記成形体の複数箇所に固着され、
前記成形型は、キャビティ内に載置される前記多孔質体と重なる位置に設けられたゲート部と、前記樹脂材料の流動状態を調整するための成形凹条部と、を備え、
前記成形凹条部は、前記多孔質体が載置される面とは反対側に位置するとともに、前記ゲート部から前記ゲート部とは離間する方向に延在するように形成されており、
前記樹脂材料を前記ゲート部から導入して、前記成形凹条部に沿って流動させ、前記キャビティ内に充填することを特徴とするスペーサの製造方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記成形型には、前記多孔質体側に突出するとともに、前
記成形凹条部に沿って成形突条部が設けられていることを特徴とするスペーサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路に配置されるスペーサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路には、冷却水流路を流通する冷却水の流れ(流量、流速等)を規制するためのスペーサが配置される。スペーサを冷却水流路に挿入して組付ける際、挿入荷重をなくして組付け性を向上することが望まれる。このような組付け性を考慮したものとしては、下記特許文献1に開示されているスペーサが挙げられる。
【0003】
下記特許文献1には、スペーサ本体と、スペーサ本体の内面に取り付けられた発泡体とを備えたスペーサとその製造方法が開示されている。ここに記載されているスペーサは、冷却水流路内に組付けられる際には、発泡体が圧縮状態とされ、組付け後、冷却水に晒される等所定の外的要因が付加されると発泡体が圧縮前の状態に復元するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のようなスペーサは、冷却水流路を流通する冷却水の流れ(流量、流速等)を規制するために設けられるが、過冷却・過保温にならないように冷却水の流れをコントロールできるものが求められている。
またスペーサの製造時に成形型内の所定の位置に発泡体を予め載置してから樹脂導入部より樹脂材料を射出成形する。しかしながら、複数の発泡体を狭い間隔で成形型内に配置した場合、射出成形時に樹脂材料が意図しない方向に流れ、多孔質体側にまで樹脂材料が回り込んで成形されてしまうおそれがある。このように樹脂材料が意図しない箇所に回り込んでしまうと、発泡体に所定の外的要因が付加されても、圧縮前の状態へ復元する量が減少したり、成形体の品質が低下したりする等の影響が生じる。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、組付け性がよいものでありながら、冷却水流れのコントロール及び品質の向上が図られたスペーサ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係るスペーサは、樹脂材料からなる成形体と、前記成形体に一体に固着された多孔質体とを備え、内燃機関のシリンダブロックに設けられた冷却水流路に配置されるスペーサであって、
前記多孔質体は、少なくともその一部が圧縮された状態を保持可能であるとともに所定の外的要因が付加されたことを契機に圧縮前の状態に復元し膨大化する特性を有し、前記成形体の複数箇所に固着され、かつ少なくとも第1多孔質体及び第2多孔質体を含み、前記成形体には、該成形体を成形するための前記樹脂材料の導入部位であるとともに、前記多孔質体と重なる位置に設けられたゲート跡である樹脂導入部と、前記多孔質体側とは反対側に突出するとともに、前記樹脂導入部側から前記樹脂導入部とは離間する方向に延在するように形成された突条部とを備え、該突条部は前記成形体の成形の際に前記樹脂材料の流動状態を調整したことにより形成されており、前記樹脂導入部は、前記第1多孔質体と重なる位置に設けられた第1樹脂導入部と、前記第2多孔質体と重なる位置に設けられた第2樹脂導入部と、を含み、前記突条部は、少なくとも、前記第1樹脂導入部側から前記第1多孔質体と前記第2多孔質体との間の領域に向って延在する第1突条部を含むことを特徴とする。
以上の構成によれば、組付け性がよいスペーサでありながら、冷却水の流れをコントロールし、品質の向上を図ることができる。すなわち、多孔質体は少なくともその一部が圧縮された状態を保持可能であるので、スペーサを冷却水流路に挿入して組付ける際、挿入荷重をなくして組付け性がよいものとすることができる。また以上の構成によれば、成形体に突条部を形成することで冷却水流路内に組付けられた際、冷却水の流れをコントロールすることができるとともに、成形型には成形凹条部が設けられることになるので、多孔質体と成形体とを一体に成形する際、樹脂材料は、成形型の成形凹条部が存在する箇所を流動し易くなる。したがって、成形型内に導入された樹脂材料の流動状態を、成形型の成形凹条部によって調整することができ、樹脂導入部から離れる所望の箇所に優先して樹脂材料を供給できる。その結果、スペーサには樹脂導入部側から樹脂導入部とは離間する方向に延在する突条部が形成されるとともに、射出成形時に、スペーサの形状に応じて、多孔質体上における樹脂材料の流動状態を調整することができるため、スペーサの品質が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るスペーサ及びその製造方法によれば、組付け性がよいものでありながら、冷却水流れのコントロール及び品質の向上が図られたものを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】内燃機関の冷却水流路内に本発明の第1実施形態に係るスペーサ(多孔質体は復元状態)の一例を配置した状態を模式的に示す概略的横断平面図である。
【
図2】同スペーサ(多孔質体は圧縮状態)を模式的に示した概略的側面図である。
【
図3】同スペーサ(多孔質体は圧縮状態)を模式的に示した概略的断面図であり、
図2のA-A線矢視断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、同スペーサ(多孔質体は圧縮状態)を模式的に示した概略的斜視図である。
【
図5】(a)~(c)は同スペーサの製造方法を説明するための図であり、各工程を模式的に示した図である。(a)は圧縮状態の多孔質体を成形型に配置する工程を示した図、(b)は同多孔質体と樹脂とをインサート成型する工程を示した図、(c)は脱型して得られたスペーサを示した図である。
【
図6】(a)~(d)は、同スペーサの種々変形例を模式的に示した概略的側面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るスペーサを模式的に示した概略的側面図である。
【
図8】(a)、(b)は、同スペーサ(多孔質体は圧縮状態)を模式的に示した概略的斜視図である。
【
図9】(a)~(c)は同スペーサの製造方法を説明するための図であり、各工程を模式的に示した図である。(a)は圧縮状態の多孔質体を成形型に配置する工程を示した図、(b)は同多孔質体と樹脂とをインサート成型する工程を示した図、(c)は脱型して得られたスペーサを示した図である。
【
図10】(a)~(d)は、同スペーサの種々変形例を模式的に示した概略的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
本実施形態に係るスペーサ5は、樹脂材料からなる成形体6と、成形体6に一体に固着された多孔質体7とを備え、内燃機関10のシリンダブロック1に設けられた冷却水流路3に配置され、冷却水の流れを規制している。多孔質体7は、少なくともその一部が圧縮された状態を保持可能であるとともに所定の外的要因が付加されたことを契機に圧縮前の状態に復元し膨大化する特性を有している。成形体6には、成形体6を成形するための樹脂材料の導入部位であるとともに、多孔質体7と重なる位置に設けられた樹脂導入部60と、多孔質体7側とは反対側に突出するとともに、樹脂導入部60側から樹脂導入部60とは離間する方向に延在するように形成された突条部61とを備えている。以下、詳述する。
【0011】
<第1実施形態>
図1~
図6を参照しながら、第1実施形態に係るスペーサ5について説明する。
まず
図1~
図4には、第1実施形態に係るスペーサ5を示している。
スペーサ5は、
図1に示すとおり、半筒状からなり、シリンダブロック1の冷却水流路3内に配置されている。シリンダブロック1の上面にはシリンダヘッド(不図示)、シリンダブロック1の下面にはオイルパン(不図示)がそれぞれ配され、シリンダヘッドは、冷却水流路3の開口部3fが閉塞されるようにシリンダブロック1に一体に締結される。
図1に示すシリンダブロック1は、3気筒の内燃機関10を構成するものであり、複数のシリンダボア(気筒)2…が隣接した状態で直列に連なるように設けられている。以下では、複数のシリンダボア(気筒)2…のうち、
図1における下方側から順にシリンダボア2の1気筒目、2気筒目、3気筒目として説明する。シリンダブロック1の適所には、シリンダヘッドとヘッドガスケットを介して締結させるためのボルト用挿通孔1aが複数設けられている。複数のシリンダボア2…の周囲には、オープンデッキタイプの溝状の冷却水流路(ウォータジャケット)3が一連に形成されている。またシリンダブロック1の適所には、この冷却水流路3に通じる冷却水導入口1bと冷却水排出口1cとが設けられている。冷却水排出口1cは、不図示のラジエータに配管接続され、ラジエータのアウトレット側は、ウォータポンプ(不図示)を介して冷却水導入口1bに配管接続される。これによって、冷却水流路3とラジエータとの間で冷却水(不凍液も含む)が循環するように構成される。
【0012】
シリンダボア2と冷却水流路3との間には、シリンダボア壁20が形成され、冷却水流路3を挟んで向かい合う両壁面は、シリンダボア2側の内側壁面3cと、シリンダボア2とは反対側の外側壁面3dとにより構成される。冷却水流路3は、シリンダボア壁20を効率よく冷却できるように形成され、
図1に示すようにシリンダボア2を取り囲むよう形成された複数の円弧状部3aと、隣接するシリンダボア2,2間部分に互いに接近して対をなすよう形成された複数のくびれ形状部3bとを有している。くびれ形状部3bの溝幅は、冷却水流路3の他の円弧状部3aの溝幅より大きい。
【0013】
<スペーサ>
スペーサ5は、半筒状の成形体6と、成形体6に一体に固着された多孔質体7とを備えている。スペーサ5は、冷却水の流れを規制するため、冷却水流路3の開口部3fから挿入して冷却水流路3内に組付けられる。図例のスペーサ5は、冷却水流路3内の略半分の領域に配置されるよう形成されており、成形体6の内面6a(シリンダボア2側の側面)に設けられた凹所6aaに多孔質体7が固着された例を示している。
【0014】
多孔質体7としては、所定の外的要因が付加されたことを契機として圧縮された状態から圧縮前の状態に復元し膨大化する特性を有したものが採用される。
図1では多孔質体7に冷却水が接することにより、多孔質体7が冷却水流路3の幅方向a(
図1の矢印・幅方向a参照)に膨大化した状態を示している。具体的にはシリンダブロック1の冷却水流路3内にスペーサ5が配置された後、シリンダブロック1の上面に、不図示のシリンダヘッドがヘッドガスケットを介して締結一体とされる。その後、冷却水流路3内に冷却水導入口1bから冷却水が導入されると、多孔質体7に冷却水が接触し、多孔質体7が復元してシリンダボア2側(反圧縮方向)に膨大化し、スペーサ5は
図1の状態となって冷却水の流れを規制し、シリンダボア壁20の過冷却を防止することができる。その他の
図2~
図4では、冷却水に接する前の圧縮された状態の多孔質体7を示している。多孔質体7は、
図4(b)等に示すように正面視矩形状のシート状に形成され、成形体6に形成された凹所6aa内に収まるように配され固着されている。これにより、多孔質体7は復元する前の圧縮状態では、スペーサ5は成形体6の厚み寸法とすることができる。よって、スペーサ5を開口部3fから挿入して冷却水流路3内に配置し組付ける際には、多孔質体7は圧縮された状態であるので、スペーサ5自体が薄板体でコンパクトな状態にある。よって、スペーサ5を冷却水流路3内に組付けられる際に、スペーサ5が冷却水流路3の内側壁面3c及び外側壁面3dに干渉することなく、スムーズに組付けられる。
【0015】
多孔質体7は、上記の特性を持つものであれば、特に限定されないが、例えば、セルロース系スポンジを用いてもよい。セルロース系スポンジは、パルプ由来のセルロースと、補強繊維として加えられた天然繊維(例えば、綿等)とからなる天然素材からなり、連続気泡型で優れた吸水性を有する。ここでセルロースは、親水基(OH)を有しており、化学的に水分になじみ易い性質であることが知られている。よって、セルロース系スポンジは、加圧した状態で乾燥させるとセルロース分子間が水素結合して圧縮状態に維持される一方、この状態から水分に晒されると水分子がセルロース分子間の水素結合を解離して圧縮状態から復元する特性を有するため、多孔質体7として、好適である。
【0016】
成形体6は、合成樹脂からなり、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ABS、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂でもよく、例えば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂でもよい。また、合成樹脂としては、種々の添加剤が添加されたものでもよく、また、例えば、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む樹脂複合材でもよい。
【0017】
成形体6は、円弧部62と、接続部63と、樹脂導入部60と、突条部61と、突出部64、切欠部65と、凹所6aaとを有している。円弧部62は、略半円形状とされ、シリンダボア2の気筒の形状に対応して複数形成されている。図例のものは3気筒のシリンダボア2に対応するため、3つの円弧部62を有している。接続部63は、隣接するシリンダボア2,2間、すなわち、くびれ形状部3bに対応して形成され、隣接する円弧部62,62同士の接続部分となる。樹脂導入部60は、樹脂材料からなる成形体6と多孔質体7とをインサート成型する際に、溶融状態の合成樹脂が射出される際の導入部位となった箇所の突起状のゲート跡である。樹脂導入部60は突条部61の多孔質体7側とは反対側の面、すなわち外面6b側に多孔質体7と重なる位置に設けられる。突条部61は、その幅が樹脂導入部60の幅よりも大きくなるように形成されており、突条部61の多孔質体7側とは反対側に突出するとともに、樹脂導入部60側から樹脂導入部60とは離間する方向に延在するように形成されている。突出部64は、冷却水流路3内の冷却水の流れを制御するためにこの例では1気筒目に対応するシリンダボア2周囲を囲む円弧部62にのみ設けられ、他の円弧部62の高さ寸法より突出して形成されている。切欠部65は、成形体6の端部に円弧の切欠き形状とされ、この切欠部65が形成されている箇所にドレン穴や補機類への配管通路が形成される。よって
図2に示すスペーサ5の切欠部65が形成された円弧部62に固着された多孔質体7(後述では第3多孔質体7c)には、切欠部65と対応する位置に切欠部65を避けるような凹部7cbが設けられ(
図2参照)、突条部61(後述では第3突条部61c)は、少なくともその一部が、凹部7cbの外縁に沿うように延在している。凹所6aaは、成形体6の円弧部62に対応して複数形成され、多孔質体7の形状に合わせ、多孔質体7の厚み分だけ凹状とされ、各凹所6aaに多孔質体7が固着されている。
【0018】
本実施形態に係るスペーサ5は、上述の突条部61を有し、突条部61を形成するために成形型100には成形凹条部(
図5(a)及び
図5(b)に示す例では
、成形凹条部103a)が設けられる。この成形凹条部(103a)は、多孔質体7が載置されている面とは反対側、つまり多孔質体7が下型101に載置された状態において、上型103の多孔質体7と対向する面に設けられている。このため、多孔質体7と成形体6とを一体に成形する際、樹脂材料は、成形凹条部(103a)が存在する箇所を優先的に流動する。したがって、成形型100内に導入された樹脂材料の流動状態を、成形型100の成形凹条部(103a)によって調整することができ、樹脂導入部60から離れる所望の箇所に優先して樹脂材料を供給できる。その結果、スペーサ5には樹脂導入部60側から樹脂導入部60とは離間する方向に延在する突条部61が形成される。また、突条部61を形成するための成形凹条部103aによって、射出成形時に、スペーサ5の形状に応じて、多孔質体7上における樹脂材料の流動状態を調整することができるため、スペーサ5の品質向上を図ることができる。またこのように突条部61を形成することで樹脂材料の流れ方向をコントロールできるので、
図2に示すように隣り合う複数の多孔質体7,7を狭い間隔で配置しても、射出成形時に樹脂材料が多孔質体7の表面71側まで回り込んで成形されてしまうことを防ぐことができる。そして、ひいては多孔質体7が冷却水に接したときに、多孔質体7の復元を樹脂材料が阻害することも防ぐことができる。さらに突条部61は、成形体6の他の部位より厚みが厚い肉厚部分となるので、リブとしての補強効果を発揮し、薄板状のスペーサ5の形状を保持する機能も有する。さらに突条部61の突出高さを調整すれば、スペーサ5を冷却水流路3内の適切な位置に配することができる。すなわち、多孔質体7の復元に伴って膨大化し、内側壁面3cに当接するので、成形体6は多孔質体7に押されるように移動し、突条部61が外側壁面3dに当接する。よって、多孔質体7の復元状態と冷却水流路3の幅寸法とを考慮して突条部61の突出高さを設計すれば、スペーサ5を冷却水流路3内の適切な位置に配することができ、冷却水流路3内に設置されるスペーサ5による冷却水流れのコントロールを所望通りに行うことができる。
【0019】
<樹脂導入部及び突条部>
続いて
図2~
図4を参照しながら、成形体6に設けられる樹脂導入部60及び突条部61等についてさらに説明する。
図例のスペーサ5は、上述したとおり、3気筒のシリンダボア2に対応するため、円弧部62を複数有し、その円弧部62のそれぞれの凹所6aaに多孔質体7が一枚ずつ固着されている。以下では、シリンダボア2の1気筒目に対応する位置にある円弧部62に固着された多孔質体7を第1多孔質体7a、この第1多孔質体7aと重なる位置に設けられた第1樹脂導入部60a、第1樹脂導入部60a側から第1樹脂導入部60aとは離間する方向に延在するように形成された突条部61を第1突条部61aとして説明する。またシリンダボア2の2気筒目に対応する位置にある円弧部62に固着された多孔質体7を第2多孔質体7bとして説明する。この第2多孔質体7bと重なる位置に設けられた樹脂導入部60を第2樹脂導入部60b、第2樹脂導入部60b側から第2樹脂導入部60bとは離間する方向に延在するように形成された突条部61を第2突条部61bとして説明する。さらにシリンダボア2の3気筒目に対応する位置にある円弧部62に固着された多孔質体7を第3多孔質体7cとして説明する。この第3多孔質体7cと重なる位置に設けられた樹脂導入部60を第3樹脂導入部60c、第3樹脂導入部60c側から第3樹脂導入部60cとは離間する方向に延在するように形成された突条部61を第3突条部61cとして説明する。そして第1多孔質体7aと第2多孔質体7bとの間の領域を第1接続部63a、第2多孔質体7bと第3多孔質体7cとの間の領域を第2接続部63bとして説明する。
【0020】
第1樹脂導入部60a、第2樹脂導入部60b及び第3樹脂導入部60cは、いずれも成形体6の外面6bに形成され、円弧部62を正面視した際の高さ方向の略中央位置(
図2参照)で且つ断面視において円弧部62の頂部(円弧部62の最も突出した位置)に位置している(
図3参照)。
第1突条部61aは、正面視において横倒れV字形状に形成されている。第1突条部61aは、第1樹脂導入部60aから第1多孔質体7aの角部まで延在するように形成されている。具体的には、第1突条部61aは、第1多孔質体7aの第1接続部63a側の両角部7aa,7ab(
図2参照・上方角部,下方角部)に向かってそれぞれが第1樹脂導入部60aから二股に別れて且つ第1樹脂導入部60aから離間する方向に延出して形成されている。
第2突条部61bは、正面視において直線形状に形成されている。より具体的には、第2突条部61bは、四角柱形状に形成されている。第2突条部61bは、第2樹脂導入部60bから第3多孔質体7cの角部まで延在するように形成されている。具体的には、第2突条部61bは、第2多孔質体7bの第2接続部63b側の一方角部7ba(
図2参照・上方角部)に向かって第2樹脂導入部60bから離間する方向に延出して形成されている。
第3突条部61cは、正面視において横倒れ略逆J字形状に形成されている。第3突条部61cは、第3樹脂導入部60cから第3多孔質体7cの角部7ca側まで延在するように形成されている。具体的には、第3突条部61cは、第3多孔質体7cの第2接続部63bとは反対側の一方の角部7ca(
図2参照・下方角部)に向かって第3樹脂導入部60cから横方向に延出された後、湾曲し切欠部65を回避しながら一方の角部7caに向け延出して形成されている。
【0021】
図2~
図4に示すように第1多孔質体7a~第3多孔質体7cが矩形状のシートである場合、その角部が、隣接する樹脂導入部60から射出された樹脂材料の流動圧を受けると、折れ曲がったり皺が寄ったり変形し易い。しかし、以上によれば、第1樹脂導入部60a~第3樹脂導入部60
cに対応したゲート部104から射出された樹脂材料は、優先的に多孔質体7の角部7aa,7ab,7ba,7ca(
図2参照)に達するため、隣接する樹脂導入部60から射出された樹脂材料が先に多孔質体7の角部7aa,7ab,7ba,7caに達することを抑制できる。したがって、射出成形時における第1多孔質体7a~第3多孔質体7cの4隅のそれぞれの角部の変形を抑制できる。
【0022】
さらに第1突条部61a~第3突条部61cは、その幅が第1樹脂導入部60a~第3樹脂導入部60cの幅よりも大きくなるように形成されている。第1樹脂導入部60a~第3樹脂導入部60cは、成形体6の第1多孔質体7a~第3多孔質体7c側とは反対側の面に設けられている。したがって、成形体6部分に樹脂材料が直接導入される場合に比べて、第1多孔質体7a~第3多孔質体7cに作用する樹脂材料の圧力が緩和される。その結果、樹脂材料が浸み込む第1多孔質体7a~第3多孔質体7cの領域を減らすことができ、樹脂材料が第1多孔質体7a~第3多孔質体7cに浸み込むことに起因して、多孔質体7の復元量が減少することを抑制できる。
【0023】
第3突条部61cが設けられた成形体6には、切欠部65が設けられている。第3多孔質体7cには、切欠部65と対応する位置に切欠部65を避けるような凹部7cbが設けられている。第3突条部61cは、その一部が、凹部7cbの外縁に沿うように延在している。よって、第3突条部61cを形成するために設けられる成形型の成形凹条部(不図示)が第3多孔質体7cの凹部7cbの外縁に沿うように延在することになるので、樹脂材料が、第3多孔質体7cの凹部7cbを経由して成形体6側とは反対側の面に回り込むことを抑制できる。
【0024】
<製造方法>
次に
図5を参照しながら、スペーサ5を製造する方法について説明する。ここでは1気筒目に対応する位置に配されるスペーサ5の一部を図示し説明するため、上型103に突条部61を成形する成形凹条部を成形凹条部103aとして説明する。なお、成形型100によるスペーサ5の成形時には、第1多孔質体7aが下型101に載置される態様と同様に第2多孔質体7b及び第3多孔質体7cも載置され、インサート成形される。よって、スペーサ5に第2突条部61b及び第3突条部61cを形成するため、成形型に所望する形状の成形凹条部(不図示)が設けられる。
【0025】
まず、下型101上に、予め所定大きさに裁断され、且つ、所定位置に貫通孔70が形成された矩形状の第1多孔質体7aを配置する。このとき、下型101の突起101aに第1多孔質体7aの貫通孔70を嵌め合せ、第1多孔質体7aの位置決めを行う(
図5(a)参照)。その後、上型103を下型101に型締めし、溶融状態の樹脂材料をゲート部104から射出していく(
図5(b)参照)。上型103には第1突条部61aを形成するための成形凹条部103aと複数の押えピン103bとを有している。成形凹条部103aは、第1多孔質体7aが載置される面とは反対側に位置するとともに、第1樹脂導入部60aから第1樹脂導入部60aとは離間する方向に延在するように形成されている。上型103を下型101に型締めすると、押えピン103bは、第1多孔質体7aを介して下型101に当接した状態となり、下型101の円弧部62を形成する凸曲面上に載置された第1多孔質体7aを押え付けた状態となる。これにより、第1多孔質体7aは下型101の凸曲面の形状に沿って円弧状に変形する。そしてこの状態で、ゲート部104より溶融状態の樹脂材料をキャビティ102内に射出しインサート成型する。ゲート部104から樹脂材料を射出する際、第1多孔質体7aは、高圧な射出圧を受けるが、複数の押えピン103bによって確実に押え付けられているので、第1多孔質体7aが位置ずれすることなく、インサート成型を行うことができる。
【0026】
そして、溶融状態の樹脂材料は第1樹脂導入部60aに連続して形成さ
れる第1突条部61aを形成する成形凹条部103aに優先的に充填され、その後に円弧部62及び突出部64(
図2参照)を形成するキャビティ102内の全域に充填されていく。ここで、突出部64を備えた1気筒目に対応する位置に配される円弧部62を形成するキャビティは、隣接する2気筒目に対応する位置に配される円弧部62を形成するキャビティ(不図示)に比べて体積が大きい。したがって、同時に同量の射出を行うと、2気筒目に対応する位置に配される円弧部62を形成するキャビティが先に充填され、余剰の樹脂材料が1気筒目側にも流れ込み、ウェルドラインLは
図2の太い実線位置まで到達してしまう。すると第1多孔質体7aの端面をこの樹脂材料が押し、樹脂材料は第1多孔質体7aにズレや捲れが生じる等して精度よく第1多孔質体7aと固着し難いことになる。本実施形態によれば、上述したように第1多孔質体7aの両角部7aa,7abに向けて形成され
た成形凹条部103aに優先的に樹脂材料が流れ込み、この部分の円弧部62を先に形成するように樹脂が流れるので、第2樹脂導入部60
bに対応したゲート部104から充填される樹脂材料とのウェルドラインは第1接続部63a辺り(第1多孔質体と前記第2多孔質体との間の領域)の理想の位置となる。さらにこのとき、第2樹脂導入部60
bに対応したゲート部104から充填される樹脂材料は、第2樹脂導入部60bに連続するように形成さ
れる第2突条部61bを形成する成形凹条部(不図示)に優先的に流れるため、より一層、第1多孔質体7a側へ流れるタイミングを遅らせることができ、ウェルドラインLが
図2の太い実線位置まできてしまうことを防ぐことができる。こうしてキャビティ102内に樹脂材料を充填した後、保圧状態で冷却し樹脂材料を硬化させ、型開きして脱型すれば、
図5(c)等に示すスペーサ5を得ることができる。
【0027】
以上によれば、成形体6に第1突条部61aを形成するために成形型100には成形凹条部103aが設けられる。そして、第1多孔質体7aと成形体6とを一体に成形する際、第1樹脂導入部60
aに対応したゲート部104から導入された樹脂材料は、上述したように成形型100の成形凹条部103aが存在する箇所を優先的に流動する。よって、成形型100の成形凹条部103aを所望の形状に設定することで、第1樹脂導入部60
aに対応したゲート部104から導入された樹脂が隣接して配置される第2多孔質体7b側に向う流動状態を調整することができる。つまり、
図2に示すように成形体6の形状(本実施形態では突出部64の存在により、成形体6のうち、1気筒目に対応する部位の体積が2気筒目に対応する部位の体積より大きい形状)に起因して、第2樹脂導入部60
bに対応したゲート部104から導入された樹脂材料が第1多孔質体7a側に到達してしまう可能性があるような場合に、成形凹条部103aを設けることにより第1樹脂導入部60
aに対応したゲート部104から第2多孔質体7b側に向う樹脂材料の流れを促進することができる。そして、第2樹脂導入部60
bに対応したゲート部104から導入された樹脂材料が、第1多孔質体7a側に到達する前に、第1樹脂導入部60
aに対応したゲート部104から導入された樹脂材料と合流できるように図ることができる。すなわち、このように突条部61を設けることで樹脂材料のウェルドラインLをコントロールし、スペーサ5の品質向上を図ることができる。
なお、また
図5(a)及び
図5(b)では、第1多孔質体7aに下型101の突起101aに挿通され位置決めされる貫通孔70を示しており、この貫通孔70は第1多孔質体7aが成形体6と一体になった後も第1多孔質体7aに残るが、他図では図示を省略している。
【0028】
<スペーサの変形例>
続いてスペーサ5の変形例について
図6(a)~(d)を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する説明は省略する。
図6(a)に示すスペーサ5Aは、上述の実施形態とは成形体6に突出部64や切欠部65がないこと、第1樹脂導入部60a及び第3樹脂導入部60cの形成位置、第3突条部61cの形状が異なる。
具体的にはまず第1多孔質体7aの第1樹脂導入部60aの形成位置が、円弧部62の高さ方向の略中央位置で且つ円弧部62の頂部より第1多孔質体7aの一方端部7ac(第1接続部63aがある側とは反対側の端部)寄りに設けられている。
第1突条部61aは、横倒れV字形状とされている。つまり、第1突条部61aは、第1樹脂導入部60aから第1多孔質体7aの第1接続部63a側の両角部7aa,7abに向かって二股に分岐し且つ第1樹脂導入部60aから離間する方向に延出して形成されている。
第2突条部61bは、上述の実施形態と同様に、第2多孔質体7bの第2接続部63b側の一方角部7ba(
図6(a)参照・上方角部)に向かって第2樹脂導入部60bから離間する方向に延出して形成されている。
第3樹脂導入部60cは、円弧部62の高さ方向上側で且つ第2接続部63b寄りに形成されている。第3突条部61cは、その第3樹脂導入部60cから第3多孔質体7cの角部7caに向かって第3樹脂導入部60cから離間する方向に延出して形成されている。
【0029】
このスペーサ5Aの場合も、第1突条部61a~第3突条部61cの形状に応じて冷却水の流れをコントロールできる。また成形体6に第1突条部61a~第3突条部61cを形成するために成形型100にはそれぞれの形状に応じた成形凹条部が設けられる。そして成形体6と第1多孔質体7a~第3多孔質体7cと一体にインサート成形する際、第1樹脂導入部60a~第3樹脂導入部60cに対応したゲート部104から導入された樹脂材料は、成形型100の成形凹条部が存在する箇所を流動し易くなる。したがって、例えば第1樹脂導入部60aに対応したゲート部104から導入された樹脂材料と第2樹脂導入部60bに対応したゲート部104から導入された樹脂材料が所望の箇所で合流できるように、より緻密に樹脂材料の流動状態を調整できる。そのため、第1樹脂導入部60aに対応したゲート部104又は第2樹脂導入部60bに対応したゲート部104のどちらか一方から導入された樹脂材料が、第1多孔質体7a又は第2多孔質体7bのどちらか他方の端部に先に到達してしまい、樹脂材料の圧力を受けて、第1多孔質体7a又は第2多孔質体7bに位置ずれや捲れ等が生じることを抑制できる。
【0030】
図6(b)に示すスペーサ5Bは、第3多孔質体7cが配される成形体6に貫通孔66が設けられ、第3多孔質体7cには、貫通孔66と対応する位置に貫通孔を囲むような連通孔7ccが設けられている点で上述の実施形態とは異なる。また第3突条部61cは、その一部が、連通孔7ccの外縁に沿うように延在している点も上述の実施形態とは異なる例である。具体的には、この例の第3突条部61cは、貫通孔66(連通孔7cc)を囲むように形成されている。貫通孔66の上方側には半円弧状の上方第3突条部61caが形成され、貫通孔66の下方側には半円弧状の下方第3突条部61cbが形成されている。さらに第1突条部61aが設けられた成形体6には、切欠部65が設けられており、第1多孔質体7aには、切欠部65と対応する位置に切欠部65を避けるような凹部7aeが設けられている。第1突条部61aは、その一部が、凹部7aeの外縁に沿うように延在している。
この場合、スペーサ5Bに形成された第1突条部61a及び第3突条部61cが障壁となって、冷却水が貫通孔66や切欠部65に流入することを抑制することができる。また成形時においては、成形型100に設けられる第1突条部61a及び第3突条部61cを形成するための成形凹条部が設けられることになるので、樹脂材料が凹部7aeや連通孔7ccを経由して第1多孔質体7aや第3多孔質体7c側の面に回り込むことを防止することができる。
また上述の実施形態では、第1多孔質体7a~第3多孔質体7cのそれぞれに重なる位置に突条部61が設けられている例を説明したが、樹脂材料の流動に問題がなければ、
図6(b)に示すように第2多孔質体7bと重なる位置には突条部がなくてもよい。
【0031】
図6(c)に示すスペーサ5Cは、理想とするウェルドラインLと第1接続部63a、第2接続部63bとが一致していない例である。上述の実施形態では理想とするウェルドラインLが第1接続部63a,第2接続部63bの辺りである例について述べたがこれに限定されず、
図6(c)に示すように斜めにウェルドラインLを持ってきたい場合は、第1突条部61a~第3突条部61cもそれに対応して斜めに傾斜した直線形状としてもよい。具体的には、この例の第1突条部61aは、第1樹脂導入部60aの斜め上方で且つ第1樹脂導入部60aから若干離間した部位に形成されている。第2突条部61bは、第1突条部61aと略平行に2つに分離して形成され、第2接続部63b寄りに形成された上方第2突条部61baと、第1接続部63a寄りに形成された下方第2突条部61bbとを備えている。第3突条部61cは、第3樹脂導入部60cから離間する方向に且つ、上方第2突条部61baと略平行に形成されている。この例では、第2樹脂導入部60bが上方第2突条部61baに形成されている。またこの例の第1多孔質体7a~第3多孔質体7cは、台形状もしくは平行四辺形形状とされ、第1突条部61a及び下方第2突条部61bbは、第1樹脂導入部60a、第2樹脂導入部60bと連続していない。
図6(c)に示すような形態とした場合も、第1突条部61a~第3突条部61cによって、冷却水の流れをコントロールできるとともに、成形時には樹脂材料の流動状態を調整でき、スペーサ5Cの品質向上を図ることができる。
【0032】
図6(d)に示すスペーサ5Dは、1気筒目及び2気筒目に対応する位置に配される円弧部62に突出部64を備えている点で上述の実施形態とは異なる。またこの例は第1多孔質体7aが配される成形体6に貫通孔がなく、第1多孔質体7aに、孔7adが設けられている点で上述の実施形態とは異なる。また第1突条部61aは、孔7adの外縁に沿うように延在している点も上述の実施形態とは異なる例である。具体的にこの例の第1突条部61aは、孔7adを囲むように形成されている。孔7adの上方側には半円弧形状の上方第1突条部61aaが形成され、孔7adの下方側には半円弧形状の下方第1突条部61abが形成されている。
この場合、成形型100に設けられる第1突条部61a(具体的には上方第1突条部61aa及び下方第1突条部61ab)を形成するため
の成形凹条部が孔7adの外縁を沿うように延在することになるので、樹脂材料が第1多孔質体7aの孔7adを経由して第1多孔質体7a側の面に回り込むことを防止することができる。
またこの例では、第2突条部61bが第2樹脂導入部60bから離間する方向で且つ放射状に第2多孔質体7bの他方角部7bb側(
図6(d)参照下方角部)に向って3方向に分岐し延在している点で、上述の実施形態と異なる。このような形態とした場合も、突出部64を備えた体積の大きい箇所と突出部64を備えていない箇所との組み合わせで冷却水の流れをコントロールできるとともに、成形時には樹脂材料の流動を調整し、スペーサ5Dの品質向上を図ることができる。
【0033】
<第2実施形態>
図7~
図10を参照しながら、第2実施形態に係るスペーサ50について説明する。第1実施形態と共通する部位には共通の符号を付し、共通する構成、効果の説明は省略する。
まず
図7、
図8には、第2実施形態に係るスペーサ50を示している。
スペーサ50は、第1実施形態に係るスペーサ5と同様に半筒状からなり、冷却水の流れを規制するため、シリンダブロック1の冷却水流路3内に配置されるものである。第2実施形態に係るスペーサ50も第1実施形態と同様に成形体6と、成形体6に一体に固着された多孔質体7とを備え、多孔質体7としては、所定の外的要因が付加されたことを契機として圧縮された状態から圧縮前の状態に復元し膨大化する特性を有したものが採用される。
また第2実施形態に係るスペーサ50は、第1実施形態と同様の機能を有する突条部61を備えている点は第1実施形態と共通するが、成形体6の多孔質体7側とは反対側の面、すなわち外面6b側に、多孔質体7側に窪むように形成された凹条部67が設けられている点が第1実施形態に係るスペーサ5と異なる。
そして第2実施形態のスペーサ50も、第1実施形態と同様に冷却水流路3内への組付け性がよいスペーサ50でありながら、樹脂材料のウェルドラインLをコントロールし、後述するように品質の向上を図ることができる。以下、詳述する。
【0034】
図例のスペーサ50は、3気筒のシリンダボア2に対応するため、円弧部62を複数有し、その円弧部62のそれぞれの凹所6aa(
図8(b)参照)に多孔質体7が一枚ずつ固着されている。第2実施形態でも、シリンダボア2の1気筒目に対応する位置にある円弧部62に固着された多孔質体7を第1多孔質体7a等として説明する。よって第1多孔質体7aと重なる位置に形成された凹条部67は第1凹条部67aとして説明する。またシリンダボア2の2気筒目に対応する位置にある円弧部62に固着された多孔質体7を第2多孔質体7b等とし、シリンダボア2の3気筒目に対応する位置にある円弧部62に固着された多孔質体7を第3多孔質体7c等として説明する。よって第2多孔質体7bと重なる位置に形成された凹条部67を第2凹条部67b、第3多孔質体7cと重なる位置に形成された凹条部67を第3凹条部67cとして説明する。スペーサ50の第2多孔質体7b及び第3多孔質体7cが配置された円弧部62には、突出部64が冷却水流路3内の冷却水の流れを制御するために第1多孔質体7aが配置された円弧部62の高さ寸法より突出して形成されている。
【0035】
第1樹脂導入部60a、第2樹脂導入部60b及び第3樹脂導入部60cは、いずれも成形体6の外面6bに形成され、円弧部62を正面視した際の高さ方向の略中央位置(
図7参照)で且つ断面視において円弧部62の頂部(円弧部62の最も突出した位置)に位置している。
第1多孔質体7aが配された円弧部62には、突条部61は形成されていないが、円弧部62の第1接続部63a寄りには、一方端から他方端(
図7では上方端から下方端へ縦方向)へ向けて直線溝状に第1凹条部67aが設けられている。よって、この第1凹条部67aは、成形時に第1凹条部67aを模る成形型100の成形突条部によって樹脂材料の流動を調整し、品質向上を図ることができる。また、第1凹条部67aは、冷却水流路3内に配置した際には、冷却水の流れ方向に対して直交する方向に窪んだ部位になるため、冷却水の流れを阻害することがない。
【0036】
第2多孔質体7bが配された円弧部62に形成された第2突条部61bは、正面視において横方向に直線状に延出して形成され第2樹脂導入部60bから離間する方向(横方向)、具体的には、第1接続部63aに向けて第2多孔質体7bの端部まで延在するように形成されている。また第2多孔質体7bが配された円弧部62には、第2凹条部67bが第2突条部61bに沿って、且つ第2突条部61bの上方に略平行に第2多孔質体7b側に窪んで形成されている。よって、スペーサ50を冷却水流路3内に配置した際には、第1多孔質体7aが配された円弧部62側から冷却水が流れてくると、これら第2突条部61b及び第2凹条部67bは冷却水の流れ方向に沿って形成されるため、第2突条部61b及び第2凹条部67bが障壁になって、第2突条部61bの下方側領域に冷却水流れが誘導される。
【0037】
第3多孔質体7cが配された円弧部62に形成された第3突条部61cは、正面視において横倒れ略逆J字形状に形成されている。第3突条部61cは、第3樹脂導入部60cから離間する方向(横方向)へ第3多孔質体7cの端部7ceまで延在するように形成されている。また第3多孔質体7cが配された円弧部62には、第3凹条部67cが第3突条部61cに沿って並行に、且つ第3突条部61cの下方に窪んで形成されている。第3凹条部67cは第3樹脂導入部60cの下方から正面視において倒L字状に形成され、円弧部62の下端部まで形成され、形成幅は第3突条部61cの形成幅より、細幅に形成されている。よって、スペーサ50を冷却水流路3内に配置した際には、第1多孔質体7a、第2多孔質体7bが配された円弧部62側から冷却水が流れてくると、これら第3突条部61c及び第3凹条部67cは冷却水の流れ方向に沿い且つ下方側へと湾曲しているので、第3突条部61c及び第2凹条部67bの形状に沿って下方端部側へ冷却水流れが誘導される。
【0038】
このように第1~第3多孔質体7a~7cの復元状態と冷却水流路3の幅寸法とを考慮し、第2,第3突条部61b,61cの突出高さを設計すれば、スペーサ50を冷却水流路3内の適切な位置に配することができる。また冷却水の流れ・流速を考慮して第2、第3突条部61b,61c及び第1~第3凹条部67a~67cが形成される場所、形状を設計すれば、成形時の樹脂材料の流動を調整しつつも、冷却水流路3内に設置されるスペーサ50による冷却水のコントロールを所望通りに行うことができる。
【0039】
さらに
図7、
図8(a)に示すように第2,第3突条部61b,61cに沿って第2,第3凹条部67b,67cを設けることで、成形型100には成形凹条部(
図9(a)及び
図9(b)の成形凹条部103a)に沿って成形突条部(
図9(a)及び
図9(b)の成形突条部103c)が設けられることになる。よって、第2,第3多孔質体7b,7cと成形体6とを一体に成形する際、樹脂材料は、成形型100の成形突条部(103c)が存在する箇所を流動し難くなる(場合によっては堰き止められる)一方、成形凹条部(103a)が存在する領域を積極的に流れるようになる。したがって、成形型100の成形凹条部(103a)に加えて、成形突条部103cによって、樹脂材料の流動状態をより正確に調整でき、スペーサ50の品質を向上させることができる。また、上述の作用によって、成形凹条部103aの幅を広げなくとも、成形凹条部103aにおいて樹脂材料が積極的に流れるようにできる。したがって、樹脂材料を積極的に流すことを目的とした成形凹条部103aの幅の拡大量を緩和できるため、成形凹条部103aにより第2,第3突条部61b,61cを成形する際にヒケが生じることを緩和できる。
【0040】
そして第1多孔質体7aが配された円弧部62に形成された第1凹条部67aを形成する際、成形型100には成形突条部(不図示)が設けられることになる。よって、第1多孔質体7と成形体6とを一体に成形する際、樹脂材料は、成形型100の成形突条部が存在する箇所を流動し難くなる(場合によっては堰き止められる)。したがって、この場合も成形型100内に導入された樹脂材料の流動状態を、成形型100の成形突条部によって調整することができ、第1樹脂導入部60aから樹脂材料を流動させたい所望の箇所に優先して樹脂材料を供給できる。その結果、射出成形時に、成形体6の形状に応じて、第1多孔質体7a上における樹脂材料の流動状態を調整することができるため、スペーサ50の品質を向上させることができる。
【0041】
また第1~第3凹条部67a~67cは、第1~第3多孔質体7a~7cと重なる位置に配置されるので、第1~第3多孔質体7a~7cと重なる領域において、成形時に樹脂材料の流動状態を調整することができる。そして、樹脂材料が、第1~第3多孔質体7a~7cと重ならない領域に至るまでに、第1~第3多孔質体7a~7cと重なる領域全体に樹脂材料を行き渡らせ易くなる。したがって、樹脂材料が、第1~第3多孔質体7a~7cと重なる領域から第1~第3多孔質体7a~7cと重ならない領域に至った後、再度、第1~第3多孔質体7a~7cと重なる領域に戻るような流れを抑えることができる。この観点においても、スペーサ50の品質をより向上させることができるといえる。
【0042】
<製造方法>
次に
図9を参照しながら、スペーサ50を製造する方法について説明する。ここでは3気筒目に対応する位置に配されるスペーサ50の一部を図示し説明するが、成形時は、第3多孔質体7cが下型101に載置される態様と同様に第1多孔質体7a及び第2多孔質体7bも載置され、インサート成形される。よって、成形型に第2突条部61b及び第3突条部61cを形成するため、所望する形状の成形凹条部(不図示)、さらに第2凹条部67bを形成するため、所望する形状の成形突条部(不図示)が設けられている。
【0043】
まず、下型101上に、予め所定大きさに裁断され、且つ、所定位置に貫通孔70が形成された矩形状の第3多孔質体7cを配置する。このとき、下型101の突起101aに第3多孔質体7cの貫通孔70を嵌め合せ、第3多孔質体7cの位置決めを行う(
図9(a)参照)。その後、上型103を下型101に型締めし、溶融状態の樹脂材料をゲート部104から射出していく(
図9(b)参照)。上型103には第3突条部61cを形成するための成形凹条部103aと、第3多孔質体7cを押える複数の押えピン103bと、第3凹条部67cを形成するための成形突条部103cを有している。成形凹条部103aは、第3多孔質体7cが載置される面とは反対側に位置するとともに、第3樹脂導入部60cから第3樹脂導入部60cとは離間する方向に延在するように形成されている。また成形突条部103cは、成形凹条部103aに沿って同様に形成されている。上型103を下型101に型締めすると、押えピン103bは、第3多孔質体7cを介して下型101に当接した状態となり、下型101の円弧部62を形成する凸曲面上に載置された第3多孔質体7cを押え付けた状態となる点は第1実施形態と同様である。
【0044】
そして、溶融状態の樹脂材料は第3樹脂導入部60cに連続して形成された成形凹条部103aに優先的に充填され、その後に成形突条部103c、円弧部62及び突出部64(
図7参照)を形成するキャビティ102内の全域に充填されていく。ここで、突出部64を備えた3気筒目及び2気筒目に対応する位置に配される円弧部62を形成するキャビティは、1気筒目に対応する位置に配される円弧部62を形成するキャビティ(不図示)に比べて体積が大きい。したがって、同時に同量の射出を行うと、1気筒目に対応する位置に配される円弧部62を形成するキャビティが先に充填され、余剰の樹脂材料が2気筒目側にも流れ込もうとする。しかし、本実施形態では、成形突条部(不図示)によってその流動を抑制し、第1多孔質体7a側へ流れるタイミングを遅らせることができる。こうしてキャビティ102内に樹脂材料を充填した後、保圧状態で冷却し樹脂材料を硬化させ、型開きして脱型すれば、
図9(c)等に示すスペーサ50を得ることができる。
【0045】
<スペーサの変形例>
続いてスペーサ50の変形例について
図10(a)~(d)を参照しながら説明する。上述の実施形態と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する説明は省略する。
図10(a)に示すスペーサ50Aは、第1多孔質体7aの第1樹脂導入部60aの形成位置が、円弧部62の高さ方向の略中央位置で且つ円弧部62の頂部より第1多孔質体7aの一方端部7ac(第1接続部63aがある側とは反対側の端部)寄りに設けられている。
突条部61は形成されておらず、第1樹脂導入部60aから間隔を空けて上側に第1樹脂導入部60aから離間する方向へ(斜め横方向)且つ第1多孔質体7aの上方角部7aaに向けて上方第1凹条部67aaが形成されている。またこの上方第1凹条部67aaと対称に第1樹脂導入部60aから間隔を空けて下側に第1樹脂導入部60aから離間する方向へ(斜め横方向)且つ第1多孔質体7aの角部7abに向けて下方第1凹条部67abが形成されている。
第2樹脂導入部60bが形成されている円弧部62には、突条部61も凹条部67も形成されていない。
第3樹脂導入部60cは、第3多孔質体7cの第2接続部63b側の上方角部7cd寄りに形成され、この第3樹脂導入部60cを囲むように、第3凹条部67cが形成されている。この第3凹条部67cは、射出成型時に樹脂材料が第2接続部63b側に流入しすぎないように正面視において倒れ略U字状に形成されている。なお、第1~3樹脂導入部60a,60b,60cは、スペーサ50Aが冷却水流路3内に配置された状態において、冷却水流路3の外側壁面3dに干渉しない位置、つまりスペーサ50と冷却水流路3の外側壁面3dとの間に所定の隙間を確保可能な位置に設けられている。
【0046】
このスペーサ50Aのように、突条部61がなくても、第1凹条部67a、第3凹条部67cを形成することで、スペーサ50Aとして冷却水の流れをコントロールできる。また、成形時には、第1凹条部67a、第3凹条部67cが肉抜き部位となり、樹脂材料の流れもコントロールでき、第1~第3多孔質体7a~7cの位置ずれや捲れ等が生じることを抑制できる。
【0047】
図10(b)に示すスペーサ50Bは、突条部61がなく、第1接続部63aに沿って縦方向に凹条部67と、第3多孔質体7cが配されている円弧部62の第3多孔質体7cの端部7cfに沿って縦方向に第3凹条部67cが形成されている。第1多孔質体7aの第1樹脂導入部60aの形成位置は、円弧部62の高さ方向の略中央位置で且つ円弧部62の頂部より第1多孔質体7aの一方端部7ac(第1接続部63aがある側とは反対側の端部)寄りに設けられている。
第2樹脂導入部60bが形成されている円弧部62には、突条部61も凹条部67も形成されていない。
第3樹脂導入部60cは、第3多孔質体7cの第2接続部63b側の端部7cfに形成されている。
【0048】
このスペーサ50Bのように、突条部61がなくても、凹条部67、第3凹条部67cを形成することで、スペーサ50Bとして冷却水の流れをコントロールできる。また、成形時には、凹条部67、第3凹条部67cが肉抜き部位となり、樹脂材料の流れもコントロールでき、第1~第3多孔質体7a~7cの位置ずれや捲れ等が生じることを抑制できる。
【0049】
図10(c)に示すスペーサ50Cは、理想とするウェルドラインLと第1接続部63a、第2接続部63bとが一致していない例である。上述の実施形態では理想とするウェルドラインLが第1接続部63a,第2接続部63bの辺りである例について述べたがこれに限定されず、
図10(c)に示すように斜めにウェルドラインLを持ってきたい場合は、第1凹条部67a~第3凹条部67cもそれに対応して斜めに傾斜した直線形状としてもよい。具体的には、この例の第1凹条部67aは、第1樹脂導入部60aの斜め下方で且つ第1樹脂導入部60aから若干離間した部位に形成されている。第2凹条部67bは、第1凹条部67aと略平行に2つに分離して形成され、第1接続部63a寄りに形成された上方第1凹条部67baと、第2接続部63b寄りに形成された下方第2凹条部67bbとを備えている。第3凹条部67cは、第3樹脂導入部60cから上方に離間して形成され且つ、下方第2凹条部67bbと略平行に形成されている。またこの例の第1多孔質体7a~第3多孔質体7cは、台形状もしくは平行四辺形形状とされている。
図10(c)に示すような形態とした場合も、第1凹条部67a~第3凹条部67cによって、冷却水の流れをコントロールできる。また、成形時には樹脂材料の流動状態を調整でき、スペーサ50Cの品質向上を図ることができる。
【0050】
図10(d)に示すスペーサ50Dは、第3多孔質体7cが配される成形体6に貫通孔66が設けられ、第3多孔質体7cには、貫通孔66と対応する位置に貫通孔を囲むような連通孔7ccが設けられている点で上述の実施形態とは異なる。また第3凹条部67cは、連通孔7ccの外縁に沿うように延在している。第3突条部61cは、貫通孔66(連通孔7cc)及び第3凹条部67cを囲むように形成されている。貫通孔66の上方側には半円弧形状の上方第3突条部61caが形成され、貫通孔66の下方側には半円弧形状の下方第3突条部61cbが形成されている。さらに第1突条部61aが設けられた成形体6には、切欠部65が設けられており、第1多孔質体7aには、切欠部65と対応する位置に切欠部65を避けるような凹部7aeが設けられている。第1突条部61aは、その一部が、凹部7aeの外縁に沿うように延在している。またこの第1突条部61aと対称に第1凹条部67aが、凹部7aeの外縁に沿うように延在している。
この場合、スペーサ50Dに形成された第1突条部61a及び第3突条部61cが障壁となる上、第1凹条部67a及び第3凹条部67cの窪んだ存在によっても、冷却水が貫通孔66や切欠部65に流入することを抑制することができる。また成形型100には、第1突条部61a及び第3突条部61cを形成するための成形凹条部や第1凹条部67a及び第3凹条部67cを形成するための成形突条部が設けられることになる。そのため、成形型100を用いてスペーサ50Dを成形する際、樹脂材料が凹部7aeや連通孔7ccを経由して第1多孔質体7aや第3多孔質体7c側の面に回り込むことを防止することができる。
【0051】
<その他の実施形態>
スペーサ5,50の構成、形状は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、スペーサ5,50を構成する成形体6に対して多孔質体7を固着させる位置(冷却水流路3の深さ方向の位置、周方向の位置)、接続部(63a,63b)の幅寸法や多孔質体7の枚数(冷却水流路3の深さ方向の枚数、周方向の枚数)や形状は、冷却水流路3内に配置されるスペーサ5の安定性、或いは、冷却水流路3内を流通する冷却水の冷却機能等、求められる仕様に応じて適宜変更してもよい。例えば、前記実施形態では、多孔質体7は、成形体6の円弧部62毎に設けられているが、成形体6の全て(複数)の円弧部62に対応するように連なった帯状の多孔質体7を成形体6に取り付けてもよい。また、成形体6の形状は、実施形態では、半筒状(半割状)のものを例示したが、冷却水流路3の全周に及ぶ全筒状のものであってもよい。さらに図示していないが、第2実施形態に示すように半割状より小さな部分スペーサの場合は、冷却水流路3内の一か所に配置してもよいし、複数箇所に配置してもよく、配置する部分スペーサの数は、冷却水流路3内のスペースや求められる仕様等に応じて適宜設定してもよい。よって、この場合、スペーサの形状に応じて多孔質体7は1枚固着されるものであっても、複数枚固着されるものであってもよいことは言うまでもない。さらにまたスペーサ5が適用される内燃機関として、3気筒の内燃機関を例示したが、これに限らず他の気筒数の内燃機関にも適用可能である。樹脂導入部60及び突条部61の形成個数や形成位置、形状も図例に限定されない。
【0052】
多孔質体7も上述の実施形態に限定されない。例えば、多孔質体7としては、気泡の大きさが非常に小さい微粒品、気泡の大きさが小程度の小粒品、気泡の大きさが中程度の中粒品のいずれを用いてもよい。具体的には、気泡の大きさ(径)が0.1~5mm程度のセルロース系スポンジを用いてもよい。これらの気泡の大きさはセルロース系スポンジの作製過程で使用される結晶ぼう硝の粒度によって決定される。また、セルロース系スポンジは、連続気泡型に限らず、独立気泡型のものでもよい。さらに、セルロース系スポンジは、セルロースと補強繊維とからなるものが好ましいが、これに限らず、セルロース単独で構成されるものであってもよい。また、セルロース系スポンジとは、セルロース自体からなるスポンジの他、圧縮状態を保持できる程度にセルロースの水酸基を残したセルロース誘導体、例えば、セルロースエ-テル類、セルロースエステル類等からなるスポンジ、或いは、これらの混合物からなるスポンジのいずれかから選ばれるものであってもよい。また、多孔質体7は、セルロース系スポンジに限定されない。多孔質体7としては、例えば、水膨潤性シート、水可溶性のバインダー或いは所定温度以上の温度で溶解するバインダーによって圧縮状態に維持された多孔質体シート等を用いてもよい。さらに多孔質体7が膨大化する所定の外的要因としては、冷却水流路3内を流通する冷却水に限定されず、エンジンの作動によって加熱されて所定の温度以上に至った冷却媒体であってもよい。また上述の実施形態では、多孔質体7を成形体6の凹所6aa内に配し固着された例について説明したが、これに限定されず、成形体6の内面6a側の表面に固着されるものであってもよいし外面6b側であってもよい。また多孔質体7の形状も図例のように正面視矩形状に限定されず、例えば矩形状の一部角部が斜めにカットされた形状でもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 内燃機関
1 シリンダブロック
3 冷却水流路
5,5A~5D スペーサ
6 成形体
60 樹脂導入部
60a 第1樹脂導入部
60b 第2樹脂導入部
60c 第3樹脂導入部
61 突条部
61a 第1突条部
61b 第2突条部
61c 第3突条部
67 凹条部
67a 第1凹条部
67b 第2凹条部
67c 第3凹条部
7 多孔質体