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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】自走式搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240402BHJP
   B62B 3/04 20060101ALI20240402BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B62B3/04 B
B62B3/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020015907
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021123155
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】510298403
【氏名又は名称】有限会社サット・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】猪野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 一男
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第6628847(JP,B1)
【文献】実開昭64-013514(JP,U)
【文献】特開2013-091366(JP,A)
【文献】特開2019-127092(JP,A)
【文献】実開昭55-074724(JP,U)
【文献】特開昭63-247296(JP,A)
【文献】特開2007-076789(JP,A)
【文献】特開2018-025379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0084459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B62B 3/04
B62B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に対構成された走行壁で運搬台車を両側部から挟み込むと共に運搬台車の上方を左右方向に亘る連結体で連結された自立構造体からなる搬送装置であって、
前記自立構造体は、
運搬台車の両側部それぞれにて走行可能に配置された左右一対又は複数対の走行壁と、
各走行壁の間であって運搬台車の上方を亘るように固定される連結体とから構成された、自立可能な自走体からなり、
各走行壁は、
内側面側に設けられた、運搬台車の側部を牽引する牽引アームと、
下部に設けられた、自走可能な自走輪と、
自走輪内又は壁面の下方寄りに設けられた自走輪の駆動装置とを有し、
左右の走行壁の牽引アームによって、運搬台車を吊り下げることなく、持ち上げることなく、或いは下部から支えることなく両側部から牽引固定したまま、駆動装置及び自走輪によって自立自走して運搬することを特徴とする自走式搬送装置。
【請求項2】
前記走行壁が前後方向に複数の自走輪を有するものであり、平面視にて、走行壁の前後端の自走輪の車軸間距離の中央1/3範囲内に、牽引アームによるすべての牽引位置が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の自走式搬送装置。
【請求項3】
平面視矩形の運搬台車を牽引するものであって、かつ、前記走行壁が前後方向に複数の自走輪を有するものであり、平面視にて、運搬台車の図心と、左右の走行壁の前後端の自走輪の車軸間を対角線状に繋いだ対角交差点とが、左右の走行壁の前後端の自走輪の車軸間距離の中央1/3の範囲内に重なることを特徴とする、請求項1,2のいずれかに記載の自走式搬送装置。
【請求項4】
牽引アームは、開閉動作によって枠内空間を開閉可能な開閉枠体を有してなり、
また、運搬台車の各側部位置には、連結ピンを有した固定式の牽引冶具が外方を向いて固定され、
牽引アームの開閉枠体によって、牽引冶具の連結ピンを遊嵌連結することを特徴とする、請求項1,2,3のいずれかに記載の自走式搬送装置。
【請求項5】
牽引アームには、左右の牽引アームによって運搬台車を牽引固定した状態で、運搬台車の平面姿勢をガイドするガイド材が設けられることを特徴とする、請求項1,2,3,又は4のいずれかに記載の自走式搬送装置。
【請求項6】
各走行壁内の複数の自走輪のうちの少なくとも1輪は、固定された水平車軸周りに回転する回転輪からなると共に回転輪の外周に亘って複数個の斜め方向の樽状回転体を有したメカナムホイールからなることを特徴とする、請求項1,2,3,4,又は5のいずれかに記載の自走式搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種装置や資材を自動制御によって牽引運搬しながら自走する自走式搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、荷物(重量物)の積み降ろし作業や機械等の据付け作業時等に使用される門型リフターとして、左右の各台車にそれぞれ上下伸縮式の伸縮ブームを設け且つ各伸縮ブームの上端部間にビームを架設してなる門型リフターにおいて、各台車の各走行台に、前後に間隔をもって2本ずつ(合計4本)のジャッキ装置を設けたものが開示される(特許文献1)。
【0003】
ほかに従来、各種資材や重量物を搬送する搬送装置として、四隅に設けられそれぞれ昇降自在な支柱と、これらの支柱の頂部に設けられてこれらの支柱を相互に結合する頂部フレームと、この頂部フレームに装着されて搬送すべき物品を懸吊するための懸吊ビームとからなる架台、前記支柱を同時に昇降させる昇降装置、各支柱の底部に設けられて前記架台を移動可能に支持する支持装置および前記架台に着脱自在に結合され搬送すべき物品の荷重を支持する移動可能な支持台を備えた搬送装置が開示される(特許文献2)。
【0004】
また従来、火葬場で棺桶をリフト運搬する火葬場の運搬車が開示される(特許文献3)。これは、車体に設けられた載置部たる前後方向のリフト杆で棺桶をリフト運搬するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-76789号公報
【文献】特公平06-088755号公報
【文献】特開2018-025379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のものはいずれも搬送対象の資材等を吊り下げる(特許文献1)か、或いは下方から潜り込ませたリフトで持ち上げてリフト運搬する(特許文献2)ものであり、資材等が重量物であった場合に運搬重量の制限がかかってしまう。また資材等が高重心であった場合にバランスを維持できず、安定して運搬できない場合があった。これらを解消するために高剛性及び高強度の支持体を構成しようとすると、体積及び重量が嵩張ってしまい、コンパクトかつ軽量に構成できないという問題があった。これと合わせて、吊り下げ支持構造或いは潜り込みによるリフト支持構造を移動可能とするには、比較的大型の車両構造が必要となる。このため、移動方向に制限がかかるなど、小回りが利かない問題があった。
【0007】
そこで本発明では、資材等が重量物であった場合にも運搬荷重の制限がかかりにくく、また資材等が高重心であった場合にもバランスを維持し、安定して運搬でき、さらに移動方向に制限がかかりにくく比較的小回りが利く自走式搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る自走式搬送装置は、
左右に対構成された走行壁で運搬台車を両側部から挟み込むと共に運搬台車の上方を左右方向に亘る連結体で連結された自立構造体からなる搬送装置であって、
前記自立構造体は、
運搬台車の両側部それぞれにて走行可能に配置された左右一対又は複数対の走行壁と、
各走行壁の間であって運搬台車の上方を亘るように固定される連結体とから構成された、自立可能な自走体からなり、
各走行壁は、
内側面側に設けられた、運搬台車の側部を牽引する牽引アームと、
下部に設けられた、自走可能な自走輪と、
自走輪内又は壁面の下方寄りに設けられた自走輪の駆動装置とを有し、
左右の走行壁の牽引アームによって、運搬台車を吊り下げることなく、持ち上げることなく、或いは下部から支えることなく両側部から牽引固定したまま、駆動装置及び自走輪によって自立自走して運搬することを特徴とする。
【0009】
運搬台車を吊り下げ支持することなく、かつ持ち上げることなく、或いは下部から支えることなく、すなわち潜り込み支持することなく運搬台車側部からけん引運搬する構造となっている。このため、運搬台車が重量物を積載している場合や高重心になっている場合にも、運搬台車を両側部から安定してけん引運搬できる。また運搬台車の片端から一方向へ引っ張り牽引するのではなく、両側部から引っ張り牽引又は/及び押し牽引するため、積載状態にかかわらず、移動の自由度が高く、小回りの効いた運搬装置となる。
【0010】
(2)また、本発明に係る自走式搬送装置は、前記走行壁が前後方向に複数の自走輪を有するものであり、平面視にて、走行壁の前後端の自走輪の車軸間距離の中央1/3範囲内(ホイールベースのセンター範囲)に、牽引アームによるすべての牽引位置が含まれることを特徴とする。これは、走行壁の下部に備えた車輪の前後区間と、走行壁の内側部に備えた運搬台車への牽引アームとの前後方向の位置関係を規定するものである。例えば後述の図8に示すように、各走行壁1のベース体10の前後方向に備わる複数の自走輪4のうち、前端の自走輪4と後端の自走輪4の前後の車軸間距離である自走輪ホイールベース4Bを規定し、この自走輪ホイールベース4Bの中央であるホイールベースセンター4BCを規定したとき、ホイールベースセンター4BCを中心とした、自走輪ホイールベース4Bの長さの1/3長さの範囲内(ホイールベースのセンター範囲4BC)に、牽引アーム3によるすべての牽引位置(連結ピン7Pの前後方向の収容位置)が含まれることを特徴とする。
【0011】
特に好ましくは、本発明に係る自走式搬送装置は、実施例の図8に示すように、走行壁が前後方向に複数の自走輪を有するものであり、平面視にて、走行壁の前後端の自走輪の車軸間距離の中央位置(ホイールベースセンター)に、牽引アームによるすべての牽引位置が設けられる。自走輪のホイールベースセンターまたはホイールベースの3分の1倍のセンター範囲内の位置において、運搬台車Tをピン連結することで、運搬台車Tの左右側部を側方牽引する側方牽引方式において、台車Tの重心位置にかかわらずもっとも安定的に牽引運搬することができる。
【0012】
(3)或いは、本発明に係る自走式搬送装置は、平面視矩形の運搬台車を牽引するものであり、平面視にて、運搬台車の図心(対角線中心)と、左右の走行壁の前後端の垂直車軸間を対角線状に繋いだ対角交差点とが、左右の走行壁の前後端のホイールベース距離の中央1/3の範囲内に重なることを特徴とする。より好ましくは、左右の牽引アームは、平面視対角位置、すなわち重心を通る短編方向の対角線上の位置に一対又は複数対配置される。これは、走行壁の下部に備えた車輪の前後区間と、走行壁にに備えた牽引アームによって牽引する運搬台車の平面図心位置との前後方向の位置関係を規定するものである。例えば後述の図8に示すように、各走行壁1のベース体10の前後方向に備わる複数の自走輪4のうち、前端の自走輪4と後端の自走輪4の前後の車軸間距離である自走輪ホイールベース4Bを規定し、この自走輪ホイールベース4Bの中央であるホイールベースセンター4BCを規定したとき、ホイールベースセンター4BCを中心とした、自走輪ホイールベース4Bの長さの1/3長さの範囲内(ホイールベースのセンター範囲4BC)に、牽引アーム3によるすべての牽引位置(連結ピン7Pの前後方向の収容位置)が含例えば後述の図8に示すように、
【0013】
(4)前記牽引アームは、開閉動作によって枠内空間を開閉可能な開閉枠体を有してなり、
また、運搬台車の各側部位置には、連結ピンを有した固定式の牽引冶具が外方を向いて固定され、
牽引アームの開閉枠体によって、連結冶具の連結ピンを遊嵌連結することを特徴とする。
つまり、運搬台車の各側部には、連結ピンを有した牽引冶具が固定され、牽引アームは、連結ピンを枠内空間に遊嵌連結する、開閉可能な開閉枠体を有してなる。
牽引アームの開閉枠体が連結ピンを遊嵌連結することで、運搬台車に固定された牽引冶具を牽引固定する。また、牽引冶具は、牽引アームと連結可能な連結ピンが設けられ、この連結ピンが、運搬台車の各側部位置から外方を向くように固定される。
運搬台車に固定された牽引アームの開閉枠体と、牽引冶具の連結ピンとがアソビをもって遊嵌連結することで、運搬台車と走行壁との位置ないし高さのズレをアジャストすることができる。例えば、左右に亘って床面に段差や高低差があった場合、左右の牽引部それぞれで遊嵌連結によって高さ方向にアジャストされて、走行壁の走行車輪が地面から浮くのを防ぐことができる。
後述の実施例の牽引冶具は、運搬台車の高さ方向(縦方向)または幅方向(水平方向)のいずれかを連結軸として固定された連結ピンを有する。また後述の実施例の開閉枠体は、前記連結ピンの連結軸を法線方向とする、高さ方向(縦方向)または幅方向(水平方向)に貫通した枠内空間を有し、開閉動作によって枠内空間が閉じられた状態、ないし枠開放された状態のいずれかとなる。
【0014】
(5)前記牽引冶具又は牽引アームの少なくともいずれかには、左右の牽引アームによって運搬台車を牽引固定した状態で、運搬台車の平面姿勢をガイドして走行壁に対する運搬台車の過度な方向変移を抑制するガイド材が、運搬台車側面と走行壁内面との対向面間に設けられることを特徴とする。
後述の実施例では、牽引冶具に、牽引アームと連結可能な縦方向の連結ピンが設けられると共に、この連結ピンよりも平面視外方へ張り出した位置に、自由回転可能に軸支された円盤状のガイド材を備えたガイド機構が設けられる。ガイド材7Gは連結ピン7Pの連結軸位置よりも側部外方へ張り出した位置まで自由回転部の一部が突出して設けられる。なおさらに、牽引連結状態でこのガイドバンパーに対向する走行壁の内側面には、ガイド材7Gが当接する平面視台形板状のガイドバンパー3Gが設けられることが好ましい(図7)。
【0015】
(6)走行壁内の複数の自走輪のうちの少なくとも1輪は、固定された水平車軸周りに回転する回転輪からなると共に回転輪の外周に亘って複数個の斜め方向の樽状回転体を有したメカナムホイールからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では上記の手段を講じることで、資材等の運搬荷重制限がかかりにくく、また高重心であった場合にもバランスを維持し、安定して運搬でき、さらに移動方向に制限がかかりにくく比較的小回りが利く自走式搬送装置を提供することとなった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る自走式搬送装置の上方斜視図である。
図2】第1実施形態に係る自走式搬送装置の正面図である。
図3】第1実施形態に係る自走式搬送装置の右側面図である。
図4】第1実施形態に係る自走式搬送装置及び運搬台車の平面図及びそのうちのα-α部分拡大図である。
図5】第1実施形態に係る自走式搬送装置を備えた自走式搬送セットの平面図及びそのうちのβ-β部分拡大図である。
図6】第1実施形態に係る自走式搬送装置を備えた自走式搬送セットの上方斜視図である。
図7】第1実施形態に係る自走式搬送装置を備えた自走式搬送セットの牽引固定部の部分を示す正面上方斜視図である。
図8】第1実施形態に係る自走式搬送装置及び運搬台車の、牽引固定状態での平面位置関係を示す平面説明図である。
図9】第1実施形態に係る牽引冶具の斜視図(a)である。
図10】第1実施形態に係る牽引冶具の平面図(b)である。
図11】第2実施形態に係る牽引冶具の斜視図(a)及び同牽引冶具の先部の部分拡大図(b)である。
図12】第2実施形態に係る牽引冶具の固定状態における平面図である。
図13】第3実施形態に係る牽引冶具の、一の運搬台車への固定状態を示す斜視図(a)及び平面図(b)である。
図14】第3実施形態に係る牽引冶具の、他の運搬台車への固定状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態に係る自走式搬送装置、並びに、この自走式搬送装置及び自走式搬送装置と共に使用される運搬台車とのセットからなる自走式搬送セット、並びに、運搬台車に固定される牽引冶具について説明する。但し、各用語に続いて記載するアルファベット、数字、数字とアルファベットの組合せからなる文字列は、実施形態としての例を図面と共に示す参照用符号であり、参照用符号は構成名称に含まれず、参照用符号によって概念又は形態又は機能を限定するものではない。
【0019】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る自走式搬送装置100について図1図8を参照して説明する。このうち、図5図8は、第1実施形態に係る自走式搬送装置100及び運搬台車Wからなる自走式搬送セットを示す。また図9図10は、運搬台車に固定する、第1実施形態に係る牽引冶具を示す。また図11図12は、運搬台車に固定する、第2実施形態に係る牽引冶具を示す。
【0020】
<自走式搬送装置100>
初めに、自走式搬送装置100について説明する。自走式搬送装置は、図1に示すように、左右に対構成された走行壁1で運搬台車を両側部から挟み込むと共に運搬台車Tの上方を左右方向に亘る連結体2で連結された自立構造体からなる。この自立構造体と、自立構造体によって牽引固定される運搬台車との組合せが、図4図5に示される自走式搬送セットである。
【0021】
(自立構造体)
自立構造体は、
両側部それぞれに自立走行可能に配置された左右一対又は複数対の走行壁1と、
各走行壁の間であって運搬台車の上方を亘るように固定される連結体2とから自立可能かつ自走可能に構成される。実施例では箱状のベース体10とその上部に縦フレーム11、横フレーム12でフレーム連結されたフレーム体とから走行壁1が構成され、左右一対の走行壁の間を左右に亘るように、2本の連結フレーム21が連結固定される。
【0022】
連結フレーム21は、走行壁1の上端の横フレーム12のフレーム前端同士を水平につなぐ前部の連結フレーム21と、走行壁1の上端の横フレーム12のフレーム後端同士を水平につなぐ後部の連結フレーム21と、から構成される。
【0023】
この自立構造体100は、左右の走行体1の縦フレーム11と、各縦フレーム11の上端同士をつなぐ連結フレーム21とによって、正面視にて門型形状のフレーム連結体をなす。正面視門型形状の上部2隅のコーナー部、すなわち縦フレーム11の上端と連結フレーム21の左右各端との連結部は、正面視及び背面視にて略三角形状の補強板22が固定される(図1)。
【0024】
また自立構造体100は、左右の走行体1の横フレーム12と、各横フレーム12の前端同士、後端同士をそれぞれつなぐ前後の連結フレーム21とによって、平面視にて矩形枠状のフレーム連結体を成す。平面視矩形枠状の四隅のコーナー部、すなわち横フレーム12の前後各端と連結フレーム21の左右各端との連結部は、平面視にて枠内部に略三角形状の小型補強板122が固定される(図1)。これら補強板および小型補強板によって、自立構造体100の上部4か所のフレーム連結部は3本のフレームが角度可変しないように連結され、自立可能かつ容易に変形しないラーメン構造をなす。
【0025】
(走行壁1)
左右の走行壁1は、前後方向に伸びる箱状のベース体10と、ベース体10の上部に連結された縦フレーム11及び横フレーム12及び底フレームからなる四方矩形枠状のフレーム構造とによって、側面視縦長矩形の枠構造をなす。この枠構造の上部2隅のコーナー部、すなわち各縦フレーム11の上端と横フレーム12の前後各端との連結部は、側面視にて枠内部に略三角形状の小型補強板122が固定される(図1)。
【0026】
また、走行壁1の側面視枠構造の内部には、前後の縦フレーム11同士を水平につなぐ上下の内部フレーム13が連結され、上下の内部フレーム13によって操作盤16が、縦フレーム11の高さ方向中央部付近に支持固定される。内部フレーム13の前後各端と前後の各縦フレーム11との連結部には、側面視にて枠内部かつ操作盤16の上端部の上方又は下端部の下方に略三角形状の小型補強板132が固定される(図1)。
【0027】
操作盤16は操作モジュールが盤内に設けられると共に、盤外部の扉面には緊急停止ボタン16Bが設けられる(図1)。
【0028】
(バッテリー5B)
箱状のベース体10の上部には、前後方向中央付近に箱状のバッテリー5Bが配置され、このバッテリー5Bからベース体10内の走行輪4の駆動モーターに駆動電力が給電される。
【0029】
(アジャスター14)
左右の走行壁1のうち、片側(図1にて向かって右側)の走行壁は、矩形枠状のフレーム構造とその下部のベース体10とを角度可変可能に繋ぐアジャスター14を、ベース体10の前後方向略中央位置に備える。このアジャスター14は、前後の縦フレーム11と上部の横フレーム12と下部の底フレームとからなる矩形枠のうち、下部の底フレームの前後方向中央位置の下部と、ベース体10の前後方向略中央位置の上部とを角度可変可能に繋ぐ、上下一組の連結器からなる(図3)。走行面が不陸をなす場合でも、このアジャスター14によって片側の走行体10がフレーム構造に対して前後方向に傾斜することで、すべての走行輪4を接地状態に維持することが容易となる。
【0030】
(サスペンション15)
アジャスター14が設けられたベース体10の上部には、フレーム構造の底フレームとベース体10とを上下につなぐサスペンション15が前後端それぞれに設けられる。サスペンション15はベース体10が地面からうける衝撃を吸収し、アジャスター14によって角度可変したフレーム構造への衝撃を緩衝する。
【0031】
自走式搬送装置の自立構造体は、左右の走行壁の牽引アームによって、運搬台車を(吊り下げることなく、かつ潜り込み支持することなく)両側部から牽引固定したまま、駆動装置及び自走輪によって自立自走して運搬する。
【0032】
(走行壁1)
左右の各走行壁は、
内側面側に設けられた、運搬台車の側部を牽引する牽引アームと、
下部に設けられた、自走可能な自走輪と、
自走輪内又は壁面の下方寄りに設けられた自走輪の駆動装置とを有し、前後の自走輪によってそれぞれで自立可能な壁体からなる。なお実施例の図に示すように、縦フレームと前後フレームによってフレーム構成された壁体であってもよく、壁面が必ずしも塞がれていることを必要としない。
【0033】
(自走輪)
左右の走行壁はそれぞれ、前後方向に複数の自走輪を有する。左右それぞれの走行壁にて自走輪は同数かつ前後方向に同位置(左右対称)に配置されており、そのうちの共通する車輪位置の少なくとも1輪が、固定車軸周りに回転すると共に斜め方向の樽状回転体を有したメカナムホイールからなる。ホイール中央には駆動モーター5が収容され、ホイルインモーター形式で駆動力が直接伝達される。
【0034】
(牽引位置3Pの平面位置その1:ホイールベースセンター4C/TCと牽引位置3pとの関係)
平面視にて、走行壁1の前後端の自走輪4の車軸間距離(走行壁ホイールベース4B)の中央1/3範囲内(ホイールベースのセンター範囲)に、牽引アームによるすべての牽引位置が含まれることを特徴とする。
【0035】
さらにいえば、平面視にて、走行壁の前後端の自走輪の車軸間距離(走行壁ホイールベース4B)の中央位置(ホイールベースセンター4C)または中央三分の一範囲内の前後位置(ホイールベースセンター範囲4BC)に、牽引アーム3による運搬台車Tのすべての牽引位置が設けられる(図8)。前記牽引位置とは、実施例のような運搬台車Tの側面に固定された牽引治具7の連結ピン7Pを収容する場合における、牽引アーム3の収容凹部3Dの前後位置を意味する。図4,5,7,8に示すように、実施例の牽引アーム3は、基部体31の前後に平面視略半円状の収容凹部3Dを有してなるところ、
【0036】
(牽引位置3Pの平面位置その2:台車の図心位置と牽引位置3pとの関係)
また本発明の搬送装置は、平面視矩形の運搬台車を牽引するものであり、この運搬台車は、平面視にて、運搬台車の図心(対角線中心)と、左右の牽引アームによるすべての牽引位置間を対角線状に繋いだ牽引位置の対角交差点とが、前後端のホイールベース距離の中央1/3の範囲内に重なることを特徴とする。運搬台車Tとしては、例えばカゴ網によって箱状構成されたカゴ台車、あるいは1トン台車ないし平板台車と呼ばれる平型フレーム底板を有する台車が使用される。この運搬台車Tの左右辺の、前後方向同位置に、牽引アーム3が取り付けられる。牽引アーム3は運搬台車のホイールベース中央範囲内、かつ走行壁1のホイールベース中央範囲内に設けられることが好ましい。
【0037】
(牽引アーム)
牽引アーム3は、運搬台車の各側部位置から外方へ先端が張り出して固定される、固定式の牽引冶具6に牽引固定される。牽引アームは、平面視矩形の前後辺に収容空間の窪みである収容凹部3Dを有した水平板状の基部体30と、基部体30の前後の収容凹部3Dの近傍に設けられた可動式の開閉アーム31とからなる。開閉アーム31は解放状態では収容凹部3Dの外側を閉塞するように組み込まれ、この状態で、外方へ弾性付勢されてなる。基部体30前後位置の外方から収容凹部3D側(基部体30の中央側)へ外力がかかったときに、牽引アーム31が内側へ開いて収容凹部3Dを開いた状態とし、牽引冶具7の先側に鉛直方向に固定された連結ピン7Pをこの収容凹部3D内に収容することで、連結ピン7Pを遊嵌連結する。連結ピンが基部体の前後辺それぞれに当接することで、開閉アームが収容空間の窪み側つまり内側へ可動して、連結ピンを収容空間内に収容させ、その後、開閉アームが元のアーム基部体の前後辺の位置に自動復帰することで、連結ピンを収容空間内に遊挿収容する(図4上図、図5上図)。
【0038】
なお、実施例では基部体の前後に収容空間の窪みを有し、各収容空間それぞれに対応して窪みを塞ぐ開閉アームを有しているが、前後辺いずれかのみに収容空間及び開閉アームを有していてもよい。
【0039】
またベース体10の箱枠の内側面には、連結軸よりも側部外方へ張り出した位置に、自由回転可能なガイド材7Gを備えたガイド機構7が設けられる(図4上図、図5上図、図7)。このガイド機構は、自由回転可能なローラー状のガイド材が、運搬台車側面と走行壁内面との対向面間に設けられ、左右の牽引アームによって運搬台車を牽引固定した状態で、運搬台車の平面姿勢をガイドして走行壁に対する運搬台車の過度な方向変移を抑制する。
図7,9,10に示す実施例1では、牽引冶具に、牽引アームと連結可能な縦方向の連結ピンが設けられると共に、この連結ピンよりも平面視外方かつ前後方向へ大形状に張り出した張り出し板の前後の角位置に、自由回転可能に軸支された円盤状のガイド材を2基備えたガイド機構が設けられる。ガイド材7Gは連結ピン7Pの連結軸位置よりも側部外方へ張り出した位置まで自由回転部の一部が突出して設けられる。なおさらに、牽引連結状態でこのガイドバンパーに対向する走行壁の内側面には、ガイド材7Gが当接する平面視台形板状のガイドバンパー3Gが設けられる(図7)。
図11、12に示す実施例2では、フレーム上の運搬台車の左右方向にわたって1本取り付けるタイプの牽引治具が設けられる。図13に示す実施例3では、フレーム上の運搬台車の左右側部の各位置に取り付ける分離タイプの牽引治具が設けられる。
【0040】
牽引冶具の張り出し先部には、牽引アームと連結可能な縦方向または水平方向の連結ピンが設けられる。実施例の連結ピンは、運搬台車の各側部位置から外方を向いて縦方向に固定され、牽引アーム3の収容空間内に遊挿状態で収容された、牽引固定状態となる。
【0041】
(その他の実施形態)
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、各実施形態に示した構成、各種条件に限定されることはなく、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
自立構造体 100
走行壁1
ベース体10
サスペンション構造1S
縦フレーム11
横フレーム12
内部フレーム13
運搬台車T
連結体2
連結フレーム21
補強板22
牽引アーム3
開閉枠体31
自走輪4
メカナムホイール41
駆動装置5
バッテリー5B
モーター5M
牽引冶具7
連結ピン7P
連結ピンピッチ63PL
ガイドバンパー64
ガイド材64A
カメラC
センサS
牽引治具7
連結ピン7P
制御装置8
前後端の自走輪の車軸間距離(ホイールベース距離)WL
ホイールベースのセンター範囲(ホイールベース距離の中央1/3の範囲)4BC
牽引位置3P
ホイールベースセンターWC
運搬台車の図心TX(対角線中心)
牽引凹部3D
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図14