(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】距離画像センサ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4863 20200101AFI20240402BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20240402BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01S17/89
(21)【出願番号】P 2020050780
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】川人 祥二
(72)【発明者】
【氏名】安富 啓太
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/031510(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/078366(WO,A1)
【文献】特開2015-232452(JP,A)
【文献】特開2019-075826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48ー 7/51
G01S 17/00-17/95
G01B 11/00-11/30
H04N 5/30- 5/33
H01L 27/14-27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を電荷に変換する光電変換領域、前記光電変換領域に近接して互いに離間して設けられた第1~第M(Mは2以上の整数)の電荷読出領域、及び前記光電変換領域と前記第1~第Mの電荷読出領域とに対応してそれぞれ設けられ、前記光電変換領域と前記第1~第Mの電荷読出領域との間における電荷転送のための制御パルスを印加するための第1~第Mの制御電極を有する複数の画素回路部と、
前記複数の画素回路部の周辺部に設けられ、前記制御パルスを分配する周辺回路と、
隣接する前記画素回路部を少なくともM個含む画素回路部群のうちの一つの前記画素回路部内にそれぞれ設けられ、前記周辺回路によって分配された前記制御パルスを、前記画素回路部群を構成する全ての前記画素回路部の前記第1~第Mの制御電極のそれぞれに印加する第1~第Mの制御電極ドライバ回路と、
を備える距離画像センサ。
【請求項2】
前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、前記画素回路部群の別々の前記画素回路部内に設けられ、
前記周辺回路と前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路とは、それぞれ、前記別々の画素回路部に近接する配線部を介して電気的に接続されている、
請求項1記載の距離画像センサ。
【請求項3】
前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、それぞれ、前記周辺回路とともに相補的に動作する2つのトランジスタが直列に接続されるインバータ回路を構成し、
前記2つのトランジスタの制御端子には、別々の配線部を経由して前記制御パルスが供給される、
請求項1又は2記載の距離画像センサ。
【請求項4】
前記周辺回路は、前記2つのトランジスタの前記制御端子に、前記別々の配線部を経由して互いにオン期間が重複しないような前記制御パルスを供給する、
請求項3に記載の距離画像センサ。
【請求項5】
前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、それぞれ、
前記2つのトランジスタのうちの一方のトランジスタを有し、
前記周辺回路は、前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路に対応して前記2つのトランジスタのうちの他方のトランジスタを有する、
請求項3又は4に記載の距離画像センサ。
【請求項6】
前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、前記周辺回路とともにpMOSトランジスタとnMOSトランジスタが直列に接続されるCMOSインバータ回路を構成する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の距離画像センサ。
【請求項7】
前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、前記周辺回路とともにpMOSトランジスタとnMOSトランジスタが直列に接続されるCMOSインバータ回路を構成し、
前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、それぞれ、nMOSトランジスタを有し、
前記周辺回路は、前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路に対応してpMOSトランジスタを有する、
請求項3又は4に記載の距離画像センサ。
【請求項8】
前記複数の画素回路部は、それぞれ、前記光電変換領域で発生した電荷を排出するための電荷排出領域、及び、前記光電変換領域と前記電荷排出領域との間における電荷転送のための制御パルスを印加するための第M+1の制御電極をさらに有し、
前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、隣接する前記画素回路部を少なくともM+1個含む画素回路部群のうちの一つの前記画素回路部内にそれぞれ設けられ、
当該画素回路部群のうちの一つの前記画素回路部内に設けられ、前記周辺回路によって分配された前記制御パルスを、前記画素回路部群を構成する全ての前記画素回路部の前記第M+1の制御電極に印加する第M+1の制御電極ドライバ回路をさらに備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載の距離画像センサ。
【請求項9】
前記第1~第Mの制御電極ドライバ回路、及び/又は、前記周辺回路は、前記画素回路部とは異なる半導体チップ上に形成され、貫通電極を用いて前記画素回路部に対して電気的に接続された構成を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の距離画像センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素毎に距離情報を含む距離画像を検出する距離画像センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光の飛行時間を用いて距離情報を含む画像信号を生成するセンサ装置が用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。このセンサ装置は、パルス状の照射光を対象物に繰り返し照射し、二次元アレイ状に配置されたピクセルにおいて対象物の距離情報を含む画像信号を生成する。各ピクセルには、中央に受光領域が、端部に複数の電荷蓄積領域および電荷排出領域が設けられ、信号電荷を受光領域から各電荷蓄積領域および電荷排出領域に順次高速に振り分けて輸送させることができる。このようなピクセルを含むセンサ装置においては、電荷変調ドライバから出力される複数種類の制御信号が各ピクセルの各電荷輸送チャネルに対応する制御電極に印加されることにより、信号電荷を選択された電荷蓄積領域に順次蓄積させ、背景光電荷を電荷排出領域に排出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のセンサ装置では、ピクセル内の電荷輸送制御用のゲートを駆動する際に、特にピクセル数が多くなるに従って、容量負荷の増大により制御信号のなまりが無視できなくなり、高速なピクセルの駆動が難しくなる傾向にある。その結果、取得する距離情報の分解能を十分に高めることができない場合があった。
【0005】
本実施形態は、上記課題に鑑みて為されたものであり、ピクセルサイズを小さく保ちつつ距離分解能を高めることが可能な距離画像センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一形態にかかる距離画像センサは、光を電荷に変換する光電変換領域、光電変換領域に近接して互いに離間して設けられた第1~第M(Mは2以上の整数)の電荷読出領域、及び光電変換領域と第1~第Mの電荷読出領域とに対応してそれぞれ設けられ、光電変換領域と第1~第Mの電荷読出領域との間における電荷転送のための制御パルスを印加するための第1~第Mの制御電極を有する複数の画素回路部と、複数の画素回路部の周辺部に設けられ、制御パルスを分配する周辺回路と、隣接する画素回路部を少なくともM個含む画素回路部群のうちの一つの画素回路部内にそれぞれ設けられ、周辺回路によって分配された制御パルスを、画素回路部群を構成する全ての画素回路部の第1~第Mの制御電極のそれぞれに印加する第1~第Mの制御電極ドライバ回路と、を備える。
【0007】
上記形態の距離画像センサによれば、複数の画素回路部の周辺部に設けられた周辺回路によって制御パルスが分配され、その制御パルスが、画素回路部群のうちの1つの画素回路部内に設けられた第1~第Mの制御電極ドライバ回路によって、画素回路部群を構成する全ての画素回路部の第1~第Mの制御電極に印加される。これにより、各画素回路部において、光電変換領域と第1~第Mの電荷読出領域との間の電荷転送のタイミングが制御される。このような第1~第Mの制御電極ドライバ回路により制御パルスが中継される構成により、ピクセル数が多くなっても制御パルスの波形のなまりを低減でき、ピクセルを高速に駆動して距離分解能の高い距離画像の生成が可能とされるとともに、第1~第Mの制御電極ドライバ回路のそれぞれを画素回路部群で共用する構成によりピクセルサイズを小さく保つことができる。
【0008】
ここで、第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、画素回路部群の別々の画素回路部内に設けられ、周辺回路と第1~第Mの制御電極ドライバ回路とは、それぞれ、別々の画素回路部に近接する配線部を介して電気的に接続されている、こととしてもよい。この場合、周辺回路と第1~第Mの制御電極ドライバ回路とのそれぞれを電気的に接続する複数の配線部を分離することができ、制御パルスのクロストークを防止して安定したピクセルの駆動が実現でき、結果として距離分解能の高い距離画像の生成が可能となる。
【0009】
また、第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、それぞれ、周辺回路とともに相補的に動作する2つのトランジスタが直列に接続されるインバータ回路を構成し、2つのトランジスタの制御端子には、別々の配線部を経由して制御パルスが供給される、こととしてもよい。この場合、制御電極ドライバ回路における貫通電流が低減でき、高速なピクセルの駆動が可能となる。その結果、距離分解能の高い距離画像の生成が可能となる。
【0010】
また、周辺回路は、2つのトランジスタの制御端子に、別々の配線部を経由して互いにオン期間が重複しないような制御パルスを供給する、こととしてもよい。これにより、制御電極ドライバ回路における貫通電流が確実に防止でき、高速なピクセルの駆動が可能となる。
【0011】
さらに、第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、それぞれ、2つのトランジスタのうちの一方のトランジスタを有し、周辺回路は、第1~第Mの制御電極ドライバ回路に対応して2つのトランジスタのうちの他方のトランジスタを有する、こととしてもよい。この場合、制御電極ドライバ回路内のトランジスタ数を低減することによりピクセルサイズを小さく保つことができるとともに、高速なピクセルの駆動が可能となる。
【0012】
またさらに、第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、周辺回路とともにpMOSトランジスタとnMOSトランジスタが直列に接続されるCMOSインバータ回路を構成する、こととしてもよい。この場合も、ピクセルを高速に駆動して距離分解能の高い距離画像の生成が可能とされるとともに、ピクセルサイズを小さく保つことができる。
【0013】
さらに、第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、周辺回路とともにpMOSトランジスタとnMOSトランジスタが直列に接続されるCMOSインバータ回路を構成し、第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、それぞれ、nMOSトランジスタを有し、周辺回路は、第1~第Mの制御電極ドライバ回路に対応してpMOSトランジスタを有する、こととしてもよい。かかる構成によれば、制御電極ドライバ回路内のトランジスタ数を低減することによりピクセルサイズを小さく保つことができるとともに、高速なピクセルの駆動が可能となる。特に、制御電極ドライバ回路内にnMOSトランジスタを備えることにより、制御電極に印加される制御パルスの立ち下がりを急峻にすることができ、高速なピクセルの駆動が実現できる。
【0014】
また、複数の画素回路部は、それぞれ、光電変換領域で発生した電荷を排出するための電荷排出領域、及び、光電変換領域と電荷排出領域との間における電荷転送のための制御パルスを印加するための第M+1の制御電極をさらに有し、第1~第Mの制御電極ドライバ回路は、隣接する画素回路部を少なくともM+1個含む画素回路部群のうちの一つの画素回路部内にそれぞれ設けられ、当該画素回路部群のうちの一つの画素回路部内に設けられ、周辺回路によって分配された制御パルスを、画素回路部群を構成する全ての画素回路部の第M+1の制御電極に印加する第M+1の制御電極ドライバ回路をさらに備える、こととしてもよい。この場合も、ピクセル数が多くなっても制御パルスの波形のなまりを低減でき、ピクセルを高速に駆動して距離分解能の高い距離画像の生成が可能とされるとともに、第1~第M+1の制御電極ドライバ回路のそれぞれを画素回路部群で共用する構成によりピクセルサイズを小さく保つことができる。
【0015】
また、第1~第Mの制御電極ドライバ回路、及び/又は、周辺回路は、画素回路部とは異なる半導体チップ上に形成され、貫通電極を用いて画素回路部に対して電気的に接続された構成を有する、こととしてもよい。このような構成により、ピクセルサイズをさらに小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本実施形態によれば、ピクセルサイズを小さく保ちつつ距離分解能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る距離画像センサ10の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の距離画像センサ10を用いた距離計算の原理を説明するためのタイミングチャートである。
【
図3】
図1の距離画像センサ10の詳細構成を示すブロック図である。
【
図4】距離画像センサ10における各画素回路13と周辺回路部31の配置状態を示す斜視図である。
【
図5】
図3のインバータ回路41
1の詳細な回路構成を示す図である。
【
図6】
図3のインバータ回路41
1,41
2,41
3,41
4,41
5と画素回路13の合成キャパシタンスC
Gとの接続状態を示す回路図である。
【
図7】第2実施形態に係る距離画像センサ10Aの詳細構成を示すブロック図である。
【
図8】距離画像センサ10Aにおいて生成される制御パルスS
1p,S
1nの反転信号の波形及びインバータ回路41
1の出力信号S
1outの波形を示す図である。
【
図9】第3実施形態に係る距離画像センサ10Bの詳細構成を示すブロック図である。
【
図10】距離画像センサ10Bにより生成される制御パルスS
1,S
2の波形の一例を示す図である。
【
図11】画素回路13の信号電荷処理領域17における各領域の配置例を示す平面図である。
【
図12】画素回路13の信号電荷処理領域17における電位分布を示す図である。
【
図13】一般的なCMOSインバータ回路における入力電圧V
INと貫通電流Iとの関係を示すグラフである。
【
図14】一般的なCMOSインバータ回路を用いた場合の入力制御パルスV
INに対する貫通電流Iの時間波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る距離画像センサの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
[第1実施形態]
まず、
図1を参照して、第1実施形態に係る距離画像センサ10の機能および構成の概略を説明する。
図1に示す距離画像センサ10は、飛行時間法を利用して画素(ピクセル)毎に距離情報を含む距離画像を生成する装置であり、複数の画素回路(画素回路部)13を備える。複数の画素回路13は、2次元方向(例えば、列方向および行方向)に2次元アレイ状に配列されてイメージセンサを構成し、対象物Sによってパルス光L
Pが反射されて生じた入射パルス光L
Rを光電変換することにより検出信号を生成する。また、この距離画像センサ10は、距離画像の生成のために、光源11と演算回路12とともに使用される。
【0020】
光源11は、飛行時間(TOF:Time Of Flight)方式による距離計測を行うために、対象物Sに照射するパルス光LPを発生させる装置である。光源11は、例えば、発光ダイオードあるいはレーザダイオード等の半導体発光素子とその半導体発光素子を駆動する駆動回路とによって構成される。光源11としては、近赤外領域、可視光領域等の波長領域の光を発生させる素子を用いることができる。
【0021】
演算回路12は、距離画像センサ10及び光源11に電気的に接続され、複数の画素回路13によって生成された検出信号を用いて、対象物Sに関する距離情報を画素ごとに演算し、画素ごとの距離情報が反映された2次元画像情報を含む距離画像を生成及び出力する。また、演算回路12は、光源11によるパルス光LPの照射タイミングを制御する機能も有する。演算回路12は、CPU,RAM、ROM、および入出力装置等を含むワンチップマイクロコンピュータ等の専用の集積回路によって構成されてもよいし、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータによって構成されてもよい。
【0022】
以下、画素回路13および演算回路12の構成について詳細に説明する。
【0023】
まず、画素回路13の構成について説明する。画素回路13は、半導体素子によって構成され、入射パルス光LRを電荷に変換する機能を有する光電変換領域21と、光電変換領域21に近接し、かつ互いに離間して設けられた第1~第4の電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23と、第1~第4の電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23のそれぞれに対応して設けられ、光電変換領域21からそれぞれの領域との間における電荷転送のための制御パルスを印加するための第1~第4の制御電極G1~G4および第5の制御電極GDと、第1~第4の電荷読出領域221~224のそれぞれから検出信号を読み出すための電圧検出手段261~264とを含んでいる。電圧検出手段261~264は、例えば、ソースフォロワアンプを含む増幅器であり、演算回路12からの制御によって、選択的にそれぞれの電荷読出領域221~224の基準電位を基準にした電圧を検出および増幅し、増幅した電圧を検出信号として演算回路12に出力する。
【0024】
画素回路13は、例えば、シリコン基板等のp型半導体基板上に形成される。すなわち、光電変換領域21は、p型半導体基板上に順に形成された、p型の半導体からなる活性領域形成層、n型の表面埋込領域、p型のピニング層、及び絶縁膜からなる画素形成領域の中央部に設けられる。そして、光電変換領域21に近接するように互いに離間した位置に活性領域形成層よりも高不純物濃度のn型の電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23が形成され、絶縁膜上の光電変換領域21から電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23のそれぞれに至る電荷移動経路上のそれぞれには、制御電極G1~G4,GDが設けられる。ここで、制御電極G1~G4,GDは、それぞれ、電荷移動経路上に設けられてもよいし、電荷移動経路を両側から挟むように複数の電極部に分離して設けられてもよい。
【0025】
上記構成の画素回路13においては、後述する演算回路12から制御電極G1~G4,GDに対して、互いに位相の異なる制御パルスが印加される。これにより、表面埋込領域の空乏化電位を順次変化させることにより、電荷移動経路のいずれかに電荷が輸送されるような電位勾配を順次形成して、光電変換領域21の表面埋込領域で発生した多数キャリア(電荷)を、電荷読出領域221~224及び電荷排出領域23のいずれかに移動させる。
【0026】
次に、演算回路12の機能構成について説明する。
【0027】
演算回路12は、光源11によるパルス光LPの発光タイミング、パルス光LPの強度、及びパルス光LPのパルス幅を制御する。具体的には、所定の持続時間T0のパルス光LPを、予め設定された距離計算の繰り返し期間である1フレームの期間内で繰り返し発生させるように制御する。また、演算回路12は、制御電極G1~G4,GDのそれぞれに、異なる位相の制御パルスを印加する機能を有する。すなわち、1フレーム期間内のパルス光LPのそれぞれの発生タイミングに対応して、図示しない距離画像センサ10の周辺回路を経由して、制御電極G1~G4に順次位相をずらした制御パルスを印加する。さらに演算回路12は、図示しない距離画像センサ10の周辺回路を経由して、これらの制御パルスの印加タイミングの前において、光電変換領域21で発生した電荷を電荷排出領域23に排出させるための制御パルスを制御電極GDに印加する。
【0028】
また、演算回路12は、各画素回路13ごとの距離の計算を複数のフレーム毎に繰り返し実行し、その結果得られた距離情報を含む距離画像を繰り返し生成する。すなわち、演算回路12は、図示しない距離画像センサ10の周辺回路を経由して各画素回路13の電圧検出手段261~264から出力された検出信号を基に、距離情報を算出する。そして、演算回路12は、各画素回路13に対応する距離情報を含む距離画像を生成して外部装置に出力する。出力先の外部装置としては、例えば、表示装置、通信インターフェース装置等の出力デバイスが挙げられる。
【0029】
図2は、演算回路12による距離計算の原理を説明するためのタイミングチャートである。
図2には、演算回路12によって制御される各種信号のタイミングおよび画素回路13の各領域に電荷が蓄積されるタイミングを示しており、上から順番に、パルス光L
Pの発光タイミング、制御電極G
1~G
4,G
Dに印加される制御パルスの印加タイミング、第1~第4の電荷読出領域22
1~22
4における電荷蓄積タイミングを示している。このように、パルス光L
Pの持続時間T
0の発光タイミングに対応して、制御電極G
1~G
4,G
Dに互いに重ならないように続けて持続時間T
0の制御パルスが印加されている。
【0030】
このような機能により、入射パルス光LRが光電変換されることにより光電変換領域21で発生した電荷が、入射パルス光LRのパルス光LPに対する遅れ時間TDに対応した比率で、2つの電荷読出領域222,223、あるいは2つの電荷読出領域223,224に分配される。ここでは、パルス光LPの持続時間T0の発光タイミングと、制御電極G1の制御パルスの印加タイミングとの関係を設定することで、電荷読出領域221には、制御電極G1の制御パルスで規定される時間ウィンドウで背景光及び暗電流等のノイズに起因する電荷量NBの電荷のみが輸送される。これに対して、入射パルス光LRの到達タイミングが制御電極G2,G3の2つの制御パルスで規定される2つの時間ウィンドウにまたがった場合には、電荷読出領域222には電荷量NBに遅れ時間TDに対応して分配された電荷量Nsm1が加算された電荷が輸送される一方、電荷読出領域223には、電荷量NBに遅れ時間TDに対応して分配された電荷量Nsm2が加算された電荷が輸送される。その一方で、入射パルス光LRの到達タイミングが制御電極G3,G4の2つの制御パルスで規定される2つの時間ウィンドウにまたがった場合には、電荷読出領域223には電荷量NBに遅れ時間TDに対応して分配された電荷量Nsm1が加算された電荷が輸送される一方、電荷読出領域224には、電荷量NBに遅れ時間TDに対応して分配された電荷量Nsm2が加算された電荷が輸送される。
【0031】
上記のような現象を利用して、演算回路12においては、複数のフレームに対応して、電荷量NBを除いた電荷量Nsm1の蓄積量と電荷量NBを除いた電荷量Nsm2の蓄積量との比率を計算することにより、遅れ時間TDに対応した対象物Sの距離を計算することができる。
【0032】
以下、距離画像センサ10の構成の詳細についてさらに説明する。
【0033】
図3は、距離画像センサ10の詳細構成を示すブロック図である。なお、
図3においては、距離画像センサ10内の一部の画素回路13を示しており、要部についてはその回路構成を図示している。距離画像センサ10は、2次元アレイ状に配列された複数の画素回路13に加え、それらの画素回路13の周辺部に配置された周辺回路部(周辺回路)31を含む。この周辺回路部31は、画素回路13と同一の半導体基板上の複数の画素回路13の配置エリアの周辺部に設けられる。
【0034】
周辺回路部31には、演算回路12から印加された制御電極G
1,G
2,G
3,G
4,G
D用の制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dを分配する分配回路33と、分配回路33から出力されたそれぞれの制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dを反転及び整形して出力するインバータ回路35
1,35
2,35
3,35
4,35
5が含まれている。1組のインバータ回路35
1,35
2,35
3,35
4,35
5は、それぞれ、各画素回路13に含まれる制御電極G
1,G
2,G
3,G
4,G
Dの個数に対応する個数で行方向(
図2の横方向)に隣接する画素回路13を含む画素回路群(画素回路部群)15毎に、行方向に繰り返し設けられる。そして、制御電極G
1,G
2,G
3,G
4,G
Dの個数に対応する個数のインバータ回路35
1,35
2,35
3,35
4,35
5は、それぞれ、画素回路群15における隣接する別々の2つの画素回路13の間の周辺部に位置するように、行方向に並んで配置される。
【0035】
これらのインバータ回路351,352,353,354,355は、それぞれ、相補的に動作するトランジスタ対であるp型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ(pMOSトランジスタ)37とn型MOSトランジスタ(nMOSトランジスタ)39とが直列に接続されて構成されるCMOS(Complementary MOS)インバータ回路である。詳細には、pMOSトランジスタ37のドレインとnMOSトランジスタ39のドレインとが互いに接続され、pMOSトランジスタ37のソースがハイ電位線VDHに接続され、nMOSトランジスタ39のソースがロー電位線VDLに接続され、pMOSトランジスタ37のゲートとnMOSトランジスタ39のゲートとが入力端子として、分配回路33の制御パルスS1,S2,S3,S4,SDのそれぞれの出力に共通に接続される。そして、pMOSトランジスタ37のドレインとnMOSトランジスタ39のドレインとの接続点が、それぞれのインバータ回路351,352,353,354,355の出力端子として、画素回路群15に接続される。これにより、それぞれのインバータ回路351,352,353,354,355から画素回路群15に制御パルスS1,S2,S3,S4,SDの反転信号が出力可能とされる。
【0036】
画素回路群15を構成する各画素回路13には、光電変換領域21、電荷読出領域22
1~22
4、電荷排出領域23、電圧検出手段26
1~26
4、制御電極G
1~G
4,G
D(
図1)を含む信号電荷処理領域17と、その信号電荷処理領域17の近傍に配置されたインバータ回路41
1,41
2,41
3,41
4,41
5とがそれぞれ設けられる。1つの画素回路群15を構成する別々の画素回路13に含まれるインバータ回路41
1,41
2,41
3,41
4,41
5は、各画素回路13に含まれる制御電極G
1,G
2,G
3,G
4,G
Dの個数に対応する個数で、画素回路群15毎に行方向に繰り返し設けられる。言い換えれば、制御電極G
1,G
2,G
3,G
4,G
Dの個数に対応する個数のインバータ回路41
1,41
2,41
3,41
4,41
5は、それぞれ、周辺回路部31のインバータ回路35
1,35
2,35
3,35
4,35
5に対応して、行方向に並んで配置される。
【0037】
インバータ回路411,412,413,414,415は、インバータ回路351,352,353,354,355と同様な構成を有するCMOSインバータ回路である。すなわち、インバータ回路411,412,413,414,415は、それぞれ、相補的に動作するトランジスタ対であるpMOSトランジスタ43とnMOSトランジスタ45とが直列に接続されて構成される。詳細には、pMOSトランジスタ43のドレインとnMOSトランジスタ45のドレインとが互いに接続され、pMOSトランジスタ43のソースがハイ電位線VDHに接続され、nMOSトランジスタ45のソースがロー電位線VDLに接続され、pMOSトランジスタ43のゲートとnMOSトランジスタ45のゲートとが入力端子として、対応するインバータ回路351,352,353,354,355のいずれかの出力に共通に接続される。そして、pMOSトランジスタ43のドレインとnMOSトランジスタ45のドレインとの接続点が、それぞれのインバータ回路411,412,413,414,415の出力端子として、画素回路群15に含まれる全ての画素回路13のいずれかの制御電極G1,G2,G3,G4,GDに共通に接続される。これにより、それぞれのインバータ回路411,412,413,414,415から制御電極G1,G2,G3,G4,GDに整形された制御パルスS1,S2,S3,S4,SDが出力可能とされる。
【0038】
周辺回路部31と画素回路13との接続構成を詳細に説明すると、画素回路群15に含まれるインバータ回路411,412,413,414,415の入力端子とインバータ回路351,352,353,354,355の出力端子とは、画素回路群15内の隣接する2つの画素回路13間で画素回路13に近接して伸びる配線部47を経由して電気的に接続される。すなわち、インバータ回路411,412,413,414,415の入力とインバータ回路351,352,353,354,355の出力とを接続する配線部47は、画素回路群15の2つの画素回路13間の間隙部において1本ずつ設けられる。さらに、画素回路群15毎に設けられるインバータ回路411の出力端子は、その画素回路群15に含まれる全ての画素回路13の制御電極G1に、そのインバータ回路411が設けられる画素回路13内の配線部49と、画素回路群15に含まれる全ての画素回路13に跨って延びる配線部51とを経由して、電気的に接続される。同様に、インバータ回路412,413,414,415の出力端子のそれぞれは、画素回路群15に含まれる全ての画素回路13のそれぞれの制御電極G2,G3,G4,GDに、2つの配線部を経由して電気的に接続される。
【0039】
上記構成のインバータ回路351とインバータ回路411とにより、画素回路群15を構成する画素回路13の制御電極G1に制御パルスS1を印加する第1の制御電極ドライバ回路が構成される。同様に、インバータ回路352,353,354,355とインバータ回路412,413,414,415とのそれぞれにより、画素回路群15を構成する画素回路13の制御電極G2,G3,G4,GDに制御パルスS2,S3,S4,SDを印加する第2~第5の制御電極ドライバ回路が構成される。
【0040】
図4には、距離画像センサ10における各画素回路13と周辺回路部31の配置状態を示している。距離画像センサ10は、2つの半導体チップC1,C2が積層されて構成されている。そして、半導体チップC1上に画素回路13の信号電荷処理領域17が2次元アレイ状に配列されて形成され、半導体チップC2上の各画素回路13に対応する位置にインバータ回路41
1,41
2,41
3,41
4,41
5のうちのいずれかの回路41が形成される。この場合、入射パルス光L
Rは、半導体チップC1の裏面(半導体チップC2に対して反対側の面)側から入射させることができる。さらに、半導体チップC2上の回路41の周辺部に、周辺回路部31のほか、画素回路13の行単位(
図4の横方向に隣接する画素列の単位)での電荷の読み出しを制御する走査回路27、画素回路13の行単位での有感/不感を設定する走査回路34、及び演算回路12が形成されている。このような積層構造において、回路41は、画素回路13の信号電荷処理領域17と、半導体チップC1,C2を貫通する貫通電極であるTSV(Through-Silicon Via)を用いて電気的に接続されている。ここでは、回路41、周辺回路部31、走査回路27,34、及び演算回路12が、画素回路13とは異なる半導体チップC2上に配置されているが、回路41のみが異なる半導体チップC2上に配置されてもよいし、上述した回路のうちのいずれか1部が異なる半導体チップC2上に配置されてもよい。
【0041】
図5には、インバータ回路41
1の詳細な回路構成を示している。インバータ回路41
1は、pMOSトランジスタ43のソースとnMOSトランジスタ45のソースとの間にキャパシタンス成分53が形成されている。このキャパシタンス成分53は、例えば、画素回路13と同一の半導体基板に形成するMOSトランジスタによって実現することができ、その一端がロー電位である基板電位に接続され、他端がハイ電位に接続される。このキャパシタンス成分53は、インバータ回路41
1の出力に接続される画素回路13の制御電極G
1の合成キャパシタンスC
G以上のキャパシタンスを有し、好ましくは4倍以上のキャパシタンスを有する。同様に、インバータ回路41
2,41
3,41
4,41
5もキャパシタンス成分53が含まれている。これらのインバータ回路41
2,41
3,41
4,41
5のキャパシタンス成分53は、インバータ回路41
2,41
3,41
4,41
5の出力に接続される画素回路13のそれぞれの制御電極G
2,G
3,G
4,G
Dの合成キャパシタンスC
G以上のキャパシタンスを有し、好ましくは4倍以上のキャパシタンスを有する。
【0042】
以上説明した距離画像センサ10によれば、周辺回路部31に設けられた分配回路33によって制御パルスS1,S2,S3,S4,SDが分配され、その制御パルスS1,S2,S3,S4,SDが、画素回路群15のうちの1つの画素回路13内に設けられたインバータ回路411,412,413,414,415によって構成される第1~第5の制御電極ドライバ回路によって、画素回路群15を構成する全ての画素回路13の制御電極G1,G2,G3,G4,GDに印加される。これにより、各画素回路13において、光電変換領域21と電荷読出領域221,222,223,224および電荷排出領域23との間の電荷転送のタイミングが制御される。このような第1~第5の制御電極ドライバ回路により制御パルスS1,S2,S3,S4,SDが中継される構成により、ピクセル数が多くなっても制御パルスの波形のなまりを低減でき、ピクセルを高速に駆動して距離分解能の高い距離画像の生成が可能とされる。それとともに、第1~第5の制御電極ドライバ回路のそれぞれを、制御電極の数と同一数の画素回路13を含む画素回路群15で共用する構成により、ピクセルサイズを小さく保ちつつ制御パルスの波形のなまりを低減できる。
【0043】
特に、本実施形態では、インバータ回路411,412,413,414,415が画素回路群15の別々の画素回路13内に設けられ、分配回路33とインバータ回路411,412,413,414,415とは、それぞれ、別々の2つの画素回路13間の間隙部に伸びる配線部47を介して電気的に接続されている。このような構成により、分配回路33と第1~第5の制御電極ドライバ回路とのそれぞれを電気的に接続する複数の配線部47を分離することができ、異なる制御パルスS1,S2,S3,S4,SDの間のクロストークを防止して安定したピクセルの駆動が実現でき、結果として距離分解能の高い距離画像の生成が可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、インバータ回路411,412,413,414,415のそれぞれにキャパシタンス成分53が含まれている。このような構成により、ピクセルの高速な駆動が実現される。キャパシタンス成分53の存在により、画素回路13を駆動する際の制御電極G1,G2,G3,G4,GDのキャパシタンス成分の充放電に伴って電源に生じる電流を低減できるため、電源電圧が瞬時的にドロップする事態も防止でき、ピクセルの高速な駆動が可能となる。
【0045】
図6には、インバータ回路41
1,41
2,41
3,41
4,41
5の動作時のインバータ回路41
1,41
2,41
3,41
4,41
5と画素回路13の合成キャパシタンスC
Gとの接続状態を示しており、(a)部は、制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dのオン(ハイ電位)時の接続状態を示し、(b)部は、制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dのオフ(ロー電位)時の接続状態を示す。このように、制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dのオン時には、キャパシタンス成分53が合成キャパシタンスC
Gの両端に接続されることとなり、制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dのオフ時にキャパシタンス成分53にチャージされていた電荷が制御電極G
1,G
2,G
3,G
4,G
Dに向けて供給される結果、制御電極G
1,G
2,G
3,G
4,G
Dの電位を素早く立ち上げることができる。特に、キャパシタンス成分53のキャパシタンスを合成キャパシタンスC
G以上とすることで、制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dのハイ電位に立ち上げるのに必要な50%の電荷をキャパシタンス成分53から供給することができ、電源に負担をかけることなく高速な駆動が可能となる。さらに、キャパシタンス成分53のキャパシタンスを合成キャパシタンスC
Gの4倍以上とすれば、制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dのハイ電位に立ち上げるのに必要な80%の電荷をキャパシタンス成分53から供給することができ、電源に負担をかけることなくさらなる高速な駆動が可能となる。一方、制御パルスS
1,S
2,S
3,S
4,S
Dのオフ時には、合成キャパシタンスC
Gの両端が短絡されることとなり、制御電極G
1,G
2,G
3,G
4,G
Dの電位を素早く立ち下げることができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる距離画像センサ10Aの構成について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0047】
図7は、距離画像センサ10Aの概略構成を示すブロック図である。
図7に示す距離画像センサ10Aは、第1実施形態にかかる距離画像センサ10と比較して、分配回路33Aの機能と、周辺回路部31におけるインバータ回路の構成と、周辺回路部31と画素回路13との間の接続構成が異なる。
【0048】
すなわち、分配回路33Aは、制御パルスS1を、それぞれ、2つの制御パルスS1p,S1nに分配して行方向に繰り返し生成する。同様に、分配回路33Aは、制御パルスS2,S3,S4,SDを分配することにより、2つの制御パルスS2p,S2nと、2つの制御パルスS3p,S3nと、2つの制御パルスS4p,S4nと、2つの制御パルスSDp,SDnと、を繰り返し生成する。これらの2つの制御パルスS1p,S1nは、制御パルスS1のオンオフに同期して、互いのオン期間が一致しないように、具体的には、制御パルスS1pのオン期間が制御パルスS1nのオン期間内に収まるように生成される。同じように、2つの制御パルスS2p,S2n、2つの制御パルスS3p,S3n、2つの制御パルスS4p,S4n、及び2つの制御パルスSDp,SDnは、制御パルスS2,S3,S4,SDのオンオフに同期して、互いのオン期間が一致しないように生成される。
【0049】
周辺回路部31には、第1実施形態におけるインバータ回路351,352,353,354,355と同様な構成のインバータ回路611,612,613,614,615、及びインバータ回路631,632,633,634,635が含まれている。1組のインバータ回路611,612,613,614,615、及び1組のインバータ回路631,632,633,634,635は、それぞれ、制御電極G1,G2,G3,G4,GDの個数に対応する個数で画素回路群15毎に繰り返し設けられる。そして、2つのインバータ回路611,631は、画素回路13内のインバータ回路411に対応して、画素回路群15における隣接する2つの画素回路13間の周辺部に配置される。同様に、2つのインバータ回路612,632、2つのインバータ回路613,633、2つのインバータ回路614,634、2つのインバータ回路615,635のそれぞれは、画素回路13内のインバータ回路412,413,414,415に対応して、隣接する2つの画素回路13間の周辺部に配置される。これらのインバータ回路611,612,613,614,615のそれぞれの入力端子には、分配回路33Aから制御パルスS1p,S2p,S3p,S4p,SDpが入力され、これらのインバータ回路631,632,633,634,635のそれぞれの入力端子には、分配回路33Aから制御パルスS1n,S2n,S3n,S4n,SDnが入力される。
【0050】
周辺回路部31と画素回路13との接続構成を詳細に説明すると、インバータ回路411,412,413,414,415のpMOSトランジスタ43のゲート(制御端子)とインバータ回路611,612,613,614,615の出力端子とは、隣接する2つの画素回路13間に伸びる配線部47aを経由して電気的に接続される。また、インバータ回路411,412,413,414,415のnMOSトランジスタ45のゲート(制御端子)とインバータ回路631,632,633,634,635の出力端子とは、隣接する2つの画素回路13間に伸びる配線部47bを経由して電気的に接続される。つまり、周辺回路部31と画素回路13との間を接続する配線部は、画素回路群15に含まれる2つの画素回路13間の間隙部において2本ずつ設けられる。このような接続構成により、インバータ回路411,412,413,414,415の2つのゲートには、別々の配線部47a,47bを経由して、制御パルスS1p,S2p,S3p,S4p,SDpの反転信号、あるいは、制御パルスS1n,S2n,S3n,S4n,SDnの反転信号が供給される。
【0051】
上記構成のインバータ回路611,631とインバータ回路411により、画素回路群15を構成する画素回路13の制御電極G1に制御パルスS1を印加する第1の制御電極ドライバ回路が構成される。同様に、インバータ回路612~615,632~635とインバータ回路412~415により、画素回路13の制御電極G2~G4,GDに制御パルスS2~S4,SDを印加する第2~第5の制御電極ドライバ回路が構成される。
【0052】
図8には、本実施形態の距離画像センサ10Aにおいて生成される制御パルスS
1p,S
1nの反転信号の波形及びインバータ回路41
1の出力信号S
1outの波形の一例を示す。このように、分配回路33Aの働きにより、インバータ回路61
1から出力される制御パルスS
1pの反転信号のロー電位の期間、すなわち、pMOSトランジスタ43のオン期間T
PONが、インバータ回路63
1から出力される制御パルスS
1nの反転信号のハイ電位の期間、すなわち、nMOSトランジスタ45のオン期間T
NONと重複しないように、制御パルスS
1p及び制御パルスS
1nが生成される。そして、インバータ回路41
1により、制御パルスS
1pの反転信号がオフされたタイミングでハイ電位に遷移し、制御パルスS
1nの反転信号がオンされたタイミングでロー電位に遷移する出力信号S
1outが生成される。同様にして、各画素回路13に設けられたインバータ回路41
2~41
5においても、pMOSトランジスタ43のオン期間がnMOSトランジスタ45のオン期間と重複しないように、制御パルスS
2p~S
5p及び制御パルスS
2n~S
5nが生成される。
【0053】
本実施形態の距離画像センサ10Aにおいては、インバータ回路411~415内の2つのトランジスタ43,45のゲートに別々の配線部47a,47bを経由して制御パルスが供給されている。このような構成により、画素回路13に供給される制御パルスになまりが生じた場合であってもインバータ回路411~415を流れる貫通電流の発生を防止できる。インバータ411~415での貫通電流の発生は、ピクセル数が多くなった場合に距離画像センサ10Aに接続される電源を流れる電流の増加を招いてしまい、電源電圧の瞬時的なドロップを引き起こす場合がある。その結果、画素回路13内の制御電極ドライバ回路が正常に動作せず、制御電極ドライバ回路の応答速度が遅くなる結果、高速なピクセルの駆動が困難となる。
【0054】
図13は、一般的なCMOSインバータ回路における入力電圧V
INと貫通電流Iとの関係を示すグラフ、
図14は、一般的なCMOSインバータ回路を用いた場合の入力制御パルスV
INに対する貫通電流Iの時間波形を示す図である。このように、一般的なCMOSインバータでは、入力電圧V
INがハイ電位(V
DD)とロー電位(0V)の間の中間電位において貫通電流Iが急激に増加する。そのため、理想的な矩形波の波形WF1を制御パルスとして入力した場合には制御パルスのレベルの遷移タイミングで一瞬だけ貫通電流Iが生じるが、矩形波がなまった波形WF2を制御パルスとして入力した場合には、中間電位の期間が長くなるため貫通電流Iがより長期間にわたって継続的に生じる。そのため、一般的なCMOSインバータ回路を制御電極ドライバ回路として用いた場合は、制御パルスのなまりが大きくなるに従って制御電極ドライバ回路を流れる貫通電流の積分値が次第に増加する。
一方、距離画像センサ10Aによれば、制御電極ドライバ回路における貫通電流が十分に低減でき、高速なピクセルの駆動が可能となる。その結果、距離分解能の高い距離画像の生成が可能となる。
【0055】
特に、本実施形態では、分配回路33Aが、各インバータ411~415を構成する2つのトランジスタ43,45のゲートに互いにオン期間が重複しないような制御パルスを供給するように機能している。これにより、インバータ回路411~415を含む第1~第5の制御電極ドライバ回路における貫通電流が確実に防止でき、高速なピクセルの駆動が可能となる。
【0056】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる距離画像センサ10Bの構成について、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0057】
図9は、距離画像センサ10Bの概略構成を示すブロック図である。
図9に示す距離画像センサ10Bは、第2実施形態にかかる距離画像センサ10Aと比較して、分配回路33Bの機能と、周辺回路部31及び画素回路13におけるインバータ回路の構成が異なる。
【0058】
分配回路33Bは、制御パルスS1,S2,S3,S4,SDを分配することにより、制御パルスS1p~S4p,SDpの反転信号、制御パルスS1n~S4n,SDnを行方向に沿って繰り返し生成する。
【0059】
また、周辺回路部31内には、インバータ回路611~615に代えて、pMOSトランジスタ711~715が設けられる。pMOSトランジスタ711~715のゲートのそれぞれには分配回路33Bから制御パルスS1p~S4p,SDpの反転信号が入力され、pMOSトランジスタ711~715のソースがハイ電位線VDHに接続される。
【0060】
画素回路群15を構成する各画素回路13内には、インバータ回路411~415に代えて、nMOSトランジスタ731~735がそれぞれ設けられる。nMOSトランジスタ731~735のゲートのそれぞれには、配線部47bを経由してインバータ回路631~635から制御パルスS1n~S4n,SDnの反転信号が入力され、nMOSトランジスタ731~735のドレインのそれぞれには、配線部47aを経由して、pMOSトランジスタ711~715のドレインが接続される。さらに、nMOSトランジスタ731~735のドレインのそれぞれは、画素回路群15に属する全ての画素回路13のそれぞれの制御電極G1~G4,GDが接続され、nMOSトランジスタ731~735のソースはロー電位線VDLに接続される。 上記のように、pMOSトランジスタ711とnMOSトランジスタ731とが直列に接続された構成により、画素回路群15内の制御電極G1に印加する制御パルスを生成するCMOSインバータ回路(制御電極ドライバ回路)が構成される。また、pMOSトランジスタ712~715とnMOSトランジスタ732~735とのそれぞれが直列に接続された構成により、画素回路群15内のそれぞれの制御電極G2~G4,GDに印加する制御パルスを生成するCMOSインバータ回路(制御電極ドライバ回路)が構成される。
【0061】
本実施形態の制御電極ドライバ回路の構成により、インバータ回路を構成する一方のトランジスタであるpMOSトランジスタ711~715のドレインは配線部47bを介して制御電極G1~G4,GDに接続されている一方で、インバータ回路を構成する他方のトランジスタであるnMOSトランジスタ731~735のドレインは各画素回路13内で制御電極G1~G4,GDに接続されている。そのため、制御電極G1~G4,GDに印加される制御パルスS1~S4,SDにおいて、立ち上がりはなだらかな状態であるが、立ち下がりは急峻な状態を生じさせることができる。
【0062】
図10は、本実施形態の距離画像センサ10Bにより生成される制御パルスS1,S2の波形の一例を示し、
図11は、画素回路13の信号電荷処理領域17における各領域の配置例を示す平面図であり、
図12は、画素回路13の信号電荷処理領域17における電位分布を示す図である。
図12は、
図11に示す一点鎖線に沿った電位分布を示している。
【0063】
図11に示す信号電荷処理領域17においては、中央に光電変換領域21が設けられ、光電変換領域21の周りの信号電荷処理領域17の四隅に電荷読出領域22
1~22
4が配置され、電荷読出領域22
1~22
4のうちの2つの領域間に電荷排出領域23が配置される。さらに、光電変換領域21とそれぞれの電荷読出領域22
1~22
4との間の電荷移動経路を両側から挟むように制御電極G
1~G
4が設けられ、光電変換領域21と電荷排出領域23との間の電荷移動経路を両側から挟むように制御電極G
Dが設けられる。
図12には、制御電極G
1にロー電位を印加し、制御電極G
2にハイ電位を印加した場合の電荷移動経路における電位分布を実線で示し、制御電極G
1にハイ電位を印加し、制御電極G
2にロー電位を印加した場合の電荷移動経路における電位分布を点線で示している。このような電位形成特性により、
図10に示すように制御パルスS
1を急峻に立ち下げることにより、電荷読出領域22
1への電荷の移動を瞬時に止めることができ、その後に制御パルスS
2を緩やかに立ち上げても制御パルスS
2を立ち下げるまでの期間において光電変換領域21で発生した電荷を漏れなく電荷読出領域22
2へ移動させることができる。
【0064】
本実施形態の距離画像センサ10Bによれば、周辺回路部31にインバータ回路を構成する一方のpMOSトランジスタが備えられ、画素回路13内にインバータ回路を構成する他方のnMOSトランジスタが備えられている。このような構成により、画素回路13内のトランジスタ数を低減することによりピクセルサイズを小さく保つことができるとともに、高速なピクセルの駆動が可能となる。
【0065】
特に、本実施形態では、画素回路13にnMOSトランジスタを備えることにより、制御電極G1~G4,GDに印加される制御パルスS1~S4,SDの立ち下がりを急峻にすることができ、制御パルスS1~S4,SDのパルス幅を短くしても安定して電荷読出領域221~224への電荷の移動が可能となる。その結果、高速なピクセルの駆動が実現できる。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態の態様に限定されるものではない。
【0067】
上述した第1~第3実施形態では、各画素回路13に設けられる電荷読出領域の数は2以上の任意の数に変更されてもよく、それに対応して制御電極の数は3以上の任意の数に変更されてもよい。その場合は、周辺回路部31及び画素回路13によって実現される制御電極ドライバ回路は、制御電極の数と同一の数で隣接する画素回路13を含む画素回路群15毎に、各画素回路13に対応して設けられ、その画素回路群15に含まれる全ての画素回路13の制御電極のそれぞれに制御パルスを印加可能に構成される。
【0068】
また、上述した第1~第3実施形態では、周辺回路部31及び画素回路13によって実現される制御電極ドライバ回路は、画素回路群15内の全ての画素回路13に対応して設けられることには限定されず、一部の画素回路13に対応する制御電極ドライバ回路は省かれていてもよい。その場合は、制御電極の数を超える数で隣接する画素回路13を含む画素回路群15毎に、制御電極の数に対応した制御電極ドライバ回路が設けられる。
【符号の説明】
【0069】
10,10A,10B…距離画像センサ、13…画素回路(画素回路部)、21…光電変換領域、221~224…電荷読出領域、23…電荷排出領域、C1,C2…半導体チップ、G1~G4,GD…制御電極、31…周辺回路部(周辺回路)、351~355,411~415,611~615,631~635…インバータ回路(制御電極ドライバ回路)。37,43,711~715…pMOSトランジスタ、39,45,731~735…nMOSトランジスタ、47,47a,47b,49,51…配線部。