(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F23M 5/08 20060101AFI20240402BHJP
F24H 9/00 20220101ALI20240402BHJP
【FI】
F23M5/08 B
F24H9/00 A
(21)【出願番号】P 2020108057
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】本間 勉
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-069640(JP,A)
【文献】特開2018-031489(JP,A)
【文献】特開2017-116160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
F23M 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に燃焼装置を備え、
前記燃焼装置は、
上端に下側フランジ部が外向きに形成され、内部にバーナが配設される燃焼室ケーシングと、
前記燃焼室ケーシングの上側に配置され、下端に、前記下側フランジ部と対向する上側フランジ部が外向きに形成されて、内部に熱交換器が配設される熱交換器ケーシングと、
前記燃焼室ケーシングの内面と所定間隔をおいて配設されて前記燃焼室ケーシングの内面との間に冷却経路を形成する冷却経路形成板と、を含んでなり、
前記冷却経路形成板は、上端に、外向きに折曲されて前記下側フランジ部と前記上側フランジ部との間に配置される上端部を有すると共に、前記上端部に、前記冷却経路の空気を前記熱交換器ケーシング内へ噴出させる噴出孔が形成され、
前記下側フランジ部と前記上側フランジ部との何れか一方に、カシメ片が形成されて、前記カシメ片が他方側のフランジ部の外側を回り込んで内側へ折り返されることで、前記下側フランジ部と前記上側フランジ部とが前記上端部を挟んだ状態でカシメ固定される給湯器であって、
前記上端部の外側端部は、前記下側フランジ部及び前記上側フランジ部の外側端部よりも内側に位置していると共に、前記上端部と、前記下側フランジ部と前記上側フランジ部との何れか一方との間には、パッキンが介在されて、
前記パッキンは、前記上端部の外側端部よりも外側では前記下側フランジ部と前記上側フランジ部との間で圧縮されて
おり、
前記上端部の外側端部は、前記カシメ片の内側端部よりも内側に位置して、前記上端部と前記カシメ片とは上下方向で重なっていないことを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記他方側のフランジ部と前記カシメ片との間には、補強部材が介在されていることを特徴とする請求項
1に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナによって水の加熱を行う燃焼装置を備えた給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器は、筐体の内部に、バーナが配設される燃焼室ケーシングと、熱交換器が配設される熱交換器ケーシングとからなる燃焼装置を収容している。燃焼室ケーシングと熱交換器ケーシングとの接合は、特許文献1に開示されるように、バーナケース(燃焼室ケーシング)と熱交換器ケース(熱交換器ケーシング)の突き合わせ端部にそれぞれ張り出し形成されたフランジ部同士を重ね合わせてネジ止めすることで行われる。
また、特許文献1の燃焼装置では、下方に設けたファンからの空気を熱交換器ケースに沿って流すことで熱交換器ケースの冷却を図っている。ここではバーナケースの内側4面に、バーナケースの内面との間に隙間(冷却経路)を有する仕切板(冷却経路形成板)を設けて、仕切板の上端で外側に形成した水平フランジ部を、バーナケースと熱交換器ケースとのフランジ部の間に挟み込んで同時にネジ止めしている。そして、バーナケースと仕切板との間の冷却経路を上昇した空気を、水平フランジ部に設けた冷却用空気噴出孔から上方へ噴出させることで、熱交換器ケースを冷却可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の給湯器では、ケーシング同士のフランジ部と冷却経路形成板とを複数のネジによって共締め固定しているので、部品点数や工数が増加する。よって、ネジに代えてカシメ固定によって両ケーシング及び冷却経路形成板を固定するのが望ましい。
しかし、カシメ固定を行うと、冷却経路形成板のフランジ部に応力が加わって変形し、両ケーシングの接合部のシール性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、燃焼室ケーシングと熱交換器ケーシングと冷却経路形成板とをカシメ固定して部品点数や工数を低減すると共に、カシメ固定を採用しても燃焼室ケーシングと熱交換器ケーシングとの接合部のシール性を担保することができる給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、筐体内に燃焼装置を備え、
燃焼装置は、
上端に下側フランジ部が外向きに形成され、内部にバーナが配設される燃焼室ケーシングと、
燃焼室ケーシングの上側に配置され、下端に、下側フランジ部と対向する上側フランジ部が外向きに形成されて、内部に熱交換器が配設される熱交換器ケーシングと、
燃焼室ケーシングの内面と所定間隔をおいて配設されて燃焼室ケーシングの内面との間に冷却経路を形成する冷却経路形成板と、を含んでなり、
冷却経路形成板は、上端に、外向きに折曲されて下側フランジ部と上側フランジ部との間に配置される上端部を有すると共に、上端部に、冷却経路の空気を熱交換器ケーシング内へ噴出させる噴出孔が形成され、
下側フランジ部と上側フランジ部との何れか一方に、カシメ片が形成されて、カシメ片が他方側のフランジ部の外側を回り込んで内側へ折り返されることで、下側フランジ部と上側フランジ部とが上端部を挟んだ状態でカシメ固定される給湯器であって、
上端部の外側端部は、下側フランジ部及び上側フランジ部の外側端部よりも内側に位置していると共に、上端部と、下側フランジ部と上側フランジ部との何れか一方との間には、パッキンが介在されて、
パッキンは、上端部の外側端部よりも外側では下側フランジ部と上側フランジ部との間で圧縮されており、
上端部の外側端部は、カシメ片の内側端部よりも内側に位置して、上端部とカシメ片とは上下方向で重なっていないことを特徴とする。
本発明の別の態様は、上記構成において、他方側のフランジ部とカシメ片との間には、補強部材が介在されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃焼室ケーシングと熱交換器ケーシングと冷却経路形成板とをカシメ固定して部品点数や工数を低減することができると共に、カシメ固定を採用しても燃焼室ケーシングと熱交換器ケーシングとの接合部のシール性を担保することができる。
特に、上端部の外側端部は、カシメ片の内側端部よりも内側に位置して、上端部とカシメ片とは上下方向で重なっていないので、カシメ固定を採用しても上端部の変形を防止できる。よって、燃焼室ケーシング及び熱交換器ケーシングの冷却効率を担保することができる。
本発明の別の態様によれば、上記効果に加えて、上側フランジ部とカシメ片との間には、補強部材が介在されているので、上端部とカシメ片とが上下方向に重なっていなくても上側フランジ部を均等にカシメ固定することができる。よって、上側フランジ部の変形も防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】燃焼室ケーシングと熱交換器ケーシングとの接合部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の給湯器の一例を示す断面図、
図2は、燃焼装置の斜視図である。
給湯器1は、二点鎖線で示す筐体2の内部に、燃焼装置3を収容している。燃焼装置3は、下側に角筒状の燃焼室ケーシング4を、上側に同じく角筒状の熱交換器ケーシング5をそれぞれ備えている。燃焼室ケーシング4は、前面に、燃料ガスが供給される図示しないガス分配ユニットを備え、内部に、複数の扁平なバーナ7,7・・を左右方向に並設してなるバーナユニット6を収容している。熱交換器ケーシング5は、内部に熱交換器8を収容している。燃焼室ケーシング4の下部には、図示しないファンを備えた送風部9が設けられ、熱交換器ケーシング5の上部には、排気部10が設けられる。
燃焼室ケーシング4の上端には、
図3にも示すように、全周に亘って外側へ張り出す下側フランジ部11が設けられている。熱交換器ケーシング5の下端には、全周に亘って外側へ張り出す上側フランジ部12が設けられている。下側フランジ部11と上側フランジ部12とは、上下方向で重なるように形成されている。
【0010】
燃焼室ケーシング4の内部には、冷却経路形成板13が設けられている。冷却経路形成板13は、燃焼室ケーシング4の前後左右の内面の内側に所定間隔をおいてそれぞれ平行に設置されている。そして、各面の冷却経路形成板13の隣接する側縁同士が接合されることで、燃焼室ケーシング4の内部に一回り小さい角筒が形成される。これにより燃焼室ケーシング4と冷却経路形成板13との間には、冷却経路14が形成される。
各面の冷却経路形成板13は、燃焼室ケーシング4の内面と平行に形成される本体部15と、本体部15の下端から内側へ折曲形成されてバーナユニット6の外周に接合される下端部16と、本体部15の上端から外側へ折曲形成されて下側フランジ部11と上側フランジ部12との間に位置する上端部17とを備えている。上端部17における折曲際には、長手方向へ所定間隔をおいて複数の噴出孔18,18・・が形成されている。
【0011】
燃焼室ケーシング4の下側フランジ部11と、熱交換器ケーシング5の上側フランジ部12とは、互いに対向して、両フランジ部11,12の間に、冷却経路形成板13の上端部17を挟持している。下側フランジ部11の外側端部には、上側フランジ部12の外側で上向きに立ち上がる立ち上がり片19が形成されている。この立ち上がり片19の上端に、長手方向へ所定間隔をおいて複数のカシメ片20,20・・が形成されている。
上側フランジ部12の上面には、横断面が倒コ字状となる補強部材21が、全周に亘って載置されている。上側フランジ部12と上端部17との間には、帯板状のパッキン22が、全周に亘って介在されている。上端部17の外側への突出長さは、下側フランジ部11及び上側フランジ部12の外側へ突出長さよりも短くなっており、パッキン22は、上側フランジ部12と上端部17との間から、上端部17の外側で下側フランジ部11と上側フランジ部12との間まで延びている。
【0012】
各カシメ片20は、内側下方へ折曲されて、補強部材21を介して上側フランジ部12を上方から押さえることで、上端部17を挟んで下側フランジ部11と上側フランジ部12とをカシメ固定している。
このとき各カシメ片20の内側端部は、上端部17の外側端部よりも外に位置して、上下方向でカシメ片20と上端部17とはオーバーラップしていない。カシメ片20の下方では、下側フランジ部11と上側フランジ部12との間でパッキン22が圧縮される。上端部17の噴出孔18は、燃焼室ケーシング4及び熱交換器ケーシング5の内面よりも内側に位置している。
【0013】
以上の如く構成された給湯器1において、外部の給湯栓を開栓して器具内に通水させると、これを検知した図示しないコントローラが、送風部9のファンを駆動させると共に、バーナユニット6に点火してバーナユニット6を燃焼させる。よって、熱交換器8を通過する水とバーナユニット6の燃焼排気とが熱交換され、所定温度の湯として出湯される。
また、ファンの駆動によりバーナユニット6に送風される空気の一部は、バーナユニット6の外側で燃焼室ケーシング4と冷却経路形成板13との間の冷却経路14に入り、
図3に点線矢印で示すように、冷却経路14内を上昇して噴出孔18から上向きに噴出される。この空気の流れにより、燃焼室ケーシング4及び熱交換器ケーシング5が冷却される。
【0014】
燃焼室ケーシング4と熱交換器ケーシング5との接合部では、冷却経路形成板13の上端部17の外側で下側フランジ部11と上側フランジ部12との間にパッキン22が圧縮されているので、カシメ固定でもシール性が担保できる。また、上端部17の外側端部は、各カシメ片20の内側端部よりも内側に位置してカシメ片20と上下方向で重なっていないので、カシメ固定によって上端部17に加わる応力が低減される。よって、応力によって上端部17が変形して噴出孔18が歪み、熱交換器ケーシング5内に噴出される空気の勢い及び噴出量が低下するおそれがなくなる。
【0015】
このように、上記形態の給湯器1によれば、冷却経路形成板13の上端部17の外側端部が、下側フランジ部11及び上側フランジ部12の外側端部よりも内側に位置していると共に、上端部17と上側フランジ部12との間には、パッキン22が介在されて、パッキン22は、上端部17の外側端部よりも外側では下側フランジ部11と上側フランジ部12との間で圧縮されている。
この構成により、燃焼室ケーシング4と熱交換器ケーシング5と冷却経路形成板13とをカシメ固定して部品点数や工数を低減することができると共に、カシメ固定を採用しても燃焼室ケーシング4と熱交換器ケーシング5との接合部のシール性を担保することができる。
【0016】
特に、上端部17の外側端部は、カシメ片20の内側端部よりも内側に位置して、上端部17とカシメ片20とは上下方向で重なっていない。
よって、カシメ固定を採用しても上端部17の変形を防止でき、燃焼室ケーシング4及び熱交換器ケーシング5の冷却効率を担保することができる。
また、上側フランジ部12とカシメ片20との間には、補強部材21が介在されている。よって、上端部17とカシメ片20とが上下方向に重なっていなくても上側フランジ部12を均等にカシメ固定することができ、上側フランジ部12の変形も防止可能となる。
【0017】
上記形態では、下側フランジ部にカシメ片を設けてカシメ固定を行っているが、上側フランジ部にカシメ片を設けてカシメ固定を行ってもよい。
図4はその実施例を示すもので、ここでは上側フランジ部12の外側端部に、下向きの折曲片25を形成し、その折曲片25の下端に複数のカシメ片20を形成している。パッキン22は、下側フランジ部11と上端部17との間に介在され、補強部材21は、下側フランジ部11の下面に配置されている。
よって、各カシメ片20は、内側上方へ折曲されて、補強部材21を介して下側フランジ部11を下方から押さえることで、上端部17を挟んで下側フランジ部11と上側フランジ部12とをカシメ固定することになる。
【0018】
このときも各カシメ片20の内側端部は、上端部17の外側端部よりも外に位置して、上下方向でカシメ片20と上端部17とはオーバーラップしていない。カシメ片20の上方では、下側フランジ部11と上側フランジ部12との間でパッキン22が圧縮される。
よって、
図4の実施例においても、カシメ固定を採用しても燃焼室ケーシング4と熱交換器ケーシング5との接合部のシール性を担保することができる。
また、上端部17とカシメ片20とは上下方向で重なっていないので、上端部17の変形を防止でき、燃焼室ケーシング4及び熱交換器ケーシング5の冷却効率を担保することができる。
さらに、補強部材21の採用により、上側フランジ部12を均等にカシメ固定することができ、上側フランジ部12の変形も防止可能となる。
【0019】
上記各例において、カシメ片の形状及び数、位置は、適宜変更可能である。パッキンによるシール性が担保できれば、カシメ片は上端部と上下方向でオーバーラップしてもよい。パッキンは複数重ねてもよいし、上端部の上下にそれぞれ分けて配置してもよい。
補強部材も横断面倒コ字状とするものに限らず、平坦な帯状板としてもよい。補強部材を省略することもできる。
給湯器の構造も上記例に限らず、燃焼装置の内部が例えば給湯用と風呂用との2つの燃焼室に仕切られるものであってもよい。熱交換器が潜熱回収用の二次熱交換器と顕熱回収用の一次熱交換器とからなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0020】
1・・給湯器、2・・筐体、3・・燃焼装置、4・・燃焼室ケーシング、5・・熱交換器ケーシング、6・・バーナユニット、8・・熱交換器、11・・下側フランジ部、12・・上側フランジ部、13・・冷却経路形成板、14・・冷却経路、15・・本体部、16・・下端部、17・・上端部、18・・噴出孔、20・・カシメ片、21・・補強部材、22・・パッキン。