(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】塩のイオン交換法を用いた親環境高効率エステル化反応基盤のエステル化合物の製造方法およびその化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 67/08 20060101AFI20240402BHJP
C07C 69/14 20060101ALI20240402BHJP
C07C 69/84 20060101ALI20240402BHJP
C07C 279/14 20060101ALI20240402BHJP
C07C 277/00 20060101ALI20240402BHJP
C07C 69/24 20060101ALI20240402BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240402BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/14
C07C69/84
C07C279/14
C07C277/00
C07C69/24
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020568377
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2020016740
(87)【国際公開番号】W WO2022097813
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0146843
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522192528
【氏名又は名称】ウッドワード バイオ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ガヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ソンウン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110938020(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0108764(KR,A)
【文献】特開昭63-154643(JP,A)
【文献】特開2009-222710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[反応式1]による塩のイオン交換法を用いたエステル化反応基盤のエステル化合物
の製造方法。
[反応式1]
【化14】
前記[反応式1]の塩化マグネシウム(MgCl
2)は、水和物および無水物のいずれか一つに選択されるものであり、
前記[反応式1]のR
1(C=O)OHは、
C
1
~C
20
のアルキル基またはアロマティック芳香族官能基を含む有機酸、またはアルギニンの中から選択されるものであり、R
2OHは、1次、2次および3次アルコールの中から選択されることを特徴とする。
【請求項2】
前記エステル化反応は、エチルアセテート(Ethyl Acetate)溶媒をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の塩のイオン交換法を用いたエステル化反応基盤のエステル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記カルボン酸とアルコールは、それぞれラウリン酸とエタノールであることを特徴とする請求項1に記載の塩のイオン交換法を用いたエステル化反応基盤のエステル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記カルボン酸とアルコールは、それぞれ酢酸とメントールであることを特徴とする請求項2に記載の塩のイオン交換法を用いたエステル化反応基盤のエステル化合物の製造方法。
【請求項5】
前記カルボン酸とアルコールは、それぞれ没食子酸とエタノールであることを特徴とする請求項1に記載の塩のイオン交換法を用いたエステル化反応基盤のエステル化合物の製造方法。
【請求項6】
前記カルボン酸とアルコールは、それぞれアルギニンとエタノールであることを特徴とする請求項1に記載の塩のイオン交換法を用いたエステル化反応基盤のエステル化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩のイオン交換法を用いた親環境高効率エステル化反応基盤のエステル化合物の製造方法およびその化合物に関する。より詳細には、本発明は、海水を構成するアルカリ金属系塩とアルカリ土類金属系塩のイオン交換を通した親環境エステル化反応を用いたエステル化合物の製造方法に関し、毒性がなく、有害廃棄物が発生せず、高い収率のエステル化合物を製造できる方法とこの製造方法で製造されたエステル化合物の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル化反応は、アルコールと有機酸の脱水反応を通して水が除去され、エステル化合物を形成させる反応であって、多様な産業に応用され、医薬品、香料、バイオディーゼルのような高付加価値の基礎化学素材産業に幅広く用いられている。
【0003】
一般的なエステル化反応は、硫酸、リン酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸等のような酸触媒を使用したり、塩化チオニルのようなアシル塩化物化誘導および塩化アルキル化誘導を起こす触媒を使用している。
【0004】
酸触媒エステル化反応は、代表的にフィッシャーエステル化反応(Fischer esterification)があり、この反応は、酸触媒下で過量のアルコールと有機酸を反応させてエステル化合物を得る反応である。この反応では、大部分硫酸を主に使用するが、エステル化反応は、可逆反応であるから、同反応により生成された水により生成物であるエステルがさらに加水分解(逆反応)することができて、エステルへの転換率が非常に低い場合もある。
【0005】
他の方法としては、酸触媒として塩酸を用いることもできるが、塩酸の場合、気体を使用しなければならず、塩酸水溶液を使用するとき、水と共に反応をさせなければならないので、結局、さらに逆反応である水による加水分解反応が起こるので好ましくない。しかも、塩酸ガスの場合、高い温度で揮発するので、反応を進行しようとする場合、継続して気体を入れなければならない煩わしさを有している。
【0006】
これを解決するために、塩化チオニル(Thionyl choloride)を使用することもできるので、工程が比較的簡潔であり、反応性が高いため、多く使用される。しかしながら、塩化チオニルは、有毒性、腐食性物質であって、水分やアルコールと急激な反応で爆発し得る危険物であり、反応完了後に塩化チオニルを除去するためにアルコールをさらに入れたり水を加える場合があり、この過程で、大気汚染の主な物質である二酸化硫黄が発生する。しかも、除去過程で装備の腐食を起こし、除去に長時間がかかるという短所がある。
【0007】
このように2つの方式のエステル化反応が持っている共通の短所は、脱水過程で生成される水の除去である。
【0008】
フィッシャーエステル化反応は、前述したように、可逆反応であるから、ル・シャトリエの法則によって正反応を誘導するためには、生成される水を除去する場合、エステル化合物への転換率が高まる。したがって、脱水剤が必要であるが、各溶媒と共通して互換される脱水剤の組合せを探すことが難しく、溶媒間の脱水によってアルコールの構造がエーテル(ether)構造に変える場合が発生し得る。かくして、反応に参加できるアルコールの分子数が減少し、反応確率が大きくなるので、エステル化合物への転換率が低くなる。
【0009】
酸触媒エステル化反応の場合にも、生成されるエステル化合物の構造および特性によって触媒として残っている酸の除去が難しい短所がある。極性度が低い生成物の場合には、抽出法を用いて酸の除去が可能であるが、水との親和力が高い極性の生成物は、酸の分離が非常に難しい。しかも、アミノ酸のようなアミン基が存在する場合、生成物は、酸触媒と共に塩を構成するので、考案された塩を製造するために別途の脱塩のような精製過程が必要である。そして、一般的なアミン基を有するエステル化合物は、主に塩酸塩を製造するが、硫酸系の酸触媒を使用する場合には、脱塩が容易でないため、精製が難しいという短所を有している。
【0010】
エステル化反応においてこのような環境有害物質の発生および精製の困難の改善とエステル化転換率を高めるために、多様な方法のエステル化反応が開発されているが、高価な触媒を使用することになり、これは、原料のコスト上昇の原因となるので、親環境的であり、高効率のエステル化反応の開発の必要性が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記背景技術で記述した問題点を解決するために、親環境、高効率および低費用のエステル化反応の触媒を用いてエステル化合物への高い転換率を有する反応を開発し、多様な有機酸とアルコールを導入して、商用化される高付加価値のエステル化合物を製造する。
【0012】
それによって、生分解性、安全性、低毒性および経済性を確保すると共に、産業廃棄物の発生を減らして、環境汚染を減らす一助となり得るようにする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための一手段として、下記の[反応式1]による極性エステル化合物を製造する方法になり得る。
【0014】
【0015】
前記[反応式1]の塩化マグネシウム(MgCl2)は、水和物および無水物のいずれか一つに選択されるものであり、前記[反応式1]のR1は、C1~C20のアルキル基、アロマティック芳香族官能基またはアミン基を有する官能基を含む有機酸の中から選択されるものであり、R2は、1次、2次および3次アルコールの中から選択されることを特徴とすることができる。
【0016】
また、前記エステル化反応は、エチルアセテート(Ethyl Acetate)溶媒をさらに含むことを特徴とする、極性エステル化合物を製造する方法になり得る。
【0017】
さらに好ましくは、前記カルボン酸とアルコールは、それぞれラウリン酸とエタノールであることを特徴とする、極性エステル化合物を製造する方法になり得る。
【0018】
また、前記カルボン酸とアルコールは、それぞれ酢酸とメントールであることを特徴とする、極性エステル化合物を製造する方法になり得る。
【0019】
また、前記カルボン酸とアルコールは、それぞれ没食子酸とエタノールであることを特徴とする、極性エステル化合物を製造する方法になり得る。
【0020】
また、前記カルボン酸とアルコールは、それぞれアルギニンとエタノールであることを特徴とする、極性エステル化合物を製造する方法になり得る。
【0021】
一方、前記アルギニンとエタノールにより極性エステル化合物であるアルギニンエチルエステル;およびラウロイルクロライド;を処理したアシルァ反応を通して生成されるエチルラウロイルアルギネートがその一手段になり得る。
【0022】
他方で、本発明の課題解決手段は、これに羅列されたものに限らず、本発明の説明によって当業者が理解し得る範囲内で、前記解決しようとする課題を達成する手段であれば、全部含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来、エステル化反応において有毒物質の発生と爆発の危険性を解決することができ、精製時に、触媒除去の困難と反応中に生成される水による加水分解の問題点を改善して、エステル転換率を高めることができるので、高い収率でエステル化合物を製造することができる。
【0024】
しかも、市中で容易に且つ安価に購入が可能であり、海水から得ることができるアルカリ金属の塩およびアルカリ土類金属の塩を使用するので、工程のコストを低減することができ、有害廃棄物が発生しないため、環境問題を改善することができる。
【0025】
また、従来エステル化反応に比べて高い収率を示すと同時に、精製方法も簡便であるという長所を有しているので、商業的に使用するとき、生産品のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】Ethyl laurateの製法(実施例1)による反応結果物の
1H NMRスペクトルである。
【
図2】Menthyl acetateの製法(実施例2)による反応結果物の
1H NMRスペクトルである。
【
図3】Ethyl gallateの製法(実施例3)による反応結果物の
1H NMRスペクトルである。
【
図4】Arginine ethyl ester dihydrochlorideの製法(実施例4)による反応結果物の
1H NMRスペクトルである。
【
図5】Ethyl lauroyl arginate hydrochlorideの製法(実施例5)による反応結果物の
1H NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための具体的な内容を説明するに先立って、より詳細な技術的背景をまず説明することとする。
【0028】
本発明の技術的背景は、海水の構成成分である塩化マグネシウムと硫酸のイオン交換による塩酸の生成および硫酸ナトリウムによる水の除去を基盤とし、[反応式1]および[反応式2]に示した。
【0029】
【0030】
前記[反応式1]の塩化マグネシウム(MgCl2)は、水和物および無水物のいずれか一つに選択されるものであり、前記[反応式1]のR1は、C1~C20のアルキル基、アロマティック芳香族官能基またはアミン基を有する官能基を含む有機酸の中から選択されるものであり、R2は、1次、2次および3次アルコールの中から選択されることを特徴とすることができる。
【0031】
一般的に、硫酸の場合、固体状態の金属塩との反応性が低くて、金属塩をイオン状態に作ることが重要である。しかしながら、一般的な金属塩化物は、アルコールに対する溶解度が低くて、完全な解離がなされないので、金属塩化物は、水和物の形態で提供されることが好ましいが、この場合、エステル化反応の逆反応である加水分解反応を誘導するので、水を除去する脱水剤が添加されなければならない。
【0032】
前記[反応式1]の場合、塩化マグネシウムと硫酸の反応により生成される硫酸マグネシウムは、水を除去する脱水剤の役割をするので、このような条件を満たすことができるが、反応時間が長くなったり、溶媒および反応槽内部の水分に起因して加水分解が起こり得るので、別途の脱水剤である無水硫酸ナトリウムを添加することが好ましい。ただし、これは、生成物の特性によって調節が可能である。詳細に説明すると、生成物が加水分解反応に敏感であると、追加的に水分子を閉じ込めなければならないので、必ず無水硫酸ナトリウムを添加しなければならないが、加水分解反応に敏感でない生成物を生成させる場合には、添加しなくてもよい。
【0033】
エステル化反応は、塩酸を使用することが理想的であるが、塩酸は、気体状態であるから、反応時に、一定の間隔をもって気体状態の塩酸を注入しなければならない煩わしさがある。そして、気体状態の塩酸は、比較的高価であり、取り扱いが難しいので、経済的な側面と工程の便利さの点から効率的でない。
【0034】
したがって、前記[反応式1]の反応は、塩化マグネシウムの塩化イオンと硫酸の水素イオンに起因して反応中に気体状態の塩酸が発生し、その塩酸を酸触媒としてエステル化反応が進行されるので、このような問題点を容易に解決することができる。
【0035】
しかも、反応物がアミノ酸の場合、生成物であるアミノ酸エステルは、ツヴイッテル(Zwitter)平衡が存在しないので、アミンによる塩基性化合物になるが、この際、酸触媒と共にアンモニウム塩の形態となって、触媒が消尽される。このような結果は、反応系のpHを高める原因となることがあり、触媒量の減少に起因して正反応に導くことができないので、収率が低下する。それで、より多くの酸触媒を使用することになるので、精製時に、残余触媒の除去が非常に難しい点がある。また、このようなアミノ酸エステルの塩形態は、極性程度が高くて、抽出精製が非常に難しく、酸触媒も極性程度が高いため、きれいで且つクリーンな精製が非常に難しいという短所を有している。
【0036】
本発明は、塩化物と硫硫酸化物のイオン交換による塩酸気体の発生と脱水剤による水分子の除去に起因して高いエステルへの転換率を示し、容易に除去が可能な塩酸気体を酸触媒として使用するので、1回のフィルターだけで精製が簡便であるという長所を有している。
【0037】
【0038】
前記[反応式2]でR1は、C1~C20のアルキル基、アロマティック芳香族官能基またはアミン基を有する官能基を含む有機酸の中から選択されるものであり、R3は、1次、2次または3次アルコールの中から選択されることを特徴とすることができる。
【0039】
エステル化反応は、1次アルコールだけでなく、2次および3次アルコールのような側鎖状アルコールと有機酸の縮合反応に用いられることがある。このような反応は、代表的に香料を生産するときに使用されているが、多様な側鎖状アルコールを導入したエステル化合物は、比較的高価に扱われている。これは、側鎖状アルコール類が比較的高価を形成すると共に、1次アルコールに比べてエステルへの転換率が低いためである。そして、酸性条件で比較的早く加水分解されて、一般的なエステル化反応で製造しにくい点があるので、製造時に高価な試薬を必要とするという点が作用する。また、一般的に高い温度を必要とするので、トルエンのように高い沸点(boiling point)を有する溶媒を使用することになる。しかしながら、トルエンをはじめとする高い沸点を有する溶媒は、高い毒性を有しており、精製が難しく、溶媒の残留性に対する問題点を有している。
【0040】
このような問題点を解決するために、本発明は、塩のイオン交換により発生する塩酸気体触媒および水を除去する反応を基盤としてエチルアセテート(EA,Ethyl Acetate)を溶媒として側鎖状アルコールと有機酸のエステル化反応を誘導した。ここで使用されたエチルアセテートは、エタノールと酢酸のエステル化反応で縮合された安全な溶媒であって、環境汚染を誘発せずに安全な反応を誘導することができる。しかも、77.1℃の低い沸点を有しているにも関わらず、安定に側鎖状アルコール基盤のエステル化合物を得ることができ、使用されたエチルアセテートは、さらに再使用が可能で、経済的に利点を有している。
【0041】
本発明を用いて代表的な商業的エステル化合物を製造し、反応式3~7にそれぞれ示した。
【0042】
【0043】
ラウリン酸とエタノールの縮合反応で製造されるエチルラウレートは、特有の香りを有しているオイル状のエステル化合物である。この物質は、脂肪酸エステル化合物であって、バイオディーゼルの主要成分でもあり、香料として使用される素材である。この反応においてラウリン酸、硫酸および塩化マグネシウム水和物のモル比は、1:2.5:2.75で行った。硫酸と塩化マグネシウムは、1:1反応時に2分子の塩酸ガスを発生させる。この反応において2分子の塩酸は、エステル転換率に影響を及ぼすpKa値を低減するのに不足した量であるから、少なくとも2倍以上の当量が必要である。そして、硫酸と塩化マグネシウム反応時に硫酸が限界反応物質になるべきであるが、このような理由は、硫酸は、全部消耗されて、硫酸マグネシウムおよび硫酸水素マグネシウムを形成する場合、残余硫酸を除去することが容易であるためである。そして、塩化マグネシウムに含有された水分を除去するために、硫酸ナトリウムを同じ当量に合わせる場合、水の除去が早く行われる。
【0044】
[反応式3]に示されたように、本発明を適用させて製造したエチルラウレートの場合、簡単な方法で精製が可能であり、高いエステル転換率を示すと共に、有害廃棄物がなくて、親環境バイオディーゼルの製造法に応用できるという長所を有している。
【0045】
【0046】
[反応式4]に使用されたメントール(Menthol)は、香料として使用され、メントールをベースに製造される香料は、様々な種類がある。そのうち、本発明を適用して製造したメントール誘導体は、メンチルアセテート(Menthyl acetate)である。
【0047】
メンチルアセテートは、メントールと酢酸の縮合反応で得ることができるが、従来の技術は、メンチル塩化物あるいは塩化アセチルを用いて製造する。しかしながら、過量の塩化アセチルあるいは酢酸を必要としたり、アルキル塩化物あるいはアシル塩化物を製造するとき、塩化チオニルを用いなければならないので、工程の全過程で有害物質の発生は避けられない。特に、反応に使用される溶媒も、制限的であると共に、全部トルエンおよびベンゼンのように有害な溶媒条件で反応が進行されるので、環境的な面から不適切な方法である。
【0048】
本発明では、環境汚染を起こさない溶媒であるエチルアセテートを溶媒として使用し、ここで使用されたメントールは、自然から得られた非精製されたメントールを用いてメンチルアセテートを製造した。そして、酢酸を過量使用せず、メントール使用量を基準としてメントール:酢酸は、1:1.6のモル比を使用して製造するが、メントール系の化合物の場合、精製時に有機溶媒によく溶解するが、水にはよく溶解しないので、精製時に分離が難しいためである。反面、酢酸の場合、塩基性水溶液に容易に溶けて、分離が簡便で、酢酸のモル数を高めて製造するとき、未反応の酢酸を容易に除去することができる。また、2次アルコールであるメントールの場合、加水分解の可能性が高く、使用されたメントールが非精製された混合形態であることによって、他の低分子アルコールがある可能性があるので、硫酸、塩化マグネシウム水和物、硫酸マグネシウムを3.5当量以上を加えて反応を行うことになった。
【0049】
本発明において自然から抽出された非精製されたメントールを使用する理由は、化粧品製造会社の問題を解決するためである。多くの化粧品の場合、香料を添加するが、香料のアレルギー誘発化合物は、リナロール、ゲラニオール等のような成分である。化粧品業界の場合、最近トレンドであり且つ消費者の購買基準であるEWG(Environmental Working Group)のグリーン等級に記載された原料を使用することが、マーケティング的要素であるが、このような香料の構成成分であるアレルギー誘発物質の等級は、グリーン等級を満たさなくて、香りに対する問題を解決することが大きな課題として残っているのが現状である。このような問題を解決するために、天然物から抽出されたエッセンシャルオイルに代替しているが、エッセンシャルオイルの香りを出す化合物は、同様に、人工香料のアレルギー誘発物質のような構造の化合物であるから、現行法であるアレルギー誘発物質の表記事項から抜け出すことは難しい。リナロール、ゲラニオール等のような化合物は、R-OHの官能基を有するアルコール系化合物であって、エステル化反応を通してこの問題に対する解決が可能であり、エステル系化合物は、大部分が果物、花の香りを出す主成分であって、化粧品産業に使用されるのに適している。特に化粧品産業で多く使用されるエッセンシャルオイルの場合、リナロールとゲラニオールが多量含有されたものを使用することに鑑みて、混合物であるエッセンシャルオイルを脂肪酸と共にエステル化反応を経ることになると、エステル系化合物へ転換されるので、アレルギー誘発物質検出基準を満たしやすい。このような理由より、本発明では、自然から抽出された非精製されたメントールを使用してエステル化合物を製造することになった。
【0050】
【0051】
[反応式5]に使用された没食子酸(gallic acid)は、非常に強力な抗酸化効果を示すことが知られている。特に、強力な抗酸化能力を通して食品の栄養強化の目的および酸化防止目的の保存剤として使用されている。しかしながら、強力な抗酸化力を示すが、容易に褐変になる場合があるので、エステル構造で保護をするために安全且つ安定した構造であるエチルエステル構造で用いられている。純粋な没食子酸は、芳香族環でパラ(p-)位置関係のヒドロキシル基とカルボン酸は、互いに電子の移動が自由なので、早く褐変になるので、多様なアルキルエステルが導入されるが、そのうち、エチル基は、生体内で分解時に有害でないため、保護基として適している。本反応において没食子酸1水和物、硫酸、塩化マグネシウム水和物のモル比は、1:2:2.2で使用されたが、没食子酸の場合、エステル転換率が高い構造的特性を有しているので、さらに少ない量の硫酸と塩化マグネシウム水和物の使用が可能である。
【0052】
本発明のエステル化反応を適用して、エチルガレートを製造すると、共通の有害性、有毒性物質が使用されず、有害廃棄物が発生しないので、商業的に製造時に有利であるという長所を有している。
【0053】
【0054】
[反応式6]に使用されたアルギニンは、20種のアミノ酸のうち塩基性アミノ酸に分類され、タンパク質の構成要素の一つである。アルギニンは、血管系疾患の予防、傷の治癒、腎臓疾患の予防など多様な機能をするので、栄養強化剤として多く使用されている。
【0055】
しかしながら、アルギニンは、吸収率が低くて、エチルエステル構造の形態で服用をするが、このような理由は、エチルエステル形態の場合、吸収率がさらに高いためである。そして、アルギニンエチルエステルは、食品、化粧品、医薬品の殺菌保存剤および多機能生理活性素材であるエチルラウロイルアルギネート(ELA)の合成中間体であるから、高付加価値の素材を製造することができる。しかしながら、塩基性アミノ酸は、エステル化反応を進行すると、酸触媒を消尽して、エステル転換率が低くて、触媒を過量使用することになり、有毒な物質を過量使用する場合、環境汚染、人体毒性の危険を避け難い。そして、残余の酸触媒からの精製が難しくて、経済的でないという短所を持っている。しかも、アルギニンエチルエステルの場合、精製に使用される非水溶性有機溶媒に対する溶解度が非常に低くて、残余触媒および不純物からの精製が非常に難しいという短所を有している。本反応で使用されたアルギニン、硫酸、塩化マグネシウムのモル比は、1:3:3.3が使用された。アルギニンの場合、強い塩基性であるから、塩酸1分子を消耗させ、生成物であるアルギニンエチルエステルの場合にも、塩酸1分子を追加的に消耗させるので、少なくとも塩酸6分子以上が要求されるので、転換率を高めるための低いpKaの条件を満たすためには、少なくとも3当量の硫酸が必要である。
【0056】
本発明は、過量の触媒を使用しても有害な物質の発生がなく、高いエステル転換率を通して精製の困難と低い収率の困難なしに容易にアルギニンエステルを製造することができる。しかも、環境廃棄物と毒性廃棄物が発生しないため、処理費用が少なく済むという長所も持っていて、商業的に広く活用が可能である。
【0057】
【0058】
[反応式7]は、先立って本発明のエステル化反応を用いて製造されたアルギニンエチルエステルを用いてエチルラウロイルアルギネートハイドロクロライド(Ethyl Lauroyl Arginate Hydrochloride,ELA)の製造法を示すものである。ELAは、アルギニンエチルエステルを出発物質としてラウロイルクロリドと共にアシル化反応を通して製造することができる。
【0059】
ELAは、食品をはじめとする化粧品、医薬品の殺菌保存剤として強力で且つ広いスペクトルの抗菌、抗ウイルス機能を有している。それだけでなく、細菌が分泌した毒性物質を分解する機能および皮膚と毛をやわらかくし、人体の表面に吸着してバクテリアの付着を防止する多様な機能を有している。
【0060】
しかしながら、従来工程で第一の段階であるエステル化反応の問題点とアシル化反応における加水分解による低い収率と純度に起因して価格が高く形成されて大衆化しにくい点があった。
【0061】
本発明のエステル化反応は、効率性と親環境性を通して第一の段階の工程費用を低減すると同時に、アシル化反応でカーボネート緩衝溶液を使用して加水分解の確率を減らすことによって、従来ELAの製造工程の問題点を全部解決することができた。
以上より、本発明の技術的核心となる[反応式1]と[反応式2]について説明したが、以下では、具体的な実施例により本発明を説明することとする。下記5つの実施例は、多様な有機酸と2種のアルコールを出発物質として、各目的に合う化合物を製造することを示しており、製造された物質を適用したさらに他の高付加価値のエステル化合物を製造する方法を示す。
【0062】
[実施例1]Ethyl laurateの製造
【0063】
【0064】
1.1000mL丸底フラスコにEtOH 600mLとMgCl2-6H2O 140gを加えた後、溶解後、Lauric acid 50gを加える。
【0065】
2.20分間撹拌した後、Na2SO4 97gを加え、H2SO4 33mLをゆっくり加える。
【0066】
3.100℃に温度を維持しつつ、6時間撹拌する。
【0067】
4.反応混合物を室温に冷却させた後、濾過した後、濃縮する。
【0068】
5.EA 100mLを加えて溶解させた後、有機層をNaHCO3飽和水溶液で1回洗浄する。
【0069】
6.Na2SO4で水分を除去し、濾過し、濃縮して、淡黄色のオイルEthyl laurate(54g、95%)を得る。
【0070】
前記6.段階後に収得されたEthyl laurate化合物を
1H NMRで分析した結果は、次の通りであり、スペクトルは、
図1に示した。
【0071】
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ4.05-4.02(q,2H),2.27-2.24(t,2H),1.51-1.49(t,2H),1.24(s,16H),1.18-1.15(t,3H),0.86-0.84(t,3H)
【0072】
[実施例2]Menthyl acetateの製造
【0073】
【0074】
1.1000mL丸底フラスコにEA 300mLとAcOH 8mLを加えた後、溶解後、MgCl2-6H2O 72gを加える。
2.20分間撹拌した後、Menthol 20g(天然物から抽出された非精製原料)とNa2SO4 97gを加え、H2SO4 33mLをゆっくり加える。
【0075】
3.76℃に温度を維持しつつ、18時間撹拌する。
【0076】
4.反応混合物を室温に冷却させた後、濾過した後、濃縮する。
【0077】
5.EA 100mLを加えて溶解させた後、有機層をNaHCO3飽和水溶液で1回洗浄する。
【0078】
6.Na2SO4で水分を除去し、濾過し、濃縮して、黄色のオイルMenthyl acetate(17g、96%)を得る。
【0079】
前記6.段階後に収得されたMenthyl acetate化合物を
1H NMRで分析した結果は、次の通りであり、スペクトルは、
図2に示した。
【0080】
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ4.59-4.55(m,1H),1.98(s、3H),1.87-1.83(m,1H),1.82-1.79(m,2H),1.65-1.61(m,2H),1.60-1.58(m,1H),1.48-1.40(m,1H),1.37-1.30(m,2H),0.88-0.85(m,9H)
【0081】
[実施例3]脱塩および塩置換法を用いたEthyl gallateの製造
【0082】
【0083】
1.1000mL丸底フラスコにEtOH 500mLとMgCl2-6H2O 119gを加えた後、溶解後、Gallic acid-H2O 50gを加える。
2.20分間撹拌した後、Na2SO4 83gを加え、H2SO4 28mLをゆっくり加える。
【0084】
3.100℃に温度を維持しつつ、12時間撹拌する。
【0085】
4.反応混合物を室温に冷却させた後、濾過した後、濾過液を濃縮して、白色の固体Ethyl gallate(52g、98%)を得る。
【0086】
前記6.段階後に収得されたEthyl gallate化合物を
1H NMRで分析した結果は、次の通りであり、スペクトルは、
図3に示した。
【0087】
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ9.15(brs,2H),9.96(s,2H),4.21-4.18(q,2H),1.27-1.25(t,3H)
【0088】
[実施例4]Arginine ethyl ester dihydrochlorideの製造
【0089】
【0090】
1.1000mL丸底フラスコにEtOH 600mLとMgCl2-6H2O 193gを加えた後、溶解後、Arginine 50gを加える。
2.20分間撹拌した後、Na2SO4 135gを加え、H2SO4 46mLをゆっくり加える。
【0091】
3.95℃に温度を維持しつつ、18時間撹拌する。
【0092】
4.反応混合物を室温に冷却させた後、濾過した後、濾過液を濃縮して、白色の固体Arginine ethyl ester dihydrochloride(77g、97.5%)を得る。
【0093】
前記4.段階後に収得されたArginine ethyl ester dihydrochloride化合物を
1H NMRで分析した結果は、次の通りであり、スペクトルは、
図4に示した。
【0094】
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ8.72(s,3H),8.05-8.03(t,1H),4.24-4.14(m,2H),3.99-3.97(t,1H),3.42(brs,1H),3.19-3.11(m,2H),1.88-1.80(m,2H),1.66-1.59(m,1H),1.53-1.46(m,1H),1.24-1.21(t,3H)
【0095】
[実施例5]Ethyl lauroyl arginate hydrochlorideの製造
【0096】
【0097】
1.1000mL丸底フラスコに蒸留水150mLとArginine ethyl ester dihydrochloride 60gを加えた後、溶解後、室温で撹拌する。
2.Na2CO3 23.1gとNaHCO3 1.8gが蒸留水200mLに溶解した水溶液を加え、EA 350mLを加える。
【0098】
3.Lauroyl chloride 51mLをゆっくり加え、室温で3時間撹拌する。
【0099】
4.水層を除去し、有機層にbrine 200mLを加えた後、hydrochloric acid(35%~)10mLを加える。そして、5分間撹拌する。
【0100】
5.水層を除去した後、有機層を4℃以下に冷却させた後、濾過して、白色の針状結晶であるEthyl lauroyl arginate hydrochloride(88g、96%)を得る。
【0101】
前記5.段階後に収得されたEthyl lauroyl arginate hydrochloride化合物を
1H NMRで分析した結果は、次の通りであり、スペクトルは、
図5に示した。
【0102】
1H NMR(600MHz,DMSO-d6)δ8.24-8.23(brd,1H),7.79(brs,1H),4.20-4.16(m,1H),4.11-4.03(m,2H),3.12-3.06(brs,2H),2.14-2.09(m,2H),1.74-1.68(m,1H),1.63-1.56(m,1H),1.63-1.46(m,4H),1.28-1.24(m,16H),1.19-1.16(t,3H),0.86-0.84(t,3H)
【0103】
本発明では、従来エステル化反応に使用される有害物質の使用、残余触媒の除去、有害ガスの発想、毒性廃棄物の発生および脱水過程時に発生する水の除去の困難に因る低いエステル転換率を改善することができるという長所を有している。しかも、極性の生成物と非極性の生成物がいずれも生産が可能であり、比較的精製が簡便な利点と安価な塩の形態の物質を使用することによって、経済的にエステル化合物を生産することができる。