(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】固定装置
(51)【国際特許分類】
F16B 5/06 20060101AFI20240402BHJP
F16B 21/00 20060101ALI20240402BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F16B5/06 A
F16B21/00 A
F16B21/04 Z
(21)【出願番号】P 2021124479
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591133446
【氏名又は名称】株式会社イマオコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 憲彦
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-322300(JP,A)
【文献】特開2015-218814(JP,A)
【文献】特開2014-092180(JP,A)
【文献】特開2005-351348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/06
F16B 21/00
F16B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定材と第2固定材とを互いに着脱可能に固定するための、固定装置であって、
前記第1固定材側に配される連結軸部と、前記第2固定材側に配される固定具とを備え、
前記連結軸部は、その外周面に、自身の先端に向かうほど広がるように傾斜する、被押圧面を有し、
前記固定具は、固定具本体と、シャフトと、保持部と、球状の押圧部材と、操作体と、被案内ピンと、弾性部材とを備え、
前記固定具本体は、前記連結軸部の軸心と同一方向を向く軸心を有する収容孔と、その収容孔を形成する周壁に沿って延びて前記被案内ピンを案内する案内溝とを備え、
前記収容孔は、前記連結軸部が抜き挿しされる開口を有し、
前記シャフトは、前記収容孔内にあって、そのシャフトの軸心が前記収容孔の軸心と同一方向を向き、前記収容孔の軸心回りに回動可能、かつ、前記収容孔の軸心方向に移動可能であり、また、
前記シャフトは、前記開口から遠い側に、そのシャフトの軸心方向に長手となる長孔を有し、前記開口に近い側に、前記連結軸部を囲むことができるように筒状に形成された作用部を有し、
前記作用部は、その内周面に、自身の先端に向かうほど広がるように傾斜する作用面を有し、
前記保持部は、前記連結軸部と前記作用部との間で、前記押圧部材を前記被押圧面と対向する位置に保持し得るように、その押圧部材が通される保持孔を有し、
前記操作体は、前記収容孔の軸心回りに回動可能であって、回動操作されることで、アンクランプ位置とクランプ位置との間を移動し、
前記被案内ピンは、前記長孔に挿入され、前記案内溝に係合するように設けられ、また、
前記被案内ピンは、前記操作体と一体となって回動し、かつ、前記案内溝に案内されて前記収容孔の軸心方向に、前記操作体を伴って移動し、
前記弾性部材は、前記操作体に対し前記シャフトを前記開口側に弾性付勢し、
前記操作体が前記アンクランプ位置にあるとき、前記案内溝に案内される前記被案内ピンは、前記開口から遠い側にあって、前記長孔の前記開口から遠い側の内面に当接し、前記シャフトは、その被案内ピンによって前記開口から遠い側に引き上げられた位置にあり、前記作用部と前記連結軸部との間で、前記押圧部材が前記連結軸部から離れる側に移動可能となって、前記連結軸部を前記開口に対し抜き挿し可能であり、
前記操作体が前記クランプ位置にあるとき、前記案内溝に案内される前記被案内ピンは、前記開口に近い側にあって、前記長孔の前記開口から遠い側の内面から離れ、前記弾性部材の弾性による付勢力が、前記シャフトの前記作用面を介して前記押圧部材に作用し、その押圧部材が、前記連結軸部の前記被押圧面を押圧して前記連結軸部を締付けし、また、
前記操作体が前記クランプ位置にあって、相対的に前記連結軸部が前記開口から引き抜かれる側に移動するような過大な外力が作用したとき、その連結軸部の前記被押圧面に押された前記押圧部材が前記作用面を押して、前記シャフトが、前記開口から遠ざかるよう移動すると、前記長孔の前記開口に近い側の内面が、前記被案内ピンに当たって、それ以上の前記シャフトの移動が制限され、前記押圧部材の前記被押圧面への係りが維持されて、前記連結軸部の前記開口からの抜け出しが阻止される、固定装置。
【請求項2】
前記固定具は、前記保持部を有する保持体を備え、
前記保持体は、前記収容孔の軸心回りに回動可能に設けられる、請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記固定具は、他の弾性部材を備え、
前記他の弾性部材は、その弾性による付勢力が、前記弾性部材の付勢力よりも弱く、前記シャフトに対し前記保持体を前記開口側に弾性付勢する、請求項2に記載の固定装置。
【請求項4】
前記案内溝は、前記収容孔の軸心方向に対し傾斜して前記開口に近づく傾斜溝と、その傾斜溝に続き前記収容孔の軸心方向と直交する横溝とを備え、前記操作体が前記アンクランプ位置にあるとき、前記被案内ピンは、前記案内溝の一端部である、前記傾斜溝側の端部にあり、前記操作体が前記クランプ位置にあるとき、前記被案内ピンは、前記案内溝の他端部である、前記横溝側の端部にある、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固定装置。
【請求項5】
前記案内溝の他端部である、前記横溝側の端部には、前記開口から遠い側に窪む凹みが設けられており、前記操作体が前記クランプ位置にあるとき、前記被案内ピンは、前記凹みに係合する、請求項4に記載の固定装置。
【請求項6】
前記固定具本体は、前記第1固定材とで前記第2固定材を挟み込むことができるように前記第2固定材に当接する受け部を備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二つの固定材を互いに着脱可能に固定するための固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベースとプレートとを互いに固定するための固定装置があった(例えば、非特許文献1参照)。
図8に示すように、この固定装置23は、ベース21に取り付けられるクランプピン24と、プレート22に取り付けられるピンホールドクランパー25とで構成されていた。ピンホールドクランパー25は、本体26と、シャフト27と、ノブ28と、被案内ピン29と、ボール30と、スプリング31とを備えていた。本体26は、上下に貫通する収容孔26aを備え、上端に、被案内ピン29が載る案内面26bを有し、収容孔26aの下端部分には、下方に向かって小径となる傾斜面26cが設けられた。シャフト27は、収容孔26aに収容され、上端にはノブ28が固定され、また、上部には、被案内ピン29が貫通配置された。そして、シャフト27は、下端部分に筒状の保持部27aを備え、ボール30は、その保持部27aにあけられた孔27bに挿入されて保持された。そして、スプリング31は、収容孔26aの内周面に止められた止め輪32と、シャフト27の保持部27aとの間に入れられて、シャフト27を下方に付勢した。そこで、ピンホールドクランパー25を、クランプピン24に被せ、ノブ28を回動操作すると、被案内ピン29が、案内面26bに案内されて、シャフト27とともに下方に移動した。そして、シャフト27が下方へ移動することで、ボール30が、傾斜面26cを下り、クランプピン24の傾斜する被押圧面24aを押圧した。こうして、ボール30、つまりはピンホールドクランパー25が、クランプピン24を締付けて、プレート22がベース21に固定された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】株式会社イマオコーポレーション、標準機械部品/標準冶具2020、2019年12月、p.118-121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の固定装置23にあっては、その締付け固定中に、プレート22に、ベース21から離れる方向に過大な外力が作用すると、クランプピン24から受ける反力により、ボール30が傾斜面26cを上り、これによって、クランプピン24が本体26の収容孔26aから抜け出る虞があった。
【0005】
この発明は、上記した従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、二つの固定材の互いの固定を確実に維持することができる、固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る固定装置は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る固定装置は、第1固定材と第2固定材とを互いに着脱可能に固定するための、固定装置である。この固定装置は、前記第1固定材側に配される連結軸部と、前記第2固定材側に配される固定具とを備える。前記連結軸部は、その外周面に、自身の先端に向かうほど広がるように傾斜する、被押圧面を有する。一方、前記固定具は、固定具本体と、シャフトと、保持部と、球状の押圧部材と、操作体と、被案内ピンと、弾性部材とを備える。ここで、前記固定具本体は、前記連結軸部の軸心と同一方向を向く軸心を有する収容孔と、その収容孔を形成する周壁に沿って延びて前記被案内ピンを案内する案内溝とを備える。前記収容孔は、前記連結軸部が抜き挿しされる開口を有する。前記シャフトは、前記収容孔内にあって、そのシャフトの軸心が前記収容孔の軸心と同一方向を向き、前記収容孔の軸心回りに回動可能、かつ、前記収容孔の軸心方向に移動可能である。そして、前記シャフトは、前記開口から遠い側に、そのシャフトの軸心方向に長手となる長孔を有し、前記開口に近い側に、前記連結軸部を囲むことができるように筒状に形成された作用部を有する。この作用部は、その内周面に、自身の先端に向かうほど広がるように傾斜する作用面を有する。前記保持部は、前記連結軸部と前記作用部との間で、前記押圧部材を前記被押圧面と対向する位置に保持し得るように、その押圧部材が通される保持孔を有する。前記操作体は、前記収容孔の軸心回りに回動可能であって、回動操作されることで、アンクランプ位置とクランプ位置との間を移動する。前記被案内ピンは、前記長孔に挿入され、前記案内溝に係合するように設けられる。そして、前記被案内ピンは、前記操作体と一体となって回動し、かつ、前記案内溝に案内されて前記収容孔の軸心方向に、前記操作体を伴って移動する。前記弾性部材は、前記操作体に対し前記シャフトを前記開口側に弾性付勢する。
【0007】
そこで、前記操作体が前記アンクランプ位置にあるとき、前記案内溝に案内される前記被案内ピンは、前記開口から遠い側にあって、前記長孔の前記開口から遠い側の内面に当接し、前記シャフトは、その被案内ピンによって前記開口から遠い側に引き上げられた位置にあり、前記作用部と前記連結軸部との間で、前記押圧部材が前記連結軸部から離れる側に移動可能となって、前記連結軸部を前記開口に対し抜き挿し可能である。前記操作体が前記クランプ位置にあるとき、前記案内溝に案内される前記被案内ピンは、前記開口に近い側にあって、前記長孔の前記開口から遠い側の内面から離れ、前記弾性部材の弾性による付勢力が、前記シャフトの前記作用面を介して前記押圧部材に作用し、その押圧部材が、前記連結軸部の前記被押圧面を押圧して前記連結軸部を締付ける。そして、前記操作体が前記クランプ位置にあって、相対的に前記連結軸部が前記開口から引き抜かれる側に移動するような過大な外力が作用したとき、その連結軸部の前記被押圧面に押された前記押圧部材が前記作用面を押して、前記シャフトが、前記開口から遠ざかるよう移動すると、前記長孔の前記開口に近い側の内面が、前記被案内ピンに当たって、それ以上の前記シャフトの移動が制限され、前記押圧部材の前記被押圧面への係りが維持されて、前記連結軸部の前記開口からの抜け出しが阻止される。
【0008】
この固定装置によると、連結軸部は、第1固定材側に配される。そして、固定具は、第2固定材側に配される。そこで、固定具の操作体をアンクランプ位置にして、連結軸部を、固定具の固定具本体に設けられた収容孔にその開口から挿入する。このとき、被案内ピンは、開口から遠い側にあって、シャフトの長孔の、前記開口から遠い側の内面に当接し、この被案内ピンによって、シャフトは、前記開口から遠い側に引き上げられた位置にある。その後、操作体を、アンクランプ位置からクランプ位置まで回動操作すると、被案内ピンは、操作体とともに回動し、案内溝に案内されて、前記開口に近い側に移動し、シャフトの長孔の、前記開口から遠い側の内面から離れる。そこで、弾性部材の弾性による付勢力が、シャフトの作用面を介して押圧部材に作用し、その押圧部材が、連結軸部の被押圧面を押圧する。こうして、押圧部材が連結軸部を締付けて、連結軸部と固定具、ひいては、第1固定材と第2固定材とは、互いに固定される。ここで、相対的に連結軸部が前記開口から引き抜かれる側に移動するような過大な外力が作用したときは、連結軸部の被押圧面に押された押圧部材がシャフトの作用面を押して、シャフトが、前記開口から遠ざかるよう移動する。こうして、シャフトが移動すると、シャフトの長孔の、前記開口に近い側の内面が、案内溝に係合している被案内ピンに当たって、それ以上のシャフトの移動が制限される。このため、押圧部材の被押圧面への係りが維持されて、連結軸部の、前記開口からの抜け出しが阻止される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明に係る固定装置は、請求項1に記載の固定装置において、前記固定具は、前記保持部を有する保持体を備える。この保持体は、前記収容孔の軸心回りに回動可能に設けられる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係る固定装置は、請求項2に記載の固定装置において、前記固定具は、他の弾性部材を備える。他の弾性部材は、その弾性による付勢力が、前記弾性部材の付勢力よりも弱く、前記シャフトに対し前記保持体を前記開口側に弾性付勢する。
【0011】
また、請求項4に記載の発明に係る固定装置は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の固定装置において、前記案内溝は、前記収容孔の軸心方向に対し傾斜して前記開口に近づく傾斜溝と、その傾斜溝に続き前記収容孔の軸心方向と直交する横溝とを備える。そこで、前記操作体が前記アンクランプ位置にあるとき、前記被案内ピンは、前記案内溝の一端部である、前記傾斜溝側の端部にあり、前記操作体が前記クランプ位置にあるとき、前記被案内ピンは、前記案内溝の他端部である、前記横溝側の端部にある。
【0012】
また、請求項5に記載の発明に係る固定装置は、請求項4に記載の固定装置において、前記案内溝の他端部である、前記横溝側の端部には、前記開口から遠い側に窪む凹みが設けられており、前記操作体が前記クランプ位置にあるとき、前記被案内ピンは、前記凹みに係合する。
【0013】
また、請求項6に記載の発明に係る固定装置は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の固定装置において、前記固定具本体は、前記第1固定材とで前記第2固定材を挟み込むことができるように前記第2固定材に当接する受け部を備える。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る固定装置によれば、その締付け固定中に、相対的に連結軸部が開口から引き抜かれる側に移動するような過大な外力が作用したとき、シャフトの長孔の内面が、案内溝に係合している被案内ピンに当たって、シャフトの移動が制限されて、押圧部材の被押圧面への係りが維持されることから、連結軸部と固定具、ひいては、二つの固定材の互いの固定を確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の一実施の形態の、固定装置の斜視図である。
【
図4-1】同じく、操作体がアンクランプ位置にあるときの固定装置の平面図である。
【
図4-2】同じく、操作体を外した固定装置の斜視図である。
【
図4-3】同じく、
図4-1におけるA-A線による断面図である。
【
図4-4】同じく、
図4-3におけるB-B線による断面図である。
【
図5-1】同じく、操作体がアンクランプ位置とクランプ位置との途中位置にあるときの固定装置の平面図である。
【
図5-2】同じく、操作体を外した固定装置の斜視図である。
【
図5-3】同じく、
図5-1におけるC-C線による断面図である。
【
図5-4】同じく、
図5-3におけるD-D線による断面図である。
【
図6-1】同じく、操作体がクランプ位置にあるときの固定装置の平面図である。
【
図6-2】同じく、操作体を外した固定装置の斜視図である。
【
図6-3】同じく、
図6-1におけるE-E線による断面図である。
【
図6-4】同じく、
図6-3におけるF-F線による断面図である。
【
図7-1】同じく、操作体がクランプ位置にあって、相対的に連結軸部が開口から引き抜かれる側に移動するような過大な外力が作用したときの固定装置の、
図6-3相当図である。
【
図7-2】同じく、
図7-1におけるG-G線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1~
図7-2は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、第1固定材を示し、2は、第2固定材を示す。3は、第1固定材1と第2固定材2とを互いに着脱可能に固定するための、固定装置を示す。
【0018】
固定装置3は、第1固定材1側に配される連結軸部4aと、第2固定材2側に配される固定具5とを備える。連結軸部4aは、その外周面に、自身の先端に向かうほど広がるように傾斜する、被押圧面4bを有する。
【0019】
固定具5は、固定具本体6と、シャフト7と、保持部8aと、球状の押圧部材9と、操作体10と、被案内ピン11と、弾性部材12とを備える。固定具本体6は、前記連結軸部4aの軸心4cと同一方向を向く軸心6bを有する収容孔6aと、その収容孔6aを形成する周壁6cに沿って延びて被案内ピン11を案内する案内溝6dとを備える。ここで、収容孔6aは、前記連結軸部4aが抜き挿しされる開口6eを有する。
【0020】
シャフト7は、収容孔6a内にあって、そのシャフト7の軸心7aが収容孔6aの軸心6bと同一方向を向き、収容孔6aの軸心6b回りに回動可能、かつ、収容孔6aの軸心6b方向に移動可能となっている。また、シャフト7は、収容孔6aの開口6eから遠い側に、そのシャフト7の軸心7a方向に長手となる長孔7bを有し、収容孔6aの開口6eに近い側に、前記連結軸部4aを囲むことができるように筒状(詳しくは、円筒状)に形成された作用部7cを有する。この作用部7cは、その内周面に、自身の先端に向かうほど広がるように傾斜する作用面7dを有する。
【0021】
保持部8aは、連結軸部4aと作用部7cとの間で、押圧部材9を連結軸部4aの被押圧面4bと対向する位置に保持し得るように、その押圧部材9が通される保持孔8bを有する。
【0022】
操作体10は、収容孔6aの軸心6b回りに回動可能であって、回動操作されることで、締付け解除位置であるアンクランプ位置(
図4-1参照)と締付け位置であるクランプ位置(
図6-1参照)との間を移動する。
【0023】
被案内ピン11は、シャフト7の長孔7bに挿入され、固定具本体6の案内溝6dに係合するように設けられる。そして、被案内ピン11は、操作体10と一体となって収容孔6aの軸心6b回りに回動し、かつ、案内溝6dに案内されて収容孔6aの軸心6b方向に、操作体10を伴って移動する。
【0024】
弾性部材12は、操作体10に対しシャフト7を収容孔6aの開口6e側に弾性付勢する。
【0025】
そこで、
図4-1~
図4-4に示すように、操作体10が前記アンクランプ位置にあるとき、案内溝6dに案内される被案内ピン11は、収容孔6aの開口6eから遠い側にあって、シャフト7の長孔7bの、前記開口6eから遠い側の内面に当接し、シャフト7は、その被案内ピン11によって前記開口6eから遠い側に引き上げられた位置にあり、シャフト7の作用部7cと連結軸部4aとの間で、押圧部材9が連結軸部4a(詳しくは、被押圧面4b)から離れる側に移動可能となって、連結軸部4aを前記開口6eから抜き挿し可能となる。
【0026】
ここで、
図5-1~
図5-4に示すように、操作体10を、前記アンクランプ位置から前記クランプ位置に向かって回動(図示実施の形態においては、時計回り方向に回動)すると、被案内ピン11は、操作体10と一体となって収容孔6aの軸心6b回りに回動し、かつ、案内溝6dに案内されて前記開口6eに近づく側に移動する。そして、この被案内ピン11の移動に伴って、シャフト7もまた、前記開口6eに近づく側に移動し、その移動により、押圧部材9が、シャフト7の作用面7dに押されて連結軸部4a側に移動し、被押圧面4bに当接する。
【0027】
そして、
図6-1~
図6-4に示すように、操作体10が前記クランプ位置にあるとき、案内溝6dに案内される被案内ピン11は、収容孔6aの開口6eに近い側にあって、シャフト7の長孔7bの、前記開口6eから遠い側の内面から離れ、弾性部材12の弾性による付勢力が、シャフト7の作用面7dを介して押圧部材9に作用し、その押圧部材9が、連結軸部4aの被押圧面4bを押圧して連結軸部4aを引き込むように締付ける。
【0028】
また、
図7-1および
図7-2に示すように、操作体10が前記クランプ位置にあって、相対的に連結軸部4aが前記開口6eから引き抜かれる側に移動するような過大な外力が作用したとき、その連結軸部4aの被押圧面4bに押された押圧部材9がシャフト7の作用面7dを押して、シャフト7が、前記開口6eから遠ざかるよう移動すると、シャフト7の長孔7bの、前記開口6eに近い側の内面が、被案内ピン11に当たって、それ以上のシャフト7の移動が制限される。このため、押圧部材9の前記被押圧面4bへの係りが維持されて、連結軸部4aの前記開口6eからの抜け出しが阻止される。
【0029】
詳細には、固定具5は、前記保持部8aを有する保持体8を備える。この保持体8は、固定具本体6の収容孔6aの軸心6b回りに回動可能に設けられる。さらに、固定具5は、他の弾性部材13を備える。他の弾性部材13は、その弾性による付勢力が、弾性部材12の付勢力(詳しくは、弾性による付勢力)よも弱く、シャフト7に対して保持体8を収容孔6aの開口6e側に弾性付勢する。
【0030】
具体的には、第1固定材1と第2固定材2とは、板状に形成されている。そして、それら第1固定材1と第2固定材2とは、それらの向かい合う板面が密着するようにして互いに固定される。
【0031】
固定装置3は、前記連結軸部4aを含む連結軸部材4を備える。この連結軸部材4は、連結軸部4aの軸心4c方向に並ぶ、連結軸部4aと雄ねじ部4dとを有する。連結軸部4aは、略円柱状に形成される。そこで、連結軸部4aの先端側に、全周に渡ってV溝状に切り欠かれた凹部が設けられ、その凹部における、連結軸部4aの先端側の面が、前記被押圧面4bとなる。雄ねじ部4dは、連結軸部4aよりも小径に形成される。そして、連結軸部材4は、その雄ねじ部4dが、第1固定材1に形成された雌ねじ1aにねじ込まれることで、第1固定材1に取り付けられる。
【0032】
固定具5にあっては、固定具本体6は、円筒状に形成され、その内側が、横断面円形の前述する収容孔6aとなる。収容孔6aは、段付き孔であって、大径となる主孔6fと、その主孔6fに続き小径となる中間孔6gと、その中間孔6gに続きさらに小径となる前述する開口6eとを備える。そして、収容孔6aは、開口6eとは反対側(つまり、主孔6f)が、外方に開放している。
【0033】
この固定具本体6に設けられる前述の案内溝6dは、収容孔6aを形成する周壁6cを貫通しており、また、二つ設けられて、それらが、収容孔6aを挟んで対向位置する。この案内溝6dは、収容孔6aの軸心6b方向に対し傾斜して開口6eに近づく傾斜溝6hと、その傾斜溝6hに続き収容孔6aの軸心6b方向と直交する横溝6iとを備える。そこで、操作体10が前記アンクランプ位置にあるとき、被案内ピン11は、案内溝6dの一端部である、傾斜溝6h側の端部にあり(
図4-2参照)、操作体10が前記クランプ位置にあるとき、被案内ピン11は、案内溝6dの他端部である、横溝6i側の端部にある(
図6-2参照)。詳細には、案内溝6dの他端部である、横溝6i側の端部には、収容孔6aの開口6eから遠い側に窪む凹み6jが設けられている。そこで、操作体10が前記クランプ位置にあるとき、被案内ピン11は、凹み6jに係合する。
【0034】
また、固定具本体6は、第1固定材1とで第2固定材2を挟み込むことができるように第2固定材2に当接する受け部6kを備える。詳細には、受け部6kは、固定具本体6の基端(図示実施の形態においては、下端)付近が、外方に鍔状に突出して形成される。この受け部6kには、雌ねじ6mが設けられ、ボルト等の固着具14が、第2固定材2にあけられた取付孔2aを通って雌ねじ6mにねじ込まることで、固定具本体6、ひいては固定具5は、第2固定材2に取り付けられる。また、固定具本体6は、第1固定材1に向かう側に突出する突出部6nを有し、この突出部6nに、前記開口6eと前記中間孔6gとが設けられる。そして、この突出部6nが、第2固定材2にあけられた貫通孔2bに挿入される。
【0035】
シャフト7は、その軸心7a方向に、棒状のシャフト本体7eと前述の作用部7cとが並んで設けられる。そこで、シャフト本体7eに、前述の長孔7bが設けられ、また、シャフト本体7eには、作用部7c内に開口するように孔7fがあけられている。
【0036】
保持体8は、保持部8aが円筒状に形成され、その保持部8aには、その保持部8aを形成する周壁を貫通するようにして前述の保持孔8bが設けられる。図示実施の形態においては、保持孔8bは、四つ設けられ、それら保持孔8b、8b、8b、8bは、周方向に均等配置される。そして、それぞれの保持孔8bに、押圧部材9が挿入される。また、保持孔8bは、保持部8aの内側に臨む端部が、縮径されており、この縮径によって、押圧部材9は、保持部8aの内側に抜け出ることが阻止される。また、保持体8は、保持部8aの基端側を閉じる天壁8cを備えており、その天壁8cの中心部には、柱状の突部8dが設けられる。
【0037】
操作体10は、手で操作される操作部材10aと、補助部材10bとが、ビス15によって互いに止められている。操作部材10aは、円筒状に形成されて、固定具本体6の先端部分に被せられる。そして、操作部材10aは、その周面から、指示部10cが突出形成されている。図示実施の形態においては、指示部10cは、二つ設けられており、その内の一方が、固定具本体6(詳しくは、受け部6k)に表された表示6pを指し示す。表示6pとして、「ON」および「OFF」の文字と、その間の回動を指示する矢印が設けられている。ここで、「ON」の位置が、前記クランプ位置に相当し、「OFF」の位置が、前記アンクランプ位置に相当し、操作体10を操作することにより、締付けと締付け解除の両者を切替え操作することができる。なお、操作部材10aの内周面には、指示部10cの部分に、溝10dが形成され、この溝10dに被案内ピン11の先端部分が嵌まるようになっている(
図4-4参照)。
【0038】
補助部材10bは、円筒状に形成されて、収容孔6a(詳しくは、主孔6f)に、一部が挿入される。そして、補助部材10bの筒内には、シャフト7(詳しくは、シャフト本体7e)の一部が挿入される。また、補助部材10bには、横孔10eがあけられている。そこで、被案内ピン11は、案内溝6dと横孔10eと長孔7bとを貫通するように通される。
【0039】
弾性部材12は、例えば、圧縮コイルばねからなる。この弾性部材12は、シャフト7と操作体10との間に配置される。詳細には、弾性部材12は、収容孔6a(詳しくは、主孔6f)内において、シャフト7(詳しくは、シャフト本体7e)に嵌められて、シャフト本体7eから作用部7cに移る段部7gと、操作体10(詳しくは、補助部材10b)との間に配置される。図示実施の形態においては、弾性部材12は、二つ設けられ、それらが並列的に作用することで、その付勢力を高めている。
【0040】
他の弾性部材13は、例えば、圧縮コイルばねからなる。他の弾性部材13は、シャフト7と保持体8との間に配置される。詳細には、他の弾性部材13は、一端側がシャフト7の孔7fに挿入され、他端側が保持体8の突部8dに嵌められる。
【0041】
次に、以上の構成からなる固定装置3の作用効果について説明する。この固定装置3によると、連結軸部4aは、第1固定材1側に配される。そして、固定具5は、第2固定材2側に配される。そこで、固定具5の操作体10をアンクランプ位置にして、連結軸部4aを、固定具5の固定具本体6に設けられた収容孔6aにその開口6eから挿入する。このとき、被案内ピン11は、収容孔6aの開口6eから遠い側にあって、シャフト7の長孔7bの、前記開口6eから遠い側の内面に当接し、この被案内ピン11によって、シャフト7は、開口6eから遠い側に引き上げられた位置にある(
図4-3、
図4-4参照)。その後、操作体10を、アンクランプ位置からクランプ位置まで回動操作(図示実施の形態においては、時計回り方向に回動操作)すると、被案内ピン11は、操作体10とともに回動し、案内溝6dに案内されて、収容孔6aの開口6eに近い側に移動し、シャフト7の長孔7bの、前記開口6eから遠い側の内面から離れる。そこで、弾性部12材の弾性による付勢力が、シャフト7の作用面7dを介して押圧部材9に作用し、その押圧部材9が、連結軸部4aの被押圧面4bを押圧する。こうして、押圧部材9が連結軸部4aを締付け、連結軸部4aと固定具5、ひいては、第1固定材1と第2固定材2とは、互いに固定される(
図6-3、
図6-4参照)。ここで、
図7-1および
図7-2に示すように、相対的に連結軸部4aが収容孔6aの開口6eから引き抜かれる側に移動するような過大な外力が作用したときは、連結軸部4aの被押圧面4bに押された押圧部材9がシャフト7の作用面7dを押して、シャフト7が、前記開口6eから遠ざかるよう移動する。こうして、シャフト7が移動すると、シャフト7の長孔7bの、前記開口6eに近い側の内面が、案内溝6dに係合している被案内ピン11に当たって、それ以上のシャフト7の移動が制限される。このため、押圧部材9の被押圧面4bへの係りが維持されて、連結軸部4aの、前記開口6eからの抜け出しが阻止される。
【0042】
すなわち、この固定装置3によれば、その締付け固定中に、相対的に連結軸部4aが開口6eから引き抜かれる側に移動するような過大な外力が作用したとき、シャフト7の長孔7bの内面が、案内溝6dに係合している被案内ピン11に当たって、シャフト7の移動が制限されて、押圧部材9の被押圧面4bへの係りが維持されることから、連結軸部4aと固定具5、ひいては、二つの固定材1、2の互いの固定を確実に維持することができる。
【0043】
また、第1固定材1と第2固定材2の固定の解除にあたっては、操作体10を、クランプ位置からアンクランプ位置へと回動操作(図示実施の形態においては、反時計回り方向に回動操作)する。この回動操作により、被案内ピン11は、操作体10とともに回動し、案内溝6dに案内されて、収容孔6aの開口6eから遠い側に移動し、シャフト7は、その被案内ピン11によって、開口6eから遠い側に引き上げられる。そこで、シャフト7の作用部7cと連結軸部4aとの間で、押圧部材9が連結軸部4a(詳しくは、被押圧面4b)から離れる側に移動可能となり、これによって、連結軸部4aを前記開口6eから抜き出すことができる。
【0044】
また、押圧部材9を保持する保持体8は、収容孔6aの軸心6b回りに回動可能に設けられている。これにより、操作体10の回動操作に伴って、シャフト7が回動したとき、押圧部材9は、作用面7dを転がるとともに被押圧面4bを転がることができる。このため、押圧部材9や作用面7dや被押圧面4bの摩耗が低減されて、固定装置3の高寿命化を図ることができる。
【0045】
また、案内溝6dに、被案内ピン11が係合する凹み6jを設けることで、操作体10をクランプ位置に回動操作したとき、クリック感を得ることができ、また、操作体10を、そのクランプ位置に的確に保持することができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、第1固定材1と第2固定材2とは、板状に形成されていなくても、柱状に形成される等、どのような形状を有していてもよい。また、第1固定材1と第2固定材2とは、ベースと、そのベースに固定される冶具など、どのようなものでもよく、各種機械器具、冶具、工具、取付具その他広範囲に渡って本発明を実施することが可能である。
【0047】
また、案内溝6dは、二つでなくてもよく、一つであっても、三つ以上であってもよい。また、案内溝6dは、傾斜溝6hと横溝6iとを備え、その横溝6iに凹み6jが設けられるが、横溝6iを備えることなく、傾斜溝6hに凹み6jが設けられてもよい。また、案内溝6dは、傾斜溝6hと横溝6iとからなるも、その横溝6iに凹み6jが必ずしも設けられる必要はない。
【0048】
また、保持部8aは、保持体8に設けられて、収容孔6aの軸心6b回りに回動可能となっているが、例えば、保持部8aが、固定具本体6に一体となって設けられることで、その保持部8aが回動不能となっていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 第1固定材
2 第2固定材
3 固定装置
4a 連結軸部
4b 被押圧面
4c 連結軸部の軸心
5 固定具
6 固定具本体
6a 収容孔
6b 収容孔の軸心
6c 周壁
6d 案内溝
6e 開口
6h 傾斜溝
6i 横溝
6j 凹み
6k 受け部
7 シャフト
7a シャフトの軸心
7b 長孔
7c 作用部
7d 作用面
8a 保持部
8b 保持孔
9 押圧部材
10 操作体
11 被案内ピン
12 弾性部材
13 他の弾性部材