(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】有機質肥料の生産装置及び生産方法
(51)【国際特許分類】
C05F 3/06 20060101AFI20240402BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20240402BHJP
C05F 9/02 20060101ALN20240402BHJP
B09B 101/00 20220101ALN20240402BHJP
【FI】
C05F3/06 D ZAB
B09B3/40
C05F9/02 D
B09B101:00
(21)【出願番号】P 2023124270
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2023-07-31
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523290311
【氏名又は名称】ORGANIC ONE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真島 賢一郎
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-132677(JP,A)
【文献】特開2004-300014(JP,A)
【文献】特開2010-083742(JP,A)
【文献】特開2002-028608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05F
B09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を蒸煮分解処理する第一層と、
前記第一層の外側に沿って熱媒油が循環可能に形成される第二層と、からなる二層構造の分解処理部を有し、
前記第一層は、
回転軸柱を軸に回転運動して前記有機物を攪拌する攪拌板が設けられ、
前記攪拌板は、
四角形の板形状であって、
前記回転軸柱から延在する柱部材の先端に、延在方向に対して前記回転軸柱の処理時の回転方向に傾斜して形成され、
前記板形状の前記回転軸柱から最も遠い側面である、前記回転運動に伴い、前記第一層の内壁面と至近となる領域において前記有機物を内壁面に擦り付ける擦付部を有し、
前記擦付部より前記回転方向側に設けられる前記内壁面と対向する面において、前記四角形の対角線に沿うように攪拌エッジが形成され、
前記擦付部は、
前記領域において
、前記側面の四辺の内、水平方向と常に平行な二辺において、前記処理時の回転方向側の一辺が他の一辺よりも前記内壁面から遠くなるように傾斜して形成され、
前記第二層は、
前記熱媒油の循環流路に前記熱媒油を加熱及び温度管理する加熱器を有し、
前記分解処理部は、
前記加熱器で前記第二層を循環する前記熱媒油を加熱及び温度管理し、前記熱媒油からの熱伝達によって高温となった前記第一層の前記内壁面に前記有機物を擦り付けて間接加熱を行い、前記有機物に含有される水分を蒸発させる処理を行う有機質肥料生産装置。
【請求項2】
有機物を蒸煮分解処理する第一層と、
前記第一層の外側に沿って熱媒油が循環可能に形成される第二層と、からなる二層構造の分解処理部を有する装置を用いて、
前記熱媒油を所定の温度に加熱及び温度管理し、
前記第一層内を、
四角形の板形状であり、回転軸柱から延在する柱部材の先端に、延在方向に対して前記回転軸柱の処理時の回転方向に傾斜して形成され、前記回転軸柱を軸に回転運動する
前記四角形の対角線沿って攪拌エッジが形成される攪拌板で前記有機物を攪拌し、
前記板形状の前記回転軸柱から最も遠い側面であって、前記回転運動に伴い、前記第一層の内壁面と至近となる領域において
、前記側面の四辺の内、水平方向と常に平行な二辺において、前記処理時の回転方向側の一辺が他の一辺よりも前記内壁面から遠くなるように傾斜して形成される擦付部によって、前記第一層の内壁面と至近となる領域で前記有機物を前記内壁面に擦り付け、
前記有機物が含有する水分が蒸発することで発生する水蒸気を前記第一層から排出する、工程を、
前記有機物が特定の温度になるまで継続する有機質肥料生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機質肥料の生産装置及び生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農業に用いる堆肥(特殊肥料)として、例えば鶏の畜糞に発酵処理を施して生産される発酵鶏糞等が知られている。家畜の畜糞は野菜の育成に不可欠なリン、カリウム、少量だが窒素の成分を含んでいるため、肥料として一般的に用いられる。
【0003】
畜糞の発酵処理は好気性微生物の活動により行われ、通常、発酵処理中の畜糞は発酵熱によって温度が上昇し、サルモネラ菌、大腸菌、ブドウ球菌などの病原菌やウイルス等は発酵期間中に発酵熱(およそ80℃)によって死滅することで、人や野菜にとって安全な肥料として活用することが可能となる。発酵期間は、30日~40日間程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発酵処理を施して生産される堆肥(特殊肥料)は、発酵工程において、温室効果ガスであるメタンガスや一酸化二窒素を排出し、その際、有機物に含有される窒素成分の内、およそ半分が発酵により空気中の酸素と結合して亜酸化窒素となり大気中に揮散し損失してしまう。これにより、発酵処理を施した堆肥(特殊肥料)だけでは、農作物の生産性を高めるために必要な窒素成分を賄えないため、通常は、化学肥料等(化石燃料・ナフサ等)によって必要な窒素成分やその他の成分が補われる。
【0006】
しかしながら、長期的に化学肥料を使用し続けると、土壌内での微生物の活動が低下し、土の団粒構造や根圏環境を悪化させ、重金属類を堆積させ土壌環境が悪化する。このような土壌で野菜を作り続けた場合、年々、収穫する野菜に含まれる栄養価が徐々に低下することとなる。
【0007】
この問題に対し、農林水産省では特別栽培農産物(減化学肥料・減農薬栽培)を推進しているが、減らした化学肥料分の成分を補えないことには農作物の生産性を高めることは困難である。また、化学肥料の代替肥料となり得る、成分を多く含む有機質肥料を恒常的に調達することは世界中で困難であり、従来の発酵鶏糞等の堆肥で足りない成分を補うには、堆肥における肥料成分濃度の低さを堆肥の投入量で補うことにより、多大な労力がかかることや悪臭被害が生じる等の問題があった。
【0008】
本発明はこのような問題に対処することを目的とする。すなわち、発酵処理では大気中に揮散してしまう窒素を肥料内に封じ込めること、長期的な化学肥料の使用に伴う土壌環境の汚染やの悪化等の問題を回避できる有機質肥料を生産すること、処理工程において含有有機分を粉砕し土壌微生物の餌として活用し、土壌再生も行う有機質肥料を生産すること、農作物の生産性を高めながら、肥料の大量投入によって生じる問題を回避できる有機質肥料を生産すること、等が本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明に係る有機質肥料生産装置は、有機物を蒸煮分解処理する第一層と、前記第一層の外側に沿って熱媒油が循環可能に形成される第二層と、からなる二層構造の分解処理部を有し、前記第一層は、回転軸柱を軸に回転運動して前記有機物を攪拌する攪拌板が設けられ、前記攪拌板は、四角形の板形状であって、前記回転軸柱から延在する柱部材の先端に、延在方向に対して前記回転軸柱の処理時の回転方向に傾斜して形成され、前記板形状の前記回転軸柱から最も遠い側面である、前記回転運動に伴い、前記第一層の内壁面と至近となる領域において前記有機物を内壁面に擦り付ける擦付部を有し、前記擦付部より前記回転方向側に設けられる前記内壁面と対向する面において、前記四角形の対角線に沿うように攪拌エッジが形成され、前記擦付部は、前記領域において、前記側面の四辺の内、水平方向と常に平行な二辺において、前記処理時の回転方向側の一辺が他の一辺よりも前記内壁面から遠くなるように傾斜して形成され、前記第二層は、前記熱媒油の循環流路に前記熱媒油を加熱及び温度管理する加熱器を有し、前記分解処理部は、前記加熱器で前記第二層を循環する前記熱媒油を加熱及び温度管理し、前記熱媒油からの熱伝達によって高温となった前記第一層の前記内壁面に前記有機物を擦り付けて間接加熱を行い、前記有機物に含有される水分を蒸発させる処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る有機質肥料生産方法は、有機物を蒸煮分解処理する第一層と、前記第一層の外側に沿って熱媒油が循環可能に形成される第二層と、からなる二層構造の分解処理部を有する装置を用いて、前記熱媒油を所定の温度に加熱及び温度管理し、前記第一層内を、四角形の板形状であり、回転軸柱から延在する柱部材の先端に、延在方向に対して前記回転軸柱の処理時の回転方向に傾斜して形成され、前記回転軸柱を軸に回転運動する前記四角形の対角線沿って攪拌エッジが形成される攪拌板で前記有機物を攪拌し、前記板形状の前記回転軸柱から最も遠い側面であって、前記回転運動に伴い、前記第一層の内壁面と至近となる領域において、前記側面の四辺の内、水平方向と常に平行な二辺において、前記処理時の回転方向側の一辺が他の一辺よりも前記内壁面から遠くなるように傾斜して形成される擦付部によって、前記第一層の内壁面と至近となる領域で前記有機物を前記内壁面に擦り付け、前記有機物が含有する水分が蒸発することで発生する水蒸気を前記第一層から排出する、工程を、前記有機物が特定の温度になるまで継続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する有機質肥料生産装置及び生産方法によると、発酵処理では大気中に揮散してしまう窒素を肥料内に封じ込めること、長期的な化学肥料の使用に伴う土壌環境の悪化等の問題を回避できる有機質肥料を生産すること、処理工程において含有有機分を粉砕し土壌微生物の餌として活用し、土壌再生も行う有機質肥料を生産すること、農作物の生産性を高めながら、肥料の大量投入によって生じる問題を回避することを可能とする有機質肥料を生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る有機質肥料生産装置の構成ブロック図。
【
図2】本発明の実施形態に係る分解処理部の正面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る分解処理部の右側面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る蒸煮分解処理時における分解処理部の右側面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る蒸煮分解処理工程を示した説明図。
【
図7】本発明の実施形態において生産された有機質肥料(鶏糞)と従来の発酵鶏糞及び乾燥鶏糞の含有成分比較図。
【
図8】本発明の実施形態において生産された有機質肥料(豚糞、牛糞)と従来の特殊肥料(豚糞、牛糞)の含有成分比較図。
【
図9】本発明の実施形態において生産された有機質肥料の化学分析値を示す図。
【
図10】本発明の実施形態において生産された有機質肥料における有機物の分解性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一の符号は同一の機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0014】
本発明は、有機物を蒸煮分解処理する工程を含む、発酵による窒素の損失を抑え、従来の堆肥(特殊肥料)より同一原料において窒素成分を多く含有する有機質肥料を生産する、有機質肥料生産装置及び有機質肥料生産方法を提供する。蒸煮分解処理とは、被処理物(有機物)を、分解層の内部において、高温の内壁面に擦り付けて、間接加熱によって有機物を熱分解しながら、有機物に含まれる水分を蒸発させ、さらに、有機物が特定の温度に到達するまで攪拌させつつ加熱する処理をいう。具体的な内容については後述する。
【0015】
(有機質肥料生産装置の構成)
以下、
図1を参照して有機質肥料生産装置1の構成ついて説明する。有機質肥料生産装置1は、分解処理部10と、通気口30と、回転駆動部40と、加熱器50と、冷却部60とを備えている。
【0016】
分解処理部10は、第一層(以下、分解層)11と、分解層11の外側に沿って形成される第二層(以下、オイル層)12とから形成されており、すなわち、分解処理部10は、分解層11とオイル層12の二層構造となっている。それぞれの層はステンレス仕様であって、分解層11の外層のステンレスの厚さは約10ミリメートル、オイル層12の外層のステンレスの厚さは約4ミリメートルとなっている。分解層11は、側面が円柱の軸方向と直行する方向に間延びした略楕円柱形状となっており(
図3参照)、オイル層12は分解層11の外側に沿って熱媒油が循環可能な循環流路が設けられている。本実施形態において、オイル層12を循環する熱媒油にはなるべく放熱しにくい食用油を用いる。熱媒油に用いる食用油はエネルギー効率が高く、蓄熱及び温度コントロールがしやすいものほどよい。また、長期間(例えば、連続運転200日~350日程度)の使用が可能なものがよい。
【0017】
分解層11は、楕円柱の軸方向が水平方向と平行となる向きに設けられており、側面は鉛直方向に間延びしている。また、分解層11は、分解処理部10の外部から分解層11の楕円柱の底面を軸方向に回転軸柱23が貫通している。回転軸柱23は円柱形状であり、回転軸柱23は分解処理部10の外部に設けられる回転駆動部40によって軸を中心に回転する。回転軸柱23は、分解層11の楕円形状の底面の重心部分よりも鉛直方向下方部分を貫通している(
図2及び
図3参照)。
【0018】
回転軸柱23の側面からは、分解層11の側面に向かって回転軸柱23の側面と垂直な方向に回転羽20が延在している。回転羽20は、回転駆動部40によって、回転軸柱23が回転することで一体に回転する。回転軸柱23及び回転羽20は、後述する
図3の分解層11の右側面図において、蒸煮分解処理時は右回りで回転する。実施例において回転羽20は3基であるが、これに限定されず、装置の規模や回転羽20の大きさによって、設けられる回転羽20は1基であってもよいし、その他の複数基であってもよい。回転羽20の具体的な内容については後述する。
【0019】
オイル層12の循環流路は、加熱器50と接続されており、循環流路を循環する熱媒油は加熱器50によって加熱されて循環する。加熱器50は、熱媒油を所定の温度に加熱し、温度管理する。本実施形態では、目標温度を200℃として熱媒油を加熱する。オイル層12には、加熱器50の上流に熱媒油温度センサ51が設けられており、熱媒油の温度は逐一計測、管理されている。分解層11の外側に沿って循環する200℃に管理された熱媒油は、熱伝達によって分解層11の内壁面11Aを加熱する。また、図示しないが、外気による分解処理部10の放熱を抑制し温度管理をし易くするために、オイル層12の外側、すなわち、分解処理部10の外側を覆うように断熱材を設けてもよい。
【0020】
また、分解処理部10には、被処理有機物を分解層11に投入するための投入部13と、蒸煮分解処理が完了した有機質肥料を排出するための排出部14が設けられている。排出部14には、蒸煮分解処理後の有機質肥料の内、固形化して残ってしまった有機質肥料を粉末状にする粉砕機(不図示)が設けられている。
【0021】
通気口30は、外気を分解層11に吸入する外気吸入口31と、分解層11内の内気を外部に排出する内気排出口32とが設けられる。具体的には、外気吸入口31には、外気を吸気して分解層11に取り入れるための圧送機310が接続され、有機物の蒸煮分解処理中において高温となった分解層11内に圧縮した外気を送り込む。内気排出口32には、分解層11内の内気を排出するための排気ファン320が設けられており、主に、蒸煮分解処理によって発生した水蒸気を分解層11内から外部に排出する。外気吸入口31と圧送機310、及び内気排出口32と排気ファンは、例えば通気ダクト300で接続される。
【0022】
また、通気口30は、分解処理部10の鉛直方向において高い位置に設けられている。前述したように回転軸柱23は、略楕円形状の分解層11の底面において、重心部分よりやや鉛直方向下方を貫通して設けられているため、回転軸柱23を中心に回転する回転羽20は、分解層11の鉛直方向上側の内壁面11Aには届かない。すなわち、通気口30は、回転羽20の回転時において、回転羽20が付近を通過しないような位置に設けられている。これにより、例えば、蒸煮分解処理時において、分解層11内の有機物が通気口30内に入り込んで塞いでしまうことで、外気の吸入、及び内気の排出を妨げることを抑制する。
【0023】
通気口30を設けることで、蒸煮分解処理によって発生する水蒸気を分解層11から排出し、分解層11内に水蒸気を滞留させないことで、蒸煮分解処理の効率を向上させる。また、有機物を200℃で加熱することによって硫化水素等の悪臭の元となる成分を熱分解させ、水蒸気と共に臭気を内気排出口32から排出することで、蒸煮分解処理後の有機物にはほとんど悪臭が残らない。
【0024】
また、外気吸入口31から吸気する空気は圧送機310による圧縮によって温度が上昇するため、分解層11内の温度管理の外乱の要因とはなり難い。仮に、吸気する空気温度が分解層11内の温度と乖離しており、温度管理の外乱の要因となることが懸念される場合には、別途、加熱器を設けて加熱した空気を取り入れるとしてもよい。このため、外気温が低温である地域において蒸煮分解処理する場合であっても外気温の影響を受けない。
【0025】
蒸煮分解処理中の分解層11内の温度の計測は、内気排出口32に設けられている温湿度センサ321によって、内気排出口32から排出される空気の温度を計測することでされる。また、内気排出口32から排出される空気の湿度を計測することによって、蒸煮分解処理中の有機物が含有する水分の蒸発が完了したか否かを判断できる。例えば、蒸煮分解処理中において、内気排出口32から排出される空気の湿度が常湿となったら有機物の含有水分の蒸発が完了していると判断する。
【0026】
回転駆動部40は、有機質肥料生産装置1の内部において分解処理部10の外側に設けられ、歯車機構によって回転軸柱23を回転させる。回転駆動部40は、具体的には、例えばモーターや、変速機が一体に設けられた所謂ギヤードモーターや、サイクロ減速機(登録商標)であってよい。
【0027】
加熱器50は、前述したように熱媒油が循環するオイル層12に接続されて、熱媒油の加熱及び温度管理を行う。オイル層12の循環流路において、加熱器50の上流に設けられる熱媒油温度センサ51によって熱媒油の温度を計測し、過熱の際には、例えばサーモスタット制御によって加熱器50を停止させる等して温度管理し、有機物の焦げ付きを防止する。加熱器50の例としては、熱媒ヒーターまたは熱媒ボイラー(電気、ガス、水素等)であってよい。
【0028】
冷却部60は、ロータリーバルブ61A,61B、圧送ブロワ62、搬送ダクト63で構成される。具体的には、分解処理部10の排出部14から排出された高温の有機質肥料は、ロータリーバルブ61Aによって搬送ダクト63に流入する。搬送ダクト63は、圧送ブロワ62と接続されており、搬送ダクト63に流入した有機質肥料は、圧送ブロワ62による風圧によって搬送ダクト63内を搬送される。搬送ダクト63内を搬送される有機質肥料は、圧送ブロワ62の風によって冷却される。冷却された有機質肥料は、搬送ダクト63からロータリーバルブ61Bに流入し、ロータリーバルブ61Bからフレコンバックに放出される。実施形態における有機質肥料の冷却方法は、例の一つであって、具体的な冷却方法はこれに限定されない。
【0029】
また、図示はされていないが、有機質肥料生産装置1には、被処理中の有機物の状態を確認するための小口取出口や、停電等によって工場設備が停止した場合において分解処理部10内の発火を鎮火するスプリンクラーが備えられている。
【0030】
次に、
図2、
図3を用いて、回転羽20について説明する。
図2、
図3に示すように、回転羽20は回転軸柱23の側面から垂直に延在する柱部材22と、柱部材22の先端に設けられる攪拌板21とで構成されている。具体的には、回転軸柱23と柱部材22は一体成型ではなく、柱部材22は、柱固定部22Aによって回転軸柱23に固定されて延在している。また、攪拌板21は、攪拌エッジ211と擦付部212とを備えている。
【0031】
攪拌板21は、四角形の板形状であり、攪拌板21は、柱部材22の延在方向に対して、回転軸柱23の蒸煮分解処理時の回転(
図3における右回り)方向に面を傾斜させて柱部材22の先端に設けられている(
図3参照)。また、攪拌板21において柱部材22が接続されていない側の面には、四角形面の対角線に沿うように攪拌エッジ211が設けられ、攪拌エッジ211は攪拌板21の面から垂直に形成されている。図示の攪拌エッジ211は略三角形状であるが、これに限定されず、例えば四角形状等の異なる形状であってもよい。
【0032】
擦付部212は、攪拌板21の側面の内、回転軸柱23から最も遠い位置に設けられる側面を指す(
図3参照)。擦付部212である攪拌板21の側面は、攪拌板21の面に対して垂直には形成されておらず、後述する擦付部212が有機物を分解層11の内壁面11Aに擦り付ける領域において、分解層11の内壁面11Aに平行もしくは略平行になるように形成されている。略平行形状である場合は、擦付部212の面の4辺のうち、水平方向と平行な二辺において、蒸煮分解処理時の回転方向側の辺が、もう一方の辺よりも内壁面11Aから遠くなる様に傾斜していることが望ましい。そのように擦付部212が形成されることで、蒸煮分解処理時に有機物を分解層11の内壁面11Aに擦り付ける力が加わりやすくなる。
【0033】
また、
図2、
図3で図示される投入部13、排出部14及び通気口30は図示の位置、形状、大きさに限られるものではない。例えば、通気口30は、回転羽20の動作によって有機物が通気口30内に入り難い位置に設けられるのであれば、図示した以外の位置に設けられているものであってもよいし、複数設けられていてもよい。
【0034】
(蒸煮分解処理)
次に
図4、
図5を用いて蒸煮分解処理について説明する。蒸煮分解処理とは、有機物を分解層11の中で攪拌させながら内壁面11Aに擦り付けて間接加熱によって有機物を熱分解し、有機物が含有する水分を蒸発させる処理をいう。分解層11に投入される有機物が含有する水分量は約40%~60%である。
図4及び
図5において、有機物は右肩下がり斜線で示している。
【0035】
蒸煮分解処理時は、分解層11の外側のオイル層12を200℃に管理される熱媒油が循環しているため、分解層11の内壁面11Aは熱伝達によって約200℃となっており、回転羽20の擦付部212で、有機物を約200℃の内壁面11Aに擦り付けて有機物を熱分解し、含有水分を蒸発させながら、攪拌エッジ211で攪拌する。具体的には、
図4に示すように、分解層11の鉛直方向下方に溜まる有機物を回転羽20の攪拌エッジ211で掬い取って分解層11内で攪拌し、回転羽20の回転において擦付部212が分解層11の内壁面11Aに近い領域において、有機物を分解層11の内壁面11Aに擦り付ける。
【0036】
擦付部212による有機物の内壁面11Aへの擦り付けは、図示の一点鎖線Cより鉛直方向下方の領域おいて、例えば、A―B地点間を擦付部212が通過する間に行われる。前述したように、回転羽20が延在する回転軸柱23は、略楕円形状の分解層11の底面の重心部分よりやや鉛直方向下方を貫通して設けられるため、回転羽20は、分解層11の鉛直方向上側の内壁面11Aには届かないため、一点鎖線Cより鉛直方向上方では擦り付けはほとんどされない。
【0037】
図5に示すように擦付部212は、回転羽20の回転によって、矢印Tで示すように推移し、A地点において、擦付部212は、有機物を分解層11の内壁面11Aへの擦り付けを開始する。擦付部212は、A―B地点間において、分解層11の内壁面11Aと平行もしくは略平行となるように形成されていることが望ましく、例えば、図示の擦付部212は、分解層11の内壁面11Aに対して略平行に形成されている。
【0038】
分解層11内のA―B地点間における矢印T上に位置する有機物は、擦付部212の推移に伴い、擦付部212と分解層11の内壁面11Aの間に入り込んで、矢印Pで示す方向に擦付部212によって分解層11の内壁面11Aに擦り付けられる。
【0039】
また、攪拌エッジ211は、攪拌板21の四角形面の対角線に沿うように形成されているため、有機物が溜まる分解層11の鉛直方向下方付近において、攪拌エッジ211によって有機物は左右方向に攪拌される。
【0040】
また、前述した分解層及びオイル層のステンレスの厚さは、蒸煮分解処理において擦付部212が有機物を分解層11の内壁面11Aに擦り付ける内圧に耐え得る厚さとして、分解層の外層を10ミリメートル、オイル層の外層を4ミリメートルとしている。例えば、攪拌板21を厚くすることによる擦付部212の面積の拡大や、擦り付ける力を上昇させるために擦付部212の形成角度を変更する等して、蒸煮分解処理時の分解層11の内圧が上昇する恐れがある場合は、発生する内圧に耐え得る厚さでステンレス層は形成される。
【0041】
蒸煮分解処理によって発生した水蒸気は、適宜、内気排出口32から排出され、外気吸入口31から外気を取り込むことで、分解層11内に水蒸気を滞留させないことで、効率的に温度を上昇させて蒸煮分解処理を行う。蒸煮分解処理は、有機物の温度が約150℃~160℃となるまで継続する。
【0042】
(処理工程)
次に、
図6を用いて有機質肥料生産装置1による有機質肥料の生産工程を説明する。まず、加熱器50で、オイル層12を循環する熱媒油が200℃に到達するまで加熱する(ステップS01)。熱媒油の温度は、オイル層12において加熱器50の上流側に設けられる熱媒油温度センサ51で検知して加熱器50の出力を調整して管理する。過熱の際には、例えば、サーモスタット制御によって、加熱器50を停止させて有機物の焦げ付きを防止する。熱媒油の温度が200℃に到達したら、分解層11に有機物を投入する(ステップS02)。分解層11に投入される有機物の水分含有量は40%~60%である。
【0043】
有機物の投入が完了したら蒸煮分解処理を開始する(ステップS03)。投入された有機物は、分解層11内で回転羽20によって攪拌されながら内壁面11Aに擦り付けられ温度が上昇していき、熱分解による有機の分解、及び含有する水分の蒸発をさせていく。まず、有機物の投入時温度~80℃の間において、サルモネラ菌、大腸菌、ブドウ球菌、有害種子などの病原菌が殺菌される(ステップS04)。その後、さらに温度が上昇し、有機物の温度がおよそ100℃~110℃となった段階で温度の上昇が一時的に停止する。有機物に水分が含まれている状態では100℃~110℃以上への温度上昇はしない。
【0044】
100℃~110℃の蒸煮分解処理によって有機物に含有される水分は完全に蒸発する(ステップS05)。有機物に含有される水分が蒸発しきると、有機物は再び温度上昇し始める。また、蒸煮分解処理によって発生した水蒸気は、臭気と共に内気排出口32から有機質肥料生産装置1外に排出され、水分が蒸発しきると有機物の悪臭はほとんどしなくなり、ほぼ無臭状態となる。
【0045】
110℃から温度上昇し始めると、次に、有機質破砕処理が行われる(ステップS06)。有機質破砕処理を実行する110℃~160℃の間では、水分が無くなった状態の有機物を擦付部212によってさらに分解層11の内壁面11Aに擦り付け、含有するセルロース等の有機物を破砕し細かい粉末状にする。有機物の温度が約150~160℃になるまで有機質破砕処理を行う。
【0046】
有機物の温度が150~160℃に到達したら有機質破砕処理を終了する(ステップS07)。有機物の温度は、温湿度センサが常湿を検知したタイミングで小口取出口から少量を取り出して確認して判断する。有機質破砕処理が終了したら、蒸煮分解処理を終了する(ステップS08)。分解処理部10の排出部14から有機質肥料を排出する(ステップS09)。排出の際に、蒸煮分解処理で粉末状に仕切れなかった有機質肥料は、排出部14に設けられる粉砕機によって粉末状にされる。
【0047】
排出部14から排出した有機質肥料は、ロータリーバルブ61Aから搬送ダクト63に流入し、有機質肥料を搬送しながら圧送ブロワ62の冷風を用いて強制冷却処理を行う(ステップS10)。搬送ダクト63に流入した有機質肥料は、圧送ブロワ62の風圧によって搬送される。圧送ブロワによる風の温度は約40℃程度であり、搬送ダクト63を搬送される有機質肥料は、圧送ブロワ62の風によって60℃程度まで冷却される。60℃まで冷却された有機質肥料は搬送ダクト63からロータリーバルブ61Bに流入し、ロータリーバルブ61Bからフレコンバック70に排出される(ステップS11)。
【0048】
ステップS01からステップS11までの一連の処理時間は、有機物の水分含有量(40%~60%)によって異なるが、およそ5~8時間程度で完了することができる。有機物が含有する水分量は、例えば季節等(気温)によって家畜が摂取する水分量によって異なる。
【0049】
このような温度管理の元で、蒸煮分解処理を含む工程によって生産される有機質肥料は、従来の堆肥(特殊肥料)に含まれる窒素含有量より多くの窒素成分を含有する。
【0050】
(含有成分の比較)
図7を用いて、本実施形態における被処理有機質肥料と、従来の肥料の含有成分を比較する。図示の肥料の原料は全て鶏糞である。
図7に記す製品の成分含有量は、実際に販売されている製品に記載される成分含有量の値であり、試験結果の成分含有量は、委託試験を行い、委託先から提出された試験結果証明書に記載された成分含有量の値である。計量項目については、製品に記載される項目に則って窒素全量、リン酸全量、カリウム全量の3項目とする。また、委託試験における含有成分の計量方法は何れも肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)とした。
【0051】
ここでは、比較対象に発酵鶏糞と乾燥鶏糞を用いる。発酵鶏糞は、鶏糞を発酵させてから乾燥したものである。乾燥鶏糞は、鶏糞をそのまま熱風で乾燥させたものである。
【0052】
まず、発酵鶏糞と本実施形態における被処理鶏糞について比較する。発酵鶏糞の第1製品に含有される窒素全量は、成分全体の3.5%、第2製品に含有される窒素全量は、成分全体の2.5%、第3製品に含有される窒素全量は、成分全体の2.3%であり、これら3つの製品の平均窒素全量は、成分全体の2.77%となる。これに対し、本実施形態における被処理鶏糞は、第1試験結果における被処理鶏糞が含有する窒素全量は、成分全体の5.23%、第2試験結果における被処理鶏糞が含有する窒素全量は、成分全体の4.8%、第3試験結果における被処理鶏糞が含有する窒素全量は、成分全体の6.05%であり、これら3つの試験結果の平均窒素全量は、成分全体の5.36%となり、本実施形態における被処理鶏糞は、販売される従来の発酵鶏糞と比べて平均窒素全量が2.59%上回る結果となった。
【0053】
次に、乾燥鶏糞と本実施形態における被処理鶏糞について比較する。乾燥鶏糞は、発酵鶏糞と異なり発酵処理を施していないため、発酵鶏糞と比べて窒素成分が揮発して損失していない。そのため、発酵鶏糞と比べて多くの窒素成分を含有している特徴がある。乾燥鶏糞の第1製品に含有される窒素全量は、成分全体の4.3%、第2製品に含有される窒素全量は、成分全体の4.5%、第3製品に含有される窒素全量は、成分全体の4.3%であり、これら3つの製品の平均窒素全量は成分全体の4.37%となる。これに対し、本実施形態における被処理鶏糞が含有する平均窒素全量は、成分全体の5.36%であるため、本実施形態における被処理鶏糞は、販売される従来の乾燥鶏糞と比べて平均窒素全量が0.99%上回る結果となった。
【0054】
以上の試験結果により、本実施形態において生産された被処理鶏糞は、従来の堆肥(特殊肥料)より多くの窒素を含有することがわかる。特に、有機物を乾燥させて有機物の含有水分を蒸発させる乾燥鶏糞と比べて、0.99%ほど本実施形態における被処理鶏糞に含有される窒素成分が多いことから、有機質肥料に窒素成分をより多く保つには、単に乾燥させるだけでは不可能であり、蒸煮分解処理工程を含む本実施形態の処理工程特有の効果であることがわかる。
【0055】
ここまでの説明では、蒸煮分解処理を行う有機物の原料に鶏糞を用いて説明したが、有機物はこれに限定されない。
図8に、実際に販売される発酵豚糞及び発酵牛糞と、本実施形態における蒸煮分解処理によって生産された豚糞及び牛糞の含有成分について示す。
【0056】
販売製品の含有成分は、実際に販売されている製品に記載される成分含有量の値であり、試験結果の成分含有量は、委託試験を行い、委託先から提出された試験結果証明書に記載された成分含有量の値である。計量項目については、製品に記載される項目に則って窒素全量、リン酸全量、カリウム全量の3項目とする。また、委託試験における含有成分の計量方法は、被処理豚糞及び被処理牛糞共に、窒素全量はデバルタ合金硫酸法、リン酸全量はバナドモリプテン酸法、カリウム全量は原子及光法とした。
【0057】
まず、発酵豚糞と本実施形態における被処理豚糞について比較する。発酵豚糞に含有される窒素全量は、成分全体の3.4%である。これに対し、本実施形態における被処理豚糞が含有する窒素全量は、成分全体の4.3%であり、本実施形態における被処理豚糞は、販売される従来の発酵豚糞と比べて窒素全量が0.9%上回る結果となった。
【0058】
次に、発酵牛糞と本実施形態における被処理牛糞について比較する。発酵牛糞に含有される窒素全量は、成分全体の0.63%である。これに対し、本実施形態における被処理牛糞が含有する窒素全量は、成分全体の1.4%であり、本実施形態における被処理牛糞は、販売される従来の発酵牛糞と比べて窒素全量が0.77%上回る結果となった。
【0059】
以上の結果から、発酵処理による有機物の分解でなく、本実施形態における蒸煮分解処理による熱分解をすることで、窒素成分が大気中に揮散してしまうことを抑制し、発酵処理をしないことで、温室効果ガスの発生量を低減させることができ、従来の堆肥(特殊肥料)よりも多くの窒素成分を含有する有機質肥料を生産することが可能となる。
【0060】
(有機物の分解性比較)
次に、
図9、
図10を用いて、本実施形態における蒸煮分解処理を含む工程によって生産された有機質肥料の有機物の分解性についての試験結果を示す。
図9、
図10に示した試験結果は、委託試験を行い、委託先から提出された試験結果証明書に記載された分析値である。
【0061】
試験資材は、蒸煮分解処理を施した牛糞、牛糞+食品残渣、豚糞、豚糞+食品残渣、鶏糞、鶏糞+食品残渣の6点とした。食品残渣を加えた資材については、食品残渣は全体の10%以下程度となるように加えられている。食品残渣を加えたものについて試験する意図は、従来、発酵処理を施す畜糞の多くが、全体の10%以下程度となるように食品残渣を加えられて発酵処理されるため、同条件での試験を行うためである。
【0062】
また、調査項目については、常法により、水分、窒素全量、炭素全量、ADF(酸性デタージェント繊維)、リグニン、粗灰分、ケイ酸とした。また、有機物の分解性については、易分解性有機物を炭素、難分解性有機物をADF(酸性デタージェント繊維)とした。ADF(酸性デタージェント繊維)は、家畜糞堆肥を含む複数の有機質資材について、ADF含量と土壌中での3ヶ月間有機物残存量(難分解性有機物)との間に回帰式が原点を通る高い正の相関関係(r2乗=0.921)が認められ、さらに、ADF中炭素量と3ヶ月間炭素残存量が略一致したことからADFは難分解性有機物そのものであると考えられる。
【0063】
(化学分析値)
図9において水分以外の単位は乾物1gあたりのmgである。
図9に示すように、「牛糞」及び「牛糞+食」の成分値は、粗灰分が若干低いことを除いて一般的な牛糞堆肥と略同様な値であった。また、ケイ酸含量が高く、ケイ酸質肥料として利用できる可能性が示された。
「豚糞」及び「豚糞+食」は、一般的な豚糞堆肥成分値と比べ、全窒素、炭素、ADF、リグニンが高く粗灰分が低かった。これは、有機物に富んでいることを示す。また、「豚糞」と「豚糞+食」の間には特徴的な差は認められなかった。
「鶏糞」及び「鶏糞+食」の成分値は、炭素が高く、粗灰分が低いことを除いては一般的な鶏糞堆肥と略同様な値であった。
【0064】
(有機物の分解性)
図10に示すグラフは、縦軸がADF含量(難分解性有機物)、横軸が14日間炭素分解量(易分解性有機物)である。また、「+食」は、食品残渣を加えたものであることを示す。
図10に示すように、「牛糞」の易分解性有機物は少なく、難分解性有機物は多かった。これは、他の牛糞堆肥と同様な傾向である。「牛糞+食」の易分解性有機物は、「牛糞」より多かったが、難分解性有機物は同程度であった。「鶏糞」は「牛糞」より易分解性有機物が多かったが、難分解性有機物は同程度であった。「豚糞+食」、「鶏糞」、「鶏糞+食」の易分解性有機物は他の試験資材と比べ多かった。また、「鶏糞」と「鶏糞+食」の難分解性有機物は少なかった。
【0065】
このように、試験資材内では差が認められたが、他の家畜糞堆肥のプロット全体と比較してみると、それぞれ対応する家畜糞堆肥の範囲内にあり、易分解性有機物、難分解性有機物とも大きな差はないものと考えられる。
【0066】
以上の結果から、蒸煮分解処理による有機物の分解性、すなわち、有機質肥料の性質は一般的な家畜糞堆肥と同程度であることがわかった。これは、易分解性有機物による障害の可能性が低いことと、家畜糞と同程度の土壌改良効果を持つことを示し、すなわち、蒸煮分解処理は、発酵処理と略同等に有機物を分解する効果があることが示される。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は説明した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1:有機質肥料生産装置、10:分解処理部、
11:分解層、11A:内壁面、12:オイル層、13:投入部、14:排出部、
20:回転羽、21攪拌板、211:攪拌エッジ、212:擦付部、
22:柱部材、22A:柱固定部、23:回転軸柱、
30:通気口、31:外気吸入口、32:内気排出口、300:通気ダクト、
310:圧送機、320:排気ファン、321:温湿度センサ、
40:回転駆動部、50:加熱器、51:熱媒油温度センサ、
60:冷却部、61A,61B:ロータリーバルブ、63:搬送ダクト、
70:フレコンバック
【要約】 (修正有)
【課題】大気中に揮散する窒素を肥料内に封じ込めること、長期的な化学肥料の使用に伴う土壌環境の悪化等の問題を回避する有機質肥料を生産すること、処理工程において含有有機分を粉砕し土壌微生物の餌として活用し、土壌再生も行う有機質肥料を生産すること等を課題とする。
【解決手段】有機物を蒸煮分解処理する第一層と、第一層の外側に沿って熱媒油が循環可能に形成される第二層と、からなる二層構造の分解処理部を有し、第一層は、有機物を攪拌する攪拌板が設けられ、撹拌板は、有機物を内壁面に擦り付ける擦付部を有し、第二層は、熱媒油の循環流路に熱媒油を加熱及び温度管理する加熱器を有し、分解処理部は、加熱器で第二層を循環する熱媒油を加熱及び温度管理し、熱媒油からの熱伝達によって高温となった第一層の内壁面に有機物を擦り付けて間接加熱を行い、有機物に含有される水分を蒸発させる処理を行う有機質肥料生産装置、及び方法を提供する。
【選択図】
図4