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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】歩行補助機構、および歩行補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/00 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
A61H3/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023199761
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2019186435の分割
【原出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2024020534
(43)【公開日】2024-02-14
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2018191220
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512031183
【氏名又は名称】有限会社スワニー
(74)【代理人】
【識別番号】100169188
【弁理士】
【氏名又は名称】寺岡 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】原 克幸
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-135804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0374887(US,A1)
【文献】特表2014-508010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の前後方向の歩行を補助する歩行補助機構であって、
前記利用者の腰部側に配置される腰側リンクと、
前記利用者の大腿部に沿って配置されると共に、股関節側揺動軸によって、前記利用者の前後方向に相対揺動可能に前記腰側リンクに連結される大腿側リンクと、
前記利用者の下腿部に沿って配置されると共に、膝関節側揺動軸によって、前記前後方向に相対揺動可能に前記大腿側リンクに連結される下腿側リンクと、
前記大腿側リンクと前記下腿側リンクとの相対角が大きくなる膝伸ばし姿勢を維持するよう、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクの相対揺動を規制する膝伸ばし姿勢維持機構と、
前記大腿側リンクが前記腰側リンクに対して所定の基準相対角を成す位置よりも後方側に位置するとき、前記膝伸ばし姿勢維持機構の前記規制を解除して、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクとの相対角が小さくなる膝曲げ姿勢になることを許容する膝曲げ姿勢許容機構と、
を備え、
前記下腿側リンクは、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクが膝伸ばし姿勢となる状態において、前記利用者の高さ方向の下方側から上方側に進むにしたがって前記大腿側リンクに接近する案内方向に延びる下腿側規制軸の案内部を有し、
前記下腿側規制軸は、前記案内方向に沿って移動可能に前記下腿側規制軸の前記案内部に係合することを特徴とする、
歩行補助機構。
【請求項2】
前記利用者の腰部に装着する装着部を備え、
前記装着部は、
前記利用者の腰部の回りに装着する腰回り側ベルト部と、
前記利用者の股部において前記利用者を下方側から支持するように装着する股部側ベルト部と、
を有することを特徴とする、
請求項1に記載の歩行補助機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の歩行補助機構を前記利用者の両足に1つずつ設けた歩行保持装置であって、
2つの前記歩行補助機構の腰側リンクを一体的に結合する連結部材と、
2つの前記歩行補助機構間に架設されて2つの前記大腿側リンクに連結される架設リンクと、
前記架設リンクの両端近傍を前記前後方向に案内する架設リンク案内部と、
を備え、
前記架設リンクは、前記歩行補助機構それぞれの前記前後方向の動作に連動して、一端側と他端側の移動方向が逆方向になることを特徴とする、
歩行保持装置。
【請求項4】
利用者の前後方向の歩行を補助する歩行補助機構であって、
前記利用者の腰部側に配置される腰側リンクと、
前記利用者の大腿部に沿って配置されると共に、股関節側揺動軸によって、前記利用者の前後方向に相対揺動可能に前記腰側リンクに連結される大腿側リンクと、
前記利用者の下腿部に沿って配置されると共に、膝関節側揺動軸によって、前記前後方向に相対揺動可能に前記大腿側リンクに連結される下腿側リンクと、
前記大腿側リンクと前記下腿側リンクとの相対角が大きくなる膝伸ばし姿勢を維持するよう、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクの相対揺動を規制する膝伸ばし姿勢維持機構と、
前記大腿側リンクが前記腰側リンクに対して所定の基準相対角を成す位置よりも後方側に位置するとき、前記膝伸ばし姿勢維持機構の前記規制を解除して、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクとの相対角が小さくなる膝曲げ姿勢になることを許容する膝曲げ姿勢許容機構と、
前記利用者の一方側の足が前方側に揺動する場合、他方側の足は後方側に揺動するような姿勢となることを保証する歩行姿勢保証部と、
を備えることを特徴とする、
歩行補助機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の歩行を補助する歩行補助機構、および歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行を補助する歩行補助システムとして、例えば、ベルトアセンブリと、ベルトアセンブリに結合されるエキソテンドンと、関節動作可能な脚フレームを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。脚フレームには、膝プーリが備えられており、使用者は膝曲げ可能となっている。エキソテンドンは、ケーブルおよびバネにより伸縮可能に構成される。エキソテンドンのケーブルは、膝プーリを含む脚フレームにも巻かれており、ケーブルを通じてバネの弾性エネルギーは、脚フレームに伝わる。使用者の足が後方側にあるとき、バネは伸長して弾性エネルギーを蓄える。使用者の足が前方に移動するときに、バネは収縮して、弾性エネルギーを放出する。その弾性エネルギーが使用者の足の前方移動を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2012/125765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下半身麻痺の状態にある人は、下半身に力が入らないので、歩行時に、両足が膝曲げ状態になると倒れてしまう可能性がある。しかしながら、上記歩行補助システムは、両足の膝曲げ状態を許容する。これでは、下半身麻痺の状態にある人に上記歩行補助システムを用いることは困難である。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、歩行時に、歩行者の前方側の足は膝を伸ばした状態を維持する共に、歩行者の後方側の足は膝曲げを許容する歩行補助機構、および歩行補助装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の歩行補助機構は、利用者の前後方向の歩行を補助する歩行補助機構であって、前記利用者の腰部側に配置される腰側リンクと、前記利用者の大腿部に沿って配置されると共に、股関節側揺動軸によって、前記利用者の前後方向に相対揺動可能に前記腰側リンクに連結される大腿側リンクと、前記利用者の下腿部に沿って配置されると共に、膝関節側揺動軸によって、前記前後方向に相対揺動可能に前記大腿側リンクに連結される下腿側リンクと、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクとの相対角が大きくなる膝伸ばし姿勢を維持するよう、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクの相対揺動を規制する膝伸ばし姿勢維持機構と、前記大腿側リンクが前記腰側リンクに対して所定の基準相対角を成す位置よりも後方側に位置するとき、前記膝伸ばし姿勢維持機構の前記規制を解除して、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクとの相対角が小さくなる膝曲げ姿勢になることを許容する膝曲げ姿勢許容機構と、前記利用者の一方側の足が前方側に揺動する場合、他方側の足は後方側に揺動するような姿勢となることを保証する歩行姿勢保証部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の歩行補助機構において、前記膝伸ばし姿勢維持機構は、前記下腿側リンクにおいて前記膝関節側揺動軸から離れた位置に設けられ、前記下腿側リンクと一体となって移動する下腿側規制軸と、前記大腿側リンクにおいて前記膝関節側揺動軸から離れた位置に設けられ、前記大腿側リンクと一体となって移動する大腿側規制軸と、前記下腿側規制軸を揺動軸として前記下腿側リンクに対して相対揺動可能に設けられる第一規制側リンクと、前記第一規制側リンクにおいて前記下腿側規制軸から離れた位置に設けられる中間規制軸と、前記大腿側規制軸を揺動軸として前記大腿側リンクに対して相対揺動可能に設けられると共に、前記中間規制軸を介して前記第一規制側リンクと相対揺動可能に連結される第二規制側リンクと、前記中間規制軸を基準とした前記第一規制側リンクと前記第二規制側リンクの開き具合を意味する相対開角が180度又は180度以上となるブレーキ姿勢で、前記第一規制側リンクと前記第二規制側リンクの前記相対開角の上限を画定するストッパ機構と、を有し、前記膝関節側揺動軸と、前記下腿側規制軸と、前記大腿側規制軸と、前記中間規制軸によって四節リンク機構が構成され、前記第一規制側リンクと前記第二規制側リンクが前記ブレーキ姿勢となる場合に、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクが膝伸ばし姿勢となり、前記第一規制側リンクと前記第二規制側リンクの前記相対開角が180度未満となる場合に、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクが膝曲げ姿勢となることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の歩行補助機構において、前記膝伸ばし姿勢維持機構は、前記第一規制側リンクと前記第二規制側リンクの前記相対開角が大きくなる方向に、前記第一規制側リンクおよび/または前記第二規制側リンクを付勢する付勢部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の歩行補助機構において、前記膝伸ばし姿勢維持機構は、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクが膝伸ばし姿勢となる方向に前記下腿側リンクを付勢する付勢部を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の歩行補助機構において、前記膝曲げ姿勢許容機構は、前記第一規制側リンク、前記第二規制側リンク及び前記中間規制軸の少なくともいずれかに設けられる連結体と、前記連結体を移動させることで、前記第一規制側リンクと前記第二規制側リンクの前記相対開角を180度未満に変位させる移動機構と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の歩行補助機構において、前記移動機構は、前記腰側リンクに対する前記大腿側リンクの相対角の変化に連動して、前記連結体を移動させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の歩行補助機構において、前記移動機構は、一方が前記腰側リンクに繋がると共に、他方が前記連結体に繋がる連動部材を有し、前記大腿側リンクが前記腰側リンクに対して前記所定の基準相対角を成す位置よりも後方側に位置するとき、前記連動部材が前記連結体を移動させて、前記第一規制側リンクと前記第二規制側リンクの前記相対開角を180度未満とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の歩行補助機構において、前記連動部材がワイヤであり、前記ワイヤが前記連結体を引っ張ることで、前記連結体を移動させることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の歩行補助機構において、前記連動部材に接触して前記連動部材の経路を変位させる接触部が前記股関節側揺動軸に対して径方向にずれて配置されており、前記腰側リンクと前記大腿側リンクが相対揺動する動作に連動して、前記接触部が前記腰側リンクに接近・離反することで、前記連動部材が前記大腿側リンクに対して相対移動されて、前記連動部材の経路が変位されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の歩行補助機構において、前記移動機構は、前記腰側リンクと前記大腿側リンクが相対揺動する動作に連動して、前記連動部材を巻き取る巻取り機構を有し、前記連動部材は、前記大腿側リンクが前記腰側リンクに対して前記所定の基準相対角を成す位置よりも後方側に位置するとき、前記巻取り機構により巻き取られた状態にあることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の歩行補助機構において、前記巻取り機構は、前記股関節側揺動軸を中心に回動すると共に、前記連動部材の一端側が固定されるレバー部材と、前記股関節側揺動軸を中心に前記前記大腿側リンクと共に揺動すると共に、前記レバー部材に係合する係合部材と、前記レバー部材の回動を規制する回動規制部と、を有し、前記レバー部材は、揺動する前記係合部材に押圧されて回動し、前記回動規制部により前記レバー部材の回動が規制されると、前記係合部材は前記レバー部材との間に位相差が生じて、前記レバー部材により前記連動部材が巻き取られることを特徴とする。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の歩行補助機構は、利用者の前後方向の歩行を補助する歩行補助機構であって、前記利用者の腰部側に配置される腰側リンクと、前記利用者の大腿部に沿って配置されると共に、股関節側揺動軸によって、前記利用者の前後方向に相対揺動可能に前記腰側リンクに連結される大腿側リンクと、前記利用者の下腿部に沿って配置されると共に、膝関節側揺動軸によって、前記前後方向に相対揺動可能に前記大腿側リンクに連結される下腿側リンクと、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクとの相対角が大きくなる膝伸ばし姿勢を維持するよう、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクの相対揺動を規制する膝伸ばし姿勢維持機構と、前記大腿側リンクが前記腰側リンクに対して所定の基準相対角を成す位置よりも後方側に位置するとき、前記膝伸ばし姿勢維持機構の前記規制を解除して、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクとの相対角が小さくなる膝曲げ姿勢になることを許容する膝曲げ姿勢許容機構と、を備え、前記下腿側リンクは、前記大腿側リンクと前記下腿側リンクが膝伸ばし姿勢となる状態において、前記利用者の高さ方向の下方側から上方側に進むにしたがって前記大腿側リンクに接近する案内方向に延びる下腿側規制軸の案内部を有し、前記下腿側規制軸は、前記案内方向に沿って移動可能に前記下腿側規制軸の前記案内部に係合することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の歩行補助機構において、前記利用者の腰部に装着する装着部を備え、前記装着部は、前記利用者の腰部の回りに装着する腰回り側ベルト部と、前記利用者の股部において前記利用者を下方側から支持するように装着する股部側ベルト部と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の歩行補助装置は、上記のいずれかに記載の歩行補助機構を前記利用者の両足に1つずつ設けた歩行保持装置であって、2つの前記歩行補助機構の腰側リンクを一体的に結合する連結部材と、2つの前記歩行補助機構間に架設されて2つの前記大腿側リンクに連結される架設リンクと、前記架設リンクの両端近傍を前記前後方向に案内する架設リンク案内部と、を備え、前記架設リンクは、前記歩行補助機構それぞれの前記前後方向の動作に連動して、一端側と他端側の移動方向が逆方向になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の歩行補助機構および歩行補助装置によれば、歩行時に、歩行者の前方側の足は膝を伸ばした状態を維持する共に、歩行者の後方側の足は膝曲げを許容するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態における歩行補助装置の正面図である。
図2】本発明の第一実施形態における歩行補助装置を利用者が装着したときの正面図である。
図3】本発明の第一実施形態における歩行補助装置の側面図である。
図4】(A)~(C)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置で足が前方側から後方側に移動するときの様子を時系列で順に並べた歩行補助機構の側面図である。
図5】(A)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の膝伸ばし姿勢維持機構においてブレーキ姿勢の状態を示す図である。(B)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の膝伸ばし姿勢維持機構においてブレーキ姿勢が解除されて凸姿勢になった状態を示す図である。
図6】本発明の第一実施形態における歩行補助装置の膝伸ばし姿勢維持機構においてブレーキ姿勢の変形例を示す図である。
図7】(A)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の膝伸ばし姿勢維持機構においてブレーキ姿勢の状態を示す図である。(B)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の膝伸ばし姿勢維持機構においてブレーキ姿勢が解除されて凸姿勢になった状態を示す図である。
図8】(A)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の膝伸ばし姿勢維持機構における移動範囲限定部の変形例を示す図である。(B)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の膝伸ばし姿勢維持機構における移動範囲限定部の別の変形例を示す図である。
図9】(A)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の大腿側リンクよりも高さ方向の上方側の側面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の大腿側リンクよりも高さ方向の下方側の側面図である。
図10】(A),(B)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置で足が前方側から後方側に移動するときの様子を時系列で順に並べた歩行補助機構の大腿側リンクよりも高さ方向の上方側の側面図である。
図11】(A),(B)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の変形例で足が前方側から後方側に移動するときの様子を時系列で順に並べた歩行補助機構の大腿側リンクよりも高さ方向の上方側の側面図である。
図12】本発明の第一実施形態における歩行補助装置の別の変形例である。
図13】(A)~(C)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の別の変形例で足が前方側から後方側に移動するときの様子を時系列で順に並べた歩行補助機構の大腿側リンクよりも高さ方向の上方側の側面図である。
図14】(A)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の大腿側リンクよりも高さ方向の上方側の背面図である。(B)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置の平面概略図である。
図15】本発明の第一実施形態における歩行補助装置を装着した利用者が歩行する様子を示す側面図である。
図16】(A)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置において一方側の歩行補助機構が前方側に進み、他方側の歩行補助機構が後方側にある場合の平面概略図である。(B)は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置において一方側の歩行補助機構が後方側にあり、他方側の歩行補助機構が前方側に進んだ場合の平面概略図である。
図17】本発明の第一実施形態における歩行補助装置の利用者が歩行動作を行ったときの時間Tと角度γとの関係を示す図である。
図18】本発明の第二実施形態における歩行補助装置の正面図である。
図19】本発明の第二実施形態における歩行補助装置を利用者が装着したときの正面図である。
図20】(A)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置の装着部の平面図である。(B)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置を太ももの太い利用者が装着した際の装着部の平面図である。
図21】(A)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置の第二ベルト部および連結機構により補助部に連結される前の斜視図である。(B)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置の第二ベルト部が連結機構により補助部に連結された際の平面図である。
図22】本発明の第二実施形態における歩行補助装置の側面図である。
図23】本発明の第二実施形態における歩行補助装置の膝伸ばし姿勢維持機構の側面図である。
図24】(A),(B)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置の四節リンク機構を膝伸ばし姿勢のままで動作させる様子を時系列に並べた側面図である。
図25】(A),(B)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置の四節リンク機構を動作させて、膝曲げ姿勢にした様子を時系列に並べた側面図である。
図26】本発明の第二実施形態における歩行補助装置の四節リンク機構を動作させて、最大に膝曲げさせた様子を示す側面図である。
図27】(A)~(C)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置で足が前方側から後方側に移動するときの様子を時系列で順に並べた歩行補助機構の側面図である。
図28】(A)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置の大腿側リンクが腰側リンクに対して成す相対角θがθ2の場合の歩行補助装置の側面図である。(B)は、本発明の第二実施形態における歩行補助装置の大腿側リンクが腰側リンクに対して成す相対角θが基準相対角θ1の場合の歩行補助装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0023】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態における歩行補助装置1は、利用者の歩行を補助するものである。歩行補助装置1は、例えば、装着部2と、左右一対の腰側リンク3と、左右一対の大腿側リンク4と、左右一対の股関節側揺動軸5と、左右一対の下腿側リンク6と、左右一対の膝関節側揺動軸7と、左右一対の膝伸ばし姿勢維持機構8と、左右一対の膝曲げ姿勢許容機構9と、歩行姿勢保証部10と、を備える。このうち、腰側リンク3と、大腿側リンク4と、股関節側揺動軸5と、下腿側リンク6と、膝関節側揺動軸7と、膝伸ばし姿勢維持機構8と、膝曲げ姿勢許容機構9と、により、歩行補助機構1Aが構成される。歩行補助装置1は、左右一対の歩行補助機構1Aが利用者の左右に配置される。
【0024】
なお、図2に示すように、歩行補助装置1を装着した際の利用者900の前後方向を、歩行補助装置1の前後方向と見做し、以下において、単に前後方向Zと呼ぶ。歩行補助装置1を装着した際の利用者900の高さ方向を、歩行補助装置1の高さ方向と見做し、以下において、単に高さ方向Yと呼ぶ。歩行補助装置1を装着した際の利用者900の幅方向を、歩行補助装置1の幅方向と見做し、以下において、単に幅方向Xと呼ぶ。
【0025】
<装着部>
図1および図2を参照して、装着部2について説明する。装着部2は、図2に示すように、利用者900の腰部910付近に巻き付けて、利用者900の腰部910付近に装着されるものである。装着部2は、図1に示すように、腰回り側ベルト部25により構成される。腰回り側ベルト部25は、利用者900の腰部910回りに巻かれて装着されるものであり、例えば、腰側ベルト部22と、第一腹側ベルト部23と、第二腹側ベルト部24と、連結機構27と、(図示しない)長さ調整部と、を有する。
【0026】
腰側ベルト部22は、利用者900の腰部910を覆うものである。そして、腰側ベルト部22は、後述する腰側連結部材100または腰側リンク3等の腰側ベルト部22の周囲に位置するものに取り付けられる。具体的に腰側ベルト部22は、自身の長さ方向が左右一対の腰側リンク3の間において歩行補助装置1の幅方向Xに延在すると共に、自身の長さ方向の両端近傍が歩行補助装置1の前後方向Zの前方(Z2)側に折り返されるように設けられる。また、腰側ベルト部22は、例えば、帯状に形成される。腰側ベルト部22は、主として可撓性を有する材料により形成される。具体的に腰側ベルト部22は、例えば、ナイロン等の合成樹脂によりシート状に織られた態様や、シート状に形成されたスポンジをカバーで包んだ態様が挙げられる。
【0027】
第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は、図1に示すように、帯状に形成される。そして、第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は、腰側ベルト部22の帯幅よりも小さい帯幅を有する。第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は、主として可撓性を有する材料により形成される。具体的に第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は、例えば、ナイロン等の合成樹脂によりシート状に織られた態様、シート状に形成されたスポンジをカバーで包んだ態様、低反発素材で形成された態様が一例として挙げられる。
【0028】
第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は、図1に示すように、腰側ベルト部22の長さ方向の両端(図1では左右端)を起点として腰側ベルト部22の長さ方向に延長されるように腰側ベルト部22の途中部分または両端に繋がっている。つまり、第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は、腰側ベルト部22の長さ方向の両端側から歩行補助装置1の前後方向Zの前方(Z2)側(利用者900の腹側)に延在する。
【0029】
連結機構27は、第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24を連結させるものであり、第一連結部27A、および第二連結部27Bを有する。第一連結部27A、および第二連結部27Bは、それぞれ、第一腹側ベルト部23、および第二腹側ベルト部24の先端またはその近傍に設けられる。そして、第一連結部27Aと第二連結部27Bは、相互に着脱可能に連結できる構造を有する。連結機構27として、例えば、マジックテープ(登録商標)によるもの、ボタンによるもの、差し込み具および差し込まれるとロックして差し込み具と連結するバックルが一例として挙げられる。第一連結部27Aおよび第二連結部27Bが連結することにより、第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は連結される。
【0030】
利用者900が第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24を装着する際、図2に示すように、第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は腹側に巻かれる。そして、第一連結部27Aおよび第二連結部27Bを連結させる。この際、第一連結部27Aおよび第二連結部27Bは、利用者900の腹(下腹部)の正面側に位置する。これにより、装着部2は、利用者900の腰部910回りに装着される。一方、第一連結部27Aおよび第二連結部27Bの連結を解除されると、利用者900の腰部910回りに巻きつけられた第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24は、利用者900の腹から離れる。
【0031】
(図示しない)長さ調整部は、第一腹側ベルト部23および/または第二腹側ベルト部24における利用者900の腹側を締め付ける長さを調整するものである。長さ調整部は、例えば、第一連結部27Aおよび/または第二連結部27Bを第一腹側ベルト部23および/または第二腹側ベルト部に沿って相対移動させる。第一連結部27Aまたは第二連結部27Bがこのように構成されると、利用者900に装着される第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24の長さを実質的に調整することができる。なお、長さ調整部は、以上の構成に限定されるものではなく、その他の構成であってもよい。
【0032】
<腰側リンク>
図1図3を参照して、腰側リンク3について説明する。腰側リンク3は、図2に示すように、利用者900の腰部910付近に配置されるリンクである。腰側リンク3は、それぞれ利用者900の左右両側に一つずつ配置される。
【0033】
そして、腰側リンク3は、図1および図3に示すように、ベースリンク30と、補助部31と、を有する。ベースリンク30は、大腿側リンク4に連結されるリンクである。ベースリンク30は、利用者900の前後方向Zに延びる姿勢をとる。
【0034】
補助部31は、図1および図3に示すように、前後方向Zに延びる姿勢をとった状態のベースリンク30の高さ方向Yの上方(Y1)側に延びる姿勢をとった状態でベースリンク30に連結される。なお、ベースリンク30および補助部31は、一体形成されてもよい。補助部31は、把持部31Aを有する。把持部31Aは、利用者以外の第三者が把持する部分であり、補助部31における高さ方向Yの上方(Y1)側の先端付近に設けられる。
【0035】
<大腿側リンク、股関節側揺動軸>
図1図5を参照して、大腿側リンク4、および股関節側揺動軸5について説明する。大腿側リンク4は、図2および図3に示すように、利用者900の大腿部920に沿って配置される。そして、大腿側リンク4は、図3に示すように、大腿側リンク本体部40と、第一大腿側凸部41と、第二大腿側凸部42と、大腿側延長部43と、により構成される。
【0036】
大腿側リンク本体部40は、大腿側リンク4のうち、股関節側揺動軸5よりも高さ方向Yの下方(Y2)側を構成する部分である。大腿側リンク本体部40は、例えば、細長い板状の板状体により構成される。板状体は、自身の長手方向が利用者900の大腿部920の延びる方向に略平行になるように配置される。大腿側延長部43は、大腿側リンク4のうち、股関節側揺動軸5よりも高さ方向Yの上方(Y1)側に延長される部分である。
【0037】
第一大腿側凸部41は、図5(A),(B)に示すように、膝関節側揺動軸7の近傍の大腿側リンク本体部40の背面40Aを起点として、前後方向Zの後方(Z1)側に凸となる部分である。第二大腿側凸部42は、図3に示すように、第一大腿側凸部41よりも高さ方向Yの上方(Y1)側の大腿側リンク本体部40の背面40Bを起点として、前後方向Zの後方(Z1)側に凸となる部分である。第一大腿側凸部41および第二大腿側凸部42は、大腿側リンク本体部40と一体となって移動する。第一大腿側凸部41および第二大腿側凸部42は、大腿側リンク本体部40と一体形成されてもよいし、別部材として大腿側リンク本体部40に連結されてもよい。
【0038】
股関節側揺動軸5は、図3に示すように、利用者900の股関節930付近に配置される。そして、股関節側揺動軸5は、幅方向X(図3の紙面に垂直な方向)に延びる。
【0039】
大腿側リンク4は、図3に示すように、股関節側揺動軸5を介して、腰側リンク3に連結される。つまり、大腿側リンク4および腰側リンク3は、股関節側揺動軸5を軸として揺動可能に股関節側揺動軸5に連結される。このため、大腿側リンク4は、図4(A)~(C)に示すように、腰側リンク3に対して前後方向Zに相対揺動可能となる。
【0040】
<下腿側リンク、膝関節側揺動軸>
図1図5を参照して、下腿側リンク6、および膝関節側揺動軸7について説明する。下腿側リンク6は、図2および図3に示すように、利用者900の下腿部940に沿って配置される。そして、下腿側リンク6は、図3に示すように、下腿側リンク本体部60と、下腿側凸部61と、により構成される。
【0041】
下腿側リンク本体部60は、例えば、利用者900の下腿部940の背面側において、膝下から脹脛を経て足裏までを覆う平面状の平面状部材により構成される。利用者900が歩行補助装置1を装着する場合、下腿部940における足裏は、上記平面状部材(下腿側リンク本体部60)の載置面60Aに載せられる。下腿側凸部61は、例えば、概ね膝関節側揺動軸7付近において、下腿側リンク本体部60を起点として前後方向Zの後方(Z1)側に凸となる部分である。なお、下腿側凸部61は、下腿側リンク本体部60のその他の部分から凸となっていてもよい。
【0042】
下腿側凸部61は、下腿側リンク本体部60と一体となって移動する。なお、下腿側凸部61は、下腿側リンク本体部60と一体形成されてもよいし、別部材として下腿側リンク本体部60に連結されてもよい。
【0043】
膝関節側揺動軸7は、図3に示すように、利用者900の膝関節950付近に配置される。そして、膝関節側揺動軸7は、幅方向X(図3の紙面に垂直な方向)に延びる。
【0044】
下腿側リンク6は、図3に示すように、膝関節側揺動軸7を介して大腿側リンク4に連結される。つまり、下腿側リンク6は、膝関節側揺動軸7を軸として揺動可能に膝関節側揺動軸7に連結される。このため、下腿側リンク6は、図4(B),(C)に示すように、大腿側リンク4に対して前後方向Zに相対揺動可能となる。
【0045】
<膝伸ばし姿勢維持機構>
図3図8を参照して、膝伸ばし姿勢維持機構8について説明する。膝伸ばし姿勢維持機構8は、大腿側リンク4と下腿側リンク6との相対角β(図4(A)~(C)参照)が大きくなる膝伸ばし姿勢を維持するよう、大腿側リンク4と下腿側リンク6の相対揺動を規制するものである。膝伸ばし姿勢とは、歩行補助装置1を装着した利用者900が膝を伸ばした状態となるような大腿側リンク4および下腿側リンク6の姿勢を指す。膝伸ばし姿勢において大腿側リンク4および下腿側リンク6との相対角βは、略180度付近となる。そして、膝伸ばし姿勢維持機構8は、図3に示すように、例えば、下腿側規制軸80と、大腿側規制軸81と、第一規制側リンク82と、中間規制軸83と、第二規制側リンク84と、ストッパ機構85と、を有する。
【0046】
<下腿側規制軸>
下腿側規制軸80は、図5(A),(B)に示すように、下腿側リンク6において膝関節側揺動軸7よりも前後方向Zの後方(Z1)側に設けられる。具体的に下腿側規制軸80は、例えば、下腿側凸部61における前後方向Zの後方(Z1)側の先端62付近に設けられる。下腿側規制軸80は、下腿側凸部61と一体となって移動する。そして、下腿側規制軸80は、幅方向X(図5(A),(B)の紙面に垂直な方向)に延びる。
【0047】
<大腿側規制軸>
大腿側規制軸81は、図5(A),(B)に示すように、大腿側リンク4において膝関節側揺動軸7よりも前後方向Zの後方(Z1)側に設けられる。具体的に大腿側規制軸81は、大腿側リンク4の第一大腿側凸部41に設けられる。大腿側規制軸81は、大腿側リンク4(第一大腿側凸部41)と一体となって移動する。そして、大腿側規制軸81は、幅方向Xに延びる。
【0048】
また、下腿側凸部61は、第一大腿側凸部41によりも前後方向Zの後方(Z1)側まで延びる。このため、大腿側規制軸81は、下腿側規制軸80よりも膝関節側揺動軸7に近位な位置に位置する。
【0049】
<第一規制側リンク、中間規制軸、第二規制側リンク>
第一規制側リンク82は、図5(A),(B)に示すように、下腿側規制軸80を揺動軸として下腿側凸部61(下腿側リンク6)に対して相対揺動可能に、自身の一端付近が下腿側規制軸80を介して下腿側凸部61(下腿側リンク6)に連結される。第一規制側リンク82は、例えば、楕円柱体により構成されるが、これに限定されるものではなく、その他の形状のもので構成されてもよい。
【0050】
中間規制軸83は、下腿側規制軸80よりも前後方向Zの前方(Z2)側に設けられる。また、中間規制軸83は、前後方向Zにおいて、下腿側規制軸80よりも膝関節側揺動軸7に近位な位置、かつ、大腿側規制軸81よりも膝関節側揺動軸7に遠位な位置に設けられる。つまり、中間規制軸83は、前後方向Zにおいて、下腿側規制軸80と大腿側規制軸81の間に位置する。本実施形態において中間規制軸83は、例えば、第一規制側リンク82の他端付近に設けられる。そして、中間規制軸83は、幅方向X(図5(A),(B)の紙面に垂直な方向)に延びる。
【0051】
第二規制側リンク84は、大腿側規制軸81を揺動軸として大腿側リンク4に対して相対揺動可能に、自身の一端付近が大腿側規制軸81を介して第一大腿側凸部41(大腿側リンク4)に連結される。第二規制側リンク84は、例えば、楕円柱体により構成されるが、これに限定されるものではなく、その他の形状のもので構成されてもよい。また、第二規制側リンク84は、自身の他端付近において、中間規制軸83を介して第一規制側リンク82と相対揺動可能に連結される。中間規制軸83は、第一規制側リンク82ではなく第二規制側リンク84に一体的に設けられてもよいし、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84とは別部材として第一規制側リンク82および第二規制側リンク84の他端付近の軸孔に差し込まれてもよい。
【0052】
<四節リンク機構>
本実施形態では、図5(A),(B)に示すように、下腿側凸部61(下腿側リンク6)と、第一規制側リンク82と、第二規制側リンク84と、第一大腿側凸部41(大腿側リンク4)とが、それぞれ膝関節側揺動軸7と、下腿側規制軸80と、大腿側規制軸81と、中間規制軸83と、によって相対揺動可能に連結されて四節リンク機構が構成される。
【0053】
図5(B)に示すように、例えば、図5(A)に示す状態において、中間規制軸83により第一規制側リンク82および第二規制側リンク84に連結される連結体90を高さ方向Yの上方(Y1)側に移動させると、中間規制軸83も、高さ方向Yの上方(Y1)側に移動する。このとき、第一規制側リンク82は、高さ方向Yの下方(Y2)側(図5(B)では時計回り)に揺動し、第二規制側リンク84は、高さ方向Yの下方(Y2)側(図5(B)では反時計回り)に揺動する。結果、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、高さ方向Yの上方(Y1)側に凸となる。このとき、さらに、下腿側凸部61(下腿側リンク6)は、第一規制側リンク82に引っ張られて、高さ方向Yの上方(Y1)側に向かって(図5(B)では反時計回りに)揺動する。
【0054】
一方、図5(B)に示す状態において連結体90を高さ方向Yの下方(Y2)側に移動させると、中間規制軸83も、高さ方向Yの下方(Y2)側に移動する。このとき、第一規制側リンク82は、高さ方向Yの下方(Y2)側(図5(B)では反時計回り)に揺動し、第二規制側リンク84は、高さ方向Yの下方(Y2)側(図5(B)では時計回り)に揺動して、図5(A)に示す状態になり、後述する<ストッパ機構>で説明するブレーキ姿勢をとる。このとき、さらに、下腿側凸部61(下腿側リンク6)は、第一規制側リンク82に高さ方向Yの下方(Y2)側に押されて、高さ方向Yの上方(Y1)側に向かって(図5(B)では時計回りに)揺動する。
【0055】
<ストッパ機構>
図5図8を参照して、ストッパ機構85について説明する。ストッパ機構85は、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84をブレーキ姿勢にするものである。ブレーキ姿勢とは、下腿側リンク6が前後方向Zの後方(Z1)側に揺動するように下腿側リンク6に対して外力が加えられても、下腿側リンク6の揺動を規制するような第一規制側リンク82および第二規制側リンク84の姿勢を指す。具体的にブレーキ姿勢は、図5(A)および図6(A)に示すように、中間規制軸83を基準とした第一規制側リンク82と第二規制側リンク84の開き具合を意味する相対開角αが180度(図5(A)参照)又は180度以上(図6(A)参照)となるような第一規制側リンク82および第二規制側リンク84の姿勢を指す。ストッパ機構85は、第一規制側リンク82と第二規制側リンク84の相対開角αの上限を180度又は180度以上に画定する。
【0056】
図5(A)に示すように、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84がブレーキ姿勢となる場合、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、大腿側リンク4と下腿側リンク6との間でつっかえ棒となって、大腿側リンク4に対する下腿側リンク6の揺動を規制する。このため、大腿側リンク4と下腿側リンク6との相対角βは略180度付近の状態が維持され、大腿側リンク4と下腿側リンク6は膝伸ばし姿勢となる。また、大腿側リンク本体部40は、第一大腿側凸部41の近傍において凹部47を有する。凹部47は、第一大腿側凸部41の起点となる背面40Aを起点として、前後方向Zの前方(Z2)側に凹む。第一規制側リンク82および第二規制側リンク84がブレーキ姿勢にある状態にあるときに、図6(B)に示すように、仮に、下腿側リンク6が大腿側リンク4に対して前後方向Zの後方(Z1)側(図6(B)では反時計回り)に相対揺動するような力が加わっても、第二規制側リンク84が大腿側規制軸81を中心として揺動するときに、第二規制側リンク84の先端部84Aは、凹部47を構成する凹面47Aに干渉するため、下腿側リンク6が大腿側リンク4に対して相対揺動することを規制することができる。凹部47を構成する凹面47Aは、曲面であってもよいし、平面であってもよい。なお、図6(B)において下腿側リンク6、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84等は、移動前と移動後のものが重ねて描かれており、移動前のものは主として一点鎖線で表され、移動後のものは主として実線で描かれている。
【0057】
一方、図5(B)に示すように、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84がブレーキ姿勢を解除されて、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84が高さ方向Yの上方(Y1)側に凸となる凸姿勢になった場合、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84はつっかえ棒ではなくなり、大腿側リンク4に対して下腿側リンク6は揺動可能となる。このため、大腿側リンク4と下腿側リンク6との相対角βは、図5(B)に示すように、略180度付近よりも小さくなり、大腿側リンク4と下腿側リンク6は膝曲げ姿勢となる。なお、膝曲げ姿勢とは、歩行補助装置1を装着した利用者900が膝を曲げた状態となるような大腿側リンク4および下腿側リンク6の姿勢を指す。膝曲げ姿勢において大腿側リンク4および下腿側リンク6との相対角βは、略180度付近よりも小さくなる。
【0058】
以上のようなストッパ機構85は、図7(A),(B)に示すように、例えば、連結体90と、案内部87と、付勢部88と、移動範囲限定部89と、を有する。連結体90は、連結部90Aと、案内側係合部90Bとを有する。
【0059】
連結部90Aは、図7(A),(B)に示すように、連結体90の一部を構成し、中間規制軸83を介して第一規制側リンク82および第二規制側リンク84に連結される。そして、連結部90Aは、中間規制軸83を軸として、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84に対して相対揺動可能である。また、連結部90Aは、中間規制軸83から高さ方向Yの上方(Y1)側に進むにしたがって大腿側リンク4から離れる(前後方向Zの後方(Z1)側に進む)傾斜方向に延在する。
【0060】
案内側係合部90Bは、図7(A),(B)に示すように、連結体90の一部を構成し、貫通孔90Cを有する。貫通孔90Cは、幅方向Xに案内側係合部90Bを貫通すると共に、連結部90Aの延在方向(上記傾斜方向)に所定距離だけ延びる細長い孔である。なお、連結部90Aと案内側係合部90Bとは、一体形成されてもよいし、別部材として構成されてもよい。
【0061】
案内部87は、貫通孔90Cに係合して、連結体90を案内方向に案内するものである。本実施形態において案内方向として、例えば、貫通孔90Cが延在する延在方向(上記傾斜方向)が一例として挙げられるが、これに限定されるものではなく、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84をブレーキ姿勢および凸姿勢にさせることができる方向であれば、それ以外の方向であってもよい。
【0062】
案内部87は、図7(A),(B)に示すように、例えば、幅方向Xに延びる軸により構成される。このため、連結体90は、案内部87としての軸を揺動軸として揺動可能に、案内方向に案内される。つまり、連結体90は、姿勢を変えながら、貫通孔90Cの案内方向に案内される。また、案内部87としての軸は、大腿側リンク4の第二大腿側凸部42に設けられる。
【0063】
付勢部88は、図7(A),(B)に示すように、連結体90(連結部90A)を案内方向に付勢するものである。つまり、付勢部88は、連結体90(連結部90A)が案内方向の上方側(下腿側凸部61から離れる側)に移動しても連結体90(連結部90A)が案内方向の下方側(下腿側凸部61に接近する側)に移動するように押圧する。したがって、外力が作用しない場合、中間規制軸83は、付勢部88により案内方向の下腿側凸部61に接近する側に移動し、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、相対開角αが大きくなる方向に揺動する。つまり、付勢部88は、相対開角αが大きくなる方向に第一規制側リンク82および第二規制側リンク84を押圧するよう動作する。付勢部88は、例えば、コイルばねにより構成される。コイルばねは、連結体90(連結部90A)と第二大腿側凸部42との間において案内方向に伸縮するような姿勢(案内方向の下腿側凸部61に接近する側に押圧する態様)で、連結体90(連結部90A)および第二大腿側凸部42の双方に接続される。
【0064】
また、移動範囲限定部89は、図7(A),(B)に示すように、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84がブレーキ姿勢をとるように連結部90Aの移動範囲を画定するものである。移動範囲限定部89は、例えば、連結部90Aが案内方向の下腿側凸部61に接近する側に移動したとき、連結部90Aの下腿側凸部61に近位な側の先端面90AAと接触可能な下腿側凸部61の接触面61Aにより構成される。連結部90Aの先端面90AAと下腿側凸部61の接触面61Aとは、案内方向において対向する。下腿側凸部61の接触面61Aと連結部90Aの先端面90AAとが接触するとき、第一規制
側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢となる。
【0065】
また、移動範囲限定部89は、例えば、下腿側凸部61の接触面61Aとは別に、図8(A)に示すように、連結部90Aの先端面90AAと案内方向において対向すると共に、接触可能な接触部89Aにより構成されてもよい。接触部89Aと連結部90Aの先端面90AAが接触すると、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢となる。なお、接触部89Aは、(高さ方向Yにおける)大腿側リンク本体部40の凹部47と下腿側凸部61との間の大腿側リンク本体部40の背面40Cから、前後方向Zの後方(Z1)側に凸となる凸部により構成される。なお、接触部89Aに接触するのが、連結部90Aの先端面90AAではなく、第一規制側リンク82または第二規制側リンク84であってもよい。第一規制側リンク82または第二規制側リンク84と接触部89Aとが接触するとき、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢となる。
【0066】
また、移動範囲限定部89は、図8(B)に示すように、例えば、連結部90Aの先端面90AAから遠位な側の貫通孔90Cの端面90CAにより構成されてもよい。この場合、連結部90Aが案内方向の下腿側凸部61に接近する側に移動したとき、貫通孔90Cの端面90CAと、案内部87としての軸とが接触すると、案内方向の下腿側凸部61に接近する側への連結部90Aのそれ以上の移動は規制される。貫通孔90Cの端面90CAと案内部87としての軸とが接触すると、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢となる。
【0067】
<膝曲げ姿勢許容機構>
図1図11を参照して、膝曲げ姿勢許容機構9について説明する。膝曲げ姿勢許容機構9は、図4(C)に示すように、大腿側リンク4が腰側リンク3に対して所定の基準相対角θ1を成す位置よりも、前後方向Zの後方(Z1)側(図4では反時計回り側)に揺動した状態にあるとき、膝伸ばし姿勢維持機構8の規制を解除して、大腿側リンク4と下腿側リンク6との相対角βが小さくなる膝曲げ姿勢になることを許容するものである。所定の基準相対角θ1として、例えば、利用者が起立状態にあって大腿側リンク4が鉛直方向に延びる姿勢をとっているときの腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θを相対角θ2としたとき(図4(B)参照)、θ1<θ2となるような角度が一例として挙げられる。なお、図4(C)に示す所定の基準相対角θ1は一例であって傾斜度合いは図4(C)に示す態様に限定されない。
【0068】
例えば、図4(A),(B)に示すように、大腿側リンク4が腰側リンク3に対して所定の基準相対角θ1を成す位置よりも前後方向Zの前方(Z2)側(図4では時計回り側)に揺動した状態にあるとき、大腿側リンク4と下腿側リンク6との相対角βは略180度付近の状態が維持され、大腿側リンク4と下腿側リンク6は膝伸ばし姿勢となる。つまり、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θがθ1を超えるとき、大腿側リンク4と下腿側リンク6は膝伸ばし姿勢となる。
【0069】
一方、図4(C)に示すように、大腿側リンク4が腰側リンク3に対して所定の基準相対角θ1を成す位置よりも前後方向Zの後方(Z1)側(図4では反時計回り側)に揺動した状態にあるとき、膝伸ばし姿勢維持機構8の規制が解除されて、大腿側リンク4と下腿側リンク6との相対角βは小さくなり、大腿側リンク4と下腿側リンク6は膝曲げ姿勢となる。つまり、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θがθ1以下のとき、大腿側リンク4と下腿側リンク6は膝曲げ姿勢となる。
【0070】
膝曲げ姿勢許容機構9は、連結体90(連結部90A)と、移動機構91と、を有する。連結体90は、<ストッパ機構>において説明済みであるため、その説明を省略する。
【0071】
移動機構91は、連結体90を移動させることで、第一規制側リンク82と第二規制側リンク84の相対開角αを180度未満に変位させるものである。連結体90は、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θの変化に連動して移動機構91により移動される。腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θがθ1<θの範囲(図4(A),(B)参照)では、移動機構91は、図5(A)および図6(A)に示すように、連結体90を移動させない。結果、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢にした状態を継続するか、または、ブレーキ姿勢をとる位置に復帰される。腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θがθ1≧θの範囲(図4(C)参照)では、移動機構91は、図5(B)に示すように、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84が凸姿勢(相対開角αが180度未満となる姿勢)となるように連結体90を移動させる。
【0072】
移動機構91は、図9(A),(B)に示すように、例えば、連動部材92を有する。連動部材92は、一方が腰側リンク3(補助部31)に繋がると共に、他方が連結体90(連結部90A)に繋がる。連動部材92は、例えば、ワイヤにより構成される。ワイヤ(連動部材92)が利用者の高さ方向Yの上方(Y1)側に引っ張られると、図7(B)に示すように、連結体90(連結部90A)も利用者の高さ方向Yの上方(Y1)側に移動する。結果、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、相対開角αが180度未満となる凸姿勢をとり、大腿側リンク4と下腿側リンク6は膝曲げ姿勢となることを許容される。
【0073】
一方、ワイヤ(連動部材92)の引張り状態が解除されると、図7(A)に示すように、連結体90(連結部90A)は、付勢部88により押圧されて、利用者の高さ方向Yの下方(Y2)側に移動する。結果、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢をとり、大腿側リンク4と下腿側リンク6は膝伸ばし姿勢となる。
【0074】
<連結体の移動1>
次に、ワイヤ(連動部材92)が連結体90(連結部90A)を移動させる構成について説明する。ワイヤ(連動部材92)は、一方が腰側リンク3(補助部31)に繋がっており、他方が連結体90に繋がっている。図9(A),(B)に示すように、ワイヤ(連動部材92)が腰側リンク3(補助部31)から連結体90に向かう途中まで、ワイヤ(連動部材92)は、大腿側リンク4よりも前後方向Zの前方(Z2)側で大腿側リンク4と対向する状態にある。
【0075】
その途中から連結体90の直前まで、連動部材案内部(またはワイヤ案内部)93が設けられている。連動部材案内部93は、ワイヤ(連動部材92)を大腿側リンク4の前後方向Zの前方(Z2)側から後方(Z1)側に大腿側リンク4(大腿側リンク本体部40)を通過させてワイヤ(連動部材92)を連結体90(連結部90A)まで案内する。
【0076】
ワイヤ(連動部材92)は、前後方向Zにおいて大腿側延長部43と対向するよう配置される。さらに、大腿側延長部43の先端部44のワイヤ対向面46には、ワイヤ(連動部材92)を通す孔を有する凸部45が設けられている。腰側リンク3に対して大腿側リンク4が相対揺動すると、大腿側延長部43も大腿側リンク本体部40と共に相対揺動する。
【0077】
図10(A)に示すように、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θが基準相対角θ1よりも大きいθ2の状態において、ワイヤ(連動部材92)は弛んだ状態にある。連動部材案内部93より手前の途中区間Sを見ると、ワイヤ(連動部材92)は少なくとも一部が蛇行した経路で連動部材案内部93まで延びる。
【0078】
図10(B)に示すように、図10(A)に示す状態から、腰側リンク3に対して大腿側リンク4(大腿側リンク本体部40)が前後方向Zの後方(Z1)側(図10(B)では反時計回り)に相対揺動すると、大腿側延長部43が前後方向Zの前方(Z2)側(図10(B)では反時計回り)に相対揺動して、大腿側延長部43の先端部44は、腰側リンク3から離反方向に移動する。大腿側延長部43の先端部44は、ワイヤ(連動部材92)に接触しながら、ワイヤ(連動部材92)を押圧して前後方向Zの前方(Z2)側に移動させる。大腿側リンク4から見ると、ワイヤ(連動部材92)は、大腿側リンク4から離反する方向に相対移動する。腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θが基準相対角θ1になると、ワイヤ(連動部材92)は、張った状態になる。
【0079】
そして、連動部材案内部93より手前の途中区間Sを見ると、ワイヤ(連動部材92)は前後方向Zの前方(Z2)側に凸となる経路で連動部材案内部93まで延びる。つまり、腰側リンク3に対して大腿側リンク4(大腿側リンク本体部40)が前後方向Zの後方(Z1)側(図10(B)では反時計回り)に相対揺動することにより、ワイヤ(連動部材92)の経路が変位する。このとき、図10(A)に示す状態に比較して図10(B)に示す状態の方が、途中区間Sにおけるワイヤ(連動部材92)の経路長は長くなる。その分、連結体90(連結部90A)は、引っ張り上げられる。
【0080】
図10(B)に示す状態から、腰側リンク3に対して大腿側リンク4(大腿側リンク本体部40)が前後方向Zの前方(Z2)側(図10(B)では時計回り)に相対揺動すると、大腿側延長部43が前後方向Zの後方(Z1)側(図10(B)では時計回り)に相対揺動して、大腿側延長部43の先端部44は、腰側リンク3に接近する方向に移動する。このとき、ワイヤは、(連動部材92)への押圧がなくなり、ワイヤ(連動部材92)は、弛んだ状態になる。結果、連結体90に対する引張力がなくなる。このとき、付勢部88により連結体90(連結部90A)は、案内方向の下方側に移動されて、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84はブレーキ姿勢をとる位置に復帰する。
【0081】
なお、本実施形態においてワイヤ(連動部材92)は、凸部45により保持されているが、これに限定されるものではなく、保持されておらず、大腿側延長部43の先端部44から離れた状態にあってもよい。
【0082】
なお、腰側リンク3に対して大腿側リンク4が相対揺動する動作に連動して、ワイヤ(連動部材92)に接触して、途中区間Sにおけるワイヤ(連動部材92)の経路を変位させることにより、途中区間Sにおけるワイヤ(連動部材92)の経路長を変えることができれば、以上の構成に限定されなくてもよい。以下において別の構成について説明する。
【0083】
<連結体の移動2>
図11を参照して、ワイヤ(連動部材92)が連結体90(連結部90A)を移動させる別の構成について説明する。図11(A),(B)に示すように、例えば、ワイヤ(連動部材92)は、大腿側リンク4よりも前後方向Zの後方(Z1)側で大腿側リンク4と対向する状態にあってもよい。
【0084】
この場合、ワイヤ(連動部材92)は、一端が大腿側延長部43に繋がる。そして、ワイヤ(連動部材92)は、連動部材案内部93を介して連結体90まで案内される。図11(B)に示すように、腰側リンク3に対して大腿側リンク4(大腿側リンク本体部40)が前後方向Zの後方(Z1)側(図11(B)では反時計回り)に相対揺動すると、大腿側延長部43が前後方向Zの前方(Z2)側に相対揺動して、大腿側延長部43の先端部44は、腰側リンク3から離反方向に移動する。結果、大腿側延長部43の先端部44は、ワイヤ(連動部材92)を引っ張る。これにより、途中区間Sにおけるワイヤ(連動
部材92)の経路は変位し、ワイヤ(連動部材92)の経路長は長くなる。その分、連結体90(連結部90A)は、引っ張り上げられる。なお、ここでの途中区間Sとは、大腿側延長部43の先端部44から連動部材案内部93の入り口93Aまでの区間を指す。
【0085】
一方、図11(B)に示す状態から腰側リンク3に対して大腿側リンク4(大腿側リンク本体部40)が前後方向Zの前方(Z2)側に相対揺動すると、大腿側延長部43は、前後方向Zの後方(Z1)側(図11(B)では時計回り)に相対揺動して、大腿側延長部43の先端部44は、腰側リンク3に接近する方向に移動する。結果、大腿側延長部43の先端部44は、ワイヤ(連動部材92)を下げる。これにより、途中区間Sにおけるワイヤ(連動部材92)の経路は変位し、ワイヤ(連動部材92)の経路長は短くなる。その分、連結体90(連結部90A)は、引き下げられる。
【0086】
<連結体の移動3>
図12および図13を参照して、ワイヤ(連動部材92)が連結体90(連結部90A)を移動させるさらに別の構成について説明する。移動機構91は、レバー部材70と、係合部材75とを有する。レバー部材70は、ワイヤ(連動部材92)は、膝関節側揺動軸7を軸として回動する。図12に示すように、ワイヤ(連動部材92)は、レバー部材70に一方側が取付けられてもよい。以上のようなレバー部材70は、円盤状の本体部71と、第一凸部72と、第二凸部73と、第三凸部74を有する。
【0087】
第一凸部72は、本体部71の外周面における所定の領域71Cを起点として、径方向外側に凸となる。第二凸部73は、本体部71の外周面における所定の領域71Bを起点として、領域71Bから離反する方向に凸となる。領域71Bから離反する方向として、例えば、領域71Bに端部71Dの接線方向が一例として挙げられる。領域71Bは、腰側リンク3よりも高さ方向Yの下方(Y2)側に配置される。また、領域71Bは、本体部71の中心(膝関節側揺動軸7と同じ位置)を基準として、領域71Cとは概ね反対側に配置される。また、第二凸部73は、腰側リンク3よりも高さ方向Yの下方(Y2)側に配置される。第三凸部74は、第二凸部73を起点として、腰側リンク3に接近する方向に凸となる。第二凸部73および第三凸部74は、腰側リンク3よりも高さ方向Yの下方(Y2)側に配置される。第一凸部72と、第二凸部73と、第三凸部74とは、本体部71と一体となって膝関節側揺動軸7を軸として回動する。
【0088】
本体部71は、膝関節側揺動軸7を中心に、腰側リンク3および大腿側リンク4に対して相対的に回動可能に構成される。また、ワイヤ(連動部材92)は、一端が本体部71で固定される。また、本体部71は、ワイヤ(連動部材92)のレバー側固定端71Eから本体部71の周方向にワイヤ(連動部材92)を案内する本体側案内部71Aを有する。本体側案内部71Aは、例えば、本体部71の内部において本体部71の周方向に延在する通路により構成される。
【0089】
また、大腿側リンク4には、大腿側延長部43を有する係合部材75が連結されている。このため、係合部材75は、大腿側リンク4と一体となって膝関節側揺動軸7を中心に揺動可能に構成される。また、係合部材75は、第一凸部72の凸方向の先端面72Aから第二凸部73の途中にわたってレバー部材70の周方向に沿って延在してレバー部材70の外周面を取り囲む取り囲み面76を有する。取り囲み面76も膝関節側揺動軸7を中心に揺動する。
【0090】
取り囲み面76は、本体部71の周方向において第一凸部72の立設側周面72Bに対向する第一凸側対向面76Aを有する。第一凸部72の立設側周面72Bとは、第一凸部72の凸方向の周囲の面を構成するとともに、本体部71から立設する面である。本実施形態において第一凸側対向面76Aは、立設側周面72Bに接触しているが、これに限定
されるものではない。第一凸側対向面76Aと立設側周面72Bとの間には、双方の面に接触するスペーサが介在していてもよい。また、取り囲み面76は、第二凸部73と対向する第二凸側対向面76Bを有する。
【0091】
第二凸部73と第二凸側対向面76Bとの間には、弾性部材77が設けられる。弾性部材77は、第二凸部73および第二凸側対向面76Bの双方に接触する。弾性部材77は、第一凸部72の立設側周面72Bに第一凸側対向面76Aを押し付けるように機能する。つまり、弾性部材77は、係合部材75をレバー部材70の周方向の時計回り側に押圧して、係合部材75をレバー部材70に接触させた状態を維持させる。その意味で、弾性部材77と係合部材75とによりレバー部材70に係合する係合部が構成されると見做すことができる。弾性部材77として、例えば、板バネ77Aが一例として挙げられるが、その他の弾性部材であってもよい。以下、弾性部材77が板バネ77Aであるとして、移動機構91の動作について説明する。
【0092】
大腿側リンク4と一体となって係合部材75が膝関節側揺動軸7を中心に前後方向Zの前方(Z2)側に揺動すると、図13(A)に示すように、係合部材75は、立設側周面72Bに接触する第一凸側対向面76Aを通じてレバー部材70を時計回りに回動させる。なお、図13(A)に示す腰側リンク3、大腿側リンク4、および大腿側延長部43の状態は、図4(A)に示す歩行補助機構1Aの状態に対応し、図13(B)に示す腰側リンク3、大腿側リンク4、および大腿側延長部43の状態は、図4(B)に示す歩行補助機構1Aの状態に対応し、図13(C)に示す腰側リンク3、大腿側リンク4、および大腿側延長部43の状態は、図4(C)に示す歩行補助機構1Aの状態に対応する。
【0093】
一方、図13(A)の状態から係合部材75が膝関節側揺動軸7を中心に前後方向Zの後方(Z1)側に揺動すると、図13(B)に示すように、係合部材75は、途中までは、立設側周面72Bに接触する第一凸側対向面76Aを通じてレバー部材70を押圧して、レバー部材70と同位相で揺動して、レバー部材70を時計回りに回動させる。そして、図13(C)に示すように、腰側リンク3の下方側の面3Aよりも下方側から当該面3Aに第三凸部74が接触すると、レバー部材70の回動は規制されて、係合部材75のみがさらに揺動する。このとき、レバー部材70と係合部材75との間に位相差が生じる。そして、板バネ77Aは潰れて、第二凸側対向面76Bは第二凸部73接近する。なお、腰側リンク3は、レバー部材70の回動を規制する回動規制部として機能する。ただし、回動規制部は、別部材により構成されてもよい。
【0094】
図13(C)に示すように、この状態において、立設側周面72Bと第一凸側対向面76Aは、非接触状態となり、両者は、所定距離離れ始まる。この両者が離れ始まる状態における腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θが基準相対角θ1になる。このとき、ワイヤ(連動部材92)のレバー側固定端71Eを起点とした連動部材案内部93までの区間のワイヤ(連動部材92)の経路は変位していき、立設側周面72Bと第一凸側対向面76Aの間の所定距離分だけ経路長が長くなる。その結果、ワイヤ(連動部材92)は、引っ張り上げられる。結果、連結体90(連結部90A)は、引っ張り上げられる。
【0095】
つまり、大腿側リンク4および係合部材75が前後方向Zの後方(Z1)側に揺動して、レバー部材70が係合部材75と一体となって同位相で半時計回りに回動する。そして、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θが基準相対角θ1になると(図13(C)参照)、立設側周面72Bと第一凸側対向面76Aは離れ始まり、図13(C)に示すように、レバー部材70は、係合部材75との間で位相差を生じ、係合部材75に対して相対的に時計回りに回動する。すなわち、基準相対角θ1になると、係合部材75と共に動作する系から見て、レバー部材70は、スイッチオンの状態になって、ワイヤ(連動
部材92)を巻き取り始める。この意味で、レバー部材70、係合部(係合部材75、弾性部材77)、および腰側リンク3(回動規制部)は、巻取り機構を構成する。結果、ワイヤ(連動部材92)と共に連結体90(連結部90A)は、引っ張り上げられて、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢から凸姿勢に姿勢が変化する。一方、図13(A),(B)に示すように、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θがθ>θ1であって、立設側周面72Bと第一凸側対向面76Aが接触したままの状態になっているとき、係合部材75と同位相で回動するため、係合部材75と共に動作する系から見て、レバー部材70は、スイッチオフの状態のままで、レバー部材70によりワイヤ(連動部材92)は巻き取られず、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢を維持したままとなる。
【0096】
<歩行姿勢保証部10>
図14を参照して、歩行姿勢保証部10について説明する。歩行姿勢保証部10は、利用者の歩行姿勢を保証するものである。つまり、利用者の歩行姿勢とは、一方側の足が前方側に揺動する場合、他方側の足は後方側に揺動するような姿勢を指す。
【0097】
歩行姿勢保証部10は、図14(A)に示すように、腰側連結部材100と、架設リンク110と、架設リンク案内部120と、を有する。腰側連結部材100は、利用者の左右に配置された一対の腰側リンク3を一体的に結合するものである。腰側連結部材100は、例えば、円柱状の円柱体により構成される。円柱体の両端は、図14(B)に示すように、一対の腰側リンク3の前後方向Zの後方(Z1)側の端部付近で連結される。つまり、腰側連結部材100は、一対の腰側リンク3の間に架設されて一対の腰側リンク3を一体化するように結合する。
【0098】
架設リンク110は、図14(B)に示すように、架設リンク案内部120により案内されながら、2つの歩行補助機構間に架設されて2つの大腿側リンク4に連結される。架設リンク110は、例えば、大腿側リンク4の大腿側延長部43の先端部44に、延長側揺動軸123を中心として揺動可能に連結される。なお、延長側揺動軸123は、幅方向Xに延びる軸である。
【0099】
架設リンク案内部120は、架設リンク110の両端近傍を前後方向Zに案内するものである。架設リンク案内部120は、図14(B)に示すように、例えば、2つの側面側案内部121と、背面側案内部122と、を有する。2つの側面側案内部121は、例えば、左右の補助部31を前後方向に貫通する通路孔により構成される。背面側案内部122は、例えば、利用者の背面を湾曲して取り囲みつつ2つの側面側案内部121に架設リンク110を案内する。背面側案内部122は、例えば、湾曲した筒状体により構成される。
【0100】
例えば、歩行補助装置1の利用者が歩行している場合(図15参照)の左右の大腿側延長部43の先端部44の前後方向における位置を比較すると、図16(A)に示すように、前後方向Zの前方(Z2)側にある足960Aに対応する大腿側延長部43Aの先端部44Aと、前後方向Zの後方(Z1)側にある足960Bに対応する大腿側延長部43Bの先端部44Bとの前後方向における位置を比較すると、前者の方が後者よりも、前後方向Zの後方(Z1)側に位置する。次に、足960Aが後方側になり、足960Bが前方側になると、図16(B)に示すように、大腿側延長部43Aの先端部44Aの方が大腿側延長部43Bの先端部44Bよりも、前後方向Zの前方(Z2)側に位置する。つまり、架設リンク110は、歩行補助機構1Aそれぞれの前後方向Zの動作に連動して、一端側と他端側の移動方向が逆方向になる。これにより、足960Aおよび足960Bの双方が同方向に移動するということを防止することができる。結果、利用者の歩行姿勢を保証することができる。
【0101】
<歩行動作>
図17を参照して、歩行補助装置1の利用者900の歩行動作について説明する。時刻T0の利用者900は、足960Aが足960Bよりも前方側に位置する。このとき、大腿側リンク4の鉛直方向に対する角度γは、略プラス22度となっている。この状態において、足960A側の(図示しない)歩行補助機構は、膝伸ばし姿勢維持機構8により大腿側リンク4と下腿側リンク6の相対揺動を規制されて、膝伸ばし姿勢となる。
【0102】
時刻T1の利用者900は、時刻T0のときよりも足960Aが後方側に位置する。このとき、大腿側リンク4の鉛直方向に対する角度γは、略プラス7度となっている。この状態においても、足960A側の歩行補助機構は、膝伸ばし姿勢となっている。
【0103】
そして、時刻T2になると、大腿側リンク4の鉛直方向に対する角度が0度を超えて、足960Aは、足960Bよりも後方側に移動していく。このとき、大腿側リンク4が腰側リンク3に対して所定の基準相対角θ1を成す。このため、足960A側の歩行補助機構1Aは、膝曲げ姿勢許容機構9により膝伸ばし姿勢維持機構8の規制が解除され、膝曲げ姿勢となる。
【0104】
時刻T3になると大腿側リンク4の鉛直方向に対する角度が略マイナス20度となり、さらに、大腿側リンク4と下腿側リンク6との相対角βが小さくなって膝曲げ度合いが大きくなる。時刻T4にかけて利用者900の足960Bが後方側に、足960Aが前方側に移動していく。時刻T4になると、大腿側リンク4の鉛直方向に対する角度が0度を超えて、足960Aは、足960Bよりも前方側に移動していく。このとき、大腿側リンク4が腰側リンク3に対して所定の基準相対角θ1を成して、膝伸ばし姿勢維持機構8が動作し始める。つまり、付勢部88により第一規制側リンク82および第二規制側リンク84がブレーキ姿勢になるように変位し始める。そして、時刻T4から所定時間経過した時刻T5で、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢となる。結果、足960A側の歩行補助機構は、大腿側リンク4と下腿側リンク6の相対揺動を規制されて、膝伸ばし姿勢となる。
【0105】
なお、時刻T5で大腿側リンク4の鉛直方向に対する角度γは、略プラス25度となっており、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θは、θ1を超えている。したがって、上記のように、膝曲げ姿勢から膝伸ばし姿勢になる過程で、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θが所定の基準相対角θ1よりも大きくなっても、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84がブレーキ姿勢となる間、足960A側の歩行補助機構は、膝曲げ姿勢が継続される。
【0106】
以上説明したように、歩行補助装置1によれば、歩行時に、歩行補助装置1の利用者(歩行者)の前方側の足は膝を伸ばした状態を維持する共に、歩行補助装置1の利用者(歩行者)の後方側の足は膝曲げを許容することができる。
<第二実施形態>
【0107】
図18を参照して、本発明の第二実施形態における歩行補助装置1について説明する。本実施形態における歩行補助装置1では、構成要件は第一実施形態における歩行補助装置1と同様であるが、構成要件のうち、装着部2と、左右一対の膝伸ばし姿勢維持機構8と、左右一対の膝曲げ姿勢許容機構9と、が第一実施形態における歩行補助装置1とは構成が異なる。以下、それらについて説明する。
【0108】
<装着部>
図18図20を参照して、装着部2について説明する。装着部2は、図18に示すよう
に、例えば、第一ベルト部20と、第二ベルト部21と、を備える。第一ベルト部20は、第二ベルト部21よりも高さ方向Yの下方(Y2)側に配設される。第一ベルト部20は、概ね人体の腰部に相当する位置に設けられる。第二ベルト部21は、概ね人体の腰部より高さ方向Yの上方(Y1)側に相当する位置に設けられる。
【0109】
<第一ベルト部>
第一ベルト部20は、腰回り側ベルト部25と、股側ベルト部26と、を有する。腰回り側ベルト部25は、本発明の第一実施形態における歩行補助装置1のものと同様であり、すでに説明済みであるため、説明を省略する。なお、本実施形態の腰回り側ベルト部25は、図18に示すように、それぞれが一体形成されており、第一実施形態のものと見かけは異なるが、これは一例であって、別部材が繋がれた態様であってもよい。このことは、第一実施形態の腰回り側ベルト部25についても同様である。
【0110】
股側ベルト部26は、図19に示すように、利用者900の股部970において利用者900を下方側から支持するものである。股側ベルト部26は、図18に示すように、例えば、尻側支持部260と、第一股支持部261と、第二股支持部262と、連結機構と、を有する。尻側支持部260は、図20(A)に示すように、利用者900の尻971を高さ方向Yの下方側から支持する。尻側支持部260は、図18に示すように、腰側ベルト部22の幅方向の下端部22Aを起点として腰側ベルト部22の幅方向に延在する部分である。また、尻側支持部260は、自身の延在方向の途中から二つに分岐する第一分岐部260Aおよび第二分岐部260Bを有する。
【0111】
第一股支持部261は、第一分岐部260Aの終端から第一分岐部260Aの延在方向に延在する。第二股支持部262は、第二分岐部260Bの終端から第二分岐部260Bの延在方向に延在する。
【0112】
連結機構は、第一股支持部261、および第二股支持部262をそれぞれ第一腹側ベルト部23および第二腹側ベルト部24に連結させるものである。連結機構は、図18に示すように、第三連結部263Aと、第四連結部263Bと、第五連結部263Cと、第六連結部263Dと、を有する。第三連結部263A、および第四連結部263Bは、それぞれ、第一股支持部261、および第二股支持部262の先端に近傍に設けられる。第五連結部263Cは、第一腹側ベルト部23の利用者900に当接する側とは反対側の表面に設けられる。第六連結部263Dは、第二腹側ベルト部24の利用者900に当接する側とは反対側の表面に設けられる。
【0113】
第三連結部263Aと第五連結部263Cは、相互に着脱可能に連結できる構造を有する。第四連結部263Bと第六連結部263Dは、相互に着脱可能に連結できる構造を有する。第三連結部263Aおよび第五連結部263Cを連結させることにより、第一股支持部261は、第一腹側ベルト部23に連結する。また、第四連結部263Bおよび第六連結部263Dを連結させることにより、第二股支持部262は、第二腹側ベルト部24に連結する。
【0114】
上記連結機構として、例えば、マジックテープ(登録商標)によるもの、ボタンによるもの、差し込み具および差し込まれるとロックして差し込み具と連結するバックルが一例として挙げられる。そして、第三連結部263Aおよび第五連結部263C、並びに第四連結部263Bおよび第六連結部263Dは、上記に対応するようなものが一例として挙げられる。
【0115】
<第一ベルト部の装着>
利用者900が第一ベルト部20を装着すると、図19および図20(A)に示すように
、腰回り側ベルト部25は、利用者900の腰部910回りを取り囲んで腰部910を締め付ける。そして、股側ベルト部26は、利用者900の股部970において利用者900を下方側から支持する。
【0116】
このとき、尻側支持部260は、図20(A),(B)に示すように、利用者900の尻971に当接する。また、第一分岐部260Aおよび第二分岐部260Bは、第一股支持部261および第二股支持部262と共に、利用者900の股部970を通過する。連結機構を介して第一股支持部261を第一腹側ベルト部23に連結させると、尻側支持部260、第一股支持部261、第一腹側ベルト部23および腰側ベルト部22の一部が環状に繋がる。結果、尻側支持部260、第一股支持部261、第一腹側ベルト部23および腰側ベルト部22の一部の内周側の外縁が環状に連なって孔264が形成される。孔264は、利用者900の右足973を通す右足挿通孔として機能する。同様に、連結機構を介して第二股支持部262を第二腹側ベルト部24に連結させると、尻側支持部260、第二股支持部262、第二腹側ベルト部24、および腰側ベルト部22の一部も環状に繋がる。結果、尻側支持部260、第二股支持部262、第二腹側ベルト部24、および腰側ベルト部22の一部の内周側の外縁が環状に連なって孔265が形成される。孔265は、利用者900の左足974を通す左足挿通孔として機能する。
【0117】
そして、歩行補助装置1を装着した利用者900にとって、腰回り側ベルト部25が利用者900の腰部910周りに位置するように、腰回り側ベルト部25は自身の周囲の部材(例えば、腰側連結部材100または腰側リンク3)に取り付けられて固定される。利用者900が腰回り側ベルト部25を腰部910回りに装着した状態を正常装着状態と定義する。仮に、腰回り側ベルト部25による利用者900の腰部910周りの締めが緩い場合、股側ベルト部26がないと、立ち姿勢を維持することが困難な利用者900にとって、腰回り側ベルト部25が腰部910よりも上方側にずれてしまい、正常装着状態を維持することがきでないおそれがある。しかしながら、本実施形態では、股側ベルト部26により利用者900の股部970において利用者900を下方側から支持するため、腰回り側ベルト部25による利用者900の腰部910周りの締めが緩い場合であっても、腰回り側ベルト部25が腰部910よりも上方側にずれてしまうおそれがなく、利用者900は、正常装着状態を維持することが可能となる。
【0118】
また、右足挿通孔として機能する孔264、および左足挿通孔として機能する孔265は、図20(B)示すように、第一分岐部260Aと第二分岐部260Bとが接近するように変形することにより大きさが拡張可能である。例えば、太ももの太さが太い人が股側ベルト部26を装着する場合であっても、太ももの太さに応じて孔264および孔265は拡張するため、装着は容易である。
【0119】
また、もし、尻側支持部260が分岐していない場合、孔264および孔265を拡張させる場合、尻側支持部260の幅を狭めることになるが、この際、尻側支持部260にしわがよる。尻側支持部260にしわがよると、尻側支持部260における利用者900の股部970への当接面は波打つ状態になるため、利用者900は不快に感じるおそれがある。本実施形態にように尻側支持部260が分岐していると、第一分岐部260Aおよび第二分岐部260Bにおける利用者900の股部970への当接面は波打つ状態にならず、利用者900は不快に感じない。
【0120】
<第二ベルト部>
図18および図21を参照して、本実施形態において第二ベルト部21は、図18に示すように、腰回り側ベルト部25により構成されてもよい。ただし、本実施形態において第二ベルト部21は、第一ベルト部20における腰回り側ベルト部25とは、幅や連結機構の態様が異なっているが、これに限定されるものではなく、第一ベルト部20における腰
回り側ベルト部25と同様の態様であってもよい。また、本実施形態において第二ベルト部21は、第一ベルト部20よりも高さ方向Yの上方(Y1)側に配設される。具体的に第二ベルト部21は、利用者900の腰部910よりも上方側に巻かれるものである。
【0121】
ただし、第二ベルト部21における腰回り側ベルト部25の腰側ベルト部22と、第一腹側ベルト部23と、第二腹側ベルト部24とは、帯状に一体形成された帯状体210により構成される。帯状体210は、腰部910回りを一周する長さを有する。また、帯状体210は、可撓性を有する。帯状体210として、例えば、ナイロン等の合成樹脂によりシート状に織られた平ベルトが挙げられるが、これに限定されものではなく、可撓性を有する材質により構成される他のものであってもよい。第二ベルト部21における連結機構27は、第一実施形態におけるものと同様であるため、その説明を省略する。
【0122】
また、第二ベルト部21は、(図示しない)長さ調整機構と、帯状体保持部212と、第七連結部213と、を有する。長さ調整機構は、帯状体210における利用者900を締め付ける長さを調整するものである。具体的に長さ調整機構は、第一実施形態における長さ調整機構と同様に、連結機構27を構成する第一連結部27Aおよび/または第二連結部27Bを帯状体210に沿って相対移動させるものである。第一連結部27Aまたは第二連結部27Bがこのように構成されると、利用者900に装着される帯状体210の長さを実質的に調整することができる。なお、長さ調整部は、第一実施形態における長さ調整機構と同様に、以上の構成に限定されるものではなく、その他の構成であってもよい。
【0123】
帯状体保持部212は、図21(A)に示すように、概ね直方体形状をしており、帯状体210を通す孔212Aを有する。孔212Aは、帯状体保持部212を貫通する。帯状体210を孔212Aに通すと、帯状体210は、帯状体保持部212に絡んで保持される。
【0124】
第七連結部213は、帯状体保持部212に設けられる。第七連結部213は、例えば、図21(A)に示すように、帯状体保持部212の外周面から凸となる凸部213Aと、凸部213Aの先端に設けられる頭部213Bと、を有する。頭部213Bは、凸部213Aよりも幅が大きい。
【0125】
一方で、図21(A)に示すように、腰側リンク3よりも高さ方向Yの上方(Y1)側に延在する補助部31の上方部31Cには、第七連結部213と協働して連結機構を構成する第八連結部214が設けられる。第八連結部214は、図21(B)に示すように、補助部31の上方部31Cにおける利用者900と対向する側を起点として幅方向Xに凹む補助側凹部31Bに設けられる。第八連結部214は、図21(A)に示すように、例えば、ばね部214Aと、挿入側凹部214Bと、頭部213Bを引っ掛ける引っ掛け部214Cと、を有する。
【0126】
ばね部214Aは、補助側凹部31B内において第八連結部214を高さ方向Yに上下動可能に第八連結部214の下端部に設けられる。挿入側凹部214Bは、開口214BAを通じて利用者900と対向する側に開放されると共に、幅方向Xに凹む第八連結部214に設けられる凹部である。挿入側凹部214Bは、開口214BAを通じて第七連結部213を幅方向Xに挿入可能な大きさを有する。
【0127】
引っ掛け部214Cは、挿入側凹部214Bに連続して高さ方向Yの下方(Y2)側に凹む第八連結部214に設けられる凹部である。引っ掛け部214Cは、図21(B)に示すように、例えば、頭部213Bを挿入可能な頭部挿入領域214Dと、凸部213Aを挿入可能な凸部挿入領域214Eと、を有する。頭部挿入領域214Dと凸部挿入領域
214Eとは、幅方向Xにおいて順に外側から内側に連続する。頭部挿入領域214Dは、凸部挿入領域214Eよりも幅が大きい。したがって、凸部挿入領域214Eの幅方向(前後方向Z)の両脇には、第八連結部214の一部を構成する第八連結部側壁214Fがある。また、頭部挿入領域214Dは、頭部213Bの幅よりも大きい幅(前後方向Zにおける長さ)を有する。凸部挿入領域214Eは、凸部213Aの幅よりも大きい幅を有する。また、凸部挿入領域214Eは、開口214EAを通じて利用者900と対向する側に開放される。
【0128】
挿入側凹部214Bに挿入された第七連結部213を高さ方向Yの下方(Y2)側に下げると、凸部213Aは凸部挿入領域214Eに挿入され、頭部213Bは頭部挿入領域214Dに挿入される。帯状体保持部212が幅方向Xの内側に引っ張られても、頭部213Bが第八連結部側壁214Fに接触して引っ掛かるため、第七連結部213は、第八連結部214から外れない。そして、第七連結部213を第八連結部214に連結させると、帯状体210は、利用者900の腰部910よりも上方側に位置することになる。
【0129】
<膝伸ばし姿勢維持機構>
図22図26を参照して、本実施形態における膝伸ばし姿勢維持機構8について以下説明する。本実施形態における膝伸ばし姿勢維持機構8は、図22および図23に示すように、第一実施形態における膝伸ばし姿勢維持機構8と同様に、下腿側規制軸80と、大腿側規制軸81と、第一規制側リンク82と、中間規制軸83と、第二規制側リンク84と、ストッパ機構85と、を有する。そして、本実施形態においても下腿側凸部61(下腿側リンク6)と、第一規制側リンク82と、第二規制側リンク84と、第一大腿側凸部41(大腿側リンク4)とが、それぞれ膝関節側揺動軸7と、下腿側規制軸80と、大腿側規制軸81と、中間規制軸83によって相対揺動可能に連結されて、四節リンク機構が構成される。本実施形態における膝伸ばし姿勢維持機構8では、下腿側凸部61と下腿側規制軸80との連結態様、ストッパ機構85とが、第一実施形態における膝伸ばし姿勢維持機構8と異なるので、その点について以下説明する。
【0130】
<下腿側凸部,下腿側規制軸>
下腿側凸部61は、図22および図23に示すように、前後方向Zの中間地点63に下腿側規制軸80の案内部64を有する。下腿側規制軸80の案内部64は、下腿側規制軸80を案内方向Gに案内する。案内方向Gとは、大腿側リンク4に対して下腿側リンク6が膝伸ばし姿勢にある場合において、高さ方向Yの下方(Y2)側から上方(Y1)側に進むにしたがって大腿側リンク4に接近する(または、前後方向Zの後方(Z1)側から前方(Z2)側に進む)ように傾斜する方向を指す。図23において案内方向Gは、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84がブレーキ姿勢にあるときにおける下腿側規制軸80の中心と中間規制軸83の中心(または大腿側規制軸81の中心)とを結ぶ直線(図23における一点鎖線参照)に沿う方向である。なお、案内方向Gは、例えば、第一規制側リンク82と第二規制側リンク84の開き具合を意味する相対開角αが180度以上(図6(A)参照)となる場合であっても、下腿側規制軸80の中心と中間規制軸83の中心または大腿側規制軸81の中心とを結ぶ直線に沿う方向となる。
【0131】
本実施形態において下腿側規制軸80の案内部64は、図23に示すように、案内溝64Aにより構成される。案内溝64Aは、図23に示すように、例えば、前後方向Zの中間地点63に設けられ、幅方向Xから見ると角丸長方形となる。つまり、案内溝64Aは、YZ平面において角丸長方形となる。そして、案内溝64Aは、下腿側凸部61を幅方向Xに角丸長方形状に貫通して、角丸長方形柱状になる。なお、案内溝64Aは、下腿側凸部61を幅方向Xに貫通せず、下腿側凸部61の内部において幅方向Xに凹む凹部により構成されてもよい。そして、案内方向Gに直角な案内溝64の幅は、下腿側規制軸80の直径よりもわずかに大きい。このため、下腿側規制軸80は、案内溝64に挿入されて、幅方
向Xに延びる姿勢のまま、案内方向に移動可能に案内溝64で保持される。
【0132】
図24(B)に示すように、連結体90が中間規制軸83と共に、連結体90の案内方向の上方側(高さ方向Yの上方(Y1)側)に距離L1だけ移動すると、四節リンク機構のうち、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は同方向に引っ張られる。このとき、下腿側規制軸80は、第一規制側リンク82に引っ張られて、案内溝64に沿って案内方向の大腿側リンク4に接近する側の端部64Bに移動する。そして、同時に、第一規制側リンク82は、下腿側規制軸80を軸として前後方向Zの後方(Z1)側(図24では時計回り)に揺動する。また、第二規制側リンク84は大腿側規制軸81を軸として前後方向Zの前方(Z2)側(図24では反時計回り)に揺動する。結果、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84が高さ方向Yの上方(Y1)側に凸となる凸姿勢となる。ただし、このとき、下腿側リンク6は揺動しない。つまり、連結体90の移動距離がL1以下の場合、四節リンク機構のうち、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84だけが揺動し、下腿側リンク6は揺動しない。以上のように、本実施形態における四節リンク機構には、案内溝64に起因して、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84の動作に遊びが生じる。これにより、利用者900が意図しない状況で、少し連結体90が移動して第一規制側リンク82および第二規制側リンク84を上方側に引っ張られたとしても、直ぐには膝曲げ姿勢にならない。第一規制側リンク82および第二規制側リンク84の動作の遊びは、案内方向Gにおける案内溝64Aの長さ、および、高さ方向Yに対する案内方向Gの傾斜度合いに応じて調整することができる。
【0133】
連結体90の移動距離がL1を超えると、さらに、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は同方向に引っ張られ、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は揺動する。このとき、図25(A)に示すように、下腿側リンク6は、膝関節側揺動軸7を軸として、前後方向Zの後方(Z1)側(図25では反時計回り)に揺動し始める。つまり、四節リンク機構の各部が他のリンクの動作に連動して動作し始める。
【0134】
また、下腿側凸部61は、案内溝64と共に姿勢が変わる。このため、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は同方向に引っ張られる際、例えば、図25(A)に示すように、下腿側規制軸80は、案内溝64に沿って大腿側リンク4から離反する方向に移動して、図25(B)に示すような案内溝64の大腿側リンク4から遠位な端部に位置することがある。つまり、下腿側規制軸80は、下腿側凸部61および第一規制側リンク82の姿勢に応じて案内溝64内における位置を変える。そして、下腿側リンク6は、例えば、図26に示すように、下腿側凸部61が接触箇所Kにおいて連結体90に接触するまで前後方向Zの後方(Z1)側(図25では反時計回り)に揺動する。
【0135】
なお、下腿側凸部61がさらに前後方向Zの後方(Z1)側(図25では反時計回り)に揺動する際、連結体90と下腿側凸部61とが干渉する領域に相当する部分(接触箇所Kを含む領域)を連結体90から除き、そこを下腿側凸部61が通過する通路空間として下腿側凸部61が連結体90を通過可能にしてもよい。この場合、下腿側凸部61はさらに前後方向Zの後方(Z1)側(図25では反時計回り)に揺動することができる。ただし、この場合でも、下腿側リンク6が揺動可能な限界位置は、例えば、下腿側凸部61と第二規制側リンク84との接触、または、後述する付勢部88の最大縮退位置、連結体90の上方側移動の限界位置(案内部87に接触する貫通孔90Cの下端部90D)等と関連付けたものとすることができる。
【0136】
<ストッパ機構>
図23を参照して、本実施形態におけるストッパ機構85について説明する。本実施形態におけるストッパ機構85は、第一実施形態におけるストッパ機構85と同様に、連結体90と、案内部87と、付勢部88と、移動範囲限定部89と、を有する。本実施形態に
おける連結体90と、案内部87と、移動範囲限定部89とは、第一実施形態におけるものと同様であり、既に説明済みであるため、説明を省略する。
【0137】
第一実施形態において付勢部88は、第一規制側リンク82と第二規制側リンク84の相対開角αが大きくなる方向に、連結体90(連結部90A)を押圧するよう付勢する。一方で、本実施形態において付勢部88は、図23に示すように、下腿側凸部61(下腿側リンク6)を膝伸ばし姿勢に相当する膝伸ばし位置に押圧するよう付勢する。つまり、付勢部88は、下腿側凸部61(下腿側リンク6)が前後方向Zの後方(Z1)側(図25では反時計回り)に揺動した場合、下腿側凸部61(下腿側リンク6)が前後方向Zの前方(Z2)側(図25では時計回り)に揺動するように押圧する。
【0138】
付勢部88は、例えば、シリンダー880と、ピストン881と、ロッド882と、を有する。シリンダー880には、ガス(例えば、窒素ガス)が入っている。ピストン881は、シリンダー880の軸方向に移動可能にシリンダー880の内部に入っている。下腿側凸部61(下腿側リンク6)が大腿側リンク4に対して膝伸ばし位置にあるときピストン881は、平衡状態になって停止しているか、または、ガスによりシリンダー880の軸方向のシリンダー880の先端880Bに向かう側に押圧されている。そして、ピストン881がシリンダー880の軸方向のシリンダー880の基端880A側に向かうと、ガスはピストン881により圧縮されて、ピストン881は、その分、移動方向とは逆方向に圧縮されたガスから反力を受ける。
【0139】
ロッド882は、自身の軸方向がシリンダー880(またはピストン881)の軸方向と一致するように、ピストン881に連結される。そして、ロッド882は、一部がシリンダー880内部に収容され、残りがシリンダー880の先端880B側から外側に突出している。また、ロッド882は、ピストン881と共に、シリンダー880の軸方向に移動可能にピストン881に連結されている。
【0140】
ロッド882の先端は、第一付勢側軸883を介して下腿側凸部61の先端65に連結される。第一付勢側軸883は、幅方向Xに延在する軸である。したがって、ロッド882は、第一付勢側軸883を軸として、下腿側凸部61(下腿側リンク6)に対して相対的に揺動可能である。なお、下腿側凸部61(下腿側リンク6)が大腿側リンク4に対して膝伸ばし位置にあるとき、ロッド882の軸方向は、例えば、第一付勢側軸883の中心の軌道の接線方向Hよりも前後方向Zの前方(Z2)側(図23では第一付勢側軸883の中心とした時計回り)に傾倒させた方向と平行になる。
【0141】
また、シリンダー880の基端880Aは、第二付勢側軸884を介して大腿側リンク4(大腿側リンク本体部40)に連結される。第二付勢側軸884は、幅方向Xに延在する軸である。したがって、シリンダー880は、第二付勢側軸884を軸として、大腿側リンク4に対して相対的に揺動可能である。
【0142】
<ストッパ機構の動作>
図23図26を参照して、本実施形態におけるストッパ機構85の動作について説明する。下腿側凸部61(下腿側リンク6)が大腿側リンク4に対して膝伸ばし位置にある膝伸ばし姿勢(図24(B)参照)から、下腿側凸部61(下腿側リンク6)が大腿側リンク4に対して膝曲げ位置にある膝曲げ姿勢(図25(A)参照)になると、ロッド882は、下腿側凸部61(下腿側リンク6)によりシリンダー880の軸方向のシリンダー880の基端880A側に押圧されて、シリンダー880の内部側に移動する。このとき、ピストン881は、ロッド882と共に同方向に移動し、ガスを圧縮する。そして、さらに、膝曲げ姿勢の度合いが大きくなると、さらに、ロッド882はピストン881と共に同方向に移動して(図25(B)および図26参照)、ガスを圧縮して、ガスから逆方向
に強い反力を受ける。
【0143】
膝曲げ姿勢から膝伸ばし姿勢に戻るとき、ガスからの反力を受けて、ピストン881は、ロッド882と共に、シリンダー880の軸方向のシリンダー880の先端880B側に移動していく。そして、ロッド882は、下腿側凸部61(下腿側リンク6)を膝伸ばし位置まで押圧する。
【0144】
<膝曲げ姿勢許容機構>
図27および図28を参照して、本実施形態における膝曲げ姿勢許容機構9について以下説明する。本実施形態における歩行補助装置1でも、図27(A)~(C)に示すように、大腿側リンク4が腰側リンク3に対して成す相対角θの値に応じて、膝曲げ姿勢許容機構9は、大腿側リンク4と下腿側リンク6との相対角βが小さくなる膝曲げ姿勢になることを許容する。膝曲げ姿勢許容機構9は、第一実施形態と同様で、連結体90(連結部90A)と、移動機構91と、を有するが、第一実施形態とは移動機構91の態様が異なる。具体的に本実施形態では、連動部材案内部93以降のワイヤ(連動部材92)の経路が異なる。つまり、図28(A)に示すように、本実施形態においてワイヤ(連動部材92)は、連動部材案内部93以降は、大腿側リンク4(大腿側リンク本体部40)よりも前後方向Zの前方(Z2)側において高さ方向Yの上方(Y1)側に延在して、大腿側延長部43の途中に設けられた孔43Cを、開口43Dを通じて通過して、前後方向Zの後方(Z1)側に案内され、さらに腰側リンク3に設けられる長さ調整機構33まで延在する。
【0145】
長さ調整機構33は、ワイヤ(連動部材92)の長さを調整するものである。長さ調整機構33は、図28(A)に示すように、例えば、ワイヤ(連動部材92)を巻取り可能な巻取り部33Aと、摘み部33Bと、を有する。例えば、摘み部33Bを時計回りに回動させると、巻取り部33Aは、ワイヤ(連動部材92)を巻取る。一方、摘み部33Bを反時計回りに回動させると、巻取り部33Aは、ワイヤ(連動部材92)を送り出す。
【0146】
図28(A),(B)に示すように、孔43Cの前後方向Zの前方(Z2)側の開口43Dから巻取り部33Aまでの区間を区間Nと定義する。そして、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θがθ2の場合の時の区間Nの区間長をL2とし、相対角θが基準相対角θ1の時の区間Nの区間長をL3とした場合、L2<L3となる。このため、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θが基準相対角θ1の時、巻取り部33Aによりワイヤ(連動部材92)は引っ張られて、(図示しない)連結体90は、高さ方向Yの上方(Y1)側に移動する(図25および図26参照)。結果、図27(C)に示すように、大腿側リンク4に対して下腿側リンク6は膝関節側揺動軸7を軸として揺動して膝曲げ姿勢となる。
【0147】
一方、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θが相対角θ2の時、巻取り部33Aはワイヤ(連動部材92)を引っ張らないので、(図示しない)連結体90は移動しないか、引っ張ったとしても(図示しない)連結体90は距離L1以下だけ移動する(図24(A),(B)参照)。結果、図27(A),(B)に示すように、下腿側凸部61(下腿側リンク6)は、ストッパ機構85の付勢部88により膝伸ばし位置まで押圧され、大腿側リンク4に対して下腿側リンク6は膝伸ばし姿勢となる。なお、巻取り部33Aはワイヤ(連動部材92)を引っ張らない場合、第一規制側リンク82および第二規制側リンク84は、ブレーキ姿勢となる。
【0148】
以上のように、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対揺動の前後で、ワイヤ(連動部材92)の通過点(例えば、開口43D)と、ワイヤ(連動部材92)の終端との接続点との間の区間Nにおける経路長が変わるので、ワイヤ(連動部材92)は引っ張られ
て、連結体90は上方側に移動する。その他の態様であっても、股関節側揺動軸5とは別の位置(例えば、股関節側揺動軸5よりも高さ方向Yの上方(Y1)側、または下方(Y2)側)において前後方向Zの前方(Z2)側から後方(Z1)側にワイヤ(連動部材92)が大腿側リンク4を通過する通過点(例えば、開口43D)を有し、大腿側リンク4より前後方向Zの後方(Z1)側で腰側リンク3と連動して動作するいずれかの部分にワイヤ(連動部材92)が固定され、かつ、腰側リンク3に対する大腿側リンク4の相対角θが基準相対角θ1よりも小さくなると、区間Nにおける経路長が長くなるような態様であれば、本発明に含まれる。
【0149】
なお、本発明の歩行補助装置1および歩行補助機構1Aは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。なお、本発明の第一実施形態と第二実施形態の各構成要件を適宜、自由に組み合わせたものも本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0150】
1 歩行補助装置
1A 歩行補助機構
2 装着部
3 腰側リンク
4 大腿側リンク
5 股関節側揺動軸
6 下腿側リンク
7 膝関節側揺動軸
8 姿勢維持機構
9 姿勢許容機構
10 歩行姿勢保証部
20 第一ベルト部
21 第二ベルト部
22 腰側ベルト部
23 第一腹側ベルト部
24 第二腹側ベルト部
25 腰回り側ベルト部
26 股側ベルト部
27 連結機構
27A 第一連結部
27B 第二連結部
30 ベースリンク
31 補助部
31A 把持部
31B 補助側凹部
31C 上方部
33 長さ調整機構
33A 巻取り部
33B 摘み部
40 大腿側リンク本体部
41 第一大腿側凸部
42 第二大腿側凸部
43,43A,43B 大腿側延長部
43C 孔
43D 開口
44,44A,44B 先端部
45 凸部
46 ワイヤ対向面
47 凹部
47A 凹面
60 下腿側リンク本体部
61 下腿側凸部
61A 接触面
64 案内部
70 レバー部材
75 係合部材
80 下腿側規制軸
81 大腿側規制軸
82 第一規制側リンク
83 中間規制軸
84 第二規制側リンク
85 ストッパ機構
87 案内部
88 付勢部
89 移動範囲限定部
89A 接触部
90 連結体
90A 連結部
90AA 先端面
90B 案内側係合部
90C 貫通孔
90CA 端面
90D 貫通孔の下端部
91 移動機構
92 連動部材
93 連動部材案内部
100 腰側連結部材
110 架設リンク
120 架設リンク案内部
121 側面側案内部
122 背面側案内部
123 延長側揺動軸
210 帯状体
212 帯状体保持部
213 第七連結部
214 第八連結部
260 尻側支持部
260A 第一分岐部
260B 第二分岐部
261 第一股支持部
262 第二股支持部
263A 第三連結部
263B 第四連結部
263C 第五連結部
263D 第六連結部
264,265 孔
880 シリンダー
881 ピストン
882 ロッド
883 第一付勢側軸
884 第二付勢側軸
900 利用者
910 腰部
920 大腿部
930 股関節
940 下腿部
950 膝関節
960A,960B 足
970 股部
971 尻
973 右足
974 左足

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28