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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】毛髪処理方法及び毛髪用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20240402BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240402BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/92
A61Q5/12
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017082440
(22)【出願日】2017-04-19
(65)【公開番号】P2018177728
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-04-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】川越 紘
(72)【発明者】
【氏名】可須水 綾
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】野田 定文
【審判官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-302648(JP,A)
【文献】特開2007-277193(JP,A)
【文献】特開2015-86169(JP,A)
【文献】特開2014-114237(JP,A)
【文献】特開2018-87153(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0001596(KR,A)
【文献】シャンミーク リッチトリートメント,ドクターベルツ,Cosmetic-Info.jp[online],2011年6月28日,[検索日2021.3.15],URL https://www.cosmetic-info.jp/
【文献】モイスト・ダイアン ストレートスタイル ヘアマスク エクストラモイスト,ストーリア,Cosmetic-Info.jp[online],2016年3月10日,[検索日2021.3.15],URL https://www.cosmetic-info.jp/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)融点50℃以下の固形油及び(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクが配合された毛髪用組成物を毛髪に塗布する処理工程(A)と、
前記処理工程(A)の後に毛髪を加熱する処理工程(B)と、
を備える毛髪処理方法であって、
前記(i)融点50℃以下の固形油が、少なくとも、マンゴー種子脂、カカオ脂、パーム核油、ヤシ油、シア脂、ショレアステノプテラ脂、アフリカマンゴノキ核脂、アボカド脂、サラソウジュ種子脂、アストロカリウムムルムル脂、アストロカリウムムルムル種子脂、アストロカリウムツクマ種子脂、ガルシニアインディカ種子脂、トリチリアエメチカ種子脂、バシアラチホリア種子脂、ガルシニアインディカ種子脂、水素添加カカオ脂、(マカデミア種子油/水添マカデミア種子油)エステルズから選ばれる一種又は二種以上を含む、毛髪処理方法。
【請求項2】
前記毛髪用組成物における(i)融点50℃以下の固形油の配合量が0.01質量%以上5質量%以下であるか、又は、(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクの配合量が0.001質量%以上3質量%以下である請求項1に記載の毛髪処理方法。
【請求項3】
前記(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクの配合量に対する前記(i)融点50℃以下の固形油の配合量の質量比[(i)/(ii)]が5~25である請求項1又は2に記載の毛髪処理方法。
【請求項4】
前記毛髪用組成物が、(iii)ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルデンプンリン酸から選ばれる1種又は2種以上、並びに/又は、(iv)PPG-3カプリリルエーテルが配合されたものである請求項1~のいずれか1項に記載の毛髪処理方法。
【請求項5】
毛髪用組成物を毛髪に塗布する処理工程(A)と、前記処理工程(A)の後に毛髪を加熱する処理工程(B)と、を備える毛髪処理方法の前記処理工程(A)における毛髪用組成物であって、
(i)融点50℃以下の固形油及び(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクが配合され
前記(i)融点50℃以下の固形油が、少なくとも、マンゴー種子脂、カカオ脂、パーム核油、ヤシ油、シア脂、ショレアステノプテラ脂、アフリカマンゴノキ核脂、アボカド脂、サラソウジュ種子脂、アストロカリウムムルムル脂、アストロカリウムムルムル種子脂、アストロカリウムツクマ種子脂、ガルシニアインディカ種子脂、トリチリアエメチカ種子脂、バシアラチホリア種子脂、ガルシニアインディカ種子脂、水素添加カカオ脂、(マカデミア種子油/水添マカデミア種子油)エステルズから選ばれる一種又は二種以上を含む、毛髪用組成物。
【請求項6】
前記(i)融点50℃以下の固形油の配合量が0.01質量%以上5質量%以下であるか、又は、前記(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクの配合量が0.001質量%以上3質量%以下である請求項5に記載の毛髪用組成物。
【請求項7】
(iii)ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルデンプンリン酸から選ばれる1種又は2種以上、並びに/又は、(iv)PPG-3カプリリルエーテルが配合された請求項5又は6に記載の毛髪用組成物。
【請求項8】
前記(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクの配合量に対する前記(i)融点50℃以下の固形油の配合量の質量比[(i)/(ii)]が5~25である請求項5~7のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の毛髪用組成物を毛髪に塗布する工程と、毛髪を加熱する工程とを備える毛髪処理方法、及び当該毛髪処理方法において用いられる毛髪用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪処理において、毛髪用組成物を熱処理前や熱処理後の毛髪に適用する方法が使用される。また、熱を用いた毛髪処理方法として、シリコーン油等を配合した毛髪用組成物を適用した毛髪を加熱して、シリコーンを毛髪に付着させることで、毛髪を柔軟化する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2001-518486号公報
【0004】
熱を用いる毛髪処理方法は、毛髪を柔軟化する上記方法が開示されているが、当該開示には、毛髪の艶を如何に向上させるかまでをも示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、毛髪の艶を向上させる毛髪処理方法、及び、該毛髪処理方法に用いられる毛髪用組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、所定の毛髪用組成物を毛髪に適用する処理工程(A)と、この処理工程(A)の後に毛髪を加熱する処理工程(B)と、を備える毛髪処理方法によれば、毛髪の艶を向上させることを新たに見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
[1]の毛髪処理方法は、(i)融点50℃以下の固形油及び(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクが配合された毛髪用組成物を毛髪に塗布する処理工程(A)と、前記処理工程(A)の後に毛髪を加熱する処理工程(B)と、を備える。
【0008】
[2]の毛髪処理方法は、[1]の毛髪処理方法であって、毛髪用組成物における(i)融点50℃以下の固形油が、油脂である。
【0009】
[3]の毛髪処理方法は、[1]又は[2]の毛髪処理方法であって、毛髪用組成物における(i)融点50℃以下の固形油の配合量が、0.01質量%以上5質量%以下である。
【0010】
[4]の毛髪処理方法は、[1]~[3]のいずれかの毛髪処理方法であって、毛髪用組成物における(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクの配合量が、0.001質量%以上3質量%以下である。
【0011】
[5]の毛髪処理方法は、[1]~[4]のいずれかの毛髪処理方法であって、毛髪用組成物が、(iii)ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルデンプンリン酸から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものである。
【0012】
[6]の毛髪処理方法は、[1]~[5]のいずれかの毛髪処理方法であって、毛髪用組成物が、(iv)PPG-3カプリリルエーテルが配合されたものである。
【0013】
[7]の毛髪用組成物は、毛髪用組成物を毛髪に塗布する処理工程(A)と、前記処理工程(A)の後に毛髪を加熱する処理工程(B)と、を備える毛髪処理方法の前記処理工程(A)における毛髪用組成物であって、(i)融点50℃以下の固形油及び(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクが配合されたものである。
【0014】
[8]の毛髪用組成物は、[7]に記載の毛髪用組成物であって、前記(i)融点50℃以下の固形油が、油脂である。
【0015】
[9]の毛髪用組成物は、[7]又は[8]に記載の毛髪用組成物であって、前記(i)融点50℃以下の固形油の配合量が、0.01質量%以上5質量%以下である。
【0016】
[10]の毛髪用組成物は、[7]~[9]のいずれかに記載の毛髪用組成物であって、前記(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクの配合量が、0.001質量%以上3質量%以下である。
【0017】
[11]の毛髪用組成物は、[7]~[10]のいずれかに記載の毛髪用組成物であって、(iii)ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルデンプンリン酸から選ばれる1種又は2種以上、並びに/又は、(iv)PPG-3カプリリルエーテルが配合されたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の毛髪処理方法によれば、毛髪の艶を向上させることができる。また、本発明の毛髪用組成物によれば、本発明の毛髪処理方法の処理工程(A)において用いられるので、毛髪の艶を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の毛髪処理方法及び毛髪用組成物を、実施形態に基づき説明する。
【0020】
<毛髪処理方法>
本実施形態に係る毛髪処理方法は、下記の処理工程(A)と処理工程(B)を備える毛髪処理方法である。処理工程(A)の前、及び/又は、処理工程(B)の後に、毛髪を処理する公知の毛髪処理工程を設けても良い。
【0021】
<処理工程(A)>
上記処理工程(A)は、所定の毛髪用組成物を毛髪に塗布する工程である。処理工程(A)において、塗布した毛髪用組成物は、当該毛髪処理方法の用途に応じて、洗い流しても良く、洗い流さなくても良い。
【0022】
上記処理工程(A)で使用される毛髪用組成物は、(i)融点50℃以下の固形油(以下、「融点50℃以下の固形油」を「成分(i)」と称することがある。)、(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルク(以下、「N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルク」を「成分(ii)と称することがある。」、及び水が配合されたものである(水の配合量は、例えば60質量%以上)。成分(i)の配合により、毛髪の滑らかさ及び毛先のまとまりを向上させることができ、成分(ii)の配合により、毛髪の艶を向上させることができるが、成分(i)及び成分(ii)の双方を配合することで、いずれか一方の成分を配合するよりも、毛髪の滑らかさ、毛先のまとまり、及び毛髪の艶が向上する。
【0023】
また、上記毛髪用組成物には、任意成分として、公知の毛髪用組成物に配合されている成分を、任意成分として更に配合しても良い。
【0024】
(i)融点50℃以下の固形油
成分(i)である融点50℃以下の固形油は、融点50℃以下の公知の固形油から選ばれた一種又は二種以上であると良い。ここで、前記融点50℃以下の固形油における「固形」とは、25℃において静置すれば一定の形を維持するものを意味し、フレーク状のみならず、ペースト状も含まれる。
【0025】
好適な成分(i)の例としては、油脂が挙げられ、公知の油脂から選ばれた一種又は二種以上を使用すると良い。この油脂は、トリグリセリドを主成分とするものであり、天然物を起源とする、植物油、動物油が知られている。
【0026】
上記植物油としては、例えば、テオブロマグランジフロルム種子脂(融点:25~37℃)、マンゴー種子脂(融点:25~38℃)、カカオ脂(融点:31~39℃)、パーム油(融点:27~50℃)、パーム核油(融点:27~30℃)、ヤシ油(融点:20~28℃)、シア脂(融点:28~45℃)、ショレアステノプテラ脂(融点:30~40℃)、アフリカマンゴノキ核脂(融点:39~40℃)、アボカド脂(融点:40~50℃)、サラソウジュ種子脂(融点:34~38℃)、アストロカリウムムルムル脂(融点:25~37℃)、アストロカリウムムルムル種子脂(融点:25~37℃)、アストロカリウムツクマ種子脂(融点:28~38℃)、ガルシニアインディカ種子脂(融点:37~40℃)、トリチリアエメチカ種子脂(融点:30~40℃)、バシアラチホリア種子脂(融点:29~31℃)、ガルシニアインディカ種子脂(融点:37~43℃)、水素添加カカオ脂(融点:37~45℃)、(マカデミア種子油/水添マカデミア種子油)エステルズ(融点:35~45℃)等が挙げられる。
上記動物油としては、例えば、乳脂(融点:29~30℃)等が挙げられる。
【0027】
前記毛髪用組成物における融点50℃以下の固形油の配合量は、特に限定されるものではないが、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.02質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルク
前記毛髪用組成物における成分(ii)であるN-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクの配合量は、特に限定されるものではないが、0.001質量%以上3質量%以下が好ましく、0.005質量%以上2.8質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上2.5質量%以下がさらに好ましい。
【0029】
また、前記毛髪用組成物において、(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクの配合量に対する(i)融点50℃以下の固形油の配合量の比[(i)/(ii)]は、例えば、5~25である。
【0030】
任意成分
本実施形態の処理工程(A)において用いられる毛髪用組成物には、上記の任意成分を配合しても良い。好適な任意成分としては、(iii)ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルデンプンリン酸から選ばれる1種又は2種以上、(iv)PPG-3カプリリルエーテルである。また、これら成分(iii)、成分(iv)以外の任意成分としては、例えば、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高級アルコール、多価アルコール、低級アルコール、糖類、エステル油、炭化水素、ロウ、シリコーン、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料などである。
【0031】
(iii)ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸(以下、「成分(iii)」と称することがある。)
本実施形態の処理工程(A)において用いられる毛髪用組成物に成分(iii)を配合することで、毛髪の厚み感が向上する。
【0032】
成分(iii)としてヒドロキシエチルセルロースを配合すれば、毛髪の厚み感、毛髪の滑らかさ、毛先の保湿感、毛先のまとまりを向上させることができる。前記毛髪用組成物におけるヒドロキシエチルセルロースの配合量は、特に限定されるものではないが、0.001質量%以上0.3質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.1質量%以下がより好ましく、0.007質量%以上0.05質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
成分(iii)として塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースを配合すれば、毛髪の厚み感、毛先の保湿感を向上させることができる。前記毛髪用組成物における塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースの配合量は、特に限定されるものではないが、0.001質量%以上0.3質量%以下が好ましく、0.003質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。
【0034】
成分(iii)としてヒドロキシプロピルデンプンリン酸を配合すれば、毛髪の厚み感、毛髪の滑らかさを向上させることができる。前記毛髪用組成物におけるヒドロキシプロピルデンプンリン酸の配合量は、特に限定されるものではないが、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0035】
(iv)PPG-3カプリリルエーテル
本実施形態の処理工程(A)において用いられる毛髪用組成物には、カプリリルアルコールのポリプロピレングリコールエーテルであるPPG-3カプリリルエーテルを配合すると良い。PPG-3カプリリルエーテルの配合により、毛先の保湿感や毛先のまとまりを向上させる。
【0036】
前記毛髪用組成物におけるPPG-3カプリリルエーテルの配合量は、特に限定されるものではないが、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、0.3質量%以上2.5質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
前記毛髪用組成物にカチオン界面活性剤を配合することで、この組成物の粘度調整や毛髪の感触改善を行える。このカチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化ステアロキシプロピルトリメチルアンモニウム等の長鎖アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩;が挙げられる。カチオン界面活性剤から選ばれた一種又は二種以上を前記組成物に配合すると良く、前記毛髪用組成物におけるカチオン界面活性剤の配合量は、例えば1質量%以上6質量%以下である。
【0038】
前記毛髪用組成物に高級アルコールを配合することで、この組成物の粘度調整や毛髪の感触改善を行える。この高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖状飽和アルコール;オレイルアルコールなどの直鎖状不飽和アルコール;オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールなどの分岐状飽和アルコール;が挙げられる。高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上を、前記毛髪用組成物に配合すると良く、前記毛髪用組成物における高級アルコールの配合量は、例えば2質量%以上10質量%以下である。
【0039】
剤型
本実施形態の処理工程(A)において用いられる毛髪用組成物の剤型は、特に限定されず、例えば液状、乳液状、ローション状、クリーム状、ワックス状、ゲル状、固形状、フォーム状(泡状)、霧状、粉末状が挙げられる。クリーム状であれば、毛髪への塗布を行い易い。
【0040】
上記剤型の形態は、特に限定されないが、例えばO/W型エマルジョン、W/O/W型エマルジョン、W/O型エマルジョンの形態とすることができる。
【0041】
粘度
本実施形態の処理工程(A)において用いられる毛髪用組成物の粘度は、特に限定されないが、例えば、50,000mPa・s以下である。なお、上記粘度は、B型粘度計を使用し、適宜なローターを用いて、25℃でローター回転数12rpmとして計測したときの、計測開始から60秒後の値を意味している。
【0042】
pH
本実施形態の処理工程(A)において用いられる毛髪用組成物のpHは、特に限定されないが、例えば、4~7である。なお、pHの値は25℃における測定値が採用される。
【0043】
塗布方法
処理工程(A)では、毛髪用組成物を毛髪に塗布する。この塗布方法は、毛髪用組成物の剤型に応じて適宜設定すると良く、手又は器具等を用いて毛髪に塗布、噴霧等を行う方法が挙げられる。
【0044】
<処理工程(B)>
本実施形態の毛髪処理方法に係る処理工程(B)は、処理工程(A)で処理した後の毛髪を加熱する処理工程である。
【0045】
加熱
本実施形態の処理工程(B)における加熱は、市販のヘアドライヤー、毛髪を伸ばして直線形状に近づけるためのヘアアイロン、毛髪形状をカール状やウェーブ状にするためのカーリングアイロン、ホットカーラーを使用して行うと良い。そして、典型的には、毛髪が乾燥するまで加熱を行う。毛髪を加熱することで、成分(i)が毛髪表面に広がり、毛髪の艶が向上すると考えられる。
【0046】
<処理回数>
上記の処理工程(A)と処理工程(B)を備える本実施形態の毛髪処理方法により、毛髪を繰り返し処理すれば、毛髪の艶がより優れるものとなる。繰り返しの回数は、2回以上が良く、5回以上が好ましく、10回以上がより好ましく、15回以上が更に好ましい。なお、上記複数回の繰り返しによる艶の向上は、処理工程(B)の終了後から処理工程(A)を開始するまでの間の毛髪に対してシャンプー処理を行った場合にも確認されている。
【0047】
<用途>
本実施形態に係る毛髪処理方法は、洗い流すトリートメント(リンス、コンディショナーを含む意味)、洗い流さないトリートメント、スタイリング剤を使用する際の方法に採用することが好適である。これらの方法では、洗い流すトリートメント、洗い流さないトリートメント、又はスタイリング剤を毛髪に塗布する工程が処理工程(A)に該当し、処理工程(B)においてヘアドライヤーなどで毛髪を加熱する。
【実施例
【0048】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0049】
(毛髪用組成物(トリートメント))
後記実施例及び比較例の毛髪処理方法で使用したトリートメント(クリーム状のO/W型エマルジョン)を、表1、表3~4に示す成分と水と混合して調製した。
【0050】
(毛髪処理)
無作為に選定した肩よりも長い毛髪を有する女性に対して、アニオン界面活性剤が配合されたシャンプーで毛髪を洗浄した後、女性の頭部の左半分と右半分の頭髪に異なる毛髪用組成物(トリートメント)を塗布した。その後、温水で塗布したトリートメントを洗い流してから、ドライヤーの熱風で頭髪を乾燥させた。以上を、実施例1a、比較例1a~1b、実施例3a~3e、実施例4a、4bの毛髪処理方法による毛髪処理とした。
【0051】
(毛髪処理の評価)
上記毛髪処理後の毛髪について、「毛髪の艶」、「毛髪の滑らかさ」、「毛先のまとまり」、「毛髪の厚み感」、「毛先の保湿感」のいずれかについて、各表に示す通りの評価を、目視又は触診により行った。ここで、「毛髪の艶」とは目視による毛髪表面の艶であり、「毛髪の滑らかさ」とは毛髪表面が平滑で整っている感触であり、「毛先のまとまり」とは目視による毛先のまとまりであり、「毛髪の厚み感」は毛髪の表面がコーティングされているような感触であり、「毛先の保湿感」とは毛先がしっとりとする感触である。
【0052】
各評価は、評価者の人数を5名とし、頭部の右半分の毛髪と基準とした頭部の左半分の毛髪と比較して、各評価者に「基準と較べて良い」、「基準とほぼ同等」、「基準と較べて悪い」の中からいずれか1つを回答させ、その結果を下記基準に従って評価結果とした。
【0053】
評価基準
◎:基準と較べて、4名以上が良いと回答。
○:基準と較べて、3名が良いと回答し2名が同等若しくは悪いと回答、又は、2名が良いと回答し2名以上が同等と回答。
-:基準と較べて、4名以上が同等と回答、又は、3名が同等と回答し1名が良いと回答し1名が悪いと回答。
△:基準と較べて、3名が悪いと回答し2名が同等若しくは良いと回答、又は、2名が悪いと回答し2名以上が同等と回答。
×:基準と較べて、4名以上が悪いと回答。
【0054】
(複数回の毛髪処理)
同一人の頭髪から作製した3つの毛束をアニオン界面活性剤が配合されたシャンプーで洗浄し、各毛束に対して毛髪用組成物(トリートメント)を塗布した。その後、温水で塗布したトリートメントを洗い流してから、ドライヤーの熱風で毛束を乾燥させた。以上のシャンプーから乾燥までの毛髪処理を14回行った。以上を実施例1a、比較例1a、1bの毛髪処理方法による複数回の毛髪処理とした。
【0055】
また、実施例1aの毛髪処理方法による複数回の毛髪処理における、ドライヤーの熱風で毛束を乾燥させる工程を、ドライヤーの冷風で毛束を乾燥させる工程に変更した以外は、実施例1aの毛髪処理方法と同様にして、同一人の頭髪から作製した毛束に毛髪処理を行った。以上を比較例2aの毛髪処理方法による複数回の毛髪処理とした。
【0056】
なお、複数回の毛髪処理の評価のために、1回目の処理前の毛束から複数本の毛束を予め採取し、これを「処理前毛髪」とした。また、7回目の毛髪処理を行った複数本の毛髪を採取し、これを「7回処理後毛髪」とし、14回目の毛髪処理を行った毛束から複数本の毛髪を採取し、「14回処理後毛髪」とした。
【0057】
(複数回の毛髪処理の評価)
上記複数回の毛髪処理において毛束から採取した「処理前毛髪」、「7回処理後毛髪」、「14回処理後毛髪」について、村上色彩技術研究所社製ゴニオフォトメーター「自動変角光度計(GONIOPHTOMETER) GP-200」を用いた機器測定により、毛髪の艶を評価した。
【0058】
上記機器測定では、「毛髪処理前毛髪」、「7回処理後毛髪」、「14回処理後毛髪」を、それぞれゴニオフォトメーターの試料台に貼付し、入射角30度、受光角度0度から90度にして、各毛髪の全反射強度を測定した(測定数は各毛髪に対して3回)。得られた全反射強度からピーク面積を測定し、さらに全反射強度のピークの中から、正反射強度のピークを分離し、正反射強度のピーク面積を測定した。続いて、下記の式(1)、式(2)で表される数式により「7回処理後の艶の変化率」及び「14回処理後の艶の変化率」を求め、3回測定の平均値を算出した。なお、艶の変化率の数値が大きいものの方が、数値が小さいものに比べて、毛髪の艶に優れることを示す。
【0059】
【数1】
【0060】
実施例及び比較例の毛髪処理方法による評価の結果を、用いたトリートメントに配合した成分と共に下記表1~4に示す。なお、下記表1、表3、表4における各成分の数値は質量%を表す。
【0061】
【表1】
【0062】
上記表1において、実施例1aの毛髪処理方法は、(i)融点50℃以下の固形油であるテオブロマグランジフロルム種子脂、マンゴー種子脂及び(マカデミア種子油/水添マカデミア種子油)エステルズと、(ii)N-[2-ヒドロキシ-3-[3-(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルクが配合されたトリートメントを用いたことにより、比較例1a、1bの毛髪処理方法と比較して、毛髪の艶、毛髪の滑らかさ、毛先のまとまりに優れる結果であった事が確認できる。
【0063】
また、実施例1aの毛髪処理方法を7回、14回と繰り返すことで、毛髪の艶の変化率は7回処理よりも14回処理の値が大きくなり、毛髪の艶がより優れていたことが確認できるのに対し、比較例1a、1bの毛髪処理方法を7回、14回繰り返しても毛髪の艶の変化率はほとんど変化が見られず、毛髪の艶が向上しなかったことが確認できる。
【0064】
【表2】
【0065】
上記表2において、加熱を行った実施例2aの毛髪処理方法を7回、14回と繰り返すことで、毛髪の艶の変化率は7回処理よりも14回処理の値が大きくなり、毛髪の艶がより優れていたことが確認できるのに対し、加熱を行わなかった比較例2aの毛髪処理方法を7回、14回繰り返しても毛髪の艶の変化率はほとんど変化が見られず、毛髪の艶が向上しなかったことが確認できる。
【0066】
【表3】
【0067】
上記表3において、(iii)ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルデンプンリン酸のいずれかが配合されたトリートメントを用いた実施例3a~3dの毛髪処理方法は、成分(iii)が配合されていない実施例3eの毛髪処理方法よりも、毛髪の厚み感に優れる結果であった事が確認できる。なお、ヒドロキシエチルセルロースが配合されたトリートメントを用いた実施例3a、3bの毛髪処理方法は、実施例3c~3eの毛髪処理方法よりも、毛髪の滑らかさ、毛髪の保湿感、毛先のまとまりのいずれもが優れていたことが確認できる。
【0068】
【表4】
【0069】
上記表4において、(iv)PPG-3カプリリルエーテルが配合されたトリートメントを用いた実施例4aの毛髪処理方法は、成分(iv)が配合されていない実施例4bの毛髪処理方法よりも、毛髪の保湿感、毛先のまとまりに優れていた事が確認できる。