(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】充填状況監視装置及び充填状況監視方法
(51)【国際特許分類】
B65B 3/30 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
B65B3/30
(21)【出願番号】P 2019096285
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-03-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】出原 隆司
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02808291(EP,A1)
【文献】特表2002-527313(JP,A)
【文献】特開2013-073584(JP,A)
【文献】特開平09-058793(JP,A)
【文献】特開平09-021789(JP,A)
【文献】特開2008-074618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 3/26 - 3/30
B65B 57/00 - 57/10
B65B 1/48
B67C 3/20
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体充填ラインにおける充填容器への液体の充填状況を監視する充填状況監視装置であって、
前記充填容器に前記液体を充填する充填装置に流入する前記液体の流入量を取得する流入量取得部と、
前記充填容器あたりの充填容量の設定値である設定充填容量を記憶する充填容量記憶部と、
前記液体が充填された前記充填容器の充填数を取得する充填数取得部と、
前記設定充填容量と前記充填数とに基づいて、充填された前記液体の理論充填総量を得るとともに、前記流入量と前記理論充填総量とのバランスを得る算出部と、
前記バランスに関する情報を表示する表示部と、
を備え、
前記算出部は、前記液体の充填開始から現時点までの前記流入量の総量、前記充填数の総数及び前記理論充填総量を用いて前記バランス
の算出を行い、
前記表示部は、所定時間経過後までバランス異常に起因する警告の表示を行わないことで、前記充填容器への前記液体の充填に異常が生じやすい期間を除いた期間における前記バランスに関する情報を表示する
充填状況監視装置。
【請求項2】
液体充填ラインにおける充填容器への液体の充填状況を監視する充填状況監視装置であって、
前記充填容器に前記液体を充填する充填装置に流入する前記液体の流入量を取得する流入量取得部と、
前記充填容器あたりの充填容量の設定値である設定充填容量を記憶する充填容量記憶部と、
前記液体が充填された前記充填容器の充填数を取得する充填数取得部と、
前記設定充填容量と前記充填数とに基づいて、充填された前記液体の理論充填総量を得るとともに、前記流入量と前記理論充填総量とのバランスを得る算出部と、
前記バランスに関する情報を表示する表示部と、
を備え、
前記算出部は、前記液体の充填開始の所定時間経過後から現時点までの前記流入量の総量、前記充填数の総数及び前記理論充填総量を用いて前記バランスを
算出することで、前記充填容器への前記液体の充填に異常が生じやすい期間を除いた期間における前記バランスを算出する
充填状況監視装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記バランスが所定の設定範囲外となった場合に、警告を示す情報を表示する
請求項1又は2に記載の充填状況監視装置。
【請求項4】
前記バランスが所定の設定範囲外となった場合に警告を示す音を出力するスピーカ、及び前記バランスが所定の設定範囲外となった場合に警告を示す光を出力する警告灯のうちの少なくとも一方を備える
請求項1から3のいずれか1項に記載の充填状況監視装置。
【請求項5】
外部ネットワークを介して外部装置と接続するための通信部を備え、
前記算出部は、前記通信部を介して前記外部ネットワークに前記警告に関する信号を送信する
請求項3又は4に記載の充填状況監視装置。
【請求項6】
前記算出部は、前記バランスとして、前記流入量に対する前記理論充填総量の割合、又は前記流入量に対する前記流入量と前記理論充填総量との差分の割合を算出する
請求項1から5のいずれか1項に記載の充填状況監視装置。
【請求項7】
ユーザからの指示が入力される入力部を備え、
前記充填容量記憶部は、前記入力部から入力された前記指示に基づいて、前記設定充填容量を記憶する
請求項1から6のいずれか1項に記載の充填状況監視装置。
【請求項8】
充填容器への液体の充填状況を監視する充填状況監視方法であって、
前記充填容器への充填容量の設定値である設定充填容量を記憶する充填容量記憶ステップと、
充填容器に液体を充填する充填装置に流入する前記液体の流入量を取得する流入量取得ステップと、
前記液体が充填された前記充填容器の充填数を取得する充填数取得ステップと、
前記設定充填容量と前記液体の充填開始から現時点までの前記充填数の総数とに基づいて、充填された前記液体の理論充填総量を得るとともに、前記液体の充填開始から現時点までの前記流入量の総量と前記理論充填総量とのバランスを算出するバランス算出ステップと、
前記バランスに関する情報を表示する表示ステップと、
を備え
、
前記表示ステップでは、所定時間経過後までバランス異常に起因する警告の表示を行わないことで、前記充填容器への前記液体の充填に異常が生じやすい期間を除いた期間における前記バランスに関する情報を表示する充填状況監視方法。
【請求項9】
充填容器への液体の充填状況を監視する充填状況監視方法であって、
前記充填容器への充填容量の設定値である設定充填容量を記憶する充填容量記憶ステップと、
充填容器に液体を充填する充填装置に流入する前記液体の流入量を取得する流入量取得ステップと、
前記液体が充填された前記充填容器の充填数を取得する充填数取得ステップと、
前記設定充填容量と前記液体の充填開始の所定時間経過後から現時点までの前記充填数の総数とに基づいて、充填された前記液体の理論充填総量を得るとともに、前記液体の充填開始の所定時間経過後から現時点までの前記流入量の総量と前記理論充填総量とのバランスを算出する
ことで、前記充填容器への前記液体の充填に異常が生じやすい期間を除いた期間における前記バランスを算出するバランス算出ステップと、
前記バランスに関する情報を表示する表示ステップと、
を備える充填状況監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体充填ラインにおける充填容器への液体の充填状況を監視する充填状況監視装置及び充填状況監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充填機を用いて、金属缶や合成樹脂製ボトル等の充填容器に飲料、洗剤、薬品、化粧品等の溶液が充填されることが行われている。このような充填容器には、予め設定された充填予定量に対して多すぎる量の液体が充填されることがあり、適正量を充填することが望まれている。
【0003】
充填量の監視する方法として、例えば液体を充填後の充填容器に光を照射し、カメラによって液面の画像を補足して液面の高さを監視する技術が開示されている(特許文献1)。また、例えばプラント設備等において、設備の所定領域に流入する物質量と設備の所定領域から流出する物質量とを測定し、物質量の収支を監視する技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-218077号公報
【文献】特開2013-73584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各充填容器内の液体の高さを監視することで充填量が適正であるかを判断する方法は、適正量か否かの判断を容易に行うことができるものの、適正量に対してどの程度多く又は少なく充填されているかの判断を行うことが困難である。
【0006】
また、液体を充填容器に充填する場合には、所定時間における充填量を得るために、一定数の液体充填後の充填容器の総重量と充填容器のみでの総重量とから溶液の充填量を算出する等の方法を用いる必要がある。
【0007】
このため、溶液の充填ラインにおいて充填量がどの程度適正値から増減しているかをリアルタイムで知ることは困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、液体の充填量と適正な充填量との乖離をリアルタイムで把握可能な充填状況監視装置及び充填状況監視方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る充填状況監視装置は、液体充填ラインにおける充填容器への液体の充填状況を監視する充填状況監視装置であって、充填容器に液体を充填する充填装置に流入する液体の流入量を取得する流入量取得部と、充填容器への充填容量の設定値である設定充填容量を記憶する充填容量記憶部と、液体が充填された充填容器の充填数を取得する充填数取得部と、設定充填容量と充填数とに基づいて、充填された液体の理論充填総量を得るとともに、流入量と理論充填総量とのバランスを得る算出部と、バランスに関する情報を表示する表示部と、を備える。
【0010】
また、本発明の他の態様に係る充填状況監視方法は、充填容器への液体の充填状況を監視する充填状況監視方法であって、充填容器への充填容量の設定値である設定充填容量を記憶する充填容量記憶ステップと、充填容器に液体を充填する充填装置に流入する液体の流入量を取得する流入量取得ステップと、液体が充填された充填容器の充填数を取得する充填数取得ステップと、設定充填容量と充填数とに基づいて、充填された液体の理論充填総量を得るとともに、流入量と理論充填総量とのバランスを算出するバランス算出ステップと、バランスに関する情報を表示する表示ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、液体の充填量と適正な充填量との乖離をリアルタイムで把握可能な充填状況監視装置及び充填状況監視方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る充填状況監視装置を用いる液体充填ラインの一構成例を示す模式図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る充填状況監視装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る充填状況監視装置の表示部における液体充填ラインの監視状況を表示の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係る充填状況監視方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
以下、図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。
【0014】
1.実施形態
以下、本発明の実施形態に係る充填状況監視装置及び充填状況監視装置において実行される充填状況監視方法について、
図1から
図4を用いて説明する。
【0015】
<充填状況監視装置を用いる液体充填ラインの構成>
図1は、充填状況監視装置を用いる液体充填ラインの一構成例を示す模式図である。
本発明の実施形態に係る充填状況監視装置は、
図1に示す液体充填ラインの充填工程における充填容器への液体の充填状況を監視する。
【0016】
液体充填ラインは、充填容器1を搬送する搬送機構6を備えている。また、液体充填ラインは、充填容器1に液体Lを充填する充填バルブ5と、液体Lが貯蔵される貯液タンク4と、貯液タンク4に流入する液体Lの流入量を取得する流量計3とを備えている。また、液体充填ラインは、図示しない貯蔵タンクから貯液タンク4に対して液体Lを輸送する輸送ライン9とを備えている。さらに、液体充填ラインは、充填容器1に対して蓋体2を巻き締める密栓装置7と、液体Lが充填された充填容器1の充填数を取得する赤外線センサ等の近接センサ8とを備えている。貯液タンク4及び充填バルブ5により、充填装置が構成される。
【0017】
液体充填ラインでは、t方向に液体Lが輸送される。液体充填ラインでは、まず、輸送ライン9を介して貯液タンク4に液体Lが輸送される。続いて、液体Lは、貯液タンク4の充填バルブ5を介して、搬送機構6で搬送された空の充填容器1に充填される。このとき、液体Lは、連続的または断続的に充填容器1の内部に充填される。充填容器1は、
図1に示すX方向に搬送される。
【0018】
液体Lが充填された充填容器1の上部には、密栓装置7によって、図示しないシーリングコンパウンドを介して蓋体2が巻き締められる。これにより、液体Lが充填容器1及び蓋体2内に密封される。
最後に、例えば赤外線センサ等の近接センサである近接センサ8により、液体Lが充填された充填容器1の充填数が検出される。この後、液体Lが充填された充填容器1は、検査工程等の工程を経て出荷される。
【0019】
液体Lとしては、液体であれば特に制限はなく、飲料又は非飲料のいずれであっても良い。液体Lとしては、具体的に、発泡性の気体を含む液体であるビール、発泡酒、発泡性リキュールなどの発泡性アルコール飲料、炭酸飲料、炭酸水などであってもよい。
【0020】
液体Lが発泡性液体の場合には、液体Lの充填後に、図示しない注入ノズル等を介して液体Lの液面に流体を注入しても良い。流体によって発泡性の液体Lを発泡させることにより、充填容器1上部の液体Lが充填されていない部分に存在する空気(特に酸素)を充填容器1から排除することができる。流体は、液体、気体のいずれであってもよく、例えば水、二酸化炭素、充填容器1に充填された液体Lと同じ液体が挙げられる。
【0021】
充填容器1は、例えば、
図1で示すような缶状容器の他、瓶、プラスチックボトル等の容器が好適に用いられる。充填容器1は、液体Lを収容することができるものであれば特に制限はなく、充填容器1の容量にも特に制限はない。
充填容器1を構成する材料に特に制限はなく、例えば、金属(例えばアルミニウム)、ガラス、プラスチック(例えばPET)等の材料が用いられる。
【0022】
蓋体2は、充填容器1の形状、材質に応じて決まる。蓋体2は、例えば
図1で示すような缶状容器の蓋体となる金属蓋体(アルミニウム)、瓶を密封する王冠やスクリューキャップ、プラスチックボトルを密封するプラスチックキャップ等が用いられる。
【0023】
搬送機構6としては、
図1に示すコンベア式の搬送機構(例えば、ベルトコンベア、チェーンコンベアなど)や、回転式の搬送機構(例えば、ホイール、星形ホイール)等が用いられる。
【0024】
本発明に係る充填状況監視装置は、上述した液体充填ラインの充填工程において、液体Lの充填状況を監視する。充填状況監視装置は、充填状況の監視結果を表示部等に表示する。
【0025】
<充填状況監視装置の構成>
図2は、第一実施形態に係る充填状況監視装置100の一構成例を説明するためのブロック図である。
充填状況監視装置100は、タッチパネル10と、記憶部20と、算出部30と、流入量取得部40と、充填数取得部50と、通信部60とを備えている。充填状況監視装置100は、上述した液体充填ラインから取得した情報に基づいて、充填容器1への充填状況を監視する。充填状況監視装置100は、検出した充填状況を、タッチパネル10の表示部12に表示する。また、充填状況監視装置100は、検出した充填状況に応じて表示部12に警告を表示することも可能である。
以下、タッチパネル10の表示部12に検出した充填状況を表示するとともに、検出した充填状況に応じて表示部12に警告を表示する充填状況監視装置100について説明する。
【0026】
(通信部)
通信部60は、充填状況監視装置100の外部のネットワーク(以下、外部ネットワークという)を介して外部装置と接続されており、データの送受信を行う。通信部60は、例えば液体充填ラインの流量計3及び近接センサ8から、貯液タンク4に流入する液体Lの流入量及び液体Lが充填された充填容器1の充填数をそれぞれ取得する。
【0027】
(流入量取得部)
流入量取得部40は、例えば流量計であり、充填容器1に液体Lを充填する充填装置である貯液タンク4に流入する液体Lの流入量を取得する。
【0028】
(充填数取得部)
充填数取得部50は、液体Lが充填された充填容器1の充填数を取得する。充填数取得部50は、例えば赤外線センサ等の一般的に用いられる光学式センサや、その他のセンサが用いられる。
【0029】
(記憶部)
記憶部20は、充填容量記憶部22を有している。
充填容量記憶部22は、一つの充填容器1当たりの充填容量の設定値である設定充填容量を記憶する。充填容量記憶部22に記憶される設定充填容量は、例えば入力部14を介してユーザにより入力された数値であり、充填容器1が缶容器である場合には例えば350ml又は500ml、もしくはその他任意の容量である。また、設定充填容量は、予め充填容量記憶部22に記憶されていても良い。例えば充填状況監視装置100が特定の容量を充填する液体充填ラインのみで用いられる場合、設定充填容量が予め充填容量記憶部22に記憶されていれば、入力部14が設けられていなくても良い。
【0030】
また、記憶部20は、その他の情報が記憶される。例えば、記憶部20は、算出部30が算出するバランスの正常値を記憶する。また、記憶部20は、液体充填ラインの充填状況を監視するための充填状況監視プログラム、通信部60を介して信号の送受信を行うための通信プロトコル、及び充填状況監視装置100内での動作を制御するためのプログラム等を記憶している。
記憶部20は、例えばROM(Read‐Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等を備える。記憶部20は、上述した所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0031】
(算出部)
算出部30は、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)を含むマイクロコンピュータである。算出部30は、貯液タンク4に流入する液体Lの流入量と、充填容器1に理論上充填された液体Lの合計量である理論充填総量とのバランスを得る機能を有する。算出部30は、流入量取得部40から、貯液タンク4に流入する液体Lの流入量を取得する。また、算出部30は、充填数取得部50から、近接センサ8で検出された液体L充填済みの充填容器1の数である充填数を取得する。算出部30は、取得した設定充填容量と充填数とに基づいて、充填された液体Lの理論充填総量を得るとともに、液体Lの流入量と理論充填総量とのバランスを得る。
【0032】
算出部30は、バランスとして、例えば流入量に対する流入量と理論充填総量との差分の割合(以下、欠減歩合という)を算出する。欠減歩合は、液体Lの流入量に対する充填容器1に充填されなかった液体Lの量の割合を示す。算出部30は、バランスとして、例えば貯液タンク4への液体Lの流入量に対する理論充填総量の割合(以下、成功歩合という)を算出しても良い。成功歩合は、液体Lの流入量に対する、充填容器1に充填された液体Lの量の割合を示す。また、算出部30は、バランスとして、液体Lの流入量と理論充填総量との差分や、充填容器1当たりの実充填量(液体Lの流入量/充填数)と設定充填容量との差分を算出しても良い。
【0033】
液体Lの流入量は、液体充填ラインの充填状況に応じて増減する。例えば、液体充填ラインでは、貯液タンク4内の液体Lの量がある程度一定となるように設定されている。このため、液体充填ラインのいずれかの箇所において液体Lの漏れが生じていた場合、図示しない貯蔵タンクから貯液タンク4に対して輸送される液体Lの流量は増加するように調整される。このため、液体Lの漏れが生じていた場合、同じ充填数(すなわち同じ理論充填総量)の場合であっても液体Lの流入量が増加し、流入量と理論充填総量との差分が大きくなる。
【0034】
算出部30は、算出したバランスが設定した正常値の範囲外となった場合には、液体充填ラインの充填状況に異常があるものとして、警告に関する信号(以下、警告信号という)をタッチパネル10に出力する。
一例として、バランスが欠減歩合(一例として百分率で示す)である場合、欠減歩合0%は、貯液タンク4に導入された液体Lの全てが充填容器1に充填されたことを示す。警告信号をタッチパネル10に出力する。欠減歩合の正常値を-3%以上+3%以下とした場合、算出部30は、欠減歩合が3%を超えたとき又は-3%を下回ったときに、警告信号を出力する。
なお、欠減歩合が正常値の範囲を超えた場合、充填容器1に充填された液体Lが設定値に対して少なすぎ、欠減歩合が正常値の範囲を下回った場合、充填容器1に充填された液体Lが設定値に対して多すぎることを示す。
【0035】
算出部30は、ある程度長い時間における流入量、充填数及び理論充填総量を用いて液体Lの流入量と理論充填総量とのバランスを算出することにより、高い精度で当該バランスを得ることができる。このため、算出部30は、液体Lの充填開始から現時点までの流入量、充填数及び理論充填総量を用いてバランスを得ることが好ましい。
【0036】
また、算出部30は、液体Lの充填開始の所定時間経過後から現時点までの流入量、充填数及び理論充填総量を用いてバランスを得ることがより好ましい。液体Lの充填開始から一定時間は、例えば充填容器1への充填量が十分ではない等の異常が生じる場合があるためである。このため、充填状況監視装置100は、監視精度向上のために、例えば液体Lの充填開始の所定時間(例えば10~20分)経過後、又は所定本数(15,000~20,000本)の充填完了後に、充填状況の監視を開始することがより好ましい。
【0037】
このとき、充填状況監視装置100は、充填開始の所定時間経過後まで、液体充填ラインの流量計3及び近接センサ8からの液体Lの流入量及び充填容器1の充填数を取得しないようにしても良い。
【0038】
また、充填状況監視装置100は、液体Lの充填開始時から液体Lの流入量及び充填容器1の充填数を取得し、算出部30でのバランスの算出を行いつつ、所定時間経過後までバランス異常に起因する警告の表示のみを行わないようにしても良い。この場合、充填状況監視装置100は、バランスの算出精度が向上するまでは充填開始の所定時間経過後までは警告の表示が行わないようにしつつ、装置内部において溶液充填ラインの監視を行うことができる。
充填状況監視装置100が、液体Lの充填開始時から液体Lの流入量及び充填容器1の充填数を取得しつつ、充填開始の所定時間経過後まで算出部30におけるバランスの算出を行わない場合も同様である。
【0039】
(タッチパネル)
タッチパネル10は、表示部12と、入力部14と、指定位置検出部16とを有している。
タッチパネル10では、例えば
図3に示すように、表示部12に液体充填ラインの監視状況を表示することができる。また、タッチパネル10では、ユーザによる操作用ボタン表示領域のタッチ入力により、充填状況監視に必要な情報の入力等を行うことができる。
【0040】
表示部12は、例えば液晶ディスプレイである。表示部12は、図示しない制御部の制御に従って、操作用ボタンとして複数の文字、数字、表、図形等のオブジェクトを画面上に表示する。また、表示部12は、後述する算出部30から受信した算出結果に基づいて充填状況の監視結果を表示したり、算出部30から受信した警告信号に基づいて、警告として複数の文字、数字、表、図形等のオブジェクトを画面上に表示する。
【0041】
表示部12は、液体充填ラインの監視状況として、例えば液体Lの流入量、液体L充填済みの充填容器1の充填数、液体Lの理論充填総量、充填容器1当たりの実充填量、算出部30で算出されたバランスに関する情報等を表示する。バランスに関する情報は、ほぼリアルタイムで、すなわち充填状況監視装置100が液体充填ラインの流量計3及び近接センサ8から液体Lの流入量及び充填数を取得すると直ちに算出され、表示部12に表示される。
【0042】
また、表示部12は、充填中の液体Lに関する情報を表示する。充填中の液体Lに関する情報は、例えば外部ネットワークを介して上位の制御用コンピュータから取得されて表示される。液体充填ラインの監視状況は、例えば日付、液体Lの種類又は充填容器1の種類(容量)が同一の場合はリアルタイムで更新されながら表示され、日付、液体Lの種類又は充填容器1の種類(容量)が変更された場合には、新たな監視情報として表示される。
【0043】
表示部12は、算出部30からの警告信号に基づいて、バランスに関する情報の他の例である警告を表示してもよい。
図3は、表示部12に警告が表示された状態の画面の一例を示す。
図3では、欠減歩合が正常値の範囲外となったことに伴い、欠減歩合の項目が反転表示されて強調された例を示している。
【0044】
図3に示すように、表示部12には、液体の種類や商品名(例えばA,B,C)、当該液体の充填容器1への設定充填容量(例えばR:350ml、H:500ml)、当該液体の充填開始日時が表示されている。
例えば、2019年4月1日の1:31(午前1:31)に充填が開始された液体Lは、設定充填容量が350mlの液体Lの種類(商品名)が「A」の液体である。表示部12には、液体「A」の充填開始時(1:31)から現時点までの流入量(L)「a1」、充填数(本)「b1」、理論充填総量(L)「c1」、液体「A」の流入量と理論充填総量との差分(L)「d1」、成功歩合(%)「e1」、欠減歩合(%)「f1」及び実充填量(ml/本)「g1」が表示されている。
【0045】
また、
図3には、過去の充填状況として、以下の液体Lの充填状況を表示している。
・2019年3月31日の13:34(午後1:34)に充填が開始された液体L(設定充填容量500ml、液体Lの種類(商品名)「B」)
・2019年3月31日の2:43(午前2:43)に充填が開始された液体L(設定充填容量350ml、液体Lの種類(商品名)「B」)
・2019年3月30日の16:32(午後4:32)に充填が開始された液体L(設定充填容量500ml、液体Lの種類(商品名)「C」)
図3に示すように、表示部12には、充填開始時から充填終了時までの充填状況として、流入量(L)「a2」「a3」「a4」、充填数(本)「b2」「b3」「b4」、理論充填総量(L)「c2」「c3」「c4」、液体Lの流入量と理論充填総量との差分(L)「d2」「d3」「d4」、成功歩合(%)「e2」「e3」「e4」、欠減歩合(%)「f2」「f3」「f4」及び実充填量(ml/本)「g2」「g3」「g4」がそれぞれ表示されている。
なお、a1~g1、a2~g2、a3~g3、a4~g4は、実際には具体的な数値である。
【0046】
このとき、算出部30は、バランスとして「欠減歩合」を算出する。また、記憶部20には、バランスである「欠減歩合」の正常値が「-3%以上+3%以下」と記憶されているものとする。算出部30は、算出した欠減歩合(%)「f1」を記憶部20に記憶された正常値と比較し、正常値の範囲外にある場合には、
図3に示すように「f1」の表示領域を例えば反転させて表示する。これにより、液体充填ラインでの異常を示す警告を表示することができる。
ここで、警告は、所定の項目を反転表示させる以外に、所定の項目の点滅表示、赤色等への変色表示等により強調して表示される。
【0047】
入力部14は、例えば静電容量式のタッチパネル10の一部であり、ユーザの指示が入力される。入力部14は、入力部14の表面であるタッチ領域がユーザの手の指先等の被検出体でタッチされると、被検出体の検出位置に対応する電極の静電容量が変化する。入力部14は、表示部12の画面上に重ねて配置される。これにより、表示部12の画面の全体が入力部14のタッチ領域となる
【0048】
指定位置検出部16は、入力部14へのユーザの指示の入力に基づいて、ユーザにより指定された画面上の位置を検出する。すなわち、指定位置検出部16は、入力部14のタッチ領域のうちのユーザにタッチされた位置を検知し、当該位置における静電容量の変化を検出する。指定位置検出部16の出力信号は図示しない制御部に送信される。
これにより、例えば充填容量記憶部22に、設定充填容量が記憶される。
【0049】
なお、本実施形態では、タッチパネル10に入力部14及び指定位置検出部16が設けられて構成を示しているが、このような構成に限られない。すなわち、表示部12と入力部14とが別に設けられていても良い。入力部14は、タッチパネルであっても良く、キーボード等の入力装置であっても良い。入力部14は、例えば液体充填ラインを制御する上位の制御用コンピュータのキーボード等である。上位の制御用コンピュータの入力部14には、液体充填ラインにおける生産計画(充填される液体Lの種類、充填容器1の種類(容量)等)が入力される。
【0050】
以上説明した充填状況監視装置100では、以下のような充填状況監視方法が実行される。
【0051】
<充填状況監視方法>
以下、上述した充填状況監視装置100において実行される充填状況監視方法について、
図1~3を参照しつつ
図4を用いて説明する。
図4は、充填状況監視装置100の各部において実行される充填状況監視方法を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明では、算出部30が算出したバランスが設定した正常値の範囲外となった場合に、警告を表示する場合について説明する。
【0052】
まず、充填容量記憶部22は、充填容器1への充填容量の設定値である設定充填容量を記憶する(ステップS11)。設定充填容量は、例えば入力部14を介してユーザにより入力された値である。
【0053】
流入量取得部40は、通信部60を介して、充填容器1に液体Lを充填する充填装置である貯液タンク4に流入する液体Lの流入量を取得する(ステップS12)。液体Lの流入量は、通信部60及び図示しない外部ネットワークを介して、液体充填ラインの流量計3から液体Lの流入量を定期的に取得する。流入量取得部40は、取得した流入量を算出部30に送信する。
【0054】
充填数取得部50は、通信部60を介して、液体Lが充填された充填容器1の充填数を取得する(ステップS13)。通信部60は、図示しない外部ネットワークを介して、液体充填ラインの近接センサ8から充填容器1の充填数を定期的に取得する。充填数取得部50は、取得した充填数を算出部30に送信する。
なお、ステップS13における充填数の取得動作と、ステップS12の流入量の取得動作の順序は問わない。
【0055】
算出部30は、ステップS13で取得した設定充填容量と充填数とに基づいて、充填された液体Lの理論充填総量を得る。理論充填総量は、設定充填容量と充填数とを乗算することにより得られる。また、算出部30は、ステップS12で取得した液体Lの流入量と理論充填総量とのバランスを算出する(ステップS14)。算出部30は、バランスとして、例えば流入量に対する流入量と理論充填総量との差分の割合(以下、欠減歩合という)を算出する。算出部30は、算出したバランスを、表示部12に送信する。
【0056】
表示部12は、算出部30から取得したバランスに関する情報を表示する(ステップS15)。
続いて、例えば図示しない制御部は、算出部30で算出されたバランスが所定の設定範囲外であるか否かを判断する(ステップS16)。バランスが所定の設定範囲外であると判断された場合(ステップS16のYes)、算出部30は、液体充填ラインの充填状況に異常があるものとして、警告信号を表示部12に出力し、処理がステップS17に移る。
一方、バランスが所定の設定範囲外であると判断されなかった場合(ステップS16のNo)、処理がステップS11に戻る。
【0057】
最後に、表示部12は、表示部12から送信された警告信号に応じて、画面上に警告を表示する。
以上のような充填状況監視方法は、充填状況監視装置100の図示しない制御部において、充填状況監視プログラムが実行されることにより実現される。
【0058】
<充填状況監視プログラム>
充填状況監視プログラムは、コンピュータを、上述した充填状況監視装置100の各部、すなわち記憶部20、算出部30、流入量取得部40、充填数取得部50及び通信部60として機能させるプログラムである。
【0059】
<第一実施形態における効果>
第一実施形態に係る充填状況監視装置100は、以下の効果を有する。
(1)充填状況監視装置100では、充填状況監視装置100が液体充填ラインから液体Lの流入量及び充填数を取得すると、流入量と理論充填総量とのバランスに関する情報が直ちに算出されて表示部12に表示される。このため、充填状況監視装置100では、液体の充填量と適正な充填量との乖離をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0060】
(2)充填状況監視装置100では、充填容器への充填量として予測される充填容量を用いて、すなわち流入量と理論充填総量とのバランスに基づいて充填状況の監視を行っている。このため、充填状況監視装置100では、液体L充填後の充填容器の重量を測定したりすることなく、充填状況の監視を行うことができる。
液体L充填後の充填容器の重量の測定は、
図1に示す密栓装置7により充填容器1に蓋体2が巻き締められたあと、それぞれの充填容器1に対して行われる。このため、各充填容器1の重量の測定及び重量の合計を取得するためには所定の時間を要する。一方、理論充填総量は、充填容器1に蓋体2が巻き締められたあと、
図1に示す近接センサ8により直ちに取得された充填数を用いて算出部30で算出される。このため、充填状況監視装置100では、液体の充填量と適正な充填量との乖離をリアルタイムで把握することが可能となる。
【0061】
(3)充填状況監視装置100では、算出されたバランスに基づいて直ちに充填状況を判定し、表示部12に警告を表示する事ができる。このため、充填状況監視装置100では、液体の充填量と適正な充填量との乖離をリアルタイムでユーザ(液体充填ラインの管理者等)に通知することが可能となる。
(4)充填状況監視装置100では、発泡性液体の充填状況の監視を行うことで、液体の充填量と適正な充填量との乖離をリアルタイムで把握することによる液体Lの損失抑制効果が高くなる。液体Lが発泡性液体の場合、流体の注入により液体Lの充填量が減少しやすい傾向にあり、リアルタイムで充填状況の監視を行うことによる効果が高くなる。
【0062】
2.変形例
上述の実施形態に係る充填状況監視装置100は、さらに以下のような構成であっても良い。
【0063】
(変形例1)
充填状況監視装置100は、警告を表示可能な表示部12の代わりに、もしくは表示部12に加えて、警告を示す音を出力可能なスピーカや、警告を示す赤色灯等の光が点灯する警告灯を備えていても良い。充填状況監視装置100において、算出部30で算出された液体Lの流入量と理論充填総量とのバランスが設定した正常値の範囲外となった場合には、液体充填ラインの充填状況に異常があるものとして、警告信号をスピーカ又は警告灯に出力する。スピーカは、警告信号を受信した場合に警告音を出力する。また、警告灯は、警告信号を受信した場合に点灯する。
【0064】
充填状況監視装置100は、スピーカ又は警告灯を有することにより、音声又は発光によって流入量と理論充填総量とのバランスが所定の設定範囲外となったことを知らせることができる。充填状況監視装置100は、ユーザ(液体充填ラインの管理者等)が表示部12を見ていなくても、ユーザに対してリアルタイムで警告を行うことができる。このため、液体充填ラインにおいて早期に流入量と理論充填総量とのバランスの崩れの原因(例えば輸送ラインにおける液体L漏れ等)を解消し、液体Lの無駄をより防止することができる。
【0065】
(変形例2)
充填状況監視装置100は、通信部60を介して、外部ネットワークに警告信号を送信しても良い。充填状況監視装置100は、貯液タンク4への液体Lの流入量と理論充填総量とのバランスが所定の設定範囲外となった場合に、外部ネットワークを経由して外部の端末等に警告信号を送信することができる。外部の端末としては、例えば充填状況を集中的に監視する集中監視室の端末、ユーザが携帯する携帯端末等が挙げられる。
【0066】
充填状況監視装置100は、外部ネットワークに警告信号を送信することにより、集中監視室の端末や携帯端末の表示部に警告を表示又はスピーカから警告を示す音声を出力させることができる。また、充填状況監視装置100は、外部ネットワークに警告信号を送信することにより、液体充填ラインにおいて充填工程を自動ストップすることも可能である。さらに、外部の端末がスマートフォン等の音声通信やデータ通信機能を有する通信端末である場合、充填状況監視装置100は、携帯端末に対して充填状況に関する文字情報を含む電子メールを送信したり、通話により警告音声を発信したり、携帯端末のランプを点灯させることができる。
【0067】
このため、充填状況監視装置100は、液体充填ラインの近くにいない管理者等に対してリアルタイムで警告を行うことができ、液体充填ラインにおいて早期に流入量と理論充填総量とのバランスの崩れの原因を解消し、液体Lの無駄をより防止することができる。
【0068】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0069】
1 充填容器
2 蓋体
3 流量計
4 貯液タンク
5 充填バルブ
6 搬送機構
7 密栓装置
8 近接センサ
9 輸送ライン
10 タッチパネル
12 表示部
14 入力部
16 指定位置検出部
20 記憶部
22 充填容量記憶部
30 算出部
40 流入量取得部
50 充填数取得部
60 通信部