IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図1
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図2
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図3
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図4
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図5
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図6
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図7
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図8
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図9
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図10
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図11
  • 特許-断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/80 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
E04B1/80 100B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019182165
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021055497
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 克俊
(72)【発明者】
【氏名】浅見 俊介
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-122859(JP,A)
【文献】特開2013-117130(JP,A)
【文献】特開2004-225446(JP,A)
【文献】特開2000-352134(JP,A)
【文献】特開2014-134002(JP,A)
【文献】実開平01-073208(JP,U)
【文献】特開2005-146760(JP,A)
【文献】特開平10-252983(JP,A)
【文献】特開2014-109144(JP,A)
【文献】特開平03-217534(JP,A)
【文献】特開2019-031807(JP,A)
【文献】特開2007-162318(JP,A)
【文献】特開平08-004137(JP,A)
【文献】実公昭57-025926(JP,Y2)
【文献】特開平10-331279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 2/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の構造体における断熱材の施工構造であって、
前記構造体は、第1方向に所定間隔で配置された複数の支持部材と、
前記支持部材と前記支持部材の間に配置された複数の断熱材とを備え、
前記断熱材は、不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、
複数の前記断熱材は、前記第1方向において隣接する前記断熱材の端部同士が、互いに斜めに傾斜した状態で対向して前記第1方向に沿って重なり、押圧されて、
前記断熱材の端部同士の互いに斜めに傾斜した重なり部分が、断熱材取付部材及び外装材取付部材の少なくとも一つによって、貫通されて固定されている、
断熱材の施工構造。
【請求項2】
前記第1方向と直交する第2方向に配置された複数の前記断熱材は、前記第2方向において隣接する前記断熱材の端部同士が前記第2方向に沿って重なり、押圧されている、
請求項1に記載の断熱材の施工構造。
【請求項3】
前記第1方向及び前記第1方向と直交する第2方向に配置された複数の前記断熱材は、前記第1方向及び前記第2方向において隣接する前記断熱材の端部同士が前記第1方向及び前記第2方向に沿って重なり、押圧されている、
請求項1に記載の断熱材の施工構造。
【請求項4】
前記断熱材の屋外側及び屋内側の少なくとも一方に配置された板材を備え、
複数の前記断熱材は、前記断熱材の端部同士の重なりが前記板材によって押圧されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の断熱材の施工構造。
【請求項5】
複数の前記断熱材の端部同士の重なりを押圧することによって形成された接合線の端部が、シール部材によって覆われた、
請求項1~のいずれか1項に記載の断熱材の施工構造。
【請求項6】
建物の構造体における断熱材の施工方法であって、
第1方向に所定の間隔で複数の支持部材を配する工程と、
前記支持部材と前記支持部材との間に複数の断熱材を配置する工程と、を備え、
前記断熱材として、不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つを使用し、
複数の前記断熱材を、前記第1方向において隣接する前記断熱材の端部同士が、互いに斜めに傾斜した状態で対向して前記第1方向に沿って重なり、押圧されて、
前記断熱材の端部同士の互いに斜めに傾斜した重なり部分が、断熱材取付部材及び外装材取付部材の少なくとも一つによって、貫通されて固定された状態で、配置する、
断熱材の施工方法。
【請求項7】
前記支持部材と前記支持部材との間に複数の前記断熱材を配置する工程において、
前記第1方向と直交する第2方向に複数の前記断熱材を、前記第2方向において隣接する前記断熱材の端部同士が前記第2方向に沿って重なった状態で、押圧して配置する
請求項6に記載の断熱材の施工方法。
【請求項8】
前記支持部材と前記支持部材との間に複数の前記断熱材を配置する工程において、
前記第1方向及び前記第1方向と直交する第2方向に複数の前記断熱材を、前記第1方向及び前記第2方向において隣接する前記断熱材の端部同士が前記第1方向及び前記第2方向に沿って重なった状態で、押圧して配置する
請求項に記載の断熱材の施工方法。
【請求項9】
前記断熱材の屋外側及び屋内側の少なくとも一方に板材を配置し、
複数の前記断熱材の端部同士の重なりを前記板材によって押圧する、
請求項6~8のいずれか1項に記載の断熱材の施工方法。
【請求項10】
複数の前記断熱材の端部同士の重なりを押圧することによって形成された接合線の端部を、シール部材によって覆う、
請求項6~8のいずれか1項に記載の断熱材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火構造における断熱材の施工構造及び断熱材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造軸組工法、木造枠組壁工法等による構造体では、壁板を支持部材に固定し、壁面を形成することが行われている。このような壁面では、壁面の各支持部材間に断熱材が配置されている。断熱材は、一定寸法に設定されたものが使用されるので、断熱材を各支持部材の間に配置する際に断熱材の長さが各支持部材間の長さよりも小さい場合には、別の断熱材から、不足する長さの断熱材を切り出し、断熱材の端部同士を突き合わせて接合することが行われている。
【0003】
図11は、従来の断熱材の施工構造を模式的に示す左右断面図である。図12は、従来の断熱材の施工構造を模式的に示す上下断面図である。図11、12に示されるように、隣接する断熱材1、1の端部同士は突き合わせて目地テープ等のシール部材6によって固定されている。しかし、断熱材は加熱により収縮する性質があり、火災などにより断熱材が加熱されると、断熱材1のそれぞれが収縮し断熱材1の端部同士の突き合わせ部に隙間が形成される懸念があった。断熱材の接合部に隙間が形成されると、シール部材6も脱落や燃焼、融解してしまい、断熱材の隙間から炎が噴き出すような現象が発生し、耐火性能が低下してしまう。
【0004】
特許文献1には、無発泡不燃層と隣接する発泡性不燃層の一部を重ならせて耐火被覆を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-2534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、2つの不燃層の一部を重ならせて耐火被覆を形成しているので火災などにより不燃層同士の耐火被膜の収縮により隙間が発生しにくく、耐火性能を維持することができるが、無発泡不燃層と隣接する発泡性不燃層を形成することが必要となり、施工性に劣る。
【0007】
本発明は、上記従来の事情のもとで考え出されたものであり、その目的は、加熱により断熱材が収縮しても、断熱材の接合部に隙間が発生しにくく、優れた耐火性能を維持でき、施工が容易な断熱材の施工構造及び施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は建物の構造体における断熱材の施工構造である。建物の構造体は、第1方向に所定間隔で配置された複数の支持部材と、支持部材と支持部材の間に配置された複数の断熱材を備える。断熱材は、不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つである。複数の断熱材は、第1方向において隣接する断熱材の端部同士が、互いに斜めに傾斜した状態で対向して第1方向に沿って重なり、押圧されているものである。
【0009】
本発明の第1の態様では、断熱材は、不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つであるので、押圧等により、形状を変化させることができる。そして、互いに隣接する断熱材は、断熱材の端部同士が、押圧されて形状が変化して斜めに傾斜して重なり、重なり部分は断熱材取付部材及び外装材取付部材の少なくとも一つによって、貫通されて固定されている。押圧された断熱材は復元力を有しているので、断熱材の接合部の隙間の発生を抑制できる。また、火災などにより断熱材が加熱されて収縮し、接合部に隙間が発生したとしても、押圧された部分は復元力を有しており発生した隙間を埋めるので、接合部に隙間が生じにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
この施工構造によれば、断熱材の端部が傾斜した状態で対向して当接されるので、重なり部分が形成されやすく端部同士の密着性がより向上する。そして、断熱材の端部同士の重なり部分は押圧されているので、重なり部分は隙間が発生しにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0010】
本発明の第2の態様として、第1方向と直交する第2方向において、複数の断熱材は、第2方向において隣接する断熱材の端部同士が第2方向に沿って重なり、押圧されている。この施工構造によれば、第2方向において、隣接する断熱材の端部同士が押圧されて復元力を有しているので、接合部に隙間が発生しにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0011】
本発明の第3の態様として、第1方向及び第1方向と直交する第2方向に配置された複数の断熱材は、第1方向及び第2方向において隣接する断熱材の端部同士が第1方向及び第2方向に沿って重なり、押圧されている。この施工構造によれば、第1方向及び第2方向において、隣接する断熱材の端部同士が押圧されているので、第1方向及び第2方向の断熱材の接合部に隙間が発生しにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0012】
本発明の第4の態様として、断熱材の屋外側及び屋内側の少なくとも一方に板材を備える。
【0013】
断熱材は、端部同士が重なり、板材によって押圧されている。この施工構造によれば、断熱材の屋外側及び屋内側の少なくとも一方において、支持部材などに壁材等の板材が施工され、このような板材によって両断熱材の端部同士重なり押圧されているので、両断熱材の間に隙間が発生しにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。また、板材によって断熱材の重なり部分を押圧するので、断熱材のみを押圧する工程や、押圧し固定する工程が必要ないので、施工性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第5の態様として、複数の断熱材の端部同士の重なりを押圧することにより形成された接合線の端部は、シール部材によって覆われている。この施工構造によれば、断熱材の端部同士が重なり、押圧されて形成された接合線の端部が、シール部材によって覆われているので、重なり部分により隙間が発生しにくい施工構造となり、より優れた耐火性能を発揮することができる。
【0015】
本発明の第6の態様は、建物の構造体における断熱材の施工方法であって、構造体の第1方向に所定間隔で複数の支持部材を配置する工程と、支持部材と支持部材との間に複数の断熱材を配置する工程と、を備えるものである。また、配置される断熱材として、不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つを使用するものである。そして、複数の断熱材を、第1方向において隣接する断熱材の端部同士が、互いに斜めに傾斜した状態で対向して第1方向に沿って重なるように配置した状態で押圧する。この施工方法によれば、前記した本発明の第1の態様と同様に、断熱材は、不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つを使用するので、押圧等によって力をかけることにより、断熱材の形状を変化させることができる。そして、断熱材の端部同士が重なるように配置した状態で押圧するので、隙間の発生を抑制できる。また、火災などにより断熱材が加熱されて収縮したとしても、両断熱材の端部同士の互いに斜めに傾斜した重なり部分を押圧して、断熱材取付部材及び外装材取付部材の少なくとも一つによって、貫通して固定しているので、押圧された断熱材の端部は復元力を有しており、断熱材の接合部の隙間の発生を抑制することができ、優れた耐火性能を発揮することができる断熱材の施工構造を提供することができる。
この施工方法によれば、前記した第1の態様と同様に、複数の断熱材の端部同士を、互いに斜めに傾斜した状態で対向させつつ当接させるので、端部同士の密着性が向上し、端部同士の重なり部分を形成しやすくなる。また、断熱材の端部同士の当接部分は押圧されているので、断熱材の接合部に隙間が発生しにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0016】
本発明の第7の態様として、支持部材と支持部材との間に複数の断熱材を配置する工程において、第1方向と直交する第2方向に複数の断熱材を、第2方向において隣接する断熱材の端部同士が第2方向に沿って重なった状態で、押圧して配置する。この施工方法によれば、前記した第2の態様と同様に、断熱材の端部同士が押圧されているので、断熱材の接合部に隙間が発生しにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0017】
本発明の第8の態様として、支持部材と支持部材との間に複数の断熱材を配置する工程において、第1方向及び第1方向と直交する第2方向に複数の断熱材を、第1方向及び第2方向において隣接する断熱材の端部同士が第1方向及び第2方向に沿って重なった状態で、押圧して配置する。この施工方法によれば、前記した第3の態様と同様に、第1方向及び第2方向において、隣接する断熱材の端部同士が重なり、押圧されているので、加熱により断熱材が収縮しても、接合部が押圧されて復元力を有するので、第1方向及び第2方向の断熱材の接合部に隙間が発生しにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0018】
本発明の第9の態様として、断熱材の屋外側及び屋内側の少なくとも一方に板材を配置し、断熱材を複数の支持部材の間に配置し、複数の断熱材の端部同士の重なりを板材によって押圧する。
【0019】
この施工方法によれば、前記した第4の態様と同様に、断熱材の屋外側及び屋内側の少なくとも一方において、支持部材などに壁材等の板材を施工し、このような板材によって複数の断熱材の端部同士の重なり部分を押圧するので、断熱材の接合部における隙間の発生を抑制でき、優れた耐火性能を発揮することができる。また、断熱材のみを押圧する工程や、押圧し固定する工程が必要ないので施工性を向上させることができる。
【0020】
本発明の第10の態様として、複数の断熱材の端部同士が重なりを押圧することによって形成された接合線の端部を、シール部材によって覆う。この施工方法によれば、前記した第5の態様と同様に、断熱材の接合部に隙間が発生しにくい施工構造となり、より優れた耐火性能を発揮することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の断熱材の施工構造は、断熱材の接合部に隙間が発生しにくく、優れた耐火性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態1を模式的に示す左右断面図である。
図2】断熱材の端部の重なり部分を模式的に示す左右断面図である。
図3】断熱材の端部の重なり部分が押圧された状態を模式的に示す左右断面図である。
図4】本発明の実施の形態2を模式的に示す正面概念図である。
図5図4示す施工構造におけるX-X線断面図である。
図6図4示す施工構造におけるZ-Z線断面図である。
図7図4示す施工構造におけるY-Y線断面図である。
図8】本発明の実施の形態3を模式的に示す正面概念図である。
図9】本発明の実施の形態4を模式的に示す左右断面図である。
図10】本発明の実施の形態4を模式的に示す上下断面図である。
図11】従来の断熱材の施工構造を模式的に示す左右断面図である。
図12】従来の断熱材の施工構造を模式的に示す上下断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の断熱材の施工構造を具体化した実施の形態1、2、3及び4について図面を参照しつつ説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。なお、以下の説明において、垂直上方向を上と表示し、垂直下方向を下と表示する。また、図1図2図3図5図6及び図9の屋外から屋内に向かう方向において水平左方向を左と表示し、水平右方向を右と表示する。
【0024】
(実施の形態1)
図1に示すように、実施の形態1では、屋内側から屋外側にかけて、順に断熱材1(1a、1b)、透湿防水シート2及び外装材3が配されている。また、支持部材4は、左右方向に所定間隔で離間して配されている。左右方向は、本実施形態の「第1方向」の一例である。支持部材4は、屋内側に位置する構造体(図示しない)に固定されている。構造体は、例えば、鉄骨造や木造造等の躯体である。構造体は、複数の構造部材によって構成される。構造部材には、左右方向に所定の間隔を有して並ぶ複数の柱材等(図示しない)の他に、柱材間に配置される間柱等の補助部材も含まれる。柱材や間柱等としては、鋼製鋼材や木製角材等が使用され、また、これらの併用も好ましい。
【0025】
断熱材1は、屋内空間の保温、屋外側からの熱の流入を防ぐ建材である。断熱材1は、不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つである。不燃性繊維は、グラスウール繊維、ロックウール繊維等が好ましい。袋体は、ポリエチレン等のフィルム等からなる袋に不燃性繊維が充填されたものや、また、グラスウール繊維等の不織布からなる袋に不燃性繊維が充填されたものであってもよいし、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体等でもよい。
【0026】
図1に示すように、断熱材1(1a、1b)は、左右方向に延在し、互いに隣り合う支持部材4間に配置されている。断熱材1aの端部9aは、隣接する断熱材1bの端部9bに重なり、重なり部分10が形成されている。実施の形態1では、このような端部の重なり部分10は、図2に示すように、隣接する断熱材1a、1bの端部9a、9b同士が重なり対向させられつつ当接させられて形成される。そして、図3に示すように、このような重なり部分10は、押圧されて断熱材1a、1bの端部9a、9bのそれぞれが変形して互いに傾斜した状態で密着し接合させられる。図1では、この重なり部分10は、左右方向に対して傾斜した接合線Aとして表される。図1において、重なり部分10の長さである重なり代Hは、接合線Aの一端から他端までの左右方向に対する長さを意味している。この重なり代Hが10mm以上であると接合部に隙間が発生しにくくなるので好ましく、50mm以上であるとより接合部に隙間が発生しにくいのでより好ましい。
【0027】
断熱材1aは、隣接する断熱材1bと、左右方向において、両断熱材1a、1bの端部9a、9b同士が重なって押圧された状態で配置されているので、押圧により変形が生じている。なお、図1に示すように、本実施形態では、断熱材1(1a、1b)の屋外側には、外装材3が配されているので、断熱材1(1a、1b)の押圧される部分は、押圧により、屋外側に突出しようとするが外装材3により突出が抑制される。一方、断熱材1(1a、1b)の屋内側においては、断熱材1a、1b同士の重なりにより形成された接合線Aの屋内側端部を目地テープ等のシール部材6によって覆う。このようなシール部材6は、釘、ビスとワッシャー、ビスとワッシャーとナット等の断熱材取付部材7と併用することも可能である。また、断熱材1a、1b同士の重なり部分10は断熱材取付部材7によって固定されている。なお、シール部材6、断熱材取付部材7は必須ではなく、本実施の形態のシール部材6、断熱材取付部材7を省略することもできる。
【0028】
透湿防水シート2は、水を通さないが、湿気を通すシートである。図1に示すように、透湿防水シート2は、断熱材1の屋外側の面に左右方向及び上下方向に延在して配されている。なお、透湿防水シート2は必須ではなく、本実施の形態の透湿防水シート2を省略することもできる。また、本実施の形態では、透湿防水シートの他に、耐力面材(図示しない)、耐火被覆面材(図示しない)が断熱材1(1a、1b)の屋外側の面に左右方向及び上下方向に延在して配されていてもよい。なお、耐力面材、耐火被覆面材は、複数枚使用されていてもよい。
【0029】
耐力面材としては、構造用合板、パーティクルボード、ハードボード、フレキシブル板、硬質木片セメント板、パルプセメント板等を使用することができる。
【0030】
耐火被覆面材としては、ロックウール、無機系の吹き付け材、無機系のマット材、無機系のシート材、及び無機系のボード材等を使用することができる。
【0031】
透湿防水シート2の屋外側に外装材取付部材5が支持部材4に固定されている。各外装材取付部材5は、構造体(図示しない)に対し、複数の外装材3を左右方向及び上下方向に隣接するように取り付けるためのものである。外装材取付部材5としては、例えば、釘、ビス、取付具等またはこれらを併用することができる。外装材取付部材5は、左右方向において一列に並び、かつ、そのような列が上下方向において複数列設けられている。
【0032】
外装材取付部材5の屋外側には外装材取付部材5によって外装材3が取り付けられている。外装材3は、屋外壁面を構成する建材であり、四辺形状の板材であり、より具体的には、左右方向または上下方向に長い略矩形状の板材である。本実施の形態では、外装材3は、セメントを含む窯業系材料等からなる。なお、外装材3の材質は特に限定されず、例えば、金属材料、木質素材、樹脂系素材等を適宜使用できる。
【0033】
支持部材4は、外装材3を外装材取付部材5によって構造体に固定するためのものである。本実施の形態では、支持部材4はC型鋼等の鋼製鋼材である。支持部材4は、ネジや釘、溶接等(図示しない)によって、柱材等の構造体に取り付けられている。また、各支持部材4の左右方向の間隔は、外壁材や内壁材等の寸法や建築構造により設計されるが、耐火性能の面から中心線基準で1000mm以下に設定されるのが好ましい。
【0034】
本実施の形態では、壁総厚T、すなわち、屋外側の外装材3の表面から断熱材1の屋内側の表面までの長さは、建物に要求される耐火性能や断熱性能により設計されるが、耐火性能の面から74mm以上であるのが好ましく、116mm以上であるのがより好ましい。
【0035】
このように、本実施の形態1によれば、所定間隔で配置された複数の支持部材4の屋外側には外装材3が配置された支持部材4の間には複数の断熱材1a、1bが配置されている。断熱材は不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つであるので、押圧により変形することができるものである。そして、互いに隣接する断熱材1a、1bは、断熱材の端部9a、9b同士が重なり、押圧されて形状が変化している。押圧された断熱材は復元力を有しているので、断熱材の接合部の隙間の発生を抑制できる。また、火災などにより断熱材1a、1bが加熱されて収縮し、接合部に隙間が発生したとしても、押圧された部分は復元力を有しており発生した隙間を埋めるので、接合部に隙間が生じにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0036】
また、断熱材1a、1bの端部9a、9bが互いに斜めに傾斜した状態で対向して当接し押圧されているので、重なり部分が形成されやすく端部同士の密着性がより向上する。そのため、接合部に隙間が発生しにくく、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0037】
更に、断熱材1a、1bの端部9a、9bの重なり部分10は屋内側から屋外側に向けて押圧するので、屋外側へ突出しようとするが、外壁材3が配置されているので、押圧による突出が抑制された状態で変形して互いに傾斜した状態で密着てしている。互いに密着した断熱材1a、1bの端部9a,9bの重なり部分10は変形しているが、復元力を有した状態を維持しているので、両断熱材の間に隙間が発生しにくい施工構造となり、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0038】
更に、断熱材取付部材7やシール部材6を併用することで、断熱材1a、1bの重なり部分10を押圧に加えて断熱材取付部材7やシール部材6による接合力が加えられるので、隙間の発生をより強固に抑制することができる。また、断熱材の端部同士が重なり、押圧されて形成された接合線の端部が、シール部材6により覆われるので、重なり部分により隙間が発生しにくく、より優れた耐火性能を発揮することができる。
【0039】
(実施の形態2)
実施の形態2では、図4に示すように、左右方向及び上下方向に延在する4枚の断熱材1a、1b、1c、1dは、接続部30で重なり押圧されている。図5は、図4のX-X線断面図であり、2枚の断熱材1a、1bの端部9a、9bの左右方向の重なり部10は、2枚の断熱材1a、1bの端部9a,9bの重なりで構成され、重なり部分10は押圧されている。図7図4のY-Y線断面図であり、2枚の断熱材1a、1cの端部9a、9cの上下方向の重なり部10は、2枚の断熱材1a、1cの端部9a,9cの重なりで構成され、重なり部分10は押圧されている。上下に延在する2枚の断熱材1b、1dの端部の重なり部分も同様に構成される。そして、図6図4のZ-Z線断面図であり、4枚の断熱材1a、1b、1c、1dの端部9a,9b,9c,9dの接合部30は、4枚の断熱材1a、1b、1c、1dの端部9a,9b,9c,9dの重なりで構成され、接合部30は押圧されている。
【0040】
本実施の形態では、図4に示すように、左右方向及び上下方向に延在する4枚の断熱材1a、1b、1c、1dの端部が接続部30で重なり合う。図4において、断熱材1aが最初に配置され、断熱材1aの右側に断熱材1bが二番目に配置される。断熱材1bは、実施の形態1と同様に、左端部が断熱材1aの右端部と重なるように配置される。次に、断熱材1aの上方側に断熱材1cが三番目に配置される。断熱材1cは、下端部が断熱材1a、1bの上端部と重なるように配置される。最後に、断熱材1bの上方側でかつ断熱材1cの右側に断熱材1dが配置される。断熱材1dは、実施の形態1と同様に、左端部が断熱材1cの右端部と重なるとともに、下端部が断熱材1a、1bの上端部と重なるように配置される。したがって、接続部30において4枚の断熱材1a、1b、1c、1dが、その順に重なっている。そしてその重なり部分は押圧されている。
【0041】
本実施の形態のその他の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0042】
本実施の形態では、4枚の断熱材1a、1b、1c、1dが接続部30において重なり押圧されている。断熱材は不燃性繊維が充填された袋体、不燃性繊維から形成された板状体及び不燃性繊維から形成されたシート状体からなる群から選ばれる少なくとも一つを使用するので、4枚の断熱材を重ねて押圧し、変形することが可能である。接続部30は、押圧により押圧方向(屋外側)に突出しようとするが、断熱材20aの屋外側には外装材3(図示しない)があり、外装材3により突出が抑制される。接続部30は断熱材が4重に重なって押圧されているので、接合部に隙間が発生しにくく、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0043】
(実施の形態3)
実施の形態3では、図8に示すように、左右方向及び上下方向に延在する3枚の断熱材1a、1b、1eが重なり押圧されている。詳しくは、実施の形態2における4枚の断熱材1a、1b、1c、1dの内、隣り合う1対の断熱材1c、1dが、左右方向の長さが長い1枚の断熱材1eに置き換えられたものである。実施の形態3では、3枚の断熱材がT字状に配置され、それぞれの端部同士が重なり、押圧されている。実施の形態3では、断熱材1aが最初に配置され、断熱材1aの右側に断熱材1bが配置される。断熱材1bは、実施の形態1と同様に、左端部が断熱材1aの右端部と重なるように配置される。次に、断熱材1a、1bの両方の上端部を跨ぐように断熱材1eが配置される。断熱材1eは、下端部が断熱材1a、1bの上端部と重なるように配置される。そして、それぞれの端部同士の重なり部分が押圧されるものである。
【0044】
実施の形態3においては、左右方向の長さが長い1枚の断熱材と、隣り合う1対の断熱材1c、1dを、それぞれの端部同士が重なるようにT字状に配置しても良い。その場合には、左右方向の長さが長い1枚の断熱材が最初に配置される。次に、左右方向の長さが長い断熱材の上端部の左側と重なるように断熱材1cが配置される。最後に、左右方向の長さが長い断熱材の上端部の右側と、断熱材1cの右端部重なるように断熱材1dが配置される。そして、それぞれの端部同士の重なり部分が押圧される。
【0045】
本実施の形態では、3枚の断熱材の端部同士が重なり押圧されて変形しているので、断熱材の接合部に隙間が発生しにくく、優れた耐火性能を発揮することができる。特に、断熱材が3重に重なって押圧されている接続部40では、隙間が発生しにくく、優れた耐火性能を発揮することができる。
【0046】
(実施の形態4)
実施の形態4では、図9及び図10に示すように、断熱材1(1a、1b(1c))の端部9a、9b(9c)の重なりをシール部材6にかえて板材8によって押圧するものである。実施の形態4のその他の構成は、実施の形態1と同様である。このため、実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0047】
図9及び図10に示すように、板材8は、断熱材1(1a、1b(1c))より屋内側に設けられている。板材8としては、耐火性や遮音性を有する石膏ボード、木製薄板を積層した構造用合板、木材の削片や繊維をボードに成型した木質パネル等の構造用パネル等が例示される。また、外装材と同様の板材を使用しても良い。板材8は、柱材等の構造体にネジや釘、取付具、接着剤等によって取り付けられて、左右方向及び上下方向に延在している。板材8は、複数枚使用されてもよい。
【0048】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、断熱材の端部の重なり部分は押圧により屋内側に突出しようとするが、本実施の形態では、板材により突出が抑制され、押圧による復元力を有した状態で密着している。更に屋外側に外壁材が配置されているので、断熱材の端部の重なり部分が外壁材と板材により押圧され、押圧された部分は他の実施形態よりも復元力を有している。つまり、押圧により断熱材の端部の重なり部分は復元力を有した状態になっているので、隙間の発生を抑制することができ、優れた耐火性能を発揮することができる。更に、本実施の形態によれば、板材8によって断熱材の重なり部分を押圧するので、断熱材のみを押圧する工程や、押圧し固定する工程が必要ないので、施工性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、断熱材の接合部に隙間が生じることなく、優れた耐火性能を発揮できる断熱材の施工構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1,1a,1b,1c,1d,1e:断熱材、2:透湿防水シート、3:外装材、4:支持部材、5:外装材取付部材、6:シール部材、7:断熱材取付部材、8:板材、9a,9b,9c,9d:断熱材の端部、10:重なり部分、30,40:接続部、A:接合線、H:重なり代
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12