(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ミラーデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20240402BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
G02B26/08 E
B81C1/00
(21)【出願番号】P 2019192996
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大幾
(72)【発明者】
【氏名】松本 享宏
(72)【発明者】
【氏名】井出 智行
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幹人
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-296517(JP,A)
【文献】特開2004-066379(JP,A)
【文献】特開2002-267996(JP,A)
【文献】特表2014-523848(JP,A)
【文献】特開2006-147995(JP,A)
【文献】特開2002-258205(JP,A)
【文献】特開2012-063413(JP,A)
【文献】特開2013-080068(JP,A)
【文献】特開2008-173719(JP,A)
【文献】国際公開第2013/115967(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/050035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08,26/10
B81C 1/00
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部、及び、前記ベース部において支持された可動部を含む構造体と、前記可動部に設けられたミラー層と、を備えるミラーデバイスの製造方法であって、
支持層、デバイス層、及び、前記支持層と前記デバイス層との間に配置された中間層を有するウェハを用意する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記支持層、前記デバイス層及び前記中間層のそれぞれの一部を前記ウェハから除去することで、前記ベース部に対して前記可動部が可動となるように前記ウェハにスリットを形成し、それぞれが前記構造体に対応する複数の部分を前記ウェハに形成する第2工程と、
前記第2工程の後に、
前記ベース部に対して前記可動部が可動となった状態の前記ウェハを洗浄液によっ
て洗浄するウェット洗浄を実施する第3工程と、
前記第3工程の後に、前記複数の部分のそれぞれを前記ウェハから切り出す第4工程と、を備え、
前記第2工程においては、前記中間層の一部を異方性エッチングによって前記ウェハから除去する、ミラーデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第2工程においては、前記ウェハのうち前記可動部に対応する部分に前記ミラー層を形成する、請求項1に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第3工程と前記第4工程との間に、前記ウェハの表面のうち前記ミラー層が形成された第1表面、及び/又は前記第1表面とは反対側の第2表面に対して矯正層を形成する第5工程を更に備える、請求項2に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第2工程においては、前記支持層の一部を前記ウェハから除去した後に、保護膜を除去するための保護膜除去を実施し、前記保護膜除去の後に、前記複数の部分を完成させる、請求項1~3のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記保護膜除去においては、ウェットプロセスにより前記保護膜を除去する、請求項4に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第3工程の前記ウェット洗浄において前記ウェハに与える負荷は、前記第2工程の前記保護膜除去において前記ウェハに与える負荷よりも小さい、請求項4又は5に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第2工程においては、パターニング部材を除去するためのパターニング部材除去を実施し、前記パターニング部材除去の後に、前記複数の部分を完成させる、請求項1~6のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項8】
前記パターニング部材除去においては、ウェットプロセスにより前記パターニング部材を除去する、請求項7に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記第3工程の前記ウェット洗浄において前記ウェハに与える負荷は、前記第2工程の前記パターニング部材除去において前記ウェハに与える負荷よりも小さい、請求項7又は8に記載のミラーデバイスの製造方法。
【請求項10】
前記第2工程においては、エッチングによって、前記ウェハのうち前記スリット以外の部分に、前記ウェハを貫通する流通孔を形成する、請求項1~9のいずれか一項に記載のミラーデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SOI(Silicon On Insulator)基板によって構成されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとして、ベース部、及び、ベース部において支持された可動部を含む構造体と、可動部に設けられたミラー層と、を備えるミラーデバイスが知られている。このようなミラーデバイスの製造方法として、ベース部に対して可動部が可動となるように可動部をリリースした後に、当該ウェハを洗浄液によって洗浄する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなミラーデバイスの製造方法では、可動部がリリースされたウェハが洗浄液によって洗浄されるため、洗浄液による負荷で複数の可動部に損傷が生じるおそれがある。そのような損傷の発生を抑制するために、洗浄液による洗浄の強さを弱めることが考えられるが、そうすると、ウェハに異物が残存するおそれがある。
【0005】
本発明は、ミラーデバイスにおける損傷の発生及び異物の残存を抑制することができるミラーデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のミラーデバイスの製造方法は、ベース部、及び、ベース部において支持された可動部を含む構造体と、可動部に設けられたミラー層と、を備えるミラーデバイスの製造方法であって、支持層、デバイス層、及び、支持層とデバイス層との間に配置された中間層を有するウェハを用意する第1工程と、第1工程の後に、支持層、デバイス層及び中間層のそれぞれの一部をウェハから除去することで、ベース部に対して可動部が可動となるようにウェハにスリットを形成し、それぞれが構造体に対応する複数の部分をウェハに形成する第2工程と、第2工程の後に、洗浄液によってウェハを洗浄するウェット洗浄を実施する第3工程と、第3工程の後に、複数の部分のそれぞれをウェハから切り出す第4工程と、を備え、第2工程においては、中間層の一部を異方性エッチングによってウェハから除去する。
【0007】
このミラーデバイスの製造方法では、第3工程において、ベース部に対して可動部が可動となった(以下、「可動部がリリースされた」という)状態のウェハが洗浄液によって洗浄される。これにより、複数の可動部がリリースされたウェハから異物を除去することができる。可動部がリリースされたウェハが第3工程のウェット洗浄によって洗浄されると、複数の可動部に損傷が生じやすい。ここで、第2工程においては、中間層の一部が異方性エッチングによってウェハから除去される。これにより、中間層の端面が支持層の端面及びデバイス層の端面の両方に対して凹むのを抑制することができる。そのため、支持層の端部とデバイス層の端部との間に異物が挟まり難くなる。したがって、第3工程において、複数の可動部に損傷が生じるのを抑制するために、例えばウェット洗浄の強さを弱めたとしても、ウェハから異物を確実に除去することができる。また、ウェハの構造が頑丈になるため、第3工程において、ウェット洗浄の強さを大幅に弱めなくても、複数の可動部に損傷が生じるのを抑制することができる。したがって、ウェハから異物を確実に除去することができる。以上により、このミラーデバイスの製造方法によれば、ミラーデバイスにおける損傷の発生及び異物の残存を抑制することができる。また、中間層の端面が支持層の端面及びデバイス層の端面の両方に対して凹むのが抑制されるため、第3工程のウェット洗浄において、支持層とデバイス層とが接触する現象(いわゆるスティッキング)の発生を抑制することができる。これにより、デバイス層の変形を抑制することができ、例えば可動部の反り又は歪み等の発生を抑制することができる。
【0008】
本発明のミラーデバイスの製造方法では、第2工程においては、ウェハのうち可動部に対応する部分にミラー層を形成してもよい。これにより、ミラー層に付着した異物を第3工程のウェット洗浄によって除去することができる。
【0009】
本発明のミラーデバイスの製造方法は、第3工程と第4工程との間に、ウェハの表面のうちミラー層が形成された第1表面、及び/又は第1表面とは反対側の第2表面に対して矯正層を形成する第5工程を更に備えてもよい。これにより、異物が矯正層によって覆われるのを抑制することができる。
【0010】
本発明のミラーデバイスの製造方法では、第2工程においては、支持層の一部をウェハから除去した後に、保護膜を除去するための保護膜除去を実施し、保護膜除去の後に、複数の部分を完成させてもよい。これにより、支持層の一部をウェハから除去するときにウェハに付着した異物を保護膜除去によって除去することができる。更に、保護膜を除去するときに、ウェハに残存した異物等を第3工程のウェット洗浄によって除去することができる。
【0011】
本発明のミラーデバイスの製造方法では、保護膜除去においては、ウェットプロセスにより保護膜を除去してもよい。ウェットプロセスにより保護膜を除去すると、例えばデバイス層の凹凸に起因して、シミ等が生じる場合がある。この場合、当該シミ等を第3工程のウェット洗浄によって除去することができる。
【0012】
本発明のミラーデバイスの製造方法では、第3工程のウェット洗浄においてウェハに与える負荷は、第2工程の保護膜除去においてウェハに与える負荷よりも小さくてもよい。これにより、ミラーデバイスにおける損傷の発生をより確実に抑制することができる。
【0013】
本発明のミラーデバイスの製造方法では、第2工程においては、パターニング部材を除去するためのパターニング部材除去を実施し、パターニング部材除去の後に、複数の部分を完成させてもよい。これにより、複数の可動部がリリースされる前にパターニング部材が除去されるため、パターニング部材除去に起因するミラーデバイスにおける損傷の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明のミラーデバイスの製造方法では、パターニング部材除去においては、ウェットプロセスによりパターニング部材を除去してもよい。これにより、複数の可動部がリリースされる前にパターニング部材が除去されるため、ウェットプロセスによりパターニング部材を除去したとしても、ミラーデバイスにおける損傷の発生を抑制することができる。
【0015】
本発明のミラーデバイスの製造方法では、第3工程のウェット洗浄においてウェハに与える負荷は、第2工程のパターニング部材除去においてウェハに与える負荷よりも小さくてもよい。これにより、ミラーデバイスにおける損傷の発生をより確実に抑制することができる。
【0016】
本発明のミラーデバイスの製造方法では、第2工程においては、エッチングによって、ウェハのうちスリット以外の部分に、ウェハを貫通する流通孔を形成してもよい。これにより、第3工程のウェット洗浄においては、流通孔を介して洗浄液を流通させつつ、可動部がリリースされたウェハを洗浄することができる。したがって、洗浄液によって複数の可動部が受ける負荷を小さくすることができ、複数の可動部に損傷が生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ミラーデバイスにおける損傷の発生及び異物の残存を抑制することができるミラーデバイスの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のミラーデバイスの平面図である。
【
図2】
図1に示されるII-II線に沿ってのミラーデバイスの断面図である。
【
図3】
図1に示されるミラーデバイスの製造方法のフローチャートである。
【
図4】
図1に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図5】
図1に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図6】
図1に示されるミラーデバイスの製造方法のパターニング部材除去及び保護膜除去を説明するための構成図である。
【
図7】
図1に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図8】
図1に示されるミラーデバイスの製造方法のウェット洗浄を説明するための構成図である。
【
図9】
図1に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図10】第2実施形態のミラーデバイスの断面図である。
【
図11】
図10に示されるミラーデバイスの製造方法のフローチャートである。
【
図12】
図10に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図13】
図10に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図14】
図10に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図15】
図10に示されるミラーデバイスの製造方法を説明するための断面図である。
【
図16】第3実施形態のミラーデバイスの平面図である。
【
図18】第4実施形態のミラーデバイスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する部分を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
図1及び
図2に示されるように、第1実施形態のミラーデバイス1Aは、構造体2Aと、ミラー層3と、矯正層4と、を備えている。ミラーデバイス1Aは、例えば、X軸方向に沿った第1軸線X1及びY軸方向に沿った第2軸線X2のそれぞれに関して線対称な形状を呈している。ミラーデバイス1Aは、第1軸線X1及び第2軸線X2の交点に関して点対称な形状を呈していてもよい。ミラーデバイス1Aは、非対称な形状を呈していてもよい。ミラーデバイス1Aは、MEMSデバイスであり、例えば、光通信用光スイッチ、光スキャナ等に用いられる。
【0021】
構造体2Aは、例えば、SOI基板によって構成されている。構造体2Aは、支持層11、デバイス層12及び中間層13を有している。支持層11は、第1シリコン層である。デバイス層12は、第2シリコン層である。中間層13は、支持層11とデバイス層12との間に配置された絶縁層である。一例として、支持層11の厚さは100μm~700μm程度であり、デバイス層12の厚さは20μm~200μm程度であり、中間層13の厚さは50nm~3000nm程度である。
【0022】
構造体2Aは、例えば矩形板状を呈している。構造体2Aは、第1表面2a及び第2表面2bを有している。第1表面2aは、デバイス層12における中間層13とは反対側の面である。第2表面2bは、構造体2Aにおける第1表面2aとは反対側の面である。第2表面2bは、支持層11における中間層13とは反対側の面、及び、デバイス層12における第1表面2aとは反対側の面を含んでいる。
【0023】
構造体2Aは、ベース部21、第1可動部22、第2可動部23、一対の第1連結部24、及び一対の第2連結部25によって一体的に構成されている。ベース部21は、支持層11の一部、デバイス層12の一部及び中間層13の一部によって構成されている。ベース部21は、Z軸方向(構造体2Aの厚さ方向)から見た場合に、例えば矩形環状を呈している。ベース部21は、Z軸方向から見た場合に、例えば10mm×15mm程度のサイズを有している。
【0024】
第1可動部22、第2可動部23、第1連結部24、及び第2連結部25は、デバイス層12の一部によって構成されている。第1可動部22及び第2可動部23は、それぞれ第1連結部24及び第2連結部25によってベース部21において支持されている。具体的には、第1可動部22及び第2可動部23は、Z軸方向から見た場合に、ベース部21の内側に配置されている。より具体的には、第2可動部23は、Z軸方向から見た場合に、構造体2Aを貫通する第2スリット23aを介してベース部21の内側に配置されている。第2可動部23は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形環状を呈している。第2スリット23aは、Z軸方向から見た場合に、第2可動部23の外縁に沿って延びている。第2スリット23aにおいては、ベース部21における支持層11の端面11a、ベース部21におけるデバイス層12の端面12a、及びベース部21における中間層13の端面13aがそれぞれ露出している。第2スリット23aは、ベース部21に対して第2可動部23を可動にするために形成されている。本実施形態では、第2スリット23aは、ベース部21に対して第2可動部23を可動にするための必要最小限の幅を有している。
【0025】
各第2連結部25は、Z軸方向から見た場合に、Y軸方向における第2可動部23の両側にそれぞれ配置されている。各第2連結部25は、例えば、Y軸方向に沿って直線状に延びている。各第2連結部25は、ベース部21に対して第2可動部23が可動となるように、ベース部21及び第2可動部23に連結されている。具体的には、各第2連結部25は、第2可動部23が第2軸線X2周りに揺動可能となるように、第2軸線X2上において第2可動部23とベース部21とを互いに連結している。なお、第2スリット23aは、X軸方向における各第2連結部25の両側においてY軸方向に沿って延びる部分を含んでいる。つまり、各第2連結部25は、第2スリット23aを介してベース部21の内側に配置されている。
【0026】
第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、構造体2Aを貫通する第1スリット22aを介して第2可動部23の内側に配置されている。第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。第1スリット22aは、Z軸方向から見た場合に、第1可動部22の外縁に沿って延びている。第1スリット22aは、ベース部21に対して第1可動部22を可動にするために形成されている。本実施形態では、第1スリット22aは、ベース部21に対して第1可動部22を可動にするための必要最小限の幅を有している。
【0027】
各第1連結部24は、Z軸方向から見た場合に、X軸方向における第1可動部22の両側にそれぞれ配置されている。各第1連結部24は、例えば、X軸方向に沿って直線状に延びている。各第1連結部24は、ベース部21に対して第1可動部22が可動となるように、第2可動部23及び第1可動部22に連結されている。具体的には、各第1連結部24は、第1可動部22がX軸方向に沿った第1軸線X1周りに揺動可能となるように、第1軸線X1上において第1可動部22と第2可動部23とを互いに連結している。
【0028】
構造体2Aには、構造体2Aを貫通する複数の流通孔21b,22b,23bが形成されている。複数の流通孔21b,22b,23bは、構造体2Aのうち第1スリット22a及び第2スリット23a以外の部分に形成されている。具体的には、ベース部21には、例えば4つの流通孔21bが形成されている。各流通孔21bは、Z軸方向から見た場合に、ベース部21の各角部にそれぞれ位置している。4つの流通孔21bは、第1軸線X1及び第2軸線X2に関して互いに線対称である。各流通孔21bは、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。各流通孔21bは、ベース部21を貫通している。各流通孔21bにおいては、支持層11の端面11b、デバイス層12の端面12b、及び中間層13の端面13bがそれぞれ露出している。流通孔21bは、流通孔22b及び流通孔23bのそれぞれよりも大きい。
【0029】
第1可動部22には、一対の流通孔22bが形成されている。つまり、1つの第1可動部22に対して複数の流通孔22bが形成されている。一対の流通孔22bは、第2軸線X2に関して互いに線対称である。各流通孔22bは、Z軸方向から見た場合に、例えば半円環状を呈している。各流通孔22bは、第1可動部22を貫通している。
【0030】
第2可動部23には、一対の流通孔23bが形成されている。つまり、1つの第2可動部23に対して複数の流通孔23bが形成されている。一対の流通孔23bは、第2軸線X2に関して互いに線対称である。各流通孔23bは、Z軸方向から見た場合に、例えば半矩形環状を呈している。各流通孔23bは、Z軸方向から見た場合に、第2可動部23の外縁に沿って延びている。各流通孔23bは、第2可動部23を貫通している。
【0031】
図2に示されるように、中間層13の端面13aは、支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aの両方に対して凹まないように形成されている。中間層13の端面13a、支持層11の端面11a、及びデバイス層12の端面12aは、互いに面一である。同様に、中間層13の端面13bは、支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bの両方に対して凹まないように形成されている。中間層13の端面13b、支持層11の端面11b、及びデバイス層12の端面12bは、互いに面一である。
【0032】
「中間層の端面が支持層の端面及びデバイス層の端面の両方に対して凹まない」とは、「中間層の端面が支持層の端面及びデバイス層の端面の両方に対して凹んでいる場合において、支持層の端面及びデバイス層の端面のいずれからも中間層の厚さの3倍を超えて中間層の端面が凹んでいる状態」を除く状態を意味する。したがって、「中間層の端面、支持層の端面、及びデバイス層の端面が互いに面一である状態」は勿論、「中間層の端面が支持層の端面及びデバイス層の端面の両方に対して凹んでいる場合であっても、支持層の端面及びデバイス層の端面のいずれからも中間層の厚さの0.5倍だけ中間層の端面が凹んでいる状態」も、中間層の端面が支持層の端面及びデバイス層の端面の両方に対して凹んでいないといえる。
【0033】
中間層13の端面13aは、支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aの両方に対して、好ましくは中間層13の厚さの3倍以下、より好ましくは2倍以下、さらに好ましくは1倍以下、最も好ましくは0.5倍以下凹んでいる。換言すると、中間層13の端面13aは、支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aの両方に対して、好ましくは中間層13の厚さの3倍を超えて、より好ましくは2倍を超えて、さらに好ましくは1倍を超えて、最も好ましくは0.5倍を超えて凹んでいない。同様に、中間層13の端面13bは、支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bの両方に対して、好ましくは中間層13の厚さの3倍以下、より好ましくは2倍以下、さらに好ましくは1倍以下、最も好ましくは0.5倍以下凹んでいる。換言すると、中間層13の端面13bは、支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bの両方に対して、好ましくは中間層13の厚さの3倍を超えて、より好ましくは2倍を超えて、さらに好ましくは1倍を超えて、最も好ましくは0.5倍を超えて凹んでいない。
【0034】
ミラー層3は、第1可動部22に設けられている。具体的には、ミラー層3は、構造体2Aの第1表面2aのうち第1可動部22に対応する領域に設けられている。ミラー層3は、Z軸方向から見た場合に、一対の流通孔22bよりも内側に配置されている。ミラー層3は、Z軸方向から見た場合に、例えば円形状を呈している。ミラー層3は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点を中心位置(重心位置)として配置されている。ミラー層3は、例えば、アルミニウム、アルミニウム系合金、銀、銀系合金、金、誘電体多層膜等からなる反射膜によって構成されている。
【0035】
矯正層4は、第2表面2bの全体に形成されている。具体的には、矯正層4は、ベース部21においては、支持層11における中間層13とは反対側の面に形成されている。矯正層4は、第1可動部22、第2可動部23、各第1連結部24、及び各第2連結部25においては、デバイス層12におけるミラー層3とは反対側の面に形成されている。矯正層4は、第1可動部22、第2可動部23、各第1連結部24、及び各第2連結部25の反り等を矯正する。矯正層4は、例えば、酸化ケイ素又は窒化ケイ素等の材料によって構成されている。矯正層4は、例えば、アルミニウム等の金属薄膜であってもよい。矯正層4の厚さは、例えば10nm~1000nm程度である。
【0036】
ミラーデバイス1Aは、第1コイル221と、第2コイル231と、を更に備えている。第1コイル221は、例えば、第1可動部22に埋め込まれており、Z軸方向から見た場合に、一対の流通孔22bよりも外側(第1可動部22の外縁部)において渦巻き状に延びている。第2コイル231は、例えば、第2可動部23に埋め込まれており、Z軸方向から見た場合に、一対の流通孔23bよりも外側(第2可動部23の外縁部)において渦巻き状に延びている。第1コイル221及び第2コイル231は、例えば銅等の金属材料によって構成されている。なお、
図2においては、第1コイル221及び第2コイル231の図示が省略されている。
【0037】
以上のように構成されたミラーデバイス1Aでは、互いに直交する第1軸線X1及び第2軸線X2の周りに、ミラー層3が設けられた第1可動部22が揺動させられる。具体的には、構造体2Aに設けられた電極パッド(図示省略)及び配線(図示省略)を介して第2コイル231にリニア動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部(図示省略)が発生する磁界との相互作用によって第2コイル231にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力と各第2連結部25の弾性力とのつり合いを利用することで、第2軸線X2周りにミラー層3(第1可動部22)を第2可動部23と共にリニア動作させることができる。
【0038】
一方、電極パッド及び配線を介して第1コイル221に共振動作用の駆動信号が入力されると、磁界発生部が発生する磁界との相互作用によって第1コイル221にローレンツ力が作用する。当該ローレンツ力に加え、共振周波数での第1可動部22の共振を利用することで、第1軸線X1周りにミラー層3(第1可動部22)を共振動作させることができる。
【0039】
次に、ミラーデバイス1Aの製造方法について説明する。まず、
図3及び
図4(a)に示されるように、支持層11、デバイス層12、及び中間層13を有するウェハ10Wを用意する(ステップS1、第1工程)。ウェハ10Wは、表面(第1表面)10a、及び表面10aとは反対側の裏面(第2表面)10bを有している。表面10aは、構造体2Aの第1表面2aとなる面である。ウェハ10Wは、それぞれが構造体2Aとなる複数の部分11Wを含んでいる。部分11Wは、構造体2Aが形成される前のウェハ10Wの一部である。ミラーデバイス1Aの製造方法の各工程は、ウェハレベルで実施される。なお、
図4、
図5、
図7及び
図9では、ウェハ10Wのうち一つの部分11Wが示されている。以下、ウェハ10Wのうち一つの部分11Wに着目して説明する。
【0040】
続いて、支持層11、デバイス層12及び中間層13のそれぞれの一部をウェハ10Wから除去することで、ベース部21に対して第1可動部22及び第2可動部23が可動となるようにウェハ10Wに第1スリット22a及び第2スリット23aを形成し、それぞれが構造体2Aに対応する複数の部分12WA(
図7(b)参照)をウェハ10Wに形成する(第2工程)。部分12WAは、構造体2Aが形成されたウェハ10Wの一部である。まず、デバイス層12の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS2)。具体的には、デバイス層12のうち第1スリット22a、第2スリット23a、流通孔21b,22b,23bに対応する部分を除去する。その結果、デバイス層12の端面12a及び端面12bが形成される。ステップS2においては、第1コイル221、第2コイル231、並びに、第1コイル221及び第2コイル231に駆動信号を入力するための電極パッド及び配線等をデバイス層12に設ける。ステップS2においては、ウェハ10Wの表面10aのうち第1可動部22に対応する部分にミラー層3を形成する。ミラー層3は、例えば金属の蒸着によって形成される。ステップS2においては、パターニング部材を除去するためのパターニング部材除去(詳細は後述する)によって、デバイス層12の除去のために用いられたパターニング部材をウェハ10Wから除去する。
【0041】
続いて、
図4(b)に示されるように、ウェハ10Wの裏面10bを研磨する(ステップS3)。ウェハ10Wは、裏面10bが研磨されることによって薄化される。研磨されたウェハ10Wの裏面10bは、構造体2Aの第2表面2bの一部となる面である。
【0042】
続いて、
図5(a)に示されるように、ウェハ10Wの裏面10bにパターニング部材19をパターニングする(ステップS4)。具体的には、裏面10bのうちベース部21に対応する領域であって、流通孔21bに対応する領域を除いた領域にパターニング部材19を設ける。パターニング部材19は、例えばレジスト等である。続いて、
図5(b)に示されるように、パターニング部材19を介して支持層11の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS5)。具体的には、支持層11のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分、及び、流通孔21bに対応する部分を除去する。その結果、支持層11の端面11a及び端面11bが形成される。ステップS5においては、支持層11の端面11a及び端面11bが、それぞれデバイス層12の端面12a及び端面12bと面一となるように支持層11の一部をウェハ10Wから除去する。支持層11の一部は、例えば、ボッシュプロセスを用いた反応性イオンエッチング(DRIE)によって除去される。なお、ステップS5においては、支持層11の一部をウェハ10Wから除去するときに、保護膜として例えばポリマー等を用いる。
【0043】
続いて、
図6に示されるように、パターニング部材除去及び保護膜除去を実施する(ステップS6)。まず、パターニング部材除去を実施する。パターニング部材除去は、パターニング部材19をウェハ10Wの裏面10bから除去する(剥離させる)ためのステップである。パターニング部材除去においては、支持層11の一部をウェハ10Wから除去した後に、ウェットプロセスによりパターニング部材19を除去する。具体的には、まず、箱状を呈するキャリア50内に複数のウェハ10Wをセットする。
【0044】
キャリア50の内壁面には、Z軸方向に沿って所定の間隔ごとに並んでいる複数の溝(図示省略)が形成されている。溝は、XY面に沿って延びている。パターニング部材除去においては、各ウェハ10Wをそれぞれの溝に嵌め込むことによって、複数のウェハ10WをZ軸方向(ウェハ10Wの厚さ方向)に沿って配置する。すなわち、Z軸方向におけるウェハ10Wの一方の側及び他方の側のそれぞれには、ウェハ10Wと同一の構造を有する他のウェハ10Wが配置される。互いに隣接するウェハ10Wと他のウェハ10Wとの間には、第2領域R2が形成される。続いて、第2領域R2にパターニング部材除去液が存在する状態で、パターニング部材19を除去する。具体的には、上述したように、複数のウェハ10W及び他のウェハ10Wをキャリア50内にセットした状態で、複数のウェハ10W及び他のウェハ10Wをパターニング部材除去液に浸漬させる。パターニング部材除去液は、例えばプールに収容されている。複数のウェハ10W及び他のウェハ10Wは、キャリア50の開口の向きがパターニング部材除去液の液面の向きと同じとなるように、パターニング部材除去液に浸漬される。パターニング部材除去液は、パターニング部材19をウェハ10Wから除去するための薬液等である。
【0045】
続いて、複数のウェハ10Wをパターニング部材除去液に浸漬させた状態で、X軸方向(ウェハ10Wの厚さ方向及びパターニング部材除去液の液面に交差する方向)に沿って複数のウェハ10Wを往復動(揺動)させる。複数のウェハ10Wの往復動は、キャリア50を往復動させることで実施される。パターニング部材除去においては、複数のウェハ10Wを第2速度で第2時間往復動させる。「往復動させる速度」とは、単位時間当たりに往復動させる回数をいう。第2速度は、例えば70回/分程度である。第2時間は、例えば40分程度である。第2時間は、複数のウェハ10Wを第2速度で往復動させる時間の累積である。パターニング部材除去においては、例えばパターニング部材除去液の種類を変え、又は、複数のウェハ10Wの往復動を一時的に停止させ得る。パターニング部材除去においては、ウェットプロセスによりパターニング部材19を除去した後に、複数のウェハ10Wを例えば水に所定時間浸漬させる。
【0046】
パターニング部材除去においては、パターニング部材19を除去した後に、つまり、ウェハ10Wを水に所定時間浸漬させた後に、ウェハ10Wを乾燥させる第2スピン乾燥を実施する。第2スピン乾燥においては、ウェハ10Wを第2回転速度で第4時間回転させることで、ウェハ10Wを乾燥させる。パターニング部材除去が実施されると、
図7(a)に示されるように、ウェハ10Wからパターニング部材19が除去される。
【0047】
続いて、保護膜除去を実施する。保護膜除去は、ステップS5において保護膜として用いられたポリマー等をウェハ10Wから除去するためのステップである。保護膜除去においては、支持層11の一部をウェハ10Wから除去した後に、保護膜除去液を用いたウェットプロセスにより保護膜を除去する。保護膜除去液は、ポリマー等をウェハ10Wから除去するための薬液等である。
【0048】
続いて、
図7(b)に示されるように、中間層13の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS7)。具体的には、中間層13のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分、及び、流通孔21bに対応する部分を除去する。その結果、第1スリット22a及び第2スリット23aが形成される。このとき、中間層13の端面13aが形成される。ステップS7においては、ベース部21に対して第1可動部22及び第2可動部23が可動となるようにウェハ10Wに第1スリット22a及び第2スリット23aを形成することで、それぞれが構造体2Aに対応する複数の部分12WAをウェハ10Wに形成し、複数の部分12WAを完成させる。つまり、複数の第1可動部22及び複数の第2可動部23をリリースする。「リリース」とは、ベース部に対して、第1可動部又は第2可動部を固定状態から可動状態にすることをいう。
【0049】
ステップS7においては、第1可動部22及び第2可動部23が、それぞれ各第1連結部24及び各第2連結部25によってベース部21において支持されるように、第1スリット22a及び第2スリット23aを形成する。
【0050】
また、ステップS7においては、上述したように、中間層13の一部をウェハ10Wから除去することで、ウェハ10Wのうち第1スリット22a及び第2スリット23a以外の部分にウェハ10Wを貫通する複数の流通孔21b,22b,23bを形成する。具体的には、ステップS7においては、ウェハ10Wのうちベース部21に対応する部分に、ウェハ10Wを貫通する流通孔21bを形成し、第1可動部22に対応する部分に、ウェハ10Wを貫通する流通孔22bを形成し、第2可動部23に対応する部分に、ウェハ10Wを貫通する流通孔23bを形成する。このとき、中間層13の端面13bが形成される。
【0051】
ステップS7においては、中間層13の端面13aが支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aの両方に対して凹まないようにエッチングを実施する。ステップS7においては、中間層13の端面13aが支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aと面一となるようにエッチングを実施する。同様に、ステップS7においては、中間層13の端面13bが支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bの両方に対して凹まないようにエッチングを実施する。ステップS7においては、中間層13の端面13bが支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bと面一となるようにエッチングを実施する。ステップS7においては、中間層13の一部を異方性エッチングによってウェハ10Wから除去する。ステップS7においては、中間層13の一部をドライエッチングによってウェハ10Wから除去する。
【0052】
続いて、
図8に示されるように、ウェット洗浄を実施する(ステップS8、第3工程)。ウェット洗浄は、ウェハ10Wに付着した異物等を除去するための洗浄である。ウェット洗浄においては、洗浄液(図示省略)によってウェハ10Wを洗浄する。具体的には、まず、箱状を呈するキャリア60内に複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ(モニタウェハ)20Wをセットする。ダミーウェハ20Wの厚さは、例えば625μm程度である。
【0053】
キャリア60の内壁面には、Z軸方向に沿って所定の間隔ごとに並んでいる複数の溝(図示省略)が形成されている。溝は、XY面に沿って延びている。ウェット洗浄においては、各ウェハ10W及び各ダミーウェハ20Wをそれぞれの溝に嵌め込むことによって、複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20WをZ軸方向(ウェハ10W及びダミーウェハ20Wの厚さ方向)に沿って交互に配置する。すなわち、Z軸方向におけるウェハ10Wの一方の側及び他方の側のそれぞれには、ダミーウェハ20Wが配置される。互いに隣接するウェハ10Wとダミーウェハ20Wとの間には、第1領域R1が形成される。Z軸方向における第1領域R1の幅は、Z軸方向における第2領域R2の幅よりも大きい。
【0054】
続いて、第1領域R1に洗浄液が存在する状態で、ウェハ10Wを洗浄する。具体的には、上述したように、複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wをキャリア60内にセットした状態で、複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wを洗浄液に浸漬させる。洗浄液は、例えばプールに収容されている。複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wは、キャリア60の開口の向きが洗浄液の液面の向きと同じとなるように、洗浄液に浸漬される。洗浄液は、異物等をウェハ10Wから除去するための薬液等である。続いて、複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wを洗浄液に浸漬させた状態で、X軸方向(ウェハ10Wの厚さ方向及び洗浄液の液面に交差する方向)に沿って複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wを往復動(揺動)させる。複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wの往復動は、キャリア60を往復動させることで実施される。
【0055】
ウェット洗浄においては、複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wを第1速度で第1時間往復動させる。ステップS8のウェット洗浄においてウェハ10Wに与える負荷は、ステップS6のパターニング部材除去においてウェハ10Wに与える負荷よりも小さい。つまり、ステップS8のウェット洗浄の強さは、ステップS6のパターニング部材除去の強さよりも小さい。同様に、ステップS8のウェット洗浄においてウェハ10Wに与える負荷は、ステップS6の保護膜除去においてウェハ10Wに与える負荷よりも小さい。つまり、ステップS8のウェット洗浄の強さは、ステップS6の保護膜除去の強さよりも小さい。「ウェハに与える負荷」とは、ウェハに対して与える機械的仕事(エネルギ)の大きさをいう。例えば、ステップS8のウェット洗浄において、ウェハ10Wを往復動させる速度が大きいほど、ウェハ10Wに与える負荷が大きい。また、例えば、ステップS8のウェット洗浄において、ウェハ10Wを往復動させる時間が長いほど、ウェハ10Wに与える負荷が大きい。
【0056】
第1速度は、第2速度よりも小さい。第1速度は、例えば40回/分程度である。第1時間は、第2時間よりも短い。第1時間は、例えば20分程度である。第1時間は、複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wを第1速度で往復動させる時間の累積である。ウェット洗浄においては、例えば洗浄液の種類を変え、又は、複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wの往復動を一時的に停止させ得る。ウェット洗浄においては、洗浄液によってウェハ10Wを洗浄した後に、複数のウェハ10W及び複数のダミーウェハ20Wを例えば水に所定時間浸漬させる。
【0057】
ウェット洗浄においては、ウェハ10Wを洗浄した後に、つまり、ウェハ10Wを水に所定時間浸漬させた後に、ウェハ10Wを乾燥させる第1スピン乾燥を実施する。第1スピン乾燥においては、ウェハ10Wを第1回転速度で第3時間回転させる。ステップS8の第1スピン乾燥においてウェハ10Wに与える負荷は、ステップS6の第2スピン乾燥においてウェハ10Wに与える負荷よりも小さい。つまり、ステップS8の第1スピン乾燥の強さは、ステップS6の第2スピン乾燥の強さよりも小さい。例えば、ステップS8の第1スピン乾燥において、ウェハ10Wを回転させる回転速度が大きいほど、ウェハ10Wに与える負荷が大きい。また、例えば、ステップS8の第1スピン乾燥において、ウェハ10Wを回転させる時間が長いほど、ウェハ10Wに与える負荷が大きい。第1回転速度は、第2回転速度よりも小さい。第1回転速度は、例えば200rpm程度である。第3時間は、例えば5分程度である。
【0058】
続いて、
図9(a)に示されるように、ウェハ10Wの表面のうちミラー層3が形成された表面10aとは反対側の裏面10bに対して矯正層4を形成する(ステップS9、第5工程)。矯正層4は、支持層11及びデバイス層12のそれぞれにおけるミラー層3とは反対側の面に形成される。続いて、
図9(b)に示されるように、複数の部分12WAのそれぞれをウェハ10Wから切り出す(ステップ10、第4工程)。これにより、複数のミラーデバイス1Aを製造する。
【0059】
以上説明したように、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS8(第3工程)において、複数の第1可動部22及び第2可動部23がリリースされたウェハ10Wが洗浄液によって洗浄される。これにより、複数の第1可動部22及び第2可動部23がリリースされたウェハ10Wから異物を除去することができる。複数の第1可動部22及び第2可動部23がリリースされたウェハ10WがステップS8のウェット洗浄によって洗浄されると、複数の第1可動部22及び第2可動部23に損傷が生じやすい。ここで、ステップS7(第2工程)においては、中間層13の一部が異方性エッチングによってウェハ10Wから除去される。これにより、中間層13の端面13aが支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aの両方に対して凹み、中間層13の端面13bが支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bの両方に対して凹むのを抑制することができる。そのため、支持層11の端部とデバイス層12の端部との間に異物が堆積し難くなる。したがって、ステップS8において、複数の第1可動部22及び第2可動部に損傷が生じるのを抑制するために、例えば洗浄液によるウェット洗浄の強さを弱めたとしても、ウェハ10Wから異物を確実に除去することができる。また、ウェハ10Wの構造が頑丈になるため、ステップS8において、ウェット洗浄の強さを大幅に弱めなくても、複数の第1可動部22及び第2可動部23に損傷が生じるのを抑制することができる。したがって、ウェハ10Wから異物を確実に除去することができる。よって、ミラーデバイス1Aの製造方法によれば、ミラーデバイス1Aにおける損傷の発生及び異物の残存を抑制することができる。また、中間層13の端面13aが支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aの両方に対して凹み、中間層13の端面13bが支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bの両方に対して凹むのが抑制されるため、ステップS8のウェット洗浄において、支持層11とデバイス層12とが接触する現象(いわゆるスティッキング)の発生を抑制することができる。これにより、デバイス層12の変形を抑制することができ、例えば第1可動部22及び第2可動部23の反り又は歪み等の発生を抑制することができる。
【0060】
ところで、量産性を考慮した場合に、中間層13の一部は、通常はウェットエッチングによって等方的に除去される。また、第1可動部22及び第2可動部23がリリースされた後にウェット洗浄を行わない場合には、中間層13の端面13aが支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aの両方に対して凹んでいるかどうか、又は、中間層13の端面13bが支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bの両方に対して凹んでいるかどうかについては、通常は考慮されることがない。本発明者らは、第1可動部22及び第2可動部23がリリースされた後にウェット洗浄を行う場合において、中間層13の端面13aが支持層11の端面11a及びデバイス層12の端面12aの両方に対して凹み、又は、中間層13の端面13bが支持層11の端面11b及びデバイス層12の端面12bの両方に対して凹んでいると、当該凹んでいる部分に異物が入ってしまい、又はウェハ10Wが破損してしまうといった新たな課題を見出した。そこで、ミラーデバイス1Aの製造方法によれば、上述したように中間層13の一部を除去し、上述したようにウェハ10Wを洗浄することで、ミラーデバイス1Aにおける損傷の発生及び異物の残存を抑制することができる。
【0061】
また、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS2においては、ウェハ10Wのうち第1可動部22に対応する部分にミラー層3を形成している。これにより、ミラー層3に付着した異物をステップS8のウェット洗浄によって除去することができる。
【0062】
また、ミラーデバイス1Aの製造方法は、ステップS8とステップS10との間に、ウェハ10Wの裏面10bに対して矯正層4を形成するステップS9を備えている。これにより、異物が矯正層4によって覆われるのを抑制することができる。
【0063】
また、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS6においては、支持層11の一部をウェハ10Wから除去した後に、保護膜を除去するための保護膜除去を実施し、保護膜除去の後に、複数の部分12WAを完成させている。また、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS6の保護膜除去においては、ウェットプロセスにより保護膜を除去している。支持層11の一部をウェハ10Wから除去するときには、上述したように、保護膜としてポリマー等が用いられる。当該ポリマーは、支持層11の一部がウェハ10Wから除去された後に、ウェハ10Wに残存する場合がある。また、デバイス層12の一部をウェハ10Wから除去することでウェハ10Wが凹凸を有する形状となること、及び、中間層13の一部が未だウェハ10Wから除去されていないこと等に起因して、保護膜除去においては、保護膜除去液がウェハ10Wに形成されたミラー層3の表面等に残存する場合がある。当該残存した保護膜除去液が乾燥すると、シミが生じるおそれがある。ポリマー及びシミ等がウェハ10Wに残存すると、当該ポリマー又はシミ等の存在がミラーデバイス1Aの外観不良の原因となり、歩留まりが低下するおそれがある。ミラーデバイス1Aの製造方法によれば、支持層11の一部をウェハ10Wから除去するときにウェハ10Wに残存したポリマー(異物)等を保護膜除去によって除去することができる。更に、保護膜を除去するときに、ウェハ10Wに残存したシミ(異物)等をステップS8のウェット洗浄によって除去することができる。これにより、ミラーデバイス1Aの外観不良に起因する歩留まりの低下を抑制することができる。
【0064】
また、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS8のウェット洗浄においてウェハ10Wに与える負荷は、ステップS6の保護膜除去においてウェハ10Wに与える負荷よりも小さい。これにより、ミラーデバイス1Aにおける損傷の発生をより確実に抑制することができる。
【0065】
また、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS6においては、パターニング部材19を除去するためのパターニング部材除去を実施し、パターニング部材除去の後に、複数の部分12WAを完成させている。これにより、複数の第1可動部22及び第2可動部23がリリースされる前にパターニング部材19が除去されるため、パターニング部材除去に起因するミラーデバイス1Aにおける損傷の発生を抑制することができる。
【0066】
また、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS6のパターニング部材除去においては、ウェットプロセスによりパターニング部材19を除去している。これにより、複数の第1可動部22及び第2可動部23がリリースされる前にパターニング部材19が除去されるため、ウェットプロセスによりパターニング部材19を除去したとしても、ミラーデバイス1Aにおける損傷の発生を抑制することができる。
【0067】
また、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS8のウェット洗浄においてウェハ10Wに与える負荷は、ステップS6のパターニング部材除去においてウェハ10Wに与える負荷よりも小さい。これにより、ミラーデバイス1Aにおける損傷の発生をより確実に抑制することができる。
【0068】
また、ミラーデバイス1Aの製造方法では、ステップS7においては、エッチングによって、ウェハ10Wのうち第1スリット22a及び第2スリット23a以外の部分に、ウェハ10Wを貫通する流通孔21b,22b,23bをそれぞれ形成している。これにより、ステップS8のウェット洗浄においては、流通孔21b,22b,23bを介して洗浄液を流通させつつ、複数の第1可動部22及び第2可動部23がリリースされたウェハ10Wを洗浄することができる。したがって、洗浄液によって複数の第1可動部22及び第2可動部23が受ける負荷を小さくすることができ、複数の第1可動部22及び第2可動部23に損傷が生じるのを抑制することができる。また、Z軸方向におけるウェハ10Wの一方の側と他方の側との間で、流通孔21b,22b,23bを介して洗浄液が流通しやすくなる。そのため、ウェット洗浄による洗浄効率が向上する。
【0069】
[第2実施形態]
図10に示されるように、第2実施形態のミラーデバイス1Bは、矯正層4に代えて梁部5を備えている点で、第1実施形態のミラーデバイス1Aと主に相違している。ミラーデバイス1Bのその他は、ミラーデバイス1Aと同様であるため、詳細な説明については省略する。
【0070】
ミラーデバイス1Bの構造体2Bは、複数の梁部5を備えている。梁部5は、支持層11及び中間層13の一部によって構成されている。梁部5は、第1可動部22に設けられている。梁部5は、デバイス層12のミラー層3とは反対側の面に設けられている。梁部5は、例えばY軸方向に沿って直線状に延びている。複数の梁部5は、X軸方向に沿って所定の間隔ごとに並んでいる。複数の梁部5は、Z軸方向から見た場合に、例えば放射状を呈するように配置されていてもよい。構造体2Bは、1つの梁部5を備えていてもよい。この場合、梁部5は、Z軸方向から見た場合に、例えば円環状を呈していてもよい。つまり、梁部5は、円筒状を呈していてもよい。梁部5は、様々な形状を呈していてもよい。梁部5は、構造体2Bを補強するために設けられている。梁部5において、支持層11の端面11cは、中間層13の端面13cに対して凹まないように形成されている。支持層11の端面11c、及び中間層13の端面13cは、互いに面一である。Z軸方向から見た場合に、支持層11の端面11c、及び中間層13の端面13cは、第1可動部22の端面(流通孔22bを形成する端面)22cよりも内側に位置している。
【0071】
次に、ミラーデバイス1Bの製造方法について説明する。ミラーデバイス1Bの製造方法は、矯正層4に代えて梁部5を形成する点で、第1実施形態のミラーデバイス1Aの製造方法と主に相違している。ミラーデバイス1Bの製造方法のその他は、第1実施形態のミラーデバイス1Aの製造方法と同様であるため、詳細な説明については省略する。
【0072】
まず、
図11に示されるように、第1実施形態のステップS1(
図4(a)を参照)と同様に、ウェハ10Wを用意する(ステップS21、第1工程)。続いて、第1実施形態と同様に、支持層11、デバイス層12及び中間層13のそれぞれの一部をエッチングによってウェハ10Wから除去することで、ベース部21に対して第1可動部22及び第2可動部23が可動となるようにウェハ10Wに第1スリット22a及び第2スリット23aを形成し、それぞれが構造体2Bに対応する複数の部分12WB(
図15(a)参照)をウェハ10Wに形成する(第2工程)。まず、第1実施形態のステップS2と同様に、デバイス層12の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去し、第1コイル221、第2コイル231、電極パッド、及び配線等をデバイス層12に設け、ミラー層3をウェハ10Wの表面10aに形成する(ステップS22)。続いて、第1実施形態のステップS3(
図4(b)を参照)と同様に、ウェハ10Wの裏面10bを研磨する(ステップS23)。
【0073】
続いて、
図12(a)に示されるように、第1実施形態のステップS4と同様に、ウェハ10Wの裏面10bにパターニング部材29をパターニングする(ステップS24)。続いて、
図12(b)に示されるように、パターニング部材29を介して支持層11の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS25)。ステップS25においては、厚さ方向における支持層11の一部のみを除去する。ステップS25のその他は、第1実施形態のステップS5と同様である。続いて、第1実施形態のステップS6(
図6を参照)と同様に、パターニング部材除去及び保護膜除去を実施する(ステップS26)。パターニング部材除去が実施されると、
図13(a)に示されるように、ウェハ10Wからパターニング部材29が除去される。
【0074】
続いて、
図13(b)に示されるように、ウェハ10Wの裏面10bにパターニング部材39をパターニングする(ステップS27)。具体的には、裏面10bのうちベース部21に対応する領域であって、流通孔21bに対応する領域を除いた領域、及び、裏面10bのうち梁部5に対応する領域にパターニング部材39を設ける。続いて、
図14(a)に示されるように、パターニング部材39を介して支持層11の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS28)。具体的には、支持層11のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分であって、梁部5に対応する部分を除いた部分、及び、流通孔21bに対応する部分を除去する。その結果、支持層11の端面11cが形成される。
【0075】
続いて、再びパターニング部材除去を実施する(ステップS29)。再びパターニング部材除去が実施されると、
図14(b)に示されるように、ウェハ10Wからパターニング部材39が除去される。続いて、
図15(a)に示されるように、中間層13の一部をエッチングによってウェハ10Wから除去する(ステップS30)。具体的には、中間層13のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分であって、梁部5に対応する部分を除いた部分、及び、流通孔21bに対応する部分を除去する。その結果、中間層13の端面13cが形成される。ステップS30においては、中間層13の端面13cが支持層11の端面11cに対して凹まないようにエッチングを実施する。ステップS30においては、中間層13の端面13cが支持層11の端面11cと面一となるようにエッチングを実施する。続いて、第1実施形態のステップS8(
図8を参照)と同様に、ウェット洗浄を実施する(ステップS31、第3工程)。続いて、
図15(b)に示されるように、複数の部分12WBのそれぞれをウェハ10Wから切り出す(ステップ32、第4工程)。これにより、複数のミラーデバイス1Bを製造する。
【0076】
以上説明したように、ミラーデバイス1Bの製造方法によれば、上述した第1実施形態のミラーデバイス1Aの製造方法と同様に、ミラーデバイス1Bにおける損傷の発生及び異物の残存を抑制することができる。
【0077】
また、ミラーデバイス1Bの製造方法では、ステップS30(第2工程)においては、中間層13の端面13cが支持層11の端面11cに対して凹まないように、エッチングを実施する。そのため、梁部5が第1可動部22から剥がれ難くなる。中間層13の端面13cが支持層11の端面11cに対して凹んでいると、梁部5が第1可動部22から剥がれてしまい、その結果、構造体2Bが破損してしまうおそれがある。ここで、梁部5が第1可動部22から剥がれ難くなるため、構造体2Bの破損が抑制される。ステップS30の後に、ステップS31においてウェット洗浄が実施されるため、梁部5が第1可動部22から剥がれ難くなるのは、特に重要である。
【0078】
[第3実施形態]
図16に示されるように、第3実施形態のミラーデバイス1Cは、流通孔22bが第1流通領域22d及び第2流通領域22eを含んでいる点、流通孔23bが第1スリット22aと連通している点、及び、第2連結部25に流通孔25bが形成されている点で、第1実施形態のミラーデバイス1Aと主に相違している。ミラーデバイス1Cにおけるミラーデバイス1Aと同様である部分の詳細な説明については省略する。
【0079】
構造体2Cの第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、例えばN角形状(Nは、4以上の自然数である)を呈している。Nは、好ましくは5以上の自然数である。第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、例えば八角形状を呈している。第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、例えば円形状を呈していてもよい。第2連結部25は、X軸方向における第2可動部23の両側に配置されている。
【0080】
第1可動部22に形成された流通孔22bは、第1流通領域22d及び複数の第2流通領域22eを含んでいる。第1流通領域22dは、Z軸方向から見た場合に、第1可動部22の外縁に沿って延びている。第1流通領域22dは、Z軸方向から見た場合に、例えば環状を呈している。第1可動部22には、第1流通領域22dを跨ぐ複数の接続部26が形成されている。これにより、第1流通領域22dは、第1可動部22の外縁に沿って並んでいる複数の領域に分割されている。各接続部26は、Z軸方向から見た場合に、第1流通領域22dの周方向において並んでいる。
【0081】
複数の第2流通領域22eは、Z軸方向から見た場合に、第1流通領域22dの外側に位置している。複数の第2流通領域22eは、Z軸方向から見た場合に、第1可動部22の外縁に沿って並んでいる。各第2流通領域22eは、Z軸方向から見た場合に、第1可動部22の外縁(八角形の各辺)に沿って延びている。このように、第1流通領域22d及び第2流通領域22eは、Z軸方向と垂直な方向において互いに隣接している。
【0082】
Z軸方向と垂直な方向とは、Z軸方向から見た場合に、第1流通領域の内側から第1流通領域の外側に向かう方向に沿った方向をいう。Z軸方向と垂直な方向は、Z軸方向から見た場合における第1可動部22の外縁に垂直な方向である。Z軸方向と垂直な方向は、Z軸方向から見た場合における第1可動部22の径方向である。以下、Z軸方向と垂直な方向を「径方向」という。
【0083】
Z軸方向から見た場合に、径方向における第2流通領域22eの幅は、径方向における第1流通領域22dの幅よりも小さい。第2流通領域22eは、径方向における幅が径方向における第1流通領域22dの幅よりも小さい部分を含んでいてもよい。換言すると、第2流通領域22eは、径方向における幅が径方向における第1流通領域22dの幅以上の部分を含んでいてもよい。
【0084】
第2可動部23に形成された流通孔(流通補助領域)23bは、第1スリット22aと連通している。具体的には、流通孔23bは、第1スリット22aの一部が、X軸方向において第1可動部22とは反対側に向かって広がることによって形成されている。第1スリット22a及び流通孔23bによって構成された領域は、Z軸方向から見た場合に、例えば矩形状の外形を有している。なお、
図16においては、流通孔23bと第1スリット22aとの境界線を点線で示している。各第2連結部25には、それぞれ一対の流通孔25bが形成されている。各第2連結部25において、一対の流通孔25bは、Y軸方向において並んでいる。各流通孔25bは、第2連結部25を貫通している。
【0085】
図16及び
図17に示されるように、第1可動部22のうち第1流通領域22dの内側の部分は、本体部30を構成する。第1可動部22のうち第1流通領域22dの外側の部分は、環状部40を構成する。本体部30は、平面視において円形状を呈しているが、楕円形状、四角形状、菱形状等の任意の形状に形成されてもよい。平面視における本体部30の中心は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点と一致している。環状部40は、平面視において第1流通領域22dを介して本体部30を囲むように環状に形成されている。環状部40は、例えば平面視において八角形状の外縁及び内縁を有している。複数の接続部26は、本体部30と環状部40とを互いに連結している。
【0086】
環状部40は、一対の第1部分41と、一対の第2部分42と、二対の第3部分(傾斜部)43と、を有している。一対の第1部分41は、X軸方向における本体部30の両側に位置している。各第1部分41は、Y軸方向に沿って延在している。一対の第2部分42は、Y軸方向における本体部30の両側に位置している。各第2部分42は、X軸方向に沿って延在している。二対の第3部分43は、それぞれ第1部分41と第2部分42との間に位置しており、第1部分41及び第2部分42に接続されている。各第3部分43は、X軸方向及びY軸方向に交差する方向に沿って延在している。各第3部分43は、第1連結部24及び第2連結部25の中心線(第1軸線X1)に斜めに交差している。
【0087】
各第3部分43がX軸方向及びY軸方向に交差する方向に沿って延在する構成によれば、環状部40が例えば矩形環状を呈している場合に比べて、各第3部分43を第1軸線X1に近づけることができる。そのため、第1軸線X1に近い領域に第1可動部22の質量を集中させることで、第1軸線X1周りの第1可動部22の慣性モーメントを低減させることができる。換言すると、第1可動部22が、Z軸方向から見た場合に、N角形状を呈している場合において、Nが大きければ大きいほど、第1軸線X1に近い領域に第1可動部22の質量を集中させることで、第1軸線X1周りの第1可動部22の慣性モーメントを低減させることができる。これにより、第1可動部22を駆動させるための駆動電力を低減させることができる。
【0088】
各第1部分41には、それぞれ第2流通領域22eが形成されている。各第1部分41は、当該第2流通領域22eに対して本体部30とは反対側の第1フレーム部41aと、第2流通領域22eに対して第1フレーム部41aとは反対側の第2フレーム部41bと、を有している。第1フレーム部41aは、第1可動部22における第2流通領域22eの外側の部分である。第2フレーム部41bは、第1可動部22における第1流通領域22dと第2流通領域22eとの間の部分である。第1フレーム部41a及び第2フレーム部41bは、第2流通領域22eに沿って延在している。径方向における第1フレーム部41aの幅D1は、径方向における第2フレーム部41bの幅D2と略同じである。
【0089】
各第1部分41においては、第2流通領域22eが第1軸線X1に関して線対称となるように配置されている。つまり、各第1部分41においては、第2流通領域22eは、第1連結部24及び第2連結部25の中心線上において第1連結部24に隣接する位置に形成されている。これにより、例えば第1連結部24又は第2連結部25で応力が発生し、当該応力が第1可動部22に伝わった場合、第1部分41における第2流通領域22eの近傍の部分が局所的に歪んだ結果、当該応力が第1可動部22の本体部30に伝わるのが抑制される。これにより、ミラー層3の歪等を抑制することができる。
【0090】
各第2部分42には、それぞれ第2流通領域22eが形成されている。各第2部分42は、当該第2流通領域22eに対して本体部30とは反対側の第1フレーム部42aと、第2流通領域22eに対して第1フレーム部42aとは反対側の第2フレーム部42bと、を有している。第1フレーム部42aは、第1可動部22における第2流通領域22eの外側の部分である。第2フレーム部42bは、第1可動部22における第1流通領域22dと第2流通領域22eとの間の部分である。第1フレーム部42a及び第2フレーム部42bは、第2流通領域22eに沿って延在している。径方向における第1フレーム部42aの幅D3は、径方向における第2フレーム部42bの幅D4よりも大きい。各第2部分42においては、第2流通領域22eが第1連結部24及び第2連結部25の中心線とは離れた位置に形成されている。
【0091】
各第2フレーム部42bは、応力緩和領域として機能する。具体的には、例えば第1可動部22が外部からの応力を受けた場合、第2フレーム部42bが局所的に歪んだ結果、当該応力が第1可動部22の本体部30に伝わるのが抑制される。これにより、ミラー層3の歪等を抑制することができる。
【0092】
各第2部分42は、接続部26によって本体部30に連結されている。具体的には、接続部26は、第2フレーム部42bと本体部30とを連結している。各第2部分42においては、接続部26は、径方向(第1流通領域22dと第2流通領域22eとが並ぶ方向)において第1流通領域22dを跨いでいる。各第2部分42においては、接続部26は、径方向において第1流通領域22dの第2流通領域22eと重なる部分を跨いでいる。第2部分42と本体部30とを連結する接続部26は、第3部分43に対して第1連結部24とは反対側における第1流通領域22dに形成されている。
【0093】
各第2部分42においては、接続部26は、径方向において第2流通領域22eと隣接している。つまり、接続部26は、第2流通領域22eに対応して形成されている。各第2部分42においては、接続部26は、X軸方向における第2流通領域22eの略中央の位置において第2フレーム部42bに連結されている。これにより、X軸方向における接続部26の両側において第2フレーム部42bを均等に配置することができる。そのため、応力が第1可動部22の本体部30に伝わるのを効率よく抑制することができる。
【0094】
各第3部分43には、それぞれ第2流通領域22eが形成されている。各第3部分43は、当該第2流通領域22eに対して本体部30とは反対側の第1フレーム部43aと、第2流通領域22eに対して第1フレーム部43aとは反対側の第2フレーム部43bと、を有している。第1フレーム部43aは、第1可動部22における第2流通領域22eの外側の部分である。第2フレーム部43bは、第1可動部22における第1流通領域22dと第2流通領域22eとの間の部分である。第1フレーム部43a及び第2フレーム部43bは、第2流通領域22eに沿って延在している。径方向における第1フレーム部43aの幅D5は、径方向における第2フレーム部43bの幅D6よりも大きい。
【0095】
各第2フレーム部43bは、応力緩和領域として機能する。具体的には、例えば第1可動部22が外部からの応力を受けた場合に、第2フレーム部43bが局所的に歪んだ結果、当該応力が第1可動部22の本体部30に伝わるのが抑制される。これにより、ミラー層3の歪等を抑制することができる。
【0096】
各第3部分43は、接続部26によって本体部30に連結されている。具体的には、接続部26は、第2フレーム部43bと本体部30とを連結している。各第3部分43においては、接続部26が径方向(第1流通領域22dと第2流通領域22eとが並ぶ方向)において第1流通領域22dを跨いでいる。各第3部分43においては、接続部26は、径方向において第1流通領域22dの第2流通領域22eと重なる部分を跨いでいる。第3部分43と本体部30とを連結する接続部26は、第2部分42と本体部30とを連結する接続部26と第1連結部24との間における第1流通領域22dに形成されている。第3部分43と本体部30とを連結する接続部26は、第1流通領域22dの第3部分43と重なる部分に形成されている。
【0097】
各第3部分43においては、接続部26は、径方向において、第2流通領域22eと隣接している。つまり、接続部26は、第2流通領域22eに対応して形成されている。各第3部分43においては、接続部26は、第2流通領域22eの中心線X3に対して、第1連結部24とは反対側の位置において第2フレーム部43bに連結されている。各第3部分43においては、接続部26は、径方向において第1流通領域22dの第2流通領域22eと重なる部分のうち、第1連結部24とは反対側の部分に形成されている。つまり、各第3部分43においては、接続部26が第1連結部24と離れた位置において第2フレーム部43bに連結されている。これにより、各第3部分43においては、第2フレーム部43bにおける第1連結部24側の端(第1連結部24に近い端)から接続部26までの距離が長くなる。つまり、第2フレーム部43bのうち、第1連結部24から伝わった応力が緩和される領域が長くなる。そのため、例えば第1連結部24から伝わった応力が当該接続部26を介して第1可動部22の本体部30に伝わるのが効果的に抑制される。これにより、ミラー層3の歪等を効果的に抑制することができる。なお、中心線X3は、第3部分43において第2流通領域22eの延在方向における中心を通過し、且つ径方向に沿って延びる線である。
【0098】
第1流通領域22dの第3部分43と重なる部分には、接続部26が形成されていなくてもよい。第1流通領域22dの第3部分43よりも第1連結部24側の部分に接続部26が形成されていてもよい。
【0099】
第1可動部22が、Z軸方向から見た場合に、N角形状を呈している場合において、Nが大きければ大きいほど(例えばNが8である場合)、第1可動部22が例えば矩形状を呈している場合に比べて、各第2部分42を本体部30に連結する一対の接続部26と第1連結部24との距離(第1可動部22の外縁に沿った距離)が小さくなる。その結果、第1連結部24から当該一対の接続部26を介して本体部30に伝わる応力が増加するおそれがある。そのため、当該一対の接続部26だけではなく、上述したように、当該接続部26と第1連結部24との間にも接続部26を設けることで応力が本体部30に伝わるのを抑制することが好ましい。また、第2部分42とは異なる第3部分43と本体部30との間に接続部26を設けることが特に好ましい。各接続部26が第2部分42及び第3部分43のそれぞれと本体部30とを連結することにより、第1連結部24から本体部30に伝わる応力をより減少させることができる。本実施形態では、上述したように、一対の第2部分42及び二対の第3部分43は、三対の接続部26によって本体部30に連結されている。
【0100】
ミラーデバイス1Cの第1コイル221は、Z軸方向から見た場合に、第1流通領域22dよりも外側(第1可動部22の外縁部)において渦巻き状に延びている。具体的には、第1コイル221は、各第1部分41においては、第1流通領域22dと第2流通領域22eとの間(第1軸線X1上に存在する第1流通領域22dと第2流通領域22eとの間)に配置されており、各第2部分42及び各第3部分43においては、第2流通領域22eよりも外側(接続部26に対応して設けられた第2流通領域22eと第1可動部22の外縁との間)に配置されている。つまり、第1コイル221は、各第1部分41においては、第2フレーム部41bに設けられており、各第2部分42及び各第3部分43においては、第1フレーム部42a及び第1フレーム部43aに設けられている。第1コイル221は、例えば、駆動コイル及び/又はセンシングコイルである。
【0101】
第1コイル221が、各第1部分41において、第2フレーム部41bに配置されていると、第1連結部24と第1コイル221との間に第1フレーム部41aが存在するため、例えば第1連結部24又は第2連結部25で発生した応力が第1コイル221に伝わるのが抑制される。これにより、第1コイル221の損傷を防ぐことができる。また、第1コイル221が、各第2部分42及び各第3部分43において、第1フレーム部42a及び第1フレーム部43aに配置されていると、相対的に歪やすい応力緩和領域として機能する第2フレーム部42b及び第2フレーム部43bを避けることができ、第1コイル221の損傷を防ぐことができる。また、第1コイル221が、各第2部分42及び各第3部分43において、第1フレーム部42a及び第1フレーム部43aに配置されていると、径方向における第2フレーム部42bの幅D4及び径方向における第2フレーム部43bの幅D6を十分に小さくすることができ、第2フレーム部42b及び第2フレーム部43bの応力緩和領域としての機能を十分に発揮させることができる。
【0102】
次に、ミラーデバイス1Cの製造方法について説明する。ミラーデバイス1Cの製造方法は、第1流通領域22d及び第2流通領域22eを含む流通孔22bを形成する点、第1スリット22aに連通する流通孔23bを形成する点、及び、第2連結部25に流通孔25bを形成する点で、第1実施形態のミラーデバイス1Aの製造方法と主に相違している。ミラーデバイス1Cの製造方法におけるミラーデバイス1Aの製造方法と同様である部分の詳細な説明については省略する。
【0103】
ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、デバイス層のうち第1スリット22a、第2スリット23a、第1流通領域22dのうち接続部26を除いた領域、第2流通領域22e、流通孔23b、及び流通孔25bに対応する部分を除去する。また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、中間層のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分を除去する。その結果、第1スリット22a及び第2スリット23aが形成され、複数の第1可動部22及び複数の第2可動部23がリリースされる。
【0104】
また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、上述したように、中間層13の一部をウェハから除去することで、ウェハのうち第1スリット22a及び第2スリット23a以外の部分にウェハを貫通する複数の流通孔22b,23b,25bを形成する。具体的には、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、ウェハのうち第1可動部22に対応する部分に、ウェハを貫通する流通孔22bを形成し、第2可動部23に対応する部分に、ウェハを貫通する流通孔23bを形成し、第2連結部25に対応する部分に、ウェハを貫通する流通孔25bを形成する。
【0105】
具体的には、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、流通孔23bが第1スリット22aと連通するように、流通孔23bを形成する。また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、Z軸方向から見た場合に、流通孔22bが径方向において互いに隣接する第1流通領域22d及び第2流通領域22eを含むように、流通孔22bを第1可動部22に対応する部分に形成する。また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、Z軸方向から見た場合に、径方向において、第1流通領域22dを跨ぐ接続部26が形成されるように、流通孔22bを形成する。また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、Z軸方向から見た場合に、径方向における第2流通領域22eの幅が径方向における第1流通領域22dの幅よりも小さい部分を含むように、流通孔22bを形成する。
【0106】
また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、第1可動部22が第1連結部24によってベース部21において支持されるように、第1スリット22aを形成する。また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、Z軸方向から見た場合に、径方向において第2流通領域22eが第1連結部24と隣接するように、第2流通領域22eを形成する。また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、第2可動部23が第2連結部25によってベース部21において支持されるように、第2スリット23aを形成する。また、ミラーデバイス1Cの製造方法では、第2工程において、第2連結部25に対応する部分に流通孔25bを形成する。
【0107】
以上説明したように、ミラーデバイス1Cの製造方法によれば、上述した第1実施形態のミラーデバイス1Aの製造方法と同様に、ミラーデバイス1Cにおける損傷の発生及び異物の残存を抑制することができる。
【0108】
[第4実施形態]
図18に示されるように、第4実施形態のミラーデバイス1Dは、第1可動部22に流通孔22fが形成されている点、及び、流通孔23bが第1スリット22aと連通している点で、第1実施形態のミラーデバイス1Aと主に相違している。ミラーデバイス1Dにおけるミラーデバイス1Aと同様である部分の詳細な説明については省略する。
【0109】
構造体2Dの第1可動部22には、流通孔22fが形成されている。流通孔22fは、Z軸方向から見た場合に、第1可動部22の外縁に沿って延びている。流通孔22fは、Z軸方向から見た場合に、例えば環状を呈している。第1可動部22には、流通孔22fを跨ぐ複数の接続部26が形成されている。第1可動部22には、例えば4つの接続部26が形成されている。各接続部26は、Z軸方向から見た場合に、それぞれY軸方向における第1可動部22の両端部に形成されている。これにより、流通孔22bは、複数の領域に分割されている。
【0110】
第1可動部22のうち流通孔22fの内側の部分は、本体部30を構成する。第1可動部22のうち流通孔22fの外側の部分は、環状部40を構成する。本体部30は、平面視において円形状を呈しているが、楕円形状、四角形状、菱形状等の任意の形状に形成されてもよい。平面視における本体部30の中心は、第1軸線X1と第2軸線X2との交点と一致している。環状部40は、平面視において流通孔22fを介して本体部30を囲むように環状に形成されている。環状部40は、平面視において六角形状の外形を有しているが、円形状、楕円形状、四角形状、菱形状等の任意の外形を有していてもよい。本体部30と環状部40とは、複数の接続部26によって互いに連結されている。
【0111】
ミラーデバイス1Dの第2可動部23は、枠状に形成されており、第1可動部22を囲むようにベース部21の内側に配置されている。第2可動部23は、一対の第1接続部41A,41Bと、一対の第2接続部42A,42Bと、一対の第1直線状部43A,43Bと、一対の第2直線状部44A,44Bと、一対の第3直線状部45A,45Bと、一対の第4直線状部46A,46Bと、を有している。第2可動部23は、平面視において第1軸線X1及び第2軸線X2のそれぞれに関して対称な形状を有している。以下の説明において、第1軸線X1又は第2軸線X2に関して対称とは、平面視における対称をいう。
【0112】
第1接続部41A,41Bは、X軸方向における第1可動部22の両側に位置している。すなわち、各第1接続部41A,41Bは、平面視において第1可動部22とX軸方向に対向する部分を有している。各第1接続部41A,41Bは、Y軸方向に沿って延在している。
【0113】
第2接続部42A,42Bは、Y軸方向における第1可動部22の両側に位置している。すなわち、各第2接続部42A,42Bは、平面視において第1可動部22とY軸方向に対向する部分を有している。各第2接続部42A,42Bは、X軸方向に沿って延在している。
【0114】
第1直線状部43A,43Bは、X軸方向における第2接続部42Aの両側に位置し、第2接続部42Aに接続されている。各第1直線状部43A,43Bは、X軸方向に沿って延在している。第1直線状部43A,43Bは、Y軸に関して互いに対称に配置されている。第2直線状部44A,44Bは、X軸方向における第2接続部42Bの両側に位置し、第2接続部42Bに接続されている。各第2直線状部44A,44Bは、X軸方向に沿って延在している。第2直線状部44A,44Bは、Y軸に関して互いに対称に配置されている。
【0115】
第3直線状部45A,45Bは、各第1直線状部43A,43Bに対して第2接続部42Aとは反対側に位置し、第1直線状部43A,43Bと第1接続部41A,41Bとに接続されている。第3直線状部45Aは、平面視において、X軸及びY軸のそれぞれに対して45度傾斜した方向に沿って延在している。第3直線状部45Bは、第3直線状部45Aに対してY軸に関して対称に延在している。
【0116】
第4直線状部46A,46Bは、各第2直線状部44A,44Bに対して第2接続部42Bとは反対側に位置し、第2直線状部44A,44Bと第1接続部41A,41Bとに接続されている。第4直線状部46Aは、第3直線状部45Aに対してX軸に関して対称に延在している。第4直線状部46Bは、第4直線状部46Aに対してY軸に関して対称に延在すると共に、第3直線状部45Bに対してX軸に関して対称に延在している。
【0117】
各第1連結部24は、第1接続部41A,41Bにおいて第2可動部23に接続されている。本実施形態では、第1連結部24に作用する応力の緩和のために、各第1連結部24における第1可動部22側の端部の幅(Y軸方向における幅)は第1可動部22に近づくほど広がっており、第2可動部23側の端部の幅(Y軸方向における幅)は第2可動部23に近づくほど広がっている。
【0118】
各第2連結部25は、第2接続部42A,42Bにおいて第2可動部23に接続されている。各第2連結部25は、平面視において蛇行して延在している。各第2連結部25は、複数の直線状部と、複数の折り返し部と、を有している。直線状部は、Y軸方向に延在し、X軸方向に並んで配置されている。折り返し部は、隣り合う直線状部の両端を交互に連結している。
【0119】
第2可動部23に形成された流通孔(流通補助領域)23bは、第1スリット22aと連通している。流通孔23bは、4つの第1部分23cと、2つの第2部分23dと、を含んでいる。各第1部分23cは、Z軸方向から見た場合に、第1可動部22の外側において第1軸線X1及び第2軸線X2に関して互いに線対称に配置されている。各第1部分23cは、第1スリット22aの一部が、X軸方向において第1可動部22とは反対側に向かって広がることによって形成されている。各第2部分23dは、それぞれ、Y軸方向における第1可動部22の両側において、一対の第1部分23cの間に位置している。各第2部分23dは、第1スリット22aの一部が、Y軸方向において第1可動部22とは反対側に広がることによって形成されている。各第2部分23dは、それぞれ各第1スリット22aと連通している。
図18においては、流通孔23bと第1スリット22aとの境界線を点線で示している。
【0120】
ミラーデバイス1Dは、一対のコイル14,15を更に備えている。各コイル14,15は、第1可動部22を囲むように第2可動部23に設けられ、平面視において(各コイル14,15が配置された平面に直交する方向から見た場合に)渦巻き状を呈している。各コイル14,15は、X軸及びY軸を含む平面に沿って配置されている。各コイル14,15は、第1可動部22の周りに複数回巻回されている。一対のコイル14,15は、平面視において第2可動部23の幅方向に互い違いに並ぶように、配置されている。第1可動部22にはコイルが設けられていない。
【0121】
次に、ミラーデバイス1Dの製造方法について説明する。ミラーデバイス1Dの製造方法は、第1可動部22に流通孔22fを形成する点、及び、第1スリット22aに連通する流通孔23bを形成する点で、第1実施形態のミラーデバイス1Aの製造方法と主に相違している。ミラーデバイス1Dの製造方法におけるミラーデバイス1Aの製造方法と同様である部分の詳細な説明については省略する。
【0122】
ミラーデバイス1Dの製造方法では、第2工程において、デバイス層のうち第1スリット22a、第2スリット23a、流通孔22f及び流通孔23bに対応する部分を除去する。また、ミラーデバイス1Dの製造方法では、第2工程において、中間層のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分を除去する。その結果、第1スリット22a及び第2スリット23aが形成され、複数の第1可動部22及び複数の第2可動部23がリリースされる。
【0123】
また、ミラーデバイス1Dの製造方法では、第2工程において、上述したように、中間層13の一部をウェハから除去することで、ウェハのうち第1スリット22a及び第2スリット23a以外の部分にウェハを貫通する複数の流通孔22f,23bを形成する。具体的には、ミラーデバイス1Dの製造方法では、第2工程において、ウェハのうち第1可動部22に対応する部分に、ウェハを貫通する22fを形成し、第2可動部23に対応する部分に、ウェハを貫通する流通孔23bを形成する。
【0124】
以上説明したように、ミラーデバイス1Dの製造方法によれば、上述した第1実施形態のミラーデバイス1Aの製造方法と同様に、ミラーデバイス1Dにおける損傷の発生及び異物の残存を抑制することができる。
【0125】
[変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0126】
各実施形態において、デバイス層12の一部、支持層11の一部、及び中間層13の一部をこの順にウェハ10Wから除去する例を示したが、これに限定されない。支持層11の一部、デバイス層12の一部、及び中間層13の一部をこの順にウェハ10Wから除去してもよい。この場合、中間層13の一部をウェハ10Wから除去する前に、パターニング部材除去及び保護膜除去を実施する。また、支持層11の一部、中間層13の一部、及びデバイス層12の一部をこの順にウェハ10Wから除去してもよい。この場合、デバイス層12の一部をウェハ10Wから除去する前に、パターニング部材除去及び保護膜除去を実施する。つまり、これらの場合には、パターニング部材除去及び保護膜除去の後に、第1可動部22及び第2可動部23をリリースすればよい。
【0127】
また、各実施形態において、パターニング部材除去においては、ウェットプロセスによりパターニング部材19,29,39を除去する例を示したが、パターニング部材除去においては、ドライプロセスによってパターニング部材19,29,39をウェハ10Wから除去してもよい。同様に、各実施形態において、保護膜除去においては、ウェットプロセスにより保護膜を除去する例を示したが、保護膜除去においては、ドライプロセスによって保護膜をウェハ10Wから除去してもよい。これらの場合には、デバイス層12の一部、中間層13の一部、及び支持層11の一部をこの順にウェハ10Wから除去してもよい。つまり、これらの場合には、第1可動部22及び第2可動部23をリリースした後に、パターニング部材除去及び保護膜除去を実施してもよい。また、各実施形態において、パターニング部材除去を実施した後に、保護膜除去を実施する例を示したが、保護膜除去を実施した後に、パターニング部材除去を実施してもよい。
【0128】
また、第1実施形態において、中間層13のうちベース部21に対応する部分よりも内側の部分、及び、流通孔21bに対応する部分を除去することで、第1スリット22a、第2スリット23a、及び流通孔21b,22b,23bを形成する例を示したが、これに限定されない。第1スリット22a、第2スリット23a、及び流通孔21b,22b,23bが形成される順序は、任意であってもよい。例えば、第1スリット22a及び第2スリット23a形成した後、つまり、第1可動部22及び第2可動部23をリリースした後に、流通孔21b,22b,23bを形成してもよい。この場合、まず、ウェハ10Wのうち第1スリット22a及び第2スリット23aに対応する部分を除去した後に、流通孔21b,22b,23bに対応する部分を除去してもよい。また、流通孔21b,22b,23bを形成した後に、第1スリット22a及び第2スリット23aを形成してもよい。この場合、まず、ウェハ10Wのうち流通孔21b,22b,23bに対応する部分を除去した後に、第1スリット22a及び第2スリット23aに対応する部分を除去してもよい。
【0129】
また、第1実施形態において、矯正層4がウェハ10Wの裏面10bに対して形成される例を示したが、矯正層4は、ウェハ10Wの表面10aに対して形成されてもよい。具体的には、矯正層4は、ベース部21、第2可動部23、各第1連結部24、及び各第2連結部25においては、デバイス層12における中間層13とは反対側の面に形成されてもよい。矯正層4は、第1可動部22においては、デバイス層12における中間層13とは反対側の面、及びミラー層3におけるデバイス層12とは反対側の面に形成されてもよい。また、矯正層4は、表面10aに対して形成され、且つ裏面10bに対して形成されてもよい。つまり、矯正層4は、表面10a及び/又は裏面10bに対して形成される。
【0130】
また、
図19(a)に示されるように、各流通孔22bは、Z軸方向から見た場合に、X軸方向(ウェハ10Wの厚さ方向に垂直な方向)における幅が変化してもよい。すなわち、Z軸方向から見た場合に、各流通孔22bのX軸方向における幅は、Y軸方向における異なる位置において互いに異なっていてもよい。具体的には、各流通孔22bは、Y軸方向における中央部の幅がY軸方向における両端部の幅よりも大きくてもよい。各流通孔22bは、Z軸方向から見た場合に、少なくとも一部に湾曲部を含んでいてもよい。各流通孔22bは、Z軸方向から見た場合に、X軸方向における一方側の縁と他方側の縁とが異なる形状を呈していてもよい。各流通孔22bは、Z軸方向から見た場合に、ミラー層3を囲む三日月状を呈していてもよい。これらの場合には、第3工程のウェット洗浄において、各流通孔22bの近傍で複雑な水流が発生しやすくなるため、ウェット洗浄による洗浄効率が向上する。
【0131】
各実施形態の第2工程においては、Z軸方向から見た場合に、X軸方向における幅が変化するように、各流通孔22bを形成してもよい。各実施形態の第2工程においては、少なくとも一部に湾曲部が含まれるように、各流通孔22bを形成してもよい。各実施形態の第2工程においては、Z軸方向から見た場合に、一方側の縁と他方側の縁とが異なる形状を呈するように、各流通孔22bを形成してもよい。なお、構造体2A,2B,2C,2Dは、第2可動部23を有していなくてもよい。この場合、第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、第1スリット22aを介してベース部21の内側に配置されている。なお、各第1連結部24は、Z軸方向から見た場合に、Y軸方向における第1可動部22の両側にそれぞれ配置されていてもよい。
【0132】
また、
図19(b)に示されるように、流通孔22bは、Z軸方向から見た場合に、第1軸線X1及び第2軸線X2との交点を中心とする円環状を呈していてもよい。この場合、第1可動部22には、流通孔22bを跨ぐ接続部26が形成されている。第1可動部22には、例えば4つの接続部26が形成されている。各接続部26は、Z軸方向から見た場合に、流通孔22bの周方向において同間隔に並んでいる。これにより、流通孔22bは、複数の領域に分割されている。第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、第1軸線X1及び第2軸線X2との交点に関して点対称である。この場合、各接続部26によって第1可動部22を適切に補強しつつ、第1可動部22のうち流通孔22bが占める面積を大きくすることができる。そのため、第3工程のウェット洗浄において、流通孔22bを介してより大量の洗浄液を流通させることができる。これにより、ウェハ10Wから異物を確実に除去することができる。また、第1可動部22が点対称であるため、第3工程のウェット洗浄において、第1可動部22における損傷の発生を抑制することができる。
【0133】
また、各実施形態の第2工程においては、流通孔22bを跨ぐ接続部26が形成されるように、流通孔22bを形成してもよい。各実施形態の第2工程においては、流通孔22b以外の流通孔(例えば流通孔23b)を跨ぐ連結部が形成されるように、流通孔22b以外の流通孔を形成してもよい。なお、第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、円形状を呈していてもよい。
【0134】
また、
図19(c)に示されるように、一対の流通孔22bは、第1軸線X1に関して互いに線対称であってもよい。各流通孔22bは、Z軸方向から見た場合に、ミラー層3を囲む三日月状を呈していてもよい。この場合には、第3工程のウェット洗浄において、各流通孔22bの近傍で複雑な水流が発生しやすくなるため、ウェット洗浄による洗浄効率が向上する。なお、第1可動部22は、Z軸方向から見た場合に、長軸がY軸方向に沿って延びる楕円形状を呈していてもよい。
【0135】
また、
図20(a)に示されるように、第2可動部23には、流通孔23bが形成されていなくてもよい。また、
図20(b)に示されるように、第1可動部22には、流通孔22bが形成されていなくてもよい。
【0136】
また、
図21に示されるように、流通孔22b,23bは、形成されていなくてもよい。つまり、ベース部21のみに、流通孔21bが形成されていてもよい。
【0137】
また、
図22に示されるように、X軸方向における各第1連結部24の両側には、それぞれ一対の流通孔24bが形成されていてもよい。各流通孔24bは、ベース部21を貫通している。各流通孔24bは、X軸方向において各第1スリット22aよりも内側に位置している。また、ベース部21には、流通孔21bが形成されていなくてもよい。
【0138】
また、流通孔21b,22b,23b,24b,25bは、洗浄液を流通させるために形成されていなくてもよい。流通孔21b,22b,23b,24b,25bは、単なる貫通孔又は貫通領域であってもよい。
【0139】
なお、以上の各実施形態からは、以下の発明を抽出することができる。
【0140】
発明1:ベース部と、前記ベース部において支持された可動部と、前記ベース部に対して前記可動部が可動となるように、前記可動部に連結された連結部と、前記可動部に設けられたミラー層と、を備え、前記可動部には、環状を呈しており且つ前記可動部の外縁に沿って延びている第1貫通領域と、前記第1貫通領域よりも外側に位置している複数の第2貫通領域と、前記第1貫通領域の前記第2貫通領域と重なる部分を跨ぐ接続部と、が形成されており、前記可動部における前記第2貫通領域の外側の部分の幅は、前記可動部における前記第1貫通領域と前記第2貫通領域との間の部分の幅よりも大きい、光走査装置。
【0141】
発明2:前記第2貫通領域は、前記連結部の中心線上の位置に形成されている、発明1に記載の光走査装置。
【0142】
発明3:前記接続部は、前記第1貫通領域の前記第2貫通領域と重なる部分のうち、前記連結部とは反対側の部分に形成されている、発明1又は2に記載の光走査装置。
【0143】
発明4:前記可動部における前記第1貫通領域の外側の部分は、前記連結部の中心線に斜めに交差する傾斜部を含んでいる、発明1~3のいずれか一方に記載の光走査装置。
【0144】
発明5:前記可動部は、N(Nは5以上の自然数)角形状を呈している、発明1~4のいずれか一方に記載の光走査装置。
【0145】
発明6:前記可動部における前記第1貫通領域の外側の部分は、前記連結部の中心線に斜めに交差する傾斜部を含んでおり、前記傾斜部に対して前記連結部とは反対側における前記第1貫通領域には前記接続部が形成され、前記傾斜部に対して前記連結部とは反対側に形成された前記接続部と前記連結部との間における前記第1貫通領域には前記接続部が更に形成されている、発明1~5のいずれか一方に記載の光走査装置。
【0146】
発明7:前記傾斜部に対して前記連結部とは反対側に形成された前記接続部と前記連結部との間における前記第1貫通領域に形成された前記接続部は、前記第1貫通領域の前記傾斜部と重なる部分又は前記第1貫通領域の前記傾斜部よりも前記連結部側の部分に形成されている、発明6に記載の光走査装置。
【0147】
発明8:前記可動部の外縁部において延びているコイルを更に備え、前記第2貫通領域は、前記連結部の中心線上の位置、及び前記連結部の前記中心線と離れた位置に形成されており、前記コイルは、前記連結部の前記中心線上の位置に形成された前記第2貫通領域と前記第1貫通領域との間、及び、前記連結部の前記中心線と離れた位置に形成された前記第2貫通領域と前記可動部の外縁との間に配置されている、発明1~7のいずれか一方に記載の光走査装置。
【符号の説明】
【0148】
1A,1B,1C,1D…ミラーデバイス、2A,2B,2C,2D…構造体、3…ミラー層、4…矯正層、10W…ウェハ、10a…表面、10b…裏面、12WA,12WB…部分、11…支持層、12…デバイス層、13…中間層、11a,11b,11c,12a,12b,13a,13b,13c…端面、19…パターニング部材、21…ベース部、22…第1可動部、22a…第1スリット、23…第2可動部、23a…第2スリット、21b,22b,22f,23b,24b,25b…流通孔。