(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240402BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240402BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 100B
B60C11/12 A
B60C11/12 B
B60C11/13 B
B60C11/03 100C
(21)【出願番号】P 2019219748
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小熊 潤也
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131150(JP,A)
【文献】特開2019-151151(JP,A)
【文献】特開平01-101205(JP,A)
【文献】特開2019-111839(JP,A)
【文献】特開平07-172112(JP,A)
【文献】特表2004-513014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向の外縁部を形成するトレッドにおいてタイヤ赤道面のタイヤ幅方向の両外側にタイヤ周方向に沿って各々形成された複数のタイヤ周方向主溝と、
前記トレッドにおいて前記タイヤ赤道面のタイヤ幅方向の両外側の前記タイヤ赤道面に各々最も近い2本の前記タイヤ周方向主溝の間にタイヤ周方向に沿って
形成された中央側タイヤ周方向溝と、
前記トレッドにおいて前記中央側タイヤ周方向溝と前記中央側タイヤ周方向溝のタイヤ幅方向外側の前記タイヤ周方向主溝により区画された陸部と、
前記陸部において前記中央側タイヤ周方向溝と前記タイヤ周方向主溝に亘って連通して形成されると共に、タイヤ径方向の外側部分の第1外側溝部の溝幅がタイヤ径方向の内側部分の溝幅よりも広く形成され、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数形成された複数の第1幅方向溝と、
前記陸部において前記中央側タイヤ周方向溝と前記タイヤ周方向主溝に亘って連通して形成されると共に、タイヤ径方向の外側部分の第2外側溝部の溝幅がタイヤ径方向の内側部分の溝幅よりも狭く形成され、タイヤ周方向に沿って間隔を空けかつ前記第1幅方向溝と交互に複数形成された複数の第2幅方向溝と、
を
備え、
前記トレッドの前記中央側タイヤ周方向溝においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、前記トレッドが接地して前記中央側タイヤ周方向溝の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わさることが可能である空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記複数の第1幅方向溝の前記第1外側溝部のタイヤ径方向内側の端部は、前記複数の第2幅方向溝の前記第2外側溝部のタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向内側に各々形成された請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記複数の第1幅方向溝において、前記中央側タイヤ周方向溝の側の第1端部はタイヤ周方向に沿って
等間隔に各々
形成され、
前記複数の第2幅方向溝において、前記中央側タイヤ周方向溝の側の第2端部はタイヤ周方向に沿って
等間隔に各々形成されると共に、
前記各第2端部のタイヤ周方向の位置は前記各第1端部とは互いに異なる請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記中央側タイヤ周方向溝はタイヤ幅方向外側の一方側へ向けて突出された第1突出部とタイヤ幅方向外側の他方側へ向けて突出された第2突出部がタイヤ周方向に沿って交互に形成された鋸歯形状とされ、前記中央側タイヤ周方向溝よりもタイヤ幅方向外側の一方側に形成された前記複数の第1幅方向溝及び前記複数の第2幅方向溝の前記中央側タイヤ周方向溝の側の端部は前記第2突出部に連通して形成されると共に、前記中央側タイヤ周方向溝よりもタイヤ幅方向外側の他方側に形成された前記複数の第1幅方向溝及び前記複数の第2幅方向溝の前記中央側タイヤ周方向溝の側の端部は前記第1突出部に連通して形成された請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤチェーンの装着時における排水性能の低下を抑制すると共にタイヤ寿命の低下を抑制することができる重荷重用ラジアルタイヤが開示されている。具体的には、トレッドの接地面を形成するトレッド踏面部のリブ列には、タイヤ幅方向の両端部と対応する一対の周方向溝に各別に開口する開サイプがタイヤ周方向に間隔を空けて形成されている。開サイプは、周方向溝のうち最もタイヤ赤道面の近くに位置する中央周方向溝に開口されている。また、タイヤ幅方向両側のラグ溝のタイヤ幅方向外端におけるタイヤ周方向の中央部を互いに結ぶ仮想直線に対して最も近く位置する開サイプの開口部は、トレッド踏面部の平面視で仮想直線からタイヤ周方向にトレッド幅の15%以上離れた位置に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたラジアルタイヤでは、赤道面に沿って形成された中央周方向溝の溝幅とそのタイヤ幅方向の両外側に形成された一方側周方向溝及び他方向側周方向溝の溝幅とは略同一に形成されている。トレッドが接地した際に、トレッドを形成するゴムは中央周方向溝の側へ向けて膨出変形する。膨出変形によりトレッドと路面との接地摩擦は増加するため転がり抵抗が増加する可能性がある。以上より、タイヤの排水性能を確保しかつタイヤの転がり抵抗を低減する上で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、タイヤの排水性能を確保しかつタイヤの転がり抵抗を低減することができる空気入りタイヤを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の空気入りタイヤは、タイヤ径方向の外縁部を形成するトレッドにおいてタイヤ赤道面のタイヤ幅方向の両外側にタイヤ周方向に沿って各々形成された複数のタイヤ周方向主溝と、前記トレッドにおいて前記タイヤ赤道面のタイヤ幅方向の両外側の前記タイヤ赤道面に各々最も近い2本の前記タイヤ周方向主溝の間にタイヤ周方向に沿って形成された中央側タイヤ周方向溝と、前記トレッドにおいて前記中央側タイヤ周方向溝と前記中央側タイヤ周方向溝のタイヤ幅方向外側の前記タイヤ周方向主溝により区画された陸部と、前記陸部において前記中央側タイヤ周方向溝と前記タイヤ周方向主溝に亘って連通して形成されると共に、タイヤ径方向の外側部分の第1外側溝部の溝幅がタイヤ径方向の内側部分の溝幅よりも広く形成され、タイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数形成された複数の第1幅方向溝と、前記陸部において前記中央側タイヤ周方向溝と前記タイヤ周方向主溝に亘って連通して形成されると共に、タイヤ径方向の外側部分の第2外側溝部の溝幅がタイヤ径方向の内側部分の溝幅よりも狭く形成され、タイヤ周方向に沿って間隔を空けかつ前記第1幅方向溝と交互に複数形成された複数の第2幅方向溝と、を備え、前記トレッドの前記中央側タイヤ周方向溝においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、前記トレッドが接地して前記中央側タイヤ周方向溝の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わさることが可能である。
【0007】
この空気入りタイヤによれば、トレッドにおいてタイヤ周方向に沿って中央側タイヤ周方向溝が形成されている。さらに中央側タイヤ周方向溝においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、トレッドが接地して中央側タイヤ周方向溝の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わさることが可能である。このため、トレッドの中央側タイヤ周方向溝においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、トレッドが接地して中央側タイヤ周方向溝の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わせることができる。これにより、陸部の中央側タイヤ周方向溝の内部へ向けた膨出変形を抑制することができ、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減することができる。
【0008】
さらに、この空気入りタイヤによれば、陸部において中央側タイヤ周方向溝とタイヤ周方向主溝に亘って連通して形成された第1幅方向溝がタイヤ周方向に沿って間隔を空けて複数形成されている。また、陸部において中央側タイヤ周方向溝とタイヤ周方向主溝に亘って連通して形成された第2幅方向溝がタイヤ周方向に沿って間隔を空けかつ第1幅方向溝と交互に複数形成されている。このため、トレッドの第1幅方向溝のタイヤ径方向内側部分においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、トレッドが接地して第1幅方向溝の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わせることができる。また、トレッドの第2幅方向溝のタイヤ径方向外側部分においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、トレッドが接地して第2幅方向溝の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わせることができる。これにより、陸部の第1幅方向溝の内部へ向けた膨出変形を抑制することができると共に第2幅方向溝の内部へ向けた膨出変形を抑制することができ、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減することができる。
【0009】
また、この空気入りタイヤによれば、第1幅方向溝のタイヤ径方向外側部分と第2幅方向溝のタイヤ径方向内側部分に溝幅の広い溝を各々形成することができる。このため、空気入りタイヤは、例えば、摩耗進展によりタイヤ径方向に摩耗していくいずれの段階においても第1幅方向溝と第2幅方向溝の少なくとも一方の溝に溝幅の広い部分を備えることができるため、ある程度の溝容積を確保することができ、排水性能の低下を抑制することができる。これにより、排水性能を確保しかつ空気入りタイヤの転がり抵抗を低減することができる。
【0010】
請求項2に記載の空気入りタイヤは、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記複数の第1幅方向溝の前記第1外側溝部のタイヤ径方向内側の端部は、前記複数の第2幅方向溝の前記第2外側溝部のタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向内側に各々形成されている。
【0011】
この空気入りタイヤによれば、複数の第1幅方向溝の第1外側溝部のタイヤ径方向内側の端部は、複数の第2幅方向溝の第2外側溝部のタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向内側に各々形成されている。このため、空気入りタイヤは、例えば、摩耗進展によりタイヤ径方向に摩耗した場合において、第1外側溝部のタイヤ径方向内側の端部が第2外側溝部のタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向外側に形成されている場合と比較して大きな溝容積を確保することができる。これにより、摩耗進展時において、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減すると共に排水性能を向上することができる。
【0012】
請求項3に記載の空気入りタイヤは、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記複数の第1幅方向溝において、前記中央側タイヤ周方向溝の側の第1端部はタイヤ周方向に沿って等間隔に各々形成され、前記複数の第2幅方向溝において、前記中央側タイヤ周方向溝の側の第2端部はタイヤ周方向に沿って等間隔に各々形成されると共に、前記各第2端部のタイヤ周方向の位置は前記各第1端部とは互いに異なる。
【0013】
この空気入りタイヤによれば、複数の第1幅方向溝において、中央側タイヤ周方向溝の側の第1端部はタイヤ周方向に沿って等間隔に各々形成され、複数の第2幅方向溝において、中央側タイヤ周方向溝の側の第2端部はタイヤ周方向に沿って等間隔に各々形成されると共に、各第2端部のタイヤ周方向の位置は各第1端部とは互いに異なる。このため、例えば、車両走行時におけるタイヤの排水性能を均一に確保することができると共に第1端部の周辺において陸部の剛性が局所的に低下することを防止又は抑制することができる。このため、例えば、車両走行時におけるタイヤの排水性能を均一に確保することができると共に第2端部の周辺において陸部の剛性が局所的に低下することを防止又は抑制することができる。これにより、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減しかつ摩耗進展時の排水性能を確保することができる。
【0014】
請求項4に記載の空気入りタイヤは、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記中央側タイヤ周方向溝はタイヤ幅方向外側の一方側へ向けて突出された第1突出部とタイヤ幅方向外側の他方側へ向けて突出された第2突出部がタイヤ周方向に沿って交互に形成された鋸歯形状とされ、前記中央側タイヤ周方向溝よりもタイヤ幅方向外側の一方側に形成された前記複数の第1幅方向溝及び前記複数の第2幅方向溝の前記中央側タイヤ周方向溝の側の端部は前記第2突出部に連通して形成されると共に、前記中央側タイヤ周方向溝よりもタイヤ幅方向外側の他方側に形成された前記複数の第1幅方向溝及び前記複数の第2幅方向溝の前記中央側タイヤ周方向溝の側の端部は前記第1突出部に連通して形成されている。
【0015】
この空気入りタイヤによれば、中央側タイヤ周方向溝よりもタイヤ幅方向外側の一方側に形成された複数の第1幅方向溝及び複数の第2幅方向溝の中央側タイヤ周方向溝の側の端部は第2突出部に連通して形成されている。また、中央側タイヤ周方向溝よりもタイヤ幅方向外側の他方側に形成された複数の第1幅方向溝及び複数の第2幅方向溝の中央側タイヤ周方向溝の側の端部は第1突出部に連通して形成されている。このため、中央側タイヤ周方向溝容積を大きくすることができると共に複数の第1幅方向溝及び複数の第2幅方向溝容積を大きくすることができる。これにより、排水性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤの排水性能を確保しかつタイヤの転がり抵抗を低減することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤをタイヤ軸方向に沿って切断した切断面の片側を示す半断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドを示す平面図である。
【
図3】
図1の3-3断面線に沿った中央側タイヤ周方向溝の断面図である。
【
図4】
図1の4-4断面線に沿った第1幅方向溝の断面図である。
【
図5】
図1の5-5断面線に沿った第2幅方向溝の断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る空気入りタイヤの摩耗進展時のトレッドを示す平面図である。
【
図7】変形例に係る第1幅方向溝をタイヤ径方向かつタイヤ幅方向に沿って切断した断面図である。
【
図8】変形例に係る第2幅方向溝をタイヤ径方向かつタイヤ幅方向に沿って切断した断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図8を用いて、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ10について説明する。本実施形態では、トラック及びバス用の空気入りタイヤ10について説明する。
【0019】
ここで、図中矢印TWは空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向を示し、矢印TRは空気入りタイヤ10のタイヤ径方向を示し、矢印TCは空気入りタイヤ10のタイヤ周方向を示す。
【0020】
ここでいうタイヤ幅方向とは、空気入りタイヤ10の回転軸と平行な方向を指し、タイヤ軸方向ともいう。また、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ10の回転軸と直交する方向をいう。
【0021】
また、符号CPは空気入りタイヤ10の赤道面(タイヤ赤道面)を表す。さらに、本実施形態では、タイヤ径方向に沿って空気入りタイヤ10の回転軸側を「タイヤ径方向内側」、タイヤ径方向に沿って空気入りタイヤ10の回転軸とは反対側を「タイヤ径方向外側」と記載する。
【0022】
(タイヤ骨格部材)
図1には、内圧を充填していない状態(外気と同じ気圧の自然状態)の空気入りタイヤ10のタイヤ回転軸に沿った断面図の片側だけが示されている。空気入りタイヤ10は、一対のビード部12と、カーカス14と、ベルト層16と、トレッドとしてのトレッド部18と、タイヤサイド部20と、を含んで構成されている。
【0023】
ビード部12は、タイヤ幅方向に間隔を空けて左右一対で設けられている。一対のビード部12には、タイヤ周方向に沿って環状に形成された一対のビードコア22が各々埋設されている。一対のビードコア22は、金属コード(例えば、スチールコード)、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などのビードコード(いずれも図示省略)により各々構成されている。一対のビードコア22の間には、これらを跨るように形成されたカーカス14が配置されている。
【0024】
(カーカス)
カーカス14は、1枚のカーカスプライ24により形成されている。カーカスプライ24は、図示しない複数本のコード(例えば、有機繊維コードや金属コード等)を被覆ゴムで被覆することにより構成されている。カーカス14は、一対のビードコア22の間でタイヤ径方向外側へ向けて凸とされた略トロイド状に形成されている。カーカス14の略トロイド状に形成された部分のうち、タイヤ径方向外側においてタイヤ幅方向に沿って延在された部分がカーカス中央部24Aとされている。また、カーカス中央部24Aのタイヤ幅方向両端部から一対のビードコア22のタイヤ幅方向内側へ向けて各々延在された部分が一対のカーカス側部24Bとされている。カーカス14は、カーカス側部24Bのビードコア22側の両端部においてビードコア22の周りをタイヤ幅方向内側から外側へ向けて各々折り返されて一対の折返し部24Cが形成されている。このように形成されたカーカス14は、タイヤの骨格を構成している。
【0025】
なお、本実施形態に係る空気入りタイヤ10は、ラジアル構造のタイヤとされており、カーカスプライ24のコード(図示省略)は、カーカス側部24B側ではタイヤ径方向(ラジアル方向)に沿って延在されている。また、カーカスプライ22のコードは、カーカス中央部24A側(タイヤ外周部側)においてはタイヤ赤道面CPに対して交差する方向に延在されている。
【0026】
なお、ここでは、カーカス14は1枚のカーカスプライ24によって構成されているとして説明したが、これに限らず、カーカスは複数枚のカーカスプライによって構成されていてもよい。
【0027】
(ベルト)
カーカス14のタイヤ径方向外側には、カーカス中央部24Aのタイヤ径方向外側の面に沿って複数枚のベルトプライ30により構成されたベルト層16が配設されている。
具体的には、タイヤ径方向内側から第1傾斜ベルトプライ30A、周方向ベルトプライ30B、第2傾斜ベルトプライ30Cが順に配置されている。さらに、第2傾斜ベルトプライ30Cのタイヤ幅方向両端部からタイヤ幅方向外側へ向けて一対の接地端側ベルトプライ30Dが配置されている。
【0028】
第1傾斜ベルトプライ30Aは、互いに平行に並べられた複数本のコードをゴム被覆することにより構成されている。第1傾斜ベルトプライ30Aのコードは、例えば、タイヤ周方向に対して45°以上の角度で傾斜して配置されている。第1傾斜ベルトプライ30Aのコードとしては、スチールコード、有機繊維コード等を用いることが出来る。有機繊維コードとしては、一例として、ナイロンコード、芳香族ポリアミドコード等を上げることができる。
【0029】
周方向ベルトプライ30Bは、1または複数本のゴム被覆したコードを螺旋状に巻回することにより構成されている。周方向ベルトプライ30Bのコードのタイヤ周方向に対する角度は、例えば、ベルト層16のタイヤ周方向の面外変形を抑えるために第1傾斜ベルトプライ30Aのコードのタイヤ周方向に対する角度よりも小さく設定されている。周方向ベルトプライ30Bのコードとしては、例えば、スチールコード、有機繊維コード等を用いることができる。
【0030】
第2傾斜ベルトプライ30Cは、互いに平行に並べられた複数本のコードをゴム被覆することにより構成されている。第2傾斜ベルトプライ30Cのコードは、例えば、タイヤ周方向に対して30°以上60°以下の角度で傾斜して配置されている。また、第2傾斜ベルトプライ30Cのコードは、タイヤ周方向に対して第1傾斜ベルトプライ30Aのコードと反対方向に傾斜して配置されている。タイヤ周方向に対して、第2傾斜ベルトプライ30Cのコードと第1傾斜ベルトプライ30Aのコードとを互いに反対方向に傾斜させることによりベルト層16の剛性を高めることができる。第2傾斜ベルトプライ30Cのコードとしては、スチールコード、有機繊維コード等を用いることが出来る。第2傾斜ベルトプライ30Cは、周方向ベルトプライ30Bの全体を覆うように配置されている。
【0031】
接地端側ベルトプライ30Dは、互いに平行に並べられた複数本のコードをゴム被覆することにより構成されている。接地端側ベルトプライ30Dのコードは、例えば、タイヤ周方向に対して5°よりも大きく30°未満の角度で傾斜して配置されている。このため、接地端側ベルトプライ30Dは、周方向の面外曲げ剛性が、及び周方向の張力の負担が周方向ベルトプライ30Bの次に高くなるように設定されている。なお、接地端側ベルトプライ30Dのコードは、タイヤ周方向に対して、第2傾斜ベルトプライ30Cのコードとは反対方向に傾斜していても良く、同方向に傾斜していても良い。接地端側ベルトプライ30Dのコードとしては、スチールコード、有機繊維コード等を用いることが出来る。
【0032】
ベルト層16のタイヤ径方向外側には、走行中に路面に接地する部位となるトレッド部18を構成するトレッドゴム32が配置されている。
図2に示されるように、トレッド部18においてタイヤ赤道面CP(
図1参照)のタイヤ幅方向の両外側には、タイヤ周方向に沿って複数のタイヤ周方向主溝40、42が各々形成されている。ここでは、タイヤ周方向主溝40、42は、タイヤ赤道面CPのタイヤ幅方向の両外側に1本ずつの合計2本形成されている。複数(2本)のタイヤ周方向主溝40、42の溝幅として主溝幅MBは、各々同じ幅に形成されている。また、タイヤ周方向主溝40、42は、タイヤ幅方向外側へ向けて凸となる屈曲部40A、42Aを有する鋸歯状に形成されている。具体的には、タイヤ周方向主溝40、42は、同じ形状の屈曲部40A、42Aがタイヤ周方向に沿って連続的に形成されることにより鋸歯状に形成されている。
【0033】
複数のタイヤ周方向主溝40、42のタイヤ幅方向外側には、タイヤ幅方向に沿って延在された外側ラグ溝41がタイヤ周方向に沿って等間隔で複数形成されている。タイヤ周方向に隣り合う外側ラグ溝41の間にはタイヤ幅方向に沿って延在されたサイプ溝43がタイヤ周方向に沿って複数形成されている。また、サイプ溝43及び外側ラグ溝41と連通するようにタイヤ周方向に沿ってサイプ溝45が形成されている。
【0034】
図2及び
図3に示されるように、トレッド部18においてタイヤ赤道面CPのタイヤ幅方向の両外側のタイヤ赤道面CPに各々最も近いタイヤ周方向主溝40、42の間(タイヤ幅方向内側)には、タイヤ周方向(タイヤ赤道面CP)に沿って中央側タイヤ周方向溝44が形成されている。中央側タイヤ周方向溝44は、タイヤ幅方向外側の一方側(
図2中における中央側タイヤ周方向溝44の右側)へ向けて凸となる第1突出部44Aとタイヤ幅方向外側の他方側(
図2中における中央側タイヤ周方向溝44の左側)へ向けて凸となる第2突出部44Bがタイヤ周方向に沿って交互に形成された鋸歯形状とされている。また、中央側タイヤ周方向溝44は、その溝幅としての中央部溝幅CBが複数のタイヤ周方向主溝40、42の主溝幅MBよりも狭く形成されている。ここで、中央部溝幅CBは、内圧を充填していない状態(外気と同じ気圧の自然状態)で、約1.5mm以下としてもよい。また、中央部溝幅CBは、主溝幅MBの4/15以下となるように形成してもよい。
【0035】
図2に示されるように、トレッド部18において中央側タイヤ周方向溝44と中央側タイヤ周方向溝44のタイヤ幅方向の両外側のタイヤ周方向主溝40、42により区画された部分は陸部46とされている。陸部46には、中央側タイヤ周方向溝44とタイヤ周方向主溝40、42に亘って連通したラグ型溝の第1幅方向溝48が形成されている。第1幅方向溝48は、タイヤ周方向に沿って略等間隔に複数形成されている。このため、複数の第1幅方向溝48の第1端部48Aはタイヤ周方向に沿って略等間隔に各々形成されている。さらに、中央側タイヤ周方向溝44よりもタイヤ幅方向外側の一方側に形成された第1幅方向溝48は、中央側タイヤ周方向溝44側の端部としての第1端部48Aが第2突出部44Bに連通して形成されている。また、中央側タイヤ周方向溝44よりもタイヤ幅方向外側の他方側に形成された第1幅方向溝48の第1端部48Aは第1突出部44Aに連通して形成されている。
【0036】
図4に示されるように、第1幅方向溝48のタイヤ径方向の内側部分を形成する第1内側溝部50は、タイヤ周方向かつタイヤ幅方向に沿って切断した断面視でタイヤ幅方向両側の端部が平行な略矩形状に形成されている。また、第1幅方向溝48のタイヤ径方向の外側部分を形成する第1外側溝部52は、タイヤ周方向かつタイヤ幅方向に沿って切断した断面視でタイヤ幅方向両側の端部が平行な略矩形状に形成されている。第1外側溝部52の溝幅としての第1外側溝幅OB1は、第1内側溝部50の溝幅としての第1内側溝幅IB1よりも広く形成されている。
【0037】
図2に示されるように、陸部46には、中央側タイヤ周方向溝44とタイヤ周方向主溝40、42に亘って連通したラグ型溝の第2幅方向溝58が形成されている。第2幅方向溝58は、タイヤ周方向に沿って略等間隔に複数形成されている。また、第2幅方向溝58は、第1幅方向溝48とタイヤ周方向に沿って略等間隔となるように各々形成されている。このため、複数の第2幅方向溝58の第2端部58Aはタイヤ周方向に沿って略等間隔に各々形成されている。さらに、中央側タイヤ周方向溝44よりもタイヤ幅方向外側の一方側に形成された第2幅方向溝58は、中央側タイヤ周方向溝44側の端部としての第2端部58Aが第2突出部44Bに連通して形成されている。また、中央側タイヤ周方向溝44よりもタイヤ幅方向外側の他方側に形成された第2幅方向溝58の第2端部58Aは第1突出部44Aに連通して形成されている。
【0038】
複数の第1幅方向溝48の第1端部48Aは、中央側タイヤ周方向溝44に対してタイヤ幅方向の反対側に形成された第1幅方向溝48及び第2幅方向溝58の中央側タイヤ周方向溝44側の端部とはタイヤ周方向の異なる部位に各々形成されている。また、複数の第2幅方向溝58の第2端部58Aは、中央側タイヤ周方向溝44に対してタイヤ幅方向の反対側に形成された第1幅方向溝48及び第2幅方向溝58の中央側タイヤ周方向溝44側の端部とはタイヤ周方向の異なる部位に各々形成されている。
【0039】
図5に示されるように、第2幅方向溝58のタイヤ径方向の外側部分を形成する第2外側溝部62は、タイヤ周方向かつタイヤ幅方向に沿って切断した断面視でタイヤ幅方向両側の端部が平行な略矩形状に形成されている。また、第2幅方向溝58のタイヤ径方向の内側部分を形成する第2内側溝部60は、タイヤ周方向かつタイヤ幅方向に沿って切断した断面視でタイヤ幅方向両側の端部が平行な略矩形状に形成されている。第2外側溝部62の溝幅としての第2外側溝幅OB2は、第2内側溝部60の溝幅としての第2内側溝幅IB2よりも狭く形成されている。
【0040】
図4及び
図5に示されるように、複数の第1幅方向溝48の溝深さd1と複数の第2幅方向溝58の溝深さd2は各々略同一に形成されている。また、第2外側溝部62の第2外側溝幅OB2は、第1内側溝部50の第1内側溝幅IB1と略同一に形成されると共に第2内側溝部60の第2内側溝幅IB2は、第1外側溝部52の第1外側溝幅OB1と略同一に形成されている。
【0041】
複数の第1幅方向溝48の第1外側溝部52のタイヤ径方向内側の端部52Aは、複数の第2幅方向溝58の第2外側溝部62のタイヤ径方向内側の端部62Aよりもタイヤ径方向内側に各々形成されている。
【0042】
図2に示されるように、陸部46においてタイヤ周方向に沿って交互に形成された第1幅方向溝48と第2幅方向溝58の間には、タイヤ幅方向に沿って形成されたサイプ溝64が複数形成されている。
【0043】
(作用、効果)
次に、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の作用並びに効果について説明する。
【0044】
本実施形態に係る空気入りタイヤ10によれば、トレッド部18においてタイヤ赤道面CPに沿って中央側タイヤ周方向溝44が形成されている。中央側タイヤ周方向溝44は、中央部溝幅CBが複数のタイヤ周方向主溝40、42の主溝幅MBよりも狭く形成されている。このため、トレッド部18の中央側タイヤ周方向溝44においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、トレッド部18が接地して中央側タイヤ周方向溝44の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わせる(支えあう)ことができる。これにより、陸部46の中央側タイヤ周方向溝44の内部へ向けた膨出変形を抑制することができ、空気入りタイヤ10の転がり抵抗を低減することができる。本実施形態に係る空気入りタイヤ10について有限要素法による数値解析(図示省略)を実施した結果、中央側タイヤ周方向溝44の溝幅をタイヤ周方向主溝40、42の主溝幅MBと同一にする場合と比較して路面との摩擦(熱エネルギー)の増加に起因する歪エネルギーの損失を抑制できていることが確認されている。これにより、陸部46の中央側タイヤ周方向溝44の内部へ向けた膨出変形を抑制できることが数値解析により確認されている。
【0045】
さらに、本実施形態に係る空気入りタイヤ10によれば、陸部46において中央側タイヤ周方向溝44とタイヤ周方向主溝40、42に亘って連通して形成された第1幅方向溝48がタイヤ周方向に沿って略等間隔に複数形成されている。第1幅方向溝48は、第1外側溝幅OB1が第1内側溝幅IB1よりも広く形成されている。また、陸部46において中央側タイヤ周方向溝44とタイヤ周方向主溝40、42に亘って連通して形成された第2幅方向溝58がタイヤ周方向に沿って略等間隔に複数形成されている。第2幅方向溝58は、第2外側溝幅OB2が第2内側溝幅IB2よりも狭く形成されている。このため、トレッド部18の第1幅方向溝48のタイヤ径方向内側部分においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、トレッド部18が接地して第1幅方向溝48の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わせる(支えあう)ことができる。また、第2幅方向溝58のタイヤ径方向外側部分においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、トレッド部18が接地して第2幅方向溝58の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わせる(支えあう)ことができる。これにより、陸部46の第1幅方向溝48の内部へ向けた膨出変形を抑制することができると共に第2幅方向溝58の内部へ向けた膨出変形を抑制することができ、空気入りタイヤ10の転がり抵抗を低減することができる。
【0046】
図6には、空気入りタイヤの摩耗進展時のトレッドの平面図が示されている。本実施形態に係る空気入りタイヤ10によれば、摩耗進展によりタイヤ径方向に摩耗した場合であっても第1幅方向溝48又は第2幅方向溝58の少なくとも一方に溝幅OB1、IB2の広い溝を各々形成することができる。このため、空気入りタイヤ10は、例えば、摩耗進展によりタイヤ径方向に摩耗していくいずれの段階においても第1幅方向溝48と第2幅方向溝58の少なくとも一方の溝に溝幅の広い部分を備えることができるため、ある程度の溝容積を確保することができ、排水性能の低下を抑制することができる。これにより、排水性能を確保しかつ空気入りタイヤ10の転がり抵抗を低減することができる。
【0047】
さらに、本実施形態に係る空気入りタイヤ10によれば、複数の第1幅方向溝48の第1外側溝部52のタイヤ径方向内側の端部52Aは、複数の第2幅方向溝58の第2外側溝部62のタイヤ径方向内側の端部62Aよりもタイヤ径方向内側に各々形成されている。このため、空気入りタイヤ10は、例えば、摩耗進展によりタイヤ径方向に摩耗した場合において、第1外側溝部52のタイヤ径方向内側の端部が第2外側溝部62のタイヤ径方向内側の端部よりもタイヤ径方向外側に形成されている場合と比較して大きな溝容積を確保することができる。これにより、摩耗進展時において、空気入りタイヤ10の転がり抵抗を低減すると共に排水性能を向上することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ10によれば、複数の第1幅方向溝48において、中央側タイヤ周方向溝44側の第1端部48Aはタイヤ周方向に沿って略等間隔に各々形成されると共に、中央側タイヤ周方向溝44に対してタイヤ幅方向の反対側に形成された第1幅方向溝48及び第2幅方向溝58の中央側タイヤ周方向溝44側の端部とはタイヤ周方向の異なる部位に各々形成されている。このため、例えば、車両走行時における空気入りタイヤ10の排水性能を均一に確保することができると共に第1端部48Aの周辺において陸部46の剛性が局所的に低下することを防止又は抑制することができる。さらに、複数の第2幅方向溝58において、中央側タイヤ周方向溝44側の第2端部58Aはタイヤ周方向に沿って略等間隔に各々形成されると共に、中央側タイヤ周方向溝44に対してタイヤ幅方向の反対側に形成された第1幅方向溝48及び第2幅方向溝58の中央側タイヤ周方向溝44側の端部とはタイヤ周方向の異なる部位に各々形成されている。また、第2幅方向溝58は、第1幅方向溝48とタイヤ周方向に沿って略等間隔となるように各々形成されている。このため、例えば、車両走行時における空気入りタイヤ10の排水性能を均一に確保することができると共に第2端部58Aの周辺において陸部46の剛性が局所的に低下することを防止又は抑制することができる。これにより、空気入りタイヤ10の転がり抵抗を低減しかつ摩耗進展時の排水性能を確保することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る空気入りタイヤ10によれば、中央側タイヤ周方向溝44は、タイヤ幅方向外側の一方側へ向けて凸となる第1突出部44Aとタイヤ幅方向外側の他方側へ向けて凸となる第2突出部44Bがタイヤ周方向に沿って交互に形成された鋸歯形状とされている。中央側タイヤ周方向溝44よりもタイヤ幅方向外側の一方側に形成された第1幅方向溝48の第1端部48Aと第2幅方向溝58の第2端部58Aは第2突出部44Bに連通して形成されている。また、中央側タイヤ周方向溝44よりもタイヤ幅方向外側の他方側に形成された第1幅方向溝48の第1端部48Aと第2幅方向溝58の第2端部58Aは第1突出部44Aに連通して形成されている。このため、中央側タイヤ周方向溝44の溝容積を大きくすることができると共に複数の第1幅方向溝48及び複数の第2幅方向溝58の溝容積を大きくすることができる。これにより、空気入りタイヤ10の排水性能を向上させることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る空気入りタイヤ10は、転がり抵抗を低減しかつ摩耗進展時の排水性能を確保することができる。
【0051】
(変形例)
次に、
図7及び
図8を用いて、本発明に係る空気入りタイヤ70の変形例について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0052】
本変形例に係る空気入りタイヤ70によれば、
図7に示されるように、第1幅方向溝72のタイヤ径方向の外側部分を形成する第1外側溝部72Aは、タイヤ周方向かつタイヤ幅方向に沿って切断した断面視でタイヤ幅方向両側部がタイヤ径方向内側へ向かうにつれて溝幅OB1が狭くなるように傾斜して形成されている。第1外側溝部72Aは、そのタイヤ径方向内側の端部における溝幅が第1内側溝部72Bの溝幅IB1と同一になるように形成されている。また、
図8に示されるように、第2幅方向溝74のタイヤ径方向の内側部分を形成する第2内側溝部74Bは、タイヤ周方向かつタイヤ幅方向に沿って切断した断面視でタイヤ幅方向両側部がタイヤ径方向外側へ向かうにつれて溝幅IB2が狭くなるように傾斜して形成されている。第2内側溝部74Bは、そのタイヤ径方向外側の端部における溝幅が第2外側溝部74Aの溝幅OB2と同一になるように形成されている。
【0053】
本変形例に係る空気入りタイヤ70によれば、第1外側溝部72Aと第2内側溝部74Bに溝幅OB1、IB2の広い溝を各々形成することができる。このため、空気入りタイヤ70は、例えば、摩耗進展によりタイヤ径方向に摩耗していくいずれの段階においてもある程度の溝容積を確保することができ、排水性能の低下を抑制することができる。これにより、排水性能を確保しかつ空気入りタイヤ70の転がり抵抗を低減することができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、
図9を用いて、本発明に係る空気入りタイヤ80の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0055】
本実施形態に係る空気入りタイヤ80によれば、トレッド部18においてタイヤ赤道面CP(
図1参照)とタイヤ赤道面CPのタイヤ幅方向の両外側のタイヤ周方向主溝40,42との間にタイヤ周方向に沿って一対の中央側タイヤ周方向溝82が各々形成されている。具体的には、中央側タイヤ周方向溝82は、タイヤ赤道面CPのタイヤ幅方向の両側に1本ずつ計2本形成されている。
【0056】
本実施形態に係る空気入りタイヤ80によれば、中央側タイヤ周方向溝82は、その溝幅CBが複数のタイヤ周方向主溝40、42の溝幅MBよりも狭く形成されている。このため、中央側タイヤ周方向溝82においてタイヤ幅方向両側部を形成する部分は、トレッド部18が接地して中央側タイヤ周方向溝82の内部へ向けて膨出変形した際に互いに押し合わせる(支えあう)ことができる。これにより、陸部46の膨出変形を抑制することができ、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減することができる。さらに、第1幅方向溝48の第1外側溝部52と第2幅方向溝58の第2内側溝部60に溝幅の広い溝を各々形成することができる(
図4及び
図5参照)。このため、空気入りタイヤ80は、例えば、摩耗進展によりタイヤ径方向に摩耗していくいずれの段階においてもある程度の溝容積を確保することができ、排水性能の低下を抑制することができる。これにより、排水性能を確保しかつ空気入りタイヤ80の転がり抵抗を低減することができる。
【0057】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0058】
なお、ここでは、本発明の適用例として、トラック及びバス用の空気入りタイヤ10、70、80について説明したが、これに限らず、本発明は、乗用車用の空気入りタイヤについても適用することができる。
【0059】
さらに、ここでは、タイヤ周方向主溝40、42は、タイヤ幅方向外側へ向けて凸となる屈曲部40A、42Aを有する鋸歯状に形成されているとして説明したが、これに限らず、タイヤ周方向主溝は、例えば、外周形状が直線状(帯状)に形成されてもよい。
【0060】
また、ここでは、一対の中央側タイヤ周方向溝82により形成される陸部には、溝は設けられていないとして説明したが、これに限らず、例えば、一対の中央側タイヤ周方向溝に亘って連通した溝が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、70、80…空気入りタイヤ、18…トレッド部(トレッド)、40、42…タイヤ周方向主溝、44…中央側タイヤ周方向溝、44A…第1突出部、44B…第2突出部、46…陸部、48…第1幅方向溝、48A…第1端部、50…第1内側溝部、52…第1外側溝部、58…第2幅方向溝、58A…第2端部、60…第2内側溝部、62…第2外側溝部、CP…タイヤ赤道面、CB…中央部溝幅(溝幅)、MB…主溝幅(溝幅)、OB1…第1外側溝幅(溝幅)、IB1…第1内側溝幅(溝幅)、OB2…第2外側溝幅(溝幅)、IB2…第2内側溝幅(溝幅)