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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】金属印刷用インキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/105 20140101AFI20240402BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20240402BHJP
【FI】
C09D11/105
C09D11/037
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019223736
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021091806
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎一郎
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-026404(JP,A)
【文献】特開2018-058956(JP,A)
【文献】特開2002-226756(JP,A)
【文献】特開平05-163453(JP,A)
【文献】特開2016-56303(JP,A)
【文献】特開2015-83637(JP,A)
【文献】特開平6-279722(JP,A)
【文献】特開平3-2279(JP,A)
【文献】特開2004-168970(JP,A)
【文献】特開昭62-280219(JP,A)
【文献】特開2011-26404(JP,A)
【文献】特開2005-314494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
B41M 5/00
B41M 5/50
B41M 5/52
C09D 11/00- 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属印刷インキであって、
無機酸化物層を有し、平均粒子径200~300nmのルチル型酸化チタンを含む顔料と、
一次粒子の平均粒子径が10~15nmのシリカと、
重量平均分子量が10000以上150000以下であり、数平均分子量が2000以上7000以下であり、分子量分布が5以上50以下であるアルキッド樹脂を含む樹脂と、
溶剤と、を含み、
前記酸化チタンの配合量が前記金属印刷インキの総量の35質量%以上45質量%以下であり、
前記シリカの配合量が前記金属印刷インキの総量の5質量%以上12質量%以下であり、
前記樹脂に占める前記アルキッド樹脂の含有量が50質量%以上である金属印刷インキ。
【請求項2】
蛍光増白剤を含み、
前記蛍光増白剤の配合量が前記金属印刷インキの総量の5質量%以下である請求項1に記載の金属印刷インキ。
【請求項3】
前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、前記多価アルコールが備える水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属印刷インキ。
【請求項4】
前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸の95モル%以上が、炭素原子数が8以上18以下の飽和脂肪酸であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。
【請求項5】
前記アルキッド樹脂が、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸のうち、カプリン酸の割合が40質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。
【請求項6】
前記アルキッド樹脂が多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、前記脂肪酸のうち、ラウリン酸の割合が8質量%以上25質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。
【請求項7】
前記アルキッド樹脂の油長が30以上70以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の金属印刷インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材、特に金属缶外面の印刷に好適な金属印刷用インキに関する。
【背景技術】
【0002】
金属缶、金属容器は、食品や飲料等を充填する包装容器として広く一般に利用されている。この金属缶の外面側には、内容物やそのイメージ、あるいはその出所をデザインで表示しまた商品価値を高める目的で、各種の印刷が施されている。
【0003】
金属缶には、大別して、缶胴部に側面継ぎ目(サイドシーム)のある3ピース缶と、缶胴部に継ぎ目のない2ピース缶とが存在する。3ピース缶では成形前の素材(ブランク)に印刷を行うことができるのに対し、2ピース缶では絞り成形あるいは絞り・しごき成形時に素材の塑性流動による変形が生じるため、成形後の缶体の胴部に印刷を行う方式が主流である。成形後の缶体胴部に印刷する方法としては、水なし平版や樹脂凸版等の刷版からブランケットにインキを介して缶体胴部にインキを転写する方法が採られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-129966号公報
【文献】特開2002-103775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような用途に用いられる金属印刷用インキのうち、白インキでは隠蔽性が高く、青みが強いものが求められている。このような要望への対応策として、金属印刷インキ中の白色顔料(二酸化チタン)の配合量を高めたり、金属印刷インキの塗膜の膜厚を厚くしたりすることが考えられるが、いずれの場合も印刷速度を上げるにつれ、ミスティングの発生が顕著となり、さらにインキの転移性(高速印刷適性)、機上安定性が低下するため、生産性に欠ける。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑み為されたものであって、白色度が高く、ミスティングが少なく、高速印刷適性、機上安定性に優れた金属印刷用白インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
無機酸化物層を有し、平均粒子径200~300nmのルチル型酸化チタンを含む顔料と、一次粒子の平均粒子径が10~15nmのシリカと、重量平均分子量が10000以上150000以下であり、数平均分子量が2000以上7000以下であり、分子量分布が2以上100以下であるアルキッド樹脂を含む樹脂と、溶剤と、を含み、前記酸化チタンの配合量が前記金属缶用インキの総量の35質量%以上45質量%以下であり、前記シリカの配合量が前記金属缶用インキの総量の5質量%以上12質量%以下である金属缶用インキに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、白色度が高く、ミスティングが少なく、高速印刷適性、機上安定性に優れた金属印刷用白インキを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の金属印刷用白インキ(以下では単に金属印刷インキとも称する)は、酸化チタンと、シリカと、樹脂と、溶剤とを含む。以下、本発明の金属印刷インキの各成分について詳細に説明する。
【0010】
(酸化チタン)
本発明の金属印刷インキに用いられる酸化チタンは、平均粒子径が200nm以上300nm以下のルチル型二酸化チタンである。酸化チタンの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定したメディアン径であり、撮影個数は40個以上が好ましく、100個以上がより好ましく、1000個以上がさらに好ましい。
【0011】
また、本発明で用いられる酸化チタンは、その表面にケイ素、ジルコニウム、チタン、スズ、アンチモン及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の元素の無水酸化物、リン酸塩、含水酸化物、リン酸塩の含水物等からなる無機化合物層を有する。無機化合物層は酸化チタンの表面に水系処理、気相処理等によって設けられる。これらは単独で被覆しても、2種以上を混合物で被覆しても、積層して被覆してもよい。同じ材料からなり、密度が異なる層を積層してもよい。これにより、隠蔽性、耐光性の高い金属印刷インキとすることができる。無機化合物層の被覆量は、酸化チタンに対し無水酸化物(SiO、ZrO、TiO、SnO、Sb、Al)換算で0.1~5質量%であることが好ましい。
【0012】
本発明で用いられる酸化チタンは、無機化合物層上にさらに有機化合物層を備えることが好ましい。有機化合物層は、酸化チタンを例えば、ポリオール類、有機ケイ素化合物、アルカノールアミン類またはその誘導体、高級脂肪酸類またはその金属塩、高級炭化水素類またはその誘導体等で処理することにより設けられる。このような処理に用いられるポリオール類としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、ペンタエリスリトール等が挙げらる。
【0013】
有機ケイ素化合物としては、(a)アミノシラン(アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、(b)エポキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等)、(c)メタクリルシラン(γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等)、(d)ビニルシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、(e)メルカプトシラン(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)、(f)クロロアルキルシラン(3-クロロプロピルトリエトキシシラン等)、(g)アルキルシラン(n-ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等)、(h)フェニルシラン(フェニルトリエトキシシラン等)、(i)フルオロアルキルシラン(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等)等、またはそれらの加水分解生成物等のオルガノシラン類;
【0014】
(a)ストレート型ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等)、(b)変性型ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン、側鎖または両末端アミノ変性ポリシロキサン、側鎖または両末端または片末端エポキシ変性ポリシロキサン、両末端または片末端メタクリル変性ポリシロキサン、側鎖または両末端カルボキシル変性ポリシロキサン、側鎖または両末端または片末端カルビノール変性ポリシロキサン、両末端フェノール変性ポリシロキサン、側鎖または両末端メルカプト変性ポリシロキサン、両末端または側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル変性ポリシロキサン、側鎖メチルスチリル変性ポリシロキサン、側鎖高級カルボン酸エステル変性ポリシロキサン、側鎖フルオロアルキル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル・カルビノール変性ポリシロキサン、側鎖アミノ・両末端カルビノール変性ポリシロキサン等)、またはこれらの共重合体等のオルガノポリシロキサン類;
【0015】
ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等のオルガノシラザン類が挙げられる。
【0016】
アルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、これら化合物の酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0017】
高級脂肪酸類としては、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等が、それらの金属塩としては、高級脂肪酸類のアルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩が挙げられる。
高級炭化水素類としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等が、高級炭化水素の誘導体としてはパーフルオロ化物等が挙げられる。
【0018】
これらは単独で被覆しても、2種以上を混合物で被覆しても、積層して被覆してもよい。有機化合物層の被覆量は、基材となる二酸化チタンに対し0.1~5質量%の範囲にあるのが好ましい。本発明に用いる酸化チタンが有機化合物層を備えない場合は、有機化合物層を有する場合と同様の効果が得られることから後述の顔料分散剤を用いることが好ましい。
【0019】
酸化チタンは金属印刷インキの配合量は、金属印刷インキの総量の35質量%以上であり、37質量%以上であることがより好ましい。また、金属印刷インキの総量の45質量%以下であり、43質量%以下であることがより好ましい。これにより、白色度(隠蔽性)が高く、ミスティングが少なく、高速印刷適性、機上安定性に優れた金属印刷インキとすることができる。
【0020】
(シリカ)
本発明の金属印刷インキに用いられるシリカは、一次粒子の平均粒子径が10nm以上15nm以下のヒュームドシリカである。なお本明細書におけるシリカの一次粒子の平均粒子径は、走査型や透過型の電子顕微鏡の撮影像から、一次粒子の円相当径(対象粒子の面積と同じ面積を持つ円の直径)を画像解析により測定したものをいう。測定に用いる電子顕微鏡撮影像としては、明暗が明瞭で粒子の輪郭を判別できるものを使用し、画像解析の方法としては、少なくとも粒子の面積、粒子の最大長、最小幅の計測が可能な画像解析ソフトを用いて行う。また、これら一次粒子の平均粒子径は、上記によって計測した一次粒子径より、下記式によって算出する。
【0021】
【数1】
【0022】
これらの値を算出する場合、測定精度を保つためには少なくとも40個以上の粒子を測定する必要があり、100個以上の粒子について測定することが望ましい。
【0023】
シリカの配合量は、隠蔽性、青みの観点から金属印刷インキ総量の5質量%以上であり、6質量%以上であることがより好ましい。高速印刷適性、機上安定性の観点からは、金属印刷インキの総量の12質量%以下であることが好ましく、11質量%以下であることがより好ましい。これにより、白色度、高速印刷適性、機上安定性のバランスに優れた金属印刷インキとすることができる。
【0024】
また、本発明に用いられるシリカは表面のシラノール基の一部がアルキル基によって置換する表面処理が為されていてもよいが、シラノール基の少なくとも一部は残存していることが好ましい。シリカの表面処理は、ハロゲン化シラン類、アルコキシシラン類、シラザン類、シロキサン類等によって行われる。
【0025】
本発明に用いられるシリカは、比表面積が150m2/g以上250m2/g以下であるものが好ましく、180m2/g以上230m2/g以下であるものがより好ましい。シリカの比表面積は、BET比表面積計を用いて測定することができる。
【0026】
(樹脂)
本発明の金属印刷インキに使用される樹脂は、重量平均分子量(Mw)が10000以上150000以下であり、数平均分子量(Mn)が2000以上7000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が2以上100以下であるアルキッド樹脂を含む。本明細書においてアルキッド樹脂とは、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸或いはそれらの水素添加物、油あるいはそれらの水素化物、1価の酸、1価のアルコール等で変性した樹脂である。エポキシ樹脂やアクリル樹脂で変性してもよく、変性に用いる成分は通常アルキッド樹脂の合成に使用できる原料が使用でき特に制限はない。
【0027】
アルキッド樹脂の合成に用いられる多塩基酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸等の芳香族2塩基酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水ヘット酸等の脂環族2塩基酸、マロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、ジメチルコハク酸、無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水ハイミック酸等の脂肪族2塩基酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水メチルシクロヘキシルヘキセントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の多塩基酸等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールF、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられ1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
油、脂肪酸も特に制限はなく、通常アルキッド樹脂の合成に使用される油、脂肪酸が使用可能である。アマニ油、キリ油、サフラワー油、大豆油、トール油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマワリ油、ヤシ油(ココナッツ油)、これら油の脂肪酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸等が挙げられ1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
1価の酸としては、特に限定されないが、安息香酸、p-ターシャリーブチル安息香酸、ロジン酸、水素添加ロジン酸等が挙げられ1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
1価のアルコールとしてはオクチルアルコール、デカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、グリコールエステル類、フェニルグリコール等のグリコールエーテル類、ロジンアルコール、水添ロジンアルコール等が挙げられ1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
アルキッド樹脂を、1価あるいは2価以上のエポキシ基を有する化合物でエポキシエステルを形成し変性することもできる。アクリル酸エステル、スチレン等のビニル化合物を、アルキッド樹脂の不飽和二重結合にラジカル重合開始剤を用いてグラフト重合させてもよい。
【0032】
本発明の金属印刷インキに用いられるアルキッド樹脂は、重量平均分子量(Mw)が10000以上150000以下であり、数平均分子量(Mn)が2000以上7000以下であり、分子量分布(Mw/Mn)が2以上100以下である。本明細書において重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミュレーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。このようなアルキッド樹脂を用いることにより、上述した酸化チタン、シリカと組み合わせた際に、白色度が高く、ミスティングが少なく、高速印刷適性、機上安定性に優れた金属印刷インキとすることができる。
【0033】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0034】
本発明の金属印刷インキに用いられるアルキッド樹脂の重量平均分子量(Mw)は20000以上であることがより好ましく、100000以下であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)は3000以上であることがより好ましく、また5000以下であることがより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は5以上であることがより好ましく、また50以下であることがより好ましい。これにより、画線や網点の太りを抑制することができる。
【0035】
また、ミスティングの抑制、高速印刷適性により優れた金属印刷インキとしたい場合には、重量平均分子量(Mw)が40000以上150000以下、数平均分子量(Mn)が4000以上7000以下、分子量分布(Mw/Mn)が9以上100以下のアルキッド樹脂を用いることが好ましい。機上安定性により優れた金属印刷インキとしたい場合には、重量平均分子量(Mw)が10000以上90000以下、より好ましくは100000以上53000以下、数平均分子量(Mn)が2000以上5000以下、分子量分布(Mw/Mn)が2以上12以下のアルキッド樹脂を用いることが好ましい。必要な適性により適宜調整すればよい。
【0036】
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、例えば、反応に用いる多塩基酸と多価アルコールのモル比や反応時間、触媒、反応温度等により調整することができる。
分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、アルキッド樹脂の骨格の合成に用いる多塩基酸または多価アルコールとして3官能以上の多塩基酸または多価アルコールを用いることで所望の範囲に調整することができる。あるいは、アルキッド樹脂の骨格を合成する際の多塩基酸と多価アルコールとの反応方法によっても分子量分布(Mw/Mn)を調整することができ、例えば2官能モノマーと3官能以上のモノマーとを原料とする縮合物をアルキッド樹脂の骨格とする場合、2官能モノマーと3官能モノマーとを同時に反応させる場合と2官能モノマーを反応させた後に3官能モノマーを反応させる場合とでは分子量分布が異なる。このような手法を用いて分子量分布を調整することもできる。多塩基酸と多価アルコールの縮合物に改質剤を加えて加熱溶融するなどしてもよい。
【0037】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸或いはそれらの水素添加物、油あるいはそれらの水素化物、1価の酸、1価のアルコール等で変性した樹脂であって、多価アルコールが備える水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下であるアルキッド樹脂が挙げられる。多塩基酸と、このような多価アルコールとの反応生成物を骨格とすることで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)が所望の範囲内にあるアルキッド樹脂を効率よく得ることができる。このような多価アルコールとしては、例えばネオペンチルグリコールや1,6-ヘキサンジオールのような2官能のアルコールと、ジペンタエリスリトールのような6官能のアルコールとを、水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下となるよう調整した組成物を用いてもよいし、トリメチロールエタンやトリメチロールプロパンのような3官能のアルコールとジペンタエリスリトールのような6官能のアルコールとを、水酸基の平均官能基数が3.5以上4.5以下となるよう調整した組成物を用いてもよい。ペンタエリスリトールのような4官能のアルコールのみを用いてもよい。
【0038】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、変性に用いる脂肪酸が、炭素原子数が8以上18以下の脂肪酸を含むことが好ましい。また、変性に用いる脂肪酸が不飽和結合を含まないものであることが好ましい。さらに、変性に用いる脂肪酸の95モル%以上が、炭素原子数が8以上18以下の飽和脂肪酸であることが好ましい。このようなアルキッド樹脂を用いることにより、ミスティングが抑制され、機上安定性に優れた金属印刷インキとすることができる。
【0039】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、変性に用いる脂肪酸のうち、カプリン酸の割合が40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、カプリン酸の割合は変性に用いる脂肪酸のうち100質量%であってもよい。80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。このようなアルキッド樹脂を用いることにより、ミスティングが抑制され、機上安定性、高速印刷適性に優れた金属印刷インキとすることができる。
【0040】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、変性に用いる脂肪酸のうち、ラウリン酸の割合が8質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。また、ラウリン酸の割合は変性に用いる脂肪酸のうち30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。このようなアルキッド樹脂を用いることにより、ミスティングが抑制され、機上安定性、高速印刷適性に優れた金属印刷インキとすることができる。
【0041】
本発明に好ましく用いられるアルキッド樹脂の一態様として、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を骨格とし、脂肪酸で変性した樹脂であって、油長は30以上70以下であることが好ましい。なお、本明細書においてアルキッド樹脂の油長とは、脂肪酸がグリセリンと反応してトリグリセライドを形成したと考えたときに、そのトリグリセライドがアルキッド樹脂中にしめる質量百分率をいう。
【0042】
本発明に用いられるアルキッド樹脂の酸価は0.1mgKOH/g以上25mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価は70mgKOH/g以上200mgKOH/g以下に調整されていることが好ましい。
【0043】
このようなアルキッド樹脂に加えて、通常金属印刷インキに用いられる他の樹脂を併用することも可能であり、上述のアルキッド樹脂以外のアルキッド樹脂、石油樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、アミノ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、オイルフリーポリエステル樹脂、ロジンフェノール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明の金属印刷インキにおける樹脂の含有量は、金属印刷に適したインキタックバリューに調整できればよく特に制限はないが、金属印刷インキの全量の20質量%以上50質量%以下が好ましく、25質量%以上45質量%以下がより好ましい。
また、上述のアルキッド樹脂に加えて他の樹脂を併用する場合には、金属印刷インキに添加される樹脂に占める上述のアルキッド樹脂の含有量が50質量%以上であることが好ましい。
【0045】
(溶剤)
本発明に用いられる溶剤としては通常金属印刷インキに用いられている公知のものを使用することができる。例えば沸点範囲が230℃~400℃程度の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素やアルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素、高級アルコールが挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の金属印刷インキにおける溶剤の含有量は、金属印刷に適したインキタックバリューに調整できれはよく特に制限はないが、一例として金属印刷インキの全量の5質量%以上60質量%以下である。
【0046】
本発明の金属印刷インキが、白色度(隠蔽性、青み)が高く、ミスティングが低く、高速印刷適性、機上安定性に優れる理由は以下のように推測される。
金属印刷用白インキにおいて隠蔽性を高めようとする場合、金属印刷インキにおける酸化チタンの配合量を高めるか、金属印刷インキの塗膜の膜厚を厚くすることが考えられるが、酸化チタンの配合量が一定量を超えると隠蔽性は向上し難くなるし、いずれの場合も印刷速度が上がるにつれミスティングの発生が顕著となり高速印刷適性、機上安定性も低下する。また用いる酸化チタンの粒子径を大きくしたり、アナターゼ型よりも屈折率の高いルチル型の酸化チタンを用いたりすることで隠蔽性を高くすることができるが、どちらの場合も青みが低下する方向に働く。
【0047】
そこで本発明の金属印刷インキでは、酸化チタンとともに上述したシリカを併用する。本発明の金属印刷インキ中で、シリカは表面のシラノール基の相互作用により、内部に空隙を持った凝集体を形成する。この状態で焼付を行うと、金属印刷インキの硬化塗膜にシリカと、アルキッド樹脂によって囲まれた不定形の空隙が生じる。酸化チタンによる反射に加えて、ルチル型酸化チタン、シリカ、アルキッド樹脂、空隙(気体)の屈折率差に起因する光の反射、散乱により、酸化チタンのみを用いた場合よりも隠蔽性を向上させることができる。さらに本発明で用いられるシリカは平均粒子径が10nm以上15nm以下であり、これは可視光の波長に対して十分に小さい。このようなシリカを用いることにより、可視光中の短波長成分がより散乱され、青みの強い白インキとすることができる。
【0048】
ただし、金属印刷インキにおけるヒュームドシリカの配合量が増加すると、塗膜の粘弾性が低下し、高速印刷時に転移不良を引き起こしたり、機上安定性の低下を引き起こしたりするおそれが生じる。この点について、本発明の金属印刷インキでは上述した構造を有するアルキッド樹脂を採用することにより解決している。本発明で用いられるアルキッド樹脂は、シリカへの濡れ性が高く、高速印刷時にもシリカの凝集体の表面をアルキッド樹脂が被覆した状態を保つことができ、機上安定性に優れたものとすることができる。さらに本発明で用いられるアルキッド樹脂は従来金属印刷インキで用いられているよりも分子量分布が高く、即ち分子内に多くの分岐構造を有するものである。このようなアルキッド樹脂は、従来のものよりも分子鎖が絡まり合う力が強く、印刷速度を上げた場合であってもミスティングが起こり難い。
このように、特定の酸化チタン、シリカ、アルキッド樹脂を組み合わせることで、白色度、ミスティング、高速印刷適性、機上安定性に優れた金属印刷用白インキとすることができる。
【0049】
(金属印刷インキ その他の成分)
本発明の金属印刷インキには、必要に応じて蛍光増白剤、顔料分散剤、酸触媒、ワックス、補助溶剤等を用いることができる。
【0050】
蛍光増白剤は、紫外線域(250nm~380nm)の波長を吸収し、紫~青色(400nm~500nm)の波長域の蛍光を発するものが用いられる。このような蛍光増白剤としては、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール、フラン、チオフェン、ペリジカルボン酸アミド、クマリン環を有する化合物等が挙げられる。より具体的には3-フェニル-7-(2H-ナフト[1,2-d]-トリアゾール-2-イル)クマリン、2,5-ビス(5’-t-ブチルベンゾオキゾリル-2’)チオフェン)等が挙げられ、対候性の点から2,5-ビス(5’-t-ブチルベンゾオキゾリル-2’)チオフェン)が好ましい。蛍光増白剤を用いることにより、より青みの強い白色を呈する金属印刷インキとすることができる。
【0051】
蛍光増白剤を用いる場合、配合量の下限について特に制限はないが、一例として金属印刷インキ総量の0.5質量%以上であるとその効果が比較的体感し易い。一方、蛍光増白剤の配合量は一定量を超えるとその効果が頭打ちとなり、さらに機上安定性や高速印刷適性を低下させ始めることから、金属印刷インキ総量の5質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、1.5質量%以上3質量%以下である。
【0052】
顔料分散剤としては、例えば、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、及び、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物等のアニオン性分散剤;フィトステロールのエチレンオキサイド付加物、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物等ノニオン性分散剤;ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、およびエポキシ樹脂のうち1種以上を主成分とする高分子分散剤等が挙げられる。高分子分散剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、高分子分散剤がグラフト共重合体である場合、くし形のグラフト共重合体であってよく、星形のグラフト共重合体であってもよい。
【0053】
高分子分散剤の市販品としては例えば、ビックケミー社製の「DISPERBYK-130」、「DISPERBYK-161」、「DISPERBYK-162」、「DISPERBYK-163」、「DISPERBYK-164」、「DISPERBYK-166」、「DISPERBYK-167」、「DISPERBYK-168」、「DISPERBYK-170」、「DISPERBYK-171」、「DISPERBYK-174」、「DISPERBYK-180」、「DISPERBYK-182」、「DISPERBYK-183」、「DISPERBYK-184」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-2000」、「DISPERBYK-2001」、「DISPERBYK-2008」、「DISPERBYK-2009」、「DISPERBYK-2020」、「DISPERBYK-2022」、「DISPERBYK-2025」、「DISPERBYK-2050」、「DISPERBYK-2070」、「DISPERBYK-2096」、「DISPERBYK-2150」、「DISPERBYK-2155」、「DISPERBYK-2163」、「DISPERBYK-2164」、「BYK-LPN21116」及び「BYK-LPN6919」;BASF社製の「EFKA4010」、「EFKA4015」、「EFKA4046」、「EFKA4047」、「EFKA4061」、「EFKA4080」、「EFKA4300」、「EFKA4310」、「EFKA4320」、「EFKA4330」、「EFKA4340」、「EFKA4560」、「EFKA4585」、「EFKA5207」、「EFKA1501」、「EFKA1502」、「EFKA1503」及び「EFKA PX-4701」;ルーブリゾール社製の「ソルスパース3000」、「ソルスパース9000」、「ソルスパース13240」、「ソルスパース13650」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース11200」、「ソルスパース13940」、「ソルスパース16000」、「ソルスパース17000」、「ソルスパース18000」、「ソルスパース20000」、「ソルスパース21000」、「ソルスパース24000」、「ソルスパース26000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース28000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース32500」、「ソルスパース32550」、「ソルスパース32600」、「ソルスパース33000」、「ソルスパース34750」、「ソルスパース35100」、「ソルスパース35200」、「ソルスパース36000」、「ソルスパース37500」、「ソルスパース38500」、「ソルスパース39000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース54000」、「ソルスパース71000」及び「ソルスパース76500」;味の素ファインテクノ(株)製の「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」、「アジスパーPB881」、「PN411」及び「PA111」;エボニック社製の「TEGO Dispers650」、「TEGO Dispers660C」、「TEGO Dispers662C」、「TEGO Dispers670」、「TEGO Dispers685」、「TEGO Dispers700」、「TEGO Dispers710」及び「TEGO Dispers760W」;楠本化成製の「ディスパロンDA―703―50」、「DA-705」及び「DA-725」などを用いることができる。
【0054】
顔料分散剤を用いる場合、その配合量は適宜調整されるが、一例として金属印刷インキ総量の0.5質量%以上3.0質量%以下である。
【0055】
補助溶剤としては、印刷適性、オーバープリントワニスの塗装性に応じて、任意の溶剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、グリコール系、グリコールエーテル系、グリコールエステル系、高級アルコール系溶剤等が挙げられる。
【0056】
本発明の金属印刷インキは、ロールミルを用いて、常法により調整することができる。
【0057】
本発明の金属印刷インキにより印刷層を形成する方法としては特に限定されない。樹脂凸版を使用したドライオフセット方式、水無し平版を使用したドライオフセット方式、通常の水を使用した平版オフセット方式等によっても印刷することができる。インキの膜厚は任意であるが、例えば0.3μm以上3μm以下の範囲で調整すればよい。
【0058】
本発明の金属印刷インキを用いて形成される印刷層は、下地金属基材の全面に形成されてもよいし、一部のみに形成されていてもよい。本発明の金属印刷インキが印刷されない領域は、本発明の金属印刷インキ以外の金属印刷インキによって印刷層が形成されていてもよいし、下地金属基材や下地金属基材と印刷層との間に塗布される他の塗料により形成された層が露出していてもよい。
【0059】
金属基材の印刷に使用される下地金属基材としては、金属を円筒形の缶型に成型した2ピース缶や、未塗装あるいは塗装された成型前の金属板が用いられ特に制限はない。下地金属は、アルミニウム、鉄等が例示でき、化成処理、メッキ処理、サイズ塗料やホワイトコーティング等が塗装されていても、PETフィルム等がラミネート処理されていても構わない。
【0060】
本発明の金属印刷インキは、金属印刷インキによる印刷層上にオーバープリント用ワニスをウェットオンウェット方式で塗装した後、180℃~280℃で5秒~90秒程度焼き付けて加熱硬化させる。オーバープリント用ワニスは、通常金属印刷に用いられるような、加熱によって硬化する任意の水性型または溶剤型のオーバープリント用ワニスが使用でき特に制限はない。オーバープリント用ワニスの塗装は例えばコーター方式で行うことができる。
【実施例
【0061】
以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合組成その他の数値は特記しない限り質量基準である。
【0062】
(アルキッド樹脂の合成)
炭素原子数が8以上18以下の飽和脂肪酸の組成物、イソフタル酸、平均官能基数を4官能に調整した多価アルコールの組成物を用い、定法にてアルキッド樹脂1、2、4を合成した。また、炭素原子数が8以上18以下の飽和脂肪酸の組成物、イソフタル酸、平均官能基数を2.5に調整した多価アルコールの組成物を用い、定法にてアルキッド樹脂3を合成した。合成した樹脂の油長、酸価、水酸基価、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を表1にまとめた。
【0063】
なお表1における油長は計算値である。
酸価については試料5.0g(固形分換算)を精秤し、中性溶剤30mLを加えて溶解させ、0.1mol水酸化カリウム溶液(メタノール性)を用いて滴定した。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。測定結果は、試料1gを中和するために要した水酸化カリウムの量に換算し、単位はmgKOH/gとした。
【0064】
水酸基価については試料4.0g(固形分換算)を精秤し、無水酢酸/ピリジン(容量比1/19)からなるアセチル化剤25mLを加え、密閉して100℃で1時間加熱した。アセチル化後、イオン交換水10mLとテトラヒドロフラン100mLを加え、0.5mol水酸化カリウム溶液(アルコール性)を用いて滴定した。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。測定結果は、試料1gをアセチル化させたときに生じる酢酸を中和するために要した水酸化カリウムの量に換算し、単位はmgKOH/gとした。
【0065】
【表1】
【0066】
(金属印刷インキの調整)
ルチル型の酸化チタン1~5、ヒュームドシリカ1~3、アルキッド樹脂1~4、溶剤、蛍光増白剤を用い、表4~6に示す配合でタックバリューが6.0~7.0になるよう調整し、実施例、比較例の金属印刷インキを得た。なお、金属印刷インキの調整に用いた酸化チタン、シリカを表2、3に示す。溶剤はアルキルベンゼン(日本石油株式会社製「アルケンL」)、蛍光増白剤は2,5-ビス(5’-t-ブチルベンゾオキサゾリル-2’)チオフェンを用いた。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
(評価)
実施例、比較例1の金属印刷インキを次のようにして評価し、結果を表4~6にまとめた。
【0070】
(ミスティング)
調整した金属印刷インキ2.64ccをRIテスター(株式会社明製作所製)にとり、55℃±2℃の環境下、1600rpmの回転速度で5分間回転させた。RIテスターから5cmの位置に、RIテスターの回転軸と平行になるように予め設置しておいた10cm四方の板に、5分間で付着した金属印刷インキの量(mg)を計測した。実際の印刷条件よりも過酷な環境下で測定しているため、実施例、比較例のインキいずれも十分実用に耐え得るが、100mg以下であることが好ましく、70mg以下であることがより好ましい。
【0071】
(機上安定性)
RIテスターを用いて4分割ロール上に0.1ccの金属印刷インキを引き延ばした後、インキをブランケットに転写させた。その後インキの補充は行わずに25±2℃で一定時間ごとに一定の角度でブランケットを回転させてアルミニウム板(肉厚50~100μmの2ピース缶を開いたもの)に印刷を行い、インキが転移しなくなるまでの時間を調べ、以下のように評価した。
◎:20分以降もインキが転移する
〇:15分以上20分未満でインキが転移しなくなる
△:10分以上15分未満でインキが転移しなくなる
×:10分未満でインキが転移しなくなる
【0072】
(高速印刷適性)
金属印刷インキ組成物を高速印刷適性試験機((株)エスエムテー製PM901PT)を使用してウェットでのインキ被膜の厚さが2μmとなるように均一に試験用ゴムロールに写し、次いでアルミニウム板(肉厚50~100μmの2ピース缶を開いたもの)に9m/sの印刷速度で転写した。印刷された2ピース缶について、インキの転写性およびインキ被膜の表面平滑性が良好であるものを◎、インキの転移量が少なく、インキ被膜の表面平滑性が著しく劣るなど実用域にないものを×とし、4段階で相対評価した。
【0073】
(白色度)
RIテスターを用いて2分割ロール上に0.2ccの金属印刷インキを引き延ばし、アルミニウム板(肉厚50~100μmの2ピース缶を開いたもの)に印刷を行った。引き続いてDIC製のオーバープリント用ワニスを40mg/100cmで塗装後、190℃、70秒+200℃、90秒焼付け乾燥し、試験片を得た。得られた試験片の隠蔽性と、青みとを、目視にてそれぞれ5段階で評価した。
【0074】
(意匠性)
試験片にブラックライトを照射して、蛍光が確認できるか否かで判断した。
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】


【0078】
表4~6から明らかなように、本発明の金属印刷インキは金属印刷インキとして優れた適性を示した。