(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】中空樹脂粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 13/20 20060101AFI20240402BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B01J13/20
C08F292/00
(21)【出願番号】P 2019225652
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金児 尚弥
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067904(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/087839(WO,A1)
【文献】特開昭64-067251(JP,A)
【文献】特表2009-518501(JP,A)
【文献】国際公開第2008/105117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/02-13/22
C08F 292/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層を含む外殻により表面
が被覆されたシリカ粒子をアルカリ金属含有液で処理し、シリカを除去することを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂層が、水親和性官能基を含有するモノマー由来の構成単位を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水親和性官能基が、ヒドロキシ基、酸性官能基、及び酸性官能基を塩にした基から選択される少なくとも1つの基である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属含有液が、アルカリ金属水酸化物と、炭素数1~3のアルコールと、水とを含む請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記中空樹脂粒子のシリカ換算のケイ素分含有率が、1~60質量%である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
樹脂層を含む外殻と、この外殻よりも内側のコア部とを有し、
透過型電子顕微鏡像から求めた外径ODの数平均値が50~1000nmであり、
前記樹脂層を構成する樹脂がスチレン系単官能モノマー由来の構成単位を有し、
前記コア部が中空部とシリカとを含む中空樹脂粒子。
【請求項7】
シリカ換算のケイ素分含有率が、1~60質量%である請求項6に記載の中空樹脂粒子。
【請求項8】
前記樹脂が、ヒドロキシ基、酸性官能基、及び酸性官能基を塩にした基から選択される少なくとも1つの基を含有するモノマー由来の構成単位を有する請求項6又は7に記載の中空樹脂粒子。
【請求項9】
前記樹脂が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC
1-6アルキルエステル、スルホン酸基を有するモノマー、及び塩になったスルホン酸基を有するモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー由来の構成単位を有する請求項6又は7に記載の中空樹脂粒子。
【請求項10】
樹脂層を含む外殻と、この外殻よりも内側のコア部とを有し、
透過型電子顕微鏡像から求めた外径ODの数平均値が50~1000nmであり、
前記
樹脂層を構成する樹脂が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC
1-6アルキルエステル、スルホン酸基を有するモノマー、及び塩になったスルホン酸基を有するモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー由来の構成単位
、並びに、スチレン系単官能モノマー由来の構成単位を有し、
前記コア部が中空部を含む中空樹脂粒子。
【請求項11】
前記コア部が、さらにシリカを含み、
中空樹脂粒子のシリカ換算のケイ素分含有率が、1~60質量%である請求項10に記載の中空樹脂粒子。
【請求項12】
内径IDと外径ODの比(ID/OD)が60~90%である請求項6~11のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【請求項13】
前記樹脂の架橋度が5~60質量%である請求項6~12のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【請求項14】
中空樹脂粒子の外径ODの変動係数が15%以下である請求項6~
13のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【請求項15】
外径ODの1.5倍以上の粒子径を持つ粒子を粗大粒子としたときの粗大粒子率が3%以下である請求項6~
14のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空樹脂粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空樹脂粒子は、内部に気泡を有する特性を生かして工業的に幅広く利用されており、例えば、断熱材、低反射材、低屈折率化材、低誘電材などに利用されている。しかし、中空樹脂粒子は、溶剤などの液滴を中心にしてその周りに樹脂層を形成した後、中心の液滴を除去することによって形成されており(例えば、特許文献1、2など)、表面張力によって液滴サイズが制限されるため、一般にナノサイズやサブミクロンサイズの極小な中空樹脂粒子の形成は困難である。また、特許文献3には、酸性基を比較的多く含む芯重合体と実質的に芯重合体を包囲する外層重合体との少なくとも2層構造からなる重合体粒子を形成し、上記芯重合体に含まれる酸性基の少なくとも一部を中和して形成されたボイドを有する中空重合体粒子を製造するにあたり、特定構造の界面活性剤を所定量用いて芯重合体を調製する方法により、0.2~3μmの粒子径を有する中空重合体粒子が得られることが記載されているが、合成に成功しているのはミクロンサイズの中空重合体粒子のみである。
【0003】
特許文献4には、エポキシ基を有するラジカル反応性単量体を有機溶媒の存在下で乳化重合し、有機溶媒で膨潤した粒子を製造した後、ポリアミン系化合物を加えてエポキシ基を重合することで重合体と有機溶媒を相分離させるマイクロカプセル粒子の製造方法が記載されている。また非特許文献1には、シリカ表面でスチレン及びジビニルベンゼンを重合させた後、10%フッ化水素エタノール溶液でシリカを溶出する中空粒子の製造方法が記載されている。これらの方法ではナノオーダーの中空樹脂粒子が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-181274号公報
【文献】国際公開第2011/040376号
【文献】特開2005-206752号公報
【文献】特開2017-61664号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 7940-7945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1では、有害かつ危険であるフッ化水素を使用する必要があり、また、特許文献3、4や非特許文献1で得られる中空樹脂粒子は、まだ強度が不十分であり、例えば樹脂に配合する場合、その条件によっては潰れることがある。
本発明の目的は、強度に優れた微小中空樹脂粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 表面が樹脂層で被覆されたシリカ粒子をアルカリ金属含有液で処理し、シリカを除去することを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法。
[2] 前記樹脂層が、水親和性官能基を含有するモノマー由来の構成単位を有する[1]に記載の製造方法。
[3] 前記水親和性官能基が、ヒドロキシ基、酸性官能基、及び酸性官能基を塩にした基から選択される少なくとも1つの基である[2]に記載の製造方法。
[4] 前記アルカリ金属含有液が、アルカリ金属水酸化物と、炭素数1~3のアルコールと、水とを含む[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 前記中空樹脂粒子のシリカ換算のケイ素分含有率が、1~60質量%である[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 樹脂層を含む外殻と、この外殻よりも内側のコア部とを有し、透過型電子顕微鏡像から求めた外径ODの数平均値が50~1000nmであり、前記コア部が中空部とシリカとを含む中空樹脂粒子。
[7] シリカ換算のケイ素分含有率が、1~60質量%である[6]に記載の中空樹脂粒子。
[8] 前記樹脂が、ヒドロキシ基、酸性官能基、及び酸性官能基を塩にした基から選択される少なくとも1つの基を含有するモノマー由来の構成単位を有する[6]又は[7]に記載の中空樹脂粒子。
[9] 前記樹脂が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-6アルキルエステル、スルホン酸基を有するモノマー、及び塩になったスルホン酸基を有するモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー由来の構成単位を有する[6]又は[7]に記載の中空樹脂粒子。
[10] 樹脂層を含む外殻と、この外殻よりも内側のコア部とを有し、透過型電子顕微鏡像から求めた外径ODの数平均値が50~1000nmであり、前記樹脂が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-6アルキルエステル、スルホン酸基を有するモノマー、及び塩になったスルホン酸基を有するモノマーから選択される少なくとも1つのモノマー由来の構成単位を有し、前記コア部が中空部を含む中空樹脂粒子。
[11] 前記コア部が、さらにシリカを含み、中空樹脂粒子のシリカ換算のケイ素分含有率が、1~60質量%である[10]に記載の中空樹脂粒子。
[12] 内径IDと外径ODの比(ID/OD)が60~90%である[6]~[11]のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
[13] 前記樹脂の架橋度が5~60質量%である[6]~[12]のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
[14] 前記樹脂がスチレン系単官能モノマー由来の構成単位を有する[6]~[13]のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
[15] 中空樹脂粒子の外径ODの変動係数が15%以下である[6]~[14]のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
[16] 外径ODの1.5倍以上の粒子径を持つ粒子を粗大粒子としたときの粗大粒子率が3%以下である[6]~[15]のいずれかに記載の中空樹脂粒子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、強度に優れた微小中空樹脂粒子を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1の中空樹脂粒子の透過型電子顕微鏡画像を表す。
【
図2】
図2は、実施例2の中空樹脂粒子の透過型電子顕微鏡画像を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[中空樹脂粒子]
本発明の中空樹脂粒子は、一層又は多層構造であってもよい外殻と、この外殻よりも内側のコア部とから構成される。外殻とは、概略球形の外観を有し、かつ中心部を含まない一層又は多層から構成されるシェル構造を意味する。外殻が樹脂層を有し、コア部に中空部を有することで中空樹脂粒子が構成される。
【0011】
本発明の中空樹脂粒子は、サイズが極めて小さく、ナノオーダーのサイズも可能である。中空樹脂粒子の外径(以下、「外径OD」という場合がある)は、例えば、50~1000nmであり、80nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは150nm以上、特に好ましくは200nm以上であり、また、800nm以下であることが好ましく、より好ましくは600nm以下、更に好ましくは500nm以下であり、470nm以下であってもよく、430nm以下であってもよい。ここで中空樹脂粒子の外径ODとは、中空樹脂粒子を構成する外殻の最も外側の層の外表面で決定される粒子径を指す。また中空樹脂粒子の外径ODは、透過型電子顕微鏡像で多数の粒子の外径を測定した時の、算術平均(個数基準の平均値)を意味する。
【0012】
前記中空樹脂粒子は、前記コア部にシリカ等のケイ素分を含むことが好ましい。コア部がシリカ等のケイ素分を含むことにより、中空樹脂粒子の強度が優れるようになる。
なお概略球形のコア材を表面処理層で覆い、次いで外層(樹脂層)を形成した後、中空部を形成するためにコア材の少なくとも一部を除去すると、表面処理層が外層(樹脂層)の内側に残ることがある。こうした表面処理層も、概略球形の外観を有し、かつ中心部を含まないことから外層(樹脂層)と共に外殻に該当する。本発明では、外殻にケイ素原子が含まれていてもよく、好ましくは、外層としての樹脂層よりも内側(表面処理層に該当する部分など)にケイ素原子が含まれていてもよい。また外層にケイ素原子が含まれていないことも好ましい態様の一つである。
【0013】
中空樹脂粒子のシリカ換算のケイ素分含有率は、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、また、60質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。前記ケイ素分含有率は、主にコア部のシリカ量(主としてシリカ粒子の未溶解分)によって決まり、シリカ換算のケイ素分含有率を上記範囲とすることで、中空樹脂粒子の強度をより高めることができる。前記シリカ換算のケイ素分含有率は、示差熱熱重量同時測定装置を用いて算出することができる。
【0014】
中空樹脂粒子の内径IDと外径ODの比(ID/OD)は、60%以上であることが好ましく、より好ましくは65%以上、更に好ましくは70%以上であり、また、90%以下であることが好ましく、より好ましくは87%以下、更に好ましくは85%以下である。ここで、中空樹脂粒子の内径IDとは、外殻の最も内側の層(例えば、表面処理層)の内側表面で決定される長さ(コア径)を意味する。また中空樹脂粒子の内径IDは、透過型電子顕微鏡像で多数の粒子の内径を測定した時の、算術平均(個数基準の平均値)を意味する。中空樹脂粒子の内径IDと外径ODの比を上記範囲とすることにより、中空樹脂粒子がより潰れにくくなる。
【0015】
中空樹脂粒子の外殻の厚さは、中空樹脂粒子の外径ODに応じて適宜設定されるが、例えば、15nm以上であってもよく、好ましくは20nm以上、より好ましくは25nm以上であり、100nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以下、更に好ましくは70nm以下である。中空樹脂粒子の外殻の厚さは、(外径OD-内径ID)/2により決定できる。
【0016】
中空樹脂粒子の外殻を構成する樹脂層は、水親和性官能基を含有するモノマー由来の構成単位を有することが好ましい。水親和性官能基含有モノマー由来の構成単位を有することにより、後述するようなアルカリ金属含有液が外殻からコアに向けて浸透してコア材(シリカ)の適切な除去が可能となり、コア部に中空部を形成できる。さらに、中空樹脂粒子を含む樹脂組成物とする際に、中空樹脂粒子の樹脂への分散性が向上する。
【0017】
前記水親和性官能基としては、酸性官能基、含窒素極性官能基、前記酸性又は含窒素極性官能基を塩にした基、前記酸性官能基を無水物化した基、及びヒドロキシ基から選択される少なくとも1つの基であることが好ましい。
【0018】
前記酸性官能基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。前記含窒素極性官能基としては、アミノ基、アミド基等が挙げられる。前記酸性官能基を塩にした基としては、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム等の前記酸性官能基がナトリウム、カリウム等のアルカリ金属と塩を形成したものが挙げられる。前記含窒素極性官能基を塩にした基としては、アミン塩酸塩やアミン臭化水素酸塩等の前記含窒素極性官能基がハロゲン化水素と塩を形成したものが挙げられる。前記酸性官能基を無水物化した基としては、カルボン酸無水物基等が挙げられる。前記水親和性官能基としては、ヒドロキシ基、酸性官能基、及び酸性官能基を塩にした基から選択される少なくとも1つの基であることが好ましい。
【0019】
前記水親和性官能基含有モノマーは、水親和性官能基を1つ有していてもよく、2つ以上有していてもよいが、1つ有していることが好ましい。
【0020】
前記水親和性官能基含有モノマーは、非架橋性モノマーであってもよく、架橋性モノマーであってもよいが、非架橋性モノマーの少なくとも一部が水親和性官能基含有モノマーであることが好ましい。非架橋性モノマーとしての水親和性官能基含有モノマー(以下、「水親和性単官能モノマー」という場合がある)としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸塩;(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-6アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル等)等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アリルアルコール;スルホン酸基を有するモノマー(好ましくはスチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するスチレン系モノマー);塩になったスルホン酸基を有するモノマー(好ましくはスチレンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属と塩になったスルホン酸基を有するスチレン系モノマー);等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-6アルキルエステル、スルホン酸基を有するモノマー、及び塩になったスルホン酸基を有するモノマーから選択される少なくとも1つのモノマーであることが好ましく、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-6アルキルエステル、スルホン酸基を有するスチレン系モノマー、及びアルカリ金属と塩になったスルホン酸基を有するスチレン系モノマーから選択される少なくとも1つのモノマーであることがより好ましく、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-6アルキルエステルから選択される少なくとも1つのモノマーであることが特に好ましい。また、前記水親和性単官能モノマーが、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-6アルキルエステル、スルホン酸基を有するモノマー、及び塩になったスルホン酸基を有するモノマーから選択される少なくとも1つのモノマーであることも好ましい態様の1つである。
【0021】
架橋性モノマーとしての水親和性官能基含有モノマー(以下、「水親和性多官能モノマー」という場合がある)としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルであって多価アルコールのヒドロキシ基の一部がエステル化されていない化合物が挙げられる。
【0022】
前記樹脂層を構成する樹脂は、水親和性官能基含有モノマー由来の構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0023】
前記樹脂層を構成する樹脂は、水親和性官能基含有モノマー由来の構成単位(好ましくは水親和性単官能モノマー由来の構成単位)を、全構成単位100質量%中、5質量%以上有することが好ましく、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、また、40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0024】
前記樹脂層を構成する樹脂は、さらに水親和性官能基を有さない架橋性モノマー(以下、「非極性多官能モノマー」という場合がある)由来の構成単位を有することが好ましい。非極性多官能モノマー由来の構成単位を有することにより、中空樹脂粒子の強度がより向上する。
【0025】
非極性多官能モノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレンジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);等が挙げられる。これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤が好ましく、芳香族炭化水素系架橋剤がより好ましく、スチレン系多官能モノマーが特に好ましい。前記樹脂層を構成する樹脂は、非極性多官能モノマー由来の構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0026】
前記樹脂層を構成する樹脂は、非極性多官能モノマー由来の構成単位を、全構成単位100質量%中、5質量%以上有することが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは25質量%以上であり、また、60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは55質量%以下である。
【0027】
前記樹脂層を構成する樹脂は、さらに非架橋性であって水親和性官能基を有さないモノマー(以下、「非極性単官能モノマー」という場合がある)を有していてもよい。
【0028】
非極性単官能モノマーとしては、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやビニルエステル系モノマー、スチレン系単官能モノマーが含まれ、好ましくはスチレン系単官能モノマーである。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、エチルビニルベンゼン等のアルキルスチレン類が挙げられ、スチレンが好ましい。前記樹脂層を構成する樹脂は、非極性単官能モノマー由来の構成単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0029】
前記樹脂層を構成する樹脂は、非極性単官能モノマー由来の構成単位を、全構成単位100質量%中、10質量%以上有することが好ましく、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0030】
前記樹脂層を構成する樹脂の架橋度、すなわち、全構成単位100質量%中における、非極性多官能モノマー由来の構成単位及び水親和性多官能モノマー由来の構成単位の合計量は、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは25質量%以上であり、また、60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは55質量%以下である。樹脂層を構成する樹脂の架橋度が低すぎると、強度や耐溶剤性が不十分となり好ましくない。また、架橋度が高すぎると、後述するようなアルカリ金属含有液が外殻からコアに向けて浸透しづらくなり、コア材(シリカ)の適切な除去が難しくなる。
【0031】
中空樹脂粒子の外径ODの変動係数は15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、更に好ましくは8%以下、より更に好ましくは7%以下、特に好ましくは6%以下である。中空樹脂粒子の外径ODの変動係数の下限は特に限定されないが、1%以上であってもよく、2%以上であってもよい。
外径ODの変動係数は、下記式に従って算出した値とする。
外径ODの変動係数(%)=(外径ODの標準偏差/外径ODの数平均値)×100
【0032】
外径ODの1.5倍以上の粒子径(外径)を持つ粒子を粗大粒子としたときの粗大粒子率は、10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下、最も好ましくは0%である。
粗大粒子率は、下記式に従って算出した値とする。
粗大粒子率(%)=(粗大粒子個数/測定した全粒子個数)×100
【0033】
本発明の中空樹脂粒子は、後述する実施例の「中空樹脂粒子の潰れ評価」において、粒子100個あたりのシェルの破損がみられない粒子の数が、95個以上であることが好ましく、より好ましくは96個以上、さらに好ましくは97個以上である。
【0034】
[中空樹脂粒子の製造方法]
本発明の中空樹脂粒子は、例えば、表面が樹脂層(外層)で被覆されたシリカ粒子(コア)をアルカリ金属含有液で処理し、シリカ(コア材)を除去することにより製造することができる(以下、「本発明の製造方法」という場合がある)。本発明の製造方法において、テンプレート粒子として単分散なシリカ粒子を用いた場合には、粒度が揃った、粗大粒子の少ない中空樹脂粒子を製造することが可能となる。また、シリカを除去する際には、アルカリ金属含有液を使用しているので、フッ化水素のような危険な試薬を使用する必要がなく、さらに、シリカ(コア材)の一部を残存させておくことも可能となるので、強度に優れた中空樹脂粒子も製造することができる。
【0035】
表面が樹脂層で被覆されたシリカ粒子(以下、「被覆後のシリカ粒子」という場合がある」)は、テンプレート粒子となるシリカ粒子(以下、「原料シリカ粒子」という場合がある)の表面に、樹脂を被覆させることにより製造することができる。
【0036】
原料シリカ粒子は、ヒュームドシリカ粒子、アルコキシド加水分解法などのゾルゲル法によって得られるシリカ粒子など種々のシリカ粒子が使用できる。
【0037】
原料シリカ粒子の個数平均粒子径は、30nm以上であることが好ましく、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、特に好ましくは150nm以上であり、また、700nm以下であることが好ましく、より好ましくは550nm以下、更に好ましくは500nm以下であり、450nm以下であってもよく、400nm以下であってもよい。なお、原料シリカ粒子の個数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡像で多数の粒子の粒子径を測定した時の、算術平均(個数基準の平均値)を求めることにより決定することができる。
原料シリカ粒子の個数平均粒子径の変動係数は15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、更に好ましくは8%以下、より更に好ましくは7%以下、特に好ましくは6%以下である。変動係数の下限は特に限定されないが、1%以上であってもよく、2%以上であってもよい。
【0038】
前記原料シリカ粒子は、樹脂層で被覆される前に、表面処理剤により表面処理されていることが好ましい。前記表面処理剤としては、原料シリカ粒子の表面が疎水処理されるものであれば特に限定されないが、有機ケイ素化合物、有機酸及びチタンカップリング剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、少なくとも有機ケイ素化合物を含むことが好ましい。
【0039】
前記有機ケイ素化合物としては、シランカップリング剤、ジシラザン化合物が好ましく、シランカップリング剤がより好ましい。
【0040】
前記シランカップリング剤は、中心ケイ素原子に加水分解性基(加水分解によりシラノール基を形成しうる基)及び有機基が結合した化合物を意味する。前記有機基としては、炭素数が1~20程度の非ラジカル重合性炭化水素基(飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、アラルキル基など)、該非ラジカル重合性炭化水素基に(メタ)アクリロイル基やビニル基などのラジカル重合性基が結合した基、前記非ラジカル重合性炭化水素基にエーテル結合が導入された基、前記非ラジカル重合性炭化水素基にハロゲン原子、メルカプト基、アミノ基、イソシアネート基などの官能基が結合した基などが挙げられる。
【0041】
前記シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン等のクロロシラン化合物;メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン等のアシロキシシラン化合物;ジメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール化合物;等が挙げられる。
【0042】
前記ジシラザン化合物は、分子中に、Si-N-Si結合を有する化合物を意味する。
前記ジシラザン化合物としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ビス(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシラザン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサメチルジシラザンリチウム、ヘキサメチルジシラザンナトリウム、ヘキサメチルジシラザンカリウム等が挙げられる。
【0043】
有機ケイ素化合物の含有率は、表面処理剤100質量%中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0044】
前記有機酸としては、カルボキシ基を有する化合物(以下、「カルボン酸化合物」という場合がある)が好ましく、該カルボン酸化合物は、カチオン(例えばアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン等の金属カチオン;アンモニウムイオン等の分子性カチオン)と塩を形成していてもよい。
【0045】
前記カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸類;エステル基、エーテル基、アミド基、チオエステル基、チオエーテル基、カーボネート基、ウレタン基及びウレア基からなる群より選ばれる1以上の置換基(以下、「特定置換基」という場合がある)を有するカルボン酸;直鎖状カルボン酸(直鎖状脂肪族カルボン酸、好ましくは直鎖状飽和脂肪族カルボン酸等)、分岐鎖状カルボン酸(分岐鎖状脂肪族カルボン酸、好ましくは分岐鎖状飽和脂肪族カルボン酸等)、環状カルボン酸(脂環式カルボン酸、好ましくは不飽和二重結合を有さない脂環式カルボン酸等)及び芳香族カルボン酸等から選ばれる1つ以上(好ましくは1つ)であるカルボキシ基を有する炭素数4~20の化合物;が好ましく採用される。
【0046】
前記カルボン酸化合物としては、具体的に、(メタ)アクリル酸類(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、3-アクリロキシプロピオン酸等の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルカルボン酸等);C3-9脂肪族ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2-アクリロキシエチルコハク酸、2-メタクリロキシエチルコハク酸等)、C5-10脂環式ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2-アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロキシエチルフタル酸、2-メタクリロキシエチルフタル酸等)、C8-14芳香族ジカルボン酸の(メタ)アクリロキシC1-6アルキルアルコールによるハーフエステル類(例えば、2-アクリロキシエチルフタル酸、2-メタクリロキシエチルフタル酸等)等のエステル基を有するカルボン酸;酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸等の直鎖状カルボン酸;ピバリン酸、2,2-ジメチル酪酸、3,3-ジメチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2,2-ジエチル酪酸、3,3-ジエチル酪酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、3-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、4-メチルオクタン酸、ネオデカン酸等の分岐鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の環状カルボン酸;等が挙げられる。
【0047】
前記チタンカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ-トリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ-トリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
【0048】
前記表面処理剤は、ラジカル重合性基を有する表面処理剤であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する表面処理剤であることがより好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する表面処理剤としては、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤又は(メタ)アクリロイル基を有する有機酸が好ましい。
【0049】
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤(以下、「(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤」という場合がある)としては、加水分解性基がアルコキシ基であるものが好ましく、例えば、3-アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-アクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン等の2官能性(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の3官能性(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。
【0050】
(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(好ましくはメタクリロイル基含有シランカップリング剤)の割合は、シランカップリング剤の合計100質量%中、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、特に好ましくは90質量%以上であり、また100質量%以下であることが好ましい。
【0051】
(メタ)アクリロイル基を有する有機酸としては、2-アクリロキシエチルコハク酸、2-メタクリロキシエチルコハク酸、2-アクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロキシエチルフタル酸、2-メタクリロキシエチルフタル酸等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリロイル基を有する表面処理剤の含有率は、表面処理剤100質量%中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0053】
前記表面処理剤は、原料シリカ粒子と混合することで、表面が修飾されたシリカ粒子(以下、「表面処理シリカ粒子」という場合がある)にできる。表面処理剤と原料シリカ粒子とを混合する場合、水及び塩基性触媒の存在下で行うことが好ましい。
【0054】
表面処理剤の量は、仕込み量で、原料シリカ粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、好ましくは1000質量部以下、より好ましくは500質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下である。
【0055】
前記塩基性触媒としては、アンモニア類、アミン類、第4級アンモニウム化合物、含窒素芳香族複素環化合物等が挙げられる。前記アンモニア類としては、アンモニア;尿素等のアンモニア発生剤;等が挙げられる。また、前記アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン等の芳香族アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;等が挙げられる。また、前記第4級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。含窒素芳香族複素環化合物としては、ピリジン、キノリン等の窒素原子を1個有する単環又は多環の化合物;ビピリジン、イミダゾール等の窒素原子を2個以上有する単環又は多環の化合物;等が挙げられる。これら塩基性触媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0056】
中でも、得られる表面処理シリカ粒子の純度を高める観点から、除去が容易な触媒であることが好ましく、具体的には、アンモニア類、アミン類が好ましく、アンモニア、脂肪族アミンがより好ましい。また、触媒効果と除去容易性を兼ね備える観点からは、アンモニア類が好ましく、アンモニアが特に好ましい。
【0057】
表面処理反応液中、塩基性触媒の濃度は、0.5mmol/g~2mmol/gであることが好ましい。また、塩基性触媒と、塩基性触媒と水との合計の質量比(塩基性触媒/(塩基性触媒+水))は、0.05以上であることが好ましく、より好ましくは0.08以上であり、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。
【0058】
また、表面処理反応液中、水の濃度は、0.5mmol/g~25mmol/gであることが好ましい。ただし、反応の進行により水の量は変化するので、仕込み時の水の量を基準とする。
【0059】
表面処理剤で原料シリカ粒子を表面処理する際には、さらに希釈剤を共存させてもよい。希釈剤を含有することで、表面処理の進行度合いを均一にすることができるとともに、得られる表面処理シリカ粒子の分散性がさらに向上する。希釈剤としては水溶性有機溶媒が好ましく、水溶性有機溶媒としては、アルコール溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ペンチルアルコール等のモノオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のジオール類;等が挙げられる。
【0060】
表面処理反応液中、希釈剤は、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上であり、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは85質量%以下である。ただし、表面処理の進行に伴って希釈剤の量が変化するので、前記希釈剤の量は、仕込み時の量を基準とする。
【0061】
表面処理反応液には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;イソオクタン、シクロヘキサン等のパラフィン類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;等の疎水性有機溶媒が含まれていてもよい。これらの疎水性有機溶媒を用いる場合、分散性を向上させるため界面活性剤を添加してもよい。
【0062】
上記各成分は、適当な順で混合してもよいが、例えば、少なくとも上記各成分の一部(例えば、原料シリカ粒子、水、塩基性触媒等)を含む予備混合液を調製した後、表面処理剤と混合してもよい。また処理剤は、予め希釈剤と混合してから、前記予備混合液と混合してもよい。
【0063】
表面処理剤により原料シリカ粒子を表面処理する際、反応温度は、0~100℃が好ましく、25~85℃がより好ましく、30~60℃がさらに好ましい。また、表面処理時間は、30分~100時間であることが好ましく、1~50時間がより好ましく、2~15時間がさらに好ましい。
【0064】
表面処理シリカ粒子は、必要に応じて精製してもよい。また必要に応じて表面処理シリカ粒子を乾燥させてもよいが、乾燥させない方が好ましい。
【0065】
以上の様にして得られた表面処理シリカ粒子の個数平均粒子径は、30nm以上であることが好ましく、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上、特に好ましくは150nm以上であり、また、700nm以下であることが好ましく、より好ましくは550nm以下、更に好ましくは500nm以下であり、450nm以下であってもよく、400nm以下であってもよい。なお、表面処理シリカ粒子の個数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡像で多数の粒子の粒子径を測定した時の、算術平均(個数基準の平均値)を求めることにより決定することができる。
【0066】
前記原料シリカ粒子(好ましくは、表面処理シリカ粒子)の表面を被覆する樹脂層は、後述するアルカリ金属含有液が浸透するような樹脂であれば特に限定されず、上記で説明した樹脂層であることが好ましい。
【0067】
前記樹脂層は、シード沈殿重合法により形成されることが好ましい。シード沈殿重合法とは、シード粒子の存在下、モノマー及び重合開始剤を溶解するが生成する樹脂を溶解しない重合溶剤中で重合を行う方法である。重合反応が進むにつれて、シード粒子である原料シリカ粒子(好ましくは、表面処理シリカ粒子)上に樹脂が付着し、原料シリカ粒子(好ましくは、表面処理シリカ粒子)の表面を被覆する樹脂層が形成される。
【0068】
前記モノマーは、水親和性官能基を含有するモノマーを含むことが好ましい。水親和性官能基含有モノマーは、上述の水親和性官能基含有モノマーと同様であり、好ましい態様も同様である。水親和性官能基含有モノマーを使用すること、すなわち樹脂層が水親和性官能基含有モノマー由来の構成単位を有することにより、後述するアルカリ金属含有液が樹脂層により浸透しやすくなり、フッ化水素のような危険な試薬を使用せずとも、シリカの適切な除去が可能となり、コア部に中空部を形成できる。前記モノマーは、水親和性官能基含有モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0069】
水親和性官能基含有モノマーの使用量は、使用するモノマー全量に対して、5質量%以上が好ましく、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、また、40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0070】
前記モノマーは、さらに非極性多官能モノマーを含むことが好ましい。非極性多官能モノマーは、上述の非極性多官能モノマーと同様であり、好ましい態様も同様である。非極性多官能モノマーを使用すること、すなわち樹脂層が非極性多官能モノマー由来の構成単位を有することにより、強度がより向上した中空樹脂粒子を製造することが可能となる。前記モノマーは、非極性多官能モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0071】
非極性多官能モノマーの使用量は、使用するモノマー全量に対して、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは25質量%以上であり、また、60質量%以下であってもよく、55質量%以下であってもよく、52質量%以下であってもよい。非極性多官能モノマーの使用量を上記範囲とすることにより、耐溶剤性に優れた中空樹脂粒子を製造できる。
【0072】
前記モノマーは、さらに非極性単官能モノマーを含むことが好ましい。非極性単官能モノマーは、上述の非極性単官能モノマーと同様であり、好ましい態様も同様である。前記モノマーは、非極性単官能モノマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0073】
非極性単官能モノマーの使用量は、使用するモノマー全量に対して、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0074】
重合反応液中のモノマーと原料シリカ粒子(好ましくは、表面処理シリカ粒子)の質量比(モノマー/原料シリカ粒子)は、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また3以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下、特に好ましくは1.8以下である。
【0075】
前記重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いればよく、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート等の有機過酸化物等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、アゾ化合物を使用することが好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、1質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは15質量部以下である。
【0076】
前記重合溶剤は、上述のモノマー及び重合開始剤が溶解し、かつ樹脂が析出可能な溶剤であれば特に限定されない。前記重合溶剤としては、例えば、水、有機溶剤、及びそれらの混合溶剤が挙げられる。前記有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル等のエステル類;アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類;等が挙げられ、中でもアルコール類であることが好ましく、炭素数1~3のアルコールであることがより好ましい。前記重合溶剤としては、有機溶剤単独で、または水と有機溶剤の混合溶剤を使用することが好ましく、より好ましくは水とアルコール類の混合溶剤、更に好ましくは水と炭素数1~3のアルコールの混合溶剤である。なお、水と有機溶剤の比率は特に限定されるものではないが、0:100~90:10であることが好ましく、10:90~50:50であることがより好ましい。重合反応液中の溶剤の濃度は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上であり、また、97質量%以下が好ましく、より好ましくは95質量%以下である。
【0077】
また、本発明の重合反応においては、分散剤を添加しておくことが好ましい。前記分散剤としては、公知の分散剤を使用でき、例えば、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子系分散剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム)等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤;その他アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等の無機分散剤を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。分散剤としては、水溶性高分子系分散剤を使用することが好ましい。分散剤の使用量は、例えば、原料シリカ粒子(好ましくは、表面処理シリカ粒子)及びモノマーの合計100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量以上であり、また、40質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以下である。
【0078】
原料シリカ粒子、モノマー、重合開始剤、分散剤、重合溶剤の添加順序は特に限定されない。
【0079】
重合温度は50℃~200℃が好ましく、より好ましくは50~100℃である。また重合時間は1~20時間であることが好ましい。
【0080】
重合が終了した後は、適宜、ろ過、遠心分離、乾燥等を行ってもよい。
【0081】
被覆後のシリカ粒子の個数平均粒子径は、例えば、50nm以上であり、80nm以上であることが好ましく、より好ましくは100nm以上、更に好ましくは150nm以上、特に好ましくは200nm以上であり、また、1000nm以下であってもよく、800nm以下であることが好ましく、より好ましくは600nm以下、更に好ましくは500nm以下であり、470nm以下であってもよく、430nm以下であってもよい。なお、被覆後のシリカ粒子の個数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡像で多数の粒子の粒子径を測定した時の、算術平均(個数基準の平均値)を求めることにより決定することができる。
【0082】
被覆後のシリカ粒子は、アルカリ金属含有液で処理することによりシリカが除去され、中空樹脂粒子が形成される。以下、この工程を「シリカ除去工程」と言う場合がある。
【0083】
前記アルカリ金属含有液とは、アルカリ金属化合物と溶剤とを含む溶液を指す。アルカリ金属含有液を用いてシリカを除去することにより、シリカの一部を残存させておくことが可能となるので、強度に優れた中空樹脂粒子を製造することができる。
【0084】
前記アルカリ金属化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属酢酸塩;等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物を使用することが好ましく、水酸化カリウムが特に好ましい。アルカリ金属含有液中のアルカリ金属化合物の濃度は、5質量%以上であることがこのましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、60質量%以下であることがこのましく、より好ましくは55質量%以下である。
【0085】
前記溶剤は、アルカリ金属化合物を溶解でき、かつ樹脂層に浸透するような溶剤であれば特に限定されないが、有機溶剤や水と有機溶剤の混合溶媒が挙げられる。前記溶剤としては、水と有機溶剤との混合溶媒であることが好ましい。前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどのアルコール類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類;等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記有機溶剤としては、アルコール類であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~3のアルコールであり、特に好ましくはメタノール又はエタノールであり、最も好ましくはエタノールである。
【0086】
水と有機溶剤の質量比率は特に限定されるものではないが、10:90~90:10であることが好ましく、50:50~80:20であることがより好ましい。
【0087】
シリカ除去工程における反応温度は30℃~200℃が好ましく、より好ましくは50~100℃である。また反応時間は1~20時間であることが好ましい。
【0088】
本発明の製造方法により得られた中空樹脂粒子の外径OD、ID/OD、外殻の厚さ、樹脂組成、樹脂の架橋度、シリカ換算のケイ素分含有率、外径ODの変動係数、粗大粒子率、及び後述する潰れ評価における好ましい結果は、上記中空樹脂粒子において説明した外径OD、ID/OD、外殻の厚さ、樹脂組成、樹脂の架橋度、シリカ換算のケイ素分含有率、外径ODの変動係数、粗大粒子率、及び後述する潰れ評価における好ましい結果と同様であり、その好ましい範囲も同様である。
【0089】
[樹脂組成物]
本発明の中空樹脂粒子は、前記中空樹脂粒子とマトリックス樹脂とを含む樹脂組成物として使用することが可能である。前記マトリックス樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等を使用することができ、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。
【0090】
本発明の中空樹脂粒子は、内部中空部にケイ素分を有しており、強度に優れた中空樹脂粒子を提供することが可能である。該中空樹脂粒子及び該中空樹脂粒子を含む樹脂組成物は、断熱材、低反射材、低屈折率化材、低誘電材等の用途に有用である。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0092】
物性測定方法
各種物性の測定は以下の方法で行った。
【0093】
<シリカ粒子、表面に樹脂が被覆されたシリカ粒子の個数平均粒子径の測定>
シリカ粒子及び表面に樹脂が被覆されたシリカ粒子の個数平均粒子径は、水または溶剤に分散させた粒子分散液を採取し、1視野に含まれる粒子の数が100~300個となる測定倍率で透過型電子顕微鏡を用いて観察し、得られた5視野以上の透過型電子顕微鏡像において、電子顕微鏡画像に含まれる全粒子の粒子径(一次粒子径)の平均値として求めた。粒子径は、電子顕微鏡画像の粒子の外周の内側の面積と同じ面積になる円の直径(円相当径)を計算で求めて粒子径とした。
【0094】
<外径OD、内径ID、及び外殻の厚さの測定>
外径ODは、水または溶剤に分散させた粒子分散液を採取し、1視野に含まれる粒子の数が100~300個となる測定倍率で透過型電子顕微鏡を用いて観察し、得られた5視野以上の透過型電子顕微鏡像において、電子顕微鏡画像に含まれる全粒子の粒子径(一次粒子径)の数平均値として求めた。なお、粒子径(外径OD)は、電子顕微鏡画像の粒子の外周の内側の面積と同じ面積になる円の直径を計算で求めて外径ODとした。
また、測定粒子が中空構造を有する場合は、粒子の外殻の粒子中心側(内側)の線の内側の面積と同じ面積になる円の直径を計算で求めて内径IDとし、外径ODと同様の方法にて、その数平均値を求めた。なお、シリカ粒子が外殻の内側に溶け残っている場合には、電子顕微鏡画像において主に樹脂で形成された外殻とシリカの境界線が目視で判別可能な場合は、その境界線の内側の面積に基づいて内径IDを求めた。外殻については下記式に基づいて厚さを算出した。
外殻の厚さ(nm)=(外径OD-内径ID)/2
【0095】
<粗大粒子率の測定>
粗大粒子率は、透過型電子顕微鏡での粒子径測定データを用いることにより、下記式に基づいて算出した。
粗大粒子=数平均外径ODの1.5倍以上の外径ODを持つ粒子
粗大粒子率(%)=(粗大粒子個数/測定した全粒子個数)×100
【0096】
<外径ODの変動係数の測定>
外径ODの変動係数は、数平均外径ODと外径ODの標準偏差を用い、下記式に基づいて算出した。
外径ODの変動係数(%)=(外径ODの標準偏差/外径ODの数平均値)×100
【0097】
<シリカ換算のケイ素分含有率の測定>
中空樹脂粒子のシリカ換算のケイ素分含有率は、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス製、STA7200RV)を用い算出した。具体的には、実施例において得られた中空樹脂粒子を、100℃で1時間プレ乾燥させた。その後、試料量5mg、昇温速度20℃/分(最高到達温度900℃)、空気中(流量200mL/分)の条件で測定し、シリカ換算のケイ素分含有率を下記式に基づいて算出した。
シリカ換算のケイ素分含有率(%)=W800/W100×100
上記式中、W100はプレ乾燥後の粒子の質量、W800は800℃到達時の粒子の質量を表す。本発明の中空粒子はケイ素分として、シリカ粒子の未溶解分と、必要に応じて用いられる表面処理剤に由来するケイ素分とがあり、後者のケイ素分は800℃に加熱する事によってシリカとなると考えられるため、本段落において測定される数値をシリカ換算のケイ素分含有率と呼称する。
【0098】
<中空樹脂粒子の潰れ評価>
合成した中空樹脂粒子と、エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 エポキシ樹脂 828US)と、メチルエチルケトンとの合計10g(内、中空樹脂粒子5%、エポキシ樹脂45%、メチルエチルケトン50%)を、株式会社シンキー社製 あわとり練太郎(型式ARE-310)にて、撹拌速度2000rpm、撹拌時間5分間、脱泡時間3分間の設定で撹拌・脱泡し、中空樹脂粒子をエポキシ樹脂に分散させた。得られた分散液を、PET基板上に塗布・硬化させた後、断面作製装置(イオンミリング)を用いることで断面観察用試料を作製した。
作製した試料を、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM、日立社製「S-4800」)を用いて観察することで、エポキシ樹脂粒子中の中空樹脂粒子の形状を評価した。粒子100個あたりシェルの破損が見られないものが、95個以上であれば「〇」、95個より少ないものは「×」と評価した。
【0099】
<メタクリル処理シリカ粒子の作製>
(合成例1)
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、固形分9.7%に調整したシリカ粒子エタノール分散体(日本触媒製、シーホスターKE-E-30エタノール置換体、個数平均粒子径275nm)250.0部と、25%アンモニア水30.7部を仕込み、撹拌しながら液温を40℃に調整した。一方、滴下装置に、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、「KBM503」)16.3部を、エタノール107.7部に溶解してなる溶液を仕込んだ。そして、滴下装置から該溶液を90分間かけて滴下した後、内温を40℃で15時間保持することで、表面がメタクリル処理されたシリカ粒子を得た。反応液を冷却した後、遠心分離により固液分離し、得られたケーキをエタノールで洗浄することで、メタクリル処理シリカ粒子エタノール分散体(固形分2.5%)を得た。得られたシリカ粒子の個数平均粒子径は279nmであった。
【0100】
<樹脂被覆シリカ粒子の作製>
(製造例1)
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、合成例1により得られたメタクリル処理シリカ粒子エタノール分散体(固形分2.5%)80.0部と、イオン交換水20.0部、2、2’アゾビス(イソブチロニトリル)(富士フィルム和光純薬製)(以下、AIBN)0.28部、ポリビニルピロリドン(シグマアルドリッチ社製、重量平均分子量36万)(以下、PVP)0.95部、スチレン(以下、St)1.39部、ジビニルベンゼン(新日鉄住金化学社製「DVB960」)0.83部(内、ジビニルベンゼン(以下、DVB)96質量%、非極性単官能モノマー(エチルビニルベンゼン等)含有品4質量%)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下、HEMA)0.55部を仕込み30分間撹拌した。次いで、反応液を窒素雰囲気下で70℃に昇温させて、70℃で7時間保持することによりシード沈殿重合を行った。反応液を冷却した後、遠心分離により固液分離し、得られたケーキをエタノールで洗浄することで、表面に樹脂が被覆されたシリカ粒子エタノール分散体(固形分3.5%)を得た。得られた粒子の個数平均粒子径は410nmであった。
【0101】
(製造例2~4)
モノマー、開始剤、分散剤の種類や使用量を表1に示す通り(製造例2は実施例2の欄、製造例3比較例1の欄、製造例4は比較例2の欄に記載)に変更したこと以外は製造例1と同様にして、表面に樹脂が被覆されたシリカ粒子エタノール分散体(固形分3.5%)を得た。得られた粒子の個数平均粒子径は表1に示す通りであった。
【0102】
<中空樹脂粒子の作製>
(実施例1)
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、製造例1にて得られた、エタノール分散体(固形分3.5%)24部と50%水酸化カリウム水溶液96部を仕込み、窒素雰囲気下で70℃に昇温させて、70℃で14時間保持し、コア材(シリカ)の溶解を行うことで中空樹脂粒子を得た。得られた中空樹脂粒子の物性は表1に示す通りであった。
【0103】
(実施例2)
実施例1と同様にして、製造例2にて得られた樹脂被覆シリカ粒子のコア材の溶解を行うことで中空樹脂粒子を得た。得られた中空樹脂粒子の物性は表1に示す通りであった。
【0104】
(比較例1、2)
実施例1と同様にして、製造例3、4にて得られた樹脂被覆シリカ粒子のコア材の溶解を行ったが、コア材の溶解は確認されず、中実構造となっていた。
【0105】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の中空樹脂粒子は、内部中空部にケイ素分を有しており、強度に優れた中空樹脂粒子を提供することが可能である。該中空樹脂粒子は、断熱材、低反射材、低屈折率化材、低誘電材等の用途に有用である。