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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】無人航空機制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/46 20240101AFI20240402BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20240402BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240402BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20240402BHJP
   B64F 1/36 20240101ALI20240402BHJP
   G05D 1/69 20240101ALI20240402BHJP
【FI】
G05D1/46
B64C13/20 C
B64C39/02
B64D47/08
B64F1/36
G05D1/69
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020025134
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021131598
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-09-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省、「無人航空機の目視外飛行における周波数の有効利用技術の研究開発」に係わる委託業務、産業技術力強化第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達也
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087916(JP,A)
【文献】特開2019-023010(JP,A)
【文献】国際公開第2019/064328(WO,A1)
【文献】特開2001-244864(JP,A)
【文献】特開2012-004891(JP,A)
【文献】特開2019-169848(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108496133(CN,A)
【文献】特開2007-049373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/87
B64U 10/00-80/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無人航空機を備えた無人航空機制御システムにおいて、
事前登録された第1の飛行ルートを自動航行により移動する第1の無人航空機と、
前記第1の無人航空機の飛行を監視又は制御するための監視制御装置と、
事前登録された第2の飛行ルートを自動航行により移動する第2の無人航空機とを備え、
前記第1の飛行ルートは、前記監視制御装置との間に遮蔽物があるエリアを含む飛行ルートであり、
前記第2の飛行ルートは、前記監視制御装置から目視可能な範囲で前記第1の飛行ルート全体を見渡せるように、前記第1の無人航空機との間及び前記監視制御装置との間に遮蔽物が無いエリアのみを含む飛行ルートであり、
前記第1の無人航空機は、前記監視制御装置に対する操作者による操作に応じて離陸し、前記第1の飛行ルートに沿った自動航行により移動しながら自機の位置情報を取得して無線送信し、
前記第2の無人航空機は、前記第1の無人航空機と前記監視制御装置の間の通信を中継することが可能であり、自機の位置情報を取得して前記第1の無人航空機から送信された位置情報と比較し、前記第1の無人航空機との間の距離が所定の閾値を超えた時点で離陸し、前記第1の無人航空機の移動に伴って前記第2の飛行ルートに沿った自動航行により移動し、その際に、前記第1の無人航空機との間の距離と、前記監視制御装置との間の距離とが等しくなる方向へ移動するように制御され、さらに、前記第1の無人航空機との無線通信の受信品質と、前記監視制御装置との無線通信の受信品質とが異なる場合には、互いの受信品質が等しくなるように、受信品質が低い側の方向へ移動するように制御され
前記第1の無人航空機が無線通信に使用する周波数又は変調方式と、前記第2の無人航空機と前記監視制御装置との無線通信に使用する周波数又は変調方式とが異なり、
前記第1の無人航空機は、前記監視制御装置との無線通信が可能なエリアを移動している場合は、前記監視制御装置との間で直接の無線通信と前記第2の無人航空機を介した間接の無線通信とを行うことで無線通信回線を冗長化し、前記監視制御装置との無線通信が不可能なエリアを移動している場合は、前記監視制御装置との間で前記第2の無人航空機を介した間接の無線通信を行うことで無線通信エリアを実質的に拡張することを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無人航空機制御システムにおいて、
前記第2の無人航空機は、前記第2の飛行ルートに沿った自動航行中に前記第1の無人航空機を被写体とした動画を撮影し、撮影データを前記監視制御装置へ無線送信し、
前記監視制御装置は、前記第2の無人航空機から受信した撮影データを表示することを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項3】
請求項1に記載の無人航空機制御システムにおいて、
前記第1の無人航空機は、前記第1の飛行ルートに沿った自動航行中にセンシングデータを取得して、直接の無線通信または前記第2の無人航空機を介した間接の無線通信により前記監視制御装置へ送信し
前記監視制御装置は、前記第1の無人航空機から受信したセンシングデータを表示することを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無人航空機制御システムにおいて、
前記監視制御装置は、操作者による操作に応じて、前記第1の飛行ルートに沿った前記第1の無人航空機の自動航行に対して強制的に操作介入することが可能であり、さらに、操作者による操作に応じて、前記第2の飛行ルートに沿った前記第2の無人航空機の自動航行に対して強制的に操作介入することが可能であることを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項5】
請求項1に記載の無人航空機制御システムにおいて、
前記第1の無人航空機は、前記第1の飛行ルートに沿った自動航行中に第1の撮影データを取得して、直接の無線通信または前記第2の無人航空機を介した間接の無線通信により自機の位置情報とともに前記監視制御装置へ送信し、
前記第2の無人航空機は、前記第2の飛行ルートに沿った自動航行中に前記第1の無人航空機を被写体とした第2の撮影データを取得して、自機の位置情報とともに前記監視制御装置へ無線送信し、
前記監視制御装置は、前記第1の無人航空機から受信した前記第1の無人航空機の位置情報および前記第1の撮影データを表示すると共に、前記第2の無人航空機から受信した前記第2の無人航空機の位置情報および前記第2の撮影データを表示することを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の無人航空機制御システムにおいて、
前記監視制御装置は、自装置のモニターの表示領域を複数のウインドウに分割して、前記第1の撮影データと前記第2の撮影データとを別々のウインドウに表示し、または、前記第1の撮影データと前記第2の撮影データとを切り替え表示することを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項7】
請求項5に記載の無人航空機制御システムにおいて、
前記監視制御装置は、前記第1の無人航空機の位置情報および前記第2の無人航空機の位置情報を地図上に表示することを特徴とする無人航空機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機を無線により制御する無人航空機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のロボット技術の進展は実に目覚しく、様々な社会課題の解決にロボットが利用されることも多くなっている。このようなロボットの多くは、無人航空機や自律運転車両等の無人移動体である。無人移動体は、遠隔操縦や自律制御のための制御指令データや、無人移動体に搭載したカメラ等で撮影した映像データを伝送するために、通信システムを具備する必要がある。このとき、無人移動体がレール等に沿った所定の経路を移動する機械でない場合には、移動に適した無線通信が利用されることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、移動基地局と端末局が、近距離通信を準備するための長距離通信機能と、データ伝送用の近距離通信機能を備え、長距離通信機能を用いた通信により、近距離通信を行うタイミングをスケジューリングする発明が開示されている。また、特許文献2には、無人飛行体を用いた中継システムにおいて、中継の通信品質、予定の中継時間、無人飛行体の電源の状態(電力供給可能量)に基づいて、無人飛行体の中継位置を探索する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/018021号
【文献】特開2019-169848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無人航空機は、空撮、農薬散布、工事現場での測量、橋梁の点検、遭難者の捜索、物資輸送など、様々な用途で利用されている。無人航空機の飛行について、航空機の航行の安全、並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれないように、様々な基準が設けられている。例えば、安全を確保するために必要な体制に関する基準として、飛行させようとする経路及びその周辺の障害物件等を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること、飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと等の基準が設けられている。
【0006】
また、無人航空機を直接肉眼で確認できない状態で飛行(いわゆる「目視外飛行」)させる場合には、直接肉眼で確認できる状態で飛行(いわゆる「目視内飛行」)させる場合よりも厳しい基準に適合させる必要がある。目視外飛行を行う場合の基準としては、例えば、無人航空機の機体に関して以下のような基準が設けられている。
(a)自動操縦システムを装備し、機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できること。
(b)地上において、無人航空機の位置及び異常の有無を把握できること(不具合発生時に不時着した場合を含む。)
(c)不具合発生時に危機回避機能(フェールセーフ機能)が正常に動作すること。
【0007】
しかしながら、無人航空機の目視外飛行において、飛行経路全体を見渡せる位置に補助者を容易に配置できないケースがある。例えば、森林の上空で目視外飛行を行う場合は、地上からは上空が樹木に遮られてしまうので、上空を飛行する無人航空機及び周辺の状況を監視することができない。また、大型の橋梁を目視外飛行で点検する場合は、陸上からでは橋梁の下部や橋脚の裏側が死角になる。このため、飛行経路全体を見渡せる位置に補助者を配置するには、船をチャーターしたり、より多くの補助者を配置したりする必要があり、手間やコストが大きくなるという問題がある。また、目視外飛行を行う無人航空機の経路によっては、自由空間損失に加えて遮蔽損失が増大する可能性があり、監視及び制御を行うためのデータの無線伝送を安定した環境下で行えない恐れがある。
【0008】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、無人航空機を目視外飛行させる場合であっても、補助者なしで又は補助者を最小限に抑えながら、無人航空機の飛行を監視または制御することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、無人航空機制御システム及び監視制御装置を以下のように構成した。
すなわち、本発明の第1の側面では、複数の無人航空機を備えた無人航空機制御システムにおいて、所定のルートを飛行する第1の無人航空機と、第1の無人航空機の飛行を監視又は制御するための監視制御装置と、第1の無人航空機との間及び監視制御装置との間に遮蔽物が無いエリアを飛行する第2の無人航空機とを備え、第2の無人航空機は、第1の無人航空機を被写体とした動画を撮影し、撮影データを監視制御装置へ無線送信し、監視制御装置は、第2の無人航空機から受信した撮影データを表示することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の側面では、複数の無人航空機を備えた無人航空機制御システムにおいて、所定のルートを飛行する第1の無人航空機と、第1の無人航空機の飛行を監視又は制御するための監視制御装置と、第1の無人航空機との間及び監視制御装置との間に遮蔽物が無いエリアを飛行する第2の無人航空機とを備え、第2の無人航空機は、第1の無人航空機と監視制御装置の間の通信を中継することを特徴とする。
【0011】
ここで、第1の無人航空機は、飛行中にセンシングデータ(撮影データを含む)を取得して無線送信し、第2の無人航空機は、第1の無人航空機から受信したセンシングデータを監視制御装置へ無線送信し、監視制御装置は、第1の無人航空機から第2の無人航空機を介して受信したセンシングデータを表示する構成であってもよい。
【0012】
また、監視制御装置は、第1の無人航空機の動作を制御する制御信号を無線送信し、第2の無人航空機は、監視制御装置から受信した制御信号を第1の無人航空機へ無線送信し、第1の無人航空機は、監視制御装置から第2の無人航空機を介して受信した制御信号に基づいて動作する構成であってもよい。
【0013】
また、第1の無人航空機が無線通信に使用する周波数又は変調方式と、第2の無人航空機と監視制御装置との無線通信に使用する周波数又は変調方式が異なる構成であってもよい。
【0014】
また、第2の無人航空機は、第1の無人航空機との間の距離と、監視制御装置との間の距離とが等しくなる方向に移動する構成であってもよい。
【0015】
また、第2の無人航空機は、第1の無人航空機との無線通信の受信品質と、監視制御装置との無線通信の受信品質とが等しくなる方向に移動する構成であってもよい。
【0016】
また、第1の無人航空機は、飛行中にセンシングデータを取得して無線送信し、第2の無人航空機は、第1の無人航空機を被写体とした動画を撮影し、第1の無人航空機から受信したセンシングデータと共に撮影により得られた撮影データを監視制御装置へ無線送信し、監視制御装置は、第1の無人航空機から第2の無人航空機を介して受信したセンシングデータを表示すると共に、第2の無人航空機から受信した撮影データを表示する構成であってもよい。
【0017】
本発明の第3の側面では、無人航空機の飛行を監視又は制御するための監視制御装置において、無人航空機との無線通信、及び、無人航空機を被写体とした動画を撮影する別の無人航空機との無線通信を行うためのアンテナと、別の無人航空機からアンテナにより受信したデータを表示するモニターと、操作者による操作に応じて、無人航空機の動作を制御する制御信号を発生させる無人航空機制御部とを備え、制御信号を、無人航空機との直接の無線通信、又は、別の無人航空機を介した間接の無線通信のいずれか一方もしくは両方により無人航空機へ送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無人航空機を目視外飛行させる場合であっても、補助者なしで又は補助者を最小限に抑えながら、無人航空機の飛行を監視または制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る無人航空機制御システムの概略的な構成を示すブロック図である。
図2図1における目視外飛行サブシステムの構成例を示すブロック図である。
図3図1における目視内飛行サブシステムの構成例を示すブロック図である。
図4図1における遠隔制御・監視サブシステムの構成例を示すブロック図である。
図5図1の無人航空機制御システムによる制御動作の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無人航空機制御システムの概略的な構成を示してある。図1に示すように、無人航空機制御システム1は、目視外飛行を行う無人航空機を含む目視外飛行サブシステム10と、目視内飛行を行う無人航空機を含む目視内飛行サブシステム20と、無人航空機の遠隔的な制御及び監視を行う遠隔制御・監視サブシステム30とを備える。
【0021】
目視外飛行サブシステム10は、図2に構成例を示すように、アンテナ101と、RF部102と、送信ベースバンド(BB)信号処理部103と、受信ベースバンド(BB)信号処理部104と、主制御部105と、GNSS(Global Navigation Satellite System;全球測位衛星システム)受信機106と、ビデオカメラ107と、フライト制御部108とを搭載した、無人航空機100として構成される。以下の説明において、無人航空機100は目視外飛行サブシステム10と実質的に同義であり、用語の使い分けに特段の意図があるわけではない。
【0022】
アンテナ101は、電波の送信及び受信を行う。RF部102は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換、無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換、信号増幅等の処理を行う。送信BB信号処理部103は、誤り訂正符号化、変調等の処理を行う。受信BB信号処理部104は、復調、誤り訂正復号等の処理を行う。主制御部105は、データの管理や制御等を行う。GNSS受信機106は、無人航空機100の位置を検出する。ビデオカメラ107は、ビデオ動画を撮影する。フライト制御部108は、無人航空機100の飛行を制御(すなわち、姿勢、進行方向、飛行速度等を制御)する。
【0023】
目視内飛行サブシステム20は、図3に構成例を示すように、アンテナ201と、RF部202と、送信ベースバンド(BB)信号処理部203と、受信ベースバンド(BB)信号処理部204と、主制御部205と、GNSS受信機206と、ビデオカメラ207と、フライト制御部208とを搭載した、無人航空機200として構成される。以下の説明において、無人航空機200は目視内飛行サブシステム20と実質的に同義であり、用語の使い分けに特段の意図があるわけではない。
【0024】
アンテナ201は、電波の送信及び受信を行う。RF部202は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換、無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換、信号増幅等の処理を行う。送信BB信号処理部203は、誤り訂正符号化、変調等の処理を行う。受信BB信号処理部204は、復調、誤り訂正復号等の処理を行う。主制御部205は、データの管理や制御等を行う。GNSS受信機206は、無人航空機200の位置を検出する。ビデオカメラ207は、ビデオ動画を撮影する。フライト制御部208は、無人航空機200の飛行を制御(すなわち、姿勢、進行方向、飛行速度等を制御)する。
【0025】
遠隔制御・監視サブシステム30は、図4に構成例を示すように、アンテナ301と、RF部302と、送信ベースバンド(BB)信号処理部303と、受信ベースバンド(BB)信号処理部304と、主制御部305と、GNSS受信機306と、モニター307と、インターフェース部308と、無人航空機制御部309とを備えた、監視制御装置300として構成される。以下の説明において、監視制御装置300は遠隔制御・監視サブシステム30と実質的に同義であり、用語の使い分けに特段の意図があるわけではない。
【0026】
アンテナ301は、電波の送信及び受信を行う。RF部302は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換、無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換、信号増幅等の処理を行う。送信BB信号処理部303は、誤り訂正符号化、変調等の処理を行う。受信BB信号処理部304は、復調、誤り訂正復号等の処理を行う。主制御部305は、データの管理や制御等を行う。GNSS受信機306は、監視制御装置300の位置を検出する。モニター307は、無人航空機100,200で撮影されたビデオ動画や無人航空機100,200の位置などを表示する。インターフェース部308は、プロポ(コントローラ)等の無人航空機制御部309を接続する。無人航空機制御部309は、操作者から受け付けた操作に応じて、無人航空機100の動作を制御するための制御信号を発生させる。
【0027】
監視制御装置300は、無人航空機100と無人航空機200の双方と無線通信することができる。また、監視制御装置300は、無人航空機100との直接の無線通信だけでなく、無人航空機200を介した間接の無線通信を行うこともできる。なお、無人航空機100が無線通信に使用する周波数及び変調方式と、無人航空機200と監視制御装置300との無線通信に使用する周波数及び変調方式とが、互いに異なるものとする。これは、両者の周波数及び変調方式が同じだと、電波干渉により通信障害が発生するおそれがあるので、これを防ぐためである。なお、本例では、周波数と変調方式の両方を互いに異ならせているが、その一方だけを異ならせるようにしても構わない。
【0028】
以下、本例の無人航空機制御システムにおける目視外飛行時の動作について、図2図3図4図5を用いて説明する。
ここで、図5に示すように、無人航空機100は、監視制御装置300を設置した場所からは樹木に遮られて目視することができない森林の上空を移動するものとする。一方、無人航空機200は、監視制御装置300を設置した場所から目視できる範囲内で上空を移動するものとする。すなわち、無人航空機200は、監視制御装置300との間に遮蔽物が無いエリアのみを飛行する一方で、無人航空機100は、監視制御装置300との間に遮蔽物があるエリアも飛行する。
【0029】
また、無人航空機100が移動する経路は、目視外自動飛行ルートとして、無人航空機100に事前登録されているものとする。同様に、無人航空機200には、監視制御装置300から目視可能な範囲で目視外自動飛行ルート全体を見渡せるように考慮された目視内自動飛行ルートが、事前登録されているものとする。すなわち、目視内自動飛行ルートとして、無人航空機200が無人航空機100との間及び監視制御装置300との間に遮蔽物の無いエリアの飛行を維持できるようなルートが設定されている。
【0030】
まず、監視制御装置300において、操作者が無人航空機100の離陸を開始させる操作を行うと、無人航空機制御部309から離陸開始の制御信号が発生される。離陸開始の制御信号は、インターフェース部308を介して主制御部305に入力される。主制御部305は、入力された離陸開始の制御信号を、GNSS受信機306から取得した監視制御装置300の位置情報とともに、送信データとして送信BB信号処理部303に出力する。送信BB信号処理部303は、これらの送信データに対して符号化及び変調を行って、送信信号を生成する。生成された送信信号は、RF部302により無線周波数帯への周波数変換及び増幅が行われた後、アンテナ301から電波として発射される。
【0031】
無人航空機100において、監視制御装置300からの電波がアンテナ101で受信されると、その受信信号がRF部102によりベースバンドへの周波数変換及び増幅されて、受信BB信号処理部104に出力される。受信BB信号処理部104は、入力された信号に対して復調及び復号を行って、送信データを復元する。主制御部105は、復元された送信データから離陸開始の制御信号を抽出し、フライト制御部108に送信する。フライト制御部108は、離陸開始の制御信号に従って、無人航空機100の離陸を開始させる。
【0032】
このとき、無人航空機200においても、監視制御装置300からの電波がアンテナ201で受信され、その受信信号がRF部202によりベースバンドへの周波数変換及び増幅されて、受信BB信号処理部204に出力される。受信BB信号処理部204は、入力された信号に対して復調及び復号を行って、送信データを復元する。主制御部105は、復元された送信データから監視制御装置300の位置情報を抽出し、メモリに記憶しておく。
【0033】
次に、無人航空機100において、フライト制御部108は、主制御部105を介してGNSS受信機106から取得した無人航空機100の位置情報に基づいて、事前登録された目視外自動飛行ルートに沿って無人航空機100を移動させる。また、主制御部105は、無人航空機100の位置情報とともに、ビデオカメラ107による撮影データを、送信BB信号処理部103に随時転送する。これらの送信データは、送信BB信号処理部103により符号化及び変調が行われた後、RF部102により無線周波数帯への周波数変換及び増幅が行われて、アンテナ101から電波として発射される。
【0034】
無人航空機200において、無人航空機100からの電波がアンテナ201で受信されると、RF部202によりベースバンドへの周波数変換及び増幅が行われた後、受信BB信号処理部204により復調及び復号が行われ、送信データが復元される。主制御部205は、復元された送信データから無人航空機100の位置情報を抽出し、GNSS受信機206から取得した無人航空機200の位置情報と比較する。そして、主制御部205は、無人航空機100と無人航空機200の離間距離が所定の閾値を超えたことを検出した時点で、離陸を開始する制御信号を発生させて、フライト制御部208に送信する。フライト制御部208は、離陸開始の制御信号に従って、無人航空機200の離陸を開始させる。その後、フライト制御部208は、主制御部205を介してGNSS受信機206から取得した無人航空機200の位置情報に基づいて、事前登録された目視内自動飛行ルートに沿って無人航空機200を移動させる。
【0035】
また、主制御部205は、無人航空機200の位置情報とともに、ビデオカメラ207による撮影データを、送信BB信号処理部203に随時転送する。なお、ビデオカメラ207は、無人航空機100の位置情報に基づいて、無人航空機100及びその周辺のリアルタイム映像を撮影するように制御される。つまり、ビデオカメラ207による撮影データは、無人航空機100を被写体とした動画データである。これらの送信データは、送信BB信号処理部203により符号化及び変調が行われた後、RF部202により無線周波数帯への周波数変換及び増幅が行われて、アンテナ201から電波として発射される。
【0036】
監視制御装置300において、無人航空機100からの電波がアンテナ301で受信されると、RF部302によりベースバンドへの周波数変換及び増幅が行われた後、受信BB信号処理部304により復調及び復号が行われ、送信データが復元される。主制御部305は、復元された送信データから無人航空機100の位置情報及び撮影データを抽出し、これらをモニター307に表示させる。
【0037】
同様に、監視制御装置300において、無人航空機200からの電波がアンテナ301で受信されると、RF部302によりベースバンドへの周波数変換及び増幅が行われた後、受信BB信号処理部304により復調及び復号が行われ、送信データが復元される。主制御部305は、復元された送信データから無人航空機200の位置情報及び撮影データを抽出し、これらをモニター307に表示させる。
【0038】
なお、本例では、モニター307が1台で構成されているため、モニター307の表示領域を複数のウインドウに分割し、無人航空機100から得たデータと無人航空機200から得たデータとを別々のウインドウに表示している。なお、操作者の指示に応じて、無人航空機100から得たデータの表示と無人航空機200から得たデータの表示とを切り替えるようにしてもよい。また、モニター307を複数台にして、これらのデータを別々のモニター307に表示してもよい。また、位置情報の表示は、無人航空機100及び無人航空機200の位置を地図上に表示する方式が視覚的に分かり易いが、他の表示方式であってもよい。例えば、無人航空機100と監視制御装置300の間の距離、無人航空機200と監視制御装置300の間の距離、無人航空機100と無人航空機200の間の距離などを、テキストで表示する方式であってもよい。
【0039】
以降、無人航空機200のフライト制御部208において、無人航空機100から受信した無人航空機100の位置情報と、GNSS受信機206から取得した無人航空機200の位置情報と、主制御部205に記録された監視制御装置300の位置情報とを比較する。そして、フライト制御部208は、無人航空機100と無人航空機200の間の距離と、無人航空機200と監視制御装置300の間の距離が等しくなる方向に、無人航空機200を移動させるよう制御する。すなわち、無人航空機100が遠方に移動しても、監視制御装置300を設置した場所から目視可能なエリア内で、無人航空機200が無人航空機100を追尾させる。これにより、無人航空機100及びその周辺をビデオカメラ207で捉えやすい位置に、無人航空機200を維持することが可能となる。なお、ビデオカメラ207のズーム性能に応じて、無人航空機100側又は監視制御装置300にシフトした位置に、無人航空機200を移動させてもよい。
【0040】
また、本例の無人航空機制御システムでは、無人航空機100と監視制御装置300の間で直接の無線通信を行うが、無人航空機200により通信を中継することもできる。このため、無人航空機100は、監視制御装置300との無線通信が可能なエリア(又は無線通信の品質が良好なエリア)を飛行している場合は、監視制御装置300との直接の無線通信と、無人航空機200を介した間接の無線通信とを行うことができる。つまり、無線通信回線の冗長化を実現することができる。また、無人航空機100は、監視制御装置300との無線通信が不可能なエリア(又は無線通信の品質が悪いエリア)を飛行している場合には、無人航空機200を介して監視制御装置300との無線通信を間接的に行うことができる。また、無線通信エリアを実質的に拡大することができる。
【0041】
なお、各サブシステム(無人航空機100、無人航空機200、監視制御装置300)において被干渉レベルが同一とは限らないため、各サブシステムで受信品質を測定し、サブシステム間の受信品質が等しくなるように制御してもよい。すなわち、例えば、無人航空機100と無人航空機200との間の受信品質が無人航空機200と監視制御装置300との間の受信品質よりも低ければ、無人航空機100に近づく方向へ無人航空機200を移動させて、それぞれの無線回線の受信品質が均一になるように制御する構成であってもよい。また、本例では、無人航空機200が移動する目視内自動飛行ルートは線状に指定されているが、目視が可能な空間内を自動で飛行する構成であってもよい。
【0042】
更に、監視制御装置300は、操作者による操作に応じて、目視外自動飛行ルートに沿って飛行中の無人航空機100の動作を制御してもよい。すなわち、無人航空機100の自動航行に対して、強制的に操作介入できるようにしてもよい。このとき、無人航空機100に対する制御信号は、無人航空機100との直接の無線通信、又は、無人航空機200を介した間接の無線通信の一方もしくは両方により、無人航空機100へ送信される。また、監視制御装置300は、操作者による操作に応じて、目視内自動飛行ルートに沿って飛行中の無人航空機200の動作も制御できるようにしてもよい。すなわち、無人航空機200の自動航行に対しても、強制的に操作介入できるようにしてもよい。
【0043】
以上のように、本例の無人航空機制御システムは、目視外自動飛行ルートを飛行する無人航空機100と、無人航空機100の飛行を監視又は制御するための監視制御装置300と、無人航空機100との間及び監視制御装置300との間に遮蔽物が無いエリアを飛行する無人航空機200とを備える。無人航空機200は、無人航空機100を被写体とした動画を撮影し、撮影データを監視制御装置300へ無線送信し、監視制御装置300は、無人航空機200から受信した撮影データを表示する。
【0044】
このような構成によれば、無人航空機100を地上の監視制御装置300から確認できない場合であっても、上空の適切な場所から無人航空機200が無人航空機100及び周辺の様子を撮影して、監視制御装置300に表示させることができる。したがって、無人航空機100の飛行状況や周囲の気象状況の変化等の監視を、補助者なしで又は補助者を最小限に抑えながら実現することができる。また、飛行経路全体を見渡せる位置に補助者を配置できない場合や、安全の確保が可能な場所に補助者を配置できない場合でも、支障なく無人航空機100の飛行を監視することができる。
【0045】
また、本例の無人航空機制御システムでは、無人航空機200は、無人航空機100及び監視制御装置300の双方と無線通信が可能なエリアを飛行して、無人航空機100と監視制御装置300の間の通信を中継する。より具体的には、無人航空機100は、飛行中に動画を撮影して得られた撮影データを無線送信し、無人航空機200は、無人航空機100から受信した撮影データを監視制御装置300へ無線送信し、監視制御装置300は、無人航空機100から無人航空機200を介して受信した撮影データを表示する。また、監視制御装置300は、無人航空機100の動作を制御する制御信号を無線送信し、無人航空機200は、監視制御装置300から受信した制御信号を無人航空機100へ無線送信し、無人航空機100は、監視制御装置300から無人航空機200を介して受信した制御信号に基づいて動作する。
【0046】
このような構成によれば、監視制御装置300が無人航空機100と直接の無線通信を行えない場合であっても、無人航空機200を介して間接的に無人航空機100との無線通信を行うことができる。したがって、自由空間損失や遮蔽損失による無線通信回線の品質の低下を抑えることができるので、無人航空機100の飛行の制御や無人航空機100による撮影データの確認などを安定した通信環境下で実施することが可能となる。なお、無人航空機100に各種のセンサを搭載しておき、そのセンサにより得られたデータ(例えば、温度や湿度等)を、監視制御装置300に対して直接又は間接の無線通信により送信してもよい。
【0047】
また、本例の監視制御装置300は、無人航空機100との無線通信、及び、無人航空機100を被写体とした動画を撮影する無人航空機200との無線通信を行うためのアンテナ301と、無人航空機200からアンテナ301により受信したデータを表示するモニター307と、操作者による操作に応じて、無人航空機100の動作を制御する制御信号を発生させる無人航空機制御部308とを備え、制御信号を、無人航空機100との直接の無線通信、又は、無人航空機200を介した間接の無線通信のいずれか一方又は両方により無人航空機100へ送信する。
【0048】
このような構成によれば、監視制御装置300の操作者は、無人航空機100を目視外飛行させる場合であっても、無人航空機200により撮影された無人航空機100の映像を見ながら、無人航空機100の飛行を制御することができる。また、無人航空機100が監視制御装置300の無線通信エリアから外れた場合でも、無人航空機200を介した間接的な無線通信により、無人航空機100の飛行の制御を安定的に継続することができる。
【0049】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された無人航空機制御システムに限定されるものではなく、他の無人航空機制御システムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0050】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、無人航空機を無線により制御する無人航空機制御システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:無人航空機制御システム、 10:目視外飛行サブシステム、 20:目視内飛行サブシステム、 30:遠隔制御・監視サブシステム、 100:無人航空機、 101:アンテナ、 102:RF部、 103:送信BB信号処理部、 104:受信BB信号処理部、 105:主制御部、 106:GNSS受信機、 107:ビデオカメラ、 108:フライト制御部、 200:無人航空機、 201:アンテナ、 202:RF部、 203:送信BB信号処理部、 204:受信BB信号処理部、 205:主制御部、 206:GNSS受信機、 207:ビデオカメラ、 208:フライト制御部、 300:監視制御装置、 301:アンテナ、 302:RF部、 303:送信BB信号処理部、 304:受信BB信号処理部、 305:主制御部、 306:GNSS受信機、 307:モニター、 308:インターフェース部、 309:無人航空機制御部
図1
図2
図3
図4
図5