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特許7464411活性エネルギー線硬化型建材塗料、及び得られた化粧シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型建材塗料、及び得られた化粧シート
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20240402BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240402BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240402BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20240402BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20240402BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20240402BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/00 Z
C09D7/62
C09D175/14
C09D4/02
B05D3/06 Z
B05D7/24 301T
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020038793
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021138868
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】奥平 匠
(72)【発明者】
【氏名】福島 利雄
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-011419(JP,A)
【文献】特開2005-075835(JP,A)
【文献】特開2018-184583(JP,A)
【文献】特開2015-227437(JP,A)
【文献】特開2003-136646(JP,A)
【文献】特開2016-172835(JP,A)
【文献】特開2016-121350(JP,A)
【文献】特開昭63-151387(JP,A)
【文献】特表2018-506636(JP,A)
【文献】特開2017-100435(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03381683(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/00
C09D 5/00
C09D 7/62
C09D 175/14
C09D 4/02
B05D 3/06
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重結合当量が100~750g/molの(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂、及び平均粒子径が0.5~500nmのハイドロゲンジメチコン処理された酸化亜鉛を含有する事を特徴とする活性エネルギー線硬化型建材塗料。
【請求項2】
前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型建材塗料。
【請求項3】
前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が40~130℃の範囲であり、水酸基価が5~300mgKOH/gである請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型建材塗料。
【請求項4】
前記酸化亜鉛の含有量が、前記活性エネルギー線硬化建材塗料の全固形分の1~50質量%である請求項1~3のいずれかにに記載の活性エネルギー線硬化型建材塗料。
【請求項5】
更に、アクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含有する請求項1~のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型建材塗料。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型建材塗料を使用した化粧シート。
【請求項7】
建材用基材上に、活性エネルギー線硬化型皮膜を有する塗装建材の製造方法であって、請求項1~のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型建材塗料を建材用基材に塗布する工程と、活性エネルギー線を照射する工程とを有することを特徴とする塗装建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線により劣化する事なく、紫外線硬化性、耐候性に優れる活性エネルギー線硬化型建材塗料、及び該活性エネルギー線硬化型建材塗料を用いた化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より住宅等の建築物内部における家具・床材等において化粧シートが多く用いられており、その表層は保護や美装を目的として各種塗装が行われている。化粧シートは木材等の部材と張り合わせ、表面を加飾するための印刷物の総称である。
建材内装分野では、家具、壁、天井、床に至るまで、化粧シートの高い意匠性、加工性の良さ、コスト安・小ロット対応可能による経済性の観点から、いわゆる塗装からシート化へ置き換えが進んでいる。
更に近年では、内装分野においても窓から差し込む太陽光、特に紫外線による劣化防止のために耐候性が求められるようになってきた。また、今後は内装分野に留まらず、外装用途にも用いることが可能な高耐候性のある化粧シートの開発も求められつつある。
【0003】
従来建材塗料としては、耐候性を付与すべく使用する印刷インキには添加剤として、有機系のトリアジン系紫外線吸収剤(UVA)やヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が用いられてきた(例えば、引用文献1,2)。
前記有機系のトリアジン系紫外線吸収剤(UVA)は紫外線を吸収して熱エネルギーに変換することで塗膜を保護するための添加剤である。また、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は紫外線によって発生したラジカルを捕捉し、樹脂や塗膜の劣化を防止するための添加剤であり、これら添加剤の種類や含有量を変えることで効率良く紫外線による劣化を防ぐことが可能となるものである。
しかしながら、建材塗料として活性エネルギー線硬化性樹脂を使用する場合、紫外線吸収剤は紫外線を吸収してしまうため、硬化阻害を生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-203866号公報
【文献】特開2012-136647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、紫外線により劣化する事なく、紫外線硬化性、耐候性に優れる活性エネルギー線硬化型建材塗料、及び該活性エネルギー線硬化型建材塗料を用いた化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、二重結合当量が100~750g/molの(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂、及び金属酸化物を含有する事を特徴とする活性エネルギー線硬化型建材塗料に関する。
【0007】
また本発明は、前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の重量平均分子量が10,000~100,000である活性エネルギー線硬化型建材塗料に関する。
【0008】
また本発明は、前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)が40~130℃の範囲であり、水酸基価が5~300mgKOH/gである活性エネルギー線硬化型建材塗料に関する。
【0009】
また本発明は、前記金属酸化物が、平均粒子径が0.5~500nmの酸化亜鉛である活性エネルギー線硬化型建材塗料に関する。
【0010】
また本発明は、前記酸化亜鉛の含有量が、前記活性エネルギー線硬化建材塗料の全固形分の1~50質量%である活性エネルギー線硬化型建材塗料に関する。
【0011】
また本発明は、更に、アクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含有する活性エネルギー線硬化型建材塗料に関する。
【0012】
また本発明は、該活性エネルギー線硬化型建材塗料を使用した化粧シートに関する。
【0013】
また本発明は、建材用基材上に、活性エネルギー線硬化型皮膜を有する塗装建材の製造方法であって、該活性エネルギー線硬化型建材塗料を建材用基材に塗布する工程と、活性エネルギー線を照射する工程とを有することを特徴とする塗装建材の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料により、紫外線により劣化する事なく、紫外線硬化性、耐候性に優れる事から、該活性エネルギー線硬化型建材塗料を用いた化粧シートを提供する事が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料としては、二重結合当量が100~750g/molの(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂、及び金属酸化物を含有する事を特徴とする。
【0016】
本発明で使用する(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂は、特に限定はなく公知の方法で得たアクリル系樹脂を使用することができる。
具体的には例えば、予め前記共重合成分としてアクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有重合性単量体や、ジメチルアミノエチルメタクリレートやジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノ基含有重合性単量体を配合し共重合させ、カルボキシル基やアミノ基を有する前記共重合体を得、次に該カルボキシル基やアミノ基と、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基及び(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法、予め前記共重合成分として2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有単量体を配合し共重合させ、水酸基を有する前記共重合体を得、次に該水酸基と、イソシアネートエチルメタクリレートの等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法、予め前記共重合成分としてグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有重合性単量体を配合し共重合させ、グリシジル基を有する前記共重合体を得、次にグリシジル基と、アクリル酸やメタクリル酸のカルボキシル基含有重合性単量体を反応させる方法、重合の際にチオグリコール酸を連鎖移動剤として使用して共重合体末端にカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基に、グリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法、重合開始剤として、アゾビスシアノペンタン酸の等のカルボキシル基含有アゾ開始剤を使用して共重合体にカルボキシル基を導入し、該カルボキシル基にグリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法等が挙げられる。
【0017】
中でも、アクリル酸やメタクリル酸等のカルボキシル基含有単量体あるいはジメチルアミノエチルメタクリレートやジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミノ基含有単量体を共重合しておき、そのカルボキシル基あるいはアミノ基とグリシジルメタクリレートの等のグリシジル基と(メタ)アクリロイル基を有する単量体を反応させる方法、あるいは、予め前記共重合成分としてグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有重合性単量体を配合し共重合させ、グリシジル基を有する前記共重合体を得、次にグリシジル基と、アクリル酸やメタクリル酸のカルボキシル基含有重合性単量体を反応させる方法が最も簡便であり好ましい。
【0018】
本発明で使用する(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルプロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の二重結合当量は、100~750g/molの範囲を必須とする。前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の二重結合当量が100g/molを下回ると硬化時の体積収縮が大きく、塗膜の湾曲や歪みによる割れが生じる可能性と、密な架橋による加工性の低下が発生する傾向となる。また750g/molを上回ると反応性基が足りず反応後の硬度等の物性が十分にでない傾向にあり、200~400g/molの範囲であればより好ましく、200~300g/molの範囲であれば更に好ましい。
尚、前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の二重結合当量は、下記式で定義される。
「二重結合当量」=「(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂1分子の分子量」/「二重結合の数」
【0020】
また、前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の重量平均分子量は、10,000~100,000の範囲であることが好ましい。前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の重量平均分子量が10,000以上であれば、塗膜にタックが残り難く、乾燥工程のみでのタックフリー化が容易になり、また100,000を以下であれば活性エネルギー線硬化型建材塗料の粘度が高くなり過ぎる事もなく、塗工時の希釈が効きすぎて十分な塗布量が得られない問題も回避する事ができる。また、作業性の観点から10,000~50,000であればより好ましく、10,000~30,000の範囲であれば更に好ましい。
前記重量平均分子量とは、GPCによるポリスチレン換算の測定によるものである。
【0021】
更に、前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40~130℃の範囲である事が好ましく、40℃以上であれば塗膜にした際に硬化後十分な強度が得る事ができ、また130℃以下であれば塗膜にした際に脆さが現れ加工性が低下する傾向も抑制できる。また前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の水酸基価は5~300mgKOH/gの範囲である事が好ましく、5mgKOH/g以上であれば、例えば湿式シリカ等の艶消し剤を併用した場合の分散が低下する事なく低光沢化が保持し易い傾向となり、また300mgKOH/g以下であれば耐汚染性が低下する傾向が抑制できる。
前記ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差走査熱量計を用い、窒素雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲-80~450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を行う事で行ったものである。
【0022】
尚、前記(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の含有量は、活性エネルギー線硬化型建材塗料中の固形分全量の20~85質量%である事が塗布面の好適な被覆性、硬化性の点から好ましく、25~80質量%の範囲であればより好ましい。
【0023】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料で用いる金属酸化物について説明する。前記金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化マンガン、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。中でも酸化亜鉛が好ましい。
【0024】
更に本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料で使用する酸化亜鉛の平均粒子径としては、0.5~500nmのものが好ましく、1~200nmのものがより好ましく、最も好ましくは10~100nmのものを使用できる。前記酸化亜鉛は表面が未処理のものと比較して「ハイドロゲンジメチコン処理」された酸化亜鉛の方が、紫外線を吸収した後に発生するラジカルを、表面処理層より外に出さないことにより、有機塗膜部分へのラジカル攻撃を軽減でき、耐候性は向上する傾向にある。
酸化亜鉛をハイドロゲンジメチコン処理する場合、無処理の酸化亜鉛に対して直にハイドロゲンジメチコン処理したものと、粒子の不活性化を目的に酸化亜鉛粒子表面に高密度シリカ層をコーティングすることで、粒子表面を一旦高密度シリカで覆った上で、更にハイドロゲンジメチコン処理したものに大別できるが、本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料で使用する酸化亜鉛としては、前者の無処理の酸化亜鉛に対して直にハイドロゲンジメチコン処理したものがより好ましい。その理由としては、後者の酸化亜鉛粒子表面を高密度シリカ層で覆い不活性化させ、酸化亜鉛の凝集力を弱める手法では、前記高密度シリカ層が含水性シリカであるため、本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料で欲する疎水性を妨げ、混合する樹脂成分や溶剤との高分散性が低下する傾向にあることが挙げられる。
また、前記した無処理の酸化亜鉛に対して直にハイドロゲンジメチコン処理する場合、酸化亜鉛粒子表面を均一に且つ完全にシリコーンが覆い尽くし、粒子を粉砕しても活性面が露出しない湿式処理よりも、酸化亜鉛粒子表面の一部が露出し、活性面が露出した乾式処理をしたものの方が結果的に活性エネルギー線硬化型建材塗料の分散性が向上しより好ましい。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料で使用する酸化亜鉛に施すハイドロゲンジメチコン処理に用いられるシロキサン化合物としては、例えばメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシプロピレン)シロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルセチルオキシシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルステアロキシシロキサン共重合体等の各種シリコーン油を挙げることができる。中でも、メチルハイドロゲンポリシロキサンやメチルポリシロキサンが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料で使用する酸化亜鉛は、塗料全固形分の1~60質量%の範囲が好ましく、より好ましくは10~55質量%の範囲であり、更に好ましくは20~50質量%の範囲である。
【0026】
また本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料は、塗工表面の耐傷性の向上を目的に、更にアクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂を添加してもよい。これらのアクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂を添加する際の組成比は、アクリル(メタ)アクリレート/アクリル(メタ)オリゴマー/ウレタン(メタ)アクリレートを併用した時の『3者同士の固形分の質量比の範囲』を示せば、アクリル(メタ)アクリレート樹脂50~99質量%、アクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂1~50質量%であることが好ましい。より好ましくは、アクリル(メタ)アクリレート樹脂60~90質量%、アクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂10~40質量%である。アクリル(メタ)オリゴマー、及び/又はウレタン(メタ)アクリレート樹脂の配合量が50質量%を超すと塗膜に粘性が生じ、乾燥工程のみでのタックフリー化が発現しない。
【0027】
前記アクリル(メタ)オリゴマーとしては例えばトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成する成分としては、多官能アルコール成分、分子中に一個以上のアルコール性水酸基と一個以上の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドを有する化合物、ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成する多官能アルコール成分としては、以下に例示した化合物から選ばれる一種類以上の化合物を単独又は必要に応じて任意の比率で二種類以上を混合して使用することができる。
【0029】
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジ(1,2-プロピレングリコール)、トリ(1,2-プロピレングリコール)、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカン、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン、2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、 ネオペンチルグリコールモノヒドロキシピバリン酸エステル、スピログリコール(3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、グリセリン、エチレンオキサイド変性グリセリン、プロピレンオキサイド変性グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトール、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、エチレンオキサイド変性ジトリメチロールプロパン、プロピレンオキサイド変性ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール、プロピレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール、精製ヒマシ油等が挙げられる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の構成成分で、末端ラジカル重合性不飽和結合を付与するための化合物としては以下に挙げる、分子中に一個以上のアルコール性水酸基と一個以上の(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドを有する化合物が挙げられる。
アルコール性水酸基を分子内に一個有する(メタ)アクリル酸エステル類又は(メタ)アクリルアミド類としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α-ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、ε-カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリン(メタ)アクリレートステアレート、グリセリン(メタ)アクリレートオレエート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌル酸、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。又、二個以上のアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類としてはグリセリン(メタ)
類以上を混合して使用することができる。
N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。又、二個以上のアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類としてはグリセリン(メタ)アクリレートの他、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルビス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸等が挙げられる。その他、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の反応により得られ、一般的にはエポキシアクリレートと称される化合物群を用いることができる。ここから選ばれる一種類以上の化合物を、両末端に2-ヒドロキシル(メタ)アクリル酸エステル構造を有する化合物として利用してウレタン樹脂骨格にラジカル重合性不飽和結合を導入することもできる。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料で用いる硬化剤として公知公用の光重合開始剤を利用することが可能であり、中でもラジカル重合タイプの光重合開始剤が好ましく、活性エネルギー線硬化性化合物溶解時に溶解液の着色が無く、経時による黄変の少ないα-ヒドロキシアルキルケトン系光重合開始剤が挙げられる。α-ヒドロキシアルキルケトン系光重合開始剤としては例えば、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-i-プロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。更にフェニルグリオキソレート系光重合開始剤も好ましい。フェニルグリオキソレート系光重合開始剤としては例えばメチルベンゾイルフォルマート等を挙げることができる。中でも、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。
【0032】
また、その他のラジカル重合タイプの光重合開始剤としては紫外線の中でも長波長領域に吸収波長を有するモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を適宜、組合わせて使用してもよい。モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては活性エネルギー線硬化性化合物への溶解時に着色するビスアシルフォスフィンオキサイド類は除き、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等のモノアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられ、特に、これらの中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドは、385nmや395nmに発光波長を有するUV-LEDの発光波長領域に合致するUV吸収波長を有することで、好適な硬化性が得られ、且つ、硬化皮膜の黄変が少ない点でより好ましい。
【0033】
前記した光重合開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記光重合開始剤の総計の塗料中の含有率は、有機溶剤を含む塗料全量に対し0.1~10質量%の範囲にあることが好ましい。0.1質量%未満の添加量では良好な硬化性を得ることが困難であり、また10質量%を超える添加量では、開始剤量が過剰となり、塗料としての流動性を損ない加工性、作業性が低下することから好ましくない。
【0034】
更に、脂肪族アミン誘導体及び/又は安息香酸アミン誘導体から選ばれる3級アミン化合物を増感剤として添加することによって、硬化速度を速めることもできる。3級アミン化合物は、反応性を高め、酸素による反応阻害を阻止することで知られている。好適な3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの遊離アルキルアミン、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエートなどの芳香族アミン、およびポ
性不飽和アミン(例えば、(メタ)アクリレート化アミン類)などの活性エネルギー線重合性化合物は、低臭気性、低揮発性、および硬化によってポリマーマトリックス中に組み込むことができる能力によって黄ばみが抑制される性質があることから、好ましいとされる。
【0035】
前記3級アミン化合物は、有機溶剤を含む塗料全量に対して、好ましくは、0.1~10質量%、より好ましくは、0.3~3質量%の量で用いる事ができる。
【0036】
更に任意の成分として、艶消しや耐傷付き性目的のシリカ、ワックス、可塑剤、分散剤、泡消剤等を含有させることが出来る。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料で用いる有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを挙げることができる。
【0038】
(活性エネルギー線硬化型建材塗料の製造)
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料は、(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂、酸化亜鉛等の金属酸化物を事前に連肉した後、光重合開始剤、必要に応じアクリル(メタ)オリゴマー等の樹脂、その他各種添加剤などを有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。
【0039】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
塗料中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、塗工物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料が用いられる基材として化粧シート向けとしての紙や各種フィルムの他、木材、不燃材等が挙げられる。
【0041】
前記化粧シートとは、紙、フィルム等の基材に対し公知の例えばアクリル系、セルロース系、ビニル系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ゴム系、ウレタン系印刷インキや塗料を印刷あるいは塗布することによって絵柄層を形成した上で、この絵柄層を被覆させるトップコート層を設ける構成とするものであり、本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料は前記トップコート層を形成するものである。
前記化粧シート向け基材の種類としては、例えば、薄葉紙、普通紙、強化紙、樹脂含浸紙等の紙質シート、チタン紙、ポリエチレンテレフタレートシート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートシート(PETGシート)、ポリ塩化ビニルシート、ポリエチレンシート、アクリルニトリルブタジエンスチレンシート、ポリプロピレンシート等の樹脂シート、及びこれらの複合シート等を使用できる。
また、木質化粧板の木質基材としては、従来から化粧板や家具、建築部材等の木質基材として使用されている合板、パーティクルボード、ハードボード、MDF等の公知のものが挙げられる。またこれらの公知基材はどのような製法で得られたものであるかは問わない。
【0042】
更に、基材として使用できる不燃材としては、石膏ボード、石膏板、珪酸カルシウム板等を素材とした開孔ボード建材等を挙げることができる。
【0043】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料を用いた化粧シートを例に挙げれば、前記基材上に対し公知の例えばアクリル系、セルロース系、ビニル系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ゴム系、ウレタン系印刷インキや塗料を印刷あるいは塗布することによって絵柄層を形成した上で、二重結合当量が100~750g/molの(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂、及び金属酸化物を含有する事を特徴とする活性エネルギー線硬化型建材塗料を塗装し、まず最初に該建材塗料の塗膜を作製する工程(I)を経て塗装建材を製造する。
【0044】
前記活性エネルギー線硬化型建材塗料の塗膜を作製するに当たり、該建材塗料の塗布・印刷方式の具体的な例としては、コーティング方法としては、たとえばロールコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、エアドクターコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、トランスファロールコーター、キスコーター、カーテンコーター、キャストコーター、スプレイコーター、ダイコーター、オフセット印刷機、スクリーン印刷機等を適宜採用することができる。
【0045】
次に前記工程(I)で得た塗膜に、30~1000mJ/cmの活性エネルギー線を少なくとも1回照射する工程(II)とを有することで塗装建材表面の硬化性、及び耐候性に優れる塗装建材を提供する事が出来る。
尚、空気と共に又は単独で窒素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガスから選ばれる1種、または2種以上の混合ガスを反応容器に注入することで酸素濃度を8%未満のガス雰囲気中で活性エネルギー線照射できれば、前記工程(I)で得た塗膜の硬化性はより効率よく進行させる事ができる。
【0046】
前記30~1000mJ/cmの活性エネルギー線を少なくとも1回照射する工程(II)の過程での活性エネルギー線とは紫外線、電子線、γ線の如き、電離性放射線や電磁波などであり、中でも紫外線又は電子線が好ましい。
【0047】
酸素濃度8%未満のガス雰囲気下にて紫外線を照射する場合は、高圧水銀灯、エキシマランプ、メタルハライドランプ等を備えた公知の紫外線照射装置を使用することができる。硬化の際の紫外線光量は、80mJ/cm以上であれば硬化効率がよく、1000mJ/cm以下であれば、熱による基材の損傷などを防ぐ観点で好ましい。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料は、基材に塗布後、活性エネルギー線を照射することで硬化皮膜とすることができる。この活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、カーボンアーク、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料はでは、前記の如く活性エネルギー線、好ましくは紫外線等の光照射をすることにより、2液硬化型でなくとも仕上がりにベタ付きを残すことなく硬化反応を行う事ができる。例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
【0049】
不活性ガス中の硬化では、酸素による硬化阻害が少なく、前記した(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂等、主剤のラジカル重合性二重結合の反応がより進行し、硬化が十分行われる上、時間が経過しても長期に表層に留まる事にから化粧シートの塗膜表面の耐性が増し、密着性、及び耐候性をより向上させる事ができる。十分固定された添加剤成分は、例えばグラビア印刷におけるロールの巻き取りにおいて原反の裏面と接触しても外れにくい。
【0050】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料は、建材用途のみならず、家具、楽器、事務用品、スポーツ用品、玩具等の表面塗装用途に幅広く展開され得る。
【実施例
【0051】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。尚、以下実施例中にある部、質量部とは、質量%を表す。
尚、本発明におけるGPCによる重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
また、ガラス転移温度(Tg)の測定は、示差走査熱量計(株式会社TAインスツルメント製「DSC Q100」)を用い、窒素雰囲気下、冷却装置を用い温度範囲-80~450℃、昇温温度10℃/分の条件で走査を行う事で行った。
また、(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂の水酸基価は、樹脂中の水酸基を過剰のアセチル試薬にてアセチル化した際の、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウム(KOH)のmg数で示したものであり、JISK0070に準じたものである。
また、酸化亜鉛の平均粒子径は日機装株式会社製ナノ粒子粒度分布測定器Nanotrac UPA EX-150を使って測定した。
【0052】
(建材塗料の調整)
〔調整例1〕
(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂としてアクリルアクリレート樹脂A(二重結合当量250g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg56℃、水酸基価113mgKOH/g)38.2部、BASF社製1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「Omnirad184」8部、堺化学工業(株)社製FINEX-52W-LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層のコーティングとハイドロゲンジメチコン処理の両方を施した酸化亜鉛であって、高密度シリカ層の質量比率は全量の10%、ハイドロゲンジメチコン層の質量比率は全量の4%)を20部、酢酸エチル33.8部を添加し、攪拌機で1時間撹拌混合した後、ビーズミルで2時間撹拌処理し、建材塗料1を作製した。
【0053】
〔調整例2〕
調整例1のアクリルアクリレート樹脂A(二重結合当量250g/mol品)の代わりに、アクリルアクリレート樹脂B(二重結合当量360g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg73℃、水酸基価78mgKOH/g)を使用した他は、全て調整例1と同様の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料2を作製した。
【0054】
〔調整例3〕
調整例1のアクリルアクリレート樹脂A(二重結合当量250g/mol品)の代わりに、アクリルアクリレート樹脂C(二重結合当量550品g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg85℃、水酸基価50mgKOH/g)を使用した他は、全て調整例1と同様の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料3を作製した。
【0055】
〔調整例4、5〕
調整例3のFINEX-52W-LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層のコーティングとハイドロゲンジメチコン処理の両方を施した酸化亜鉛であって、高密度シリカ層の質量比率は全量の10%、ハイドロゲンジメチコン層の質量比率は全量の4%)の添加量を表1に従い変化させ、酢酸エチルで塗料全量が100部となる様調整し、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料4,5を作製した。
【0056】
〔調整例6~8〕
表1に従い、調整例1~3のFINEX-52W-LP2の代わりに表面を未処理の酸化亜鉛MA-500(平均粒子径25nm テイカ(株)社製)20部とした他は、各々調整例1~3と同様の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料6~8を作製した。
【0057】
〔調整例9〕
調整例3のアクリルアクリレート樹脂C(二重結合当量550品g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg85℃、水酸基価50mgKOH/g)31.2部に、更にその他の(メタ)アクリレートとして、東亞合成(株)製「アロニックスM-402(5官能の重合性アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールペンタアクリレート及び6官能の重合性アクリレートモノマーであるヘキサアクリレートの混合物、製品中のペンタアクリレートの割合が30~40質量%)」7部を添加した他は、調整例3と同様の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料9を作製した。
【0058】
〔調整例10〕
調整例9の、東亞合成(株)社製アロニックスM-402の代わりに、東洋ケミカルズ(株)社製脂肪族ウレタンアクリレートMiramer PU610(官能基数6、重量平均分子量1800)を7部添加した他は、調整例9と同様の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料10を作製した。
【0059】
〔調整例11〕
調整例3のFINEX-52W-LP2の代わりに、堺化学工業(株)社製FINEX-50W(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理のみ施した酸化亜鉛であって、ハイドロゲンジメチコン処理層の質量比率は全量の4%)を20部添加した他は、調整例3と同様の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料11を作製した。
【0060】
〔調整例12〕
調整例3のFINEX-52W-LP2の代わりに、堺化学工業(株)社製FINEX-50W(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層のコーティング処理のみ施した酸化亜鉛であって、処理層の質量比率は全量の約21%)を20部添加した他は、調整例3と同様の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料12を作製した。
【0061】
〔調整例13〕
調整例3のFINEX-52W-LP2の代わりに、堺化学工業(株)社製FINEX-50(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層のコーティング処理、ハイドロゲンジメチコン処理共にされていない酸化亜鉛)を20部添加した他は、調整例3と同様の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料13を作製した。
【0062】
〔調整例14~21〕
酸化亜鉛を添加せず、紫外線吸収剤であるチヌビン400(BASFジャパン(株)社製)を一律8部添加した他は、各々表2に記載の配合にて、同様の手順で混合・攪拌し建材塗料14~21を作製した。
【0063】
<化粧シートの作製>
〔実施例1~13、及び比較例1~8〕
基材として易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム、東洋紡績株式会社製 A4300 厚さ100μm)を用意し、バーコーター(4μm)を使用して前記調整例1~21で作製した建材塗料を其々塗布した後、高圧水銀灯による紫外線照射を1回行い、塗膜を硬化させた。空冷高圧水銀灯(出力120W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション)を使用し、塗工物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を分速25メートルの速度で通過させることにより、建材塗料を硬化させた。
紫外線照射量は紫外線積算光量計(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション製 工業用UVチェッカー UVR-N1)を用いて40mJ/cmである事を確認した。
【0064】
〔評価方法〕
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料の評価方法を示す。
【0065】
〔評価項目1:紫外線硬化性〕
前記化粧シート作製直後の塗膜表面を触手し、表面のベタ付きの程度を次の4段階で官能評価した。
(評価基準)
4:まったくベタ付きが感じられず、完全に乾燥している。
3:僅かにベタ付きが感じられるが問題ない程度である。
2:使用上問題あるベタ付きがある。
1:ベタ付きが顕著であり、完全に乾燥していない。
【0066】
〔評価項目2:耐候性〕
作製した化粧シートを耐候試験機(スーパーUV)によって耐候性を次の4段階にて目視評価した。試験に関しては、スーパーUV耐候性促進試験機(アイスーパーUVテスター SUV―W261 岩崎電気製)を用いて、照度60mW 照射温度63℃ 休止温度50℃ 照射湿度50% 休止湿度50% 照射時間20時間 結露時間4時間 休止時間6分 シャワー10秒の設定で紫外線を照射した。
(評価基準)
4:トップコートの劣化が小さく、表層の透明度が維持されている。
3:トップコートの劣化がやや小さく、表層の透明度が少し落ちている。
2:トップコートの劣化がやや大きく、表層の透明度が大きく落ちている
1:トップコートの劣化が大きく、表層のみならず基材も破壊されている。
【0067】
活性エネルギー線硬化型建材塗料1~21を用いた化粧シートの評価結果を表1,2に示す。
尚、表中の数値は、酢酸エチルを除いて全て固形分で記載した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表中略語は次のとおりである。
・FINEX-50S-LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)にハイドロゲンジメチコン処理のみ施した酸化亜鉛であって、ハイドロゲンジメチコン処理層の質量比率は全量の約4%)
・FINEX-50W(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層のコーティング処理のみ施した酸化亜鉛であって、処理層の質量比率は全量の約21%)
・FINEX-50(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層のコーティング処理、ハイドロゲンジメチコン処理共にされていない酸化亜鉛)
・FINEX-52W-LP2(無処理の酸化亜鉛(平均粒子径20nm)に高密度シリカ層のコーティングとハイドロゲンジメチコン処理の両方を施した酸化亜鉛であって、高密度シリカ層の質量比率は全量の10%、ハイドロゲンジメチコン層の質量比率は全量の4%)
・MA-500:表面処理していない酸化亜鉛、平均粒子径25nm テイカ(株)社製
【0071】
本発明の活性エネルギー線硬化型建材塗料を用いた化粧シートは、紫外線硬化性、及び耐候性に優れる。